JP5246283B2 - 伸びと伸びフランジ性に優れた低降伏比高強度冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

伸びと伸びフランジ性に優れた低降伏比高強度冷延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、プレス加工されて使用される自動車の足回り部品や構造部品等の部材として好適な伸びと伸びフランジ性に優れた低降伏比の高強度冷延鋼板に関するものである。なお、降伏比(YR)とは、引張強さ(TS)に対する降伏強さ(YS)の比を示す値であり、YR(%)=(YS/TS)×100で表される。
近年、環境問題の高まりからCO排出規制が厳格化しており、自動車分野においては、車体の軽量化による燃費向上が大きな課題となっている。このため自動車部品への高強度鋼板の適用による薄肉化が進められており、これまでTSが270〜440MPa級の鋼板が使用されていた部品に対し、TSが590MPa以上の鋼板の適用が進められている。
このTSが590MPa以上の鋼板には、成形性の観点から優れた伸びや伸びフランジ性(穴広げ性)が求められている。さらに、プレス加工後にアーク溶接、スポット溶接等により組み付けられ、モジュール化されるために組付け時に高い寸法精度を求められることから、加工後にスプリングバック等を起こりにくくする必要があり、加工前には低降伏比であることが必要となっている。
成形性と高強度とを兼ね備えた低降伏比の高強度薄鋼板として、フェライト・マルテンサイト組織のデュアルフェーズ鋼(DP鋼)が知られている。主相をフェライトとしてマルテンサイトを分散させた複合組織鋼は、低降伏比でTSも高く、伸びに優れているが、フェライトとマルテンサイトの界面に応力が集中することで、クラックが発生しやすいため、穴広げ性に劣るという欠点があった。そこで、特許文献1では、フェライト及びマルテンサイトの全組織に対する占積率及び平均結晶粒径を制御することで、耐衝突安全性と成形性を両立する自動車用高強度鋼板が開示されている。さらに特許文献2では、平均粒径が3μm以下の微細なフェライトと平均粒径が6μm以下のマルテンサイトの全組織に対する占積率を制御することで、伸びと伸びフランジ性を改善した高強度鋼板が開示されている。また、特許文献3では、鋼板成分にCeもしくはLaを含有することで微細介在物を鋼板中に分散させ、伸びフランジ性を改善したDP鋼板が開示されている。
成形性向上のために鋼板組織にベイナイトや残留オーステナイトを含有する技術も知られている。例えば、特許文献4では、フェライト、残留オーステナイト、残部がベイナイトおよびマルテンサイトからなる複合組織で、マルテンサイト及び残留オーステナイトのアスペクト比および平均粒径を規定し、且つ、単位面積あたりのマルテンサイト及び残留オーステナイトの個数を規定することで、伸びおよび伸びフランジ性に優れる複合組織冷延鋼板が開示されている。
非特許文献1は、実施例で説明する。
特許3936440号公報 特開2008−297609号公報 特開2009−299149号公報 特許4288364号公報
「X線回折ハンドブック」、理学電機株式会社、2000年、p.26、62−64
しかしながら、特許文献1はフェライトとマルテンサイトの平均結晶粒径を規定しているが、プレス成形に十分な穴広げ性を確保出来ていない。特許文献2は、マルテンサイトの体積分率が顕著に多いため、伸びが不十分である。特許文献3は、CeおよびLaを添加するため製造コストが高い上、介在物の大きさを制御するために材質バラツキが大きいことから生産性が低い。
また、特許文献4では、ベイナイトや残留オーステナイトを含有した鋼板はその組織を得るために特殊な設備を利用した高い冷却速度が必要であるため、製造コストが高く、材質バラツキが大きい。さらに、特性としても残留オーステナイトやベイナイトを有する鋼板組織の高強度鋼板は、DP鋼と比較してYRが高くなるため、安定してYRを70%以下とすることは困難である。
このように、低YRの高強度鋼板において、伸びおよび伸びフランジ性を確保することは困難であり、これまでこれらの特性(降伏比、強度、伸び、伸びフランジ性)を満足する冷延鋼板は開発されていない。
