JP5230741B2 - 電気化学表面電位の2次元制御 - Google Patents

電気化学表面電位の2次元制御 Download PDF

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Description

関連出願
この出願は、2007年8月29日に出願の米国特許出願第11/897,109号の優先権の利益を主張し、該出願は引用により本明細書に加入する。
本発明は、一般的には、表面上の電気化学的表面電位を制御しそれを使用する方法に関する。本発明は、特に、導電性基板の表面上の表面電位を空間的に変化させる2次元制御のための方法、並びに、そのような制御を使用してターゲットを発見し、かつターゲットを検出する方法、および、そのような方法を使用するシステムに関する。本発明は、組合せ触媒の発見、化学的検知、および、生物学的検知に有用である。
電気化学は、1つには、電気的効果および化学的効果の間の相互作用によって、表面(つまり電極)上で生じるプロセスを取り扱う化学の一部門である。この分野は、電気触媒作用、腐食、バッテリー、燃料電池、二重層キャパシタ、電気化学センサ、電気化学的合成、電気めっき、電気泳動、エレクトロクロミック・ディスプレイなどを含む技術的に重要な様々な現象および応用を包含する。これら応用の多くでは、表面プロセスが、システム内の1つ以上の電極の電位または電流を制御することによって操作可能である。
従来の電気化学実験では、一様な表面電位が電極表面に印加される。電極の電子的な抵抗によって表面電位が一様でないことはあり得るものの、その意図は、典型的には電極表面上の各点および全ての点が同じ界面エネルギーを持つことを保証するように、電極表面上で一定の電気化学的電位を印加することである。そのような一様性によって、電極表面上で再現可能な電気化学的プロセスが得られる。例えば創薬などのような組合せ材料および手法の到来で、科学的な問題への従来の取り組みは、実験上のサンプルのより大きな処理能力、および、新製品開発のためのより速いサイクル時間を可能にするように変化している。創薬、材料研究、同種のおよび異種の触媒作用、界面化学のような様々な分野にわたる研究者は、大部分は組合せ手法の能力のゆえに組合せ手法を採用し、材料の性能を、関連する材料の関数としてまたはプロセス・パラメータとして、加速された態様で系統的に研究するようになっている。例えば、組合せ手法は、触媒発見プロセスを数十年から数日以下までになるよう短縮している。組合せプロセスは、典型的には、材料の空間的に変化するライブラリを作成する方法、および、各ライブラリ要素の性能を選別しマッピングする分析的手法の双方を必要としている。
従って、特定のライブラリ材料(例えば基板)の界面エネルギーを位置の関数として制御する能力は、組合せ実験の成果の決定的要因であり得る。そのような制御は、配列プラットフォームまたは勾配プラットフォームで採り得る。配列プラットフォームでは、表面上の界面エネルギーは、個々の点を調節することにより制御され、一方、勾配プラットフォームでは、界面エネルギーの徐々の変化が、少数の特定の点の制御により達成される。温度や前駆体材料の局所的な組成、圧力の制御などを含む、特定の材料の界面エネルギーの制御を想像することができる幾つかの方法がある。
従って、例えば電極の表面上での界面エネルギー勾配の生成および制御のような、組合せプロセスのための界面エネルギーの制御を改善する必要がある。本発明は、そのような勾配を作成し制御する様々な方法を提供する。
本発明の第1の態様は、材料および/またはプロセスの複数の候補からターゲットを発見する方法であって、以下:
(I.1)導電性の表面を供給するステップ;
(I.2)非線形にかつ空間的に変化する所定の電界を前記表面に供給するステップ;
(I.3)前記表面に原料物質を供給するステップ;
(I.4)前記非線形にかつ空間的に変化する電界の存在下で、前記原料物質に前記表面上で電気化学プロセスを受けさせて、複数の候補を生成するステップ;
(I.5)前記表面上で前記複数の候補を測定して性能データを生成するステップ;
(I.6)前記測定された候補の性能データを比較するステップ;および
(I.7)ステップ(I.6)の比較に従ってターゲットを発見するステップ
を有する方法に関する。
本発明の第1の態様の或る実施形態に係る方法では、ステップ(I.5)で、前記測定の少なくとも一部は、候補が前記表面上で留まる間にその場で実行される。
本発明の第1の態様の或る実施形態に係る方法では、ステップ(I.l)で提供される表面は平坦面である。他の或る実施形態では、前記表面は、球面、楕円面、他の曲面などの曲面である。
本発明の第1の態様の或る実施形態に係る方法では、ステップ(I.l)で、電界は、表面上のn個(nは3以上の正の整数)の点に異なる電位を供給することにより形成される。或る特定の実施形態ではn≧4であり、或る実施形態ではn≧8であり、他の或る実施形態ではn≧16である。
本発明の第1の態様の或る実施形態に係る方法では、ステップ(I.4)で、少なくともp個(pは100以上の正の整数)の候補が生成され、少なくともq個(qは10以上の正の整数で、q≦p)の候補が測定される。ある特定の実施形態では、p≧1000でqが≧800であり、或る特定の実施形態ではp≧1000でq≧1000であり、他の或る特定の実施形態ではp≧5000でq≧3000であり、他の或る特定の実施形態ではp≧5000でq≧5000であり、或る特定の実施形態ではp≧10000でq≧5000であり、或る特定の実施形態ではp≧10000でq≧8000であり、或る実施形態ではp≧10000でq≧10000である。
