JP5268009B2 - 成体膵臓幹細胞の樹立方法及び分化方法 - Google Patents
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Description
安全な再生医療を考えた場合、増殖性の極端に高い胎生期から樹立された細胞(胎生幹細胞)やES細胞を用いるより、「成体」から樹立された「成体組織幹細胞」は、標的となる各臓器部位で、制御分子機構や細胞応答性がより生体環境に馴染んだ幹細胞であるため、ガン化などのリスクファクターが少ない利点があり、とりわけ「成体」由来の「自己幹細胞」を用いた方が、患者に負担も低く免疫拒絶性も無い、自然で効果的な医療が行えると考えられる。
現在までに種々の組織由来の組織幹細胞が報告され、血液幹細胞、神経幹細胞、肝臓幹細胞、心筋幹細胞、骨格筋幹細胞などと共に、脳の神経幹細胞も、既に国際的、学術的にも確立された成体幹細胞である(非特許文献1など)。
ヒトからマウス等、下等動物に至るまで、「成体」神経幹細胞の存在が国際学術誌に多数報告されている。成体脳内での神経新生は従来不可能だと考えられていたが、成体の脳内にも日々分裂を繰り返し、神経新生を繰り返している神経幹細胞が存在する領域が保持されていることが分かった。最近の研究から、胎生神経幹細胞と成体神経幹細胞からの分化制御機構で、細胞外シグナル分泌には幾らか相同性があるが、そのシグナルに応答して細胞内で発現し、実際に分化開始を誘導する上で、中心となる遺伝子の発現制御機構が違うという重要な事実が、徐々に明らかになってきた。
成体の神経幹細胞の存在が1990年代に始めて明らかにされて以降、脳内で神経新生を起こす成体神経幹細胞の仕組みを解明し、創薬開発や再生医療、脳神経疾患の治療に役立てる研究が盛んに今日では行われている。神経幹細胞からは、成熟神経細胞、オリゴデンドロサイト細胞、アストロサイト細胞の3種が分化して形成される。
この分化能力を備えた神経幹細胞は胎生期にも存在する。この胎生神経幹細胞から神経新生を起こす代表転写遺伝子例はNeurogeninという遺伝子である。一方、成体の「神経新生」を起こす代表転写遺伝子はNeuroD1/beta2であり、この遺伝子が無いと、成体の脳内で神経新生を起こす領域のみが限定して欠損する。
さらに、成熟神経細胞まで分化全過程に必要な、神経特異的遺伝子群の発現を「活性化」調節する転写因子が、成体脳ではNRSF/REST転写遺伝子なのだが、胎生期では神経細胞以外に発現されることにより、「活性化」ではなく「抑制」している。発現される転写因子の種類や時期、遺伝子の発現調節機構自体も全く違うため、「成体期」と「胎生期」の幹細胞・分化制御は明確に区別できる。
このように、現在では、成体神経幹細胞につては、その樹立方法、未分化状態に維持した培養方法、及び各種の成熟した神経細胞、グリア細胞への分化方法はほぼ確立しているといえる。
また、従来、膵臓幹細胞を、インシュリン産生性のβ細胞をはじめ、α細胞、γ細胞、δ細胞へと分化させるためには、それぞれES細胞から誘導分化させる手法(非特許文献3)などの手法が用いられていたが、分化能が限られていたり、高度なテクニックを要したり、増殖能の違いから生じるガン化などの欠点があった。
そこで、膵臓組織における再生医療においては、患者への負担も低く免疫拒絶性も無い「自己幹細胞」も視野に入れた、膵臓への移植が可能であり、かつ各種膵臓細胞へ分化可能な成体幹細胞の安定的な提供が強く望まれていた。
また、このようにして樹立した成体膵臓幹細胞を、α細胞、β細胞、δ細胞、γ細胞それぞれに分化させる際にも、神経幹細胞から各種神経系細胞へ分化させるための方法が転化応用できること、つまり、β細胞分化には神経分化の方法、α細胞の分化にはアストロサイト細胞への分化方法、δ細胞の分化には抑制性のインターニューロンを作製する神経分化条件、γ細胞分化にはオリゴデンドロサイト細胞を誘導するグリア細胞分化の条件を使用すればよいことを見出し、膵臓幹細胞の各種膵臓細胞への効率的な分化方法も確立することができた。
さらに、本発明の成体膵臓幹細胞と、同時に樹立・培養した成体神経幹細胞との分子基盤の詳細な比較解析から、両者の分化制御因子群に非常に高い類似性・相補性があることを明らかにした。さらに、神経幹細胞と膵臓幹細胞とが、樹立、培養工程のみならず、分化工程においてもきわめて類似した挙動を示すという知見を踏まえ、膵臓幹細胞を神経組織に移植した場合も、神経細胞分化誘導剤又はグリア細胞分化誘導剤を併用することで、神経系細胞又はグリア細胞に分化し、神経幹細胞を膵臓組織に移植した場合は、反対にβ細胞等の各膵臓細胞に分化するという仮説を立て、トランスジェニックマウスを用いた実験系で当仮説を立証した。
本発明で得られた成体膵臓幹細胞を用いた膵臓の再生移植治療用キットと共に、当該成体膵臓幹細胞を用いた脳、脊髄など中枢神経系又は末梢神経系細胞又はグリア系細胞の再生移植治療用キットについての発明を完成した。なお、同時に成体神経幹細胞を用いた糖尿病用の再生移植医療についての発明も完成し、本願と同日付で別出願をしている(特願2008-168187号)。
〔1〕 成体由来の膵臓組織からの膵臓幹細胞の樹立方法であって、下記の(a)及び(b)の工程を含む成体膵臓幹細胞の樹立方法;
(a)膵臓幹細胞を含む膵臓組織を、コラゲナーゼを含む神経幹細胞用培養培地に懸濁する工程、
(b)膵臓幹細胞を、神経幹細胞培養用ディッシュに播種し、神経幹細胞用培養培地を加えて培養する工程。
〔2〕 前記培養工程において、まずFCS及びFGF2を含有する神経幹細胞用培養培地で膵臓幹細胞を増殖させ、次いでFCSを除いたFGF2を含有する神経幹細胞用培養培地で培養することを特徴とする、前記〔1〕に記載の成体膵臓幹細胞の樹立方法。
〔3〕 前記〔1〕又は〔2〕に記載の樹立方法により得られた成体膵臓幹細胞であって、sox-2遺伝子を発現している成体膵臓幹細胞。
〔4〕 成体膵臓幹細胞を、FGF2を添加した神経幹細胞培養用培地で培養することを特徴とする、成体膵臓幹細胞を未分化状態に維持する方法。
〔5〕 成体膵臓幹細胞を神経細胞分化条件下で培養することを特徴とする、成体膵臓幹細胞をβ細胞及びδ細胞へ分化誘導する分化誘導方法。
〔6〕 成体膵臓幹細胞を、抑制性のインターニューロンを作製する神経細胞分化条件下で培養することでδ細胞の含有度を高めることを特徴とする、前記〔5〕に記載の分化誘導方法。
〔7〕 成体膵臓幹細胞を、アストロサイト細胞分化条件下で培養することを特徴とする、成体膵臓幹細胞をα細胞及びγ細胞へ分化誘導する分化誘導方法。
〔8〕 成体膵臓幹細胞を、オリゴデンドロサイト細胞を誘導するグリア細胞分化条件下で培養することでγ細胞含有度を高めることを特徴とする、前記〔7〕に記載の分化誘導方法。
〔9〕 前記〔3〕に記載の成体膵臓幹細胞を含むことを特徴とする、膵臓細胞再生移植用キット。
〔10〕 さらに神経細胞分化誘導剤を含むことを特徴とする、前記〔9〕に記載の膵臓細胞再生移植用キット。
〔11〕 生体適合性シート表面に配置した成体膵臓幹細胞と、RA、RA+FSK、RA+FSK+KCl、Wnt3a、GSK3βインヒビター、リチウム塩、VPA、5AzaC及びβカテニンから選択された少なくとも1種の神経細胞分化誘導剤とを含むことを特徴とする、膵臓β細胞再生移植用キット。
〔12〕 成体膵臓幹細胞を、生体適合性シート上で、RA、RA+FSK、RA+FSK+KCl、Wnt3a、GSK3βインヒビター、リチウム塩、VPA、5AzaC及びβカテニンから選択された少なくとも1種の存在下で培養して、β前駆細胞に分化させた後、前記生体適合性シートと共に、膵臓患部に導入することを特徴とする、膵臓再生移植治療方法。
〔13〕 RA、RA+FSK、RA+FSK+KCl、Wnt3a、GSK3βインヒビター、リチウム塩、VPA、5AzaC及びβカテニンから選択された少なくとも1種の神経細胞分化誘導剤を有効成分として含む、糖尿病治療用組成物。
〔14〕 さらに、生体適合性シート表面に配置した成体膵臓幹細胞を含む、前記〔13〕に記載の糖尿病治療用組成物。
〔15〕 前記成体膵臓幹細胞が、あらかじめ前記生体適合性シート表面上で、RA、RA+FSK、RA+FSK+KCl、Wnt3a、GSK3βインヒビター、リチウム塩、VPA、5AzaC及びβカテニンから選択された少なくとも1種の存在下で培養し、β前駆細胞にまで分化させておいた状態の細胞であることを特徴とする、前記〔14〕に記載の糖尿病治療用組成物。