したがって、本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解消し、伸びと伸びフランジ性に優れ、低降伏比を有する高強度冷延鋼板およびその製造方法を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、Siを適量添加し、フェライト、マルテンサイトおよびパーライトの体積分率を制御することで、低YRで高強度を確保した伸びおよび伸びフランジ性に優れた冷延鋼板を得ることが可能であることを見出した。
従来、パーライトは伸びフランジ性を劣化させると考えられていた。しかし、本発明者らは、フェライト、マルテンサイト及びパーライトが存在する鋼板組織において、鋼板成分としてSiを適量添加し、フェライトを固溶強化することで硬質相との硬度差を低減すると、ボイド(クラック)はフェライトとマルテンサイトとの界面から優先して発生し、パーライトとの界面からの発生は抑制されることを発見した。また、従来のDP鋼よりマルテンサイトの体積分率を減少させても、Siによるフェライトの固溶強化を活用するとともに、パーライトを存在させることで強度確保が可能になる。また、マルテンサイトの体積分率を減少させることで、局部伸びが向上し、伸びと伸びフランジ性が向上することがわかった。さらに、マルテンサイトとパーライトの体積分率を調整することで、低YRを確保しつつ、590MPa以上の引張強さを有する低降伏比高強度冷延鋼板を得ることが可能である。
具体的には、鋼板成分として、Siを0.6〜1.2%添加し、主相のフェライトを体積分率として80%以上、マルテンサイトを3〜15%、パーライトを0.5〜10%の範囲に鋼板組織を制御することで、降伏比が70%以下で引張強さが590MPa以上である伸びと伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板を得ることが可能である。
すなわち、本発明は、以下の(1)、(2)を提供する。
(1)鋼板の化学成分が、質量%で、C:0.05〜0.13%、Si:0.6〜1.2%、Mn:1.6〜2.4%、P:0.10%以下、S:0.0050%以下、Al:0.01〜0.10%、N:0.0050%未満を含有するとともに、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、鋼板のミクロ組織は、体積分率でフェライトを80%以上、マルテンサイトを3〜15%、パーライトを0.5〜10%含む複合組織を有し、降伏比が70%以下で引張強さが590MPa以上であることを特徴とする伸びと伸びフランジ性に優れた低降伏比高強度冷延鋼板。
(2) (1)に記載の化学成分を有する鋼スラブに、熱間圧延、冷間圧延を施した後に、Ac〜Ac点の温度域に加熱して保持した後、前記保持温度から500〜550℃の温度まで1℃/s〜25℃/sの平均冷却速度で冷却し、その後は5℃/s以下の平均冷却速度で冷却することを特徴とする伸びと伸びフランジ性に優れた低降伏比高強度冷延鋼板の製造方法。
本発明によれば、鋼板成分、焼鈍温度及び焼鈍後の冷却条件を制御することにより、体積分率でフェライトを80%以上、マルテンサイトを3〜15%、パーライトを0.5〜10%含む複合組織を有し、引張強さ590MPa以上、降伏比70%以下、伸び29.0%以上かつ穴広げ率65%以上を有する伸び及び伸びフランジ性に優れた低降伏比の高強度冷延鋼板を得ることができる。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の高強度冷延鋼板の化学成分の限定理由を説明する。以下において、化学成分の「%」表示は質量%を意味する。
C:0.05〜0.13%
Cは鋼板の高強度化に有効な元素であり、パーライト及びマルテンサイトの第2相形成により高強度化に寄与する。この効果を得るためには、0.05%以上の添加が必要である。好ましくは0.08%以上である。一方、過剰に添加するとスポット溶接性が低下することから、上限を0.13%とする。
Si:0.6〜1.2%
Siは高強度化に寄与する元素であり、高い加工硬化能をもつことから強度上昇に対して伸びの低下が比較的少なく、強度−伸びバランスの向上にも寄与する元素である。さらにフェライト相の固溶強化により、硬質な第2相との硬度差を小さくするため、伸びフランジ性の向上にも寄与する。Siを適量添加することでフェライト相とパーライト相との界面からのボイドの発生を抑制することができるが、その効果を得るためには、0.6%以上含有することが必要である。伸びと伸びフランジ性の観点からは上限は特に規定されないが、1.2%超添加すると化成処理性が低下するため、その含有量は1.2%以下とする。好ましくは1.0%以下である。
