JP5243762B2 - ジャーマナイド薄膜、ジャーマナイド薄膜の作成方法、ジャーマナイド薄膜を備えたゲルマニウム構造体 - Google Patents

ジャーマナイド薄膜、ジャーマナイド薄膜の作成方法、ジャーマナイド薄膜を備えたゲルマニウム構造体 Download PDF

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Description

本発明は、ジャーマナイド薄膜、ジャーマナイド薄膜の作成方法、ジャーマナイド薄膜を備えたゲルマニウム構造体に関し、例えば、半導体装置、特に金属-絶縁膜-半導体電界効果トランジスタの作製において好適に用いることのできる、ジャーマナイド薄膜の作製に関する。
今日の高度情報処理産業の根幹をなす、シリコン超大規模集積回路(Si Ultra Large Scale Integrated Circuit:Si−ULSI)の性能向上は、その基本素子であるSi−MOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field Effect Transistor)の性能向上と高集積化によって支えられてきた。近年では、Si系電子デバイスのさらなる高速化および高機能化を達成するために、素子微細化に依存しない技術に注目が集まっている。その一つに、MOSFETのチャネル部分にSiよりも高い移動度を有する非Si材料を用いる技術がある。これらのデバイスでは、MOSFETのソースとドレインをつなぐチャネル部分に、SiGeやGeを用いる(例えば、特許文献1参照)。なかでも、Siと同じIV族元素であるゲルマニウム(Ge)に注目が集まっている(例えば、非特許文献1および非特許文献2参照)。その理由として、Geが電子および正孔移動度の両方においてSiよりも高い移動度を有していることが挙げられる。
Geを用いた電子デバイスにおいては、半導体回路から電気信号を取り出すための金属電極/Geコンタクトにおいても、新たな材料、構造、作製プロセスの開発が必要となる。Ge系電子デバイス材料の金属電極/Geコンタクト構造としては、熱処理によって金属とGeとを反応させて形成された化合物であるジャーマナイドを用いるものが有望視されている(例えば非特許文献3参照)。ジャーマナイドをコンタクト材料に用いることで、自己整合的なコンタクトを形成できるため、微細化が可能になる。
特許公開2001−291864(特許3420168) P. Zimmerman et al, InternationalElectron Devices Meeting,講演番号26.1(2006). W.P.Bai et al., IEEE Electron Devices Letters, vol 27, pp. 175 (2006). S.Gaudeta et al., Journal of Vacuum Science and Technology A24, p.464 (2005). S.L.Hsu et al. Applied Physics Letters 86, p.251906 (2005).
ジャーマナイドの候補としては、様々な材料が検討されているが、特にニッケル(Ni)とGeが1対1の割合で混合されたニッケルモノジャーマナイド(NiGe)を用いることで、低抵抗かつ低温で形成可能なコンタクトの実現が期待できる。
しかし、NiGe電極は、高温の熱処理(参考文献の場合、600℃以上)によって凝集を起こし、シート抵抗値が大きく増大してしまうという欠点がある(非特許文献4参照)。これはGe単結晶基板上に形成された多結晶NiGe薄膜中の結晶粒が、高温の熱処理によって、個々に分離してしまい、薄膜の均一性、平坦性が著しく劣化するためである。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、薄膜の均一性、平坦性の劣化を防止することで、薄膜の熱的安定性を向上させ、低いシート抵抗を維持できるジャーマナイド薄膜、ジャーマナイド薄膜の作成方法を提供することを目的とし、更に、ジャーマナイド薄膜を備えたゲルマニウム構造体を提供することを目的としている。
発明によれば、ゲルマニウム基板を用いる半導体装置用の電極用材料としてのジャーマナイド薄膜の作成方法であって
前記ゲルマニウム基板の上方に白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか一つあるいは複数からなる金属を含む金属層を形成する工程と、
