JP5229093B2 - 骨成長に対するエストロゲン作用の判定 - Google Patents

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Description

本発明は、骨代謝におけるエストロゲン作用の判定方法に関し、より詳しくは、ラット陰茎骨の長さを測定することで、被検物質の骨代謝に対するエストロゲン作用を判定する方法に関する。また、本発明は、このエストロゲン作用判定方法を用いて試料中のエストロゲン作用物質を検出する方法、および候補物質のアロマターゼ阻害作用の判定方法にも関する。
エストロゲンは卵巣などから分泌される17- βエストラジオール、エストロン、エストリオールなどの女性ホルモンの総称であり、分泌されたホルモンは血流により運ばれ、女性生殖器、胎盤、脳、骨などの標的組織に作用を及ぼす。これらの標的組織にはエストロゲン受容体が存在し、エストロゲンと特異的に結合して、標的遺伝子発現を活性化することにより種々の生理作用を発揮させる。
環境中にはホルモン作用を引き起こす、内分泌攪乱物質と称される化学物質が多数放出され、このような化学物質による環境汚染および人体の健康への影響が問題となっている。内分泌攪乱物質には、エストロゲン様の作用をもつと報告されている物質があり、これらの物質は生物の体内に入ると、エストロゲン受容体に結合することにより生物が本来もつホルモンと似た作用をするため、人体や野生生物への生殖毒性や次世代影響が懸念される。
従って、内分泌攪乱物質、特にエストロゲン様作用物質を検出するために、エストロゲン作用を正確に簡便に測定する系の確立が望まれている。また、新たに開発される化学物質や医薬などについてエストロゲン作用の有無を調べるためにも、エストロゲン活性を正確に測定する方法が必要となる。
これまで化学物質のエストロゲン活性を検出するために、様々な評価方法が開発されてきた。例えば、in vitro実験においては、エストロゲン受容体をもつ細胞の増殖変化を測定する方法や、エストロゲン受容体を利用するレポータージーンアッセイ法(特許文献1)などがある。また、in vivo実験においては、被検物質をラットなどの実験動物に投与して、副生殖線の発育や性行動に及ぼす影響を調べる方法などがある。
しかし、これらの方法では、被検物質が骨代謝に及ぼす影響を調べるのは困難である。In vitro実験では、被検物質の生体中での代謝等による変化を含めた影響は測定できない。既存のin vivoの実験系では、直接的に骨量の測定を行うことは可能ではあるが、ほとんどの骨の成長にはエストロゲン以外の成長因子による影響も大きいため、エストロゲンの作用のみを調査するのが困難である。さらに、被検物質の投薬によって通常の骨組織に大きな影響が出始めるまでには、長い時間が必要とされる。以上より、in vivoでの骨組織の成長における被験物質のエストロゲン作用を直接的に短期間で測定できる実験系の確立が待ち望まれていた。
特開2009-050203号公報
本発明は、in vivoでの骨組織の成長におけるエストロゲンの作用を直接的に短期間で測定できる実験系を確立することを目的とする。
本発明者らは、エストロゲンが骨代謝に大きく影響することに着目し、エストロゲン作用の判定方法を検討した。通常の体躯の骨代謝にはステロイド以外のホルモンの関与もあり、ステロイド作用のみを調べることは難しい。ステロイドホルモン以外のホルモンの関与が少ないと考えられている陰茎骨については、これまで、アンドロゲンの作用で陰茎骨が増大することは報告されていたが、エストロゲンによる骨代謝の増進に関しては知られていなかった。
本発明者らは、ラットにおいて陰茎骨のエストロゲン作用の機序を解明し、ラット陰茎骨の骨成長を指標としてエストロゲン作用の調査に利用できることを見出して、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
