JP5231195B2 - 低ハロゲン酸化チタン粉末の製造方法 - Google Patents

低ハロゲン酸化チタン粉末の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、触媒、太陽電池、誘電体原料などに好適なハロゲン含有量が少ない酸化チタン粉末を製造する方法に関するものである。
酸化チタン粉末は、顔料、誘電体原料、紫外線遮蔽材料などの様々な用途に利用されており、近年においては、光触媒や太陽電池などへの応用も脚光を浴びつつある。このように酸化チタンの用途は多岐に渡るが、性能の向上、小型化、高屈折率、透明性などの要求から、微粒で分散性のよい微粒子酸化チタンが求められるようになっている。
酸化チタン粉末の製造方法は、硫酸チタニル、四塩化チタン、有機チタン等を液相で加水分解する液相法と、ハロゲン化チタンを酸素あるいは水蒸気等の酸化性ガスと気相で反応させる気相法とに大別される。一般的に気相法により得られる酸化チタンは、溶媒を使用しないため、液相法により得られる酸化チタンに比べ、微粒で分散性が良く、また、高温での反応であるため結晶性が優れるなどの特徴を有している。
四塩化チタン等のハロゲン化チタンから作製された粗酸化チタン粉末を原料に用いて酸化チタン粉末を製造する際、得られる酸化チタンに塩素のようなハロゲン元素が存在すると、製造装置や製品の基材を腐食させたり、変質させたりするため、得られる酸化チタン粉末中のハロゲン含有量を低く抑える必要がある。
例えば、固相法により、炭酸バリウムと酸化チタンから、チタン酸バリウムを製造する場合、酸化チタン中の塩素がチタン酸バリウムの異常粒成長の原因となることが知られており(例えば、特許文献1参照)、特に、酸化チタン粉末の粒径が小さくなり比表面積が大きくなると、残留塩素濃度が高くなる傾向にある(例えば、特許文献2参照)。
酸化チタンの低塩素化方法としては、例えば、
(i)酸化チタンを円筒形回転式加熱炉中で転動させながら、水蒸気と接触させる方法(特許文献2参照)、
(ii)四塩化チタンを気相中で酸化して得られた酸化チタンを300℃以下の温度域で気体状のアルコールと接触させる方法(特許文献3参照)、
(iii)金属の蒸気状ハロゲン化物を加水分解または酸化作用のあるガス存在下に熱分解して得られる金属酸化物を、直立の中空円筒状処理室で、高い温度で向流により湿潤空気を用いた処理によって精製するにあたり、上記酸化物を上昇する不活性な湿潤気流に対向して、約400〜600℃に加熱された処理室に導入し、混合ガス相の流速を高分散性酸化物が渦動層を形成できないように低く保つ方法(特許文献4参照)が知られている。
特開2006−76876号公報の段落〔0012〕 特開平10−251021号公報 特開平6−171940号公報 特公昭48−13832号公報
しかし、本発明者らが検討したところ、上記特許文献2や特許文献3に記載の方法においては、ハロゲン含有量の低減効果が小さく、また、特許文献4に記載の方法においては、エネルギーロスが大きいばかりか、得られる酸化チタン粉末におけるハロゲン含有量低減効果のばらつきが大きいことが判明した。
このような状況下、本発明は、ルチル化率や比表面積の変化を抑制しつつ、ハロゲン含有量を低減し、かつハロゲン含有量低減効果のばらつきの小さい酸化チタン粉末の製造方法を提供することを目的とするものである。
上記技術課題を解決すべく、本発明者が鋭意検討を行ったところ、ハロゲン化チタンを原料として生成されてなる粗酸化チタン粉末を、筒状の処理室内で加熱処理するにあたり、処理室を垂直に配設するとともに、処理室の上部から処理室内に脱ハロゲンガスを供給して処理室全体を流通する下降気流を形成しつつ、処理室内に粗酸化チタン粉末を添加して落下させながら加熱処理することによって、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)ハロゲン化チタンを原料として生成されてなるBET比表面積が50m /g以上である粗酸化チタン粉末を、筒状の処理室内で加熱処理するにあたり、
前記処理室を垂直に配設するとともに、
前記処理室の上部から処理室内に脱ハロゲンガスを供給して処理室全体を流通する下降気流を形成しつつ、
前記粗酸化チタン粉末が処理室内を通過する1回あたりの滞留時間が5秒以下になるように、前記処理室内に前記粗酸化チタン粉末を添加して落下させながら加熱処理する
ことを特徴とする低ハロゲン酸化チタン粉末の製造方法、
(2)前記処理室内において前記粗酸化チタン粉末を繰り返し複数回落下させる上記(1)に記載の低ハロゲン酸化チタン粉末の製造方法、
(3)前記脱ハロゲンガスが、水蒸気、アルコールガスまたはこれらの混合ガスから選ばれる1種以上を含むものである上記(1)または(2)に記載の低ハロゲン酸化チタン粉末の製造方法、
(4)前記加熱処理温度が300℃以上である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の低ハロゲン酸化チタン粉末の製造方法、
