JP5237819B2 - 心機能シミュレーションシステム、心機能シミュレーション方法、心機能シミュレーションプログラムおよび複合材料シート - Google Patents

心機能シミュレーションシステム、心機能シミュレーション方法、心機能シミュレーションプログラムおよび複合材料シート Download PDF

Info

Publication number
JP5237819B2
JP5237819B2 JP2008539808A JP2008539808A JP5237819B2 JP 5237819 B2 JP5237819 B2 JP 5237819B2 JP 2008539808 A JP2008539808 A JP 2008539808A JP 2008539808 A JP2008539808 A JP 2008539808A JP 5237819 B2 JP5237819 B2 JP 5237819B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
heart
composite material
data
connective tissue
cardiac function
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2008539808A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2008047766A1 (ja
Inventor
章示 山元
Original Assignee
章示 山元
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 章示 山元 filed Critical 章示 山元
Priority to JP2008539808A priority Critical patent/JP5237819B2/ja
Publication of JPWO2008047766A1 publication Critical patent/JPWO2008047766A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5237819B2 publication Critical patent/JP5237819B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • GPHYSICS
    • G16INFORMATION AND COMMUNICATION TECHNOLOGY [ICT] SPECIALLY ADAPTED FOR SPECIFIC APPLICATION FIELDS
    • G16ZINFORMATION AND COMMUNICATION TECHNOLOGY [ICT] SPECIALLY ADAPTED FOR SPECIFIC APPLICATION FIELDS, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • G16Z99/00Subject matter not provided for in other main groups of this subclass
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N5/00Undifferentiated human, animal or plant cells, e.g. cell lines; Tissues; Cultivation or maintenance thereof; Culture media therefor
    • C12N5/06Animal cells or tissues; Human cells or tissues
    • C12N5/0602Vertebrate cells
    • C12N5/0652Cells of skeletal and connective tissues; Mesenchyme
    • C12N5/0657Cardiomyocytes; Heart cells
    • GPHYSICS
    • G06COMPUTING; CALCULATING OR COUNTING
    • G06FELECTRIC DIGITAL DATA PROCESSING
    • G06F30/00Computer-aided design [CAD]
    • G06F30/20Design optimisation, verification or simulation
    • G06F30/23Design optimisation, verification or simulation using finite element methods [FEM] or finite difference methods [FDM]
    • GPHYSICS
    • G16INFORMATION AND COMMUNICATION TECHNOLOGY [ICT] SPECIALLY ADAPTED FOR SPECIFIC APPLICATION FIELDS
    • G16HHEALTHCARE INFORMATICS, i.e. INFORMATION AND COMMUNICATION TECHNOLOGY [ICT] SPECIALLY ADAPTED FOR THE HANDLING OR PROCESSING OF MEDICAL OR HEALTHCARE DATA
    • G16H50/00ICT specially adapted for medical diagnosis, medical simulation or medical data mining; ICT specially adapted for detecting, monitoring or modelling epidemics or pandemics
    • G16H50/50ICT specially adapted for medical diagnosis, medical simulation or medical data mining; ICT specially adapted for detecting, monitoring or modelling epidemics or pandemics for simulation or modelling of medical disorders
    • GPHYSICS
    • G06COMPUTING; CALCULATING OR COUNTING
    • G06FELECTRIC DIGITAL DATA PROCESSING
    • G06F2113/00Details relating to the application field
    • G06F2113/24Sheet material
    • GPHYSICS
    • G06COMPUTING; CALCULATING OR COUNTING
    • G06FELECTRIC DIGITAL DATA PROCESSING
    • G06F2113/00Details relating to the application field
    • G06F2113/26Composites