前記金属層の上方にニッケル層を形成する工程と、
前記金属層を構成する前記金属、ニッケル、及びゲルマニウムからなる合金を形成するように、前記金属層及び前記ニッケル層を熱処理する工程と、を行うことにより、前記ジャーマナイド薄膜を形成し、前記ジャーマナイド薄膜中に白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか一つあるいは複数の金属が含まれ、前記ニッケルに対するこれらの金属の比率が20%以上であって、かつ、70%以下になり、前記ジャーマナイド薄膜中において、(Ni 1−x )Ge(Niはニッケル、Geはゲルマニウム、Mは、白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか1つあるいは複数の金属を示す。0.2≦x≦0.7)のニッケルを含む金属(Ni 1−x )とゲルマニウムGeとの化学量論的組成比が1:1であることを特徴とする
上記の工程を備えることによって、NiGeにPt、Co、Pd、Rh、Irのうちのいずれかあるいは複数の金属が添加され、合金が形成される結果、薄膜の熱的安定性を向上できる。具体的な手法の一つとしては、コンタクトを形成すべきGe上に、NiおよびPtを成膜し、その後、これを熱処理することで、NiPtジャーマナイドを形成する。従来のNiGe薄膜の場合、400℃以上の熱処理によって、薄膜の凝集が生じ、シート抵抗が増大する。しかし、本発明によって形成されたNiPtジャーマナイド膜の場合、550℃の熱処理後においても、膜は均一な構造を維持しており、低いシート抵抗を示す。
らに前述のジャーマナイド薄膜の作成方法において、前記ジャーマナイド薄膜中に白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか一つあるいは複数の金属が含まれ、前記ニッケルに対するこれらの金属の比率が20%以上であって、かつ、70%以下になることがよい
前記白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムの金属種を20%以上含むことによって、Niジャーマナイドの熱的安定性が向上する。また、Niジャーマナイドに添加する金属種のNiに対する組成を70%以下とすることで、Niモノジャーマナイド以外の結晶相を含まない、低抵抗率のジャーマナイド層を形成できる。
発明によれば、ゲルマニウム基板を用いる半導体装置用の電極用材料としてのジャーマナイド薄膜において、前記ジャーマナイド薄膜は、ゲルマニウムおよびニッケルに加えて、白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか一つもしくは複数を含む合金からなり、前記ジャーマナイド薄膜を構成する結晶粒の結晶面方位が、前記ゲルマニウム基板の[110]結晶面に対して、[102]面あるいは[001]面を平行とする配向関係になっており、前記ジャーマナイド薄膜中に白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか一つあるいは複数の金属が含まれ、前記ニッケルに対するこれらの金属の比率が20%以上であって、かつ、70%以下になり、前記ジャーマナイド薄膜中において、(Ni 1−x )Ge(Niはニッケル、Geはゲルマニウム、Mは、白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか1つあるいは複数の金属を示す。0.2≦x≦0.7)のニッケルを含む金属(Ni 1−x )とゲルマニウムGeとの化学量論的組成比が1:1であることを特徴とする。
上記のように形成されるジャーマナイド膜は前述の配向関係を有することで、Niジャーマナイドに比較して、Ge基板とジャーマナイド薄膜との界面エネルギーが減少する。これによって、ジャーマナイド薄膜の熱的安定性が向上する。
述のジャーマナイド薄膜において、前記ジャーマナイド薄膜中に白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか一つあるいは複数の金属が含まれ、前記ニッケルに対するこれらの金属の比率が20%以上であって、かつ、70%以下であることがよい
上記白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムの金属種を20%以上含むことによって、Ge基板上に形成されるNiジャーマナイドの結晶配向性を制御することが可能となり、その結果、Niジャーマナイド薄膜の熱的安定性が向上する。また、Niジャーマナイドに添加する金属種のNiに対する組成を70%以下とすることで、Niモノジャーマナイド以外の結晶相を含まない、低抵抗率のジャーマナイド層を形成できる。