本発明の第1の態様の或る実施形態に係る方法では、ステップ(I.5)は、少なくとも電界の存在下の表面上で、少なくとも部分的に行なわれる。
本発明の第1の態様の或る実施形態に係る方法では、ステップ(I.3)で、原料物質は金属前駆体であり、ステップ(I.4)では、該金属前駆体は金属元素に還元され、表面に堆積して複数の候補材料を形成し、ステップ(I.5)では、候補の触媒性能が測定される。
本発明の第1の態様の或る実施形態に係る方法では、ステップ(I.7)に先立ってまたは後続して実行される以下のステップ(I.8):
(I.8)ターゲットの組成を分析するステップ
を更に含む。
本発明の第1の態様の或る実施形態に係る方法では、ステップ(I.3)で、複数の候補材料が生成され、該候補材料は表面上で実質的に連続する勾配を持つ少なくとも1つの成分を有する。
本発明の第2の態様の或る実施形態に係る方法は、媒体中のターゲット物質を発見する方法であって:(II.1)ターゲット物質に感度を持つマーキング分子の層を搭載する表面を供給するステップ;(II.2)非線形にかつ空間的に変化する所定の電界を前記表面に供給することにより、マーキング分子の所定のパターンを形成するステップ;(II.3)ターゲット物質が選択的に結合することができる前記表面上のターゲット領域を決定するステップ;(II.4)前記表面の所定のターゲット領域で、前記ターゲット物質を前記表面、および/または、マーキング分子と結合させるステップを有する方法に関する。
本発明の第2の態様の或る実施形態に係る方法では、ステップ(II.1)では、前記表面が導電性であり、マーキング分子の層はチオール分子の自己組織化した単分子層である。
本発明の第2の態様の或る実施形態に係る方法では、方法は更に:(II.6)前記表面の所定のターゲット領域に前記ターゲット物質が存在するか否かを判定するステップを有する。
本発明の第2の態様の或る実施形態に係る方法では、ステップ(II.2)で、マーキング分子の所定のパターンは、複数のターゲット物質が別々に、同時に、かつ、選択的に結合することができるターゲット領域を提供する。或る特定の実施形態では、ステップ(II.5)で、複数のターゲット物質が、所定のターゲット領域で前記表面および/またはマーキング分子に結合する。
本発明の第2の態様の或る実施形態に係る方法では、ステップ(II.1)で、前記表面は、500nm以下の厚みを有する金の層を含む。或る実施形態では、金の層に結合するマーキング分子はチオール分子である。
本発明の第3の態様は、媒体中のターゲット物質の存在および/または濃度を検出する方法であって:(III.l)導電性の表面を供給するステップ;(III.2)前記表面上で非線形にかつ空間的に変化する電界を供給するステップ;(III.3)前記媒体を前記表面と接触させるステップ;(III.4)電界の存在下で前記表面上に前記ターゲット物質があれば該ターゲット物質に電気化学反応を起こさせるステップ;(III.5)電気化学反応の発生を検出することによって、ターゲット物質が存在すると判定するステップ;および、随意的に、(III.6)反応の位置に従って媒体中のターゲット物質の濃度を決定するステップを有する方法に関する。
本発明の第3の態様の或る実施形態に係る方法では、方法はさらに以下のステップ:(III.7)電気化学反応の位置を、媒体中のターゲット物質の存在および/または濃度に関連付けるステップを有する。
本発明の第4の態様は、材料および/またはプロセスの複数の候補からターゲットを発見するシステムであって:
(IVA)(i)非線形にかつ空間的に変化する電界を確立することができ、(ii)原料物質を供給することができ、かつ(iii)電界の存在下で原料物質に電気化学的プロセスを受けさせて複数の候補を生成することができる表面を有する基板;および
(IVB)候補の性能を測定する計測装置
を備えるシステムに関する。
本発明の第4の態様の或る実施形態に係るシステムでは、候補は材料の候補であり、また、このシステムは、更に以下:
(IVC)候補の組成を決定するための分析装置を備える。
本発明の第4の態様の或る実施形態に係るシステムでは、前記基板(IVA)および計測装置(IVB)は、複数の候補の性能の測定が、前記表面上でその候補が存在するその場所で行なうことができるものである。
本発明の第5の態様は、媒体中のターゲット物質を発見するためのシステムであって:
(VA)(al)非線形にかつ空間的に変化する所定の電界と、(a2)前記非線形にかつ空間的に変化する電界に対応し、前記ターゲット物質が選択的に結合することができるターゲット領域を規定する所定のパターンを有し、ターゲット物質に感度を持つマーキング分子の層とを形成できる表面を有する基板;および
(VB)前記ターゲット領域で前記ターゲット物質の存在および/または濃度を検出する検出装置
を備えるシステムに関する。
本発明の第6の態様は、媒体中のターゲット物質の存在および/または濃度を発見するためのシステムであって:
(VIA)(aal)非線形にかつ空間的に変化する所定の電界を確立でき;かつ(aa2)ターゲット物質に非線形にかつ空間的に変化する所定の電界に応じた電気化学反応を受けさせることができる表面を有する導電性基板:および
(VIB)電気化学反応の発生を検出するための第1の装置
を備えるシステムに関する。
本発明の第6の態様の或る実施形態に係るシステムでは、システムは更に:
(VIC)反応の位置とターゲット物質の存在および/または濃度とを相関させるアルゴリズムに従って、媒体中のターゲット物質の存在および/またはターゲット物質の濃度を決定する第2の装置を備える。
本発明の第7の態様は:
(VII.l)導電性の表面を供給するステップ;
(VII.2)非線形にかつ空間的に変化する電界を前記表面上に確立するステップ:および
(VII.3)前記空間的に変化する電界の存在に応じて異なる電位を有する、前記表面の少なくとも2つの異なる位置に、異なる度合いで電気化学反応を実行するステップ
を有する電気化学的方法に関する。
本発明の第7の態様の或る実施形態に係る方法では、ステップ(VII.2)で、前記非線形にかつ空間的に変化する電界は、前記表面上の少なくとも3つの電気的接触点に異なる電位を供給することにより確立される。
本発明の第7の態様の或る実施形態に係る方法では、ステップ(VII.3)で、複数の電気化学反応は、前記表面上で同時に実行される。
本発明の第7の態様の或る実施形態に係る方法では:
ステップ(VII.3)で、複数の候補材料および/または候補プロセスが生成され;かつこの方法は更に以下のステップ:
(VII.4A)前記表面で複数候補データの性能を測定して該複数候補データの性能データを生成するステップ;
(VII.5A)前記測定された候補の性能データを比較するステップ;および
(VII.6A)ステップ(VII.5)の比較に従ってターゲットを発見するステップを有する。
本発明の第7の態様の或る実施形態に係る方法では、ステップ(VI.3)で、複数のマーキング分子の所定のパターンが、前記表面上で電気化学反応の結果として形成され、かつ方法は更に以下のステップ:
(VII.4B)ターゲット物質が選択的に結合することができる前記表面上のターゲット領域を決定するステップ;
(VII.5B)前記媒体を前記表面と接触させるステップ;および
(VII.6B)前記表面の所定のターゲット領域で前記ターゲット物質を前記表面および/またはマーキング分子に結合するステップ
を有する。
本発明の第7の態様の或る実施形態に係る方法では、ステップ(VII.3)で、前記ターゲット物質があれば、該ターゲット物質は前記表面上で電気化学反応を受けており、かつ方法は更に以下のステップ:
(VII.4C)電気化学反応の発生を検出することにより、ターゲット物質が存在すると判定するステップ;および
(VII.5C)随意的に、反応の位置に従って媒体中のターゲット物質の濃度を決定するステップ
を有する。
本発明の様々な態様の或る実施形態は、以下の1つ以上の利点を有する。第1としては、非線形にかつ空間的に変化する電界、および、そのような変化する電界に応答する電気化学反応を使用することによって、候補材料および候補プロセスの大きなライブラリを生成できることである。第2としては、その大きなライブラリが、短期間内に効果的に生成できることである。第3としては、その大きなライブラリが、媒体中の多数種類のターゲット物質の検出を可能にし、効率的な化学的および生物学的検知プロセスおよび検知装置を可能にすることである。
本発明の更なる実施形態は、その一部分が詳細な説明、および、それに続くクレームで述べられており、また、部分的にはその詳細な発明から導かれるものと考えられ、または、本発明を実施することにより確認することができるであろう。先の一般的な記述および以下の詳細な記述の双方は、単に例示的かつ説明的なものであり、開示される発明を限定するものではない。
添付図面は、本明細書に組み込まれかつその一部を構成するものであり、本発明の実施形態を例示し、本発明を限定することなく、明細書の記述と共に本発明の原理を記述するのに役立つものである。
本発明の或る実施形態で平坦な導電性表面に印加することができる電気化学的表面電位の様々なプロファイルの模式的説明図。 本発明の或る実施形態に係る基板にリード線(制御ピン)を取り付ける幾つかの例示的な構成の模式的説明図。 本発明の或る実施形態に係る、印加される電位の例示的な構成の模式的説明図。 以下に記述される実験の装置組立ての模式的説明図である。 本発明の或る実施形態に係る例示的なPAni被覆のITO基板の模式的説明図で、基板は更に4つの電気的接触点または制御点(El、E2、E3およびE4)を含む図。
本発明の以下の記述は、現時点で知られている最良の態様において本発明を実施可能に教示するために提供される。このため、関連する技術の当業者は、本明細書で記述される発明の様々な実施形態には、本発明が奏する効果を得ながらも多くの変更を加えることができることを認識し、かつ認めるであろう。更に、本発明の特徴のうちの幾つかを、他の特徴を利用することなく選択することにより、本発明の所望の利点のうちの幾らかが得られることも明白であろう。従って、当業者は、本発明への多くの修正や脚色が可能であり、或る状況下では望ましくさえもあり得ること、および、本発明の一部であることをも認識するであろう。かくて、以下の記述は、本発明の限定ではなく、本発明の原理を説明するために提供されるものである。
本明細書および特許請求の範囲で用いられる成分の重量パーセント、寸法、電位などの或る物理的な特性を表現するような全ての数字は、そうではないと断りがない限りは、全ての場合において、用語“約”をつけて理解されるべきである。また、本明細書および特許請求の範囲で用いられる正確な数値が、本発明の更なる実施形態を構成することも理解されるべきである。実施例で開示される数値の正確さを確実にするための努力がなされてきた。しかし、測定された如何なる数値も、それぞれの測定技術に存在する標準偏差に起因する或る誤差を本質的に含み得るものである。