〔16〕 成体膵臓幹細胞を含むことを特徴とする、神経細胞再生移植用キット。
〔17〕 さらに神経細胞分化誘導剤を含むことを特徴とする、前記〔16〕に記載の神経細胞再生移植用キット。
〔18〕 前記神経細胞分化誘導剤が、RA、RA+FSK、RA+FSK+KCl、Wnt3a、GSK3βインヒビター、リチウム塩、VPA、5AzaC及びβカテニンから選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする、前記〔17〕に記載の神経細胞再生移植用キット。
〔19〕 成体膵臓幹細胞を、生体適合性シート上で、RA、RA+FSK、RA+FSK+KCl、Wnt3a、GSK3βインヒビター、リチウム塩、VPA、5AzaC及びβカテニンから選択された少なくとも1種の存在下で培養して、β前駆細胞に分化させた後、前記生体適合性シートと共に、神経組織患部に導入することを特徴とする、神経組織再生治療方法。
〔20〕 生体適合性シート表面に配置した成体膵臓幹細胞と共に、RA、RA+FSK、RA+FSK+KCl、Wnt3a、GSK3βインヒビター、リチウム塩、VPA、5AzaC及びβカテニンから選択された少なくとも1種の神経細胞分化誘導剤を含むことを特徴とする、神経性疾患治療用組成物。
〔21〕 前記成体膵臓幹細胞が、あらかじめ前記生体適合性シート表面上で、RA、RA+FSK、RA+FSK+KCl、Wnt3a、GSK3βインヒビター、リチウム塩、VPA、5AzaC及びβカテニンから選択された少なくとも1種の存在下で培養し、β前駆細胞にまで分化させておいた状態の細胞であることを特徴とする、前記〔20〕に記載の神経性疾患治療用組成物。
成体幹細胞の中で、神経幹細胞は国際的、学術的にも確立されている。1990年代に始めて明らかにされて以降、脳内で神経新生を起こす成体神経幹細胞の仕組みを解明し、創薬開発や再生医療、脳神経疾患の治療に役立てる研究が盛んに今日では行われている。
本発明者らは、内分泌器官である「成体」の膵臓にも、成体神経幹細胞と同じ未分化マーカー遺伝子(Sox2)を発現する膵臓幹細胞が存在することを明らかにさせた(図1)。Sox2遺伝子は、ES細胞でも発現する非常に高い未分化性を保持する転写因子である。トランスジェニックマウスを用いた動物個体の脳と膵臓で、その発現を確認した(Sox2プロモーターにレポーター遺伝子であるEGFPを連結した遺伝子改変マウス内で、Sox2遺伝子を発現している細胞が蛍光を発する)。重要なこととして、両臓器の神経細胞及び、β細胞がともにインシュリンを発現していることである(図1、上図、赤がインシュリン抗体陽性、緑がSox2遺伝子を発現している成体幹細胞)。神経細胞とβ細胞は成体ではNRSF/RESTという転写因子を発現しており(マゼンタ)、そのNRSF/REST発現陽性の細胞がインシュリン(緑)を発現していることが分かる(図1、下段)。
本発明において樹立された「成体膵臓幹細胞」は、α細胞、β細胞、δ細胞、γ細胞への分化能を有し、かつ多能性を有するものである。未分化状態では、α細胞、β細胞、δ細胞、γ細胞いずれの性質も示さず、各細胞に対応した分化処理を施すことにより、各細胞に分化する。α細胞、β細胞、δ細胞、γ細胞への分化は、例えば、α細胞は「グルカゴン」、β細胞は「インシュリンのC-peptide」、δ細胞は「ソマトスタチン」、γ細胞は「Pancreatic polypeptide(PP)」などの分化経路マーカーの発現により確認できる(非特許文献8)。また、得られた「膵臓幹細胞」が多能性を有していることは、「sox-2マーカー」により確認することができる。ここで、「sox-2マーカー」とは、Sox2プロモーターにレポーター遺伝子であるEGFPを連結したものであり、遺伝子改変マウス内でSox2遺伝子を発現している細胞が蛍光を発することで確認できる(非特許文献7)。Sox2遺伝子配列は、公知のデータベースから入手可能であり、例えばヒトSox2遺伝子は、NM_003106(Gene Bankアクセッションナンバー)、マウスSox2遺伝子はNM_011443(Gene Bankアクセッションナンバー)である。Sox2遺伝子は、典型的な多能性を有する未分化細胞であるES細胞でも発現している遺伝子であり、未分化状態を示す幹細胞特異的な遺伝子であるとされ、当該遺伝子の発現は、成体組織幹細胞が樹立されたことを示す最もよい指標となる。本発明の実施例でも、成体膵臓幹細胞の樹立の確認は、Sox2遺伝子を発現していることを確認した実験事実に基づいて行った(図1)。また、Sox2遺伝子発現は、抗Sox2抗体によっても簡単に確認することができ、抗Sox2抗体はすでに市販されているものを用いることができる(例えば、Chemicon社製)。
なお、本発明において「成体膵臓幹細胞」というとき、典型的にはドナーとなるヒトの膵臓組織から得られた「成体膵臓幹細胞」であり、好ましくは再生治療を行う患者自身の「成体膵臓幹細胞」であることが好ましいが、ブタなど異種哺乳類由来の「成体膵臓幹細胞」であってもよい。また、マウス、ラットなどの実験動物由来、又はイヌ、ネコなどの愛玩動物由来の「成体膵臓幹細胞」であってもよい。
本発明では、成体の膵臓から採取した膵臓細胞から、多能性をもつ成体膵臓幹細胞を樹立したが、その際の樹立法・培養法は、基本的には、成体の神経幹細胞の樹立法・培養法(非特許文献1)を転化応用したものである。樹立した成体膵臓幹細胞は未分化状態を示す成体幹細胞特異的な遺伝子を発現する。未分化状態を保つ成体膵臓幹細胞は、ES細胞でも発現するSox2遺伝子を発現している(図1)。
具体的な手法は以下の通りであり、基本的には、上記成体神経幹細胞の樹立法・培養法に従って行った。膵臓細胞に適用するにあたっての改善点をあわせて記載する。
成体神経幹細胞樹立の際には、神経幹細胞存在領域をマイクロダイセクションしたのち、迅速にトリプシン酵素処理下で細胞を分散させ、次いで、37℃のCO2インキュベーター内で神経細胞培養用培地中に細胞を懸濁し、培地による洗浄を繰り返し、遠心により、神経幹細胞を含有する神経由来の細胞成分を採取する。ここで、神経細胞培養用培地としては、典型的には[DME/F12,high glucose(1mM L-glutamine)、N2 supplement添加、Antibiotic-Antimicotic添加]が用いられる。
一方、膵臓の場合は、トリプシン処理では効率よい細胞の分散が行えなかったため、コラゲナーゼ処理を施すことで細胞を分散させ、また洗浄の際にも、コラゲナーゼ入り神経細胞培養用培地を用いて細胞を洗浄する。
その際のコラゲナーゼ添加量は、1 mg/mLコラゲナーゼ含有の神経培養培地で調整した溶液を10-30 mLのボリュームで使用し、上述の37℃のCO2インキュベーター内での培養およびその後の繰り返し洗浄に使用するのが好ましい。
成体神経幹細胞の培養法と基本的には同じ条件下で行う。すなわち、例えば、典型的な神経幹細胞用培地である[DME/F12,high glucose (1mM L-glutamine)、N2 supplement添加、Antibiotic-Antimicotic添加]を用いることができる。(非特許文献1など)
細胞増殖能を上昇させるためには、上記神経幹細胞培養用培地に、さらにFCS及びFGF2を添加することが好ましい。例えば、FCSを濃度1〜10%、好ましくは5%で添加すると共に、FGF2を10〜200ng/mL、好ましくは100ng/mL添加する、樹立初期特有の培養方法を続ける。
さらに、上記FCS及びFGF2を添加して約5〜8日間、好ましくは7日間培養することで十分増殖させた後に、FCSの添加をやめ、FGF2のみを添加した神経幹細胞用培地(好ましいFGF2の添加量は、10〜100ng/mL、より好ましくは20ng/mLである。)で培養すれば、成人膵臓幹細胞の未分化状態を維持し続けることができる。
これらの手法は神経幹細胞の樹立の際にも用いられる方法の1つである。しかし、神経幹細胞の場合は、FGF2と同様にEGF2にも未分化状態の維持効果があるが、膵臓幹細胞の場合は、EGF2を添加してもあまり効果が見られない。
なお、一般に、神経幹細胞など、各種幹細胞が樹立されたことは、上述のように、Sox2遺伝子が発現していることを確認して、未分化状態を示すことを確認する。膵臓幹細胞の場合、膵臓細胞が分化した状態で発現が上昇するインシュリンやグルカゴン遺伝子の発現が認められないことも同時に確認できる(図3AおよびB)。
