第1の発明は、室内機に、吹出口から吹き出される空気の向きを変更する風向変更羽根と、障害物の有無を検知する障害物検知装置とを設け、障害物検知装置の検知結果に基づいて風向変更羽根を制御して空調運転を行う空気調和機であって、障害物検知装置は、設定された受信可能期間において、自身の送信波の反射波を受信する超音波センサを有し、受信可能期間を、室内機の設置高さ、室内温度及び気圧の少なくとも一つに応じて設定するようにしたものである。
この構成により、障害物の位置を正確に認識することができ、快適空調あるいは空調効率の向上を達成することができる。
第2の発明は、室内機設置空間に、室内機から見た上下方向の角度及び左右方向の角度で決定されるアドレスを設定し、受信可能期間を、アドレスごとに設定することで、第1の発明と同様の効果を奏することができる。
第3の発明は、床面からの高さに二つの閾値を設定し、超音波センサから送信された超音波の伝搬時間に基づいて決定される二つのマスク時間を二つの閾値に対応して各アドレスに設定し、二つのマスク時間に挟まれた期間を受信可能期間とすることで、第1の発明と同様の効果を奏することができる。
第4の発明は、空気調和機を遠隔操作する遠隔操作装置に、室内機の設置高さを切り換える室内機高さ切換手段を設けることにより、空気調和機の据え付け時に、室内機高さ切換手段を適宜切り換えることで、室内機の設置高さを容易に設定することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<空気調和機の全体構成>
一般家庭で使用される空気調和機は、通常冷媒配管で互いに接続された室外機と室内機とで構成されており、図1乃至図4は、本発明に係る空気調和機の室内機を示している。
室内機は、本体2と、本体2の前面開口部2aを開閉自在の可動前面パネル(以下、単に前面パネルという)4を有しており、空気調和機停止時は、前面パネル4は本体2に密着して前面開口部2aを閉じているのに対し、空気調和機運転時は、前面パネル4は本体2から離反する方向に移動して前面開口部2aを開放する。なお、図1及び図2は前面パネル4が前面開口部2aを閉じた状態を示しており、図3及び図4は前面パネル4が前面開口部2aを開放した状態を示している。
図1乃至図4に示されるように、本体2の内部には、前面開口部2a及び上面開口部2bから取り入れられた室内空気を熱交換する熱交換器6と、熱交換器6で熱交換された空気を搬送するための室内ファン8と、室内ファン8により搬送された空気を室内に吹き出す吹出口10を開閉するとともに空気の吹き出し方向を上下に変更する上下風向変更羽根(以下、単に「上下羽根」という)12と、空気の吹き出し方向を左右に変更する左右風向変更羽根(以下、単に「左右羽根」という)14とを備えており、前面開口部2a及び上面開口部2bと熱交換器6との間には、前面開口部2a及び上面開口部2bから取り入れられた室内空気に含まれる塵埃を除去するためのフィルタ16が設けられている。
また、前面パネル4上部は、その両端部に設けられた2本のアーム18,20を介して本体2上部に連結されており、アーム18に連結された駆動モータ(図示せず)を駆動制御することで、空気調和機運転時、前面パネル4は空気調和機停止時の位置(前面開口部2aの閉塞位置)から前方斜め上方に向かって移動する。
さらに、上下羽根12は、上羽根12aと下羽根12bとで構成されており、それぞれ本体2下部に揺動自在に取り付けられている。上羽根12a及び下羽根12bは、別々の駆動源(例えば、ステッピングモータ)に連結されており、室内機に内蔵された制御装置(後述する第1の基板48、例えばマイコン)によりそれぞれ独立して角度制御される。また、図3及び図4から明らかなように、下羽根12bの変更可能な角度範囲は、上羽根12aの変更可能な角度範囲より大きく設定されている。
なお、上羽根12a及び下羽根12bの駆動方法については後述する。また、上下羽根12は3枚以上の上下羽根で構成することも可能で、この場合、少なくとも2枚(特に、最も上方に位置する羽根と最も下方に位置する羽根)は独立して角度制御できるのが好ましい。
また、左右羽根14は、室内機の中心から左右に5枚ずつ配置された合計10枚の羽根で構成されており、それぞれ本体2の下部に揺動自在に取り付けられている。また、左右の5枚を一つの単位として別々の駆動源(例えば、ステッピングモータ)に連結されており、室内機に内蔵された制御装置により左右5枚の羽根がそれぞれ独立して角度制御される。なお、左右羽根14の駆動方法についても後述する。
<人体検知装置の構成>
図1に示されるように、前面パネル4の上部には、複数(例えば、三つ)の固定式センサユニット24,26,28が人体検知装置として取り付けられており、これらのセンサユニット24,26,28は、図3及び図4に示されるように、センサホルダ36に保持されている。
各センサユニット24,26,28は、回路基板と、回路基板に取り付けられたレンズと、レンズの内部に実装された人体検知センサとで構成されている。また、人体検知センサは、例えば人体から放射される赤外線を検知することにより人の在否を検知する焦電型赤外線センサにより構成されており、赤外線センサが検知する赤外線量の変化に応じて出力されるパルス信号に基づいて回路基板により人の在否が判定される。すなわち、回路基板は人の在否判定を行う在否判定手段として作用する。
<人体検知装置による人位置推定>
図5は、センサユニット24,26,28で検知される人位置判別領域を示しており、センサユニット24,26,28は、それぞれ次の領域に人がいるかどうかを検知することができる。
センサユニット24:領域A+B+C+D
センサユニット26:領域B+C+E+F
センサユニット28:領域C+D+F+G
すなわち、本発明に係る空気調和機の室内機においては、各センサユニット24,26,28で検知できる領域が一部重なっており、領域A〜Gの数よりも少ない数のセンサユニットを使用して各領域A〜Gにおける人の在否を検知するようにしている。表1は、各センサユニット24,26,28の出力と、在判定領域(人がいると判定された領域)との関係を示している。なお、表1及び以下の説明ではセンサユニット24,26,28を第1のセンサ24、第2のセンサ26、第3のセンサ28という。
図6は、第1乃至第3のセンサ24,26,28を使用して、領域A〜Gの各々に後述する領域特性を設定するためのフローチャートで、図7は、第1乃至第3のセンサ24,26,28を使用して、領域A〜Gのどの領域に人がいるか否かを判定するフローチャートであり、これらのフローチャートを参照しながら人の位置判定方法について以下説明する。
ステップS1において、所定の周期T1(例えば、5秒)で各領域における人の在否がまず判定されるが、この判定方法につき、領域A,B,Cにおける人の在否を判定する場合を例にとり、図8を参照しながら説明する。
図8に示されるように、時間t1の直前の周期T1において第1乃至第3のセンサ24,26,28がいずれもOFF(パルス無し)の場合、時間t1において領域A,B,Cに人はいないと判定する(A=0,B=0,C=0)。次に、時間t1から周期T1後の時間t2までの間に第1のセンサ24のみON信号を出力し(パルス有り)、第2及び第3のセンサ26,28がOFFの場合、時間t2において領域Aに人がいて、領域B,Cには人がいないと判定する(A=1,B=0,C=0)。さらに、時間t2から周期T1後の時間t3までの間に第1及び第2のセンサ24,26がON信号を出力し、第3のセンサ28がOFFの場合、時間t3において領域Bに人がいて、領域A、Cには人がいないと判定する(A=0,B=1,C=0)。以下、同様に周期T1毎に各領域A,B,Cにおける人の在否が判定される。
この判定結果に基づいて各領域A〜Gを、人が良くいる第1の領域(良くいる場所)、人のいる時間が短い第2の領域(人が単に通過する領域、滞在時間の短い領域等の通過領域)、人のいる時間が非常に短い第3の領域(壁、窓等人が殆ど行かない非生活領域)とに判別する。以下、第1の領域、第2の領域、第3の領域をそれぞれ、生活区分I、生活区分II、生活区分IIIといい、生活区分I、生活区分II、生活区分IIIはそれぞれ、領域特性Iの領域、領域特性IIの領域、領域特性IIIの領域ということもできる。また、生活区分I(領域特性I)、生活区分II(領域特性II)を併せて生活領域(人が生活する領域)とし、これに対し、生活区分III(領域特性III)を非生活領域(人が生活しない領域)とし、人の在否の頻度により生活の領域を大きく分類してもよい。
この判別は、図6のフローチャートにおけるステップS3以降で行われ、この判別方法について図9及び図10を参照しながら説明する。
図9は、一つの和室とLD(居間兼食事室)と台所とからなる1LDKのLDに本発明に係る空気調和機の室内機を設置した場合を示しており、図9における楕円で示される領域は被験者が申告した良くいる場所を示している。
上述したように、周期T1毎に各領域A〜Gにおける人の在否が判定されるが、周期T1の反応結果(判定)として1(反応有り)あるいは0(反応無し)を出力し、これを複数回繰り返した後、ステップS2において、全てのセンサ出力をクリアする。
ステップS3において、所定の空調機の累積運転時間が経過したかどうかを判定する。ステップS3において所定時間が経過していないと判定されると、ステップS1に戻る一方、所定時間が経過したと判定されると、各領域A〜Gにおける当該所定時間に累積した反応結果を二つの閾値と比較することにより各領域A〜Gをそれぞれ生活区分I〜IIIのいずれかに判別する。
長期累積結果を示す図10を参照してさらに詳述すると、第1の閾値及び第1の閾値より小さい第2の閾値を設定して、ステップS4において、各領域A〜Gの長期累積結果が第1の閾値より多いかどうかを判定し、多いと判定された領域はステップS5において生活区分Iと判別する。また、ステップS4において、各領域A〜Gの長期累積結果が第1の閾値より少ないと判定されると、ステップS6において、各領域A〜Gの長期累積結果が第2の閾値より多いかどうかを判定し、多いと判定された領域は、ステップS7において生活区分IIと判別する一方、少ないと判定された領域は、ステップS8において生活区分IIIと判別する。
図10の例では、領域C,D,Gが生活区分Iとして判別され、領域B,Fが生活区分IIとして判別され、領域A,Eが生活区分IIIとして判別される。
また、図11は別の1LDKのLDに本発明に係る空気調和機の室内機を設置した場合を示しており、図12はこの場合の長期累積結果を元に各領域A〜Gを判別した結果を示している。図11の例では、領域B,C,Eが生活区分Iとして判別され、領域A,Fが生活区分IIとして判別され、領域D,Gが生活区分IIIとして判別される。
なお、上述した領域特性(生活区分)の判別は所定時間毎に繰り返されるが、判別すべき室内に配置されたソファー、食卓等を移動することがない限り、判別結果が変わることは殆どない。
次に、図7のフローチャートを参照しながら、各領域A〜Gにおける人の在否の最終判定について説明する。