(5)前記処理室の内部寸法が、直径50〜300mmである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の低ハロゲン酸化チタン粉末の製造方
提供するものである。
本発明によれば、ハロゲン化チタンを原料として生成されてなる粗酸化チタン粉末を、筒状の処理室内で加熱処理するにあたり、処理室を垂直に配設するとともに、処理室の上部から処理室内に脱ハロゲンガスを供給して処理室全体を流通する下降気流を形成しつつ、処理室内に粗酸化チタン粉末を添加して落下させながら加熱処理することにより、処理室内の滞留時間を短縮して、原料である粗酸化チタン粉末のルチル化率の変化を低減するとともに、粗酸化チタン粉末を構成する個々の粒子の加熱温度を均一にして、ルチル化率や比表面積の変化を抑制しつつ、ハロゲン含有量が少なく、かつハロゲン含有量低減効果のばらつきの小さい酸化チタン粉末を製造することができる。
本発明の低ハロゲン酸化チタン粉末の製造方法は、ハロゲン化チタンを原料として生成されてなる粗酸化チタン粉末を、筒状の処理室内で加熱処理するにあたり、前記処理室を垂直に配設するとともに、前記処理室の上部から処理室内に脱ハロゲンガスを供給して処理室全体を流通する下降気流を形成しつつ、処理室内に前記粗酸化チタン粉末を添加して落下させながら加熱処理することを特徴とするものである。
先ず、本発明の方法において、原料として用いられる粗酸化チタン粉末の調製方法について説明する。
粗酸化チタン粉末の作製方法としては、四塩化チタン等のハロゲン化チタン含有ガスを、気相中で加水分解又は酸化反応させることにより作製する気相法と、四塩化チタン等のハロゲン化チタン含有溶液を、アルカリまたは水により加水分解、中和反応することにより作製する液相法が挙げられる。
本発明の方法において、原料となる粗酸化チタン粉末を気相法により作製する方法としては、ハロゲン化チタンガスを加水分解又は酸化反応させる方法を挙げることができ、例えば、
(I)ハロゲン化チタン含有ガスを、気相中で酸素ガスと接触させ酸化させる気相酸化法、
(II)燃焼時に水を生成する水素ガス等の可燃性ガスと酸素ガスを燃焼バーナーに供給し火炎を形成し、この中にハロゲン化チタン含有ガスを導入する火炎加水分解法、
(III)ハロゲン化チタン含有ガスを気相中で水蒸気と接触させ酸化させる気相酸化法、
(IV)燃焼時に水を生成する水素ガス等の可燃性ガスと酸素ガスを燃焼バーナーに供給し火炎を形成し、この中にハロゲン化チタン含有ガスと水蒸気を導入する火炎加水分解法、
などの気相法が挙げられる。
ハロゲン化チタン含有ガスとしては、四塩化チタンガス、四臭化チタンガス、四ヨウ化チタンガス等のハロゲン化チタンガスを含有するものを挙げることができ、これらのハロゲン化チタンガスと窒素ガス等の不活性ガスとの混合ガスも挙げられる。
また、上記ハロゲン化チタンを加水分解又は酸化反応させるための各種ガスに代えて、水素ガス等の可燃性ガス、酸素ガス及び水蒸気と、窒素ガス等の不活性ガスとの混合ガスを用いてもよい。
気相法により粗酸化チタン粉末を作製する場合、気相中で、ハロゲン化チタン含有ガスを水素ガス等の可燃性ガス、酸素ガスあるいは水蒸気と接触させて反応させるため、得られる粗酸化チタン粉末には、液相法により粗酸化チタン粉末を作製する場合に比べ、不純物元素が混入又は残留し難い。
気相法により粗酸化チタン粉末を作製する場合、得られる粗酸化チタン粉末には、ハロゲン化チタン含有ガス由来のハロゲン元素が通常1000〜20000質量ppm程度含まれている。
本発明の方法において、原料となる粗酸化チタン粉末を構成する一次粒子の平均粒径は、特に制限されないが、上記粗酸化チタン粉末が、気相法により得られるものである場合、通常200nm以下、好ましくは100nm以下である。また、粗酸化チタン粉末の比表面積は、特に制限されないが、BET比表面積で通常50〜200m/gである。本発明の方法において、原料となる粗酸化チタン粉末のBET比表面積が上記範囲内にあることにより、光学特性、触媒活性に優れ、また、微粒な低ハロゲン酸化チタン粉末を提供することができる。
以下、四塩化チタンガスを原料に用いて気相法で粗酸化チタン粉末を製造する方法について詳しく説明する。
粗酸化チタン粉末の製造方法としては、
(i)四塩化チタンガスと、酸素ガスとを接触させ反応させる工程、あるいは、
(ii)四塩化チタンガスと、水素ガスおよび酸素ガスを接触させ反応させる工程、あるいは、
(iii)四塩化チタンガスと、水蒸気とを接触させ反応させる工程、あるいは、
(iv)四塩化チタンガスと、水素ガス、酸素ガス及び水蒸気とを接触させ反応させて、四塩化チタンを気相状態で加水分解又は酸化させる工程
のいずれかの工程を有することが好ましい。
本発明の方法において、原料となる粗酸化チタン粉末を作製する方法としては、水蒸気を生成ないし供給することにより反応に水蒸気が存在する(ii)〜(iv)の工程、特に反応に水蒸気を供給する(iii)及び(iv)の工程を有する方法が好ましい。
