JP5228153B1 - 電気的流体圧変換型推進装置及びこれにより駆動される移動体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 小容量蓄電装置の利用を可能にして、航続距離を飛躍的に向上させることが可能な、小型軽量、低コストの電気的圧力変換型推進装置及びこれにより駆動される移動体を提供するものである。
【解決手段】 電源22、32、80から供給された電力を蓄電装置26に蓄電し、蓄電装置の出力電力を利用してパルス電源28からパルス電流を供給して超臨界流体発生器42においてアーク放電を発生させることにより高圧作動流体から超臨界流体を発生させ、該超臨界流体を回転式流体機械40で膨張させて推進力を発生させることが可能な電気的圧力変換型推進装置12及びこれにより駆動される移動体10Aを提供する。
【選択図】図1
【解決手段】 電源22、32、80から供給された電力を蓄電装置26に蓄電し、蓄電装置の出力電力を利用してパルス電源28からパルス電流を供給して超臨界流体発生器42においてアーク放電を発生させることにより高圧作動流体から超臨界流体を発生させ、該超臨界流体を回転式流体機械40で膨張させて推進力を発生させることが可能な電気的圧力変換型推進装置12及びこれにより駆動される移動体10Aを提供する。
【選択図】図1
Description
本発明は流体圧変換型推進装置に関し、特に、電気的流体圧変換型推進装置及びこれにより駆動される移動体に関する。
近年、地球温暖化防止の有効対策として液圧流体やハイドロニューマチック(液圧・気圧エネルギー)を利用した推進力装置や液圧駆動移動体が提案されている。
特許文献1には、2個の液圧容器にそれぞれガス圧容器を接続して内燃機関の排熱エネルギーを利用してガス圧力を補償するようにした移動体用推進装置が提案されている。
特許文献2には、低圧アキュムレータとアキュムレータを用意して、内燃機関でポンプモータを駆動して低圧アキュムレータから低圧流体を加圧してアキュムレータに貯蔵し、液圧流体で駆動用ポンプモータを作動させることで移動体を推進させるようにした液圧駆動移動体が提案されている。
ところで、特許文献1で開示された移動体用推進装置では、液圧流体に作用するガス圧力はガスの体積の減少に伴って急峻に低下する。この欠点を克服するため、内燃機関の排気系に複数の熱交換用コイルと複数のバルブ手段とを設けて排熱エネルギーによりガス圧容器を加熱してガス圧を上昇させている。乗用車やトラック・バス等の自動車にこの推進力装置を採用した場合、市街地走行で運転される際には、頻繁に低速走行が行われてエンジン出力が低い運転状態となる。そのため、市街地走行では、排気温度が連続して高温に維持されることが少ないため、上述の排熱エネルギーでガス圧の急峻な低下を補償することは困難であり、移動体の航続距離を向上させることができなかった。
特許文献2で開示された液圧駆動移動体では、有害な排ガスを排出する内燃機関によってポンプモータを駆動して液圧流体を加圧しているが、加圧流体で移動体を推進するには内燃機関を連続的に作動させなければならず、有害な排ガスを連続的に放出することとなり、地球環境に優しくはない。しかも、複数の駆動用ポンプモータが独立してディファレンシャルに連結され、多数の液圧切替部品を備えた複数のサブ回路と、多数の高圧ラインと低圧ラインとが配置された複雑な構成となっている。その結果、液圧流体の流路損失が大きく、応答性も悪く、燃費効率も悪くなり、車体構造も必然的に大型となり、移動体の航続距離を向上させることができなかった。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、環境に優しく、安全で信頼性の高い電気的流体圧変換型推進装置及びこれにより駆動される移動体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、電気的流体圧変換型推進装置が、蓄電装置と、前記蓄電装置の出力電力から所定周期のパルス電流を供給するパルス電源と、前記パルス電流に応答してアーク放電を発生させることにより高圧作動流体から超臨界流体を発生させる超臨界流体発生器と、前記高圧作動流体を前記超臨界流体発生器に連続的に供給する高圧作動流体供給源と、前記超臨界流体を膨張させて推進力に変換する回転式流体機械と、前記回転式流体機械により駆動されて発電する発電機と、前記発電機の出力電力を直流出力に変換して前記蓄電装置に蓄電させるAC/DC変換器と、前記推進力を推進手段に伝達する出力装置とを備えることを要旨とする。