Mn:1.6〜2.4%
Mnは固溶強化およびマルテンサイトを生成することで高強度化に寄与する元素であり、この効果を得るためには1.6%以上含有することが必要である。一方、過剰に含有した場合、成形性の低下が著しくなることから、その含有量を2.4%以下とする。好ましくは2.2%以下である。
P:0.10%以下
Pは固溶強化により高強度化に寄与するが、過剰に添加された場合には、粒界への偏析が著しくなって粒界を脆化させることや、溶接性が低下することから、その含有量を0.10%以下とする。好ましくは0.05%以下である。
S:0.0050%以下
Sの含有量が多い場合には、MnSなどの硫化物が多く生成し、伸びフランジ性に代表される局部伸びが低下するため含有量の上限を0.0050%とする。好ましくは、0.0030%以下である。下限は特に限定しないが、極低S化は製鋼コストが上昇するため、0.0005%以上含有することが好ましい。
Al:0.01〜0.10%
Alは脱酸に必要な元素であり、この効果を得るためには0.01%以上含有することが必要であるが、0.10%を超えて含有しても効果が飽和するため、その含有量は0.10%以下とする。好ましくは0.05%以下である。
N:0.0050%未満
Nは、粗大な窒化物を形成し、伸びフランジ性を劣化させることから、含有量を抑える必要がある。Nが0.0050%以上では、この傾向が顕著となることから、Nの含有量を0.0050%未満とする。
本発明では、上記の成分に加え、以下の成分の1種又は2種以上を添加しても良い。
V:0.10%以下
Vは微細な炭窒化物を形成することで、強度上昇に寄与することができる。このような効果を発揮させるには、Vの添加量を0.01%以上含有させることが好ましい。一方、0.10%を超えて添加しても強度上昇効果は小さく、却って合金コストの増加を招くため、その含有量は0.10%以下が好ましい。
Ti:0.10%以下
TiもVと同様に、微細な炭窒化物を形成することで、強度上昇に寄与することができるため、必要に応じて添加することができる。このような効果を発揮させるためには、Tiの含有量を0.005%以上とすることが好ましい。一方、多量にTiを添加すると、YRが著しく上昇するため、その含有量は0.10%以下が好ましい。
Nb:0.10%以下
NbもVと同様に、微細な炭窒化物を形成することで、強度上昇に寄与することができるため、必要に応じて添加することができる。このような効果を発揮させるためには、Nbの含有量を0.005%以上とすることが好ましい。一方、多量にNbを添加すると、YRが著しく上昇するため、その含有量は0.10%以下が好ましい。
Cr:0.50%以下
Crは焼入れ性を向上させ、第2相を生成することで高強度化に寄与する元素であり、必要に応じて添加することができる。この効果を発揮させるためには、0.10%以上含有させることが好ましい。一方、0.50%を超えて含有させても効果が飽和するため、その含有量は0.50%以下が好ましい。
Mo:0.50%以下
Moは焼入れ性を向上させ、第2相を生成することで高強度化に寄与し、さらに一部炭化物を生成して高強度化に寄与する元素であり、必要に応じて添加することができる。これらの効果を発揮させるためには、0.05%以上含有させることが好ましい。0.50%を超えて含有させても効果が飽和するため、その含有量は0.50%以下が好ましい。
Cu:0.50%以下
Cuは固溶強化により高強度化に寄与して、また焼入れ性を向上させ、第2相を生成することで高強度化に寄与する元素であり、必要に応じて添加することができる。これらの効果を発揮するためには0.05%以上含有させることが好ましい。一方、0.50%を超えて含有させても効果が飽和し、またCuに起因する表面欠陥が発生しやすくなるため、その含有量は0.50%以下が好ましい。
Ni:0.50%以下
NiもCuと同様、固溶強化により高強度化に寄与して、また焼入れ性を向上させ、第2相を生成することで高強度化に寄与する元素であり、必要に応じて添加することができる。これらの効果を発揮させるためには0.05%以上含有させることが好ましい。また、Cuと同時に添加すると、Cu起因の表面欠陥を抑制する効果があるため、Cu添加時に有効である。一方、0.50%を超えて含有させても効果が飽和するため、その含有量は0.50%以下が好ましい。
