JP5243762B2 - ジャーマナイド薄膜、ジャーマナイド薄膜の作成方法、ジャーマナイド薄膜を備えたゲルマニウム構造体 - Google Patents
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しかし、NiGe電極は、高温の熱処理(参考文献の場合、600℃以上)によって凝集を起こし、シート抵抗値が大きく増大してしまうという欠点がある(非特許文献4参照)。これはGe単結晶基板上に形成された多結晶NiGe薄膜中の結晶粒が、高温の熱処理によって、個々に分離してしまい、薄膜の均一性、平坦性が著しく劣化するためである。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、薄膜の均一性、平坦性の劣化を防止することで、薄膜の熱的安定性を向上させ、低いシート抵抗を維持できるジャーマナイド薄膜、ジャーマナイド薄膜の作成方法を提供することを目的とし、更に、ジャーマナイド薄膜を備えたゲルマニウム構造体を提供することを目的としている。
前記ゲルマニウム基板の上方に白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか一つあるいは複数からなる金属を含む金属層を形成する工程と、
前記金属層の上方にニッケル層を形成する工程と、
前記金属層を構成する前記金属、ニッケル、及びゲルマニウムからなる合金を形成するように、前記金属層及び前記ニッケル層を熱処理する工程と、を行うことにより、前記ジャーマナイド薄膜を形成し、前記ジャーマナイド薄膜中に白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか一つあるいは複数の金属が含まれ、前記ニッケルに対するこれらの金属の比率が20%以上であって、かつ、70%以下になり、前記ジャーマナイド薄膜中において、(Ni 1−x M x )Ge(Niはニッケル、Geはゲルマニウム、Mは、白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか1つあるいは複数の金属を示す。0.2≦x≦0.7)のニッケルを含む金属(Ni 1−x M x )とゲルマニウムGeとの化学量論的組成比が1:1であることを特徴とする。
上記の工程を備えることによって、NiGeにPt、Co、Pd、Rh、Irのうちのいずれかあるいは複数の金属が添加され、合金が形成される結果、薄膜の熱的安定性を向上できる。具体的な手法の一つとしては、コンタクトを形成すべきGe上に、NiおよびPtを成膜し、その後、これを熱処理することで、NiPtジャーマナイドを形成する。従来のNiGe薄膜の場合、400℃以上の熱処理によって、薄膜の凝集が生じ、シート抵抗が増大する。しかし、本発明によって形成されたNiPtジャーマナイド膜の場合、550℃の熱処理後においても、膜は均一な構造を維持しており、低いシート抵抗を示す。
前記白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムの金属種を20%以上含むことによって、Niジャーマナイドの熱的安定性が向上する。また、Niジャーマナイドに添加する金属種のNiに対する組成を70%以下とすることで、Niモノジャーマナイド以外の結晶相を含まない、低抵抗率のジャーマナイド層を形成できる。
上記白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムの金属種を20%以上含むことによって、Ge基板上に形成されるNiジャーマナイドの結晶配向性を制御することが可能となり、その結果、Niジャーマナイド薄膜の熱的安定性が向上する。また、Niジャーマナイドに添加する金属種のNiに対する組成を70%以下とすることで、Niモノジャーマナイド以外の結晶相を含まない、低抵抗率のジャーマナイド層を形成できる。
前記のジャーマナイド薄膜をゲルマニウム基板上に形成することで、低抵抗かつ熱的安定性に優れた、ジャーマナイド/Ge構造体を形成できる。本構造体はGe電子デバイスに対して、従来のNiジャーマナイド/Ge構造体よりも優れた電極構造を提供するものである。
詳細には、NiGeに白金(Pt)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)のうちのいずれか一つあるいは複数の金属を添加した、(Ni 1-x M x )Ge薄膜(Niはニッケル、Geはゲルマニウム、Mは、白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか1つあるいは複数の金属を示す。0.2≦x≦0.7)を用いることによって、550℃まで安定な構造を維持でき、低いシート抵抗を維持できるGe電子デバイスに好適なコンタクト材料が実現できる。