上記粗酸化チタン粉末の作製方法では、四塩化チタンガスを反応部に供給し、該反応部で、酸素と、あるいは、水素ガスおよび酸素ガスと、あるいは、水蒸気と、あるいは、水素ガス、酸素ガス及び水蒸気と接触させるが、上記反応部への四塩化チタンガスの供給量に対し、酸素および水蒸気の供給量を、四塩化チタンを全て酸化する化学当量以上とすることが望ましい。特に、水蒸気の供給量が、四塩化チタンをすべて酸化する化学当量以上であると、酸化チタンの生成反応が均一に行われるため、生成する酸化チタンの結晶制御を行い易くなり、高比表面積でルチル化率(ルチル含有率)の高いルチル型の酸化チタン粉末や、高比表面積でアナターゼ型の酸化チタン粉末を得易くなる。ここで、四塩化チタンを全て酸化する化学当量とは、四塩化チタンを酸素または水蒸気で反応させる場合の酸素または水蒸気の化学当量を意味し、酸素の場合、四塩化チタン(TiCl)ガス1モルに対して酸素(O)ガスが1モル、水蒸気の場合、四塩化チタン1モルに対して水蒸気(HO)が2モルである。
そして、上記粗酸化チタン粉末の製造方法では、具体的には、上記反応部に供給する供給ガスを標準状態としたときガスの体積比で、好ましくは四塩化チタンガスの5倍以上の水蒸気、特に好ましくは四塩化チタンガスの7倍以上の水蒸気を供給し反応させる。
また、上記粗酸化チタン粉末の作製方法では、上記反応部への水素ガスの供給量に対し、酸素ガスの供給量を、水素をすべて燃焼させる化学当量以上とすることが好ましく、具体的には、上記反応部に供給する供給ガスを標準状態としたときガスの体積比で、水素ガスの2倍以上の酸素ガスを供給し反応させることが好ましい。ここで、水素をすべて燃焼させる化学当量とは、水素ガス2モルに対して酸素ガスが1モルである。水素ガスの供給量により、ルチル化率を調整することができる。
上記粗酸化チタン粉末の作製方法において、上記反応部に供給する供給ガスの供給量について、各供給ガスを標準状態としたときの四塩化チタンガス1リットルに対する水素ガス、酸素ガス及び水蒸気の体積比を表1及び表2に示す。表1は、アナターゼ型の粗酸化チタン粉末の製造方法、表2はルチル型の粗酸化チタン粉末の製造方法を示す。
Figure 0005231195
Figure 0005231195
上記粗酸化チタン粉末の作製方法において、四塩化チタンガス、水素ガス、酸素ガス及び水蒸気の供給速度は、反応スケール又は各供給ガスを供給するノズル径等により異なるので適宜設定するが、上記反応部での各供給ガス、特に四塩化チタンガスの供給速度は乱流域になるように設定することが望ましい。
また、上記粗酸化チタン粉末の作製方法では、四塩化チタンガス、水素ガス、酸素ガス及び水蒸気を、アルゴンや窒素のごとき不活性ガスで希釈し、上記反応部に供給し反応させてもよい。
上記粗酸化チタン粉末の作製方法では、四塩化チタンガスに対して水素ガス、酸素ガス及び水蒸気の供給量を表1に示した供給量とすることで、高比表面積でかつルチル化率の低いアナターゼ型の粗酸化チタン粉末を得ることができる。また、表2に示した供給量とすることで、高比表面積でかつルチル化率の高いルチル型の粗酸化チタン粉末を得ることができる。
また、上記粗酸化チタン粉末の作製方法では、四塩化チタンガス、水素ガス、酸素ガス及び水蒸気を、上記反応部に供給する際に、予め加熱して供給して反応させることが望ましく、予熱温度は、500℃以上であることが好ましく、500〜900℃であることがより好ましい。
そして、上記粗酸化チタン粉末の作製方法では、各供給ガスが上記反応部にて反応し、粗酸化チタン粉末が生成する。上記反応部の反応温度は、酸化チタンが生成する温度以上、具体的には500℃以上であることが好ましく、550〜800℃であることがより好ましい。
上記粗酸化チタン粉末の作製方法では、各供給ガスの予熱温度及び反応温度を制御することによって、生成する粗酸化チタン粉末のルチル化率(ルチル型酸化チタン含有率)を制御することができる。
ルチル化率10%以下のようにルチル化率の低いアナターゼ型酸化チタン粉末を製造する場合、予熱温度は好ましくは500〜700℃で、反応温度は550〜800℃であることが好ましい。
一方、ルチル化率90%以上のようにルチル化率の高いルチル型酸化チタン粉末を製造する場合、予熱温度は800〜900℃で、反応温度は850〜900℃であることが好ましい。
上記粗酸化チタン粉末の作製方法では、各供給ガスを反応させて、粗酸化チタン粉末を生成させた後、生成粒子の凝集を防ぐために、少なくとも酸化チタン粒子が焼結する温度以下、具体的には300℃未満まで可及的速やかに、粗酸化チタン粉末を冷却することが好ましい。
次に、本発明の方法において、原料となる粗酸化チタン粉末を液相法により作製する方法について説明する。
粗酸化チタン粉末を液相法により作製する方法としては、ハロゲン化チタンを加水分解するか又はハロゲン化チタン含有液を中和反応させる方法を挙げることができ、例えば、