上記以外の残部はFe及び不可避的不純物である。不可避的不純物としては、例えば、Sb、Sn、Zn、Co等が挙げられ、これらの含有量の許容範囲としては、Sb:0.01%以下、Sn:0.1%以下、Zn:0.01%以下、Co:0.1%以下である。また、本発明では、Ta、Mg、Ca、Zr、REMを通常の鋼組成の範囲内で含有しても、その効果は損なわれない。
次に、本発明の高強度冷延鋼板のミクロ組織とその限定理由について説明する。
高強度冷延鋼板のミクロ組織は、主相はフェライトで体積分率が80%以上とし、マルテンサイトは体積分率を3〜15%、パーライトは体積分率を0.5〜10%とする。ここで体積分率は鋼板の全体に対する体積分率である。
フェライトの体積分率が80%未満では、硬質な第2相が多く存在するため、軟質なフェライトとの硬度差が大きい箇所が多く存在し、伸びフランジ性が低下する。そのためフェライト相の体積分率は80%以上とする。好ましくは83%以上である。
マルテンサイトの体積分率が3%未満では強度上昇効果が少なく、また十分な伸びを得られない上、YRが70%超となる。そのためマルテンサイトの体積分率は3%以上とする。一方、マルテンサイトの体積分率が15%を超えると、伸びフランジ性を顕著に低下させるため、マルテンサイトの体積分率は15%以下とする。好ましくは12%以下である。
パーライトの体積分率が0.5%未満では強度上昇効果が少ないため、強度と成形性のバランスを良好にするには、パーライトの体積分率は0.5%以上とする必要がある。一方、パーライトの体積分率が10%超では、YRが顕著に高くなるため、パーライトの体積分率は10%以下とする。好ましくは8%以下である。
また、フェライト、マルテンサイトおよびパーライト以外の残部組織はベイナイト、残留γ、球状セメンタイト等の1種あるいは2種以上を含む組織としてもよいが、伸びフランジ性の観点からフェライト、マルテンサイトおよびパーライト以外の残部組織の体積分率は5%以下であることが好ましい。
マルテンサイト及びパーライトの平均結晶粒径は特に限定しないが、平均結晶粒径が微細であると、発生したボイドの連結が抑制されるために伸びフランジ性は向上する。そのため、マルテンサイトの平均結晶粒径は10μm以下、パーライトの平均結晶粒径は5μm以下が好ましい。
次に本発明の高強度冷延鋼板の製造方法について説明する。
上記成分組成(化学成分)を有する鋼スラブに、熱間圧延、酸洗を施した後、冷間圧延を施し、その後焼鈍を施す。以下、詳しく説明する。
鋼スラブは、成分のマクロ偏析を防止するため連続鋳造法で製造することが好ましいが、造塊法、薄スラブ鋳造法によっても製造可能である。
[熱間圧延工程]
鋼スラブに、粗圧延、仕上げ圧延を施し、熱延板とする。圧延前にスラブを加熱することが好ましい。スラブ加熱温度が1100℃未満になると圧延負荷が増大し、生産性が低下し、1300℃を超えると加熱コストが増大するため、スラブ加熱温度は1100〜1300℃とすることが好ましい。一旦室温まで冷却したスラブを加熱炉で再加熱してもよいし、鋼スラブを室温まで冷却しないで、温片のままで加熱炉に装入して再加熱してもよい。また、スラブ加熱を行うことなく、鋼スラブを保熱した後に直ちに熱間圧延する、あるいは鋳造後そのまま熱間圧延する直送圧延・直接圧延などの省エネルギープロセスを適用してもよい。
仕上げ圧延終了温度が低すぎると鋼板内の組織不均一性及び材質の異方性が大きくなり、焼鈍後の伸び及び伸びフランジ性が劣化するので、オーステナイト単相域にて熱間圧延を終了するのが好ましい。そのため、仕上げ圧延終了温度は830℃以上とすることが好ましい。一方、仕上げ圧延終了温度が950℃超になると熱延組織が粗大になり、焼鈍後の特性が低下する。そのため、仕上げ圧延終了温度は830〜950℃とするのが好ましい。
その後の冷却方法は特に限定されない。巻取り温度も限定されないが、巻取り温度が700℃超になると粗大なパーライトが顕著に形成されるために焼鈍後の鋼板の成形性に影響を及ぼすことから、巻取り温度は700℃以下が好ましい。さらに好ましくは650℃以下である。巻取り温度の下限も特に限定されないが、巻取り温度が低温になりすぎると、硬質なベイナイトやマルテンサイトが過剰に生成し、冷間圧延負荷が増大するため、400℃以上が好ましい。
[酸洗工程]
熱間圧延工程後、酸性工程を実施し、熱延板表層のスケールを除去するのが好ましい。酸洗工程は特に限定されず、常法に従って実施すればよい。
[冷間圧延工程]
酸洗後の熱延板に対し、所定の板厚の冷延板に圧延する冷間圧延工程を行う。冷間圧延工程は特に限定されず常法で実施すればよい。