本発明のゲルマニウム構造体は、上記のジャーマナイド薄膜を備えている。
前記のジャーマナイド薄膜をゲルマニウム基板上に形成することで、低抵抗かつ熱的安定性に優れた、ジャーマナイド/Ge構造体を形成できる。本構造体はGe電子デバイスに対して、従来のNiジャーマナイド/Ge構造体よりも優れた電極構造を提供するものである。
発明によれば、ゲルマニウム基板を用いる半導体装置用の電極用材料としてのジャーマナイド薄膜の作成方法において、前記ゲルマニウム基板の上方に白金(Pt)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)のうちのいずれか一つあるいは複数からなる金属層を形成する工程と、前記金属層の上方にニッケル層を形成する工程と、前記金属層を構成する金属、ニッケル、ゲルマニウムからなる合金を形成するように、前記金属層及び前記ニッケル層を熱処理する工程とを備えているので、NiGeにPt、Co、Pd、Rh、Irのうちのいずれかあるいは複数の金属が添加された結果、薄膜の熱的安定性を向上できる。
詳細には、NiGeに白金(Pt)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)のうちのいずれか一つあるいは複数の金属を添加した、(Ni 1-x x )Ge薄膜(Niはニッケル、Geはゲルマニウム、Mは、白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか1つあるいは複数の金属を示す。0.2≦x≦0.7)を用いることによって、550℃まで安定な構造を維持でき、低いシート抵抗を維持できるGe電子デバイスに好適なコンタクト材料が実現できる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図1乃至図14を用いて説明する。
はじめに、Ge系電子デバイスにおける、ジャーマナイド/Geコンタクト構造の一般的な形成法について、簡単に述べる。
ゲルマニウム基板となるGeに対し化学洗浄を施し、汚染物を取り除いたGe上に電子銃蒸着法、スパッタ法、あるいは化学気相成長法などの一般的な手法を用いて、Ni、Co、Pt、Ti、Zr、Hf、Pd、Cu、RhあるいはIrなどの単一の元素からなる金属層を堆積する。
その後、全体を真空中あるいは窒素雰囲気中などにおいて熱処理することで、Geと金属との界面において固相反応を生じさせ、Niジャーマナイド等とGeと種々の金属との化合物であるジャーマナイドを形成する。
前述の方法では、Geと金属が直接接合している領域でのみ、固相反応が生じ、ジャーマナイドが形成されるため、コンタクトを形成しない場所には、あらかじめ化学的に安定な二酸化シリコン膜等を堆積させておくことで、金属とGeとの反応を抑止できる。その後、未反応の金属を除去することも可能である。このような方法を用いれば、リソグラフィなどの複雑な工程を用いなくても、所望の箇所にのみ自己整合的にジャーマナイド/Geコンタクト構造を形成でき、素子の微細化に対しては有利である。そのため同様の手法は、従来のSi系MOSFET作製プロセスでは広く用いられている。
以下本発明のゲルマニウム基板を用いる半導体装置用の電極用材料としてのジャーマナイド薄膜の作成方法について、図1および図2に基づき説明する。その作成方法は、ゲルマニウム基板の上方に白金(Pt)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)のうちのいずれか一つあるいは複数からなる金属層を形成する工程と、前記金属層の上方にニッケル層を形成する工程と、前記金属層を構成する金属、ニッケル、ゲルマニウムからなる合金を形成するように、前記金属層及び前記ニッケル層を熱処理する工程とを備えている。
図1および図2は、本発明を具体化した(Ni1-xPtx)Ge薄膜/Ge構造体の作製方法を説明するための図である。図1において、(Ni1-xPtx)Ge薄膜/Ge構造体となる多層膜構造体10では、Ge基板11上に、Pt薄膜12が形成され、さらにPt薄膜12の上方にNi薄膜13が形成されている。
(実施例1)