ステップS21〜S22は、上述した図6のフローチャートにおけるステップS1〜S2と同じなので、その説明は省略する。ステップS23において、所定数M(例えば、15回)の周期T1の反応結果が得られたかどうかが判定され、周期T1は所定数Mに達していないと判定されると、ステップS21に戻る一方、周期T1が所定数Mに達したと判定されると、ステップS24において、周期T1×Mにおける反応結果の合計を累積反応期間回数として、1回分の累積反応期間回数を算出する。この累積反応期間回数の算出を複数回繰り返し、ステップS25において、所定回数分(例えば、N=4)の累積反応期間回数の算出結果が得られたかどうかが判定され、所定回数に達していないと判定されると、ステップS21に戻る一方、所定回数に達したと判定されると、ステップS26において、既に判別した領域特性と所定回数分の累積反応期間回数を元に各領域A〜Gにおける人の在否を推定する。
なお、ステップS27において累積反応期間回数の算出回数(N)から1を減算してステップS21に戻ることで、所定回数分の累積反応期間回数の算出が繰り返し行われることになる。
表2は最新の1回分(時間T1×M)の反応結果の履歴を示しており、表2中、例えばΣA0は領域Aにおける1回分の累積反応期間回数を意味している。
ここで、ΣA0の直前の1回分の累積反応期間回数をΣA1、さらにその前の1回分の累積反応期間回数をΣA2・・・とし、N=4の場合、過去4回分の履歴(ΣA4、ΣA3、ΣA2、ΣA1)のうち、生活区分Iについては、1回以上の累積反応期間回数が1回でもあれば、人がいると判定する。また、生活区分IIについては、過去4回の履歴のうち、1回以上の累積反応期間回数が2回以上あれば、人がいると判定するとともに、生活区分IIIについては、過去4回の履歴のうち、2回以上の累積反応期間回数が3回以上あれば、人がいると判定する。
次に、上述した人の在否判定から時間T1×M後には、同様に過去の4回分の履歴と生活区分と累積反応期間回数から人の在否の推定が行われる。
すなわち、本発明に係る空気調和機の室内機においては、判別領域A〜Gの数よりも少ない数のセンサを使用して人の在否を推定することから、所定周期毎の推定では人の位置を誤る可能性があるので、重なり領域かどうかに関わらず単独の所定周期では人の位置推定を行うことを避け、所定周期毎の領域判定結果を長期累積した領域特性と、所定周期毎の領域判定結果をN回分累積し、求めた各領域の累積反応期間回数の過去の履歴から人の所在地を推定することで、確率の高い人の位置推定結果を得るようにしている。
表3は、このようにして人の在否を判定し、T1=5秒、M=12回に設定した場合の在推定に要する時間、不在推定に要する時間を示している。
このようにして、本発明に係る空気調和機の室内機により空調すべき領域を第1乃至第3のセンサ24,26,28により複数の領域A〜Gに区分した後、各領域A〜Gの領域特性(生活区分I〜III)を決定し、さらに各領域A〜Gの領域特性に応じて在推定に要する時間、不在推定に要する時間を変更するようにしている。
すなわち、空調設定を変更した後、風が届くまでには1分程度要することから、短時間(例えば、数秒)で空調設定を変更しても快適性を損なうのみならず、人がすぐいなくなるような場所に対しては、省エネの観点からあまり空調を行わないほうが好ましい。そこで、各領域A〜Gにおける人の在否をまず検知し、特に人がいる領域の空調設定を最適化している。
詳述すると、生活区分IIと判別された領域の在否推定に要する時間を標準として、生活区分Iと判別された領域では、生活区分IIと判別された領域より短い時間間隔で人の存在が推定されるのに対し、その領域から人がいなくなった場合には、生活区分IIと判別された領域より長い時間間隔で人の不存在を推定することにより、在推定に要する時間を短く、不在推定に要する時間は長く設定されることになる。逆に、生活区分IIIと判別された領域では、生活区分IIと判別された領域より長い時間間隔で人の存在が推定されるのに対し、その領域から人がいなくなった場合には、生活区分IIと判別された領域より短い時間間隔で人の不存在を推定することにより、在推定に要する時間を長く、不在推定に要する時間は短く設定されることになる。さらに、上述したように長期累積結果によりそれぞれの領域の生活区分は変わり、それに応じて、在推定に要する時間や不在推定に要する時間も可変設定されることになる。
<障害物検知装置の構成>
図1に示されるように、本体2の片側(正面から見て左側)の下部には、障害物検知装置30が設けられており、この障害物検知装置30について図13を参照しながら説明する。なお、本明細書で使用する「障害物」という用語は、室内機の吹出口10から吹き出され居住者に快適空間を提供するための空気の流れを妨げる物全般を指しており、例えばテーブルやソファー等の家具、テレビ、オーディオ等の居住者以外の物を総称したものである。
障害物検知装置30は、距離検知手段としての超音波式距離センサ(以下、単に「超音波センサ」という)32と、超音波センサ32を回転自在に支承する球状の支持体34と、超音波センサ32の音波出口方向に位置する支持体34に形成されたホーン36と、超音波センサ32の向きを変えて距離検知方向を変更するための距離検知方向変更手段(駆動手段)とを備えている。ホーン36は、超音波センサ32が送信した超音波の感度を向上させるとともに指向性を強くして障害物検知精度を向上させるためのものである。
また、支持体34は、水平(横)回転用回転軸40と、水平回転用回転軸40と直交する方向に延びる垂直(縦)回転用回転軸42を有し、水平回転用回転軸40は水平回転用モータ44に連結されて駆動され、垂直回転用回転軸42は垂直回転用モータ46に連結されて駆動される。すなわち、距離検知方向変更手段は、水平回転用モータ44、垂直回転用モータ46等により構成され、超音波センサ32の方向角度を2次元で変更することができるとともに、超音波センサ32の向いている方向角度を認識することができる。
次に、距離検知手段としての超音波センサ32の作用を説明する。
本実施の形態における超音波センサ32は、超音波送信部と受信部を兼用しており、超音波パルスを送信して、超音波パルスが障害物等に当たると、反射して、この反射波を超音波センサ32で受信する。この送信から受信までの時間をt、音速をCとすると、超音波センサ32から障害物までの距離DはD=Ct/2で表される。なお、超音波センサ32の超音波送信部と受信部が別体の場合も、原理的あるいは機能的にはなんの変わりもなく、本実施の形態においても採用できる。
また、超音波センサ32は、床面からの高さをHとすると、H=約2mの高さに通常設置される。
さらに、距離検知方向変更手段により超音波センサ32の向いている方向を、垂直方向の角度(俯角、水平線から下方向に測定した角度)α、水平方向の角度(室内機から見て左側の基準線(例えば、正面から左側に80度)から右向きに測定した角度)βとして認識することができる。ここで、ある方向における障害物までの距離Dが、D=H/sinαのとき、その障害物は床面上にあるということがわかり、超音波センサ32によりその方向の床面が見通せるということになる。
したがって、垂直方向の角度αと水平方向の角度βを所定の角度間隔で変化させて超音波センサ32に検知動作(走査)を行わせることで、居住空間における人や物の位置を認識することができる。
本実施の形態においては、超音波センサ32により居住空間の床面を垂直方向の角度αと水平方向の角度βに基づき、図14に示されるように細分化し、これらの領域の各々を障害物位置判別領域あるいは「ポジション」と定義し、どのポジションに障害物が存在しているかを判別するようにしている。なお、図14に示される全ポジションは、図5に示される人位置判別領域の全領域と略一致しており、図5の領域境界を図14のポジション境界に略一致させ、領域及びポジションを次のように対応させることで、後述する空調制御を容易に行うことができ、記憶させるメモリを極力少なくしている。
領域A:ポジションA1+A2+A3
領域B:ポジションB1+B2
領域C:ポジションC1+C2
領域D:ポジションD1+D2
領域E:ポジションE1+E2
領域F:ポジションF1+F2
領域G:ポジションG1+G2
なお、図14の領域分割は、ポジションの領域数を人位置判別領域の領域数より多く設定しており、人位置判別領域の各々に少なくとも二つのポジションが属し、これら少なくとも二つの障害物位置判別領域を室内機から見て左右に配置しているが、各人位置判別領域に少なくとも一つのポジションが属するように領域分割して、空調制御を行うこともできる。
また、図14の領域分割は、複数の人位置判別領域の各々が、室内機までの距離に応じて区分され、室内機に近い領域の人位置判別領域に属するポジションの領域数を遠い領域の人位置判別領域に属するポジションの領域数より多く設定しているが、室内機からの距離にかかわらず、各人位置判別領域に属するポジション数を同数にしてもよい。
<障害物検知装置の検知動作及びデータ処理>
上述したように、本発明に係る空気調和機は、人体検知装置により領域A〜Gにおける人の在否を検知するとともに、障害物検知装置によりポジションA1〜G2における障害物の有無を検知し、人体検知装置の検知信号(検知結果)と障害物検知装置の検知信号(検知結果)に基づいて、風向変更手段である上下羽根12及び左右羽根14を駆動制御することにより、快適空間を提供するようにしている。
人体検知センサは、例えば人体から放射される赤外線を検知することにより人の在否を検知することができるのに対し、障害物検知装置は、送信した超音波の反射波を受信することで障害物の距離を検知していることから、人と障害物を判別することができない。
人を障害物として誤認すると、人がいる領域を空調できなかったり、人に空調風(気流)を直接当ててしまうこともあり、結果として非効率な空調制御あるいは人に不快感を与える空調制御となるおそれがある。
そこで、障害物検知装置について、以下に説明するデータ処理を行って障害物のみを検知するようにしている。
まず、図15を参照しながら超音波センサ32の駆動方法を説明する。
図15に示されるように、本体2には、互いに電気的に接続された三つの基板48,50,52が内蔵されており、本体2に取り付けられた前面パネル4,上下羽根12,左右羽根14等の可動部は第1の基板48により制御され、第3の基板52は、超音波センサ32と一体的に実装されている。
また、第2の基板50には、センサ入力増幅部54と、帯域増幅部56と、比較部58と、ラッチ回路部60とが設けられ、第1の基板48から出力された超音波送信信号はセンサ入力増幅部54に入力され、センサ入力増幅部54で電圧増幅した後、第3の基板52に入力される。超音波センサ32は、入力された信号に基づいて、後述する各アドレスに向かって超音波を送信し、その反射波を受信して帯域増幅部56に出力する。超音波送信信号としては、例えば10μsでON/OFFを繰り返す50%デューティの50kHzの信号を使用し、帯域増幅部56では、50kHz近傍の信号を増幅する。
帯域増幅部56の出力信号は比較部58に入力され、比較部58に設定された所定の閾値と比較される。比較部58は、帯域増幅部56の出力信号が閾値より大きい場合にLレベル(ローレベル)の信号をラッチ回路部60に出力する一方、帯域増幅部56の出力信号が閾値より小さい場合にHレベル(ハイレベル)の信号をラッチ回路部60に出力する。また、第1の基板48は、ノイズを分離するための受信マスク信号をラッチ回路部60に出力する。
なお、図15は、超音波センサ32が送受信一体型のものを示しているが、送信機と受信機が別体のものを使用することも勿論可能である。