(1) 雄新生子ラットに対して、アロマターゼ阻害剤の投与により内因性エストロゲンの産生を抑制した条件下で、被検物質を投与し、次いで陰茎骨の長さを測定することを含む、被検物質の骨代謝に対するエストロゲン作用の判定方法。
(2) アロマターゼ阻害剤を妊娠雌ラットの周産期およびその産子の新生子期に投与する、上記(1) 記載の方法。
(3) 上記(1) または(2) 記載のエストロゲン作用の判定方法を用いて、試料中のエストロゲン様作用物質を検出する方法。
(4) 雄新生子ラットに対して、候補物質を投与し、次いで陰茎骨の骨成長を調べることにより、アロマターゼの阻害によるエストロゲンの産生の抑制の有無を判定することを含む、候補物質のアロマターゼ阻害作用の判定方法。
(5) 候補物質を妊娠雌ラットの周産期およびその産子の新生子期に投与する、上記(4) 記載の方法。
本発明により被検物質が引き起こしたエストロゲン特異的な骨成長の変化を簡便かつ迅速に判定することができる。従って、エストロゲン様作用が疑われる物質の骨成長に及ぼす影響を調査したり、新たに開発された物質や医薬のエストロゲン様作用を評価することができる。また、試料中のエストロゲン様作用物質を高い信頼性で検出することができるので、環境中に放出されたかかる作用をもつ化学物質の存在を調べることができる。さらに、本発明の系では、アロマターゼの阻害によりエストロゲンの合成を阻害して陰茎骨の成長を抑制できることを利用しているので、雄新生子ラットにおいて候補物質を投与した際の陰茎骨の骨成長を調べることにより、候補物質がアロマターゼを阻害するか否かを調べて、新規なアロマターゼ阻害剤をスクリーニングすることも可能である。
(a)はラット陰茎骨の各日齢の軟X線写真像で、Diは陰茎骨遠位部、Prは陰茎骨近位部を示す。(b)はその骨長を示し、○は陰茎骨遠位部を、●は陰茎骨近位部を表す。 ラット陰茎の矢状断面模式図であり、AおよびBはそれぞれ図3および図4で観察した大まかな位置を示す。Cgは亀頭海綿体、Cpは陰茎海綿体、Diは陰茎骨遠位部、Prは陰茎骨近位部、Urは尿道を示す。 図2におけるA付近の各日齢の免疫組織化学染色像を示す。ARはアンドロゲン受容体に対する抗体、Aromataseはアロマターゼに対する抗体、ERはエストロゲン受容体αに対する抗体を用いて免疫組織化学をおこなったもの。矢尻は骨周囲層(Pa)など骨以外の組織に発現観察がされた部位を、矢印は膜性骨の骨形成層(Pe)および骨芽細胞(Me)など、骨組織に発現が観察された部位を示す。 図2におけるB付近の各日齢の免疫組織化学染色像を示す。ARはアンドロゲン受容体に対する抗体、Aromataseはアロマターゼに対する抗体、ERはエストロゲン受容体αに対する抗体を用いて免疫組織化学をおこなったもの。矢尻は骨周囲層(Pa)など骨以外の組織に発現観察がされた部位を、矢印は硝子軟骨細胞(Hy)など、骨組織に発現が観察された部位を示す。 ATD投与による体重と陰茎骨長の関係を示す(生後10日)。ContはATDの代りに溶媒である胡麻油のみを投与した偽薬投与群を、ATDはATD投与群を示す(n = 9〜10)。*はスチューデントのT検定によってCont群に対して統計的に有意な差があることを示す(危険値0.05未満)。 ATD投与と共にエストロゲンを投与したときの陰茎骨長の変化を示す(生後10日)。ATDはATDのみを投与した対照群を、ATD+EはATD投与と共にエストロゲンを投与した群を示す(n = 4)。*はスチューデントのT検定によってATD群に対して統計的に有意な差があることを示す(危険値0.05未満)。
本発明のエストロゲン作用の判定方法、およびエストロゲン様作用物質の検出方法は、雄新生子ラットにおいて、アロマターゼ阻害剤の投与により内因性エストロゲンの産生を抑制した条件下で、被検物質または試料を投与し、次いで陰茎骨の長さを測定して骨代謝に対する影響を調べることを含む。