本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」、「the」は、文脈中でそうではないと明白に断りがない限り、複数の対象を含む。従って、例えば、単数形の「電気接触点」と言及するときは、文脈中にそうではないと断りがない限りは、そのような電気接触点を複数有する実施形態をも包含するものである。また、単数形の「ターゲット物質」および「候補」と言及するときは、各複数のターゲット物質および候補を有する実施形態を包含する。
本明細書では、範囲は、「約」をつけた特定値から、および/または、「約」をつけた別の特定値までと表現される。そのような範囲が表現される場合には、別の実施形態では、その特定値から、および/または、その別の特定値までが含まれる。同様に、数値が近似値として表現される場合には、先行詞「約」を使用することにより、その特定値が別の実施形態を構成することが理解されよう。更に、範囲のそれぞれの端点は、他の端点との関係、および、他の端点とは独立の関係の双方において、意味を持つことが理解されよう。
本明細書で使用されるように、或る成分の「重量%」、または、「重量パーセント」、または、「重量によるパーセント」は、そうではないと断りがない限りは、その成分が含まれる組成または物品の全重量に対するものである。
反応物の電位がしきい値より高いか低い場合に限り、或る電気化学反応が発生することができる。そのしきい値を越えると、その反応は熱力学的に禁止されることがある。更に、ある電気化学反応の力学は、電極の表面上の反応物の電位によって制御することができる。そのような電気化学反応の熱力学および動力学の管理可能性は、その移植がそのような反応を引き起こす多くのプロセスおよび装置で開発することができる。例えば、組合せ触媒の発見において、線形にかつ空間的に変化できる電位の場を使用する手法が知られている。しかし、線形にかつ空間的に変化できる電位の場によって形成される使用可能な変異体の集合(pool)は、数と機能において極めて限定的である。さらに、線形に変化する電位の場の使用は、平坦な表面を必要とする。従って、或る用途では、これに代わる仕組みが望まれている。
本発明は、非線形にかつ空間的に変化できる電界を利用し、非線形にかつ空間的に変化できる電位勾配を表面上に生成する。その表面は平坦面、または、例えば球面や楕円面などの曲面であってもよい。電界のプロファイルは、表面の各位置では、電気化学反応の前にまたはその間に参照電極(例えば、AgCl/Ag参照電極)に対する正確な相対電位を決定することができるように、制御することができ、かつ、正確にマッピング可能である。典型的には、導電性表面が、非線形にかつ空間的に変化する所望の電界を形成するために使用される。(i)或る電気化学反応の熱力学的および動力学的な挙動、および、(ii)表面の所定の領域上の電気化学的な電位プロファイルについての知識により、電気化学反応が生じるかどうか、および、その領域内のそのような反応の度合いを判断することができる。
図1を参照すると、導電性表面に印加できる電気化学的表面電位の様々な例示的なプロファイルの模式的説明図が示されている。図1において、長さxlおよび幅wlを有する平坦な基板表面101が示されている。グラフ群A、BおよびCの全てで、Dxは表面101上の点(0、0)からのx軸に沿った距離であり、Dyは表面101上の点(0、0)からのy軸に沿った距離であり、Pは電気化学的電位である。図1Aにおいては、一定電位Plが表面全体に印加されており、言い換えると、表面上での印加電位の空間的な変化が存在しない。図1Bでは、2つの印加電圧P2とP2’との間で線形な変化が示されており、言い換えると、1次元ないしは1つの方向(この例では、x方向)に沿った表面電位の変化が存在する。図1Cは、2つの印加電圧P3とP3’の間の非線形なまたは2次元の空間的な変化を示しており、言い換えると、2次元または2つの方向(この例では、x方向およびy方向の双方)に沿った表面電位の変化が存在する。
一実施形態では、第1導電性表面上に、空間的に(例えば平坦な表面の場合には2次元に)並べられた「n」個の電位接触点の配列を有する導電性基板を供給することができる。ここで、nは3以上である。「n」個の電気接触点の各々に電位を印加することができる。「n」個の電位接触点のうち少なくとも2つには異なる電位を印加することによって、図1Cに例示されるような、2次元の空間的な変化が発生する、空間的に変化する表面電位が得られる。更にまた、この空間的な変化は、「n」個の電位接触点のそれぞれへの表面電位印加を行う所望の手法やプログラムを選択することにより、所定の方法で制御することができ、かつ、再現も可能である。
本発明の方法は、所望の如何なる導電性基板についても使用可能である。しかし、一実施形態では、発生する電気化学的勾配のために生じる特定の電流密度を維持するように、導電性基板が高い表面抵抗を有することが好ましい。この目的のために、例示的な実施形態では、導電性基板は、そのシート抵抗が約100オームであるインジウム錫酸化物被覆のガラス基板(ITO)とすることができる。そのような導電性表面の別の例は、500nm以下の厚みを有する金の薄膜であってもよい。随意的に、基板もまた、導電性ポリマーのような導電性表面皮膜で覆うことができる。例示的な導電性ポリマーはポリアニリン(PAni)を含むことができる。被膜の組成および厚みは、オプションの被膜が使用されると、一様であってもよく、或いは、基板表面上で変化してもよい。同様に、基板および/またはオプションの被膜材料の表面導電率は一様でも、或いは、基板上で変化してもよい。さらにまた、基板は、実質的に一様であるか、若しくは、連続的な基板であるか、または、これに代えて、パターニングされているか、若しくは、ピクセル化した基板であってもよい。