図16は、RS(リセットセット)フリップフロップにより構成されたラッチ回路部60を示しており、表4は、二つの入力(比較部58からの入力(RESET入力)と第1の基板48からの入力(SET入力))に基づいて決定されるラッチ回路部60からの出力(Q)を示している。表4中、H
*は、RESET入力とSET入力が共にLレベルの場合は、出力はHレベルとなり、RESET入力とSET入力が共にHレベルの場合は、どちらが先にHレベルになるかどうかで出力レベルが異なることを示している。
また、図17は、各信号の状態を示す概略のタイミングチャートを示しており、図17に示されるように、空気調和機の運転開始時には、比較部58からラッチ回路部60にはHレベルの信号が入力される。また、第1の基板48から第2の基板50のセンサ入力増幅部54に超音波送信信号が出力され、センサ入力増幅部54からの信号が第3の基板52に入力されると、超音波センサ32は設定されたアドレスに向かって超音波を送信する。
また、超音波送信信号の送信直後に周囲環境からのノイズの影響を受ける可能性があり、ノイズの影響がある場合、帯域増幅部56を介して比較部58に入力される。比較部58では、入力された信号を予め設定された閾値と比較し、閾値より大きい場合には、Lレベルの信号をラッチ回路部60に出力する。しかしながら、このとき比較部58に入力された信号は居住空間からの反射波を超音波センサ32が受信して生成された信号ではないことから、超音波送信信号の送信から所定のセンサ出力マスク時間を設定し、センサ出力マスク時間中は、Lレベルの受信マスク信号を第1の基板48から第2の基板50のラッチ回路部60に出力するようにしている。
したがって、ラッチ回路部60から第1の基板48に出力される超音波受信信号は、Hレベルを維持することになる。
一方、超音波センサ32から送信された超音波が居住空間で反射し、この反射波(第1波)を超音波センサ32が受信し、帯域増幅部56を介して比較部58に入力された信号が閾値より大きい場合にも、同様にLレベルの信号をラッチ回路部60に出力する。しかしながら、センサ出力マスク時間は、超音波送信から反射波受信時までの時間間隔より短く設定されていることから、このときの受信マスク信号はHレベルとなっているので、ラッチ回路部60から第1の基板48に出力される超音波受信信号は、Lレベルとなる。
超音波受信信号がHレベルを維持している時間は、超音波センサ32が超音波を送信して、その反射波(第1波)を受信するまでの時間tを意味しているから、上述したように、超音波センサ32から障害物までの距離Dは、時間tと音速CをD=Ct/2に当てはめることにより求められる。
また、あるアドレスで所定の計測、演算が完了すると、第1の基板48は、超音波センサ水平駆動用信号を水平回転用モータドライバ62に送信して水平回転用モータ44を駆動するとともに、超音波センサ垂直駆動用信号を垂直回転用モータドライバ64に送信して垂直回転用モータ46を駆動することで、計測すべきアドレスを変更する。
表5におけるi及びjは、計測すべきアドレスを示しており、垂直方向の角度及び水平方向の角度は、上述した俯角α及び室内機から見て左側の基準線から右向きに測定した角度βをそれぞれ示している。すなわち、室内機から見て、垂直方向に5度〜80度、水平方向に10度〜170度の範囲で各アドレスを設定し、超音波センサ32は各アドレスを計測し、居住空間を走査する。
なお、超音波センサ32による居住空間の全走査は、空気調和機の運転開始時と運転停止時に分けて行われ、表6は超音波センサ32の走査順を示している。
すなわち、空気調和機の運転開始時には、アドレス[0,0]からアドレス[32,0]までの各アドレスでこの順番に距離測定(障害物の位置検知)を行い、次にアドレス[32,1]からアドレス[0,1]までの各アドレスでこの順番に距離測定を行って、空気調和機の運転開始時の走査を終了する。
一方、空気調和機の運転停止時には、アドレス[0,2]からアドレス[32,2]までの各アドレスでこの順番に距離測定を行い、次にアドレス[32,3]からアドレス[0,3]までの各アドレスでこの順番に距離測定を行い、これを繰り返してアドレス[0,15]での距離測定が終了すると、空気調和機の運転停止時の走査を終了する。
このように、超音波センサ32による居住空間の全走査を、空気調和機の運転開始時と運転停止時に分けて行うようにしたのは、障害物の有無判定を効率的に行うためである。すなわち、運転停止時は、圧縮機等の可動要素が全て停止しており、空気調和機の運転開始時に比べノイズを受けにくいことから、超音波センサ32による距離測定に比較的好ましい環境と言えるが、居住空間の全走査を空気調和機の運転停止時にのみ行うと、運転開始時に超音波センサ32が全く反応しないことになり、居住者に不信感を与えるばかりでなく、運転停止後の走査時間が長くなるからである。
また、空気調和機の運転開始時の走査を、俯角10度以内に制限したのは、空気調和機の運転開始時には人がいる可能性が高く、人を検知しない可能性が高い領域のみ、すなわち壁がある領域を走査することで、計測データを有効利用できるからである(人は障害物ではないので、後述するように、人がいる領域のデータは使用しない)。
次に、空気調和機の運転開始時における障害物までの距離測定について、図18のフローチャートを参照しながら説明する。
まずステップS31において、超音波センサ32を駆動する水平回転用モータ44及び垂直回転用モータ46のイニシャライズ処理を行う。イニシャライズ処理とは、アドレス[0,0]を原点位置に設定するとともにアドレス[16,0]をセンター位置に設定し、水平回転用モータ44及び垂直回転用モータ46を原点位置でリセットした後、センター位置で停止させる制御のことである。
また、三つの基板48,50,52はそれぞれリード線で接続されていることから、次のステップS32において、リード線の断線、誤接続等の異常がないかどうかを判定するための超音波センサ32の自己診断処理を行い、ステップS33において異常がないと判定されると、ステップS34に移行する一方、異常があると判定されると、距離測定フローを終了する。
ステップS34においては、水平回転用モータ44及び垂直回転用モータ46を目標初期位置([i,j]=[0,0])に設定し、次のステップS35において、これらのモータ44,46が目標位置に設定されているかどうかを判定する。ステップS35において目標位置に設定されていると判定されると、ステップS36に移行する一方、目標位置に設定されていないと判定されると、ステップS37において、水平回転用モータ44及び垂直回転用モータ46の駆動処理を行って、ステップS35に戻る。
ステップS36においては、超音波センサ32が定常状態を維持できるように所定時間(例えば、1秒)待機し、ステップS38においてノイズ検出処理を行う。すなわち、超音波センサ32は、音響ノイズや振動や電磁ノイズによる影響を受けやすいため、周囲環境からのノイズ影響の有無を判定して、距離測定動作に移行するようにしている。
このノイズ検出処理について、図19のタイミングチャートを参照しながら説明する。
ノイズ検出は超音波送信信号がLレベルのときに行われ(したがって、比較部58の出力はHレベル)、超音波送信信号を送信する前に、周囲環境からのノイズを検知する所定の音波受信期間(例えば、100ms)を設けている。
また、ノイズ検出前に、所定のマスク時間(例えば、12ms)を設けることで、ノイズ検出開始時における超音波受信信号のHレベルを確保し、マスク時間経過後にノイズ検出を開始して所定時間(例えば、4ms)毎にノイズを検出し、比較部58において、設定された閾値と検出されたノイズを比較する。さらに、誤判定を防止するため、ノイズ検出開始から所定時間(例えば、100ms)経過時の超音波受信信号を2度読みし、2度読み一致でHレベル(ノイズが閾値未満)の場合は「ノイズなし」と判定する一方、片方でもLレベル(ノイズが閾値以上)の場合は「ノイズあり」と判定する。
図18のフローチャートに戻って、次のステップS39において、ノイズがあるかどうかの判定を行い、ノイズなしと判定されると、ステップS40に移行する一方、ノイズありと判定されるとステップS41に移行する。
ステップS40においては、同じアドレスで8回のデータを取得し、取得したデータに基づく距離測定が完了したかどうかの判定が行われ、距離測定が完了していないと判定されると、ステップS42において送信処理を行った後、ステップS43において受信処理を行い、ステップS40に戻る。逆に、ステップS40において、距離測定が完了したと判定されると、ステップS44において距離番号確定処理を行う。
なお、これらの処理は第1の基板48及び第2の基板50で行われることから、第1の基板48及び第2の基板50は障害物位置検知手段として作用する。
また、ステップS44における距離番号確定処理が完了すると、ステップS45において距離番号確定処理を行ったアドレスが最終アドレス([i,j]=[0,1])かどうかを判定し、最終アドレスの場合は、ステップS46において超音波センサ32を駆動する水平回転用モータ44及び垂直回転用モータ46のイニシャライズ処理を行った後、プログラムを終了する。なお、このイニシャライズ処理は、ステップS31において行われるイニシャライズ処理と同じなので、その説明は省略する。
一方、ステップS45において、最終アドレスではないと判定されると、ステップS47において、水平回転用モータ44及び垂直回転用モータ46を駆動して超音波センサ32を次のアドレスに移動して、ステップS35に戻る。
また、ステップS39において、ノイズありと判定されると、現在のアドレスでの測定データは使用できないことになるので、ステップS41において、第1の基板48に格納された以前の距離データを現在の距離データとして確定し(測定データを更新しない)、ステップS48において、所定時間(例えば、0.8s)待機した後、ステップS47に移行する。
すなわち、ノイズの有無判定結果に基づいて障害物位置検知手段の判定結果を更新するか否かを決定することで、障害物までの距離測定を正確に行うことができ、後述するように空調風が障害物を回避するように風向変更手段を制御することで空調効率を向上させることができる。
なお、ステップS48において待ち時間を設けたのは、各アドレスにおける合計消費時間を略一定にするためである。すなわち、ノイズありの場合、ステップS40,S42,S43,S44における処理を行わないことになるので、待ち時間を設けないと、ノイズなしの場合に比べて消費時間が短くなり、超音波センサ32の動作が不自然になるからである。また、障害物位置判別領域のすべてを走査するとともに、各アドレスにおける合計消費時間が略一定となるように障害物検知装置を制御することで、居住者に安心感を与えることができる。
次に、ステップS42における送信処理、ステップS43における受信処理、ステップS44における距離番号確定処理を順次説明するが、用語「距離番号」についてまず説明する。
「距離番号」は、超音波センサ32から居住空間のある位置Pまでのおおよその距離を意味しており、図20に示されるように、超音波センサ32は床面から2m上方に設置され、超音波センサ32から位置Pまでの距離を「距離番号相当時間の超音波到達距離」とすると、位置Pは次の式で表される。
X=到達距離×sin(90−α)
Y=2m−到達距離×sinα