本発明方法は、本発明者らによる新規な知見に基づくものである。即ち、本発明者らは、雄ラットの新生子期における陰茎骨の成長がエストロゲンの作用によること、および、エストロゲンの産生をアロマターゼ阻害剤により抑制すると陰茎骨の成長が抑制されること、さらにアロマターゼ阻害したラットにエストロゲンを投与すると骨成長が増加することを見出した。
雄ラットの新生子期における陰茎骨の成長がエストロゲンの作用によることは、後述の実施例1において実証されている (図1〜4、表1参照)。具体的には、ラット陰茎骨におけるアンドロゲン受容体 (AR) 、エストロゲン受容体α (ER) 、アロマターゼの発現分布を調べた結果、ARは陰茎骨原基である間葉組織や骨周囲層などの骨以外の組織に広範に発現したが、成長期の陰茎骨の軟骨や骨芽細胞には発現しなかった。一方、ERおよびアロマターゼは陰茎骨成長の早期段階において、軟骨細胞や骨芽細胞などの骨組織で発現が認められた 。ラット陰茎骨は5日齢ごろに分化し、陰茎骨の出現後、アンドロゲンはアロマターゼにより局所的にエストロゲンに置換されて骨成長に関与すると考えられる。
このように、アンドロゲンがアロマターゼによりエストロゲンに置換されて陰茎骨の成長を促すのであれば、アロマターゼ阻害剤により内因性エストロゲンが合成されない条件にした場合、陰茎骨の成長は抑制されるはずである。実施例2においては、これを確認するために、妊娠雌ラットの周産期およびその産子の新生子期にアロマターゼ阻害剤を皮下投与し、エストロゲンの合成されない条件にしたときの陰茎骨の骨長を測定したところ、通常骨長より有意に低下した (図5参照。アロマターゼ阻害剤であるADTを投与した場合の体重および陰茎骨長を、ADTを投与しない対照 (Cont)と比較した図。左図が体重、右図が陰茎骨長を表す)。
さらに、実施例3において、雄新生子ラットの1〜10日齢までの間にアロマターゼ阻害剤を皮下投与して内因性エストロゲンが合成されない条件とし、外因性エストロゲンを投与した場合の陰茎骨の骨長を測定すると、骨長の有意な増加がみられた (図6参照。ADTのみを投与した対照に比べ、ADTとエストロゲンを投与 (ADT+E)した場合陰茎骨長が増加)。従って、アロマターゼ阻害剤を投与して内因性エストロゲンが合成されない条件下で試験物質を投与した場合の陰茎骨の骨長を測定することにより、試験物質のエストロゲン活性を評価、あるいは試料中のエストロゲン様作用物質を検出することができる。この本発明方法によれば、10日程度で測定が可能となり、通常の骨組織の場合よりも短期間で測定することができる。
本発明方法において用いる動物は、Wistar-Imamichi 系ラット、Wistar系ラット、ICR系マウス、C57BL 系マウスなどの、解剖学および生殖生理学的な研究に使用される通常のラットもしくはマウスの雄新生子であればよい。本明細書において新生子期とは生後10日位までをいう。
アロマターゼ阻害剤と、被検物質または試料の投与は、雄新生子ラットの1〜約10日齢に行えばよく、毎日または1日おきに行うのが好ましい。周産期の母親ラット(Wistar-Imamichi系ラットでは妊娠19日から22日まで)にも投与をしておくと、さらにその効果は著しくなる。投与経路は皮下、腹腔投与、経口投与などが可能であるが、皮下投与が好ましい。アロマターゼ阻害剤の投与量は、使用する阻害剤の種類、投与経路、投与部位などにより異なるが、下記ATD を皮下投与する場合には0.01〜1.0 mg/匹、好ましくは0.5 mg/匹である。
エストロゲンの合成を抑制するために投与するアロマターゼ阻害剤としては、1,4,6-antrostatrien-3,17-diene (ATD)、 塩酸ファドロゾール、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾールなどが例示できるが、これらに限定されない。