請求項2に記載された発明によれば、請求項1記載の構成に加えて、前記高圧作動流体供給源が作動流体を貯蔵する低圧貯蔵タンクと、前記回転式流体機械により駆動されて前記低圧貯蔵タンクから前記作動流体を吸引・加圧して前記高圧作動流体を生成するロータリ加圧ポンプと、前記高圧作動流体を貯蔵するアキュムレータと、前記アキュムレータの前記高圧作動流体と前記ロータリ加圧ポンプの前記高圧作動流体とを選択的に前記超臨界流体発生器に供給する切替制御弁とを備えることを要旨とする。
請求項3に記載された発明によれば、請求項2記載の構成に加えて、前記回転式流体機械が前記超臨界流体を膨張させて前記推進力に変換する第1回転機械部と、前記ロータリ加圧ポンプから独立して前記作動流体を吸引・加圧して高圧作動流体を生成して前記超臨界流体発生器に供給する第2回転機械部とを備えることを要旨とする。
請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加えて、前記超臨界流体発生器が、リアクタケーシングと、前記リアクタケーシングに形成されていて飽和蒸気発生ゾーンと、過熱蒸気発生ゾーンと、超臨界流体発生ゾーンとを有するアーク放電発生室と、前記パルス電源に接続されていて前記アーク放電発生室でアーク放電を発生させる複数のアーク電極と、前記アーク電極の間に介在していて前記飽和蒸気発生ゾーン、前記過熱蒸気発生ゾーン及び前記超臨界流体発生ゾーンの広域にて前記アーク放電を発生させる複数のアーク放電球体とを備えることを要旨とする。
請求項5に記載された発明によれば、移動体が、請求項1〜4のいずれかに記載の電気的流体圧変換型推進装置により駆動されることを要旨とする。
請求項1記載の第1発明では、電気的流体圧変換型推進装置において、高圧作動流体を超臨界流体発生器に連続的に供給し、蓄電装置の出力電力をパルス電源に供給してパルス電流を発生させ、該パルス電流に応答して超臨界流体発生器でアーク放電を発生させることにより高圧作動流体から超臨界流体を発生させ、該超臨界流体を回転式流体機械で膨張させて推進力に変換し、該推進力の一部により発電機を駆動して得た電力を直流出力に変換して蓄電装置に蓄電させるAC/DC変換器を備えた構成としている。このように、蓄電装置から供給された電気エネルギーを超臨界流体による圧力エネルギーに変換し、次いで、圧力エネルギーを回転式流体機械を介して推進力に変換し、該推進力の一部により発電機を駆動して得た電力を直流出力に変換して蓄電装置に蓄電するようにしている。この結果、小容量の蓄電装置の利用を可能にして移動体の航続距離を飛躍的に向上させることができる電気的流体圧変換型推進装置の実用化が可能となる。作動流体としては、1例として、純水に微量の硝酸リチウムを添加して所定の電気抵抗を有するように調整した導電水を使用する。導電水を超臨界流体発生器に導入して超臨界水を発生させると、超臨界水は、少なくとも、380℃〜800℃の温度で、350bar前後の超臨界圧となる。超臨界水の爆発圧力は、回転式流体機械のロータリピストン本体の回転方向に10平方cm当り1000Kgの圧力を発生させる。したがって、極めて高いエネルギー効率の電気的流体圧変換型推進装置を提供することができる。
請求項2記載の構成では、ロータリ加圧ポンプにより作動流体から高圧作動流体を生成してアキュムレータに高圧作動流体を貯蔵しておき、切替制御弁によりロータリ加圧ポンプの高圧作動流体とアキュムレータの高圧作動流体とを選択的に超臨界流体発生器に供給するようにしている。この構成により、アキュムレータの圧力が所定値以下の圧力に低下した場合には、ロータリ加圧ポンプから高圧作動流体が超臨界流体発生器に連続的に供給可能となる。この時、超臨界流体発生器にはパルス電源から周期的なパルス電流が供給されるため、安定した推進力を得て移動体の航続距離を飛躍的に向上させることができる電気的流体圧変換型推進装置の実用化が可能となる。