Description

本発明は、コンピュータ読み取り可能なデータで心筋組織を表した心臓モデルを用いて、心臓の形状変化を予測する心機能シミュレーションシステム、および心臓の少なくとも一部を支持、補填、置換または補修するための複合材料シートに関する。
心臓の解剖学的、組織学的観察により、心臓を構成する心筋組織においては、規則的、かつ特徴的な組織構成が認められている。心筋組織は、心筋細胞と結合組織の両成分を含む。心筋細胞は、特徴的な棍棒様形状と繊維様配列を呈し、コラーゲンを主成分とする結合組織に囲まれて観察される。このような心筋組織の薄膜(ラミナ)が積層して心臓の壁が形成されているとみなすことができる。
従来、心筋組織の構造と機械特性との関連、さらには心筋組織の構造と心機能との関連を解明することが試みられてきた。例えば、心室の幾何学的形状と心筋繊維の方向をコンピュータ読み取り可能なデータで表した心臓モデルを構築し、有限要素法を用いてコンピュータにより心室の形状変化をシミュレーションする方法が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、従来の試みにおいては、心筋細胞と結合組織の材料特性を詳細に検討した上で、心筋組織を適切な複合材料とみなして心臓モデルを構築した例がない。そのため、心筋組織と心機能との関連は充分に解明されていない。ひいては、心臓疾患の病態解明、診断、治療を十分にすることができない場合がある。
P.M.F.Nielsen, 他3名"Mathematical model of geometry and fibrous structure of the heart", American Journal of Physiology - Heart and Circulatory Physiology 260, USA, The American Physiology Society, 1991 ,H1365-H1378
ゆえに、本発明の目的は、心筋細胞と結合組織の材料特性を詳細に検討した上で、心筋組織を適切な複合材料とみなして構築された心臓モデルを用いた心機能シミュレーションシステム、および適切な複合材料で形成された心臓を支持するための複合材料シートを提供することを目的とする。
本発明にかかる心機能シミュレーションシステムは、心筋細胞および結合組織を含む心筋組織で構成される心臓をモデリングして、基質と強化繊維とを含む複合材料の連続体を表すデータで心臓を表した心臓モデルを生成し、前記心臓モデルを用いて心臓の形状変化を予測する心機能シミュレーションシステムであって、心筋組織に含まれる結合組織の機械特性を表す結合組織データと、心筋組織に含まれる心筋細胞の機械特性を表す心筋細胞データとを入力する材料特性入力部と、心臓の少なくとも一部の3次元形状を表す形状データを入力する形状データ入力部と、基質と強化繊維とを含む複合材料で形成された前記3次元形状の連続体を有限要素の集合で表す心臓モデルを作成し、当該心臓モデルにおいて、結合組織データが示す機械特性を前記強化繊維の機械特性に、前記心筋細胞データが示す機械特性を前記基質の機械特性に設定するモデル構築部と、前記心臓モデルで表される心臓に圧力を加えた場合の形状の変化を有限要素法を用いて計算するシミュレーション部とを備える。
モデル構築部は、形状データが表す3次元形状の複合材料で形成された心臓モデルにおいて、結合組織データが示す結合組織の機械特性を複合材料の強化繊維の機械特性とし、心筋細胞データが示す心筋細胞の機械特性を複合材料の基質の機械特性として設定する。これにより、心筋組織の結合組織を複合材料の強化繊維成分とみなし、かつ心筋細胞を複合材料の基質成分とみなした複合材料で構成された心臓モデルが生成される。これにより、心筋組織を適切な複合材料とみなして生成された心臓モデルが得られる。
従来、心機能シミュレーションのための心臓モデル構築にあたって、心筋組織の結合組織および心筋細胞の機械特性を考慮して、それぞれを心臓モデル上の複合材料の強化繊維および基質に適切に対応させた例はない。そこで、発明者は、心筋組織の結合組織および心筋細胞の機械特性を検討した結果、結合組織を複合材料の強化繊維成分とみなし、心筋細胞を複合材料の基質成分とみなすことが適切であることを見出した。本発明において、シミュレーション部は、結合組織および心筋細胞が複合材料の強化繊維および基質として適切に想定された心臓モデルを用いて心臓の形状変化を計算する。そのため、心筋組織を構成する結合組織および心筋細胞の機械特性を心臓の形状変化に適切に反映させたシミュレーションが可能になる。
なお、ここで、「結合組織」は、心筋細胞の間隙を充填する組織である。結合組織には、個々の心筋細胞を取り巻くエンドミジウム(Endomysium)と、複数の心筋細胞の束を取り巻くペリミジウム(Perimysium)とが含まれる。また、結合組織は、その主たる成分であるコラーゲン繊維および結合組織を成す他の成分を含む。
「複合材料」は、物理的に異質な2種類以上の素材から形成された材料である。「複合材料」は、その特性が個々の素材より優れているかまたは個々の素材にはない特性を有する。
本発明にかかる心機能シミュレーションシステムにおいて、前記材料特性入力部は、前記結合組織のヤング率を前記結合組織データとして入力し、前記心筋細胞のヤング率を前記心筋細胞データとして入力し、前記結合組織のヤング率は前記心筋細胞のヤング率の100倍以上であることが好ましい。
発明者は、心筋細胞と結合組織の弾性特性の相違を、実証的、理論推定的に比較検討した。その結果、特に、非収縮時の心臓において、結合組織材料のヤング率は心筋細胞材料のそれに比較し極めて大きく、その差異は100倍以上であることを見出した。すなわち、発明者は、心筋組織が、強化繊維と基質のヤング率の差が大きい複合材料であるFRR(Fiber Reinforced Rubber;繊維強化ゴム複合材料)と共通する特性を有することも見出した。したがって、上記構成のように、材料特性入力部が心筋細胞のヤング率の100倍以上の値を結合組織のヤング率として入力することで、モデル構築部は、心筋細胞と結合組織の弾性特性の相違を適切に反映させた複合材料の心臓モデルを生成することができる。すなわち、モデル構築部は、FRRの特性を持つ複合材料で心臓の壁を形成する心臓モデルを生成することができる。その結果、実際の心筋組織の材料特性をより反映した複合材料で形成された心臓の心臓モデルを得ることができる。
本発明にかかる心機能シミュレーションシステムにおいて、前記モデル構築部は、ゴムで形成された基質と一方向性の強化繊維とを含む一方向性繊維強化ゴム複合材料で形成された前記3次元形状の連続体を有限要素の集合で表す心臓モデルを作成し、当該心臓モデルにおいて、結合組織データが示す機械特性を前記強化繊維の機械特性に、前記心筋細胞データが示す機械特性を前記基質の機械特性に設定することが好ましい。
上述のように、発明者は、心筋組織がFRRと共通する特性を有することを見出した。したがって、モデル構築部は、一方向性繊維強化ゴム複合材料で形成された前記3次元形状の連続体を有限要素の集合で表す心臓モデルを作成することで、心筋組織のFRRと共通する特性を反映した心臓モデルを作成することができる。
本発明にかかる心機能シミュレーションシステムは、前記心筋組織で結合組織が占める容量を示す値を含む心筋組織構造データを入力する構造データ入力部をさらに備え、前記モデル構築部は、前記心臓モデルにおいて、前記複合材料に強化繊維が占める容量を前記心筋組織で結合組織が占める容量を示す値を用いて決定することが好ましい。
心筋組織で結合組織が占める容量を示す値は、心筋組織の形態を観察することによって得られる組織形態学的情報(形態計量)の一例である。上記構成により、モデル構築部は、心筋組織で結合組織が占める容量を、複合材料の強化繊維の構成に反映させた心臓モデルを生成することができる。その結果、心機能と密接に関連する要因である組織形態学的情報を加味したシミュレーションが可能になる。
本発明にかかる心機能シミュレーションシステムは、前記心筋細胞径を示す値を含む心筋組織構造データを入力する構造データ入力部をさらに備え、前記モデル構築部は、前記心臓モデルにおいて、前記複合材料に含まれる前記強化繊維の中心間距離を、前記心筋細胞径を示す値を用いて決定することが好ましい。
前記心筋細胞径は、心筋組織の形態を観察することによって得られる組織形態学的情報(形態計量)の一例である。上記構成により、モデル構築部は、心筋細胞径を複合材料の構成に反映させた心臓モデルを生成することができる。
本発明にかかる心機能シミュレーションシステムは、前記心筋組織で結合組織が占める容量を示す値と、前記心筋細胞の心筋細胞径を示す値とを含む心筋組織構造データを入力する構造データ入力部をさらに備え、前記モデル構築部は、前記心臓モデルにおいて、前記複合材料に含まれる前記強化繊維の径を、前記心筋組織で結合組織が占める容量を示す値と前記心筋細胞径を示す値とを用いて決定することが好ましい。
上記構成により、モデル構築部は、前記心筋組織で結合組織が占める容量を示す値と、前記心筋細胞の心筋細胞径を示す値とを強化繊維の径として反映させた心臓モデルを生成することができる。
本発明にかかる心機能シミュレーションシステムは、前記心筋細胞長軸の方向を示すデータを含む心筋組織構造データとして入力する構造データ入力部をさらに備え、前記モデル構築部は、前記複合材料の曲面薄板が複数積層して心臓の壁を構成する心臓を表す心臓モデルを生成し、前記心臓モデルにおいて、複合材料の強化繊維の配置方向を、前記心筋組織構造データを基に、曲面薄板ごとに設定することが好ましい。
現実の心臓において、心室壁の心筋の構造は、概ね、心室壁の表面と並行する複数の心筋層が重なって配列された構造とみなすことができる。心室壁の厚み方向(壁厚方向)の異なる複数の位置において、心筋層内の心筋細胞長軸の方向を観察すると、壁厚方向によって(心室壁内膜側から外膜側へ進むに従って)心筋細胞長軸の方向が連続的に変化していることが見出される。ここで、心筋細胞長軸の方向の配列は、細胞を取り巻く結合組織(主にエンドミジウム)の配列と同等とみなすことができる。上記の心筋細胞長軸の方向の連続的な変化は、正常心と病的心とで異なる場合があり、心機能と密接に関連している。
モデル構築部は、前記心筋細胞長軸の方向を示すデータを、積層された曲面薄板それぞれを形成する複合材料の強化繊維の方向として反映させた心臓モデルを生成することができる。その結果、心機能と密接に関連する要因である心筋細胞長軸の方向の連続的変化を加味したシミュレーションが可能になる。
本発明にかかる心機能シミュレーションシステムにおいて、前記モデル構築部は、N(Nは奇数)層の前記複合材料の曲面薄板が前記心臓の壁を構成し、前記N層のうち真中の層における前記強化繊維の配置方向を、前記心臓の輪状筋繊維の方向として設定することが好ましい。
一般に心臓の解剖学において、心室壁を構成する心筋の層の中間部に、輪状筋層と呼ばれる層が存在する。輪状筋層では、心筋細胞およびこれに隣接して心筋細胞長軸に並行する結合組織が、心室形状を回転楕円体に見立てた場合のいわゆる短軸円周面に、概ね平行な配列を示す。前記モデル構築部は、N層の曲面薄板のうち真中の層における強化繊維の配置方向を、心臓の輪状筋繊維の方向として設定することで、実際の心臓の壁を構成する心筋の構造に近い心臓モデルを生成することができる。
本発明にかかる心機能シミュレーションシステムにおいて、前記モデル構築部は、各曲面薄板における前記強化繊維の配置方向を、曲面薄板の面内で設定し、前記強化繊維の配置方向が、曲面薄板ごとに異なるように前記強化繊維の配置方向を設定することが好ましい。
モデル構築部は、強化繊維の配置方向が、曲面薄板ごとに異なるように各曲面薄板における強化繊維の配置方向を設定することによって、実際の心臓における心筋細胞長軸の方向の連続的変化を反映した心臓モデルを生成することができる。
本発明にかかる心機能シミュレーションシステムにおいて、前記材料特性入力部は、前記心筋細胞のヤング率を前記心筋細胞データとして入力し、前記心筋細胞のヤング率の100倍以上である前記結合組織のヤング率を前記結合組織データとして入力し、前記モデル構築部は、前記強化繊維の配置方向が、少なくとも1組の隣接する曲面薄板間で特異バイアス角またはその余角だけ変化するように、前記強化繊維の配置方向を設定することが好ましい。
材料特性入力部が心筋細胞のヤング率の100倍以上の値を結合組織のヤング率として入力することで、モデル構築部は、FRRの特性を持つ複合材料の曲面薄板が積層して心臓の壁を形成する心臓モデルを生成することができる。一般にFRRを特異バイアス角で張り合わせた板は、捩れ変形を生じない等、特徴的な特性を持つ。発明者は、実際の心臓における心筋組織において、この特異バイアス角による特性を利用した構成になっていることを見出した。したがって、モデル構築部が、少なくとも1組の隣接する曲面薄板間で特異バイアス角またはその余角だけ変化するように強化繊維の配置方向を設定することで、シミュレーション部は、特異バイアス角による影響を加味したシミュレーションを行うことができる。
本発明にかかる心機能シミュレーションシステムは、前記心臓の少なくとも一部を支持するための複合材料シートを表すシートデータであって、前記複合材料シートに含まれる強化繊維および基質の機械特性、前記強化繊維の配置方向および前記複合材料シートの形状を表すシートデータを入力するシートデータ入力部をさらに備え、前記モデル構築部は、前記形状データが示す前記3次元形状の連続体に前記シートデータで表される前記複合材料シートが設けられて構成される連続体を表す心臓モデルを生成することが好ましい。
モデル構築部は、形状データが示す3次元形状の連続体にシートデータで表される複合材料シートが設けられて構成される連続体を表す心臓モデルを生成する。これにより、複合材料シートが設けられた心臓をモデリングすることができる。そのため、シミュレーション部は、複合材料シートが設けられた心臓に圧力を加えた場合の形状の変化を計算することになる。これにより、心臓に設ける複合材料シートによる心機能への影響を解析することが可能になる。また、シミュレーション部の計算結果を、複合材料シートの設計に用いることにより、心機能障害の改善するのに適切な複合材料シートを設計することができる。
本発明にかかる複合材料シートは、心臓の少なくとも一部を支持するための複合材料シートであって、強化繊維と基質とを含む複合材料で形成される薄板の単層材あるいは積層材で構成され、前記強化繊維のヤング率は前記基質のヤング率の100倍以上である。
心筋組織に含まれる結合組織のヤング率は、心筋細胞の100倍以上である。したがって、強化繊維のヤング率が基質のヤング率の100倍以上である複合材料シートは、心筋組織と共通する特性を持つ。すなわち、心筋組織にあった適切な複合材料で心臓を支持するための複合材料シートが得られる。
本発明にかかる複合材料シートは、一方向性強化繊維と基質とを含む複合材料で形成される複数の薄板の積層材で構成され、前記複数の薄板は、各薄板における前記一方向性強化繊維の繊維方向が、各薄板の面内において薄板ごとに異なるように積層され、前記複数の薄板のうち少なくとも1組の薄板間で、前記一方向性強化繊維の方向が特異バイアス角またはその余角だけ変化していることが好ましい。
実際の心臓は、心筋細胞長軸の方向が異なる複数層の心筋層で形成されているとみなすことができる。また、上述のように、心筋組織は、強化繊維のヤング率が基質のヤング率の100倍以上である一方向性繊維強化複合材料と共通する特性を有していることが発明者によって見出されている。さらに、心筋細胞長軸方向の配列は、特異バイアス角を含む配列となっており、これが心機能と密接な関連を有していることも発明者によって見出されている。したがって、一方向性強化繊維と基質とを含む複合材料で形成される複数の薄板を、各薄板の面内において薄板ごとに異なるように積層し、かつ、前記複数の薄板のうち少なくとも1組の薄板間で、前記一方向性強化繊維の方向が特異バイアス角またはその余角だけ変化するように積層して複合材料シートを形成することにより、特異バイアス角を含む一方向性強化繊維の方向の配列による心機能への影響を考慮した複合材料シートを得ることができる。