(I)塩化チタンの水溶液とアルカリとを接触させ、中和処理する方法、
(II)塩化チタンに水を加え、加水分解処理を行う方法
などが挙げられる。
塩化チタンとしては、三塩化チタンや四塩化チタンが挙げられる。
上記液相法による粗酸化チタン粉末の作製法(I)〜(II)により得られる粗酸化チタン固形物は、ルチル型あるいはアナターゼ型の酸化チタン、オルトチタン酸、メタチタン酸、水酸化チタンまたは酸化チタン水和物を含有する粉末状あるいはコロイド状のものである。
上記中和処理または加水分解処理を行った後、塩酸分やアルカリ成分など不純物を除去するために洗浄処理を行い、必要に応じて分離、乾燥処理を行って粉末状にすることが好ましく、さらに必要に応じて、結晶水などの水分を除去するための乾燥処理を行うことが好ましい。粗酸化チタン固形物の分離方法としては、フィルターあるいはフィルタープレスによる濾過、デカンテーション、遠心分離方法などを挙げることができ、乾燥処理は粗酸化チタン固形物粒子の凝集を防止し得る方法が好ましく、スプレードライヤーや市販の乾燥機を好適に用いることができる。
上記中和処理または加水分解処理して粗酸化チタン固形物を得る工程においては、諸条件を調整することにより、得られる粗酸化チタン粉末の結晶型を制御することができる。
例えば、得られる粗酸化チタン粉末のルチル化率は、上記中和処理または加水分解処理する時間または速度によって制御することができる。具体的には、例えば四塩化チタン水溶液をアンモニア水などで中和処理する場合、短時間で中和処理するとアナターゼリッチのルチル化率の低い粗酸化チタン粉末が得られ、また、中和反応速度を遅くするとルチル化率の高い粗酸化チタン粉末を得ることができる。中和速度としては、チタン原子重量換算で1分間当たり50〜500gの四塩化チタンを中和する速度が好ましく、チタン原子重量換算で1分間当たり100〜300gの四塩化チタンを中和する速度がより好ましい。上記中和速度が、チタン原子重量換算で1分間当たり200gの四塩化チタンを中和する速度より遅い場合、ルチル化率が50%以上となる。
また、上記中和処理あるいは加水分解処理する際の反応系のpHによっても得られる粗酸化チタン粉末のルチル化率を制御することができる。
例えば、粗酸化チタン固形物が析出した後、低pH雰囲気で熟成反応するとルチル化率が向上し、ルチル型とアナターゼ型の混合結晶を得ることができる。
また、上記加水分解処理あるいはアルカリでの中和処理条件により粗酸化チタン粉末の平均粒径または比表面積を制御することができる。具体的には、平均粒径を、通常200nm以下、好ましくは100nm以下に制御することができ、比表面積を50〜300m/gに制御することができる。
上記液相法により得られる粗酸化チタン粉末には、ハロゲン化チタン由来のハロゲン元素が通常1000〜20000質量ppm程度含まれている。
本発明の方法において、粗酸化チタン粉末は、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型、あるいはこれらから選択される混合相からなるものでもよいし、非晶質酸化チタンからなるものでもよい。
なお、本明細書において、ルチル化率とは、以下の方法により算出されるものを意味する。
すなわち、本明細書において、ルチル化率は、ASTM D3720−84に規定される方法に従ってX線回折測定を行い、ルチル型結晶酸化チタンの最強回折線(面指数110)のピーク面積(Ir)と、アナターゼ型結晶酸化チタンの最強回折線(面指数101)のピーク面積(Ia)を求め、次式により算出することにより求められるものを意味する。
ルチル化率(重量%)=100−100/(1+1.2×Ir/Ia)
式中、前記ピーク面積(Ir)及びピーク面積(Ia)は、X線回折スペクトルの該当回折線におけるベースラインから突出した部分の面積を意味し、その算出方法は公知の方法を用いることができ、例えば、コンピュータ計算、近似三角形化などの手法を用いることができる。
本発明の方法においては、上記粗酸化チタン粉末を筒状の処理室内で加熱処理するにあたり、処理室を垂直に配設する。
筒状の処理室の内部寸法は、直径が50〜300mmであることが好ましく、70〜200mmであることがより好ましく、80〜100mmであることがさらに好ましい。また、筒状の処理室の内部寸法は、その高さが、上記粗酸化チタン粉末が処理室内を通過する1回あたりの滞留時間が5秒以下となるように設定されなるものであることが好ましく、同滞留時間が1〜4秒となるように設定されてなるものであることがより好ましく、同滞留時間が2〜3秒となるように設定されてなるものであることがさらに好ましい。具体的には、上記高さは、処理室内部に形成される下降気流の速度との関係にもよるが、通常、3000〜7000mmであることが好ましく、3000〜6000mmであることがより好ましく、3000〜5000mmであることがさらに好ましい。