成体神経幹細胞を分化させる際の手法として、神経分化誘導法やグリアへの分化誘導法など、各種神経細胞への分化方法が既に確立されている(非特許文献1、4−6など)。
本発明において、成体膵臓幹細胞を、α細胞、β細胞、δ細胞、γ細胞それぞれに分化させるために、各種神経細胞への分化方法を適用する。このように、成体神経幹細胞の分化方法が成体膵臓幹細胞の分化方法を転化応用すれば良いことを本発明者らが今回始めて実証した。つまり、β細胞分化には神経分化の方法、α細胞の分化にはアストロサイト細胞への分化方法、δ細胞の分化には抑制性のインターニューロンを作製する神経分化条件、γ細胞分化にはオリゴデンドロサイト細胞を誘導するグリア細胞分化の条件が適用できる。
具体的には、以下の通りである。
神経幹細胞から神経細胞への分化条件を適用することで、成体膵臓幹細胞を、インシュリン産生能を有するβ細胞に分化させることができる。基本的には、非特許文献4又は5に記載の神経細胞への分化条件に従うことが好ましい。典型的には、[RA+FSK+KCl]添加培地が用いられ、例えば、DME/F12,high glucose (1mM L-glutamine)、N2 supplement添加、Antibiotic-Antimicotic添加培地中に、1μMのretinoic acid (RA, シグマ社製)、5μMのforskolin(FSK、シグマ社製)及び40 mMのKCl(WAKO社製)を添加する。また、本実施例中では、神経細胞分化誘導剤として典型的に用いられる「RA+FSK+KCl」を添加する以外に、レチノイン酸(RA)単独、またはレチノイン酸+フォスフォコリン(RA+FSK)でも、さらにヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤の一種であるバルプロ酸(VPA)、メチル化酵素阻害剤の5AzaCもインシュリンプロモーターを活性化することを確認した(図4A)。
また、脳内の神経新生領域で発現する分泌タンパク質として知られるWnt3もしくはその遺伝子又はWnt3のシグナリング促進物質を用いることでも、成体膵臓幹細胞をインシュリン産生性のβ細胞へ効率的に分化することができることを本発明において、初めて実証できた。すなわち、成体膵臓幹細胞の培地にWnt3aもしくはその活性化剤を添加するか、当該細胞内にWnt3a遺伝子を導入することでインシュリンを産生できるように分化させることができる。Wnt3aについては、下記7.で詳細に述べる。
成体膵臓幹細胞がβ細胞に分化したことを確認するためには、β細胞分化経路マーカーとして広く用いられている「インシュリン」発現を抗体で確認すればよい。インシュリンが新しく生成する反応由来の「C-peptide」で発現を新規のインシュリン産生を同時に確認することもできる。例えば、インシュリン検出用の「guinea pig anti-Insulin(1:300;Sigma社製)」又はC-peptide検出用の「goat anti-C-peptide (1:250,Linco Research社製)」が好適に用いられる。また、インシュリン又はC-peptideのmRNAの存在をRT-PCR法などにより確認することができる(図3B)。
成体膵臓幹細胞に対して、β細胞の場合と同様の神経幹細胞から神経細胞への分化条件を適用することで、δ細胞にも分化させることができるが、δ細胞の含量を高めたい場合は、神経幹細胞から抑制性のインターニューロンを作製する神経分化条件を適用する。基本的には、非特許文献4、5に記載の神経分化条件に従うことが好ましい。典型的には、DME/F12,high glucose (1mM L-glutamine)、N2 supplement添加、Antibiotic-Antimicotic添加培地中に、1μMのretinoic acid (RA、シグマ社製)、5μMのforskolin(FSK、シグマ社製)、追加的に40 mMのKCl(WAKO社製)を添加する。
成体膵臓幹細胞がδ細胞に分化したことを確認するためには、δ細胞分化経路マーカーとして広く用いられている「ソマトスタチン」発現を確認すればよい。例えば、ソマトスタチン検出用の「rat anti-Somatostatin (1:300、Chemicon社製)」抗体が好適に用いられる。また、ソマトスタチンmRNAの存在をRT-PCR法などにより確認することができる。
神経幹細胞からアストロサイト細胞への分化条件を適用することで、成体膵臓幹細胞を、α細胞に分化させることができる。基本的には、非特許文献4−6に記載のアストロサイト細胞への分化条件に従うことが好ましい。典型的には、DME/F12,high glucose (1mM L-glutamine)、N2 supplement添加、Antibiotic-Antimicotic添加培地に、5%FCSまたはLIF(50 ng/mL;WAKO社製)とBMP2(50 ng/mL;WAKO社製)を添加する。
成体膵臓幹細胞がα細胞に分化したことを確認するためには、α細胞分化経路マーカーとして広く用いられている「グルカゴン」発現を確認すればよい。例えば、グルカゴン検出用の「mouse anti-Glucagon (1:300、Immuno社製)」抗体での検出が好適に用いられる。また、グルカゴンmRNAの存在をRT-PCR法などにより確認することができる。
成体膵臓幹細胞に対して、α細胞の場合と同様の神経幹細胞からアストロサイト細胞への分化条件を適用することで、γ細胞にも分化させることができるが、γ細胞の含量を高めたい場合は、神経幹細胞からオリゴデンドロサイト細胞を誘導するグリア細胞分化の条件を適用する。基本的には、非特許文献4〜6に記載のグリア細胞、非特許文献4のオリゴデンドロサイト細胞への分化条件に従うことが好ましい。典型的には、DME/F12,high glucose (1mM L-glutamine)、N2 supplement添加, Antibiotic-Antimicotic添加培地に、1%FCSまたはIGF1 (500 ng/mLが好適。使用範囲として20−1000 ng/mL)を添加する。
成体膵臓幹細胞がγ細胞に分化したことを確認するためには、γ細胞分化経路マーカーとして広く用いられている「Pancreatic polypeptide」発現を確認すればよい。例えば、Pancreatic polypeptide検出用の「guinea pig anti-Pancreatic polypeptide (1:100、Linco Research社製)」抗体が好適に用いられる。また、Pancreatic polypeptideのmRNAの存在をRT-PCR法などにより確認することができる。
Wnt3は脳内の神経新生領域で、アストロサイト細胞(GFAP陽性)が発現する分泌タンパク質で、この効果により神経幹細胞は神経新生を開始し、ニューロブラストという神経新生細胞(NeuroD1陽性)を産生する物質であるが、このWnt3が、膵臓の膵島α細胞(GFAP、Glucagon陽性)で発現していることが分かった(実施例4−2、図4A)。
また、膵臓の内分泌系は、脳内神経系と非常に高い相関が有り、β細胞内で新生している細胞は、NeuroD1陽性であるという共通点が有る(図4B−D)。NeuroD1のプロモーター上には、Wnt/βcateninシグナリングで活性化されるβcatenin/TCF/LEF転写因子が認識して結合する配列がヒト−ラット−マウスで保存されている。膵臓幹細胞をβ細胞へ分化誘導する際に、初期神経誘導条件下(ニューロブラスト産生状態)に置くと24時間経過後には、Wnt/βcateninシグナリングで重要となるβcateninタンパク質の安定化が起きていることを、ウエスタンブロッティングで確認した(図4E)。
さらに、NeuroD1遺伝子、インシュリン遺伝子の活性化にWntが必須であり、Wnt3が両遺伝子の活性化を導くことをRT-PCRで確認した(図4F)。
図4Fは、Wnt/βcateninシグナリングの活性化(試薬)でインシュリン遺伝子の発現が上昇し(Wnt3,GSK3beta-inhibitor)、対照的にWnt/βcateninシグナリングの不活性化(DnWnt;ドミナントネガティブWnt,βcatenin shRNA)でインシュリン遺伝子の発現が起きないことを示している。