本発明にかかる心機能シミュレーション方法は、コンピュータが、心筋細胞および結合組織を含む心筋組織で構成される心臓をモデリングして、基質と強化繊維とを含む複合材料の連続体を表すデータである心臓モデルを生成し、前記心臓モデルを用いて心臓の形状変化を予測する心機能シミュレーション方法である。前記心機能シミュレーション方法は、心筋組織に含まれる結合組織の機械特性を表す結合組織データと、心筋組織に含まれる心筋細胞の機械特性を表す心筋細胞データとを入力する工程と、心臓の少なくとも一部の3次元形状を表す形状データを入力する工程と、基質と強化繊維とを含む複合材料で形成された前記3次元形状の連続体を有限要素の集合で表す心臓モデルを作成し、当該心臓モデルにおいて、結合組織データが示す機械特性を前記強化繊維の機械特性に、前記心筋細胞データが示す機械特性を前記基質の機械特性に設定する工程と、前記心臓モデルで表される心臓に圧力を加えた場合の形状の変化を有限要素法を用いて計算する工程とを含む。
本発明にかかる心機能シミュレーションプログラムは、心筋細胞および結合組織を含む心筋組織で構成される心臓をモデリングして、基質と強化繊維とを含む複合材料の連続体を表すデータである心臓モデルを生成し、前記心臓モデルを用いて心臓の形状変化を予測する処理をコンピュータに実行させる心機能シミュレーションプログラムである。前記心機能シミュレーションプログラムは、心筋組織に含まれる結合組織の機械特性を表す結合組織データと、心筋組織に含まれる心筋細胞の機械特性を表す心筋細胞データとを入力する処理と、心臓の少なくとも一部の3次元形状を表す形状データを入力する処理と、基質と強化繊維とを含む複合材料で形成された前記3次元形状の連続体を有限要素の集合で表す心臓モデルを作成し、当該心臓モデルにおいて、結合組織データが示す機械特性を前記強化繊維の機械特性に、前記心筋細胞データが示す機械特性を前記基質の機械特性に設定する処理と、前記心臓モデルで表される心臓に圧力を加えた場合の形状の変化を有限要素法を用いて計算する処理とをコンピュータに実行させる。
本発明によれば、心筋組織を適切な複合材料とみなして構築された心臓モデルを用いた心機能シミュレーションシステム、および適切な複合材料で形成された心臓を支持するための複合材料シートを提供することができる。
実施の形態1における心機能シミュレーションシステムの構成を表す機能ブロック図 心機能シミュレーションシステムの動作を示すフローチャート (a)は、心筋細胞長軸に略平行な断面における光学顕微鏡写真である。(b)は、心筋細胞長軸に略垂直な断面における光学顕微鏡写真である。 一方向性繊維強化ゴムで形成された板の平面図 結合組織および心筋細胞それぞれの弾性係数(ヤング率、ポアソン比)および容量分画の入力値の例 (a)は、左心室を模式的に表した模式図である。(b)は、(a)に示す左心室の壁の一部を断面矩形になるように切り取った部分の拡大図である。 (a)〜(c)は、断面P1、P2、P3それぞれにおける光学顕微鏡写真である。 心筋細胞長軸の方向の心室壁内での変化を表すグラフ 3層モデルの概念を示す図 構造データ入力部が入力する心筋細胞長軸の方向を表すデータの一例を示す表 収縮終期の心室形状を回転楕円体でモデル化するための形状データの例 形状データで示される回転楕円体を複数の有限要素に分割して生成した心臓モデルの例を示す図 連続体要素でモデル化した基質に、強化繊維を埋め込んだモデルを示す図 シミュレーションにおける境界条件および圧力の付加の例を示すための模式図 シミュレーション部による解析結果の一例を表すグラフ 正常心、求心性肥大心、遠心性肥大心それぞれにおける心筋組織の特徴を、心臓モデルにおける複合材料の構造、機械特性として設定する場合のデータの例を示す表 正常心、求心性肥大心、遠心性肥大心それぞれに形状データとして設定する値と、圧力として設定する値との例を示す表 心室壁の厚み方向に3つの層に分割した後、さらに各層内でも、強化繊維を規則的に配置するモデルを示す図 (a)は、心室壁の壁の厚み方向に平行な面における断面の光学顕微鏡写真である。(b)は、心室壁の壁厚中央部における四角mの部分を拡大したものである。 心機能シミュレーションシステムの構成を表す機能ブロック図 一方向性のFRRのラミナ(薄板)で形成された心臓を支持するための複合材料シートの例を示す図 (a)は、一方向性のFRRのラミナ(薄板)で形成された複合材料シートを2枚積層して用いる場合の例を示す図である。(b)は、内層52aのみを示す図である。 (a)は、複合材料シートを3枚積層して用いる場合の例を示す図である。(b)は、中層のみを示す図であり、(c)は、内層のみを示す図である。 (a)は、強化繊維のより合わせが沿う平面に垂直な面における断面を示す図である。(b)は、強化繊維のより合わせが沿う平面における強化繊維のより合わせの例を示す図である。 心機能シミュレーションシステムの動作を示すフローチャート モデル構築部が生成した心臓モデルの例を示す図 正常心、病的心1、病的心2それぞれを複合材料としてモデル化した際の、複合材料の強化繊維の角度、容量分画の設定例を示す表
(実施の形態1)
本実施形態は、心筋組織を強化繊維と基質とを含む複合材料とみなして左心室の心臓モデルを生成し、その心臓モデルを用いて左心室の形状変化を予測する心機能シミュレーションシステムである。なお、心機能シミュレーションシステムの解析対象は、左心室に限られない。例えば、心臓全体でもよいし、右心房だけの解析も可能である。
[心機能シミュレーションシステムの構成]
図1は、本実施形態における心機能シミュレーションシステムの構成を表す機能ブロック図である。図1に示すように、本実施の形態における心機能シミュレーションシステム10は、材料特性入力部11、構造データ入力部12、形状データ入力部13、モデル構築部14およびシミュレーション部15を備える。
心機能シミュレーションシステム10は、例えば、パーソナルコンピュータや、ワークステーション等の汎用機器(以下、PC等と称す。)上に構築することができる。材料特性入力部11、構造データ入力部12、形状データ入力部13、モデル構築部14およびシミュレーション部15の機能は、PC等のCPUが、PC等が備える記録媒体に記録された所定のプログラムを実行することによって実現することができる。
また、材料特性入力部11、構造データ入力部12、形状データ入力部13、モデル構築部14およびシミュレーション部15が行う処理をコンピュータに実行させるプログラムや、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体も本実施形態の一例である。なお、ハードウエア構成は、図1に示す構成に限られない。例えば、インターネットやLAN等により通信可能となるように接続された複数のPC等に、心機能シミュレーションシステム10の機能を分散させてもよい。
材料特性入力部11は、シミュレーションの対象となる心臓の心筋組織に含まれる結合組織の機械特性を表す結合組織データと、心筋組織に含まれる心筋細胞の機械特性を表す心筋細胞データとを入力する。機械特性には、例えば、弾性係数や強度(強さ)等が含まれる。ここで入力される結合組織および心筋細胞の機械特性は、実証的、理論的に得られる値であることが好ましい。心筋細胞および結合組織の機械特性の詳細は後述する。
構造データ入力部12は、心筋組織の構造を表す心筋組織構造データを入力する。心筋組織構造データには、例えば、心筋組織で結合組織が占める容量(以下、結合組織の容量分画と称する)、心筋細胞径、および、心筋細胞長軸または結合組織の方向等を示すデータが含まれる。
形状データ入力部13は、解析対象となる心臓の3次元形状を表す形状データを入力する。形状データは、必ずしも心臓全体の形状を表すものでなくてもよく、心臓全体のうちで解析したい部分のみの形状を表すデータであればよい。形状データは、実際に測定された心臓の形状に基づくデータであってもよいし、心臓の形状を模した幾何学形状であってもよい。例えば、左心室の形状を模した幾何学形状の例として、壁厚を有する回転楕円体(thick-wall ellipsoid of revolution)、壁厚を有する、尖端部が切断された回転楕円体(thick-wall truncated ellipsoid of revolution)、壁厚を有する球の一部等が挙げられる。
なお、材料特性入力部11、構造データ入力部12および形状データ入力部13で入力されたデータは、心機能シミュレーションシステム10が備える記録部(メモリ等の記録媒体:図示せず)に記録され、モデル構築部により利用可能となる。また、材料特性入力部11、構造データ入力部12および形状データ入力部13は、入力すべきデータが記録されたファイルを読み込む等して、新たなデータを入力してもよいし、あるいは、ユーザからのデータ入力を、PC等に備えられたキーボード、マウス等の入力装置(図示せず)を介して受け付けてもよい。
形状データ入力部13で入力された形状データを用いて、解析対象となる心臓を有限要素の集合で表した心臓モデルを生成する。また、モデル構築部14は、構造データ入力部12で入力された心筋組織構造データを用いて、心臓モデルにおける心臓の壁が、強化繊維と基質を含む複合材料で形成された構造とする。さらに、モデル構築部14は、強化繊維の機械特性として材料特性入力部11で入力された結合組織データが示す機械特性を、基質の機械特性として材料特性入力部11で入力された心筋細胞データが示す機械特性を設定する。
シミュレーション部15は、前記心臓モデルで表される心臓に圧力を加えた場合の形状の変化を、有限要素法を用いて計算する。このシミュレーション部15の機能は、市販の汎用有限要素解析ソフトウエアを用いて実現することができる。シミュレーション部15は、解析結果データを出力して記録する。出力された解析結果データは、表示または印刷されたり、他のシステムで使用されたりする。解析結果データとして、例えば、解析対象の心臓の容量変化、形状変化、心筋の捩れ具合等を示すデータ等が出力される。
[心機能シミュレーションシステムの動作例]
次に、本実施の形態における心機能シミュレーションシステム10の動作の例を説明する。図2は、心機能シミュレーションシステム10の動作を示すフローチャートである。ここでは、図2を用いて、人の左心室の形状変化をシミュレーションする場合について説明する。
まず、材料特性入力部11が、結合組織データおよび心筋細胞データを入力する(ステップS1)。本実施形態では一例として、材料特性入力部11は、結合組織データとして結合組織のヤング率およびポアソン比を、心筋細胞データとして心筋細胞のヤング率およびポアソン比を入力するものとする。また、材料特性入力部11は、心筋組織のせん断剛性を入力してもよい。
一般に心筋組織は、その長軸方向に連結された無数の心筋細胞と、心筋細胞間を充填する結合組織とを含む。図3(a)は、心筋細胞長軸に略平行な断面における光学顕微鏡写真である。図3(b)は、心筋細胞長軸に略垂直な断面における光学顕微鏡写真である。図3(a)および(b)で矢印の先が示す箇所に結合組織が見られる。結合組織はコラーゲン繊維を主に含む。コラーゲン繊維は心筋細胞に比べて硬い。例えば、実証的、理論推定的に結合組織および心筋細胞の弾性特性を検討すると、結合組織のヤング率は少なくとも約100MPaであり、心筋細胞のヤング率は多くとも約200KPaと推定できる。結合組織のヤング率は、心筋細胞のヤング率に比べて100倍以上大きいことになる。
そこで、ステップS1において、材料特性入力部11は、結合組織のヤング率を、心筋細胞のヤング率の100倍以上として入力することが好ましい。例えば、ユーザが値を入力する場合は、材料特性入力部11はユーザの入力可能なヤング率の値を、上記のように制限してもよい。結合組織のヤング率およびポアソン比は、モデル構築部14で構築される心臓モデルを形成する複合材料中の強化繊維の材料特性値として用いられる。心筋細胞のヤング率およびポアソン比は、前記複合材料中の基質の材料特性値として用いられる。そのため、結合組織のヤング率を心筋細胞のヤング率の100倍以上に設定することで、心臓モデルにおいて、複合材料中の強化繊維のヤング率が、基質のヤング率の100倍以上に設定される。これにより、後述するように、FRRの特性を有する複合材料で形成された心臓の心臓モデルを生成することが可能になる。
ここで、上記の強化繊維のヤング率と基質のヤング率との差である「100倍以上」の理論的な意味について説明する。図4は、一方向性繊維強化ゴムで形成された板の平面図である。図4に示す板21における点線は、板21における一方向性繊維の方向を表す。また、図4において、方向Lは一方向性繊維の方向、方向TはLに垂直な方向を表す。板21の弾性定数については、複合理論により下記式(数1)〜(数5)のように表すことができる。なお、下記式(数1)〜(数5)において、添え字L、Tは図4における方向L、Tを示し、添え字m、fは、基質および強化繊維を示す。したがって、EL、ETは、それぞれ方向L、Tにおけるヤング率、νL、νTは、それぞれ方向L、Tにおけるポアソン比、GLTはせん断剛性である。これらが下記式(数1)〜(数5)において、独立な弾性係数となる。また、Em、Efは、それぞれ基質および強化繊維のヤング率を、Vm、Vfは、それぞれ基質および強化繊維の含有率を示す。
Figure 0005237819
Figure 0005237819
Figure 0005237819
Figure 0005237819
Figure 0005237819
上記式(数1)〜(数5)では、下記式(数6)に示す、Maxwell−Bettiの相反定理を用いている。
Figure 0005237819
ここで、基質であるゴムのヤング率に対して強化繊維のヤング率が100倍以上も大きいこと、およびゴムは非圧縮性であるので、下記式(数7)(数8)で示される仮定が用いられる。
Figure 0005237819
Figure 0005237819
上記式(数7)(数8)を上記式(数1)〜(数5)に代入すると下記式(数9)〜(数12)の近似式を得る。
Figure 0005237819
Figure 0005237819
Figure 0005237819
Figure 0005237819
ここで、GLTについてさらに考察を加えると強化繊維の含有率が任意であっても下記式(数13)に示す関係があることが理論的にも、実験的にも示されている。
Figure 0005237819
このように、近似表示ができるのは、強化繊維のヤング率が基質のヤング率の100倍以上となるFRR特有のものである。したがって、強化繊維のヤング率が基質のヤング率の100倍以上であることは、上記式(数8)〜(数13)の近似式が成り立つ程度に強化繊維のヤング率と基質のヤング率との差があることを意味している。
次に、構造データ入力部12は、心筋組織構造データとして、結合組織の容量分画を入力する(ステップS2)。構造データ入力部12は、例えば、ユーザから結合組織の容量分画を表すデータの入力を受け付ける。ユーザは、例えば、解析対象の心臓がヒトの正常心であれば、一般的に知られているヒトの正常心における結合組織の容量分画の平均値を入力することができる。図5に、結合組織および心筋細胞それぞれの弾性係数(ヤング率、ポアソン比)および容量分画の入力値の例を示す。図5に示す例は、従来の知見の基づき決定した入力値である。なお、構造データ入力部12は、容量分画に加えて、例えば、心筋細胞径等を入力してもよい。
また、構造データ入力部12は、心筋組織構造データとして、心室壁を構成する層の積層数N、心筋細胞長軸の方向を示すデータを入力する(ステップS3)。後述するように、モデル構築部14は、複合材料の曲面薄板が複数積層して心室壁を形成する左心室の心臓モデルを生成する。ここで入力される積層数Nが、この曲面薄板の積層数に用いられる。また、結合組織の心筋細胞長軸の方向を示すデータは、曲面薄板の各層における強化繊維の方向を決定するために用いられる。