以下実施例1について説明すると、Ge(001)単結晶基板11に化学洗浄を施し、即座に超高真空装置内に導入した。真空度5×10-7Pa以下の真空度において、電子線蒸着法を用いて、膜厚2.6nmのPt薄膜12を堆積した。さらに連続して膜厚7.4nmのNi薄膜13を堆積した。試料を大気中に取り出すことなく、同一の真空装置内において、1×10-6Pa以下の真空中で、この試料に300℃で30分間の熱処理を加えた。以上の処理によって、Ge(001)単結晶基板21上にNi、Pt、Geの三元素からなる(Ni1-xPtx)Ge薄膜22が形成された(Ni1-xPtx)Ge薄膜/Ge構造体20を作製した(図2参照)。
ただし、(Ni1-xPtx)Ge/Ge構造を形成する工程は、上記に限定されるものではない。その他の一般的なジャーマナイド薄膜成膜法を用いる手法によっても、以下に述べるのと同様の効果を得られる(Ni1-xPtx)Ge薄膜/Ge構造体を形成できることは明らかである。
以下、本実施例の(Ni1-xPtx)Ge/Ge構造の構造・機能・効果をより分かり易く説明するために、下記の比較例を用いて対比しながら説明する。
(比較例)
比較のために、NiあるいはPtのみを用いて、NiGe薄膜およびPtGe薄膜を形成した。Ge(001)単結晶に化学洗浄を施し、即座に超高真空装置内に導入した。真空度5×10-7Pa以下の真空度において、電子線蒸着法を用いて、膜厚10nmのNiを堆積した。同一の真空装置内において1×10-6Pa以下の真空中で、この試料に300℃で30分間の熱処理を加えた。
作製した各試料を300℃、30分間の熱処理後、および、追加の400~700℃、30秒間の熱処理後に、結晶構造を低角入射XRD(X−ray Diffraction)法を用いて評価した。図3〜図5は、それぞれ比較例であるNi/Ge、Pt/Ge、および実施例であるNi/Pt/Ge試料を熱処理した後に測定した、XRDプロファイルである。図中のそれぞれのピーク上に示された記号および併記した数字は、解析の結果、対応づけられた結晶相、および結晶面指数を示している。
比較例のNi/Ge試料においては、300℃熱処理後にNiGe多結晶に対応する回折ピークが観察され、700℃熱処理後においてもNiGe以外の結晶相は観察されない。比較例のPt/Ge試料においては、300℃熱処理後に主にPtGe多結晶に対応する回折ピークが観察される。しかし、400℃熱処理後においては、PtGeに起因する回折ピークは消滅し、Pt2Ge3あるいはPtGe2に対応する回折ピークが観察される。この結果は、比較例のPtGe相は高温の熱処理によって基板のGeと反応し、よりGe組成の高い結晶相を形成することを示している。すなわち、Ge上においては、PtGe結晶が、NiGe結晶に比較して、熱的に不安定であることを示している。
一方、実施例であるNi/Pt/Ge試料においては、300℃熱処理後にNiGeの回折プロファイルとよく似た位置に幅の広いピークが観察される。このピークの強度は熱処理温度の増加と共に強くなり、550℃以上の熱処理後においては、比較例のNiGeの回折プロファイルとほぼ同様の回折プロファイルが観察される。この結果は、NiGeと同様の結晶相である斜方晶モノジャーマナイドの形成を示唆している。500℃以下の熱処理時において、回折プロファイルが弱いことは、反応系形成物がGe基板に対して強く配向しているか、あるいはアモルファス状態であることを示唆している。なぜなら、低角入射XRD測定は、その測定系の特徴から、配向性の乏しい、乱雑な結晶方位分布を有する多結晶構造を最も効率よく検出する手法だからである。300℃熱処理後における薄膜の結晶構造については、電子顕微鏡観察結果の項において後述する。
図6(a)にNi/Pt/Ge試料、各温度での熱処理後のXRDプロファイルのうち、(111)面に対応するピーク周辺を拡大した図を示す。図中には合わせて、PtGe(111)面、およびNiGe(111)面のピークに対応する回折角を点線で示す。観察されたピーク位置はPtGe(111)面およびNiGe(111)面の回折角の中間に位置している。この結果は、Ni/Pt/Ge試料における反応形成物が、Ni、Pt、Geの三元系から成り、NiGeやPtGeと同じ結晶構造を有する(Ni1-xPtx)Ge多結晶であることを示している。
XRD回折ピーク位置が(Ni1-xPtx)Ge中のPt組成xに対して線形の関係にあると仮定して、各熱処理後の試料における(Ni1-xPtx)Ge薄膜中のPt組成xを評価した。その結果を図6(b)に示す。300℃熱処理後において、(Ni1-xPtx)Ge薄膜中のPt組成は0.77であり、熱処理温度の増大に伴って、その組成は減少する。