NeuroD1のプロモーター上のTCF/LEF転写因子結合部位のクロマチンの活性化(Anti-Acetyl HistoneH3)がWnt3で誘導されること、さらにNeuroD1がインシュリン遺伝子の活性化(インシュリン遺伝子のプロモーター上のNeuroD1認識結合部位(E-box))部位へ、直接結合し、クロマチン(染色体)の活性化(Anti-Acetyl HistoneH3)を誘導する)を導くことを示した(図4G)。
これらのことから、成体膵臓幹細胞を未分化状態に保つコントロール因子と共に、その分化制御におけるコントロール因子も、成体神経幹細胞からの神経再生制御機構ときわめて共通性が高いことが実証された。
したがって、Wnt3a自身及びWnt/βcateninシグナリングを活性化する物質は、成体膵臓幹細胞を前駆β細胞、さらにはβ細胞へと分化させるβ細胞分化誘導剤となると同時に、インシュリン遺伝子発現を活性化することができることから、これらの物質を、インシュリン産生増強用医薬組成物、糖尿病用治療薬(下記8.で詳細に述べる。)として用いることができる。具体的には、Wnt3a自身、GSK3βインヒビター、リチウム塩(リチウムはWntシグナルを特異的に活性化することで知られている)、及びβカテニンを用いることができる。なお、β細胞への分化効果、インシュリン産生増強効果のいずれに関しても、神経細胞の分化誘導剤として知られるRA(+FA,KCl)、AzaCとVPAもWnt3aやWntシグナル活性化剤と同様な作用がある(図3D)。
Wnt3aは、典型的なWntであり、幹細胞、特に造血幹細胞の増殖および自己再生を含む多数の発達イベントに関与することが知られており、本発明において、成体膵臓幹細胞からβ細胞への分化を誘導する物質であることが見出された。
Wnt3aをインシュリン産生β細胞への分化誘導剤として用いる場合、成体の膵臓組織に対して、Wnt3aタンパク質、又はWnt3a遺伝子を含む発現ベクターなどを直接導入することも考えられるが、Wnt3aタンパク質、又はWnt3a遺伝子を常法により作用させた成体膵臓幹細胞、β前駆細胞を膵臓組織に移植する手法が好ましい。
その際に用いるWnt3aタンパク質としては、生体試料から精製されたもの、化学合成されたものや遺伝子組み換えによって製造されたものを用いることができ、市販Wnt3aを用いることもできる。Wnt3aは保存性が高いので、由来の生物種はいずれのものであってもよいが、医薬製剤として用いる場合は対象生物種と同一の生物種由来のものが好ましい。また、Wnt3aタンパク質におけるWntシグナル伝達機構に関与する領域は古くから研究され、ほぼ解明されており(非特許文献9)、当該領域が含まれていれば、Wnt3aタンパク質及びその遺伝子の全長でなく部分配列であってもよい。
Wnt3a遺伝子を細胞、組織に導入する際には、生来のプロモーターと共に、もしくは強力な公知プロモーター(例えばCAGプロモーターやCMVプロモーター)などに繋いで、生理学的に受容可能なキャリアと共にそのまま導入してもよいが、通常は遺伝子治療用に用いられる各種の公知ウイルスベクター(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV) ベクターやレンチウイルスベクター)を用いて導入することができる。
なお、「Wnt3a遺伝子」というとき、Wnt3aタンパク質をコードするDNA又はmRNAを指し、Wnt3a遺伝子配列は、公知のデータベースから入手可能であり、例えばヒトWnt3a遺伝子は、NM_033131(Gene Bankアクセッションナンバー)、マウスWnt3a遺伝子はNM_009522(Gene Bankアクセッションナンバー)である。
また、公知のWnt3a活性化剤(Wnt3aの活性を増加させるような化合物やWnt3a 転写を活性化するような化合物)、例えば、Wntのシグナル伝達機構を促進することが知られているグリコーゲンシンターゼキナーゼ3β(GSK3β)インヒビターであるAR-A014418(J. Biol. Chem., Vol. 278, No. 46, p45937-45945, 2003)やCT 99021 - CHIR 99021(Axon Ligands社製やSTEMGENT社製)、リチウム塩(Lithium Chloride, Wakoやシグマ社製;)βカテニン(Proc.Natl.Acad.Sci. USA, Vol.97. 4262-4266, 2000 )を用いることができる。また、図3Dに示されるインシュリン遺伝子発現増強効果が確認された、レチノイン酸(RA)は単独でも、フォスフォコリン(FSK)と共に、さらにKCl塩と共に用いることができ、神経分化誘導剤のバルプロ酸ナトリウム(VPA)や5AzaCも用いられる。
なお、本発明の実施例4で用いた、Wnt3aのドミナントネガティブタンパク質(dnWnt)は、Wnt3aの作用領域を改変して機能不全タンパク質をコードする遺伝子をレンチウイルスベクター(Lie DC et al. Nature 437, 1370-1375. (2005))に組み込み発現させたものを用いている。
成体の膵臓の膵尾部分に多く含まれる膵島を抽出し、そこから本件の技術を用いて成体膵臓幹細胞を樹立する。市販のコラーゲンシート(例;コラーゲンビトリゲル(旭テクノグラス株式会社))などの生体適合性シート上で本件に記述されたようなβ細胞分化を促す薬剤(すなわち、神経系細胞分化を促進する薬剤)処理を施して培養し、複数の成体膵臓幹細胞培養コラーゲンシートを、患者本人の膵臓に移植して戻す方法が考えられる。例えば重度の合併症を起こす前の糖尿病患者などが対象としてあげられる。患者本人の細胞を使うため、ドナーや移植に伴う拒絶反応の心配が無い。β細胞分化を促す薬剤処理として、上記6.(a)記載の神経分化を促進する薬剤(1μMのretinoic acid(RA、シグマ社製)、5μMのforskolin(FSK、シグマ社製)及び40 mMのKCl(WAKO社製))や、上記7.記載のWntシグナリングを活性化する薬剤遺伝子(Wnt3A,beta-catenin,GSK3betaインヒビター、リチウム塩など)、またこれまでに開発されている神経分化を誘導する薬剤(抗てんかん薬として知られるVPA;バルプロ酸ナトリウム、TSA;トリコスタチンA)なども用いることができる(図3D)。
また、シートを用いる手法の他、成体膵臓幹細胞を、遠心分離した細胞単独で、又は上記神経分化を促進もしくは誘導する薬剤を含有する培養液と共に、注射器などにより膵臓組織(患部)に直接注入する手法を採ることもできる。
特に、インシュリンを産生するβ細胞への分化作用のある、RA(+FSK,KCl)、VPA、5AzaCなどの神経分化誘導剤、Wnt3aもしくはその活性化剤(GSK3βインヒビター、リチウム塩)、又はIGFBP-4インヒビターは、分化後のインシュリン産生も増強できるので、糖尿病用治療薬として有効であり、I型糖尿病用、II型糖尿病用のいずれにも効果が期待できる。
本発明の医薬組成物は、移植用の膵臓幹細胞と共に膵臓の患部に直接注入するか、又はin vitroで膵臓幹細胞又はそれを分化させた前駆β細胞などに注入して移植する方法を用いることもできる。一般的には、コラーゲンシートなど移植用の生体適合性シート上で膵臓幹細胞を上記分化誘導剤と共に培養し、β前駆細胞にまで分化させた後にシートごと患部に移植するのが最も効率的であるので、その際の培地中に添加するか、その膵臓幹細胞に導入するのが一般的である。本発明で生体適合性シートというとき、典型的にはコラーゲンシートであるが、コラーゲンマトリックスやコラーゲンスポンジを用いることもでき、その際の材質としては生体適合性材料製、例えば周知の生体適合性合成樹脂製であってもよい。
したがって、本発明でインシュリン増強用医薬組成物、糖尿病再生治療用組成物というとき、単に上述のβ細胞分化誘導剤を有効成分とする医薬組成物のみならず、移植用シート上の成体膵臓幹細胞も含めた移植用キットを含む場合も包含し、さらに、成体膵臓幹細胞をあらかじめ移植用シート上で、上述のβ細胞分化誘導剤存在下で培養し、β前駆細胞にまで分化させた状態の移植用シート上の細胞を含めることもある。反対に、成体膵臓幹細胞をあらかじめβ前駆細胞にまで分化させた後にシートごと患部に移植する場合には、上述のインシュリン産生増強効果のあるβ細胞分化誘導剤を同時に患部に導入することは好ましいが必須ではないので、その場合は、β前駆細胞及び移植用シートを含む組成物を、インシュリン増強用医薬組成物、糖尿病治療用組成物と呼ぶこともできる。