また、空気の流れを妨げるテーブルやソファー等の障害物は、床面から0.4〜1.2mの高さにあるものと想定して、障害物の位置を室内機からの俯角αと距離番号(距離情報)に基づいて決定することができる。
さらに、距離番号は2〜12までの整数値とし、各距離番号に相当する超音波伝搬往復時間を表7のように設定している。
なお、表7は、各距離番号と俯角αに相当する位置Pの位置を示しており、縦線を付した部分は、Yがマイナスの値となり(Y<0)、床に食い込む位置を示している。また、表7の設定は、能力ランク2.2kwの空気調和機に適用されるものであり、この空気調和機は専ら6畳の部屋(対角距離=4.50m)に設置されるものとして、距離番号=6を制限値(最大値X)として設定している。すなわち、6畳の部屋では、距離番号≧7に相当する位置は、対角距離>4.50mで部屋の壁を越えた位置(部屋の外側の位置)となり、全く意味を持たない距離番号であり、横線で示している。
因みに、表8は、能力ランク6.3kwの空気調和機に適用されるものであり、この空気調和機は専ら20畳の部屋(対角距離=8.49m)に設置されるものとして、距離番号=12を制限値(最大値X)として設定している。
表9は、空気調和機の能力ランクと各アドレスの垂直方向位置jに応じて設定された距離番号の制限値を示している。
なお、距離番号に対応する超音波の伝搬時間には幅があることから、距離番号に対応する実際の距離は一定の幅(誤差)を持っており、表10は認識された距離番号と実際の距離との関係を示している。
次に、ステップS42における送信処理、及び、ステップS43における受信処理について、図21のタイミングチャートを参照しながら説明する。
超音波送信信号としては、上述したように、例えば50%デューティの50kHzの信号を2ms送信し、100ms後に再び超音波送信信号を送信し、これを繰り返して各アドレスで合計8回の超音波送信信号を送信する。なお、測定間隔として100msを設定したのは、100msの時間間隔は、前回の送信処理による反射波の影響を無視できる時間だからである。
また、出力マスク時間は、例えば8msに設定され、超音波送信信号の出力の8ms前にLレベルの受信マスク信号を出力して、送信時における超音波受信信号のHレベルを確保するとともに、超音波送信信号の出力から8ms経過するまで受信マスク信号を出力することで残響信号等のノイズを除去している。さらに、超音波受信信号の入力処理(ラッチ回路部60からの出力)は、上述したノイズ検出処理と同様、例えば4ms毎に行われる。
また、超音波送信信号の送信毎にその信号レベルを4ms毎に複数回読み取り、ノイズ等による誤判定防止のため2度読み一致でLレベルの場合に、カウント数Nから1を減じた値(N−1)を距離番号(超音波伝搬往復時間)としている。図21の例では、超音波送信信号が送信された後、比較部58の出力信号はN=5とN=6の間でLレベルとなっていることから(受信マスク信号はHレベル)、超音波受信信号は、N=0〜5でHレベルに、N=6,7でLレベルになっており、2度読み一致でLレベルはN=7のときなので、距離番号はN−1=6となり、距離番号相当時間は6×4ms=24msとなる。
次に、ステップS44における距離番号確定処理について説明する。
上述したように、距離番号には、空気調和機の能力ランクと各アドレスの垂直方向位置jに応じて制限値が設定されており、超音波受信信号がN>最大値Xの場合でも2度読み一致でLレベルでなければ、距離番号=Xに設定される。
各アドレス[i,j]で8回分の距離番号を決定し、大きい方から順に三つの距離番号と小さい方から順に三つの距離番号を除いて、残り二つの距離番号の平均値を取り、距離番号を確定する。なお、平均値は小数点以下を切り上げて整数値とし、このようにして確定された距離番号に相当する超音波伝搬往復時間は、表7あるいは表8に記載のとおりである。
なお、本実施の形態では、各アドレスで八つの距離番号を決定し、大小それぞれ三つの距離番号を除いて、残り二つの距離番号の平均値を取り、距離番号を確定するようにしたが、各アドレスで決定する距離番号は八つに限られるものではなく、平均値を取る距離番号も二つに限られるものではない。
また、家具等の障害物までの距離測定は空気調和機の運転停止時に行われ、この空気調和機の運転停止時における障害物までの距離測定について、図22のフローチャートを参照しながら次に説明する。なお、図22のフローチャートは図18のフローチャートと極めて類似しているので、異なるステップのみ以下説明する。
空気調和機の運転開始時には、ステップS34において、水平回転用モータ44及び垂直回転用モータ46を目標初期位置([i,j]=[0,0])に設定したのに対し、空気調和機の運転停止時には、ステップS54において、水平回転用モータ44及び垂直回転用モータ46を目標初期位置([i,j]=[0,2])に設定している。
同様に、空気調和機の運転開始時には、ステップS45において、距離番号確定処理を行ったアドレスが最終アドレス([i,j]=[0,1])かどうかを判定しているのに対し、空気調和機の運転停止時には、ステップS66において、距離番号確定処理を行ったアドレスが最終アドレス([i,j]=[0,15])かどうかを判定している。
空気調和機の運転停止時における障害物までの距離測定が、運転開始時と最も異なるのはステップS60にあり、ステップS59において、ノイズなしと判定されると、ステップS60において、現在のアドレス[i,j]に対応する領域(図5に示される領域A〜Gのいずれか)に人がいないと判定された場合には、ステップS61に移行する一方、人がいると判定された場合には、ステップS62に移行する。すなわち、人は障害物ではないので、人がいると判定された領域に対応するアドレスでは、距離測定を行うことなく以前の距離データを使用し(距離データを更新しない)、人がいないと判定された領域に対応するアドレスにおいてのみ距離測定を行い、新たに測定した距離データを使用する(距離データを更新する)ように設定している。
すなわち、各障害物位置判別領域において障害物の有無判定を行うに際し、各障害物位置判別領域に対応する人位置判別領域における人の在否判定結果に応じて、各障害物位置判別領域における障害物検知装置の判定結果を更新するか否かを決定することで、障害物の有無判定を効率的に行っている。より具体的には、人体検知装置により人がいないと判定された人位置判別領域に属する障害物位置判別領域においては、障害物検知装置による前回の判定結果を新たな判定結果で更新する一方、人体検知装置により人がいると判定された人位置判別領域に属する障害物位置判別領域においては、障害物検知装置による前回の判定結果を新たな判定結果で更新しないようにしている。
なお、図18のフローチャートにおけるステップ41あるいは図22のフローチャートにおけるステップ62において、以前の距離データを使用するようにしたが、空気調和機の据え付け直後は以前のデータは存在しないので、障害物検知装置による各障害物位置判別領域における判定が初回の場合には、デフォルト値を使用することとし、デフォルト値としては、上述した制限値(最大値X)が使用される。
また、図18のフローチャートあるいは図22のフローチャートにおいては、障害物は床面から0.4〜1.2mの高さにあるものと想定して、障害物の位置を室内機からの俯角αと距離情報(距離番号)に基づいて決定するようにしたが、各アドレスで障害物の有無のみを検知する場合、距離情報は必ずしも必要ではない。
そこで、図18のフローチャートのステップS40,S44及び図22のフローチャートのステップS61,S65における距離測定処理及び距離番号確定処理に代えて、室内機からの距離に応じてマスク時間を設定し、障害物の有無を判定する場合について図23及び表11〜13を参照しながら説明する。
すなわち、床面からの高さに二つの閾値(0.4m、1.2m)を設定し、室内機からの距離に応じて各アドレスに二つの閾値に相当するデフォルトのマスク時間を図23及び表11(遠距離)、表12(中距離)、表13(近距離)に示されるように二つ設定し、マスク時間t1以前と、これより長いマスク時間t2以降をマスク期間としてマスク信号を障害物検知装置に出力する。さらに、マスク時間t1とマスク時間t2に挟まれた期間を受信可能期間(非マスク期間)として、受信可能期間に反応があった場合(超音波センサ32が反射波を受信した場合)にのみ、その位置に障害物があるものとし、各アドレスで合計8回の超音波送信信号を送信して受信可能期間に所定数以上の反応があった場合に障害物ありと判定する。
なお、ここで使用した用語「遠距離」「中距離」「近距離」は、室内機からの距離に基づいて次のように定義している。
近距離:領域A
中距離:領域B,C,D
遠距離:領域E,F,G
また、上述したように、超音波センサ32から障害物までの距離Dは
D=Ct/2 ・・・(1)
で表されるが、音速Cは温度に依存し、温度をTとすると、1気圧中の音速Cは、
C=331.5+0.61T
で表される。したがって、俯角αに応じて設定される二つのマスク時間を温度に応じて変更し、障害物の有無を判定すると、障害物検知精度はさらに向上する。
因みに、図23及び表11〜13に示されるマスク時間は、室内温度(室内機の吸込口内部に設けた温度センサ(図示せず)の感知温度)Tが10℃≦T≦30℃の時のもので、T<10℃の場合のマスク時間は図24及び表14〜16のように設定し、T>30℃の場合のマスク時間は図25及び表17〜19のように設定することができる。
さらに、音速Cは気圧にも依存し、表20は、超音波センサから物体までの距離が1〜8mの場合の気圧と距離の誤差との関係を示している。ここで、気圧をPとすると、超音波センサから物体までの距離が1mにつき約53.75(1−P)cmの誤差が生じることになるので、式(1)を使用して算出したマスク時間に前記誤差を加算し音速を気圧に応じて補正することにより障害物検知精度はさらに向上する。
ここで、気圧の設定手段としては、室内機本体に気圧切換手段(ボタン、スイッチ等)を設け、空気調和機を設置する地域の平均的な気圧を用いて、室内機の設置時にその気圧切換手段を切り換えることで、気圧に起因する補正を行うものである。
加えて、障害物検知精度には室内機(実際には、超音波センサ32)の設置高さも影響し、室内機の設置高さを考慮することで、障害物検知精度はさらに向上する。すなわち、室内機の設置高さを床面から2mの高さに想定してマスク時間を設定すると、室内機が床面から2mより低い位置に設置された場合、床面の溝等を障害物として検知することがあるのに対し、室内機が床面から2mより高い位置に設置された場合、障害物を全く検知できないことも考えられる。
そこで、空気調和機を遠隔操作するリモコン(遠隔操作装置)あるいは室内機本体に、「標準」、「低め」、「高め」の室内機高さ切換手段(ボタン、スイッチ等)を設け、室内機の設置時にその高さに応じて室内機高さ切換手段を切り換えることで室内機の設置高さに起因する誤検知を防止することができる。
図23、図24、図25は室内機の設置高さが床面から2mの場合を示しているが、室内温度Tが10℃≦T≦30℃で、室内機の設置高さが床面から1.7mの場合、マスク時間を図26及び表21〜23のように設定し、室内機の設置高さが床面から2.4mの場合、マスク時間を図27及び表24〜26のように設定することができる。また、T<10℃の場合やT>30℃の場合も、温度変化に基づく音速の変動に応じて設定される。
