JP5246283B2 - 伸びと伸びフランジ性に優れた低降伏比高強度冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Cは鋼板の高強度化に有効な元素であり、パーライト及びマルテンサイトの第2相形成により高強度化に寄与する。この効果を得るためには、0.05%以上の添加が必要である。好ましくは0.08%以上である。一方、過剰に添加するとスポット溶接性が低下することから、上限を0.13%とする。
Siは高強度化に寄与する元素であり、高い加工硬化能をもつことから強度上昇に対して伸びの低下が比較的少なく、強度−伸びバランスの向上にも寄与する元素である。さらにフェライト相の固溶強化により、硬質な第2相との硬度差を小さくするため、伸びフランジ性の向上にも寄与する。Siを適量添加することでフェライト相とパーライト相との界面からのボイドの発生を抑制することができるが、その効果を得るためには、0.6%以上含有することが必要である。伸びと伸びフランジ性の観点からは上限は特に規定されないが、1.2%超添加すると化成処理性が低下するため、その含有量は1.2%以下とする。好ましくは1.0%以下である。
Mnは固溶強化およびマルテンサイトを生成することで高強度化に寄与する元素であり、この効果を得るためには1.6%以上含有することが必要である。一方、過剰に含有した場合、成形性の低下が著しくなることから、その含有量を2.4%以下とする。好ましくは2.2%以下である。
Pは固溶強化により高強度化に寄与するが、過剰に添加された場合には、粒界への偏析が著しくなって粒界を脆化させることや、溶接性が低下することから、その含有量を0.10%以下とする。好ましくは0.05%以下である。
Sの含有量が多い場合には、MnSなどの硫化物が多く生成し、伸びフランジ性に代表される局部伸びが低下するため含有量の上限を0.0050%とする。好ましくは、0.0030%以下である。下限は特に限定しないが、極低S化は製鋼コストが上昇するため、0.0005%以上含有することが好ましい。
Alは脱酸に必要な元素であり、この効果を得るためには0.01%以上含有することが必要であるが、0.10%を超えて含有しても効果が飽和するため、その含有量は0.10%以下とする。好ましくは0.05%以下である。
Nは、粗大な窒化物を形成し、伸びフランジ性を劣化させることから、含有量を抑える必要がある。Nが0.0050%以上では、この傾向が顕著となることから、Nの含有量を0.0050%未満とする。
Vは微細な炭窒化物を形成することで、強度上昇に寄与することができる。このような効果を発揮させるには、Vの添加量を0.01%以上含有させることが好ましい。一方、0.10%を超えて添加しても強度上昇効果は小さく、却って合金コストの増加を招くため、その含有量は0.10%以下が好ましい。
TiもVと同様に、微細な炭窒化物を形成することで、強度上昇に寄与することができるため、必要に応じて添加することができる。このような効果を発揮させるためには、Tiの含有量を0.005%以上とすることが好ましい。一方、多量にTiを添加すると、YRが著しく上昇するため、その含有量は0.10%以下が好ましい。
NbもVと同様に、微細な炭窒化物を形成することで、強度上昇に寄与することができるため、必要に応じて添加することができる。このような効果を発揮させるためには、Nbの含有量を0.005%以上とすることが好ましい。一方、多量にNbを添加すると、YRが著しく上昇するため、その含有量は0.10%以下が好ましい。
Crは焼入れ性を向上させ、第2相を生成することで高強度化に寄与する元素であり、必要に応じて添加することができる。この効果を発揮させるためには、0.10%以上含有させることが好ましい。一方、0.50%を超えて含有させても効果が飽和するため、その含有量は0.50%以下が好ましい。
Moは焼入れ性を向上させ、第2相を生成することで高強度化に寄与し、さらに一部炭化物を生成して高強度化に寄与する元素であり、必要に応じて添加することができる。これらの効果を発揮させるためには、0.05%以上含有させることが好ましい。0.50%を超えて含有させても効果が飽和するため、その含有量は0.50%以下が好ましい。
Cuは固溶強化により高強度化に寄与して、また焼入れ性を向上させ、第2相を生成することで高強度化に寄与する元素であり、必要に応じて添加することができる。これらの効果を発揮するためには0.05%以上含有させることが好ましい。一方、0.50%を超えて含有させても効果が飽和し、またCuに起因する表面欠陥が発生しやすくなるため、その含有量は0.50%以下が好ましい。
NiもCuと同様、固溶強化により高強度化に寄与して、また焼入れ性を向上させ、第2相を生成することで高強度化に寄与する元素であり、必要に応じて添加することができる。これらの効果を発揮させるためには0.05%以上含有させることが好ましい。また、Cuと同時に添加すると、Cu起因の表面欠陥を抑制する効果があるため、Cu添加時に有効である。一方、0.50%を超えて含有させても効果が飽和するため、その含有量は0.50%以下が好ましい。