請求項3記載の構成では、また、回転式流体機械が超臨界流体を膨張させて推進力に変換する第1回転機械部と、ロータリ加圧ポンプから独立して作動流体を吸引・加圧して高圧作動流体を生成して超臨界流体発生器に供給する第2回転機械部とを備える。この構成によって、第1には、部品点数の大幅な削減と低コスト化、並びに電気的流体圧変換型推進装置の小型軽量化が可能となり、第2には、第2回転機械部が直接、低圧貯蔵容器かあら作動流体を吸引・加圧して高圧作動流体を生成することができ、アキュムレータの圧力が所定値以下の圧力に低下した場合には、第2回転機械部によって高圧作動流体を超臨界流体発生器に連続的に供給可能となる。したがって、移動体の航続距離を飛躍的に向上させることが可能な電気的流体圧変換型推進装置を提供することができる。
請求項4記載の構成では、超臨界流体発生器はリアクタケーシングを備えていてアーク放電を広域にて発生させるアーク放電球体を備えている。この構成により、パルス電圧を例えば、200ボルト以下の低電圧において、パルス電流は、例えば、50A〜200Aのピーク電流においてアーク放電の発生を可能にして、省電力化を図っている。また、超臨界流体発生器に連続的に供給される導電水は飽和蒸気発生ゾーンにおいて通電によるジュール熱で瞬時に飽和蒸気となり、過熱蒸気発生ゾーンにおいて瞬時に過熱蒸気が生成される。この過熱蒸気はアーク放電球体の隙間のアーク放電空間を通過する際に超臨界流体発生ゾーンにおいて広域にて発生するアーク放電と接触して瞬時に高温高圧の超臨界水となる。したがって、極めて簡単な構造で、生産コストも安く、信頼性も高い電気的流体圧変換型推進装置を提供することが可能となる。
請求項5記載の構成では、移動体が請求項1〜4のいずれかに記載の電気的流体圧変換型推進装置により駆動されるため、小容量の蓄電装置を利用可能にして、航続距離を著しく向上させ、カーボンフリーの地球環境に優しい小型軽量の移動体を提供することができる。
以下、本発明の実施例による電気的流体圧変換型推進装置を組み込んだプラグインハイブリッド移動体(以下、単に「移動体」と称する)について図面に基づき詳細に説明する。以下の説明において、移動体10Aは乗用車タイプの電気自動車に適用したものとして例示されているが、本発明は、このタイプの電気自動車に限定されず、例えば、トラック、バス、自動2輪車、自動3輪車、電気機関車、鉄道移動体、特殊装備車及びサーボモーター搭載機関車等の移動体、油圧ショベル及びブルドーザ等の建設機械、トラクター、コンバイン等の農林業機械、戦車等の特装移動体、船舶、潜水艦、航空機、宇宙往還機等の移動体に利用される。
図1に示した実施例において、移動体10Aは、移動体10Aに推進力を供給する電気的圧力変換型推進装置12(以下、「推進装置12」と称する)と、推進装置12から供給された推進力を複数の駆動輪14からなる推進手段に伝達する出力装置16とを備える。出力装置16は推進装置12の推進力を選択的に遮断若しくは締結するクラッチCLと、推進装置12の推進力を複数の走行速度にシフトするトランスミッションTMと、トランスミッションTMの出力を駆動輪14伝達するためのプロペラシャフトPSを備える。プロペラシャフトPSはディファレンシャル18及びアクスル20を介して駆動輪14を駆動する。
出力装置16はディファレンシャル18に隣接して配置されたモータ発電機(MG)22を備える。移動体10Aの回生エネルギーに応答してモータ発電機22から出力された発電電力はパワーコンバータ24により交直変換されて蓄電装置26に蓄電される。蓄電装置26はリチウムイオンバッテリ、Ni−MH電池(ニッケルー水素電池)、又はコンデンサバンク等の二次電池から構成される。なお、移動体10Aの加速時にはパワーコンバータ24で蓄電装置26の直流出力を交流電力に変換してMG22をモータとして機能させる。
パルス電源28は蓄電装置26からの供給電力から所定周期(例えば、50〜2000ヘルツ)のパルス電流を生成する。パルス電源28は外部電源接続用の外部電源用インターフェース30に接続される。外部電源用インターフェース30は、例えば移動体10Aの停車中に又は夜間の休憩中に、外部電源32のソケットに接続するための電源プラグPgを備える。外部電源用インターフェース30は外部電源の電圧を降圧するための変圧器Tr1を備え、降圧された商用電力はA/D変換器34で直流出力に変換されて蓄電装置26を介してパルス電源28に供給される。このように、夜間の就寝中に外部電源32から外部電力の供給があると、外部電力はA/D変換器34で交流電力から直流電力に変換されて蓄電装置26に蓄電され、その直流出力がパルス電源28に出力される。