したがって、室内機の設置高さが床面から2m±0.2m、1.7m±0.2m、2.4m±0.2mの場合のマスク時間を室内機高さ切換手段に設定された「標準」、「低め」、「高め」にそれぞれ対応させることで、室内機の設置高さに起因する誤検知を解消することができる。
なお、表21〜26において、マスク時間t1とマスク時間t2が同じ時間に設定されている俯角は、障害物検知を行わないことを意味している。
また、室内機は、「標準」の高さに設置されることが多いことから、「標準」の高さでは、室内温度に基づくマスク時間を使用する一方、「低め」及び「高め」の高さでは、室内温度としてT<10℃の場合やT>30℃の場合を無視し、10℃≦T≦30℃のマスク時間を使用するようにしてもよい。
図28は、マスク時間をこのように設定するとともに、気圧の影響を無視した場合のマスク時間を選択するためのフローチャートを示している。
ステップS71において、イニシャライズ処理の前に室内温度を検知し、ステップS72において、リモコンで設定された室内機の設置高さが「標準」かどうかを判定し、「標準」の場合には、ステップS73に移行する一方、「標準」でない場合には、ステップS78に移行する。
ステップS73においては、室内温度Tが10℃≦T≦30℃かどうかを判定し、10℃≦T≦30℃の場合には、ステップS74において図23のマスク時間を選択する一方、10℃≦T≦30℃でない場合には、ステップS75において、T<10℃かどうかを判定する。T<10℃の場合には、ステップS76において、図24のマスク時間を選択する一方、T<10℃でない場合には、室内温度TはT>30℃となるので、ステップS77において、図25のマスク時間を選択する。
また、ステップS78においては、リモコンで設定された室内機の設置高さが「低め」かどうかを判定し、「低め」の場合には、ステップS79において、図26のマスク時間を選択する一方、「低め」でない場合には、リモコンで設定された室内機の設置高さは「高め」になるので、ステップS80において、図27のマスク時間を選択する。
ここで、障害物の高さに注目すると、気流制御において、特に近距離領域に対しては障害物の高さを判断することが重要になってくる。例えば暖房時において、高さの低い障害物であれば、上下羽根12を通常自動風向制御(後述)より多少上向き設定して障害物の上から気流を送ることにより快適空調を行うことができるのに対し、高さの高い障害物がある場合、その障害物を回避するために上下羽根12を上向き設定すると、気流が床面まで届かなかったり、あるいは居住者の顔に暖気が当たることがあり、居住者に不快感を与える可能性があることから、高さの高い障害物を回避する場合においては左右羽根14をスイング動作(後述)させる方が効果的となる。このように、室内に存在する障害物の高さを判断することで、気流制御の幅が広がり、快適な空調空間を実現することができる。
そこで、床面からの高さに三つの閾値(例えば、0.4m、0.7m、1.2m)を設け、床面からの高さが0.7〜1.2mの障害物を「高障害物」、床面からの高さが0.4〜0.7mの障害物を「低障害物」と定義し、近距離領域に対しては、高障害物検知用のマスク時間と低障害物検知用のマスク時間を設定して2段階の検知を行うこともできる。
具体的には、遠距離領域及び中距離領域については障害物の高さ区分を一つ(0.4〜1.2m)とし、図23〜図27のマスク時間を使用して、各アドレスで合計8回の超音波送信信号を送信して障害物の有無判定を行うのに対し(図21参照)、近距離領域については障害物の高さ区分を二つとし、近距離領域の各アドレスでは、図29あるいは表27に示されるマスク時間を使用し、合計8回の超音波送信信号を送信して高障害物の有無判定を行い、その後さらに表28に示されるマスク時間を使用し、合計8回の超音波送信信号を送信して低障害物の有無判定を行う。
なお、遠距離領域及び中距離領域についても障害物の高さ区分を二つとし、高障害物検知用のマスク時間と低障害物検知用のマスク時間を設定して2段階の障害物検知を行うと、さらに気流制御の幅が広がる。
また、床面からの高さに四つ以上の閾値を設定し、障害物の高さを三つ以上に区分することもできるが、室内機に近い領域ほど障害物の高さ区分数を多くするのが好ましい。
因みに、図29、表27及び表28のマスク時間は、室内機の設置高さが「標準」で、室内温度Tが10℃≦T≦30℃の場合を示しており、室内温度TがT<10℃で、近距離領域の各アドレスで「高障害物」を検知する場合は、図30あるいは表29に示されるマスク時間を使用して高障害物の有無判定を行い、その後さらに表30に示されるマスク時間を使用して低障害物の有無判定を行う。
また、室内温度TがT>30℃のときに、近距離領域の各アドレスで「高障害物」を検知する場合は、図31あるいは表31に示されるマスク時間を使用して高障害物の有無判定を行い、その後さらに表32に示されるマスク時間を使用して低障害物の有無判定を行う。
なお、室内機の設置高さが「低め」の場合には、室内温度Tが10℃≦T≦30℃の場合、図32及び表33、表34のマスク時間を、室内温度TがT<10℃の場合、図33及び表35、表36のマスク時間を、室内温度TがT>30℃の場合、図34及び表37、表38のマスク時間をそれぞれ使用する。
また、室内機の設置高さが「高め」の場合には、室内温度Tが10℃≦T≦30℃の場合、図35及び表39、表40のマスク時間を、室内温度TがT<10℃の場合、図36及び表41、表42のマスク時間を、室内温度TがT>30℃の場合、図37及び表43、表44のマスク時間をそれぞれ使用する。
なお、図29乃至図37あるいは表27乃至表44においては、高障害物検知用受信可能期間と低障害物検知用受信可能期間が重ならないように設定したが、後述する障害物検知の学習制御によれば、一つのポジションで高障害物と低障害物を分けて障害物検知を行うと、そのポジションに障害物があるにもかかわらず、障害物なしと判定される可能性があることから、低障害物検知用マスク時間t1を高障害物検知用マスク時間t1に一致するようにしてもよい。この場合、低障害物は低障害物としてのみ判定され、高障害物は高障害物として判定されるとともに低障害物としても判定される。
また、図23乃至図37に示されるように、計測するアドレスに二つのマスク時間を設定して床面から0.4〜1.2mの高さにある障害物を検知する場合、中距離領域で計測する俯角は遠距離あるいは近距離で計測する俯角と重なっており、中距離領域に該当する俯角では、各アドレスでマスク時間を変更して2回の走査が行われる。
なお、本実施の形態においては、障害物検知を空気調和機の運転開始時と停止時に分けて行うようにしたが、圧縮機や室内送風機の運転中は、電気的ノイズや周囲の騒音が超音波センサ32に悪影響を与える可能性があることから、すべてのアドレスにおける超音波センサ32による障害物検知を空気調和機の運転停止時に行うようにしてもよい。
また、リモコンに時刻設定手段を設け、時刻設定手段で設定された時刻に超音波センサ32による障害物検知を開始するようにしてもよい。この場合、時刻設定手段で設定された時刻に空気調和機が運転中の場合は、障害物検知を開始することなく、時刻設定手段で設定された時刻に圧縮機あるいは室内ファン8が停止している場合に、障害物検知を開始するのが好ましい。
さらに、上述したタイミングにおける障害物検知に加えて、超音波センサ32の検知結果を空気調和機の運転に反映するために、周囲環境のノイズを度外視して、空気調和機の運転開始時にすべてのアドレスにおける障害物検知を開始することもできる。
なお、超音波センサ32は、空気を媒体として超音波を送信し、その反射波を受信しており、気流があるところでは、正しい障害物の位置検知ができない可能性があることから、室内ファン8の運転中に障害物検知を行う場合、表5に示される各アドレスに応じて左右羽根14の設定角度を変更するようにしている。
詳述すると、室内ファン8の運転中、水平方向の角度βが10度〜55度の各アドレスで超音波センサ32による障害物検知に際しては、俯角αに関係なく、左右羽根14が室内機から見て左向き設定(超音波センサ32の検知方向)の場合には、左右羽根14を正面向きに変更し、左右羽根14が正面向きあるいは右向き設定の場合、左右羽根14の設定方向を変更しない。
また、水平方向の角度βが60度〜115度の各アドレスで超音波センサ32による障害物検知に際しては、俯角αに関係なく、左右羽根14が室内機から見て正面向き設定(超音波センサ32の検知方向)の場合には、左右羽根14を左向きあるいは右向きに変更し、左右羽根14が左向きあるいは右向き設定の場合、左右羽根14の設定方向を変更しない。
さらに、水平方向の角度βが120度〜170度の各アドレスで超音波センサ32による障害物検知に際しては、俯角αに関係なく、左右羽根14が室内機から見て右向き設定(超音波センサ32の検知方向)の場合には、左右羽根14を正面向きに変更し、左右羽根14が左向きあるいは正面向き設定の場合、左右羽根14の設定方向を変更しない。
なお、図5に示される人位置判別領域を、室内機から見て左の領域(領域A,B,E)、中央の領域(領域A,C,F)、右の領域(領域A,D,G)に分けると、図14に示される障害物位置判別領域は、室内機から見て左の領域(ポジションA1,B1,B2,E1,E2)、中央の領域(ポジションA2,C1,C2,F1,F2)、右の領域(ポジションA3,D1,D2,G1,G2)に分けられ、上述した水平方向の角度範囲はそれぞれ次の領域に対応している。
角度β:10度〜55度 →左の領域
角度β:60度〜115度 →中央の領域
角度β:120度〜170度→右の領域
すなわち、室内ファン8の運転中、左右羽根14が超音波センサ32の検知方向を向いている場合には、左右羽根14の向きを超音波センサ32の検知方向とは異なる方向に変更することにより、超音波センサ32による障害物検知に対する気流の影響を極力低減している。より具体的には、空調すべき領域を室内機から見て左右方向の複数の領域に分割した場合、左右羽根14が、超音波センサ32の検知領域に向いている場合には、左右羽根14の向きを超音波センサ32の検知領域に隣接した領域に向くように変更している。
なお、超音波センサによる左の領域の障害物検知に際し、左右羽根14が室内機から見て左向き設定の場合、あるいは、超音波センサによる右の領域の障害物検知に際し、左右羽根14が室内機から見て右向き設定の場合、左右羽根14をそれぞれ右向きあるいは左向きに変更し、超音波センサの検知領域とは最も離れた領域に左右羽根14の向きを変更すると、気流の影響をさらに低減できる。
また、超音波センサによる障害物検知を空調風の吹き出し方向に優先させることで快適性が多少低下するが、左右羽根14の設定方向を変更した場合、超音波センサ32による障害物検知が終了した時点で、左右羽根14の向きを変更前の向きに復帰させることで、快適性の低下を極力抑制することができる。
さらに、空気調和機の運転を行うたびに、表6に示されるように全領域で障害物検知を行うと、超音波センサ32の障害物検知性能が低下することも考えられるので、全領域検知は、運転初回及びメモリリセット(後述する第2のメモリのリセット)後の1回のみとし、2回目以降の検知は、1回当たり1/3領域とすることもできる。