Ni/GeおよびNi/Pt/Ge試料を300℃で熱処理した後の、断面TEM(Transmission Electron Micoscopy)像を、それぞれ図7(a)および7(b)に示す。図7(a)より、Ni/Ge試料では、Ge基板上に、膜厚約20nmで、単一の層からなる均一な多結晶相が形成されていることがわかる。この結晶相はXRDの結果よりNiGeであると考えられる。その結晶粒サイズは、平面方向に100nm程度である。
一方、Ni/Pt/Ge試料の場合、図7(b)より、Ni/Ge試料と同様にGe基板上に、膜厚約20nmで、単一の層からなる均一な多結晶相が形成されていることがわかる。ただし、その結晶粒サイズは、Ni/Ge試料に比較して小さく、40nm前後である。この結晶相はXRDの結果より、(Ni1−xPtx)Geであると考えられる。
Ni/Ge、300℃熱処理後の試料の平面TEM像およびTED(Transmission Electron Diffraction)像を、それぞれ図8(a)および8(b)に示す。図8(a)より、NiGe薄膜は100nm以上の大きさの粗大な結晶粒から形成されていることが観察できる。図8(a)のTED像においては、同心円状に分布した回折パターンが観察され、NiGe薄膜が乱雑に配向した多結晶相であることがわかる。ただし、図8(b)に示すように、TED像において、特定の位置に強い回折スポットも観察される。それぞれの回折スポットに対応する結晶面指数を同図中に示す。解析の結果、これらの回折スポットは、NiGe[101]//Ge[110]およびNiGe[100]//Ge[110]となる配向関係に起因することがわかった。この結果は、NiGe多結晶の一部の結晶粒が上記の配向関係に従って、Ge(001)単結晶基板に配向していることを示している。
次に、Ni/Pt/Ge、300℃熱処理後の試料の平面TEM像およびTED像を、それぞれ図9(a)および9(b)に示す。図9(a)のTEM像においては、明らかにNi/Ge系とは異なる構造が観察される。すなわち、Ge基板の[110]方向に沿った、長辺20〜30nm程度の長方形状の微細な構造が多数観察される。これは、断面TEM像においても観察されたように、(Ni1−xPtx)Ge薄膜がNiGe薄膜に比較して、より微細な構造からなることを示している。さらに、図9(b)に示したTED像においては、Ni/Ge試料に見られたような同心円状のパターンは観察されず、特定の離散的な位置に回折スポットが現れている。各回折スポットに対応する結晶面指数を同図中に示す。解析の結果、それぞれのスポットはNiGe/Geの場合に観察された(Ni1-xPtx)Ge[101]//Ge[110]、(Ni1-xPtx)Ge[100]//Ge[110]、に加え(Ni1-xPtx)Ge[102]//Ge[110]、および(Ni1-xPtx)Ge[001]//Ge[110]の4つの配向関係に起因することがわかった。すなわち、(Ni1-xPtx)Ge薄膜においては、その多結晶粒の大部分がそれぞれの局所領域において、上記の配向関係に従って、Ge(001)単結晶基板に擬エピタキシャル的に強く配向していることを示している。このことから、ジャーマナイド薄膜を構成する結晶粒の結晶面方位が、前記ゲルマニウム基板の[110]結晶面に対して、[102]面あるいは[001]面を平行とする配向関係になっていることが分かる。
本結果から、Niジャーマナイド薄膜にPtを添加する効能が推測される。NiGeおよびPtGeは共に斜方晶系の結晶構造を持つ。この二つのジャーマナイドは同じ結晶系を有することから、PtGeとNiGeとは相互に固溶して、(Ni1-xPtx)Geのような三元化合物を形成し易いと考えられ、前述のXRDやTEMの結果もそれを裏付けている。また、NiGeおよびPtGeの格子定数(a,b,c)は、それぞれ(0.5381nm,0.3428nm,0.5811nm)および(0.5719nm、0.3697nm、0.6084nm)である。すなわち、PtGeはNiGeよりも5〜8%格子定数が大きいため、PtGeがNiGeに固溶した(Ni1-xPtx)Geは、NiGeに比べて大きな格子定数を有している。そのため、(Ni1-xPtx)Geの基板Geに対する配向性は、NiGeとは異なる傾向を示すことが推測される。実際、実施例において形成された(Ni1-xPtx)Geは、乱雑な多結晶構造を示したNiGeとは異なり、Ge(001)基板に対して、強い配向性を示している。したがって、NiGeにPtを添加することによって、ジャーマナイド薄膜の配向性を制御できたことは明らかである。