ここで、心筋細胞長軸方向の心室壁層内における連続的変化について説明する。図6(a)は、左心室を模式的に表した模式図である。図6(b)は、図6(a)に示す左心室の壁の一部を断面矩形になるように切り取った部分22の拡大図である。図6(b)に示す部分22において、面abdcは、心室壁内膜(endocardium)であり、面efghは、心室壁外膜(epicardium)である。例えば、ここで部分22内の壁厚方向(辺aeの方向)に垂直な3つの面における断面P1、P2、P3を切り取って、心室壁内膜(endocardium)側から顕微鏡で観察する。図7(a)〜(c)は、断面P1、P2、P3それぞれにおける光学顕微鏡写真である。図7における写真は、1辺0.3mmの方眼が重ねて表示されており、それぞれの方眼において観察される心筋細胞長軸の方向が矢印で示されている。図7(a)〜(c)に示すように、壁厚方向の位置によって、心筋細胞長軸の方向は心室壁に平行な面内において変化する。心筋細胞長軸の方向は、心室壁内膜側から心室壁外膜側へ移動するにしたがって、連続的に変化する傾向があることが知られている。図8は、心筋細胞長軸の方向の心室壁内での変化を表すグラフである。図8に示すグラフで、横軸は心室壁の壁厚方向の位置、縦軸は心筋細胞長軸の基準面に対する角度を表す。基準面は例えば、心室を回転楕円体に見立てた場合の回転軸(楕円長軸)に垂直な面(楕円体短軸赤道面に平行な面)とすることができる。グラフ中、曲線jは、心筋細胞長軸の方向の連続的変化のヒトの正常心における平均値を表している。曲線jの形は、異常心か正常心かによっても異なる。
上記のような心筋細胞長軸方向の変化を考慮して心室をモデル化する方法として、例えば、心室壁内部を、複合材料の曲面薄板が壁厚方向にN層に積層された積層材で表現するN層モデルを生成する方法がある。図9は、N=3の場合の3層モデルの概念を示す図である。図9に示す3層モデルは、心室壁23を、内層24、中層25、外層26の3層で構成された強化繊維を含む複合材料の曲面薄板で表したものである。各層において矢印24a、25a、26aで示される強化繊維の方向は段階的に異なっている。
N層モデルにおいて、各層における強化繊維の方向は、各層に対応する心室壁層における心筋細胞長軸の方向を反映させることが好ましい。ここで、各層に対応する心室壁層における心筋細胞長軸の方向は、例えば、その心筋壁層における心筋細胞長軸の所定基準面からの角度の代表値(平均値等)で表すことができる。
図8に示すグラフ中には、内層、中層、外層それぞれの心筋細胞長軸の代表値を表す棒グラフ24b、25b、26bが示されている。曲線jで示される心筋細胞長軸方向の内層24における代表値は、位置x1における曲線jの値(棒グラフ24b)となり、中層25、外層26における心筋細胞長軸方向の代表値も、それぞれ位置x2、x3における曲線jの値(棒グラフ25b、26b)となる。このように、曲線jで示される心筋細胞長軸の方向を、内層、中層、外層それぞれにおける代表値によって数値化したものが、心筋細胞長軸の方向を表すデータとして構造データ入力部12により入力され得る。このように、内層、中層、外層間で段階的に異なる心筋細胞長軸の方向を表すデータを入力することで、特に、曲線jで示されるようなヒトの正常心の心筋細胞長軸の変化を、後述する心臓モデルに反映させることができる。
図10は、構造データ入力部12が入力する心筋細胞長軸の方向を表すデータの一例を示す表である。図10に示す例では、心筋細胞長軸の方向は、内、中、外層の3層に対してそれぞれ設定され、左心室を表す回転楕円体の短軸赤道面に平行な面を基準面とする角度で表される。なお、心室壁内膜側から見て反時計回り方向の角度を正方向としている。
図10に示すデータは、1型〜12型までの異なる12パターンの心筋細胞長軸方向の配列を表している。それぞれの配列は、内、中、外層の3層における角度をそれぞれ+θ度、0度、−θ度としている。すなわち、中層は0度で、内層と外層の角度は、値が同じで正負が互いに逆となっている。このように、心室壁を奇数の層(3層)に分けて、真中の層(中層)の心筋細胞長軸方向を0度とすることは、中層が、実際の左心室壁において中間層として存在する輪状筋に相当し、その輪状筋の心筋細胞長軸方向が概ね0度付近で分布している現象に基づいている。これにより、実際の左心室壁の輪状筋の心筋細胞長軸方向を反映した心臓モデルが得られる。
1型〜12型のうち、1型は、内層、中層、外層の3層とも心筋細胞長軸方向が心室輪状方向、すなわち、回転楕円体の短軸赤道面に平行である場合の配列である。8型は、内層、外層の強化繊維配列方向が、互いに特異バイアス角(54.7度)の余角(35.3度)だけ変化する場合の配列である。このように特異バイアス角を心筋細胞長軸の方向を示すデータに利用することによって、従来、知られていなかった特異バイアス角と心機能との関係を解析することができる。また、12型は、3層の強化繊維の方向が、半円を均等に分散する場合の配列である。すなわち、12型は、強化繊維長軸配列の角度が、+90度から ―90度まで均等に分散している配列であって、これは、多数の単層材が積層した配列と同等とみなすことができる。なお、図10に示すデータは一例であって、心筋細胞長軸方向を示すデータはこれに限られない。
なお、ステップS2およびステップS3で構造データ入力部12が入力する心筋細胞長軸の方向、結合繊維の容量分画、心筋細胞径等を表す値の基となるデータは、顕微鏡観察によって得られるデータに限られない。構造データ入力部12は、例えば、X線診断装置、超音波診断装置、MRI等の測定器による測定で得られた臨床データを基にした心筋細胞長軸の方向、結合繊維の容量分画、心筋細胞径の値を入力することもできる。
次に、形状データ入力部13は、左心室の3次元形状を表す形状データを入力する(ステップS4)。ここでは、一例として、形状データとして、壁厚を有する回転楕円体を短軸赤道面で分割した場合の下半分の形状を表すデータが入力される場合を説明する。この場合、例えば、回転楕円体の楕円の長軸半径および短軸半径ならびに壁厚等が形状データとして入力される。これらの値は、例えば、ヒトの正常心の収縮終期心室形状の特徴に基づいて決定することができる。図11は、収縮終期の心室形状を回転楕円体でモデル化するための形状データの例である。
なお、本実施形態では、収縮終期の心室の心室腔に内圧を付加した場合の形状変化をシミュレーションする例について説明するが、心機能シミュレーションシステム10で可能な解析はこの例に限られない。例えば、拡張終期の心室形状をモデル化した心臓モデルに、心室腔における吸引による陰圧が付加された場合の形状変化を解析することもできる。
なお、入力される形状データは、上記の回転楕円体のように、既存の幾何学形状を表すデータに限られない。形状データ入力部13は、例えば、X線診断装置、超音波診断装置、MRI等の測定器による測定で得られた心臓の形状を示すデータを形状データとして入力してもよい。
次に、モデル構築部14は、ステップS1〜S4で入力されたデータを基に、心室壁心筋組織を有限要素でモデル化する(ステップS5)。モデル構築部14は、形状データ入力部13が入力した形状データで表される心室の3次元形状を、複数の有限要素に分割する。各有限要素には節点(ノード)が設けられる。そして、それぞれの有限要素について、材料特性入力部11が入力した結合組織データおよび心筋細胞データで示される、機械特性を表す値を設定する。その際、構造データ入力部12が入力した心筋組織構造データが示す構造データに基づいて、どの有限要素にどのような値を設定するかが決定される。
具体的には、モデル構築部14は、例えば、有限要素ごとに、形状データ、心筋組織構造データ、結合組織の機械特性および心筋細胞の機械特性を用いて要素剛性マトリクスを作成し、その後、要素剛性マトリクスから全体の剛性マトリクスを生成する。
一例として、心室壁が3層の複合材料の曲面薄板で形成される回転楕円体である左心室の心臓モデルを生成する場合について説明する。図12は、形状データで示される回転楕円体を複数の有限要素に分割して生成した心臓モデルの例を示す図である。図12に示す心臓モデル31は、z軸を長軸、x軸またはy軸を短軸とする一定の幅kを持つ楕円を、z軸を回転軸として回転させた場合の軌跡によって形成される回転楕円体である。心臓モデル31は、心室壁が壁厚方向に3つの層に分割され、さらに各層が複数の有限要素に分割されている。これにより、心臓モデル31の心室壁は3層構造の有限要素群で表される。すなわち、心室壁内膜側の内層31aを形成する有限要素群(以下、内層要素群と称する)、心室壁の中間層である中層31bを形成する有限要素群(以下、中層要素群と称する)および心室壁外膜側の外層31cを形成する有限要素群(以下、外層要素群と称する)によって回転楕円体の心臓モデル31が形成される。
なお、有限要素の分割は、図12に示す形態に限られない。例えば、心室壁の層数は3層に限られない。また、有限要素の大きさは必ずしも均一である必要はない。詳しく解析した箇所だけ、より細かい有限要素に分割することができる。
モデル構築部14は、有限要素に、強化繊維と基質とを含む複合材料の材料特性を設定する。例えば、モデル構築部14は、強化繊維の機械特性および繊維方向と基質の機械特性とを重ね合わせて有限要素に設定することができる。すなわち、強化繊維と基質とが一体化してモデル化された異方性マクロ材層を形成することができる。これにより、心室壁が一方向性繊維強化複合材料として表される。具体例として、図13に示すように、連続体要素でモデル化した基質に、強化繊維を埋め込んだモデルを形成することができる。図13に示す例では、Rebar要素と呼ばれる強化繊維の要素rを、基質を表す要素のアイソパラメトリック座標を用いて埋め込む(機械特性を重ね合わせる)ことにより複合材料としてのモデル32を形成している。
また、複合材料のモデル化の方法は、上記のように強化繊維と基質の特性を重ね合わせてモデル化する方法に限られない。例えば、強化繊維と基質の特性を重ね合わせて一体化したモデルを形成するのではなく、強化繊維と基質とをそれぞれ異なる要素としてモデル化する方法も知られている。この場合、強化繊維の繊維径、繊維中心間距離、繊維形状、分布様式等、強化繊維の構造を設定できる。また、強化繊維と基質との相互作用も考慮することができる。例えば、結合組織の容量分画に加えて、心筋細胞径さらには心筋細胞の中心間距離が心機能にどう影響するかを解析するためには、これらを強化繊維の繊維径または繊維中心間距離として心臓モデルに反映させ、心機能をシミュレーションする必要が生じる。その場合、強化繊維と基質とをそれぞれ独立した要素で心臓を形成する複合材料をモデル化することが有効となる。
このようなモデル化の具体例を説明する。図12に示す例では、心室壁が3層の有限要素群(内層要素群、中層要素群、外層要素群)で表されているが、例えば、心室壁を5層の有限要素群(第1〜第5要素群)で表すこともできる。そして、第1要素群、3要素群および5要素群を強化繊維の要素群とし、第2要素群および4要素群を基質の要素群とすることができる。この場合、例えば、強化繊維の要素群の機械特性には、材料特性入力部11で入力された結合組織データが、基質の要素群の機械特性には心筋細胞データがそれぞれ別々に設定される。そして、第1要素群、3要素群および5要素群を強化繊維の要素群に一方向の異方性が設定されることにより、心室壁が一方向性繊維強化複合材料として表される。
ここで、強化繊維の機械特性には材料特性入力部11で入力された結合組織のヤング率とポアソン比が用いられ、基質の機械特性には心筋細胞のヤング率とポアソン比が用いられる。ここで、強化繊維のヤング率が、基質のヤング率の100倍以上となるように設定されると、FRRの曲面薄板の積層により心室壁を形成する心臓モデルが生成される。FRRには、FRP(Fiber Reinforced Plastics:プラスチック性複合材料)等、他の繊維強化複合材料には見られない特徴的な機械特性がある。この例として、弾性ゴム複合材では「特異バイアス角」が存在することが挙げられる。なお、実際の心室壁を構成する心筋組織の構成もこの「特異バイアス角」によって生じる特性を考慮した構成になっていると考えられるので、心臓モデルにおいて心室壁を形成する複合材料をFRRとすることにより、従来では解明できなかった病態の解明を支援する心機能シミュレーションが可能となる。
また、強化繊維の繊維方向は、構造データ入力部12で入力された心筋細胞長軸方向を表すデータにより決定される。例えば、ステップS3で、内層、中層、外層それぞれにおける心筋細胞方軸方向の代表値が入力された場合、それぞれの層の代表値を、内層要素群における強化繊維の繊維方向、中層要素群における強化繊維の繊維方向および外層要素群における強化繊維の繊維方向にそれぞれ設定することができる。
また、構造データ入力部12で入力された結合組織の容量分画は、例えば、強化繊維の径を決定するのに用いられる。また、心筋細胞とそれをとりまく結合組織の局在が数量的に1対1に対応すると仮定すると、結合組織の容量分画および心筋細胞径の値を用いて強化繊維径を計算することができる。例えば、結合組織の容量分画=0.2、心筋細胞径=15μmが構造データ入力部12で入力された場合について説明する。この場合、心筋細胞長軸に垂直な断面において、結合組織の面積:心筋細胞の面積=0.2:0.8=1:4であるので、上記仮定によれば、心筋細胞径:強化繊維の径=1:2となる。(面積比が1:4なので、径の比が1:2になる。)したがって、モデル構築部14は、強化繊維の径は7.5μm(心筋細胞径15μm×1/2)と計算することができる。
また、構造データ入力部12で心筋細胞径が入力されている場合は、心筋細胞径を基に、強化繊維中心間距離を決定することができる。例えば、心筋細胞束は側面を結合組織で包まれた複数の円筒が複数束になったものと仮定し、さらに、それらの円筒の軸は平行であり、軸に垂直な面において各円筒の断面円が6角形の最蜜充填(Hexagonal packing)で配列していると仮定することができる。そして、円筒の側面を取り巻く結合組織を同じ体積を持つ一本の強化繊維とみなした場合、強化繊維間の距離=心筋細胞径と見なすことができる。このような仮定に基づけば、モデル構築部14は、構造データ入力部12で入力された心筋細胞径15μm=強化繊維中心間距離とすることができる。なお、上記の強化繊維の径および強化繊維中心間距離の計算方法は一例であって、これらに限定されない。
以上のようにして、左心室の心臓モデルが生成されると、シミュレーション部15は、境界条件を設定し、モデル構築部14が構築した心臓モデルの左心室の内側から心室壁内膜へ所定の圧力を付加した場合の心室の形状変化を計算する(ステップS6)。図14は、シミュレーションにおける境界条件および圧力の付加の例を示すための模式図である。図14には、図12に示す心臓モデル31のxz平面における断面のうちz軸の右側の部分のみが示されている。図14に示す境界条件は、心尖部の中層におけるz軸上の節点n1、n2はxy方向に変位しないこと(xy拘束)と、心室上面の中層における節点n3、n4はz方向に変位しないこと(z拘束)である。圧力は矢印の方向に付加される。圧力の大きさは、例えば、20KPaとすることができる。圧力の大きさは、ヒトの心臓サイクルにおける左心室の生理的な圧力の大きさを反映した値とすることができる。なお、図14に示す例では、心室腔を拡張させるように内圧を付加しているが、逆に心室腔を収縮させるように陰圧を付加することもできる。
シミュレーション部15は、シミュレーションが終了すると解析結果を出力する(ステップS7)。解析結果の例として、心室内圧の変化に伴う心室腔の形状及び大きさの変化、心室壁の形状及び大きさの変化、並びに、心室壁の捩れ変位等が挙げられる。解析結果の出力形態は、これらに限られず、目的に応じて任意の形態とすることができる。例えば、シミュレーション部15は、心室腔および心室壁の形状の変化を示す動画像等を出力してもよい。
[解析結果の利用例]
図15は、シミュレーション部15による解析結果の一例を表すグラフである。図15は、図10に示す心筋細胞長軸の配列のパターン(1型〜12型)それぞれにおける心室壁の捩れを表すグラフである。図15に示すグラフにおいて、横軸は図10に示す心筋細胞長軸の配列のパターン(1型〜12型)における角度θ(すなわち、隣り合う層間での心筋細胞長軸の角度変化θ)を表す。縦軸は、心室の捩れ角度を表す。心室の捩れ角度は、例えば、図12に示す心臓モデル31において、心室の上面における有限要素が、z軸を中心として回転した場合の回転角度の平均値で表すことができる。心室を心尖部側から眺めた場合、時計回りを正、反時計回りを負の角度する。
図15に示す解析結果では、先ず「左心室形状の捻れ」に注目すると、θ=20度以下の場合とθ=25度以上の場合とで、捩れの方向が逆転する結果となっている。そして、θ=0度(上記、3層モデルの1型)、および、θ=60度(上記、3層モデルの12型)においても、左心室の捩れがほぼ消失することが示されている。さらに、特異バイアス角を利用した配列である8型のθ=35.5度付近で、負の方向の捩れ角度が最大になっている。これは、ヒト正常心の拡張期に観察される心臓の捩れ現象と略一致する。また、特異バイアス角を利用した配列である8型のθ=35.5度付近の捩れの方向は、ヒト正常心の拡張期に観察される心臓の捩れの方向に一致する結果が得られている。すなわち、特異バイアス角を加味した心臓モデルによるシミュレーションの解析結果は、通常ヒト正常心で観察される「左心室形状の捻れ」現象と矛盾していない。