さらに、成体膵臓幹細胞は、下記10.で述べるように、成体神経幹細胞に代えて、神経組織の再生用移植治療に用いることができるので、上記のインシュリン増強用医薬組成物、又は糖尿病治療用組成物は、すべて神経系疾患治療用の神経組織の再生治療用組成物として用いることができる。
そして、いずれの場合も、好ましくは通常の注射製剤などと同様、無菌の水溶液に溶解、又は懸濁し、薬学的に許容される安定化剤、等張化剤、緩衝剤などが配合される。また、遺伝子製剤の場合は、常法に従い、核内に遺伝子を運搬するためのキャリアが併用されることが好ましい。生理学的に受容可能なキャリアとしては、リポフェクタミン(Invitrogen社)などの遺伝子導入用カチオン性脂質などがある。
遺伝子を細胞、組織に導入する際には、生来のプロモーターと共に、もしくは強力な公知プロモーター(例えばCAGプロモーターやCMVプロモーター)などに繋いで、生理学的に受容可能なキャリアと共にそのまま導入してもよいが、通常は遺伝子治療用に用いられる各種の公知ウイルスベクター(例えばレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなど)を用いて導入する。
また、公知のインシュリン製剤又はアディポネクチン製剤などの公知インシュリン産生増強剤を併用することもできる。
本発明の医薬有効投与量および投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重等により異なるが、通常成人1日当たり1μg/kg〜10mg/kgである。
成体の膵臓の膵尾部分に多く含まれる膵島を部分結紮して抽出し、そこから本件の技術を用いて成体膵臓幹細胞を樹立する。コラーゲンシート上で本件に記述されたようなβ細胞分化を促す薬剤処理を施して培養し、複数の成体膵臓幹細胞培養コラーゲンシートを、患者本人の神経疾患部位に移植して戻す方法が考えられる。また、コラーゲンシートを用いずに、この細胞培養物を神経損傷部位に直接インジェクションする方法も考えられる。上述と同様、患者本人の細胞を使うため、ドナーや移植に伴う拒絶反応の心配が無い。神経分化を促す薬剤処理として、上述の神経分化を促進する薬剤(1μMのretinoic acid(RA、シグマ社製)、5μMのforskolin(FSK、シグマ社製)及び40 mMのKCl(WAKO社製))や、Wntシグナリングを活性化する薬剤遺伝子(Wnt3A,beta-catenin,GSK3betaインヒビターなど)、またこれまでに開発されている神経分化を誘導する薬剤(抗てんかん薬として知られるVPA;バルプロ酸ナトリウム、TSA;トリコスタチンA)なども用いることができる。
なお、本発明の実施例で用いた遺伝子組換え技術、PCR法、その他の手法などの具体的な手順や条件は、特に断らない限り、Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 3rd Edition.Cold Spring Harbor Laboratory Press, Plainview, NY(2001)、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1989); D. M. Glover et al. ed., "DNA Cloning", 2nd ed., Vol. 1 to 4, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995); Ausubel, F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, N.Y, 1995;日本生化学会編、「続生化学実験講座1、遺伝子研究法II」、東京化学同人 (1986);日本生化学会編、「新生化学実験講座2、核酸 III(組換えDNA技術)」、東京化学同人 (1992); R. Wu ed.,"Methods in Enzymology", Vol. 68 (Recombinant DNA), Academic Press, New York (1980); R. Wu et al. ed., "Methods in Enzymology", Vol. 100 (Recombinant DNA, PartB) & 101 (Recombinant DNA, Part C), Academic Press, New York (1983); R. Wu et al. ed., "Methods in Enzymology", Vol. 153 (Recombinant DNA, Part D), 154 (Recombinant DNA, Part E) & 155 (Recombinant DNA, Part F), Academic Press, New York (1987)などに記載の方法あるいはそこで引用された文献記載の方法またはそれらと実質的に同様な方法により行うことができる。
また、本発明で引用した先行文献又は特許出願明細書の記載内容は、本明細書の記載として組み入れるものとする。
Sox2遺伝子は、ES細胞でも発現する非常に高い未分化性を保持する転写因子であり、多能性を有する幹細胞の存在を確認するマーカーとなる。脳内の神経幹細胞存在領域として広く知られている海馬領域でのSox2遺伝子の発現も周知であった。この実施例1では、Sox2プロモーターにレポーター遺伝子であるEGFPを連結し、導入したトランスジェニックマウスを観察したところ、当該マウスの脳と膵臓で、その発現を確認した。その際の組換えベクターの製法、導入量などの実験条件は、非特許文献5に従った。また、同時に、両臓器の分化した神経細胞及び、β細胞がともにインシュリンを発現していることも確認した(図1、上図、点線枠内がインシュリン抗体陽性、矢印で示した細胞がSox2遺伝子を発現している成体幹細胞)。神経細胞とβ細胞は成体ではNRSF/RESTという転写因子を発現しており(下段、矢印。細胞核内)、そのNRSF/REST発現陽性の細胞がインシュリン(同、矢印で示した細胞。細胞質でインシュリン産生)を発現していることが分かる(図1、下段)。
Fisher344成体ラット(7週齢)から成体膵臓を取り出し、ブレードカッターにより十分なマイクロダイセクションを施した後、コラゲナーゼを添加した神経幹細胞培養用培地[DME/F12, high glucose(1mM L-glutamine)、N2 supplement添加、Antibiotic-Antimicotic添加]中で、37℃のCO2インキュベーター内で30分から45分間、定期的に撹拌しながら細胞を懸濁した。次いで、細胞成分を遠心処理で集め(遠心数1000rpm、2分)、新たなコラゲナーゼ入り神経幹細胞培養用培地で洗浄し、当該培地中で撹拌懸濁する、という工程を計3回繰り返した。
実施例2の方法により、1000rpmで2分間遠心後の細胞成分を、神経幹細胞を培養する際に用いる、特殊コートを施した培養用ディッシュ[市販の細胞培養用ディッシュ/プレートを、PORN(poly-L-ornithine)で24時間室温でコート(第1コート)し、その後滅菌済み超純水で2回以上洗浄し、LamininをPBSに溶解した第2コート液で37℃のCO2インキュベーター内で24時間コートしたもの]に撒いた。
細胞増殖を上昇させるため、10%FCSと100ng/mL FGF2を添加した神経幹細胞培養用培地と、100ng/mL FGF2および100ng/mL EGF2を添加した神経幹細胞培養用培地、100ng/mL FGF2のみを添加した神経幹細胞培養用培地中で、細胞培養を行った。数日後に全ての条件下から新たな細胞の増殖が開始されたことを確認した。最も増殖が促進された、10%FCSと100ng/mL FGF2を添加した神経幹細胞培養用培地での培養は、一週間後にFCSの添加を中止してFGF2のみの添加に切り替えた。これは神経幹細胞の樹立の際に用いられる方法で、一旦増殖を開始させた神経幹細胞は20ng/mLのFGF2存在下で未分化性を効率よく維持できる知見に基づく。しかし、同様に神経幹細胞の未分化維持に効果があるとされるEGF2については、膵臓幹細胞の培養培地中に添加してみても、FGF2の場合のような効果は見られなかった(図示せず)。