NiGeと同じ、1:1の化学量論的組成比を有し、斜方晶系とよく似た結晶構造をとるジャーマナイドとしては、その他にCoGe、PdGe、RhGe、およびIrGeなどが挙げられる。したがって、Ptのほかにも、Co、Pd、Rh、あるいはIrなどを同様に利用することが考えられる。これらの金属のうち一種類あるいは複数種を、NiGeに添加することによっても、本実施例と同様の効果が期待できることは容易に類推できる。
また、このとき金属をNiジャーマナイド層に導入する手法としては、本実施例でも示したようなNi層とGe基板との間に導入して、これを熱処理する方法が考えられる。これ以外にも、スパッタリング法や化学気相成長法を用いて、あらかじめNiと添加する金属種との合金をGe上に堆積して、熱処理する方法なども挙げられる。
Ni/Ge、600℃熱処理後の試料の平面TEM像およびTED像を、それぞれ図10(a)および10(b)に示す。図10(a)のTEM像から、600℃の熱処理後において、NiGe薄膜は、それぞれの結晶粒が凝集した結果、完全に分断された構造になっていることがわかる。TED像においては、非常に弱い回折パターンしか得られないが、300℃熱処理後の試料においても観察された、NiGe[101]//Ge[110]およびNiGe[100]//Ge[110]となる配向関係に起因する回折スポットが観察される。
Ni/Pt/Ge、600℃熱処理後の試料の平面TEM像およびTED像を、それぞれ図11(a)および11(b)に示す。図11(a)のTEM像から、600℃の熱処理後において、(Ni1-xPtx)Ge薄膜でも、それぞれの結晶粒が凝集している様子が観察される。ただし、凝集の度合いはNiGe薄膜に比べると小さく、個々の結晶粒が連続している領域も観察される。TED像においては、Ni/Ge同様に非常に弱い回折パターンしか得られず、300℃熱処理後の試料においても観察された、(Ni1-xPtx)Ge[101]//Ge[110]および(Ni1-xPtx)Ge[100]//Ge[110]となる配向関係に起因する回折スポットが観察される。すなわち、600℃の熱処理後には、(Ni1-xPtx)Ge薄膜に見られた特徴的な配向関係は消失している。
図12(a)〜12(d)に、Ni/Ge試料の400℃、500℃、600℃、および650℃熱処理後の表面SEM(Scanning Electron Microscopy)像をそれぞれ示す。400℃熱処理後において、一部に暗い穴状の領域が観察される。これはNiGe結晶の凝集に伴ってGe基板が露出した領域である。熱処理温度の増大に伴って、この暗い領域は広がっていき、550℃以上の熱処理後においては、ほぼ全てのNiGeの結晶粒が完全に分断されている。
図13(a)〜13(d)に、Ni/Pt/Ge試料の400℃、500℃、600℃、および650℃熱処理後の表面SEM像をそれぞれ示す。400℃および500℃熱処理後において、試料表面は非常に均一であり、Ge基板の露出を示す暗い領域は観察されない。550℃熱処理後において、一部の領域に小さな暗い領域が観察される。600℃の熱処理後においては、暗い領域が広がり、(Ni1-xPtx)Ge結晶の凝集が生じていることがわかる。しかし、個々の結晶粒は連続しており同じ温度で熱処理を行ったNiGe薄膜に比較すると、その凝集の度合いは十分小さいことがわかる。
図14にNi/Ge、Pt/Ge、およびNi/Pt/Ge試料のシート抵抗値の熱処理温度依存性を示す。シート抵抗は四端針法によって測定した。NiおよびPtを蒸着していない、Ge(001)単結晶基板のみのシート抵抗値測定結果も図中に点線で示している。
Ni/Ge試料では、300℃熱処理後において最も低いシート抵抗値を示す。しかし、400℃以上の熱処理後において、その抵抗値は熱処理温度と共に増大し、550℃熱処理後においては、Ge基板のシート抵抗値と同等となる。これはNiGe薄膜の凝集と共にシート抵抗値が増大することを示しており、550℃の熱処理によって、NiGe多結晶粒が分断された結果、シート抵抗値がGe基板の抵抗値で決まってしまっていることを示している。
一方、Ni/Pt/Ge試料においては、300℃熱処理後のシート抵抗値はNi/Ge試料に比較して7割ほど高い。ただし、その抵抗値は550℃熱処理後も安定であり、600℃以上の熱処理によって増大する。550℃の熱処理後において、(Ni1-xPtx)Ge薄膜がNiGe薄膜に比較して低いシート抵抗値を示すのは、前述のように、NiGe薄膜へのPt添加によって、薄膜の凝集が抑制されているためである。