導電性基板の表面は、所望の如何なる数「n」の電位接触点を含んでいてもよい。この目的のために、接触点の所望の数は、少なくとも部分的には、達成が望まれている表面電位の特定の空間的変化に依存すると認識されるであろう。しかし、好ましい一実施形態では、導電性基板の表面は少なくとも3つの電位接触点を含む。様々な実施形態では、電気的接触点の数(「n」)は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、または、少なくとも8、またはそれ以上であり得る。
接触点は、導電性基板の表面へ電気リードを取り付けることにより形成できる。電気的接続リードとして、如何なる導電性ワイヤまたは帯片材料も使用可能である。しかし、本発明の方法が、液体電解質を含む電気化学システムに関連して使用される場合には、リード材料が、ファラデー電流を減少させかつ/または防止するように使用されている特定の電解質中で、比較的に不活性または非反応的であることが好ましい。この目的のために、適切な電気リード材料は、限定はされないが、銅線のようなエナメル被覆された導電性材料を含む。電気リードは、導電性ペーストまたは導電性エポキシ樹脂を使用して、または、はんだ付けによって基板表面へ取り付けることができる。一旦取り付けられると、導体ペースト若しくはエポキシ樹脂、または、個々の接触点を互いに分離しかつ絶縁するために、絶縁性ペーストで被覆される。表面が少なくとも部分的に浸漬される電解質に接するリード線を絶縁することが、表面上に所望の電気化学的な電位プロファイルを達成するために望まれる。
一旦、所望数「n」の接触点が決定されれば、その接触点は、所望の2次元の空間的配列として導電性基板上に形成できる。その目的のために、接触点の所望の空間的配置は、達成されるべき表面電位の所望の表面電位の所望の2次元の空間的変化に少なくとも一部は依存することを認めるべきである。図2は、導電性基板201、203および205の表面に取り付けられたリード線から成る電位接触点の3つの例示的な空間的配置の模式的説明図を示す。例えば、図2aは、導電性基板の4つの隅に位置する4つの電気リード1、2、3および4の例示的な空間配置を示す。これに代えて、図2bは、導電性基板の各側縁に沿って位置する4つの電気リード1、2、3および4の例示的な空間的配置を示す。さらに、図2cは、8つの電気接触リードから成る、図2aおよび図2bの混成的な空間的配置を示すもので、リード1、3、5および7は、導電性基板の4つの隅に位置し、リード2、4、6および8は、導電性基板の各側縁に沿って位置している。
導電性基板の表面上に配置された電気接触点の配列に基づいて、表面電位を空間的に変化させる様々な可能な手法が得られる。可能な手法の実際の数は、存在する電位接触点の数、および、電位が実際に印加される接触点の数に依存するであろう。この目的のために、空間的に変化させる手法(「Q」)の数は、式Q=n!/(n−r)!によって計算することができる。「n」は電位接触点の総数であり、rは電位が印加される、「n」の部分集合である。様々な例示的な実施形態では、電位が実際に印加される電気接触点の数は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または、それ以上であり得る。限定する意図ではなく、説明的な目的のために、図2cで示されるような8つまでの電位接触点を有する空間的配列について、例示的な計算結果を次の表Iに示す。
Figure 0005230741
上記例示的な計算結果から、基板表面上に8つの電位接触点の配列を与えると、与えられた基板上に100,000を超える異なる電位勾配スキームないしはパターンが得られることが理解できよう。換言すると、表面電位勾配の100,000を超える異なる組合せないしはスキームが、単一の基板表面上で生成することができる。さらに、これらの計算は、与えられたスキーム内で各勾配の大きさの可能な変化には言及することなく、勾配スキーム自体の可能な変化のみを考慮していることを理解すべきである。このため、与えられたスキーム内の各勾配の大きさは、例えば、任意の2つの電気接触点間に与えられるバイアスの大きさを変更することによって、無限にカスタマイズ可能であることを更に理解すべきである。
図3を参照すると、図2cに示した8つの電気接触点の配列で達成することができる例示的な3つの勾配スキームの模式図が示されている。特に図3aは、点線によって可能な組合せを模式的に示しており、ここでは(隣接する制御点が同電位である可能性を含み、)各点線の両端の制御点が同電位である。図3bは、8つの全ての制御点がすべて他とは順次に異なる電位に維持され、これによって循環的な勾配スキームを形成する例示的な勾配スキームを示す。更に、図3cは、制御点1、3、5および7が同電位Elに維持され、制御点2、4、6および8が同電位E2に保持される例示的なスキームを示す。
各電気接触点ないしは制御点の実際の制御は、リードに印加される電位を制御する従来の如何なる公知の手段によっても得ることができる。例えば一実施形態では、接触ピンないしは制御ピンの配列を形成するリードのそれぞれに印加される電位は、多チャンネル定電圧装置を使用して独立に制御することができ、定電圧装置は、導電性基板の表面に形成された制御点の数「n」に対応する制御可能なチャンネル数「n」を少なくとも有する。
任意の2つ以上の電気接触点に印加された電位は固定することができ、または、時間的に変化させることができる。例えば、1つの接触点に印加された電位が固定され、別の接触点に印加された電位を変化させることができる。変化する印加電圧は、導電性基板の表面上で電位勾配の性質および/または大きさの何れかを変化させることが好ましい様々な用途に有益である。変化する電位は、例えば従来の定電圧装置によって生成されたボルタンメトリー電位掃引のような従来の如何なる手段ないしは手法によっても印加することができる。当業者は、適当な電位プログラムおよび特定用途 のための印加技術を容易に選定することができる。