一般に、左心室捩れ現象の変化は、心機能の変化を示す繊細な指標とされている。また、病的心では左心室壁の伸展性も変化することが知られている。したがって、シミュレーション部15による左心室形状の捻れの変化や左心室容量の増加を示すデータ等の解析結果は、心室壁のコンプライアス、心室の拡張能、心室ポンプ機能、心筋の機械特性等の心筋、心室の機能特性の解析に有効に利用できる。
また、例えば、正常心、求心性肥大心、遠心性肥大心では、それぞれに特徴的な心筋細胞長軸方向の配列、結合組織の容量分画、結合組織の構造等が見られる。したがって、このような特定の病的心における心筋組織の特徴を、心機能シミュレーションシステム10への入力データ(例えば、上述の結合組織データ、心筋細胞データ、心筋組織構造データ、形状データ等)として、シミュレーション実行することで、その解析結果を、病態解明の支援に役立てる可能性がある。
例えば、図16は、正常心、求心性肥大心、遠心性肥大心それぞれにおける心筋組織の特徴を、モデル構築部14が生成する心臓モデルにおける複合材料の構造、機械特性として設定する場合のデータの例を示す表である。図16に示す例は、心室壁を5層モデルとして形成する場合の例である。図17は、正常心、求心性肥大心、遠心性肥大心それぞれに形状データとして設定する値と、圧力として設定する値との例を示す表である。
図16に示すように、求心性肥大心、遠心性肥大心の種類の異なる肥大心において、それぞれの心室壁の心筋組織を複合材料としてモデル化すると、壁厚方向に見られる強化繊維長軸配列の変化の様相が、2種類の心肥大で著しく異なる。また、強化繊維短軸配列、即ち、強化繊維の容量分画、繊維中心間距離、並びに径などは、心筋各層(第1層〜第5層)の間でその値が異なる。
さらに、図17に示すように、二つの種類の異なる肥大心において、心室肥大の形状的様相が特徴的に異なることを反映し、心室の形状データ(回転楕円体の各パラメタ)も、2種肥大心の間で明らかに相違する。
このように、心室のモデルを生成するための重要因子それぞれが、2種類の肥大心において特徴的に異なる。そこで、心機能シミュレーションシステム10を用い、2種類の肥大心それぞれに特徴的な複数の因子を反映させた心臓モデルを用いて心室の形状変化をシミュレーションすることで、複数の規定因子に見られる様々な相違を総合的に加味し、種類の異なる2種類の肥大心における心機能を、一元的に比較検討することが可能となる。依って、肥大の種類に特徴的な、左心室壁拡張能障害に起因する拡張期心不全の病態解明の支援に役立てる可能性が示唆される。
また、心機能シミュレーションシステム10は、心筋機能評価、病態解明の他、例えば、外科的手術治療、内科的薬剤治療に利用することができる。外科的手術治療においては、収縮能の低下に基づき、著しく拡張した左心室で、心室壁の過伸展による拡張能障害が生じる症例に対し、心室容量の減少を目的とする左心室再建術を試みる場合がある。この時、再建後の左心室の形状として様々の選択肢が想定される。そのような場合、術前の左心室幾何学形状などを基に、想定される術後の左心室形状の各選択肢に於ける、左心室拡張能の改善具合を事前にシミュレーションすることは極めて有用である。そこで、術前病的心の示す、様々の機械特性要因を評価し、術後形状選択肢、各々に於ける左心室拡張能の改善を比較検討するため、心機能シミュレーションシステム10を利用することができる。
病的心に対する内科的薬剤治療の分野では、近年特に注目される拡張期心不全を呈する諸種な病的心に対して、現在様々な治療薬の開発が試みられている。そのような薬剤として、例えば、本発明の観点からは心臓モデルにおいて強化繊維と看做される、コラーゲンなどの結合組織の合成能、分解能などに作用し、組織内の結合組織量的増加を阻止、改善することを期待する薬剤がある。また、生化学的性状に作用し、コラーゲンの弾性特性の変化(ヤング率の増大)を阻止、改善することを期待する薬剤などの例も挙げられる。これらの薬剤効果を判定する際、拡張期心不全を呈する様々の病的心において、心拡張能を規定する様々の要因の関与を予め評価した結果に基づき、対象とする症例を選択し、薬効評価を行うことが有意義である。この様な治療対象の選択において、心機能シミュレーションシステム10を利用することができる。また、結合組織のコラーゲンのヤング率値に対する薬剤効果の程度を試験管内レベルで決定する際、複合材料の弾性特性に対する薬効と、他の機械特性要因を総合的に検証し、病的心心機能に対する効果を予測することが有意義である。従って、弾性特性値の変化などの試験管レベルでの薬効と、拡張能の改善などの症例レベルでの薬効を対比させる目的で、心機能シミュレーションシステム10を利用することができる。
なお、本実施形態に示した心臓モデルは、本発明の一例であって、これに限られない。例えば、図18に示すように、心室壁の厚み方向に3つの層41、42、43に分割した後、さらに各層内でも、強化繊維を規則的に配置するモデルを生成してもよい。図18に示す例では、層42において、強化繊維は複数の並行する平面に添って配置される構造となっている。層42内の前記複数の並行する平面と、壁厚方向に垂直な面との角度θ42を例えば、特異バイアス角に設定することができる。これにより、以下に示すような実際の心室壁の特異バイアス角を利用した特徴的な構造を反映させた心臓モデルとすることができる。
図19(a)は、心室壁の壁の厚み方向に平行な面における断面の光学顕微鏡写真である。写真の右端が心内膜であり、左端が心外膜である。図19(b)は、心室壁の壁厚中央部における四角mの部分を拡大したものである。壁厚中央部では、並行する心筋細胞群の短軸断面像が認められる。さらに、心筋細胞群は、平板状断面が積層した形になっている。これに伴い、心筋細胞群の隙間(写真において白い部分)、すなわちクリーベジ(Cleavage)が積層に添って規則的に配列する。これをクリーベジの特徴的配列と称する。このクリーベジには、結合組織が充填される。したがって、結合組織(主にペリミジウム)もクリーベジの特徴的配列と同様に規則的に配列する。図19(b)に示す規則的に配列されたクリーベジの方向は、正常心では心室壁面(壁厚方向に垂直な面)に対して特異バイアス角だけ傾いていると考えられている。上記図18に示した心臓モデルは、このようなクリーベジ配列の構造を反映させた心臓モデルである。
また、本実施形態において、シミュレーション部15は、強化繊維の方向(角度)が、圧力の付加による心室壁の変形に関わらず一定であると仮定して計算をしている。しかし、実際の左心室では形状変化に従い、心筋細胞長軸方向が僅かながら変化する。したがって、シミュレーション部15は、強化繊維の方向(角度)が、心室壁の形状変化に従って変化することを計算に組み入れてもよい。これにより、シミュレーションの精度を高めることができる。
また、本実施形態における心機能シミュレーションでは、心筋組織の強度または心臓の強度については考慮していないが、例えば、材料特性入力部11が、心筋の引張り強度、破壊強度(fracture strength)、繊維応力(fiber stress)等を入力することによって、心筋組織の強度または心臓の強度を考慮した解析が可能になる。例えば、シミュレーション部15は、圧力を加えた場合における、心筋組織の破壊および心臓破裂等の有無等の解析を行ってもよい。
(実施の形態2)
本実施形態は、心室壁を支持するための複合材料シートの設計を支援するための心機能シミュレーションシステムに関する。
[心機能シミュレーションシステムの構成]
図20は、本実施形態における心機能シミュレーションシステムの構成を表す機能ブロック図である。図20において、図1と同じ機能ブロックには同じ番号を付し、詳細な説明を省略する。図20に示す心機能シミュレーションシステム100は、図1に示す心機能シミュレーションシステムにシートデータ入力部16をさらに加えた構成である。
シートデータ入力部16は、前記心臓の心室壁の少なくとも一部を支持するための複合材料シートを表す複合材料シートデータを入力する。複合材料シートデータには、この複合材料シートに含まれる強化繊維および基質の機械特性、前記強化繊維の繊維方向、この複合材料シートの形状等を表すデータが含まれる。
モデル構築部14は、解析対象の心臓に相当する3次元形状の連続体に、複合材料シートデータで表される複合材料シートが設けられて構成される連続体を表す心臓モデルを生成する。
[複合材料シート]
ここで、解析対象となる心室壁を支持するための複合材料シートについて説明する。ここで解析対象とする複合材料シートは、一方向性のFRRで形成されたシートである。実施の形態1でも述べた通り、心臓の非収縮期において心筋細胞と結合組織のヤング率の比較検討を行うと、心筋組織は、心筋細胞を基質、結合組織を強化繊維とする、一方向性のFRRとしての機械特性を示すことが明らかになる。心筋組織が持つこのFRRの特性は、心室の形状維持、心室拡張機能において重要な役割を担う。そこで、心筋組織の病的変化により引き起こされる心機能障害を改善させることを目的として、FRRの特性を持つ複合材料シートで、心室壁の全体または一部を、置換、支持、補填、または補修することができる。
図21は、一方向性のFRRのラミナ(薄板)で形成された心臓を支持するための複合材料シートの例を示す図である。図21に示す複合材料シート51は、心臓を包み込める袋状に形成され、上部と下部が開口している。複合材料シート51を心臓に装着する際に下部の開口部分の大きさを調節することにより、複合材料シート51が心臓に合うように調節することができる。なお、下部が必ずしも開口している必要はない。
複合材料シート51は、例えば、z軸を回転軸とする回転楕円体の一部を切り抜いた形状とすることができる。例えば、複合材料シート51を心臓に装着した場合、上端が心臓の心基部に、下端が心尖部にくるように大きさを調節することができる。
なお、複合材料シート51の大きさおよび形状は、装着する心臓の大きさおよび形状に合うように形成されてもよい。例えば、複合材料シート51の上端の開口部が、装着する心臓のA−V溝と呼ばれる部分に嵌るように、上端の開口部の大きさおよび形状を決定することができる。
複合材料シート51を心臓に装着した場合、心臓に対して強化繊維がどのような方向で配置されるかによって、心機能に与える影響が変化する。そのため、強化繊維の配置方向が重要となる。強化繊維の方向は、例えば、シートの厚み方向に垂直な面内における角度θmで表される。角度θmは、任意に定められた基準平面からの角度である。ここでは、一例として、z軸に垂直な平面を基準平面とする。
図21中の矢印qは基準面における複合材料シート51の断面の円周方向を示す矢印である。θmが様々な値を持つ複合材料シート51を複数用意することで、その中から目的に適合するもの選択できる。例えば、5度間隔、または10度間隔で、−90度から+90度までを等分したそれぞれの値をθmに設定した複合材料シート51をそれぞれ用意することにより、ユーザは、装着する心臓の状態に合わせて、θmが適切な値を持つ複合材料シート51を選択することができる。ユーザは、適切なθmを選択するにあたって、心機能シミュレーションシステム100の結果を用いることができる。
図22は、一方向性のFRRのラミナ(薄板)で形成された複合材料シートを2枚積層して用いる場合の例を示す図である。図22(a)に示す例では、複合材料シートの内層52aと、複合材料シートの外層52bとが積層されて形成された積層材52で、心臓を包み込む袋を構成している。積層材52は、図21に示した複合材料シート51と同様に、下部が開口している。また、積層材52も、z軸を回転軸とする回転楕円体の一部を切り取った形状とすることができる。図22(b)は、内層52aのみを示している。外層52bの強化繊維の方向と内層52aの強化繊維の方向をそれぞれ異なる方向に設定することができる。
内層52aと外層52bそれぞれにおける強化繊維の配置方向は、例えば、z軸の垂直な平面を基準面とし、基準面からの角度θma、θmbで表すことができる。角度θma、θmbそれぞれの適切な値は、心機能シミュレーションシステム100の結果を用いて設定することができる。
なお、複合材料シートの積層材は、2層に限らない。必要に応じて複数枚の複合材料シートを積層した積層材を、心臓の支持に用いることができる。図23(a)は、複合材料シートを3枚積層して用いる場合の例を示す図である。図23(a)に示す複合材53は、内層53c、中層53dおよび外層53eで形成されている。内層53c、中層53dおよび外層53eは、それぞれ複合材料シートである。図23(b)は、中層53dのみを示す図であり、図23(c)は、内層53cのみを示す図である。内層53c、中層53d、外層53eそれぞれにおける強化繊維の配置方向は、例えば、z軸の垂直な所定の平面を基準面とし、基準面からの角度θmc、θmd(θmd=0であるため図示せず)、θmeで表すことができる。角度θmc、θmd、θmeそれぞれの適切な値は、心機能シミュレーションシステム100の結果を用いて設定することができる。
複合材料シートを単層で用いるか、複数層で用いるかは、心機能シミュレーションシステム100の結果を用いて判断することができるが、対象とする病的心の状況によってある程度予測することができる。例えば、対象とする病的心の心室壁最外側において、ある方向の心筋細胞長軸を含む層が欠損している場合、欠損している方向と同じ方向の強化繊維を有する単層の複合材料シートで補うことが考えられる。また、対象とする病的心が、正常心(正常の心臓)の捩れ変形に類似した機械特性を必要とする場合、捩れ変形を起こしやすい複数層の複合材料シートを用いることが考えられる。さらに、対象とする病的心の全層を複合材料シートで置換する場合、正常心に近い積層構造を持つ複数層の複合材料シートを用いることが好ましいと考えることができる。
また、単層の複合材料シートを用いて心機能改善ができる場合であっても、対象とする病的心の最外側の心筋繊維の方向と、複合材料シートの強化繊維の方向が大きく異なる場合、複合材料シートと心臓との間のストレスが大きくなる可能性がある。そのため、複合材料シートと心臓との間に、ストレスを抑えるための複合材料シートを挿入することもある。
単層、複数層いずれの場合も、対象とする病的心に複合材料シートを装着した状態での全体の機械特性を、心機能シミュレーションシステム100を用いて評価することにより、装着後の病的心が目的とする機械的振る舞いを示すように単層あるいは複数層の複合材料シートを設計することができる。例えば、ユーザが、単層の複合材料シートを複数選択し、それらの積層体について心機能シミュレーションシステム100を用いて評価してもよい。また、ユーザは、心機能シミュレーションシステム100を用いて、単層および複数層を含む様々な複合材料シートの構造について評価を行い、好ましい評価結果が得られた構造の複合材料シートを選択して採用してもよい。
複合材料シートにおける一方向性強化繊維は、例えば、スチール、アラミド、ナイロン、レーヨン、炭素繊維、ホウ素繊維、ガラス繊維、シリカ繊維等のような材料が用いられる。複合材料シートにおける一方向性の強化繊維の短軸配列(繊維方向に垂直な断面における強化繊維の分布様式)は、例えば、無秩序配列、正方形配列、正六角形配列等とすることができる。なお、複合材料シートにおける一方向性強化繊維には、長繊維(long fiber)および短繊維(short fiber)のいずれを用いてもよい。
また、複合材料シートにおける強化繊維の配置は、コード状の繊維が並行して配置される場合に限られない。例えば、図24(a)、(b)に示すように、コード状の強化繊維をある平面に沿うようにより合わされ、その平面が基質中で並行するよう配置されてもよい。図24(a)は、強化繊維のより合わせが沿う平面に垂直な面における断面を示す図である。図24(a)は、xz平面が断面となる場合の例である。点線は、強化繊維のより合わせが沿う平面とxz平面との交線を表している。この点線とz方向との角度θを、例えば、特異バイアス角(54.7度)またはその余角とすることができる。