ラット陰茎骨の骨長の測定は軟X線撮影などの手段を行えばよく、測定された骨長を、アロマターゼ阻害剤のみを投与された対照と比較し、骨長が増加している場合に被検物質がエストロゲン様作用をもつと判定する。また、未知の物質を含む試料を本発明方法によって測定して、エストロゲン様作用物質を検出することができる。
本発明方法はラットを用いて被検物質のin vivo での活性を測定するので、被検物質の生体内での代謝による変化も含めたエストロゲン活性を評価することができる。
本発明の別の態様は、候補物質のアロマターゼ阻害作用の判定方法であり、この方法は雄新生子ラットの新生子期において候補物質を投与し、次いで陰茎骨の骨成長を調べることにより、アロマターゼの阻害によるエストロゲンの産生の抑制の有無を判定することを含む。
この方法において用いるラットは、上記エストロゲン作用の判定方法の場合と同様である。アロマターゼ阻害剤の候補物質の投与は、雄新生子ラットの1から約10日齢に行えばよく、毎日または1日おきに行うのが好ましい。投与経路は皮下、腹腔投与、経口投与などが可能であるが、皮下投与が好ましい。候補物質は、周産期の母親ラット(Wistar-Imamichi系ラットでは妊娠19日から22日まで)にも投与をしておくと、さらにその効果は著しくなる。
ラット陰茎骨の骨長の測定は軟X線撮影などの手段を行えばよく、測定された骨長を、対照と比較し、骨長が低下している場合に候補物質がアロマターゼ阻害作用をもつと判定する。このようにしてアロマターゼ阻害剤をスクリーニングすることができる。
ラット陰茎骨の骨長とステロイド受容体、アロマターゼの発現分布の加齢性変化の解明
ラット陰茎骨はアンドロゲン依存性に成長すると考えられていたが、アンドロゲンがどのように陰茎骨に作用しているかは知られていない。実施例1では、ラット陰茎骨の骨長と、アンドロゲン受容体(AR)、エストロゲン受容体α(ER)、アロマターゼの発現分布について、年齢を追って調べた。骨長は軟X線装置を用い、受容体およびアロマターゼの発現については免疫組織化学染色法を用いて実験を行った。その結果、陰茎骨は生後1〜40日に著しく成長した。ARは陰茎骨原基である間葉組織に広範に発現したが、成長期の陰茎骨の軟骨や骨芽細胞などの骨組織には発現しなかった。一方でERやアロマターゼは陰茎骨成長の早期段階である1〜40日において、軟骨細胞や骨芽細胞で発現が認められた。以上より、アンドロゲンは陰茎骨付近にて局所的にエストロゲンに置換されて骨成長に関与すると考えられた。
(材料と方法)
供試動物には、Wistar-Imamichi系ラットを用いた。1、2、5、10、20、40、60、120、180日齢の雄ラットを、それぞれ3匹ずつ用いた。全てのラットは標準的条件下(室温21±1℃、明暗周期12時間)で飼育し、ラット用固形試料および飲料水を自由に摂取させた。
各日齢のラットは、ジエチルエーテル吸入麻酔下で、腹大動脈切断による安楽殺を行った。その後、陰茎を採材した。採材した組織は、軟X線撮影、光学顕微鏡的検索および免疫組織化学的検索のために10%中性ホルマリン液で浸漬固定した。
10%中性ホルマリンで浸漬固定した陰茎は、陰茎骨の観察された日齢の陰茎については、20%EDTA加10%中性ホルマリンによる脱灰固定を施した。水洗、エタノール上昇系列脱水、キシレン透徹後、パラフィン包埋し、ミクロトームにて2〜3μm厚の薄切切片を作製した。