はじめに、Ge系電子デバイスにおける、ジャーマナイド/Geコンタクト構造の一般的な形成法について、簡単に述べる。
ゲルマニウム基板となるGeに対し化学洗浄を施し、汚染物を取り除いたGe上に電子銃蒸着法、スパッタ法、あるいは化学気相成長法などの一般的な手法を用いて、Ni、Co、Pt、Ti、Zr、Hf、Pd、Cu、RhあるいはIrなどの単一の元素からなる金属層を堆積する。
その後、全体を真空中あるいは窒素雰囲気中などにおいて熱処理することで、Geと金属との界面において固相反応を生じさせ、Niジャーマナイド等とGeと種々の金属との化合物であるジャーマナイドを形成する。
以下本発明のゲルマニウム基板を用いる半導体装置用の電極用材料としてのジャーマナイド薄膜の作成方法について、図1および図2に基づき説明する。その作成方法は、ゲルマニウム基板の上方に白金(Pt)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)のうちのいずれか一つあるいは複数からなる金属層を形成する工程と、前記金属層の上方にニッケル層を形成する工程と、前記金属層を構成する金属、ニッケル、ゲルマニウムからなる合金を形成するように、前記金属層及び前記ニッケル層を熱処理する工程とを備えている。
図1および図2は、本発明を具体化した(Ni1-xPtx)Ge薄膜/Ge構造体の作製方法を説明するための図である。図1において、(Ni1-xPtx)Ge薄膜/Ge構造体となる多層膜構造体10では、Ge基板11上に、Pt薄膜12が形成され、さらにPt薄膜12の上方にNi薄膜13が形成されている。
以下実施例1について説明すると、Ge(001)単結晶基板11に化学洗浄を施し、即座に超高真空装置内に導入した。真空度5×10-7Pa以下の真空度において、電子線蒸着法を用いて、膜厚2.6nmのPt薄膜12を堆積した。さらに連続して膜厚7.4nmのNi薄膜13を堆積した。試料を大気中に取り出すことなく、同一の真空装置内において、1×10-6Pa以下の真空中で、この試料に300℃で30分間の熱処理を加えた。以上の処理によって、Ge(001)単結晶基板21上にNi、Pt、Geの三元素からなる(Ni1-xPtx)Ge薄膜22が形成された(Ni1-xPtx)Ge薄膜/Ge構造体20を作製した(図2参照)。
ただし、(Ni1-xPtx)Ge/Ge構造を形成する工程は、上記に限定されるものではない。その他の一般的なジャーマナイド薄膜成膜法を用いる手法によっても、以下に述べるのと同様の効果を得られる(Ni1-xPtx)Ge薄膜/Ge構造体を形成できることは明らかである。
(比較例)
比較のために、NiあるいはPtのみを用いて、NiGe薄膜およびPtGe薄膜を形成した。Ge(001)単結晶に化学洗浄を施し、即座に超高真空装置内に導入した。真空度5×10-7Pa以下の真空度において、電子線蒸着法を用いて、膜厚10nmのNiを堆積した。同一の真空装置内において1×10-6Pa以下の真空中で、この試料に300℃で30分間の熱処理を加えた。
Ni/Ge、300℃熱処理後の試料の平面TEM像およびTED(Transmission Electron Diffraction)像を、それぞれ図8(a)および8(b)に示す。図8(a)より、NiGe薄膜は100nm以上の大きさの粗大な結晶粒から形成されていることが観察できる。図8(a)のTED像においては、同心円状に分布した回折パターンが観察され、NiGe薄膜が乱雑に配向した多結晶相であることがわかる。ただし、図8(b)に示すように、TED像において、特定の位置に強い回折スポットも観察される。それぞれの回折スポットに対応する結晶面指数を同図中に示す。解析の結果、これらの回折スポットは、NiGe[101]//Ge[110]およびNiGe[100]//Ge[110]となる配向関係に起因することがわかった。この結果は、NiGe多結晶の一部の結晶粒が上記の配向関係に従って、Ge(001)単結晶基板に配向していることを示している。
Ni/Ge試料では、300℃熱処理後において最も低いシート抵抗値を示す。しかし、400℃以上の熱処理後において、その抵抗値は熱処理温度と共に増大し、550℃熱処理後においては、Ge基板のシート抵抗値と同等となる。これはNiGe薄膜の凝集と共にシート抵抗値が増大することを示しており、550℃の熱処理によって、NiGe多結晶粒が分断された結果、シート抵抗値がGe基板の抵抗値で決まってしまっていることを示している。