なお、図24(a)に示す複合材料シートは、例えば、図23(a)に示す複合材53の中層53dとして用いることができる。この場合の複合材53の中層53dにおける強化繊維の構造は、図19に示したクリーベジ配列の構造を模した構造となる。図24(b)は、強化繊維のより合わせが沿う平面における強化繊維のより合わせの例を示す図である。なお、より合わせの形は、図24(b)に示す例に限られない。
以上、図21〜図23を参照して、心機能シミュレーションシステム100の解析対象となる複合材料シートの例を説明したが、複合材料シートの形状は、上記例に限られない。例えば、心臓に縫合して取り付けるための、単層または複数層の矩形薄板の複合材料シートも解析対象となりうる。また、複合材料シートを心臓に装着する方法には、例えば、縫合、生体接着剤の使用等の方法が挙げられる。生体接着剤には、例えば、ポリエチレングリコール、フィブリンまたはシアノアクリレート、あるいは、ウシ血清アルブミン(BSA)およびグルタルアルデヒドの組み合わせ等が挙げられる。
心臓の少なくとも一部を支持するための複合材料シートとして、上記のような、ヤング率の差が100倍以上である一方向性強化繊維と基質とを含む複合材料シートを用いることによって、心臓に欠けている心筋の機能を適切に補うことが可能になる。また、その複合材料シートを積層し、各層の複合材料シートの面内における一方向性強化繊維の方向を、各層ごとに設定することで、心筋の機能を適切に補う複合材料シートの設計が可能になる。以下に、心筋の機能を適切に補うための、心機能シミュレーションシステム100を用いた複合材料シートの設計例を説明する。
[心機能シミュレーションシステムの動作例]
次に、本実施の形態における心機能シミュレーションシステム100の動作の例を説明する。図25は、心機能シミュレーションシステム100の動作を示すフローチャートである。図25において、図2と同じステップには同じ番号を付し詳細な説明を省略する。ここでは、図23に示した複合材料シートの積層材53を、人の左心室に装着した場合の、左心室および積層材53の形状変化を解析する場合について説明する。
まず、シートデータ入力部16が、積層材53を表す複合材料シートデータを入力する(ステップS0)。複合材料シートデータは、例えば、積層材53を構成する複合材料シートの形状、複合材料シートに含まれる強化繊維およぶ基質の機械特性、強化繊維の方向等が含まれる。
複合材料シートの形状を表すデータには、例えば、各層53c、53d、53eの複合材料シートそれぞれの厚み、回転楕円体の長軸半径、短軸半径等が含まれる。また、複合材料シートの形状を装着する心臓の形状に基づく形状としてもよい。例えば、シートデータ入力部16は、複合材料シートを装着する心臓の表面形状を表すデータを入力して、心臓の表面形状に添う形状を複合材料シートの形状として入力することができる。シートデータ入力部16は、さらに、心臓に装着した場合の装着位置に関する情報を入力してもよい。
複合材料シートに含まれる強化繊維および基質の機械特性の値は、例えば、ユーザが任意に設定した値を入力する。強化繊維の方向については、一例として、ユーザが各層53c、53d、53eについて設定した角度θmc、θmd、θmeを入力するものとする。ユーザは、強化繊維の方向を表す角度θmc、θmd、θmeの様々なパターンについて心機能シミュレーションシステム100に入力し、各パターンについてシミュレーションを実行させることで、解析結果から適切な強化繊維の方向を見出すことが可能になる。
なお、シートデータ入力部16は、ユーザから複合材料シートデータの入力を受け付けてもよい。また、シートデータ入力部16は、例えば、複合材料シートがCADシステムで設計された場合には、CADシステムに記録された複合材料シートの設計データを読み込んでもよい。さらに、シートデータ入力部16は、測定によって得られた心臓の形状データ等、既に記録されているデータを読み込んでもよい。
また、複合材料シートデータは、上記例に限られない。複合材料シートデータに、例えば、強化繊維の容量分画、繊維径、繊維中心間距離等複合材料の詳細な構造を示すデータが含まれてもよい。
ステップS1〜S4の処理は、図2に示した処理と同様である。ステップS5において、モデル構築部14は、心室に複合材料シート53が装着された状態の心臓モデルを生成する。モデル構築部14は、ステップS4で入力された形状データで表される心室と、心室を支持する複合材料シートとで形成される3次元の連続体を有限要素に分割し、各有限要素について、材料特性を示す値を設定する。複合材料シートに相当する有限要素には、ステップS0で入力されたシートデータに基づいて、強化繊維および基質の機械特性、強化繊維の方向等が設定される。
図26は、ステップS5でモデル構築部14が生成した心臓モデルの例を示す図である。図26に示す心臓モデル61において、心室壁の内層31a、中層31b、外層31cは、図12に示した心臓モデル31の内層31a、中層31b、外層31cと同様である。心臓モデル61では、心室の外層31cの外側に、さらに、複合材料シートの内層61a、中層61b、外層61cが設けられている。
複合材料シートの内層61a、中層61b、外層61cにおける強化繊維および基質の機械特性は、ステップS0で入力された、強化繊維および基質の機械特性の値が用いられる。また、内層61a、中層61b、外層61cそれぞれにおける強化繊維の方向は、強化繊維はステップS0で入力された角度θmc、θmd、θmeにより決定することができる。
シミュレーション部15は、境界条件を設定し、モデル構築部14が生成した心臓モデルの左心室の内側から心室壁内膜へ所定の圧力を付加した場合の心室の形状変化を計算する(ステップS6)。このステップS6および、解析結果の出力(ステップS7)は、図2に示したステップS6、S7と同様にすることができる。例えば、解析結果として、心室腔の形状及び大きさの変化、心室壁の形状及び大きさの変化、並びに、心室壁の捩れ変位等が出力される。
ユーザは、出力された解析結果を、複合材料シートの設計に利用することができる。例えば、図23に示す積層材53の例を挙げる。この場合、シートデータ入力部16は、外層53c、中層53d、内層53eそれぞれの強化繊維の角度θmc、θmd、θmeを、+37度、0、−37度(特異バイアス角の余角)とする複合材料シートデータを入力する。モデル構築部14は、積層材53が心臓に装着された状態の心臓モデルを生成する。シミュレーション部15は、心臓モデルを用いて、積層材53を心室に装着した場合の内圧付加による心室壁の捩れ変位を計算する。その解析結果から、積層材53を心室に装着した状態での、内圧付加による心室壁の捩れは、正常心に認められる心拍動に伴う捩れ現象に類似した動態を示すことが明らかとなる。したがって、強化繊維の角度θmc、θmd、θmeを、+37度、0、−37度とする積層材53は、対象とする心臓の心拍動に伴う捩れ現象を回復することを目的とする製品として選択され得る。
また、図22に示す積層材52の例を挙げる。この場合、積層材52の内層52a、外層52bの角度θma、θmbをそれぞれ+54.7度、−54.7度(特異バイアス角)とする複合材料シートデータをシートデータ入力部16が入力し、モデル構築部14は、積層材52を心室に装着した状態の心臓モデルを生成する。シミュレーション部15が、心臓モデルを用いて、積層材52を心室に装着した場合の内圧付加による心室壁の捩れ変位を計算する。その結果、捩れ変位がほとんど生じないことが明らかになる。したがって、角度θma、θmbがそれぞれ+54.7度、−54.7度の積層材52は、対象とする心臓の心拍動に伴う捩れ現象に影響を与えない製品として選択されうる。
また、積層材において、最内層の強化繊維の方向を設定する場合、対象心臓の心室壁の心筋組織最外層における心筋細胞長軸方向と一致させるか、もしくは相違を少なくすることが好ましい場合がある。積層材を心臓に装着した後、積層材と心臓との境界面近くの心筋組織に対する局所ストレスが小さくなると考えられるからである。この局所ストレスを小さくするための層を最内層に設けた複合材料シートの積層材が作製される場合がある。この場合、積層材全体としての機械特性に対する最内層の影響を考慮する必要がある。このように最内層を設けることの影響を予測するために、心機能シミュレーションシステム100を利用することができる。
また、他の利用例として、ユーザは、解析結果が示す心室の機械的振る舞いが、正常心の機械特性に近いかを確認することにより、シートデータ入力部16で入力された複合材料シートの形状、強化繊維の方向、機械的特性等が適切であるか否かを判断することができる。また、心機能シミュレーションシステム100は、シートデータ入力部16で入力する複合材料シートデータを自動的に更新して、例えば、心室腔の形状及び大きさの変化、心室壁の形状及び大きさの変化および心室壁の捩れ変位等の解析結果が所定の範囲内になるまで、ステップS0〜S6の処理の繰り返してもよい。これにより、最適な複合材料シートデータが自動的に得られる。
[複合材料シート設計の具体例]
以下に、心機能シミュレーションシステム100の解析結果を用いて、複合材料シートの構造を決定する具体例について説明する。図27は、正常心、病的心1、病的心2それぞれを複合材料としてモデル化した際の、複合材料の強化繊維の方向(角度)、容量分画の設定例を示す表である。表に示す設定値は、例えば、心筋組織の形態学的観察結果に基づき決定することができる。ここでは、病的心1、病的心2に対して、心機能障害の改善のため使用する複合材料シートの強化繊維方向および容量分画を決定する例について述べる。
まず、ユーザは、図27に示す正常心の設定値を、構造データ入力部12に入力し、圧力を付加したときの心室容量の変化、心室壁の厚み変位、および心室壁の捩れ変位をシミュレーション部15の解析結果として得る。その後、図27に示す病的心1の設定値を構造データ入力部12で入力し、さらにシートデータ入力部16で病的心1に対して使用しようとする複合材料シートの強化繊維方向および容量分画を入力し、病的心1に複合材料シートを使用した場合の解析結果をシミュレーション部15から得る。ユーザは、この解析結果を、正常心の解析結果と比較して、心機能が十分に改善されているか判断する。このようにして、心機能が十分改善されると判断できるまで、複合材料シートの強化繊維方向および容量分画を変えて、心機能シミュレーションシステム100に繰り返しシミュレーションを実行させる。これにより、強化繊維方向および容量分画の適切な値が得られる。病的心1のシミュレーションにおいて、例えば、強化繊維方向が−45度、容量分画が0.2の時の解析結果が、正常心の解析結果と最も近くなったとする。この場合、このような構成の複合材料シートを病的心1に用いることで、角度の病的変化(病的心1の心外膜側の第6、7層では、強化繊維の角度が正常心と異なっている)が修復され、心機能が改善されると予測できる。
図27に示す病的心2の設定値では、強化繊維の角度が+45度〜−30度で分布している。正常心における強化繊維の角度分布(+50度〜−45度)と比較すると、心内膜側の+50度の角度を持つ強化繊維と、心外膜側の−45度の角度を持つ強化繊維とが消失している。これらの消失を補う複合材料シートを設計するために、例えば、単層の複合シートおよび複数層(例えば、2層〜5層それぞれについて)の複合材料シートを、病的心2に使用した場合の心機能シミュレーションが実行される。その結果、例えば、3層の複合材料シートであって、各層における適切な強化繊維の角度が、内側から、−45度、0度、+50度であり、容量分画は、0.2である構成の複合材料シートを使用した場合に最も正常心に近い解析結果が得られたとすると、その構成を持つ複合材料シートが適切であると判断することができる。
以上のように、本実施形態における心機能シミュレーションシステム100によれば、心室壁の少なくとも一部を支持する複合材料シートの適切な設計を支援することができる。
(実施の形態3)
本実施形態は、心臓の少なくとも一部を支持するための複合材料シートに関する。本実施形態にかかる複合材料シートは、一方向性強化繊維と基質とを含む複合材料で形成される薄板の単層材あるいは積層材で構成される。そして、一方向性強化繊維のヤング率は基質のヤング率の100倍以上であることを特徴とする。
複合材料シートの形状、総数、強化繊維の方向等、複合材料の構造は、対象とする心臓の形状や病状に応じて決定される。例えば、実施の形態2に示したように、心機能シミュレーションシステム100を利用して複合材料の構造を決定することができる。そこで、本実施形態では、主に、複合材料シートを構成する材料について説明する。
強化繊維のヤング率が基質のヤング率の100倍以上である複合繊維の例として、FRRを挙げることができる。FRRは、ゴム材料の基質と、実施の形態2において上述したような強化繊維材料とを含む。
ゴム材料としては、生体適合性のあるゴム材料が用いられる。生体適合性がある材料とは、その材料が、周囲の組織に、例えば、過度のまたは有害な拒絶反応、炎症、梗塞、壊死などを起こさせることによって、悪影響を与えることがないように生物学的に不活性である材料のことである。生体適合性のあるゴム材料の例として、ラテックスアレルギーを惹起する可能性の少ないゴム材料がある。このようなゴム材料には、例えば、ポリウレタン系ゴム、ポリウレタン系熱可塑性ゴム、脱蛋白ゴム、シリコンゴム等の合成ゴムが含まれる。
また、ゴム材料として、例えば、誘電エラストマー等の導電性高分子材料を用いてもよい。導電性高分子材料に電極をつけることで、心室の収縮機能の置換、補填、改善するためのアクチュエータとして機能させることができる。例えば、心筋細胞の形状を模した長軸と短軸を有する円筒状であって、極性を持つ形状に成形した導電性高分子材料をゴム材料として用いることができる。そのような円筒状の導電性高分子材料を複数、その長軸方向を一方向に揃えて並行して配置することにより複合材料シートを形成することができる。この場合、例えば、導電性高分子材料の形状の成形を担う材料、導電性高分子材料の一方向性配列を支持する材料、または、電極を構成する材料等が、強化繊維の材料に含まれる。
また、FRRの他の例として、複合材料シートの基質に、組織工学手法を用いて作られた移植心筋細胞を用いることができる。移植心筋細胞は、例えば、胚性幹細胞(embryonic stem cell)、骨髄由来の幹細胞(bone marrow-derived stem cell)等を用いて培養することができる。また、強化繊維に、組織工学手法を用いて作られた移植結合組織繊維を用いることができる。移植結合組織繊維として、例えば、市販の医療用コラーゲン、細胞培養用コラーゲンスポンジ、人工コラーゲン等を用いることができる。
例えば、心筋組織内で観察されるごとく、長軸と短軸を有する円筒状で極性を持つ形状を示す移植心筋細胞を複合材料シートの基質に用いることができる。そのような円筒状の移植心筋細胞を複数、その長軸方向を一方向に揃えて並行するように配置することにより複合材料シートを形成することができる。このような、移植心筋細胞が一方向性を有するように配列された複合材料シートは、既存の細胞工学的手法による細胞シートの作製方法を応用して作ることができる(下記文献参照)。また、移植心筋細胞が一方向を有するように配列された薄板を細胞工学的手法で作製する際に用いられる、細胞培養表面を提供する材料(一例として、組織培養用コラーゲン膜)が、強化繊維材料に含まれてもよい。
(文献)A. Furuta 他12名,"Pulsatile cardiac tissue grafts using a novel three-dimensional cell sheet manipulation technique functionally integrates with the host heart, in vivo. " Circulation Research 2006 March 17; 98:705-712. U.S.A. American Heart Association, Inc.
本発明は、実際の心筋組織における心筋細胞および結合組織の特性を適切に反映させた心臓モデルでの心機能シミュレーションが可能な心機能シミュレーションシステムとして利用可能である。また、実際の心筋組織における心筋細胞および結合組織の特性にあった複合材料シートとしても利用可能である。