樹立した成体膵臓幹細胞は20 ng/mLFGF2を添加した神経幹細胞培養用培地(DME/F12,high glucose(1mM L-glutamine)、N2 supplement添加、Antibiotic-Antimicotic添加)で培養し、継代可能であることも確認した(図2、P1)。
実施例3で樹立した成体膵臓幹細胞を用いて、分化制御機構の解析を行った。神経幹細胞はSox2遺伝子を発現し、多能性を保持した未分化状態に保つことができる。樹立した膵臓幹細胞を、神経幹細胞の分化調節制御機構を参考に、未分化状態と分化状態に分けて免疫染色解析を行った(図3A)。
FGF2存在下では、成体膵臓幹細胞は神経幹細胞と同様にSox2遺伝子を発現し、β細胞が発現するインシュリンやα細胞が発現するGlucagon遺伝子を発現していないことを抗Sox2抗体、抗インシュリン抗体(guinea pig anti-Insulin;1:300;Sigma社製、以下同様。)及び抗Glucagon抗体(mouse anti-Glucagon;1:300,Immuno社製、以下同様。)を用いる免疫染色法で確認した。
δ細胞特異的なソマトスタチン遺伝子の発現の上昇も抗ソマトスタチン抗体(rat anti-Somatostatin;1:300,Chemicon社製、以下同様。)で確認できた。
一方、細胞をアストロサイト分化条件下(非特許文献4〜6による。)のアストロサイト分化条件下、すなわち50 ng/mLのLIF(WAKO社製)及び50 ng/mLのBMP(WAKO社製)を含む培地を用いて培養すると、α細胞への分化が促進され、Glucagon遺伝子の発現が上昇した(抗Glucagon抗体により確認)。この際、幾つかの膵島構造が出現し、一部でγ細胞の発現も上昇することがPancreatic polypeptide遺伝子の免疫染色解析から確認できた。γ細胞含有度を高めたければ、オリゴデンドロサイト細胞分化条件(500ng/mL IGF-I(WAKO社製)入りのDME/F12, high glucose (1mM L-glutamine)、N2 supplement添加、Antibiotic-Antimicotic添加培地)を用いる。
これらの抗体によるタンパク質の発現のみでなく、細胞抽出RNAを用いたRT-PCRからも、未分化、β細胞誘導、α細胞への誘導が行えること、その条件が神経幹細胞の未分化性の維持(FGF2存在下)、神経分化誘導(RA+FSK+KCl)、アストロサイト分化誘導(グリア細胞誘導;LIF+BMP)条件を疑似する条件で行えることを実証した(図3B)。
(4−1)未分化状態を維持した培養工程
Sox2遺伝子は未分化状態を保つ機能をもつが、FGF2というgrowth factor存在下で培養することで、神経幹細胞及び膵臓幹細胞のいずれもの未分化状態が維持される。神経幹細胞と膵臓幹細胞を、神経幹細胞を培養する条件で培養し、細胞からtotal RNAを抽出、精製し、RT-PCR(mRNAの発現を調べる分子生物学的手法)を行った結果を図3Bに示す。具体的な培養条件は、DME/F12培地中, high glucose(1mM L-glutamine)、N2 supplement添加, Antibiotic-Antimicotic添加という条件で、ともに、特殊コート[市販の細胞培養用ディッシュ/プレートを、PORN(poly-L-ornithine)で24時間室温でコート(第1コート)、その後滅菌済み超純水で2回以上洗浄し、LamininをPBSに溶解した第2コート液で、37℃CO2インキュベーター内で24時間コートしたもの]を施した培養用ディッシュ上で培養した。この条件で、両細胞はFGF2というgrowth factor存在下でSox2遺伝子を発現する(図3B、上から2段目)。
細胞増殖を上昇させるため、両細胞に対して、10%FCSと100ng/mL FGF2を添加した神経幹細胞培養用培地と、100ng/mL FGF2および100ng/mL EGF2を添加した神経幹細胞培養用培地、100ng/mL FGF2のみを添加した神経幹細胞培養用培地中で、細胞培養を行った。数日後に全ての条件下から新たな細胞の増殖が開始されたことを確認した。一旦増殖を開始させた神経幹細胞については、10%FCSに加えて20ng/mLのFGF2を存在させることで、未分化性を効率よく維持できる。膵臓幹細胞培地についても最も増殖が促進されたクローンに対し、10%FCSと100ng/mL FGF2を添加した神経幹細胞培養用培地で培養した。両者とも、一週間後にFCSの添加を中止してFGF2のみの添加に切り替えた。なお、神経幹細胞の場合は、FGF2に代えてEGF2を用いても同様に未分化維持に効果があるが、膵臓幹細胞の培養培地中に添加してみても効果は見られなかった(図示せず)。
樹立した成体膵臓幹細胞について、20 ng/mLFGF2を添加した神経幹細胞培養用培地(DME/F12,high glucose (1mM L-glutamine)、N2 supplement添加、Antibiotic-Antimicotic添加)で培養し、継代可能であることも上記実施例3において確認した(図2、P1)。
成体神経幹細胞と共に成体膵臓幹細胞が樹立できたため、両者の分化制御機構の解析を行った。
多能性を保持した未分化状態に保つことはSox2遺伝子の発現により確認できるので、非特許文献4、5に記載される公知の神経幹細胞の分化調節制御機構を参考に、樹立した神経幹細胞及び膵臓幹細胞について、未分化状態と分化状態に分けて免疫染色解析を行った(図3A)。
FGF2存在下では、成体膵臓幹細胞は神経幹細胞と同様にSox2遺伝子を発現し、β細胞が発現するインシュリンやα細胞が発現するGlucagon遺伝子を発現していないことを抗Sox2抗体、抗インシュリン抗体(guinea pig anti-Insulin;1:300;Sigma社製、以下同様。)及び抗Glucagon抗体(mouse anti-Glucagon ;1:300,Immuno社製、以下同様。)を用いる免疫染色法で確認した。
次いで、神経幹細胞及び膵臓幹細胞を神経分化条件下(非特許文献4、5)の神経分化条件下、すなわち1μM のretinoic acid (RA、シグマ社製)、5μMのforskolin(FSK、シグマ社製)及び40 mMのKCl(WAKO社製)を含むDME/F12,high glucose(1mM L-glutamine)、N2 supplement添加、Antibiotic-Antimicotic添加培地(RA+FSK+KCl)を用いて培養すると、β細胞への分化が促進され、インシュリン遺伝子の発現の上昇とともに、細胞表面に神経突起のようなプロセスを伸長させた。両成体幹細胞を神経分化に導く条件(RA+FSK+KCl)下で培養すると、Insulin,β-III tubulin、ソマトスタチン遺伝子の発現が上昇する。
両細胞で、δ細胞特異的なソマトスタチン遺伝子の発現の上昇も抗ソマトスタチン抗体(rat anti-Somatostatin;1:300, Chemicon社製、以下同様。)で確認できた。ソマトスタチンは、膵臓ではδ細胞だが(図3C、下段左、実線で示した細胞。点線の矢印はGlucagon陽性のα細胞)、脳神経系では神経伝達の上で、刺激に対して抑制性の機能を示すinterneuron(インターニューロン)という神経細胞の一種に相当することが分かった(図3C、下段右、海馬のHilus領域内の矢印で示した細胞)。