Pt/Ge試料においては、300℃熱処理後においては、3種類の試料の中で最も高いシート抵抗値を示すが、400℃〜550℃の範囲で熱処理温度の増加と共にその抵抗値は減少する。これは、XRD測定の結果でも示したように、Pt/Ge系においては400℃以上の熱処理によって、Ge組成の高いPt2Ge3やPtGe2相が形成されているためである。すなわち、よりGe組成の高い結晶相が形成されることで、薄膜の膜厚が増大し、実効的なシート抵抗値が減少する。ただし、このようなGe組成の高い薄膜は、NiGe薄膜に比較して、膜厚が増大するため、より微細な構造を必要とする半導体デバイスには不適であることは明らかである。PtGe薄膜においては、600℃以上の熱処理によって、シート抵抗値は熱処理温度と共に増大する。
NiGeに対するPtの添加によって、Ge基板上に(Ni1-xPtx)Ge薄膜を特定の強い配向関係を持って、擬エピタキシャル的に成長できる。このように形成された(Ni1-xPtx)Ge薄膜は、乱雑な結晶面方位分布で形成されたNiGe多結晶薄膜に比較して、ジャーマナイド薄膜/ゲルマニウム基板界面における界面エネルギーが低下するために、高温の熱処理にさらされた場合においても、薄膜の凝集が効果的に抑制されると考えられる。その結果、NiGe薄膜に比較して150℃高温の条件下においても、ジャーマナイド薄膜のシート抵抗値を一定に維持できることがわかった。
20:多層膜構造体、21:Ge基板、22:(Ni1-xPtx)Ge薄膜
Claims (5)
- ゲルマニウム基板を用いる半導体装置用の電極用材料としてのジャーマナイド薄膜の作成方法であって、
前記ゲルマニウム基板の上方に白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか一つあるいは複数からなる金属を含む金属層を形成する工程と、
前記金属層の上方にニッケル層を形成する工程と、
前記金属層を構成する前記金属、ニッケル、及びゲルマニウムからなる合金を形成するように、前記金属層及び前記ニッケル層を熱処理する工程と、を行うことにより、前記ジャーマナイド薄膜を形成し、
前記ジャーマナイド薄膜中に白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか一つあるいは複数の金属が含まれ、
前記ニッケルに対するこれらの金属の比率が20%以上であって、かつ、70%以下になり、
前記ジャーマナイド薄膜中において、(Ni 1−x M x )Ge(Niはニッケル、Geはゲルマニウム、Mは、白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか1つあるいは複数の金属を示す。0.2≦x≦0.7)のニッケルを含む金属(Ni 1−x M x )とゲルマニウムGeとの化学量論的組成比が1:1であることを特徴とするジャーマナイド薄膜の作成方法。 - 前記ゲルマニウム基板は、Ge(001)単結晶基板である請求項1記載のジャーマナイド薄膜の作成方法。
- ゲルマニウム基板を用いる半導体装置用の電極用材料としてのジャーマナイド薄膜において、
前記ジャーマナイド薄膜は、ゲルマニウムおよびニッケルに加えて、白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか一つもしくは複数を含む合金からなり、
前記ジャーマナイド薄膜を構成する結晶粒の結晶面方位が、前記ゲルマニウム基板の[110]結晶面に対して、[102]面あるいは[001]面を平行とする配向関係になっており、
前記ジャーマナイド薄膜中に白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか一つあるいは複数の金属が含まれ、
前記ニッケルに対するこれらの金属の比率が20%以上であって、かつ、70%以下になり、
前記ジャーマナイド薄膜中において、(Ni 1−x M x )Ge(Niはニッケル、Geはゲルマニウム、Mは、白金、コバルト、パラジウム、ロジウム、イリジウムのうちのいずれか1つあるいは複数の金属を示す。0.2≦x≦0.7)のニッケルを含む金属(Ni 1−x M x )とゲルマニウムGeとの化学量論的組成比が1:1であることを特徴とするジャーマナイド薄膜。 - 前記ゲルマニウム基板は、Ge(001)単結晶基板である請求項3記載のジャーマナイド薄膜。
- 請求項3または4に記載のジャーマナイド薄膜を備えたゲルマニウム構造体。
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