Claims (13)

  1. 心筋細胞および結合組織を含む心筋組織で構成される心臓をモデリングして、基質と強化繊維とを含む複合材料の連続体を表すデータである心臓モデルを生成し、前記心臓モデルを用いて心臓の形状変化を予測する心機能シミュレーションシステムであって、
    心筋組織に含まれる結合組織の機械特性を表す結合組織データと、心筋組織に含まれる心筋細胞の機械特性を表す心筋細胞データとを入力する材料特性入力部と、
    心臓の少なくとも一部の3次元形状を表す形状データを入力する形状データ入力部と、
    基質と強化繊維とを含む複合材料で形成された前記3次元形状の連続体を有限要素の集合で表す心臓モデルを作成し、当該心臓モデルにおいて、結合組織データが示す機械特性を前記強化繊維の機械特性に、前記心筋細胞データが示す機械特性を前記基質の機械特性に設定するモデル構築部と、
    前記心臓モデルで表される心臓に圧力を加えた場合の形状の変化を有限要素法を用いて計算するシミュレーション部とを備える心機能シミュレーションシステム。
  2. 前記材料特性入力部は、前記結合組織のヤング率を前記結合組織データとして入力し、前記心筋細胞のヤング率を前記心筋細胞データとして入力し、
    前記結合組織のヤング率は前記心筋細胞のヤング率の100倍以上である、請求項1に記載の心機能シミュレーションシステム。
  3. 前記モデル構築部は、ゴムで形成された基質と一方向性の強化繊維とを含む一方向性繊維強化ゴム複合材料で形成された前記3次元形状の連続体を有限要素の集合で表す心臓モデルを作成し、当該心臓モデルにおいて、結合組織データが示す機械特性を前記強化繊維の機械特性に、前記心筋細胞データが示す機械特性を前記基質の機械特性に設定する、請求項1に記載の心機能シミュレーションシステム。
  4. 前記心筋組織で結合組織が占める容量を示す値を含む心筋組織構造データを入力する構造データ入力部をさらに備え、
    前記モデル構築部は、前記心臓モデルにおいて、前記複合材料に強化繊維が占める容量を前記心筋組織で結合組織が占める容量を示す値を用いて決定する、請求項1に記載の心機能シミュレーションシステム。
  5. 前記心筋細胞の心筋細胞径を示す値を含む心筋組織構造データを入力する構造データ入力部をさらに備え、
    前記モデル構築部は、前記心臓モデルにおいて、前記複合材料に含まれる前記強化繊維の中心間距離を、前記心筋細胞径を示す値を用いて決定する、請求項1に記載の心機能シミュレーションシステム。
  6. 前記心筋組織で結合組織が占める容量を示す値と、前記心筋細胞の心筋細胞径を示す値とを含む心筋組織構造データを入力する構造データ入力部をさらに備え、
    前記モデル構築部は、前記心臓モデルにおいて、前記複合材料に含まれる前記強化繊維の径を、前記心筋組織で結合組織が占める容量を示す値と前記心筋細胞径を示す値とを用いて決定する、請求項1に記載の心機能シミュレーションシステム。
  7. 前記心筋細胞長軸の方向を示すデータを含む心筋組織構造データを入力する構造データ入力部をさらに備え、
    前記モデル構築部は、前記複合材料の曲面薄板が複数積層することにより構成される前記3次元形状の連続体を有限要素の集合で表す心臓モデルを生成し、前記心臓モデルにおいて、複合材料の強化繊維の配置方向を、前記心筋組織構造データを基に、曲面薄板ごとに設定する、請求項1に記載の心機能シミュレーションシステム。
  8. 前記モデル構築部は、N(Nは奇数)層の前記複合材料の曲面薄板が前記心臓の壁を構成し、前記N層のうち真中の層における前記強化繊維の配置方向を、前記心臓の輪状筋繊維の方向として設定する、請求項7に記載の心機能シミュレーションシステム。
  9. 前記モデル構築部は、各曲面薄板における前記強化繊維の配置方向を、曲面薄板の面内で設定し、前記強化繊維の配置方向が、曲面薄板ごとに異なるように前記強化繊維の配置方向を設定する、請求項7に記載の心機能シミュレーションシステム。
  10. 前記材料特性入力部は、前記心筋細胞のヤング率を前記心筋細胞データとして入力し、前記心筋細胞のヤング率の100倍以上である前記結合組織のヤング率を前記結合組織データとして入力し、
    前記モデル構築部は、前記強化繊維の配置方向が、少なくとも1組の隣接する曲面薄板間で特異バイアス角またはその余角だけ異なるように、前記強化繊維の配置方向を設定する、請求項9に記載の心機能シミュレーションシステム。
  11. 前記心臓の少なくとも一部を支持するための複合材料シートを表すシートデータであって、前記複合材料シートに含まれる強化繊維および基質の機械特性、前記強化繊維の配置方向および前記複合材料シートの形状を表すシートデータを入力するシートデータ入力部をさらに備え、
    前記モデル構築部は、前記形状データが示す前記3次元形状の連続体に前記シートデータで表される前記複合材料シートが設けられて構成される連続体を表す心臓モデルを生成する、請求項1に記載の心機能シミュレーションシステム。
  12. コンピュータが、心筋細胞および結合組織を含む心筋組織で構成される心臓をモデリングして、基質と強化繊維とを含む複合材料の連続体を表すデータである心臓モデルを生成し、前記心臓モデルを用いて心臓の形状変化を予測する心機能シミュレーション方法であって、
    心筋組織に含まれる結合組織の機械特性を表す結合組織データと、心筋組織に含まれる心筋細胞の機械特性を表す心筋細胞データとを入力する工程と、
    心臓の少なくとも一部の3次元形状を表す形状データを入力する工程と、
    基質と強化繊維とを含む複合材料で形成された前記3次元形状の連続体を有限要素の集合で表す心臓モデルを作成し、当該心臓モデルにおいて、結合組織データが示す機械特性を前記強化繊維の機械特性に、前記心筋細胞データが示す機械特性を前記基質の機械特性に設定する工程と、
    前記心臓モデルで表される心臓に圧力を加えた場合の形状の変化を有限要素法を用いて計算する工程とを含む心機能シミュレーション方法。
  13. 心筋細胞および結合組織を含む心筋組織で構成される心臓をモデリングして、基質と強化繊維とを含む複合材料の連続体を表すデータである心臓モデルを生成し、前記心臓モデルを用いて心臓の形状変化を予測する処理をコンピュータに実行させる心機能シミュレーションプログラムであって、
    心筋組織に含まれる結合組織の機械特性を表す結合組織データと、心筋組織に含まれる心筋細胞の機械特性を表す心筋細胞データとを入力する処理と、
    心臓の少なくとも一部の3次元形状を表す形状データを入力する処理と、
    基質と強化繊維とを含む複合材料で形成された前記3次元形状の連続体を有限要素の集合で表す心臓モデルを作成し、当該心臓モデルにおいて、結合組織データが示す機械特性を前記強化繊維の機械特性に、前記心筋細胞データが示す機械特性を前記基質の機械特性に設定する処理と、
    前記心臓モデルで表される心臓に圧力を加えた場合の形状の変化を有限要素法を用いて計算する処理とをコンピュータに実行させる心機能シミュレーションプログラム。
JP2008539808A 2006-10-17 2007-10-16 心機能シミュレーションシステム、心機能シミュレーション方法、心機能シミュレーションプログラムおよび複合材料シート Active JP5237819B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008539808A JP5237819B2 (ja) 2006-10-17 2007-10-16 心機能シミュレーションシステム、心機能シミュレーション方法、心機能シミュレーションプログラムおよび複合材料シート