処理室を筒状とすることにより、処理室中の温度分布の偏りを抑制して、粗酸化チタン粉末を構成する個々の粒子を均一に加熱することができ、また、処理室内壁に対する粗酸化チタン粉末の付着を低減することができる。上記直径が300mmより大きくなると、処理室内部の温度分布の均一性が低下して、得られる低ハロゲン酸化チタン粉末におけるハロゲン量のばらつきが大きくなり、50mmより小さくなると処理効率が低減する。
筒状の処理室としては、加熱炉の内部に形成された円筒形状の加熱室が好ましく、加熱炉によって温度および雰囲気を制御し得る円筒形状の加熱室であることがより好ましい。
上記筒状の処理室が、加熱炉の内部に形成された加熱室であって、該加熱室が加熱炉内に同軸二重円筒状に形成されている場合等は、加熱炉を直立させた状態で垂直に設置することにより、上記加熱室を垂直に配設することができる。
本発明の方法においては、処理室の上部から処理室内に脱ハロゲンガスを供給して処理室全体を流通する下降気流を形成する。
上記脱ハロゲンガスは、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス、空気、酸素ガス、窒素ガス等から選ばれる1種以上を含むものであることが好ましく、水蒸気、アルコールガスまたはこれらの混合物ガスから選ばれる1種以上を含むものであることがより好ましい。脱ハロゲンガスが水蒸気、アルコールガスまたはこれらの混合ガスから選ばれる1種以上のガスを含むものであることにより、ハロゲン元素の除去効果を高めることができ、特に、水蒸気およびアルコールガスの混合ガスを含むものであることにより、ハロゲン元素の除去効果を高めることができる。
上記脱ハロゲンガスがアルコールガスを含むものである場合、アルコールガスとしては、メタノールガス、エタノールガス、プロパノールガス、ブタノールガスなど、60℃以上の温度でガス状であるものが挙げられる。特に、アルコールガスとしては、メタノールガスが、ハロゲン元素の除去効果が高い点、安価である点、及び安全性が高い点(爆発下限が低い)で好ましい。
上記脱ハロゲンガスが水蒸気およびアルコールガスの混合ガスからなる場合、混合ガス中のアルコールガスの濃度((アルコールガスの体積/混合ガスの体積)×100)は、0.05〜5vol%であることが好ましく、1〜4vol%であることがより好ましい。上記混合ガス中のアルコールの濃度が、0.05vol%より小さくなると、ハロゲン元素の除去効果が低下し、5vol%より大きくなると、引火性等の点から取り扱い難くなる。
また、上記脱ハロゲンガスが水蒸気およびアルコールガスの混合ガスからなるものである場合、混合ガス中の水蒸気に対するアルコールガスの体積比(アルコールガス/水蒸気)は、0.003〜1が好ましく、0.01〜0.1がより好ましい。混合ガス中の水蒸気に対するアルコールの体積比が0.003〜1であることにより、ハロゲン元素の除去効果を高めることができる。
また、上記脱ハロゲンガスが水蒸気およびアルコールガスの混合ガスからなるものである場合、粗酸化チタンの質量(kg)に対するアルコールガスの体積(Nm)の比(混合ガス中のアルコールの体積(Nm)/酸化チタンの質量(kg))は、0.003以上であることが好ましい。上記粗酸化チタンの質量に対するアルコールガスの体積の比が0.003以上であることにより、ハロゲン元素の除去効果を向上することができる。上記粗酸化チタンの質量に対するアルコールガスの体積の比は、経済性の観点から、0.006以下であることが好ましい。
上記下降気流は、処理室の上部から脱ハロゲンガスを噴出することによって形成してもよいし、処理室の上部から脱ハロゲンガスを供給しつつ処理室下部から脱ハロゲンガス吸引することによって形成してもよい。
脱ハロゲンガスは、垂直に配設された処理室の上端部(頂部)に設けられた供給口から、処理室内の垂直下方向に供給してもよいし、垂直に配設された処理室の上部側面に設けられた供給口から、処理室内の下方向に供給してもよいが、処理効率を考慮すると、処理室の上端部(頂部)から処理室内の垂直下方向に供給することが好ましい。また、処理室上部に設けられた複数の供給口から処理室内に脱ハロゲンガスを供給してもよいが、この場合も、処理効率を考慮すると、処理室内の垂直下方向にのみ脱ハロゲンガスを供給することが好ましい。
また、処理室内には、脱ハロゲンガス以外のガスを供給しないことが好ましく、脱ハロゲンガス以外のガスを供給する場合には、上記脱ハロゲンガスの供給方向と同一方向になるように供給することが好ましい。
上記下降気流の速度は、10m/秒以下であることが好ましく、5m/秒以下であることがより好ましく、3m/秒以下であることがさらに好ましい。
本発明の方法においては、上記処理室の上部から処理室内に上記粗酸化チタン粉末を添加して落下させながら加熱処理する。