Pt/Ge試料においては、300℃熱処理後においては、3種類の試料の中で最も高いシート抵抗値を示すが、400℃〜550℃の範囲で熱処理温度の増加と共にその抵抗値は減少する。これは、XRD測定の結果でも示したように、Pt/Ge系においては400℃以上の熱処理によって、Ge組成の高いPt2Ge3やPtGe2相が形成されているためである。すなわち、よりGe組成の高い結晶相が形成されることで、薄膜の膜厚が増大し、実効的なシート抵抗値が減少する。ただし、このようなGe組成の高い薄膜は、NiGe薄膜に比較して、膜厚が増大するため、より微細な構造を必要とする半導体デバイスには不適であることは明らかである。PtGe薄膜においては、600℃以上の熱処理によって、シート抵抗値は熱処理温度と共に増大する。
以上の結果より、Ge基板上にNiGe薄膜にPtを添加した(Ni1-xPtx)Ge薄膜を形成することによって作製された(Ni1-xPtx)Ge/Ge構造においては、NiGe薄膜に比較して、高温の熱処理後も結晶粒の凝集に伴う、ジャーマナイド薄膜の不均一化を抑制できることが明らかになった。
NiGeに対するPtの添加によって、Ge基板上に(Ni1-xPtx)Ge薄膜を特定の強い配向関係を持って、擬エピタキシャル的に成長できる。このように形成された(Ni1-xPtx)Ge薄膜は、乱雑な結晶面方位分布で形成されたNiGe多結晶薄膜に比較して、ジャーマナイド薄膜/ゲルマニウム基板界面における界面エネルギーが低下するために、高温の熱処理にさらされた場合においても、薄膜の凝集が効果的に抑制されると考えられる。その結果、NiGe薄膜に比較して150℃高温の条件下においても、ジャーマナイド薄膜のシート抵抗値を一定に維持できることがわかった。
このとき、Niジャーマナイドに添加するPtなどの金属種の量については、適切な組成が存在すると考えられる。今回の実施例において、Niに対して添加されたPtの組成比は20%であった。Ptを含まない、すなわちPt量0%の場合にはその効果が現れないことは、明らかである。Ptを20%以上含ませることで、(Ni1-xPtx)Ge薄膜が形成され、かつ熱的安定性が向上できることが明らかになった。
一方、Niを全く含まないPt量100%の場合には、XRDの結果からも、400℃以上の熱処理において、金属対Geの比が1対1以外の、Ge組成の高い結晶相が形成されることが明らかになった。このような結晶相はゲルマニウム組成比が高いため、金属量を同量として比較した場合、モノジャーマナイドよりも厚い薄膜となる。つまり、Ge組成の高いジャーマナイド薄膜では、膜厚を薄くすることが難しくなることを示している。さらに、モノジャーマナイド相以外の結晶相が形成されることは、薄膜中に異なる結晶相が混在する可能性につながり、構造の均一性の観点から不利である。したがって、Pt組成が高すぎる場合、形成されるジャーマナイド薄膜はGe電子デバイスの微細化に向けては不適である。実施例における、図6(b)に示したXRDの詳細な評価結果から、(Ni1-xPtx)Geにはx=70%以上のPtが含まれていても、700℃以上でモノジャーマナイド相が維持できることが明らかになった。したがって、(Ni1-xPtx)Geに対して含有できるPt組成は70%を一つの臨界値として決定できる。前述した白金以外の金属種についても、同様に本発明の効果を発揮するのに適切な金属組成が存在することが推測できる。
以上の結果より、(Ni1-xPtx)Ge薄膜においては、Ge上のPtGe薄膜で生じるような高Ge組成ジャーマナイド相への相転位が起こらず、薄膜の厚さとシート抵抗値を一定に維持できることが明らかになった。これらの物性は、Geデバイスのコンタクト材料として好適なものであり、従来のジャーマナイド薄膜の特性を大きく改善する。その結果、上記のジャーマナイド薄膜を備えたゲルマニウム構造体は、低抵抗かつ熱的安定性に優れた、ジャーマナイド/Ge構造体となる。本ゲルマニウム構造体は、従来のNiジャーマナイド/Ge構造体よりも優れたものとなる。