以前に述べたように、電気化学反応は、非線形にかつ空間的に変化する電界の存在下において表面上で発生させられる。その電気化学反応を、反応物に印加される電位によって熱力学的および/または動力学的に制御することが極めて好ましい。そのような制御された電気化学反応によって、以下に述べるような多くの用途が発見できる。
I.触媒発見のような組合せターゲットの発見
当業者には明らかなように、触媒発見は骨の折れる分野である。触媒発見の速度は、近年では組合せ手法の使用によって極めて増強されたものの、本発明の方法は、合成ステップおよび選別ステップの双方でこの発見プロセスを大きく促進することができる。例えば、前駆体金属イオンを含む溶液から複数の合金を同時に析出させることによって基板上に電気化学的に多成分触媒ライブラリを形成できるかも知れない。本発明に鑑み、異なる金属は異なる析出電位(従って、析出速度)を有するという事実を生かすことで、これが可能になるかも知れない。かくて、一様でない電位分布を有する表面では、電解液から異なる組成を有する複数の合金を、異なる位置ないしは異なる空間的関係で析出させることができる。同様に、或る触媒ライブラリについては、電位依存の触媒作用を、本発明の非線形の電位勾配の制御を用いてマッピングすることができる。
触媒発見のための、本発明の第1の態様に係る一実施形態の方法を実施する実施の形態では、まず、非線形にかつ空間的に変化する(平坦なまたは曲がった)表面を確立し、次いでその表面に金属塩のような原料物質を供給する。その表面の電界プロファイルを、金属塩が様々な度合いおよび/または速度で、その表面の様々な位置で電着反応を受けるように、制御することができる。異なる位置におけるそのような差異を有する反応の結果として、表面上で候補触媒の組成が異なる大きなライブラリが生成される。表面上での複数の組成が、実質的に1つの組成の連続的な勾配を有してもよい。これに代えて、複数の候補のうち少なくとも1つの組成の分布が不連続であってもよい。少なくとも1つの成分の連続的な分布プロファイルが達成される場合には、或る位置におけるその特定成分の濃度および/または存在を、隣接する位置での濃度および存在並びに電位を知ることによって、予測することも可能である。反応の性質および電界プロファイルを知ることにより、或る反応の発生、並びに、その度合いおよび速度を予測できる。
その組成は、それらの触媒性能を、好ましくはその場で(触媒候補をその表面から剥がすのではなく維持することを意味する)測定することができる。その組成を表面から剥がして別の場所で性能測定を実行することも可能である。或る実施形態では、触媒の性能を測定するプロセス中で、反応物への電気化学的電位に対応する電気化学反応を用いることにより、性能測定を実行する場合には特に、候補の生成に用いた電気化学的電位プロファイルと同じかまたは異なるプロファイルを意図的に印加した状態で、その性能測定を実行することが好ましい。ターゲットは、測定された性能データ(触媒発見の場合には、反応速度、不利な反応条件に耐える能力、抗毒素の能力などの触媒性能データ)を比較することで特定される。ターゲットの組成は、その場所または別の場所で、XPS、TOF−SIMS、質量分光法、湿式化学的手法などの既存の技術で測定可能である。組成分析は、所望の性能を有する特定された候補のみについて実行でき、または、候補の数および測定技術のため困難でなければ、全ての候補について区別なく実行できる。
かくて、本発明に係る触媒の発見および他の材料の発見の用途のためのシステムは:所望の電位勾配を確立することができ、所望の度合いで所望の電気化学反応を発生して候補を生成することができる導電性表面を有する基板;候補の性能を好ましくはその場所で定量化する性能計測装置;および随意的に、少なくとも特定されたターゲット候補の組成を決定する分析装置を含む。
II.化学センサ
本発明の或る実施形態に係る方法は、例えば外部刺激への応答に基づいて媒体中における特定の化学薬品若しくは化学薬品の特定の種別の存在および/または濃度を検出できる化学センサのような化学センサの分野に有用性を有することができると考えられている。外部刺激は化学反応を含むことができ、検出される応答は、蛍光や電流などのような任意の物理的に検出できる特性を含むことができる。そのため、例示的な実施形態では、本発明の方法は、pHに基づいた化学センサを提供するために用いることができると考えられている。例えば、電位依存のpH変化を示す堆積物を持つ導電性基板を提供することができる。非線形勾配の制御は、pHの局所的な変化をマッピングするために使用することができる。更に別の実施形態では、そのような化学センサは、燃料電池の陽極触媒の組合せ発見のためのライブラリを選別するために使用することができる。陽子交換膜燃料電池の陽極反応が典型的には陽子の解放を発生させるので、非線形の勾配制御の存在下で蛍光性指標を使用して、陽子の局所的な生成を検出し、触媒の組成および対応する反応関係を推定することができるであろう。
本発明を利用する典型的な化学薬品検知プロセスは、以下のステップ:導電性表面を供給し、非線形にかつ空間的に変化する電界(または電位勾配)をその表面上に確立するステップ;検出すべきターゲット物質が、電界の存在に応答して他とは区別できるように電気化学反応を受けることを検出するステップ;および、ターゲット物質の存在および/または濃度を検出するステップを有する。