粗酸化チタン粉末は、処理室上部に設けた投入口から投入してもよいし、処理室中段に別途設けた投入口から投入してもよく、加熱効率を考慮すると、処理室上部に設けた投入口から投入することが好ましい。
処理室内における粗酸化チタン粉末の加熱処理温度は、300℃以上が好ましく、300℃〜1500℃がより好ましく、300℃〜500℃がさらに好ましい。
加熱処理温度が300℃より低くなると、十分な脱塩効果が得られ難くなる。また、加熱処理温度が高くなるにつれて、脱塩効果は上昇するものの、得られる酸化チタン粉末比表面積は粗酸化チタン粉末の比表面積に比べて僅かに減少し、この傾向は、比表面積の大きな粗酸化チタン粉末を用いた場合に顕著になる。このため、加熱処理温度の上限は、粗酸化チタン粉末の比表面積に応じて決定することが好ましい。
本発明の方法においては、粗酸化チタン粉末を処理室内で落下させつつ下降気流とともに加熱処理することから、処理室内における粗酸化チタン粉末の滞留時間を短時間とすることができ、このため、例えば、アナターゼ型の粗酸化チタン粉末を550℃以上の温度で加熱した場合であっても、アナターゼ型からルチル型への相転移を抑制することができる。
本発明の方法においては、処理室内において粗酸化チタン粉末を繰り返し複数回落下させつつ加熱処理してもよい。処理室内における粗酸化チタン粉末の落下を繰り返し複数回行うことにより、処理室内を1回通過させただけではハロゲン元素を十分に除去できなかった場合でも、所望レベルまでハロゲン元素を除去することができる。本発明の方法においては、処理室内において粗酸化チタン粉末を複数回落下させつつ加熱処理しても、酸化チタンの比表面積の変化や相転移は抑制することができる。粗酸化チタンを落下させる回数(繰り返し数)は、ハロゲン元素の低減量を勘案しつつ、適宜決定すればよい。
上記粗酸化チタン粉末が処理室内を通過する1回あたりの滞留時間は5秒以下であることが好ましく、1〜4秒であることがより好ましく、2〜3秒であることがさらに好ましい。上記粗酸化チタン粉末が処理室内を通過する1回あたりの時間が5秒より長くなると、酸化チタン粒子の粒成長や結晶性が変化する原因となる。
処理室内において粗酸化チタン粉末を繰り返し複数回落下させる場合、上記粗酸化チタン粉末が処理室内を通過する総滞留時間(粗酸化チタン粉末が処理室内を通過する時間の総和)は、8〜40秒間であることが好ましく、8〜32秒間であることがより好ましく、8〜24秒間であることがさらに好ましい。
本発明の方法においては、上記処理を施して得られた低ハロゲン酸化チタン粉末に対し、さらに他の脱ハロゲン元素処理、例えば、常圧、減圧下又は真空中での加熱処理、水蒸気やアルコールガスを含有するガスとの接触処理などを行ってもよい。
また、本発明の方法においては、粗酸化チタン粉末に対して、上記他の脱ハロゲン元素処理を施した上で、本発明の方法を適用してもよい。
本発明の方法においては、得られた低ハロゲン酸化チタン粉末を、必要に応じて、分級又は篩分してもよい。
本発明の方法においては、粗酸化チタン粉末を垂直下方に落下させつつ加熱処理することによって、従来の流動層を利用した脱塩装置に比較して粗酸化チタン粉末同士の接触頻度を低減し、粉末を構成する粒子同士の焼結を避けることができ、粉末を構成する個々の粒子を均一に加熱処理することができる。
また、本発明の方法においては、処理室全体を流通する下降気流を形成させつつ処理室内で粗酸化チタン粉末を落下させ、粗酸化チタン粉末の移動方向と気流の流れ方向とを一致させることにより、粗酸化チタン粉末を構成する粒子の処理室内における滞留時間を均一にして(各粒子に対する加熱条件を均一にして)、ハロゲン元素含有量の低減効果のばらつきを抑制するとともに、エネルギーロスを最小化し、処理室壁面への粗酸化チタン粉末の付着を低減することができる。
本発明の方法は、処理室内において、粗酸化チタン粉末を、処理室全体を流通する下降気流ととともに落下させつつ加熱することから、処理室内における粗酸化チタン粉末の滞留時間を短くして、粗酸化チタン粉末のルチル化率の変化を例えば5%以下に低減しつつ低ハロゲン酸化チタン粉末を得ることができ、また、粗酸化チタン粉末に対して、均一に加熱処理することができるため、ハロゲン元素含有量低減効果のばらつきを抑制しつつ低ハロゲン酸化チタン粉末を作製することができる。さらに、本発明の方法は、処理室内における粗酸化チタン粉末の移動方向と気流の流れ方向が同一であることから、粗酸化チタン粉末を構成する粒子同士の接触頻度を低減して粒子同士の焼結発生を抑制することができるとともに、1回あたりの加熱時間が短いために、処理室内で繰り返し加熱処理を行っても、2回目の加熱処理以降は、比表面積の変化はほとんど生じないため、比表面積が50m/g以上の粗酸化チタン粉末から低ハロゲン参加チタン粉末を作製する場合であっても、比表面積やルチル化率の変化を抑制しながら、ハロゲン濃度を低減することができる。
本発明の方法で得られる低ハロゲン酸化チタン粉末は、チタン酸バリウムなどの電子材料用に用いた場合に、誘電特性などの点において優れた電気特性を付与することができる。