すなわち、2回目の検知は左の領域に属するポジションA1,B1,B2,E1,E2で行い、3回目の検知は中央の領域に属するポジションA2,C1,C2,F1,F2で行い、4回目の検知は右の領域に属するポジションA3,D1,D2,G1,G2で行い、5回目以降も同様に1/3領域で障害物検知を行う。
具体的には、1回の全領域検知及び1回の1/3領域検知は、次の順序で行われる。
全領域検知:E1→E2→B1→B2→A1→F1→F2→C1→C2→A2→G1→G2→D1→D2→A3
左の1/3領域検知: E1→E2→B1→B2→A1
中央の1/3領域検知:F1→F2→C1→C2→A2
右の1/3領域検知: G1→G2→D1→D2→A3
なお、図5に示される人位置判別領域は、室内機から見て左、中央、右の三つの領域に分けることができるが、人体検知装置を構成するセンサユニットの数に応じて人位置判別領域は、室内機から見て左と右の二つの領域あるいは四つ以上の領域に分けることもでき、この場合、2回目以降の検知は、1回当たり1/2領域あるいは1/R領域(R≧4)となる。
また、人がいる頻度が低い領域における障害物検知頻度を下げることで、超音波センサ32の障害物検知性能の低下をさらに抑制することもできる。
すなわち、図6のフローチャートに基づいて領域特性(あるいは生活区分)が確定するまで、あるいは障害物検知の学習制御(後述)が安定するまでの所定の期間(例えば、1週間)は、人がいる頻度に関係なく1/3領域ずつ障害物検知を順番に行い、所定の期間が経過した後は、例えば領域特性に基づいて間引き検知を行うこともできる。
すなわち、室内機から見て左、中央、右の三つの領域に含まれる複数の人位置判別領域の領域特性のうち最も小さい領域特性をその領域の領域特性としたとき、その領域が領域特性IIIの場合に、その領域の障害物位置検知は複数回(例えば、5回)に1回の割合で間引きして行う。
例えば、左の領域において、領域A、領域B及び領域Eの領域特性がすべてIIIの場合、最も小さい領域特性はIIIなので、左の領域は領域特性IIIとなり、中央の領域と右の領域の領域特性がIあるいはIIの場合、次のような間引き検知を行う。なお、間引き検知を行う前の領域特性が確定するまでの走査回数は7回に設定している。
壁面(7回目)→左(7回目)→中央(7回目)→右(7回目)→壁面(8回目)→中央(8回目)→右(8回目)→壁面(9回目)→ … →壁面(11回目)→中央(11回目)→右(11回目)→壁面(12回目)→左(8回目)→中央(12回目)→右(12回目)→ …
また、中央の領域において、例えば領域Aが領域特性III、領域Cが領域特性II、領域Fが領域特性IIIの場合、最も小さい領域特性はIIなので、中央の領域は領域特性IIとなり、間引き検知は行わない。
<障害物検知の学習制御>
超音波センサ32は、通常その照射方向と対象物の面とのなす角度が90度前後では正確に測定できる反面、その角度が小さくなるにつれて反射波が超音波センサ32に戻って来る確立が徐々に低下し、障害物検知に失敗する可能性が高くなる。
一例として、上面が平坦な食卓等のテーブルを考えると、テーブル上に何もない場合、超音波センサ32からの送信波がテーブルの上面で反射して超音波センサ32に戻ってくる可能性は極めて低く、テーブルの位置決定は難しいのに対し、テーブル上に生活用品(食器、リモコン、本、新聞、ティッシュ箱等)が存在すると、超音波センサ32からの送信波がテーブルと生活用品で反射して超音波センサ32に戻ってくることになり、テーブルの位置決定は容易になる。
そこで、この学習制御においては、障害物検知を、障害物だけでなく障害物の近傍にある周囲の付帯物との相互作用も利用して行うようにしている。しかしながら、実際に部屋内に置かれている家具等(実際には、家具というよりもむしろ家具上に置かれている生活用品)は日々その場所が変わる可能性が高く、障害物の角度や、障害物近傍の周囲付帯物の相互作用は変化することから、障害物検知を繰り返し行うことにより、検知ミスを極力低減することが可能となる。この学習制御は、図38に示されるフローチャートのように、毎回の走査結果を元に障害物位置を学習し、その学習制御結果から障害物のある場所を判断し、後述する気流制御を行うものである。
図38は、障害物有無判定を示すフローチャートを示しており、この障害物有無判定は、図14に示される全てのポジション(障害物位置判別領域)に対し順次行われる。ここでは、ポジションA1を例に取り説明する。
超音波センサ32により障害物検知動作を開始すると、まずステップS81において、ポジションA1の最初のアドレスで超音波センサ32により検知動作(走査)を行い、ステップS82において、上述した障害物の有無判定(時間t1〜t2の反応の有無判定)を行う。ステップS82において、障害物があると判定されると、ステップS83において、第3の基板52に設けられた第1のメモリに「1」を加算する一方、障害物がないと判定されると、ステップS84において、第1のメモリに「0」を加算する。
ステップS85において、ポジションA1の最終アドレスにおける検知が終了したかどうかを判定し、最終アドレスにおける検知が終了していない場合には、ステップS86において、次のアドレスで超音波センサ32により検知動作を行い、ステップS82に戻る。
一方、最終アドレスにおける検知が終了した場合には、ステップS87において、第1のメモリに記録された数値(障害物があると判定されたアドレスの合計)をポジションA1のアドレス数で除して(割算を行って)、次のステップS88において、その商を所定の閾値と比較する。商が閾値より大きい場合には、ステップS89において、ポジションA1には障害物があると一時的に判定され、ステップS90において、第2のメモリに「5」を加算する。一方、商が閾値未満の場合には、ステップS91において、ポジションA1には障害物がないと一時的に判定され、ステップS92において、第2のメモリに「−1」を加算する(「1」を減算する)。
なお、超音波センサ32により障害物検知は、超音波センサ32から障害物までの距離が遠くなるほど難しいことから、ここで使用する閾値は、室内機からの距離に応じて、例えば次のように設定される。
近距離:0.4
中距離:0.3
遠距離:0.2
また、この障害物検知動作は、空気調和機を運転するたびに行われるので、第2のメモリには、「5」あるいは「−1」が繰り返し加算される。そこで、第2のメモリに記録される数値は、最大値を「10」に、最小値を「0」に設定している。
次に、ステップS93において、第2のメモリに記録された数値(加算後の合計)が判定基準値(例えば、5)以上かどうかを判定し、判定基準値以上であれば、ステップS94において、ポジションA1には障害物があると最終的に判定される一方、判定基準値未満であれば、ステップS95において、ポジションA1には障害物がないと最終的に判定される。
なお、第1のメモリは、あるポジションの障害物検知動作が終了すると、そのメモリをクリアすることにより、次のポジションにおける障害物検知動作のメモリとして使用できるが、第2のメモリは、空気調和機を運転するたびに一つのポジションでの加算値を累積することから(ただし、最大値≧合計≧最小値)、ポジション数と同数のメモリが用意されている。
上述した障害物検知の学習制御において、判定基準値として「5」を設定し、あるポジションにおける初回の障害物検知で障害物ありと最終的に判定されると、第2のメモリには「5」が記録される。この状態で、次回の障害物検知で障害物なしと最終的に判定されると、「5」に「−1」を加算した値が判定基準値未満となるので、そのポジションには障害物は存在しないことになる。
しかしながら、次回の障害物検知でも障害物ありと最終的に判定されると、「5」に「5」を加算した値「10」が第2のメモリに記録され、合計値は判定基準値以上なので、そのポジションには障害物は存在することになり、次々回以降5回の障害物検知で障害物なしと判定されても、「10」に「−1×5」を加算した値は「5」なので、そのポジションには依然として障害物が存在することになる。
つまり、この障害物検知の学習制御は、複数回の加算累計値(あるいは加減算累計値)に基づいて障害物の最終有無判定を行うに際し、障害物ありと判定されたときに加算する値を、障害物なしと判定されたときに減算する値よりも十分に大きな数字に設定したことに特徴があり、このように設定することで、障害物があるという結果が出やすいようにしている。
また、第2のメモリに記録される数値に最大値及び最小値を設定することで、引越しや模様替え等により障害物の位置が大きく変化しても、できるだけ早くその変化に追随することができる。最大値を設けない場合、障害物ありと毎回判定されると、その和が次第に大きくなり、引越し等により障害物の位置が変わり、障害物ありと毎回判定された領域に障害物がなくなった場合でも、判定基準値を下回るのに時間がかかってしまう。また、最小値値を設けなかった場合には、その逆の現象が発生することになる。
図39は、図38のフローチャートで示される障害物検知の学習制御の変形例を示しており、ステップS110,S112,S113の処理のみ図38のフローチャートと相違しているので、これらのステップについて説明する。
この学習制御では、ステップS109において、ポジションA1には障害物があると一時的に判定されると、ステップS110において、第2のメモリに「1」を加算する。一方、ステップS111において、ポジションA1には障害物がないと一時的に判定されると、ステップS112において、第2のメモリに「0」を加算する。
次に、ステップS113において、現在の障害物検知を含む過去10回の障害物検知に基づいて第2のメモリに記録された合計値を判定基準値(例えば、2)と比較し、判定基準値以上であれば、ステップS114において、ポジションA1には障害物があると最終的に判定される一方、判定基準値未満であれば、ステップS115において、ポジションA1には障害物がないと最終的に判定される。
すなわち、上述した障害物検知の学習制御は、あるポジションにおける過去10回の障害物検知で8回障害物を検知できなくても、2回検知できれば、障害物があると最終的に判定されることになる。したがって、この学習制御は、障害物があると最終的に判定する障害物検知回数(ここでは、2)を、参照する過去の障害物検知回数よりも十分に小さな数字に設定したことに特徴があり、このように設定することで、障害物があるという結果が出やすいようにしている。
なお、室内機本体あるいはリモコンに、第2のメモリに記録されたデータをリセットするボタンを設け、このボタンを押すことにより、前記データをリセットするようにしてもよい。
基本的には、気流制御に大きな影響を及ぼす障害物や壁面の位置が変わることは少ないが、引越し等に伴う室内機の設置位置の変更や、部屋内の模様替えによる家具位置の変更等が生じた場合、それまでに得られたデータを元に気流制御を行うことは好ましくない。これは、学習制御により、いずれはその部屋に適した制御となるが、最適制御となるまでには時間がかかるからである(特に、その領域において障害物がなくなった場合に顕著である)。したがって、リセットボタンを設け、室内機と障害物あるいは壁面の相対的な位置関係が変わった場合には、それまでのデータをリセットすることにより、過去の間違ったデータを元にした不適切な空調を防止できるとともに、学習制御を最初から再開することにより、より早くその状況に合った制御とすることができる。