上記のとおり作製した薄切切片を用いて、免疫組織化学染色を行った。一次抗体として、抗Androgen receptor(AR)抗体(Santa cruzbiotechnology Inc.,CA)、抗Estrogen receptorα(ER)抗体(Santa cruz biotechnology Inc.)、抗Aromatase抗体(Biovision Research Products,CA)を用いた。免疫染色の方法は以下に示した。まず切片を脱パラフィンした後、一次抗体として抗AR抗体、抗ER抗体を用いたものについては、抗原性賦活化のために孵卵器にて80℃、18時間処理し、0.3%過酸化水素加メタノールによる内因性ペルオキシダーゼ活性の除去を行った。抗AR抗体、抗ER抗体を用いたものには、二次抗体としてビオチン標識抗ウサギIgG抗体(動物種:ヤギ)(Nichirei biosciences Inc., Tokyo, Japan)を、抗Aromatase抗体を用いたものには、二次抗体および酵素試薬としてシンプルステインラットMAX-PO(R) (動物種:ヤギ) (Nichirei)を用いた。また、非特異的反応のブロッキング試薬として10%ヤギ正常血清(Nichirei)を用いた。抗AR抗体、抗ER抗体を用いたものには酵素試薬としてペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(Nichirei)を使用した。全ての免疫染色では、発色基質として3,3’-diaminobenzidine tetrahydrochloride (Nichirei)を用いた。
(結果)
陰茎骨は5日齢ごろに分化し、40日までに著しく成長することが示された(図1)。陰茎骨は生後1〜40日に著しく成長した。ARは陰茎骨原基である間葉組織に広範に発現したが、5日以降の骨分化した陰茎骨の軟骨や骨芽細胞などの骨組織には発現しなかった。一方でERやアロマターゼは陰茎骨成長の早期段階である1〜40日において、軟骨細胞や骨芽細胞で発現が認められた。これらの発現は40日以降において著しく低下した(図3、4、表1)。詳しくは下記に示す。
1.軟X線所見(図1)
陰茎骨近位部:1および2日齢の陰茎には陰茎骨近位部の陰影は認められず、5日齢の陰茎で初めて針状の微小な陰影が観察された。陰茎骨近位部の陰影の長さの成長は、20日齢まで急速に進行した後、その成長度が暫減し、60日齢以降にはプラトーに達した。また、5日齢には針状を呈した骨陰影は、徐々に短軸方向にも成長して太さを増し、10〜40日齢には近位端のやや膨らんだ楊枝様を呈した。短軸方向は特に20〜120日齢にかけて急速に成長し、60日齢以降には全体的に太さを増した骨陰影は、近位端の膨らんだマンドリン様を呈した。
陰茎骨遠位部:陰茎骨遠位部の陰影は、40日齢以前の陰茎には観察されず、60日齢の陰茎で初めて弾丸〜カンマ状の陰影が観察された。遠位部については、本実験ではこれ以上の解析は行わなかった。以降、特に断りのない限り陰茎骨とは陰茎骨近位部を指す。
2.免疫組織化学的所見(図2〜4、表1)
図2におけるA、Bはそれぞれ図3および図4で観察した大まかな位置を示す。
(1) 抗AR抗体
ARは、1および2日齢の陰茎の陰茎骨原基となる間葉細胞において広範に陽性を示した。5および10日齢には、ARは骨周囲層に発現したが、膜性骨および硝子軟骨で陽性反応は認められなかった。40日齢以降の陰茎骨ではARの陽性反応は認められなかった。
(2) 抗アロマターゼ抗体
1および2日齢の陰茎の陰茎骨原基において、アロマターゼの陽性反応は認められなかった。5〜40日齢には膜性骨の骨形成層および硝子軟骨の軟骨細胞に陽性反応が認められた。60日齢の陰茎骨では、膜性骨の骨形成層で弱い染色性を示すのみとなり、120日齢以降は近位部での陽性反応が認められなかった。
(3) 抗ER抗体
1および2日齢の陰茎では、ERの陽性反応を示す細胞が陰茎骨形成予定領域に散在した。5〜10日齢には、ERは膜性骨の骨形成層、骨芽細胞および軟骨細胞で陽性反応を示した。40日齢以降はERの陽性反応は認められなかった。
Figure 0005229093
以上より、未熟陰茎における間葉細胞増殖や間葉組織からの軟骨、骨組織の形成にはアンドロゲンのARを介した直接作用が示唆された。しかしその一方、陰茎骨の出現後は、軟骨細胞や膜性骨内の骨形成層に局在するアロマターゼにより、局所的にアンドロジェンから置換されたエストロジェンが、膜性骨内のERを介して陰茎骨近位部の成長を促すことが示唆された。