鋼スラブに、粗圧延、仕上げ圧延を施し、熱延板とする。圧延前にスラブを加熱することが好ましい。スラブ加熱温度が1100℃未満になると圧延負荷が増大し、生産性が低下し、1300℃を超えると加熱コストが増大するため、スラブ加熱温度は1100〜1300℃とすることが好ましい。一旦室温まで冷却したスラブを加熱炉で再加熱してもよいし、鋼スラブを室温まで冷却しないで、温片のままで加熱炉に装入して再加熱してもよい。また、スラブ加熱を行うことなく、鋼スラブを保熱した後に直ちに熱間圧延する、あるいは鋳造後そのまま熱間圧延する直送圧延・直接圧延などの省エネルギープロセスを適用してもよい。
熱間圧延工程後、酸性工程を実施し、熱延板表層のスケールを除去するのが好ましい。酸洗工程は特に限定されず、常法に従って実施すればよい。
酸洗後の熱延板に対し、所定の板厚の冷延板に圧延する冷間圧延工程を行う。冷間圧延工程は特に限定されず常法で実施すればよい。
焼鈍工程は、再結晶を進行させるとともに、高強度化のためマルテンサイト及びパーライトの第2相組織を形成するために実施する。そのために、焼鈍工程は、Ac1〜Ac3点の温度域(均熱温度または保持温度とも言う)に加熱して保持した後、該均熱温度から500〜550℃の温度まで1℃/s〜25℃/sの平均冷却速度で冷却し、その後は5℃/s以下の平均冷却速度で冷却する。
均熱温度がAc1点未満ではオーステナイトが生成しないため、その後、マルテンサイトを得る事ができず、Ac3点超では粗大なオーステナイトとなるため、その後、所定のマルテンサイトおよびパーライトの体積分率を得ることができない。そのため、均熱温度はAc1〜Ac3点の範囲とする。好ましくはAc3点−100℃〜Ac3点である。均熱温度までの加熱速度が大きすぎると再結晶が進行しにくくなり、加熱速度が小さすぎるとフェライト粒が粗大になり強度が低下するため、均熱温度までの平均加熱速度は3〜30℃/sの範囲とするのが好ましい。また、再結晶の進行および一部オーステナイト変態を十分にするため、均熱時間は30s〜300s(秒)とすることが好ましい。
焼鈍工程後に最終的に得られる鋼板のミクロ組織を、フェライトの体積分率を80%以上、マルテンサイトの体積分率を3〜15%、パーライトの体積分率を0.5〜10%に制御するため、上記均熱温度から、1次冷却温度として500〜550℃の温度までを1℃/s〜25℃/sの平均冷却速度で冷却する1次冷却を行う。1次冷却温度が550℃超になるとマルテンサイトが十分形成せず、500℃未満になるとパーライトが十分形成しない。1次冷却温度を500〜550℃の範囲に規定することで、マルテンサイトとパーライトの両者を形成してその体積分率を調整することができる。500〜550℃の温度域までの平均冷却速度が1℃/s未満になるとマルテンサイトが体積分率で3%以上形成せず、平均冷却速度が25℃/s超になるとパーライトが体積分率で0.5%以上形成しない。従って、均熱温度から500〜550℃の温度域までの平均冷却速度は1℃/s〜25℃/sとする必要がある。好ましい平均冷却速度は15℃/s以下である。
1次冷却温度(500〜550℃)まで冷却した後は5℃/s以下の平均冷却速度で冷却する2次冷却を行う。2次冷却の平均冷却速度が5℃/sを超えるとマルテンサイトの体積分率が増加し、所定のマルテンサイトとパーライトの体積分率を得られなくなるため、1次冷却温度からの平均冷却速度は5℃/s以下とする。好ましくは3℃/s以下である。
Claims (2)
- 鋼板の化学成分が、質量%で、C:0.05〜0.13%、Si:0.6〜1.2%、Mn:1.6〜2.4%、P:0.10%以下、S:0.0050%以下、Al:0.01〜0.10%、N:0.0050%未満を含有するとともに、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、鋼板のミクロ組織は、体積分率でフェライトを80%以上、マルテンサイトを3〜15%、パーライトを0.5〜10%含む複合組織を有し、降伏比が70%以下で引張強さが590MPa以上であることを特徴とする伸びと伸びフランジ性に優れた低降伏比高強度冷延鋼板。
- 請求項1に記載の化学成分を有する鋼スラブに、熱間圧延、冷間圧延を施した後に、Ac1〜Ac3点の温度域に加熱して保持した後、前記保持温度から500〜550℃の温度まで1℃/s〜25℃/sの平均冷却速度で冷却し、その後は5℃/s以下の平均冷却速度で冷却することを特徴とする体積分率でフェライトを80%以上、マルテンサイトを3〜15%、パーライトを0.5〜10%含む複合組織を有し、降伏比が70%以下で引張強さが590MPa以上である伸びと伸びフランジ性に優れた低降伏比高強度冷延鋼板の製造方法。
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