推進装置12は、トランスミッションTMに連結された出力軸を有する回転式流体機械40と、該回転式流体機械40により駆動されるオルタネータ等からなる発電機80とを備える。発電機80から出力された交流電力はパワーコンバータ24で直流出力に変換して蓄電装置26に蓄電される。したがって、蓄電装置26には回転式流体機械40の作動中に発電機80から常時電気エネルギーが補充される。このため、少容量の蓄電装置26の採用を可能にしてプラグインハイブリッド移動体10Aの航続距離を飛躍的に向上させることができる。
回転式流体機械40は、前記出力軸に推進力を発生させる膨張機として機能する第1回転機械部(図示せず)と、モータモード及びポンプモードで機能する第2回転機械部(図示せず)とを有する電気的回転式流体機械40Aを備える。回転式流体機械40には超臨界流体発生器42とロータリ加圧ポンプ44と発電機80が同心的に配列される。推進装置12は、高圧作動流体を圧力エネルギーとして貯蔵するアキュムレータ46と、リサーバとして機能して低圧作動流体を貯蔵する低圧貯蔵タンク48とを備える。ロータリ加圧ポンプ44のインレットd1は低圧貯蔵タンク48に接続され、インレットd2は切替制御弁50を介してアキュムレータ46と、回転式流体機械40の第2回転機械部のインレットa2に接続されている。第2回転機械部のインレットa2は逆止弁52を介して低圧貯蔵タンク48に接続されている。回転式流体機械40の第2回転機械部のアウトレットb2が逆止弁54を介して超臨界流体発生器42のインレットc1に接続されている。超臨界流体発生器42のアウトレットc2には超臨界流体発生器42内の超臨界流体の圧力を制御するための開閉制御弁56が接続される。即ち、開閉制御弁56は周期的に開閉作動し、超臨界流体の生成時には閉状態とされ、超臨界流体の供給時には解放状態とされる。開閉制御弁56は周期的に解放されて、超臨界流体が回転式流体機械40の第1回転機械部のインレットa1に供給され、爆発的に膨張して推進力を発生する。膨張後の低温低圧作動流体はアウトレットb1から排出されて冷却器/凝縮器58で冷却液化されて低圧貯蔵タンク48に回収される。
図2より明らかなように、超臨界流体発生器42は、回転式流体機械40に対してこれと同心的に連結された円筒状リアクタケーシング1100を備える。図2に示すように、円筒状リアクタケーシング1100には、円筒状リアクタケーシング1100の内側とケーシング1100の中央内周部1114の径方向外側に形成されたセラミック等の絶縁耐熱層1116と、絶縁耐熱層1116の内側に形成されていて飽和蒸気発生ゾーンZ1と、過熱蒸気発生ゾーンZ2と、超臨界流体発生ゾーンゾーンZ3とを有するアーク放電発生室1118が形成されている。円筒状リアクタケーシング1100の中央内周部1114は回転式流体機械40の出力軸を通過可能にするための直径を有する内周壁部1114を備える。
超臨界流体発生器42の吸入ポート1102は、径方向壁部1120に延びていて、径方向壁部1120には周方向に延びる複数の開口部1122を有する。アーク放電発生室1118のコーナー部1118a、1118bには一対のアーク電極1124,1126がそれぞれ配置される。一対のアーク電極1124,1126はパルス電源28に接続される。パルス電源28は、例えば、日本国特許第2582956号に開示されたような回路構成やその他の公知のインバータ回路が用いられる。パルス電源28は、コントローラ(図示せず)から出力されたパルス周期指令(タイミング)信号に応じて予め定められた周期(例えば、スタート時には100〜2000ヘルツの周期のパルス電流を供給し、所定の高温状態に達した後には、例えば、50〜100ヘルツ程度の周期)のパルス電流を一対のアーク電極1124,1126に供給する。パルス電流は50A〜200Aのピーク電流となるよう設定されるが、本発明はこれらの数値に限定されるものではなく、移動体の規模その他のパラメータに応じて適宜設計変更可能である。パルス電流の周期はアーク放電発生室1118の温度が、例えば、850℃〜1500℃の範囲になるような値に設定してもよい。その場合、ケーシング1100には温度センサ(温度センサS2に対応)1132が装着され、温度信号Tがコントローラ60(図1参照)に供給され、パルス電力のパルス幅の制御用に利用されてもよい。