<障害物回避制御>
上記障害物の有無判定に基づき、風向変更手段としての上下羽根12及び左右羽根14は、暖房時次のように制御される。
以下の説明においては、用語「ブロック」、「フィールド」を使用するが、これらの用語をまず説明する。
図5に示される領域A〜Gは次のブロックにそれぞれ属している。
ブロックN:領域A
ブロックR:領域B,E
ブロックC:領域C,F
ブロックL:領域D,G
また、領域A〜Gは次のフィールドにそれぞれ属している。
フィールド1:領域A
フィールド2:領域B,D
フィールド3:領域C
フィールド4:領域E,G
フィールド5:領域F
表45は、左右羽根14を構成する5枚の左羽根と5枚の右羽根の各ポジションにおける目標設定角度を示しており、数字(角度)に付した記号は、図40に示されるように、左羽根あるいは右羽根が内側に向く場合をプラス(+、表45では無記号)の方向、外側に向く場合をマイナス(−)の方向と定義している。
また、表45における「暖房B領域」とは、障害物回避制御を行う暖房領域のことであり、「通常自動風向制御」とは、障害物回避制御を行わない風向制御のことである。ここで、障害物回避制御を行うかどうかの判定は、室内熱交換器6の温度を基準としており、温度が低い場合は居住者に風を当てない風向制御、高すぎる場合は最大風量位置の風向制御、適度な温度の場合は暖房B領域への風向制御を行う。また、ここでいう「温度が低い」、「高すぎる」、「居住者に風を当てない風向制御」、「最大風量位置の風向制御」とは、次のとおりの意味である。
・低い温度:室内熱交換器6の温度は皮膚温度(33〜34℃)を最適温度として設定しており、この温度以下になりうる温度(例えば、32℃)
・高すぎる温度:例えば、56℃以上
・居住者に風を当てない風向制御:居住空間に風を送らないように、上下羽根12を角度制御して、風が天井に沿うように流れる風向制御
・最大風量位置の風向制御:空気調和機は、上下羽根12及び左右羽根14により気流を曲げると必ず抵抗(損失)が発生することから、最大風量位置とは損失が限りなく0に近くなる風向制御(左右羽根14の場合、まっすぐ正面を向いた位置であり、上下羽根12の場合、水平から35度下を向いた位置)
表46は、障害物回避制御を行う場合の上下羽根12の各フィールドにおける目標設定角度を示している。なお、表46における上羽根の角度(γ1)及び下羽根の角度(γ2)は水平線から測定した下向きの角度(俯角)である。
次に、障害物の位置に応じた障害物回避制御について具体的に説明するが、障害物回避制御において使用される用語「スイング動作」「ポジション停留稼動」「ブロック停留稼動」についてまず説明する。
スイング動作とは、左右羽根14の揺動動作のことで、基本的には目標の一つのポジションを中心に所定の左右角度幅で揺動し、スイングの両端で固定時間がない動作のことである。
また、ポジション停留稼動とは、あるポジションの目標設定角度(表45の角度)に対し、表47の補正を行い、それぞれ、左端及び右端とする。動作としては、左端と右端でそれぞれ風向固定時間(左右羽根14を固定する時間)を持ち、例えば、左端で風向固定時間が経過した場合、右端に移動し、右端で風向固定時間が経過するまで、右端の風向を維持し、風向固定時間の経過後、左端に移動し、それを繰り返すものである。風向固定時間は、例えば60秒に設定される。
すなわち、あるポジションに障害物がある場合に、そのポジションの目標設定角度をそのまま使用すると、温風が常に障害物に当たるが、表47の補正を行うことで、障害物の横から温風を人がいる位置に到達させることができる。
さらにブロック停留稼動とは、各ブロックの左端と右端に対応する左右羽根14の設定角度を、例えば表48に基づいて決定する。動作としては、各ブロックの左端と右端でそれぞれ風向固定時間を持ち、例えば、左端で風向固定時間が経過した場合、右端に移動し、右端で風向固定時間が経過するまで、右端の風向を維持し、風向固定時間の経過後、左端に移動し、それを繰り返すものである。風向固定時間は、ポジション停留稼動と同様に、例えば60秒に設定される。なお、各ブロックの左端と右端は、そのブロックに属する人位置判別領域の左端と右端に一致しているので、ブロック停留稼動は、人位置判別領域の停留稼動と言うこともできる。
なお、ポジション停留稼動とブロック停留稼動は、障害物の大きさに応じて使い分けている。前方の障害物が小さい場合、障害物のあるポジションを中心にポジション停留稼動を行うことで障害物を避けて送風するのに対し、前方の障害物が大きく、例えば人がいる領域の前方全体に障害物がある場合、ブロック停留稼動を行うことで広い範囲にわたって送風するようにしている。
本実施の形態においては、スイング動作とポジション停留稼動とブロック停留稼動を総称して、左右羽根14の揺動動作と称している。
以下、上下羽根12あるいは左右羽根14の制御例を具体的に説明するが、人体検知装置により人が単一の領域にのみいると判定された場合、人体検知装置により人がいると判定された人位置判別領域の前方に位置する障害物位置判別領域に障害物があると障害物検知装置により判定された場合、上下羽根12を制御して障害物を上方から回避する気流制御を行うようにしている。また、人体検知装置により人がいると判定された人位置判別領域に属する障害物位置判別領域に障害物があると障害物検知装置により判定された場合、人がいると判定された人位置判別領域に属する少なくとも一つの障害物位置判別領域内で左右羽根14を揺動させ、揺動範囲の両端で左右羽根14の固定時間を設けない第1の気流制御と、人がいると判定された人位置判別領域あるいは当該領域に隣接する人位置判別領域に属する少なくとも一つの障害物位置判別領域内で左右羽根14を揺動させ、揺動範囲の両端で左右羽根14の固定時間を設けた第2の気流制御の一つを選択するようにしている。
また、以下の説明では、上下羽根12の制御と左右羽根14の制御を分けているが、人及び障害物の位置に応じて、上下羽根12の制御と左右羽根14の制御は適宜組み合わせて行われる。
A.上下羽根制御
(1)領域B〜Gのいずれかに人がいて、人がいる領域の前方のポジションA1〜A3に障害物がある場合
上下羽根12の設定角度を通常のフィールド風向制御(表46)に対し表49のように補正し、上下羽根12を上向き設定した気流制御を行う。
(2)領域B〜Gのいずれかに人がいて、人がいる領域の前方の領域Aに障害物がない場合(上記(1)以外)
通常自動風向制御を行う。
B.左右羽根制御
B1.領域A(近距離)に人がいる場合
(1)領域Aにおいて障害物のないポジションが一つの場合
障害物のないポジションの目標設定角度を中心として左右にスイング動作させ第1の気流制御を行う。例えば、ポジションA1,A3に障害物があり、ポジションA2に障害物がない場合、ポジションA2の目標設定角度を中心として左右にスイング動作させ、基本的には障害物のないポジションA2を空調するが、ポジションA1,A3に人がいないとは限らないので、スイング動作を加えることで、ポジションA1,A3に多少でも気流が振り分けられるようにする。
さらに具体的に説明すると、表45及び表47に基づいて、ポジションA2の目標設定角度及び補正角度(スイング動作時の揺動角)は決定されるので、左羽根及び右羽根は共に10度を中心に、それぞれ±10度の角度範囲で止まることなく揺動(スイング)し続ける。ただし、左羽根と右羽根を左右に振るタイミングは同一に設定されており、左羽根と右羽根の揺動動作は連動している。
(2)領域Aにおいて障害物のないポジションが二つで、隣接している場合(A1とA2あるいはA2とA3)
障害物のない二つのポジションの目標設定角度を両端としてスイング動作させ第1の気流制御を行うことで、基本的に障害物のないポジションを空調する。
(3)領域Aにおいて障害物のないポジションが二つで、離れている場合(A1とA3)
障害物のない二つのポジションの目標設定角度を両端としてブロック停留稼動させ第2の気流制御を行う。
(4)領域Aにおいてすべてのポジションに障害物がある場合
どこを狙っていいのか不明なので、ブロックNをブロック停留稼動させ第2の気流制御を行う。領域全体を狙うよりもブロック停留稼動の方が指向性のある風向となって遠くに届きやすく、障害物を回避できる可能性が高いからである。すなわち、領域Aに障害物が点在している場合でも、障害物と障害物との間には通常隙間があり、この障害物間の隙間を通して送風することができる。
(5)領域Aにおいてすべてのポジションに障害物がない場合
領域Aの通常自動風向制御を行う。
B2.領域B,C,D(中距離)のいずれかに人がいる場合
(1)人がいる領域に属する二つのポジションの一方にのみ障害物がある場合
障害物のないポジションの目標設定角度を中心として左右にスイング動作させ第1の気流制御を行う。例えば、領域Dに人がいて、ポジションD2にのみ障害物がある場合、ポジションD1の目標設定角度を中心として左右にスイング動作させる。
(2)人がいる領域に属する二つのポジションの両方に障害物がある場合
人がいる領域を含むブロックをブロック停留稼動させ第2の気流制御を行う。例えば、領域Dに人がいて、ポジションD1,D2の両方に障害物がある場合、ブロックLをブロック停留稼動させる。
(3)人がいる領域に障害物がない場合
人がいる領域の通常自動風向制御を行う。
B3.領域E,F,G(遠距離)のいずれかに人がいる場合
(1)人がいる領域の前方の中距離領域に属する二つのポジションの一方にのみ障害物がある場合(例:領域Eに人がいて、ポジションB2に障害物があり、ポジションB1に障害物がない)
(1.1)障害物があるポジションの両隣に障害物がない場合(例:ポジションB1,C1に障害物がない)
(1.1.1)障害物があるポジションの後方に障害物がない場合(例:ポジションE2に障害物がない)
障害物があるポジションを中心としてポジション停留稼動させ第2の気流制御を行う。例えば、領域Eに人がいて、ポジションB2に障害物があり、その両側にも後方にも障害物がない場合、ポジションB2にある障害物を横から避けて領域Eに気流を送り込むことができる。
(1.1.2)障害物があるポジションの後方に障害物がある場合(例:ポジションE2に障害物がある)
中距離領域で障害物がないポジションの目標設定角度を中心としてスイング動作させ第1の気流制御を行う。例えば、領域Eに人がいて、ポジションB2に障害物があり、その両側には障害物がないが、その後方に障害物がある場合、障害物がないポジションB1から気流を送り込むほうが有利である。
(1.2)障害物があるポジションの両隣のうち一方に障害物があり、他方に障害物がない場合
障害物がないポジションの目標設定角度を中心としてスイング動作させ第1の気流制御を行う。例えば、領域Fに人がいて、ポジションC2に障害物があり、ポジションC2の両隣のうちポジションD1に障害物があり、C1に障害物がない場合、障害物がないポジションC1からポジションC2の障害物を避けて気流を領域Fに送ることができる。
(2)人がいる領域の前方の中距離領域に属する二つのポジションの両方に障害物がある場合
人がいる領域を含むブロックをブロック停留稼動させ第2の気流制御を行う。例えば、領域Fに人がいて、ポジションC1,C2の両方に障害物がある場合、ブロックCをブロック停留稼動させる。この場合、人の前方に障害物があり、障害物を避けようがないので、ブロックCに隣接するブロックに障害物があるかどうかに関係なく、ブロック停留稼動を行う。