pHセンサを例に取る。Ptの薄膜(例えば、100nm未満)を導電性表面として使用することができる。次の反応:
2H+e→H
の発生は、濃度で示されるHの所定の濃度におけるHの電気化学的電位に依存する。従って、或る位置での反応、および/または、或る位置での反応不足の発生は、測定される溶液中のH濃度の指標になり得る。表面反応を連続的にモニタする能力を有する蛍光検出器のような検出装置の使用によって、流れる液のH濃度の連続的な測定が、本発明に係るpHセンサを使用することによって可能になる。
III.電気化学的バイオセンサ
更に別の実施形態では、本発明の方法は、電気化学的バイオセンサの分野に有用性を持つと考えられている。バイオセンサは、物理的な変換器(例えば、pH電極、表面修飾電極などの電気化学的検出器)と生化学的な認識要素(例えば酵素、抗体、DNA)を組み合わせることができる分析ツールである。電気化学的バイオセンサには、高い精度で極めて高感度を示すことができるというメリットがある。電気化学的バイオセンサは、典型的には単一のパラメータの変化を検出するために単一の電位が印加される単一の電極を含んでいる。しかし、本発明の方法の利用によって、これらセンサの範囲および能力を格段に増加させられるであろう。例えば、複数センサのライブラリを1つの基板上で作成し、本発明方法を使用して一連の電位を印加し、複数のターゲット物質を同時に検出することができるであろう。例えば、考えられる表面は、厚みが500nm以下の金層である。チオール分子は金の表面と結合することができ、その親和性を電気化学反応によって制御することができることが知られている。従って、金の表面上に非線形にかつ空間的に変化する電界を確立することによって、金の表面と結合するチオール分子のパターンを形成することができる。チオール分子のパターンおよび/または露出した金表面のパターンの何れかまたは双方を用いることによって、分子の寸法、形状および/または官能基を分子に結び付けことができる。そのような結合は、表面の或る位置における検出可能な変化を生み出す。そのような変化を検出することによって、検出すべきターゲット物質の存在および/または濃度の検出が可能になる。
認められるように、本発明に係る方法の用途は、事実上無限である。また、上記例は単に説明の目的で提供されるものであり、その範囲を限定することを意図するものではない。
実施例
本発明の原理を更に説明するために、以下の実施例が、本発明で特許請求される方法がどのように実行され評価されるかの完全な開示および記述を当業者に提供するために記述される。これらは、本発明の純粋な例示として意図されるものであり、本発明者が発明と考えるものの範囲を限定することを意図するものではない。数字(例えば量や、温度など)に関して正確さを保証する努力がなされたものの、幾らかは誤差や偏差が生じたかも知れない。そうではないと断りがない限りは、比率は重量比で、温度は周囲の摂氏温度で、圧力はその場所または周辺のもので示す。
以下の実施例では、ポリアニリン導電性高分子(PAni)被覆のインジウム錫酸化物を含むモデル・システムを用意した。PAniは、電位依存の伝導性およびこのため電位依存の着色を示すので、この発明の説明のために選んだ。そのため、PAniの3つの主要な酸化状態は:1)ロイコエメラルディン−完全に還元された状態であり、緑黄色によって識別可能であるもの;2)エメラルディン−半分または部分的に酸化した状態で、緑色によって識別可能であるもの;および3)ペルニグラニリン−完全に酸化した状態で、紺青色によって識別可能であるものである。さらに、PAniは、表面電位を切り替えることにより、これらの酸化状態間で可逆的に切り替えることができる。従って、ポリアニリン被覆の基板上の電気化学的表面勾配は、印加電圧プログラムに依存して色の局所的な変化を示すであろう。
4本のエナメル銅線の電気リードを、導電性の銀エポキシ樹脂を使用してインジウム錫酸化物(ITO)被覆のガラス基板表面の隅に取り付けた。銅線および銀エポキシ樹脂の露出した領域を、電解質からそれらを絶縁するために通常のエポキシ樹脂で覆った。ポリアニリン(PAni)は、0.1モルのアニリンおよび0.5モルの硫酸を含む電解質溶液から、インジウム錫酸化物(ITO)被覆のガラス基板上に電気化学蒸着した。これは、ITO基板のAg/AgCl参照電極に対する相対電位を−0.2Vと+1.15Vとの間で約20mV−1の速さで2周期にわたって繰り返し移行させることで達成した。この蒸着に引き続き、基板を、脱イオン水で徹底的にすすぎ、次いで電気化学洗浄した。電気化学洗浄は、さらにPAni被覆基板のAg/AgCl参照電極に対する相対電位を−0.2Vと0.6Vとの間で5周期にわたって繰り返し移行させる処理を含んだ。
基板を、次いで脱イオン水中で徹底的にすすぎ、更なる実験のため0.5モルの硫酸溶液に浸した。基板上の様々な点の電位を一定に維持するために、クロノアンペアメトリを使用した。クロノアンペアメトリは、或る電極に定電位を印加し、電流を時間の関数としてモニタすることを可能にする電気化学的技術である。特に、AustinのCH Instrument会社から商業的に利用可能なコンピュータ制御の8チャンネル多重定電圧装置TXを、クロノアンペアメトリ実験を行なうために使用した。さらに、遠隔制御されたディジタル・カメラも、様々な電位プログラムが印加された際に、基板の写真を撮るために使用した。様々なクロノアンペアメトリ実験の視覚的な結果は、明白に基板の画像から観察することができる。