[焼鈍工程]
焼鈍工程は、再結晶を進行させるとともに、高強度化のためマルテンサイト及びパーライトの第2相組織を形成するために実施する。そのために、焼鈍工程は、Ac〜Ac点の温度域(均熱温度または保持温度とも言う)に加熱して保持した後、該均熱温度から500〜550℃の温度まで1℃/s〜25℃/sの平均冷却速度で冷却し、その後は5℃/s以下の平均冷却速度で冷却する。
均熱温度(保持温度):Ac〜Ac
均熱温度がAc点未満ではオーステナイトが生成しないため、その後、マルテンサイトを得る事ができず、Ac点超では粗大なオーステナイトとなるため、その後、所定のマルテンサイトおよびパーライトの体積分率を得ることができない。そのため、均熱温度はAc〜Ac点の範囲とする。好ましくはAc点−100℃〜Ac点である。均熱温度までの加熱速度が大きすぎると再結晶が進行しにくくなり、加熱速度が小さすぎるとフェライト粒が粗大になり強度が低下するため、均熱温度までの平均加熱速度は3〜30℃/sの範囲とするのが好ましい。また、再結晶の進行および一部オーステナイト変態を十分にするため、均熱時間は30s〜300s(秒)とすることが好ましい。
均熱温度から500〜550℃の温度までを1℃/s〜25℃/sの平均冷却速度で冷却する(1次冷却)
焼鈍工程後に最終的に得られる鋼板のミクロ組織を、フェライトの体積分率を80%以上、マルテンサイトの体積分率を3〜15%、パーライトの体積分率を0.5〜10%に制御するため、上記均熱温度から、1次冷却温度として500〜550℃の温度までを1℃/s〜25℃/sの平均冷却速度で冷却する1次冷却を行う。1次冷却温度が550℃超になるとマルテンサイトが十分形成せず、500℃未満になるとパーライトが十分形成しない。1次冷却温度を500〜550℃の範囲に規定することで、マルテンサイトとパーライトの両者を形成してその体積分率を調整することができる。500〜550℃の温度域までの平均冷却速度が1℃/s未満になるとマルテンサイトが体積分率で3%以上形成せず、平均冷却速度が25℃/s超になるとパーライトが体積分率で0.5%以上形成しない。従って、均熱温度から500〜550℃の温度域までの平均冷却速度は1℃/s〜25℃/sとする必要がある。好ましい平均冷却速度は15℃/s以下である。
1次冷却温度から5℃/s以下の平均冷却速度で冷却する(2次冷却)
1次冷却温度(500〜550℃)まで冷却した後は5℃/s以下の平均冷却速度で冷却する2次冷却を行う。2次冷却の平均冷却速度が5℃/sを超えるとマルテンサイトの体積分率が増加し、所定のマルテンサイトとパーライトの体積分率を得られなくなるため、1次冷却温度からの平均冷却速度は5℃/s以下とする。好ましくは3℃/s以下である。
また、焼鈍後に調質圧延を実施しても良い。伸長率の好ましい範囲は0.3%〜2.0%である。
なお、本発明の範囲内であれば、焼鈍工程において、1次冷却後に溶融亜鉛めっきを施して溶融亜鉛めっき鋼板としてもよく、また、溶融亜鉛めっき後に合金化処理を施して合金化溶融亜鉛めっき鋼板としても良い。
以下、本発明の実施例を説明する。
ただし、本発明は、もとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
表1に示す化学成分(残部成分:Feおよび不可避的不純物)の鋼を溶製して鋳造し、230mm厚のスラブを製造し、熱間圧延、酸洗、冷間圧延後、表2で示す製造条件で焼鈍を実施し、その後、スキンパス圧延(調質圧延)を実施した。なお、熱間圧延の際の加熱温度は1200℃、仕上げ圧延終了温度は890℃、巻取り温度は600℃とし、熱延板(板厚3.2mm)を製造した。次いで、酸洗、冷間圧延を行ない、冷延板(板厚1.4mm)を製造したのち、焼鈍、調質圧延(伸長率0.7%)を実施した。表2中の冷速1は焼鈍時の均熱温度から1次冷却温度までの平均冷却速度、冷速2は1次冷却温度から室温までの平均冷却速度を示す。なお、均熱温度までの平均加熱速度は10℃/sとした。
製造した鋼板から、JIS5号引張試験片を圧延直角方向が長手方向(引張方向)となるように採取し、引張試験(JIS Z2241(1998))により、降伏強さ(YS)、引張強さ(TS)、全伸び(EL)、降伏比(YR)を測定した。ELが29.0%以上を良好な伸びの有する鋼板、YRが70%以下を低降伏比の有する鋼板とした。