アロマターゼの阻害が陰茎骨の成長に及ぼす影響
実施例1のとおりアンドロゲンがエストロゲンに置換されて効果を及ぼすのであれば、アロマターゼ阻害によって骨長が短縮するはずである。実施例2では、妊娠雌ラットの周産期およびその産子の新生子期にアロマターゼ阻害剤(ATD)を0.5 mg/30 μl皮下投与し、エストロゲンの合成されない条件にしたときの陰茎骨の大きさを比較した。生後10日の陰茎骨を採材し、軟X線装置にて骨長を測定したところ、通常骨長の平均が2.1 mmだったのに対し、ATD投与群では1.7 mm程度と、陰茎骨長が有意に低下した。以上より、内因性のエストロゲン産生を抑制した場合、陰茎骨がエストロゲンの作用を受けることができず、骨成長が抑制されることが示唆された。
(材料と方法)
供試動物には、Wistar-Imamichi系ラットを用いた。性成熟に達した雌ラット(200〜280g)8匹とその雄新生子29匹を用いた。全てのラットは標準的条件下(室温21±1℃、明暗周期12時間)で飼育し、ラット用固形試料および飲料水を自由に摂取させた。
実験群の供試動物を、偽薬投与群(n=3)とアロマターゼ阻害剤(ATD)投与群(n=5)とに群分けした。雌ラットは導入後2週間ほど膣スメア検査による性周期の判定を行い、発情前期を迎えた日の18〜19時に、性成熟に達した雄ラットの単飼ケージに移し、交配させた。ATD投与群の雌については、交配翌日を妊娠1日目とし、妊娠19日目から22日目の期間、アロマターゼ阻害剤である1,4,6-Androstatrien-3,17-Dione(ATD;Steraloids Inc. Rhode Island,USA)を0.5mg/30μlの濃度で胡麻油に溶解し、背部皮下に連日投与した。偽薬投与群についてはATD投与群と同期間に、同用量の胡麻油を背部皮下に投与した。妊娠23日目に分娩が行われたことを確認し、出生日を1日齢として2日齢にlitter sizeを8匹に揃えた。1、3、5、7、9日齢の新生雄ラットの背部皮下に、ATD投与群では0.5mg/30μl胡麻油のATDを、偽薬投与群では30μlの胡麻油を投与した。10日齢になったところで、ジエチルエーテル吸入麻酔下で、腹大動脈切断による安楽殺を行った。その後、陰茎を採材した。採材した組織は、軟X線撮影を行い、陰茎骨近位部骨長を測定した。偽薬投与群とATD投与群との間でスチューデントのT検定を危険値5%で実施し、統計的有意差を求めた。
(結果)
周産期アロマターゼ阻害の影響(図5)
ATD投与群では、体重とは無関係に陰茎骨長が減少する傾向が認められた。偽薬投与群とATD投与群で、10日齢の新生雄ラットの陰茎骨近位部長を比較した。両群で体重に有意差は認められなかった。通常骨長の平均が2.1 mmだったのに対し、ATD投与群では1.7 mm程度と、陰茎骨長が有意に低下した。
従って、内因性のエストロゲン産生を抑制した場合、陰茎骨がエストロゲンの作用を受けることができず、骨成長が抑制されることが示唆された。
アロマターゼ阻害時にエストロゲン様作用物質が陰茎骨の成長に及ぼす影響
通常の骨の成長は性成熟の後も続くことから、長い実験期間が必要である。また、通常の骨はアンドロゲンとエストロゲンの両方の受容体を持ち、二つの作用が混在するため結果は複雑になる。しかし、実施例1でみられたように、陰茎骨は性成熟前には成長が終了するうえ、エストロゲン受容体しか存在しない。このため、実施例2の様な内在性エストロゲン産生を阻害した幼若ラットに、エストロゲン様作用物質を投与すれば、その物質がもつ骨成長への影響を素早く調べられると考えられる。実施例3では、アロマターゼ阻害ラットにエストロゲンの一種であるestradiol 17βを投与し、エストロゲンが陰茎骨の成長に及ぼす影響を調べた。幼若雄ラット8匹を実験に用いた。生後1日目より1日おきに、ATD 0.5 mg/30μlもしくはATD 0.5 mg + estradiol 17β10 ng/30μlを同ラットに皮下投与した。生後12日目に陰茎骨を採材し、軟X線装置にて陰茎近位骨長を測定したところ、ATDのみ投与した群に比べ、estradiol 17βを同時投与した群の陰茎骨長は有意に増加した(111±3.3%)。以上より、本実施例に沿った実験法を用いることで、エストロゲン様作用物質の骨成長に対する影響を簡便に測定できることが示唆された。