一方、両細胞をアストロサイト分化条件下(非特許文献4〜6による。)のアストロサイト分化条件下、すなわち50 ng/mLのLIF(WAKO社製)及び50 ng/mLのBMP(WAKO社製)を含むDME/F12,high glucose(1mM L-glutamine)、N2 supplement添加、Antibiotic-Antimicotic添加培地を用いて培養すると、α細胞への分化が促進され、Glucagon遺伝子の発現が上昇した(抗Glucagon抗体により確認)。この際、幾つかの膵島構造が出現し、一部でγ細胞の発現も上昇することがPancreatic polypeptide遺伝子の免疫染色解析から確認できた。γ細胞含有度を高めたければ、オリゴデンドロサイト細胞分化条件(500ng/mL IGF-I(WAKO社製)入りのDME/F12、high glucose (1mM L-glutamine)、N2 supplement添加、Antibiotic-Antimicotic添加培地)を用いる。このように、両成体幹細胞を、グリア細胞に分化させる条件下(グリア細胞誘導;LIF+BMP)で培養すると、グルカゴン(α細胞のマーカー遺伝子)、GFAP(アストロサイト細胞のマーカー遺伝子)、Pancreatic polypeptide(γ細胞のマーカー遺伝子)という遺伝子が上昇することが分かった(図3B)。Pancreatic polypeptide、膵臓ではγ細胞だが(図3C、上段左、実線で示した細胞。点線の矢印はGlucagon陽性のα細胞)、脳神経系ではオリゴデンドロサイト細胞に特異的なGSTπという抗体で共に染色されることが分かった(図3C、上段右、矢印で示した細胞)。
これらの抗体によるタンパク質の発現のみでなく、細胞抽出RNAを用いたRT-PCRからも、成体膵臓幹細胞の未分化状態の維持、β細胞(δ細胞)への誘導、及びα細胞(γ細胞)への誘導が、それぞれ神経幹細胞の未分化性の維持(FGF2存在下)、神経分化誘導(RA+FSK+KCl)、及びアストロサイト分化誘導(グリア細胞誘導;LIF+BMP)条件を疑似する条件で行えることを実証した(図3B)。
実施例3で樹立した膵臓幹細胞に対して、さらに詳細な分子制御機構の解析を行った。Wnt3は脳内の神経新生領域で、アストロサイト細胞(GFAP陽性)が発現する分泌タンパク質で、この効果により神経幹細胞は神経新生を開始し、ニューロブラストと言う神経新生細胞(NeuroD1陽性)を産生する物質であるが、このWnt3が、膵臓の膵島α細胞(GFAP、Glucagon陽性)で発現していることが分かった(図4A、矢印で示した細胞)。
また、膵臓の内分泌系は、脳内神経系と非常に高い相関が有り、β細胞内で新生している細胞は、NeuroD1陽性であるという共通点が有る(図4B−D)。NeuroD1のプロモーター上には、Wnt/βcateninシグナリングで活性化されるβcatenin/TCF/LEF転写因子が認識して結合する配列がヒト−ラット−マウスで保存されている。膵臓幹細胞をβ細胞へ分化誘導する際に、初期神経誘導条件下(ニューロブラスト産生状態)に置くと24時間経過後には、Wnt/βcateninシグナリングで重要となるβcateninタンパク質の安定化が起きていることを、ウエスタンブロッティングで確認した(図4E)。
さらに、NeuroD1遺伝子、インシュリン遺伝子の活性化にWntが必須であり、Wnt3が両遺伝子の活性化を導くことをRT-PCRで確認した(図4F)。
図4Fは、Wnt/βcateninシグナリングの活性化(試薬)でインシュリン遺伝子の発現が上昇し(Wnt3,GSK3beta-inhibitor)、対照的にWnt/βcateninシグナリングの不活性化(DnWnt;ドミナントネガティブWnt,βcatenin shRNA)でインシュリン遺伝子の発現が起きないことを示している。
NeuroD1のプロモーター上のTCF/LEF転写因子結合部位のクロマチンの活性化(Anti-Acetyl HistoneH3)がWnt3で誘導されること、さらにNeuroD1がインシュリン遺伝子の活性化(インシュリン遺伝子のプロモーター上のNeuroD1認識結合部位(E-box))部位へ、直接結合し、クロマチン(染色体)の活性化(Anti-Acetyl HistoneH3)を誘導する)を導くことを示した(図4G)。
これらのことから、成体膵臓幹細胞を未分化状態に保つコントロール因子と共に、その分化制御におけるコントロール因子も、成体神経幹細胞からの神経再生制御機構ときわめて共通性が高いことが実証された。
細胞抽出RNAを用いたRT-PCR(図3B)以外にも、免疫組織染色解析(図3A)からも、脳神経の細胞群(神経幹細胞、神経細胞、オリゴデンドロサイト細胞、アストロサイト細胞)と膵臓内分泌系の細胞群(膵臓幹細胞、β細胞、α細胞、δ細胞、γ細胞)の発現する遺伝子に非常に高い相関が有ることが示された。さらに、図3Fに示すように、インシュリンを産生するβ細胞への分化誘導には、従来の神経促進/誘導薬が転化使用できることが分かった。上述したRA+FSK+KClという神経分化促進条件のみでなく、他の神経分化促進薬剤(RA単独、RA+FSK、VPA、5AzaC、Wnt3などの薬剤)でもインシュリンプロモーターの活性が上昇することが膵臓幹細胞培養系で明らかになった(図3D)。
これは、神経分化を促進する試薬、または神経疾患の治療薬の、膵臓疾患への転化応用の可能性が高いことを示す。
膵臓幹細胞が、膵臓内分泌系β細胞、α細胞、δ細胞、γ細胞に分化することに加え、神経細胞と非常に高い相似性を持つこと、インシュリンは膵臓だけでなく脳内にも産出されており、学習機能の向上等に必要とされていることなどから、膵臓幹細胞と神経幹細胞との間に互換性がある可能性を想定し、樹立した膵臓幹細胞が脳内神経系に組み込まれるかどうかを調べた。移植する膵臓幹細胞が追跡できるよう、マーカーとしてGFP(蛍光を発するタンパク質)を選択した。GFP発現カセットがゲノムに安定に組み込まれた膵臓幹細胞株を作製した。106-107個の細胞を、Fisher344成体ラット(7−8週齢)の脳海馬領域に、Stereotaxic脳固定装置を用いてマイクロインジェクションした(図5A)。5週間飼育後、脳を抽出してGFPを発現している膵臓幹細胞由来の移植生細胞を、マイクロトームを用いて作製した脳切片上で探索した。共焦点顕微鏡を用いた免疫組織染色解析により、成体膵臓幹細胞が、分化制御機構の非常に似通った脳内の神経系に効率よく取り込まれること、神経細胞に転移分化できることがin vivoで示された(図5B)。
以上の研究成果から、胎生期の発生段階で遠い隔たりのある外胚葉系の神経細胞と、内胚葉系の膵細胞が、成体でインシュリンを必要とする脳内(学習機能)と膵臓(血糖値低下)の内分泌系器官で、『インシュリンを産生』するという共通の役割を満たすため、非常に良く似た制御機構によって成体幹細胞から生み出されていることと、その相互利用が双方で可能であることが実際にin vivoで証明された。
膵臓幹細胞からのβ細胞分化制御が、神経幹細胞からの神経細胞分化制御と非常に高い相似性を持つこと、インシュリンは膵臓だけでなく脳内にも産出されており、本来学習機能の向上等に必要とされていることなどから、神経幹細胞が膵臓の内分泌系に組み込まれるかどうか(転移分化)、移植実験を行った。移植する神経幹細胞が追跡できるよう、マーカーとしてGFP(蛍光を発するタンパク質)を選択した。GFP発現カセットがゲノムに安定に組み込まれた神経幹細胞株を作製した。107-108個の細胞を、Fisher344成体ラット(7−8週齢)の膵臓にマイクロインジェクションした(図5A)。5週間飼育後、膵臓を抽出してGFPを発現している神経幹細胞由来の移植生細胞を、マイクロトームを用いて作製した脳切片上で探索した。共焦点顕微鏡を用いた免疫組織染色解析により、成体神経幹細胞が、分化制御機構の非常に似通った膵臓内分泌系に効率よく取り込まれること、インシュリンを産生するβ細胞に転移分化できることがin vivoで示された(図6C)。
さらに、糖尿病に対する治療効果を調べるために、神経幹細胞をII型糖尿病のモデルラット(GKラット)の膵臓に移植した。効率よい移植を促すために、コラーゲンシート上の培養を行い(図6B)、神経幹細胞、ニューロブラスト(神経分化の初期状態)の培養が問題なく行えること、およびコラーゲンシート上でも、インシュリンプロモーター活性が神経分化誘導条件下で、上昇することを確認した(図6B、右グラフ)。この神経幹細胞などを培養したコラーゲンシートを糖尿病のモデルラットの膵臓に移植し、血糖値の変遷を測定したグラフを図6Cに示す。図6Cから分かるように、神経幹細胞、ニューロブラストを移植した全ての系で、手術後に血糖値の低下が確認された。さらに、コラーゲンシートが無い場合に比べ、コラーゲンシート上のニューロブラストを移植したケースが、最も効率の良い血糖値の低下が見られた。
以上の研究成果から、胎生期の発生段階で遠い隔たりのある外胚葉系の神経細胞と、内胚葉系の膵細胞が、成体でインシュリンを必要とする脳内(学習機能)と膵臓(血糖値低下)の内分泌系器官で、『インシュリンを産生』するという共通の役割を満たすため、非常に良く似た制御機構によって成体幹細胞から生み出されていることと、神経幹細胞の糖尿病治療への利用が可能であることが実際に疾患モデル動物を用いたin vivoレベルで証明された。