伸びフランジ性に関しては、日本鉄鋼連盟規格(JFS T1001(1996))に準拠し、クリアランス12.5%にて、直径10mmφの穴を打ち抜き、かえりがダイ側になるように試験機にセットした後、60°の円錐ポンチで穴広げ試験をすることにより穴広げ率(λ)を測定した。λ(%)が65%以上を良好な伸びフランジ性を有する鋼板とした。
鋼板のミクロ組織は、以下の方法により、フェライト、マルテンサイトおよびパーライトの体積分率を求めた。
鋼板のミクロ組織は、3%ナイタール試薬(3%硝酸+エタノール)を用いて、鋼板の圧延方向断面(板厚1/4の深さ位置)を腐食し、500倍〜1000倍の光学顕微鏡観察および1000〜100000倍の電子顕微鏡(走査型および透過型)により観察、撮影した組織写真を用いて、フェライトの体積分率、マルテンサイトの体積分率、パーライトの体積分率を定量化した。各12視野の観察を行い、ポイントカウント法(ASTM E562−83(1988)に準拠)により、面積率を測定し、その面積率を体積分率とした。フェライトはやや黒いコントラストの領域であり、マルテンサイトは白いコントラストの付いているものである。パーライトは、層状の組織で、板状のフェライトとセメンタイトが交互に並んでいる組織である。
また、フェライト、マルテンサイト、パーライト以外の組織については、上記光学顕微鏡ないし電子顕微鏡(走査型および透過型)の観察において、ベイナイトは、ポリゴナルフェライトと比較して転位密度の高い板状のベイニティックフェライトとセメンタイトを含む組織であり、球状セメンタイトは、球状化した形状を有するセメンタイトである。
また、残留オーステナイトの有無については表層より1/4厚まで研磨した面で、MoのKα線を線源とし加速電圧50keVにて、X線回折法(装置:Rigaku社製RINT2200)によって、鉄のフェライトの{200}面、{211}面、{220}面と、オーステナイトの{200}面、{220}面、{311}面のX線回折線の積分強度を測定し、これらの測定値を用いて非特許文献1に記載の計算式から残留オーステナイトの体積分率を求め、残留オーステナイトの有無を判断した。
引張特性と伸びフランジ性および鋼板組織の測定結果を表2に示す。
Figure 0005246283
Figure 0005246283
表2に示す結果から、本発明例は何れもフェライトの体積分率が80%以上、マルテンサイトの体積分率が3〜15%およびパーライトの体積分率が0.5〜10%の鋼板組織を有し、その結果、590MPa以上の引張強さと、70%以下の降伏比を確保しつつ、且つ、29.0%以上の伸びと65%以上の穴広げ率の良好な成形性が得られている。一方、比較例は、鋼板組織が本発明範囲を満足せず、その結果、引張強さ、降伏比、伸び、穴広げ率の少なくとも1つの特性が劣る。
本発明によれば、体積分率でフェライトを80%以上、マルテンサイトを3〜15%、パーライトを0.5〜10%含む複合組織を有し、引張強さ590MPa以上、降伏比70%以下、伸び29.0%以上かつ穴広げ率65%以上を有する伸び及び伸びフランジ性に優れた低降伏比の高強度冷延鋼板を得ることができる。

Claims (2)

  1. 鋼板の化学成分が、質量%で、C:0.05〜0.13%、Si:0.6〜1.2%、Mn:1.6〜2.4%、P:0.10%以下、S:0.0050%以下、Al:0.01〜0.10%、N:0.0050%未満を含有するとともに、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、鋼板のミクロ組織は、体積分率でフェライトを80%以上、マルテンサイトを3〜15%、パーライトを0.5〜10%含む複合組織を有し、降伏比が70%以下で引張強さが590MPa以上であることを特徴とする伸びと伸びフランジ性に優れた低降伏比高強度冷延鋼板。
  2. 請求項1に記載の化学成分を有する鋼スラブに、熱間圧延、冷間圧延を施した後に、Ac〜Ac点の温度域に加熱して保持した後、前記保持温度から500〜550℃の温度まで1℃/s〜25℃/sの平均冷却速度で冷却し、その後は5℃/s以下の平均冷却速度で冷却することを特徴とする体積分率でフェライトを80%以上、マルテンサイトを3〜15%、パーライトを0.5〜10%含む複合組織を有し、降伏比が70%以下で引張強さが590MPa以上である伸びと伸びフランジ性に優れた低降伏比高強度冷延鋼板の製造方法。
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