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006282913 2006-10-17
JP2006282913 2006-10-17
JP2008539808A JP5237819B2 (ja) 2006-10-17 2007-10-16 心機能シミュレーションシステム、心機能シミュレーション方法、心機能シミュレーションプログラムおよび複合材料シート
PCT/JP2007/070111 WO2008047766A1 (fr) 2006-10-17 2007-10-16 Système, procédé, programme de simulation des performances cardiaques et feuille de matériau composite

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013073793A Division JP2013188485A (ja) 2006-10-17 2013-03-29 心機能シミュレーションシステム、心機能シミュレーション方法、心機能シミュレーションプログラムおよび複合材料シート

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2008047766A1 JPWO2008047766A1 (ja) 2010-02-25
JP5237819B2 true JP5237819B2 (ja) 2013-07-17

Family

ID=39313993

Family Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008539808A Active JP5237819B2 (ja) 2006-10-17 2007-10-16 心機能シミュレーションシステム、心機能シミュレーション方法、心機能シミュレーションプログラムおよび複合材料シート
JP2013073793A Pending JP2013188485A (ja) 2006-10-17 2013-03-29 心機能シミュレーションシステム、心機能シミュレーション方法、心機能シミュレーションプログラムおよび複合材料シート

Family Applications After (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013073793A Pending JP2013188485A (ja) 2006-10-17 2013-03-29 心機能シミュレーションシステム、心機能シミュレーション方法、心機能シミュレーションプログラムおよび複合材料シート

Country Status (3)

Country Link
US (2) US8412503B2 (ja)
JP (2) JP5237819B2 (ja)
WO (1) WO2008047766A1 (ja)

Families Citing this family (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5988088B2 (ja) * 2012-06-08 2016-09-07 富士通株式会社 描画プログラム、描画方法、および、描画装置
JP6091913B2 (ja) * 2013-01-31 2017-03-08 富士通株式会社 生体シミュレーションプログラム、生体シミュレーション方法及び生体シミュレーション装置
CN103268385B (zh) * 2013-06-01 2015-12-23 哈尔滨工业大学 一种有限元骨架单元的生成方法
US10130332B2 (en) 2013-08-06 2018-11-20 Samsung Electronics Co., Ltd. Method and apparatus of diagnosing cardiac diseases based on modeling of cardiac motion
US9886797B2 (en) * 2013-08-13 2018-02-06 Boston Scientific Scimed, Inc. Comparative analysis of anatomical items
US9549681B2 (en) 2014-11-18 2017-01-24 Siemens Medical Solutions Usa, Inc. Matrix-based patient signal analysis
CN105574927A (zh) * 2015-10-14 2016-05-11 深圳市艾科赛龙科技有限公司 一种活体组织器官的制作方法
US10585552B2 (en) 2016-08-12 2020-03-10 Boston Scientific Scimed, Inc. Distributed interactive medical visualization system with user interface features
CN109564471B (zh) 2016-08-12 2022-08-23 波士顿科学国际有限公司 具有主/次交互特征的分布式交互医学可视化系统
CN108470109B (zh) * 2018-04-02 2022-06-03 上海交通大学 三维机织复合材料力学性能评测方法
WO2023228255A1 (ja) * 2022-05-23 2023-11-30 学校法人早稲田大学 筒状臓器関連病変モデルおよびその製造方法など

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002537008A (ja) * 1999-02-03 2002-11-05 フィジオム・サイエンスィズ・インコーポレーテッド 心臓をコンピュータによってモデリングする装置および方法
WO2006080349A1 (ja) * 2005-01-26 2006-08-03 Japan Science And Technology Agency モデリング装置、プログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体、並びに対応付け方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CA2085730C (en) * 1990-06-22 2001-08-21 William H. Cochran Composites
JPH09512184A (ja) * 1994-04-29 1997-12-09 ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド 内皮下細胞外基質上の内皮を利用する改善された血液接触表面
BR0013639A (pt) * 1999-08-31 2004-06-15 Univ Virginia Commonwealth Matriz extra celular, processo para a manufatura de uma matriz extracelular, processo para formar uma prótese vascular, implante muscular, matriz extracelular para suporte de músculo, processo de formação de um revestimento facial muscular e processo de sobreposição de camadas de céluas musculares em uma matriz extracelular
US20010053645A1 (en) * 2000-01-18 2001-12-20 Henderson William J. Multi-layered ballistic resistant article

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002537008A (ja) * 1999-02-03 2002-11-05 フィジオム・サイエンスィズ・インコーポレーテッド 心臓をコンピュータによってモデリングする装置および方法
WO2006080349A1 (ja) * 2005-01-26 2006-08-03 Japan Science And Technology Agency モデリング装置、プログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体、並びに対応付け方法

Non-Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
CSNG200501397013; 天野晃外4名: '左心室拍動シミュレーションのためのシミュレーションモデル生成インタフェース' 電子情報通信学会論文誌 第J88-D-II巻,第5号, 20050501, pp.943-953, 社団法人電子情報通信学会 *
JPN6012039543; 天野晃外4名: '左心室拍動シミュレーションのためのシミュレーションモデル生成インタフェース' 電子情報通信学会論文誌 第J88-D-II巻,第5号, 20050501, pp.943-953, 社団法人電子情報通信学会 *

Also Published As

Publication number Publication date
WO2008047766A1 (fr) 2008-04-24
US8412503B2 (en) 2013-04-02
US20100318326A1 (en) 2010-12-16
JP2013188485A (ja) 2013-09-26
US20140162365A1 (en) 2014-06-12
JPWO2008047766A1 (ja) 2010-02-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5237819B2 (ja) 心機能シミュレーションシステム、心機能シミュレーション方法、心機能シミュレーションプログラムおよび複合材料シート
Holzapfel et al. Constitutive modelling of arteries
Nash et al. Computational mechanics of the heart
Arts et al. Relating myocardial laminar architecture to shear strain and muscle fiber orientation
Holzapfel et al. Constitutive modelling of passive myocardium: a structurally based framework for material characterization
Skallerud et al. Modeling active muscle contraction in mitral valve leaflets during systole: a first approach
Guérin et al. Impact of the defect size, the mesh overlap and the fixation depth on ventral hernia repairs: a combined experimental and numerical approach
Palit et al. Computational modelling of left-ventricular diastolic mechanics: Effect of fibre orientation and right-ventricle topology
Peirlinck et al. A modular inverse elastostatics approach to resolve the pressure-induced stress state for in vivo imaging based cardiovascular modeling
IL265415A (en) Method for building a physical simulation device, simulation device and simulation system.
Omens et al. Complex distributions of residual stress and strain in the mouse left ventricle: experimental and theoretical models
Alastrue et al. Modelling adaptative volumetric finite growth in patient-specific residually stressed arteries
Wise et al. Excessive volume of hydrogel injectates may compromise the efficacy for the treatment of acute myocardial infarction
Zheng et al. Effects of the three-dimensional residual stresses on the mechanical properties of arterial walls
Sacks et al. In vivo biomechanical assessment of triglycidylamine crosslinked pericardium
Mackerle Finite element modelling and simulations in cardiovascular mechanics and cardiology: A bibliography 1993–2004
US8880385B2 (en) Method and system for modeling bone structure from collagen bundle orientations
Tueni et al. On the structural origin of the anisotropy in the myocardium: Multiscale modeling and analysis
Bauer et al. Geometric adaption of biodegradable magnesium alloy scaffolds to stabilise biological myocardial grafts. Part I
Holzapfel Computational biomechanics of soft biological tissues: arterial walls, hearts walls, and ligaments
Singh et al. Robotic right ventricle is a biohybrid platform that simulates right ventricular function in (patho) physiological conditions and intervention
Moonly Experimental and computational analysis of left ventricular aneurysm mechanics
Jehl et al. Transverse isotropic modelling of left-ventricle passive filling: Mechanical characterization for epicardial biomaterial manufacturing
Rockward Study of Stress-based Fiber Reorientation Law in a Finite Element Model of Cardiac Tissue
Mahutga Experimental and Computational Mechanics of Arteries in Health and Disease: An Exploration of Complex Structures and Simple Mathematical Models

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100819

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120731

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121001

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130228

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130329

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5237819

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160405

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250