図4は、実験装置の構成を模式的に示す。この図で示されるように、上記で準備された基板511を、ビーカー503内に収容された電解質507に浸した。プラチナ製の円形対極509を、基板511を囲んで配置した。電解質内には、さらにAgCl/Ag参照電極505を配置した。基板511の4隅、対極509、および、参照電極505への電気リードはすべて、多重定電圧装置の出力リードに接続されている。
図5を参照すると、4つの接触点(El、E2、E3およびE4)を有するPAni被覆のITO基板が示されている。4つの接触点は、導電性の銀エポキシ樹脂を使用して基板の4つの隅に取り付けられたエナメル銅線によって形成されている。PAniの色は、回路の開放状態を示す薄緑色であった。
図5に示されたPAni被覆のITO基板を、まず、接触点El、E2、E3およびE4が等価である、5つの異なる一様な表面電位に施した。実験番号1では、一様な電位は0ボルトであった。実験番号2では、一様な電位は0.2Vであった。実験番号3では、一様な電位は0.4Vであった。実験番号4では、一様な電位は0.6Vであった。実験番号5では、一様な電位は0.8Vであった。すべての実験で、基板全体で濃淡は実質的に一様であった。すべての実験中の基板の色を表IIに示した。濃淡は、PAniの上記した変化する酸化状態に対応する。
Figure 0005230741
実験番号6〜9では、図5のPAni被覆のITO基板を、0.5モルの硫酸中で4つの別々の線形の電位勾配に施した。これらの状況で、電位E3およびE4は一定に保持し、電位ElおよびE2は実験番号6〜9から系統的に変更した。さらに、電位Elは各実験中でE2と等しくした。実験番号6では、電位ElおよびE2は0.4Vに設定し、電位E3およびE4は、−0.2Vに設定した。実験番号7では、電位ElおよびE2は0.6Vに設定し、電位E3およびE4は、やはり−0.2Vに設定した。実験番号8では、電位ElおよびE2は0.8Vに設定し、電位E3およびE4は、やはり−0.2Vに設定した。実験番号9では、電位ElおよびE2は1.0Vに設定し、電位E3およびE4は、やはり−0.2Vに設定した。
実験番号10および11では、図5のPAni被覆のITO基板を、0.5モルの硫酸中で、2つの非線形的にまたは2次元的に変化する電位勾配に施した。実験番号10では、電位Elは0.4V、電位E2は0V、電位E3は0.4V、電位E4は0Vであった。実験番号11では、電位Elは−0.2V、電位E2は0.8V、電位E3は−0.2V、電位E4は0.8Vであった。PAni被膜の位置に依存する色の変化は、基板表面上で観察することができる。色は、そのような例示的な2次元の電位勾配下で予測されるように、接触点から半径方向に顕著に変化する。
実験番号6〜11における基板の或る点における色および濃淡が、次の表IIIに示されている。
Figure 0005230741
最後に、本発明はその例示的な特定の実施形態に関連して詳細に記述されたものの、本発明は、添付の特許請求の範囲で規定されるような本発明の広い範囲から逸脱することなく多数の修正が可能であるので、それらに限定されるものと考えてはならない。
101:基板面
201,203,205:導電性基板
1〜8:リード線
503:ビーカー
505:参照電極
507:電解質
509:円形対極
511:基板

Claims (4)

  1. 材料および/またはプロセスの複数の候補からターゲットを発見する方法であって:
    (I.1)導電性の表面を供給するステップ;
    (I.2)前記表面の少なくとも2つの電気接触点間に該少なくとも2つの電位接触点間の表面電位を非線形に変化させる電圧を印加することにより、非線形にかつ空間的に変化する所定の電界を前記表面に供給するステップ;
    (I.3)前記表面に原料物質を供給するステップ;
    (I.4)前記非線形にかつ空間的に変化する電界の存在下で、前記原料物質に前記表面上で電気化学プロセスを受けさせて、複数の候補を生成するステップ;
    (I.5)前記表面上で前記複数の候補を測定して性能データを生成するステップ;
    (I.6)前記測定された候補の性能データを比較するステップ;および
    (I.7)ステップ(I.6)の比較に従ってターゲットを発見するステップ
    を有することを特徴とする方法。
  2. ステップ(I.5)で、前記測定の少なくとも一部は、前記候補が前記表面上で留まる間にその場で実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. ステップ(I.3)で前記原料物質が金属前駆体であり、
    ステップ(I.4)で前記金属前駆体が金属元素に還元され、表面に堆積して複数の候補材料を形成し、
    ステップ(I.5)で前記候補の触媒性能が測定される
    ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 材料および/またはプロセスの複数の候補からターゲットを発見するシステムであって:
    (IVA)(i)表面の少なくとも2つの電気接触点間に該少なくとも2つの電位接触点間の表面電位を非線形に変化させる電圧を印加することにより、非線形にかつ空間的に変化する電界を確立することができ、(ii)原料物質を供給することができ、かつ(iii)前記電界の存在下で原料物質に電気化学的プロセスを受けさせて複数の候補を生成することができる表面を有する基板;
    (IVB)前記表面上で複数の候補の性能を測定する計測装置;および
    (IVC)前記測定された候補の測定データを比較し、該比較に従って前記ターゲットを発見する分析装置
    を有することを特徴とするシステム。
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