(材料と方法)
供試動物には、Wistar-Imamichi系ラットを用いた。母親ラット(2匹)とその雄新生子(同腹6匹、計12匹)を用いた。ラットは標準的な環境条件 (室温21±1℃、明暗周期12時間)で飼育し、母親ラットにはラット用固形試料および飲料水を自由に摂取させた。
母親ラットが妊娠23日目に分娩したことを確認し、出生日に8匹(雄6匹、雌2匹)に揃えた。雄新生子ラットのうち、3匹に対してアロマターゼ阻害剤であるATDを、もう3匹に対してはATDとともにestradiol 17β (ATD+E) を投与した。ATDは0.5 mg/30μlの濃度で胡麻油に溶解し、ATD+EはATDを0.5 mg/30μl、estradiol 17βを10 ng/30μlになるように胡麻油に溶解した。薬剤は、1、3、5、7、9日齢の新生雄ラットの背部皮下に投与した。12日齢になったところで、ジエチルエーテル吸入深麻酔による安楽殺を行った。その後、陰茎を採材した。採材した組織は、軟X線撮影を行い、陰茎骨近位部骨長を測定した。母親ラットの腹ごとに成長曲線に異なりが生じる可能性があるので、ATD投与群の陰茎骨長の平均値を腹ごとに100として、ATD+E投与群の変化率を求めた。偽薬投与群とATD投与群との間でスチューデントのT検定を危険値5%で実施し、統計的有意差を求めた。
(結果)
ATD投与とともにEを投与したときの陰茎骨長の変化(図6)
2腹の新生子ラットにおいて実験を行った結果、ATD群の陰茎骨長は2.26±0.086 mmだったのに対し、ATD+E群の陰茎骨長は2.52±0.102 mmと、陰茎骨の伸長が観察された。ATD投与群の陰茎骨長の平均値を腹ごとにそれぞれ100 (%)として、ATD+E投与群の変化率を求めたところ、ATDのみ投与した群に対し、estradiol 17βの同時投与群では111±3.3 %と、陰茎骨長の有意な増加が観察された。
このように、本実施例に沿った実験法を用いることで、エストロゲン様作用物質の骨成長に対する影響を簡便に測定できる。

Claims (5)

  1. 雄新生子ラットに対して、アロマターゼ阻害剤の投与により内因性エストロゲンの産生を抑制した条件下で、被検物質を投与し、次いで陰茎骨の長さを測定することを含む、被検物質の骨代謝に対するエストロゲン作用の判定方法。
  2. 雄新生子ラットに対する内因性エストロゲンの産生の抑制を、アロマターゼ阻害剤を、該雄新生子ラットを分娩する前の妊娠雌ラットの周産期に投与しておき、次いでその雄の産子の新生子期に投与することにより行うことを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 請求項1または2記載のエストロゲン作用の判定方法を用いて、試料中のエストロゲン様作用物質を検出する方法。
  4. 雄新生子ラットにおいて、候補物質を投与し、次いで陰茎骨の骨成長を調べることにより、アロマターゼの阻害によるエストロゲンの産生の抑制の有無を判定することを含む、候補物質のアロマターゼ阻害作用の判定方法。
  5. 候補物質の投与を、前記雄新生子ラットを分娩する前の妊娠雌ラットの周産期、次いでその雄の産子の新生期に行い、該雄新生子ラットの陰茎骨の骨成長を調べることを特徴とする、請求項4記載の方法。
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