糖尿病に対する治療効果を調べるために、神経幹細胞をII型糖尿病のモデルラット(GKラット)の膵臓に移植した。前記参考例3と同様に、効率よい移植を促すために、コラーゲンシート上の培養を行い(図6B、同様)、図6Cの短期間試験で効果的な血糖値低下作用を示したニューロブラスト(神経分化の初期状態)の移植で試験を開始した。コラーゲンシート上にニューロブラストを培養し、複数枚数(3シート、t2×10の8乗個の細胞数に最終的に相当)重ねたものを糖尿病のモデルラットの膵臓の膵島部に移植し、血糖値の変遷を測定したグラフを図に示す。図6Cと同様、ニューロブラストを移植した系で、手術後に血糖値の低下が確認された。さらに、この効果は3ヶ月の長期の試験に対しても有用であることが判明した。
以上の研究成果から、成体神経幹細胞の培養系の糖尿病治療への利用が、疾患モデル動物を用いたin vivoレベルで証明された。(図8)
また、本参考例により、成体神経幹細胞であっても、本発明の神経分化誘導剤を用いて前駆β細胞に分化させた後に、膵臓組織への移植を行うことの治療上の有効性が確認されたのであるから、成体膵臓幹細胞と成体神経幹細胞との間は完全に互換性があることが証明できたことになる。つまり、成体膵臓幹細胞に対しても、この参考例4と同様な手法、すなわち、コラーゲンシート上で神経細胞分化誘導剤により前駆β細胞にまで分化させた状態で、糖尿病患者もしくは神経性疾患患者の膵臓組織もしくは神経組織に対する移植治療を行えば、同様の治療効果が十分に期待できることである。
Claims (17)
- 成体由来の膵臓組織からの膵臓幹細胞の樹立方法であって、下記の(a)〜(c)の工程を含む成体膵臓幹細胞の樹立方法;
(a)膵臓幹細胞を含む膵臓組織を、コラゲナーゼを添加した[DME/F12,high glucose(1mM L-glutamine),N2 supplement添加,Antibiotic-Antimicotic添加]培地である神経幹細胞用培養培地に懸濁する工程、
(b)膵臓幹細胞を、神経幹細胞培養用ディッシュに播種し、EGFを含まず、FCS及びFGF2を含有する[DME/F12,high glucose(1mM L-glutamine),N2 supplement添加,Antibiotic-Antimicotic添加]培地である神経幹細胞用培養培地で膵臓幹細胞を増殖させる工程、
(c)EGF及びFCSを含まず、FGF2を含有する[DME/F12,high glucose(1mM L-glutamine),N2 supplement添加,Antibiotic-Antimicotic添加]培地である神経幹細胞用培養培地で培養する工程。 - 請求項1に記載の樹立方法により得られた成体膵臓幹細胞であって、sox-2遺伝子を発現し、かつ単独でα細胞、β細胞、δ細胞及びγ細胞への分化能を有している成体膵臓幹細胞。
- 請求項2に記載の成体膵臓幹細胞を、EGF及びFCSを含まず、FGF2を含有する[DME/F12,high glucose(1mM L-glutamine),N2 supplement添加,Antibiotic-Antimicotic添加]培地である神経幹細胞培養用培地で培養することを特徴とする、成体膵臓幹細胞を未分化状態に維持する方法。
- 請求項2に記載の成体膵臓幹細胞を、神経細胞分化条件下である、RA、RA+FSK、RA+FSK+KCl、Wnt3a、GSK3βインヒビター、リチウム塩、及びβカテニンから選択された少なくとも1種の神経細胞分化誘導剤を添加した[DME/F12,high glucose(1mM L-glutamine),N2 supplement添加,Antibiotic-Antimicotic添加]培地中で培養することを特徴とする、成体膵臓幹細胞をβ細胞及びδ細胞へ分化誘導する分化誘導方法。
- 請求項2に記載の成体膵臓幹細胞を、抑制性のインターニューロンを作製する神経細胞分化条件下である、[RA+FSK+KCl]を添加した[DME/F12,high glucose(1mM L-glutamine),N2 supplement添加,Antibiotic-Antimicotic添加]培地中で培養することでδ細胞の含有度を高めることを特徴とする、請求項4に記載の分化誘導方法。
- 請求項2に記載の成体膵臓幹細胞を、アストロサイト細胞分化条件下である5%FCS又はLIFとBMP2を添加した[DME/F12,high glucose(1mM L-glutamine),N2 supplement添加,Antibiotic-Antimicotic添加]培地中で培養することを特徴とする、成体膵臓幹細胞をα細胞及びγ細胞へ分化誘導する分化誘導方法。
- 請求項2に記載の成体膵臓幹細胞を、オリゴデンドロサイト細胞を誘導するグリア細胞分化条件下である1%FCS又はIGF1を添加した[DME/F12,high glucose(1mM L-glutamine),N2 supplement添加,Antibiotic-Antimicotic添加]培地中で培養することでγ細胞含有度を高めることを特徴とする、請求項6に記載の分化誘導方法。
- 請求項2に記載の成体膵臓幹細胞を含むことを特徴とする、膵臓細胞再生移植用キット。
- さらに神経細胞分化誘導剤を含むことを特徴とする、請求項8に記載の膵臓細胞再生移植用キット。
- 生体適合性シート表面に配置した請求項2に記載の成体膵臓幹細胞と、RA、RA+FSK、RA+FSK+KCl、Wnt3a、GSK3βインヒビター、リチウム塩、及びβカテニンから選択された少なくとも1種の神経細胞分化誘導剤とを含むことを特徴とする、膵臓細胞再生移植用キット。
- 生体適合性シート表面に配置した請求項2に記載の成体膵臓幹細胞と共に、RA、RA+FSK、RA+FSK+KCl、Wnt3a、GSK3βインヒビター、リチウム塩、VPA、5AzaC及びβカテニンから選択された少なくとも1種の神経細胞分化誘導剤を有効成分として含む、糖尿病治療用組成物。
- 前記成体膵臓幹細胞が、あらかじめ前記生体適合性シート表面上で、RA、RA+FSK、RA+FSK+KCl、Wnt3a、GSK3βインヒビター、リチウム塩、VPA、5AzaC及びβカテニンから選択された少なくとも1種の神経細胞分化誘導剤を添加した[DME/F12,high glucose(1mM L-glutamine),N2 supplement添加,Antibiotic-Antimicotic添加]培地中で培養し、β前駆細胞にまで分化させておいた状態の細胞であることを特徴とする、請求項11に記載の糖尿病治療用組成物。
- 請求項2に記載の成体膵臓幹細胞を含むことを特徴とする、神経細胞再生移植用キット。
- さらに神経細胞分化誘導剤を含むことを特徴とする、請求項13に記載の神経細胞再生移植用キット。
- 前記神経細胞分化誘導剤が、RA、RA+FSK、RA+FSK+KCl、Wnt3a、GSK3βインヒビター、リチウム塩、VPA、5AzaC及びβカテニンから選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項14に記載の神経細胞再生移植用キット。
- 生体適合性シート表面に配置した請求項2に記載の成体膵臓幹細胞と共に、RA、RA+FSK、RA+FSK+KCl、Wnt3a、GSK3βインヒビター、リチウム塩、VPA、5AzaC及びβカテニンから選択された少なくとも1種の神経細胞分化誘導剤を含むことを特徴とする、神経性疾患治療用組成物。
- 前記成体膵臓幹細胞が、あらかじめ前記生体適合性シート表面上で、RA、RA+FSK、RA+F
SK+KCl、Wnt3a、GSK3βインヒビター、リチウム塩、VPA、5AzaC及びβカテニンから選択された少なくとも1種の神経細胞分化誘導剤を添加した[DME/F12,high glucose(1mM L-glutamine),N2 supplement添加,Antibiotic-Antimicotic添加]培地中で培養し、β前駆細胞にまで分化させておいた状態の細胞であることを特徴とする、請求項16に記載の神経性疾患治療用組成物。
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