本発明の(Ni1-xPtx)Ge薄膜の形成法を説明するための図。 本発明の(Ni1-xPtx)Ge薄膜/Ge基板構造体を説明するための図。 Ni/Ge試料を熱処理後に測定した、XRDプロファイル。 Pt/Ge試料を熱処理後に測定した、XRDプロファイル。 Ni/Pt/Ge試料を熱処理後に測定した、XRDプロファイル。 (a)Ni/Pt/Ge試料の熱処理後のXRDプロファイルのうち、(111)面に対応するピーク周辺を拡大した図。(b)XRDプロファイルより評価された(Ni1-xPtx)Ge薄膜中のPt組成。 (a)Ni/Geおよび(b)Ni/Pt/Ge試料を300℃で熱処理した後の断面TEM像。 Ni/Ge、300℃熱処理後の試料の(a)平面TEM像および(b)TED像。 Ni/Pt/Ge、300℃熱処理後の試料の(a)平面TEM像および(b)TED像。 Ni/Ge、600℃熱処理後の試料の(a)平面TEM像および(b)TED像。 Ni/Pt/Ge、600℃熱処理後の試料の(a)平面TEM像および(b)TED像。 Ni/Ge試料の(a)400℃、(b)500℃、(c)600℃、および(d)650℃熱処理後の表面SEM像。 Ni/Pt/Ge試料の(a)400℃、(b)500℃、(c)600℃、および(d)650℃熱処理後の表面SEM像。 Ni/Ge、Pt/Ge、およびNi/Pt/Ge試料のシート抵抗値の熱処理温度依存性。
符号の説明
10:多層膜構造体、11:Ge基板、12:Pt薄膜、13:Ni薄膜
20:多層膜構造体、21:Ge基板、22:(Ni1-xPtx)Ge薄膜

Claims (5)

  1. ゲルマニウム基板を用いる半導体装置用の電極用材料としてのジャーマナイド薄膜の作成方法であって
    前記ゲルマニウム基板の上方に白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか一つあるいは複数からなる金属を含む金属層を形成する工程と、
    前記金属層の上方にニッケル層を形成する工程と、
    前記金属層を構成する前記金属、ニッケル、及びゲルマニウムからなる合金を形成するように、前記金属層及び前記ニッケル層を熱処理する工程と、を行うことにより、前記ジャーマナイド薄膜を形成し、
    前記ジャーマナイド薄膜中に白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか一つあるいは複数の金属が含まれ、
    前記ニッケルに対するこれらの金属の比率が20%以上であって、かつ、70%以下になり、
    前記ジャーマナイド薄膜中において、(Ni 1−x )Ge(Niはニッケル、Geはゲルマニウム、Mは、白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか1つあるいは複数の金属を示す。0.2≦x≦0.7)のニッケルを含む金属(Ni 1−x )とゲルマニウムGeとの化学量論的組成比が1:1であることを特徴とするジャーマナイド薄膜の作成方法。
  2. 前記ゲルマニウム基板は、Ge(001)単結晶基板である請求項1記載のジャーマナイド薄膜の作成方法。
  3. ゲルマニウム基板を用いる半導体装置用の電極用材料としてのジャーマナイド薄膜において、
    前記ジャーマナイド薄膜は、ゲルマニウムおよびニッケルに加えて、白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか一つもしくは複数を含む合金からなり、
    前記ジャーマナイド薄膜を構成する結晶粒の結晶面方位が、前記ゲルマニウム基板の[110]結晶面に対して、[102]面あるいは[001]面を平行とする配向関係になっており、
    前記ジャーマナイド薄膜中に白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか一つあるいは複数の金属が含まれ、
    前記ニッケルに対するこれらの金属の比率が20%以上であって、かつ、70%以下になり、
    前記ジャーマナイド薄膜中において、(Ni 1−x )Ge(Niはニッケル、Geはゲルマニウム、Mは、白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか1つあるいは複数の金属を示す。0.2≦x≦0.7)のニッケルを含む金属(Ni 1−x )とゲルマニウムGeとの化学量論的組成比が1:1であることを特徴とするジャーマナイド薄膜。
  4. 前記ゲルマニウム基板は、Ge(001)単結晶基板である請求項3記載のジャーマナイド薄膜。
  5. 請求項3または4に記載のジャーマナイド薄膜を備えたゲルマニウム構造体。
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