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により何ら制限されるものではない。
(実施例1)
(1)粗酸化チタン粉末aの製造
四塩化チタンを気相中で酸素ガス、水素ガス及び水蒸気と接触させて酸化する気相法により、粗酸化チタン粉末を調製した。
まず、多重管バーナーを上部に具備した内径200mmの気相反応管を用いて、上記多重管バーナーに、850℃に予熱して気化させた四塩化チタンガスを窒素ガスで希釈しつつ供給するとともに、別の供給ノズルから、850℃に予熱した水蒸気を供給して、上記気相反応管内で900℃にて、四塩化チタンの酸化反応を行い、粗酸化チタン粉末aを生成させた。このとき、各供給ガスの供給量(供給速度)は、標準状態換算で、四塩化チタン42リットル/分、水蒸気1280リットル/分であった。
その後、上記気相反応管の下部に位置する冷却部に、室温の乾燥空気を600リットル/分で供給し、生成した粗酸化チタン粉末aを冷却した。
上記粗酸化チタン粉末aの塩素含有量は2.2%、比表面積は99m/g、ルチル化率は3.2%であった。
(2)加熱処理
内部寸法が直径100mm、高さ5900mmの筒状の加熱室を有する縦型の加熱炉を用意し、上記加熱炉を直立させた状態で垂直に設置することにより、上記加熱室を垂直に配設した。
上記加熱室の上部から加熱室内に向けて、脱ハロゲンガスであるメタノール、水蒸気及び空気の混合ガス(体積混合比:メタノール/水蒸気/空気=4/20/76)を35リットル/分の速度で垂直下方に供給することにより加熱室全体を流通する下降気流を形成した。
上記加熱炉の加熱部上部より下部方向に上記(1)で作製した粗酸化チタン粉末aを4kg/hrの速度で添加して落下させながら、加熱室の温度を350℃に維持することにより加熱処理を行った。加熱室における滞留時間が約3秒になるように上記粗酸化チタン粉末aの通過させた後、同条件で上記加熱炉を4回繰り返して通過させた(下降気流と粗酸化チタン粉末の総接触時間が約15秒間となるように、計5回通過させて加熱した)。
得られた酸化チタン粉末におけるルチル化率(%)、BET比表面積、塩素含有量を表3に示す。
なお、本実施例において、ルチル化率(%)は上述した方法と同様の方法により算出したものであり、ルチル化率を算出した際のX線回折測定条件、比表面積算出方法および塩素含有量測定方法は下記の通りである。
<X線回折測定条件>
回折装置:RAD−1C(株式会社リガク製)
X線管球:Cu
管電圧、管電流:40kV、30mA
スリット DS−SS:1度、RS:0.15mm
モノクロメータ:グラファイト
測定間隔:0.002度
計数方法:定時計数法
<比表面積測定方法>
比表面積はBET法により測定した。
<塩素含有量測定方法>
塩素含有量は、下記により測定したものである。
酸化チタン粉末を秤量し(x1)、フッ硝酸溶液中で煮沸溶解した。次いで、酸化チタン粉末を溶解させた後のフッ硝酸溶液中の塩素の質量(y1)を硝酸銀滴定法により決定した。そして、酸化チタン粉末を溶解させた後のフッ硝酸溶液中の塩素の質量から、次式により、酸化チタン粉末の塩素含有量を算出した。
酸化チタン粉末の塩素含有量(ppm)=(y1/x1)×100000
(上記式中、x1は秤量した酸化チタン粉末の質量(g)を示し、y1は硝酸銀滴定法により決定したフッ硝酸溶液中の塩素の質量(g)を示す。)
(比較例1)
実施例1(1)と同様にして得られた粗酸化チタン粉末1kgを容器に入れ、電気炉にて、水蒸気及び空気の混合ガス(体積混合比:水蒸気/空気=24/76)を、13リットル/分の流速で供給しながら、350℃で20時間、粗酸化チタン粉末を混合ガスに接触させた。得られた酸化チタン粉末の特性を実施例1と同様に測定した。結果を表3に示す。
Figure 0005231195
表3より、本発明の低ハロゲン酸化チタン粉末の製造方法においては、比表面積を殆ど変えることなく、短時間で塩素含有量を低減できることが分かる。また、得られた低ハロゲン酸化チタン粉末は、塩素含有量のばらつきの少ない均質性を有するものであることが分かる。
(実施例2)
実施例1(2)において、加熱室の温度を450℃とした以外は、実施例1と同様にして酸化チタン粉末を得た。得られた酸化チタン粉末において、実施例1と同様にしてルチル化率(%)、BET比表面積、塩素含有量を測定した。結果を表4に示す。
Figure 0005231195
(実施例3〜6)
実施例2において、粗酸化チタン粉末aの加熱室内通過回数を1回〜4回とした(加熱処理の繰り返し回数を0回(なし)〜3回とした)以外は、実施例2と同様にして酸化チタン粉末を得た。得られた各酸化チタン粉末において、実施例1と同様にしてルチル化率(%)、BET比表面積、塩素含有量を測定した。結果を表5に示す。
Figure 0005231195