(3)人がいる領域の前方の中距離領域に属する二つのポジションの両方に障害物がない場合(例:領域Fに人がいて、ポジションC1,C2に障害物がない)
(3.1)人がいる領域に属する二つのポジションの一方のポジションにのみ障害物がある場合
障害物がない他方のポジションの目標設定角度を中心としてスイング動作させ第1の気流制御を行う。例えば、領域Fに人がいて、ポジションC1,C2,F1に障害物がなく、ポジションF2に障害物がある場合、人がいる領域Fの前方は開放されているので、遠距離の障害物を考慮して障害物のない遠距離のポジションF1を中心に空調する。
(3.2)人がいる領域に属する二つのポジションの両方に障害物がある場合
人がいる領域を含むブロックをブロック停留稼動させ第2の気流制御を行う。例えば、領域Gに人がいて、ポジションD1,D2に障害物がなく、ポジションG1,G2の両方に障害物がある場合、人がいる領域Gの前方は開放されているが、この領域全体に障害物があり、どこを狙っていいのか不明なので、ブロックLをブロック停留稼動させる。
(3.3)人がいる領域に属する二つのポジションの両方に障害物がない場合
人がいる領域の通常自動風向制御を行う。
なお、この障害物回避制御は、人体検知装置による人の在否判定と障害物検知装置による障害物の有無判定に基づいて、上下羽根12及び左右羽根14を制御するようにしたが、障害物検知装置による障害物の有無判定のみに基づいて上下羽根12及び左右羽根14を制御することもできる。
<障害物の有無判定のみに基づく障害物回避制御>
この障害物回避制御は、基本的には障害物検知装置により障害物ありと判定された領域を回避し、障害物なしと判定された領域に向けて送風するためのものであり、以下その具体例を説明する。
A.上下羽根制御
(1)領域A(近距離)に障害物がある場合
暖房時には軽くなって浮き上がる暖気を抑えるために上下羽根12を最下方向に向けて温風を送り出すと、領域Aに障害物がある場合、障害物の裏(室内機側)に暖気がたまったり、暖気が障害物に当たって床面まで届かないことが考えられる。
そこで、室内機直下もしくはその近傍に障害物を検知した場合、上下羽根12の設定角度を通常のフィールド風向制御(表46)に対し表49のように補正し、上下羽根12を上向き設定した気流制御を行い、障害物の上から空調を行う。障害物を回避しようと気流全体を上に上げすぎてしまうと、暖気が居住者の顔に直接当たってしまい、不快感を与えるため、下羽根12bで暖気を持ち上げて障害物を回避しつつ、上羽根12aで浮き上がりを防ぐようにしている。
B.左右羽根制御
(1)領域B,C,D(中距離)のいずれかに障害物がある場合
障害物がない方向を重点的に空調する。例えば、領域C(部屋中央)に障害物を検知した場合には、障害物のない両側の領域B,Dを含むブロックを交互にブロック停留稼動させることで、障害物のない(=人の存在する可能性の高い)領域を重点的に空調できる。
また、領域BあるいはD(部屋の隅)に障害物を検知した場合には、領域C及びDあるいは領域B及びCを含むブロックをブロック停留稼動させる。この場合、複数回(例えば、5回)に1回の割合で、領域C及びDあるいは領域B及びCをブロック停留稼動した後、領域BあるいはDに向けて左右羽根14をスイングさせるようにすると、人の存在する可能性がより高い領域を中心に空調することができるばかりでなく、部屋全体の空調の点で効果がある。
また、障害物の有無を判別するポジション(障害物位置判別領域)は、空気調和機の能力ランクに関係なく図14に示されるように細分化してもよいが、能力ランクに応じて設置される部屋のサイズも異なるため、分割領域数を変えるようにしてもよい。例えば、能力ランクが4.0kw以上のものでは、図14に示されるように分割し、3.6kw以下のものでは、遠距離領域を設けることなく、近距離領域を3分割し、中距離領域を6分割するようにしてもよい。
さらに、図14に示されるように、放射状に部屋を認識し、室内機から等間隔で近/中/遠距離と分割した場合、室内機から離れるほどその面積は大きくなる。そこで、室内機から離れるほど判別領域数を多くすることにより、各領域の大きさを略均一にすることができ、気流制御が行いやすくなる。
また、居住空間の全走査は、超音波センサ32が表5に示される各アドレスに向かって超音波を送信することにより行われるが、室内機から判別領域までの距離に応じて走査時の角度間隔を大きくすることもできる。
ここで、各アドレスに対応する検知小領域を「セル」という用語で表現すると、各領域における検知セル数の数が増加するほど検知精度は向上するが、走査時間が長くなることから、検知精度と走査時間の兼ね合いを考慮するのが好ましい。そこで、例えば、近距離に対応する各アドレス(俯角α:25度〜80度)では水平方向及び垂直方向をともに10度刻みに走査するとともに、中距離に対応する各アドレス(俯角α:15度〜30度)及び遠距離に対応する各アドレス(俯角α:5度〜20度)では水平方向及び垂直方向をともに5度刻みに走査することにより、各領域における検知セル数を略等しく(概ね20個前後)することができる。
なお、表5及び表6においては、超音波センサ32を垂直方向に5度〜80度の範囲で走査するようにしたが、障害物の有無を検知するためのマスク時間を図23〜図27、図29〜図37のように設定した場合、俯角αが70度〜80度の領域は障害物の検知を行わないので、障害物回避制御は、俯角αが70度以下の範囲で行われる。
<1室に2台以上の室内機を設置した場合の動作タイミング>
空気調和機の室内機が1つの部屋に2台以上取り付けられると、これらの空気調和機は、通常ほぼ同時に運転が停止するものと考えられる。空気調和機の運転停止時に超音波センサ32による障害物検知を行う場合、それぞれの空気調和機における障害物検知の動作タイミングが一様であれば、互いに干渉しあう可能性が高くなる。すなわち、2台以上の室内機が、それぞれの超音波センサ32からの送信音を検知できる範囲に設置されると、ある超音波センサ32が別の超音波センサ32から送信された超音波を受信すると、自身の送信波の反射波と誤認識することになる。
この相互干渉は、それぞれの超音波センサ32の動作タイミングをずらすことにより防止することができ、相互干渉防止制御は、二つ以上の超音波センサ32の動作パターンを第1の基板48に記憶させるとともに、リモコンあるいは室内機本体に動作パターン切換手段(ボタン、スイッチ等)を設け、動作パターン切換手段を適宜切り換えて二つ以上の動作パターンのいずれかを選択することにより行われる。
その具体例を、動作パターンAと動作パターンBの二つの動作パターンを設け、1室に設置された2台の室内機のうち1台の超音波センサ32を動作パターンAに設定する一方、別の1台の室内機の超音波センサ32を動作パターンBに設定した場合を例に取り説明する。
図41は超音波センサ32の動作タイミングを示しており、図41には、それぞれの動作に要する時間の1例が示されている。また、図42は、動作パターンAは図41の動作タイミングを採用し、動作パターンBは安定待ち時間(図18のステップS36あるいは図22のステップS56)を変更(長く)した場合を示している。
図42に示されるように、動作タイミングを変更していない動作パターンAの空気調和機と、安定待ち時間を変更して動作タイミングを変えた動作パターンBの空気調和機がほぼ同時に停止し、超音波センサ32による障害物検知を行う場合、空気調和機の停止直後は、動作パターンAの超音波センサ32による距離測定に要する時間と動作パターンBの超音波センサ32による距離測定に要する時間がずれることで、相互干渉を回避できる。しかしながら、各アドレスで距離測定を繰り返すにつれて、動作パターンAの距離測定に要する時間と動作パターンBの距離測定に要する時間が一部重なることもあり、相互干渉が発生する可能性もある。
図43は、動作パターンAは図41の動作タイミングを採用し、動作パターンBは走査開始までの時間(初回の待ち時間あるいは最初のアドレスでの待ち時間)を多少変更(例えば、1ms長く)した場合を示している。この場合、2台の室内機における超音波センサ32の走査が同時に開始すれば、全てのアドレスにおいて動作パターンAの距離測定に要する時間と動作パターンBの距離測定に要する時間が重なることはなく、相互干渉を回避することができる。
しかしながら、動作パターンBに設定された空気調和機が動作パターンAに設定された空気調和機より先に停止すると、動作パターンBの超音波センサ32による障害物検知が動作パターンAの超音波センサ32による障害物検知より先行することになり、相互干渉が発生する可能性もある。
図44は、動作パターンAは図41の動作タイミングを採用し、動作パターンBは走査開始までの時間(初回の待ち時間)を大幅に(例えば、20分)長く設定した場合を示している。具体的には、動作パターンBは走査開始までの時間を、動作パターンAの開始から終了までの全動作時間より長く設定している。すなわち、動作パターンA,Bの初回の待ち時間の差を各動作パターンの開始から終了までの全動作時間より長く設定している。この場合、相互干渉を殆ど回避できるが、2台の室内機の超音波センサ32の動作が大きく異なることになる。
図45は、動作パターンA及び動作パターンBとして、共に図41の動作タイミングを採用し、図18のステップS39あるいは図22のステップS59でノイズありと判定された場合、以降の超音波センサ32からの超音波送信を中止するようにしている。この構成は、最初にノイズありと判定された空気調和機からの超音波送信が中止するので、別の空気調和機における障害物検知は通常どおり行われることになり、相互干渉を回避することができる。
なお、超音波センサ32からの超音波送信を途中で中止し、送信中止以前のデータを使用してそのセルが属する領域で障害物の有無判定を行うと、送信中止以後のデータが欠損していることから、その領域における障害物の存在確率が低くなり、障害物がないと誤認識されやすい。そこで、欠損したデータを含む障害物領域で新たに取得した全データを破棄し、その領域に関しては過去のデータを参照することにより、誤認識を回避することができる。
また、遠距離領域→中距離領域→近距離領域と走査する過程において、既にデータ取得を完結している領域についてはそのデータを使用し、データ取得を完結していない領域については過去のデータを使用することができる。例えば、中距離領域のセルを走査中にノイズを検出した場合には、そのセル以降の超音波送信を中止し、遠距離領域のみの障害物の有無を確定し、中距離領域及び近距離領域に関しては過去のデータを使用する。
図46は、動作パターンA及び動作パターンBとして、共に図41の動作タイミングを採用し、図18のステップS39あるいは図22のステップS59でノイズありと判定された場合、そのときの超音波センサ32からの超音波送信を中止し、多少遅延して(例えば、0.8ms)再度ノイズ検出処理を行うことで、相互干渉を回避している。
図46の例では、遅延して再度ノイズ検出処理を行っても、ノイズありと判定されると、そのアドレスでの超音波センサ32からの超音波送信を中止し、次のアドレスに移行するようにしてもよい。
なお、本実施の形態においては、距離検知手段としての超音波式距離センサを採用したが、超音波式距離センサに代えて、光電式距離センサを採用することもできる。