表4および表5の結果から、本発明の低ハロゲン酸化チタン粉末の製造方法においては、繰り返し加熱処理を行っても、比表面積およびルチル化率には殆ど影響を与えずに塩素含有量を低減し得ることが分かる。
(実施例7)
(1)粗酸化チタン粉末bの製造
四塩化チタンを気相中で酸素ガス、水素ガス及び水蒸気と接触させて酸化する気相法により、粗酸化チタン粉末を調製した。
まず、多重管バーナーを上部に具備した内径200mmの気相反応管を用いて、上記多重管バーナーに、850℃に予熱して気化させた四塩化チタンガスを窒素ガスで希釈しつつ供給するとともに、別の供給ノズルから、850℃に予熱した水素ガス、酸素ガスおよび水蒸気をそれぞれ供給して、上記気相反応管内で850℃にて、四塩化チタンの酸化反応を行うことにより、粗酸化チタン粉末bを生成させた。このとき、各供給ガスの供給量(供給速度)は、標準状態換算で、四塩化チタン34リットル/分、水蒸気1052リットル/分であった。
その後、上記気相反応管の下部に位置する冷却部に、室温の乾燥空気を600リットル/分で供給し、生成した粗酸化チタン粉末bを冷却した。
上記粗酸化チタン粉末bの塩素含有量は1.4%、BET比表面積は77m/g、ルチル化率は1%未満であった。
(2)加熱処理
上記加熱室の上部から加熱室内に向けて、脱ハロゲンガスである水蒸気および空気の混合ガス(体積混合比:水蒸気/空気=20/80)を35リットル/分の速度で垂直下方に供給することにより加熱室全体を流通する下降気流を形成した。
上記加熱炉の加熱部上部より下部方向に上記(1)で作製した粗酸化チタン粉末bを4kg/hrの速度で添加して落下させながら、加熱室の温度を550℃に維持することにより加熱処理を行った。
加熱部における滞留時間が約3秒になるように上記粗酸化チタン粉末bの通過させた後、同条件で上記加熱炉を2回繰り返して通過させた(下降気流と粗酸化チタン粉末の総接触時間が約9秒間となるように、計3回通過させて加熱した)。
得られた酸化チタン粉末におけるルチル化率(%)、BET比表面積、塩素含有量を実施例1と同様にして測定した。結果を表6に示す。
(実施例8)
実施例7(2)において、脱ハロゲンガスとして、水蒸気および空気の混合ガス(体積混合比:水蒸気/空気=20/80)に代えて、エタノール、水蒸気および空気の混合ガス(体積混合比:エタノール/水蒸気/空気=4/20/76)を用いた以外は、実施例7と同様にして加熱処理を行うことにより、酸化チタン粉末を得た。得られた酸化チタン粉末におけるルチル化率(%)、BET比表面積、塩素含有量を実施例1と同様にして測定した。結果を表6に示す。
(実施例9)
加熱炉の温度を550℃から650℃に変更した以外は、実施例8と同様にして加熱処理を行うことにより、酸化チタン粉末を得た。得られた酸化チタン粉末におけるルチル化率(%)、BET比表面積、塩素含有量を実施例1と同様にして測定した。結果を表6に示す。
Figure 0005231195
表6より、本発明の酸化チタン粉末の製造方法においては、BET比表面積が50m/g以上と高比表面積の粗酸化チタン粉末を処理した場合であっても、ルチル化率、比表面積を変化させることなく、塩素除去効果の優れた酸化チタン粉末を得ることができることが分かる。また、下降気流として、水蒸気と空気の混合ガスよりもアルコール、水蒸気および空気の混合ガス雰囲気で処理を行うことにより、塩素除去効果が増加することが分かる。
本発明によれば、ルチル化率や比表面積の変化を抑制しつつ、ハロゲン含有量を低減し、かつハロゲン含有量低減効果のばらつきの小さい酸化チタン粉末を製造する方法を提供することができる。

Claims (5)

  1. ハロゲン化チタンを原料として生成されてなるBET比表面積が50m /g以上である粗酸化チタン粉末を、筒状の処理室内で加熱処理するにあたり、
    前記処理室を垂直に配設するとともに、
    前記処理室の上部から処理室内に脱ハロゲンガスを供給して処理室全体を流通する下降気流を形成しつつ、
    前記粗酸化チタン粉末が処理室内を通過する1回あたりの滞留時間が5秒以下になるように、前記処理室内に前記粗酸化チタン粉末を添加して落下させながら加熱処理する
    ことを特徴とする低ハロゲン酸化チタン粉末の製造方法。
  2. 前記処理室内において前記粗酸化チタン粉末を繰り返し複数回落下させる請求項1に記載の低ハロゲン酸化チタン粉末の製造方法。
  3. 前記脱ハロゲンガスが、水蒸気、アルコールガスまたはこれらの混合ガスから選ばれる1種以上を含むものである請求項1または請求項2に記載の低ハロゲン酸化チタン粉末の製造方法。
  4. 前記加熱処理温度が300℃以上である請求項1〜3のいずれかに記載の低ハロゲン酸化チタン粉末の製造方法。
  5. 前記筒状の処理室の内部寸法が、直径50〜300mmである請求項1〜請求項4のいずれかに記載の低ハロゲン酸化チタン粉末の製造方法
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