アーク放電発生室1118には、一対のアーク電極1124,1126の間に介在する多数のアーク放電球体1134が充填され、これらアーク放電球体1134の隙間はアーク放電空間1136として作用する。アーク放電球体1134は、飽和蒸気発生ゾーンZ1,過熱蒸気発生ゾーンZ2及び超臨界流体発生ゾーンZ3の広域にて高密度のアーク放電を発生させる。飽和蒸気発生ゾーンZ1において、導電水等の作動流体が通電してジュール熱により飽和蒸気が瞬時に発生する。過熱蒸気発生ゾーンZ2において、飽和蒸気が順次広域で発生するアーク放電と接触して瞬時に過熱蒸気となる。アーク放電発生室1118の下流側に流れるにしたがって、超臨界流体発生ゾーンZ3において、過熱蒸気はさらにアーク放電の影響下で高温高圧となり超臨界水が生成される。アーク放電球体1134としては、タングステンボール、或いは、カーボンボールの表面にクロム、モリブデン、タングステン等の導電性金属をコーティングしたものが用いられる。アーク放電は、アーク放電球体1134の互いに隣接して対面する球面部分で発生しやすく、アーク放電球体1134が5mm〜30mm程度の直径を有する場合に最も頻繁に発生する。アーク放電は、パルスアーク電圧を周期的に発生させるパルス電流の電圧がハイレベルとローレベルとの間で周期的に変化することでより頻繁に発生する。アーク放電発生室1118に隣接してデミスター部1106が配置され、デミスター部1106には耐熱性の金属ワイヤー等から形成されたデミスター1110が充填される。電磁開閉弁56が所定周期で開弁されると、デミスター1110を通過した超臨界水Wgはフィルター1142で濾過された後、アウトレット1140から回転式流体機械40のインレットa1に供給される。
上記構成において、作動流体としては、例えば、純水に微量の硝酸リチウムを添加して所定の電気抵抗を有するように調整された導電水が用いられる。なお、作動流体としては、導電水の他に、単純な水、炭酸ガス、水と炭酸ガスの混合流体、水とアセトン(50%:50%の比率)の混合流体、導電水とアセトン(50%:50%の比率)の混合流体やその他の作動流体を用いても良い。
超臨界流体発生器42には圧力センサS1と温度センサS2とが装着されていて、圧力センサS1から検出された超臨界流体の圧力を表示する圧力信号と温度センサS2(図2において符号“1132”と対応)から検出された超臨界流体の温度を表示する温度信号Tがコントローラ60に送信される。アキュムレータ46と低圧貯蔵タンク48にはそれぞれ圧力センサS3,S4が装着されていて、それぞれに貯蔵されている加圧作動流体と低圧作動流体の圧力をそれぞれ検出して、これらの圧力信号がコントローラ60に送信される。コントローラ60には、さらに、アクセルペダル70と、ブレーキペダル72と、シフトレバー74の位置センサS5,S6,S7が接続されていて、アクセルペダル70のアクセル位置の検出信号と、ブレーキペダル72のブレーキ位置の検出信号と、シフトレバー74のシフト位置の検出信号が運転パラメータとしてコントローラ60に送信される。駆動輪14に近接して駆動輪の回転速度を社則信号として検出する車速センサS8が移動体10のフレーム(図示せず)に装着されていて、車速信号を運転パラメータとしてコントローラ60に送信する。入力装置62はカレンダー信号や、温度や圧力等のパラメータ設定信号を基準信号としてコントローラ60に入力する。コントローラ60は中央演算装置(CPU)、RAM,ROMを有するマイクロコンピュータからなり、検出信号や、運転パラメータ及び設定信号に応じて内蔵されている制御プログラムに沿って各種の指令信号を出力する。
回転式流体機械40とロータリ加圧ポンプ44とは、例えば、同一発明者の発明による特願2011−290720号(発明の名称:回転式流体機械)に開示された回転式流体機械、或いは、同一発明者の発明による平成24年8月20日特許出願の特願2012−195513号(発明の名称:回転式流体機械)に開示された「回転式流体機械」及び「過給器」の構造とそれぞれ同一の構造を有するため、これらの詳細な説明を省略する。三方切替制御弁50は、例えば、日本国特許第3415824号(米国特許公開公報第2004/0050624号)に開示されたものと構造的に殆ど類似した構造の制御弁を採用することができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
次に、純水に微量の硝酸リチウムを添加して所定の電気抵抗を有するように調整された導電水を作動流体として採用した移動体10Aの作用について説明する。アキュムレータ46には加圧された導電水が貯蔵されており、低圧貯蔵タンク48には低圧の導電水が貯蔵されているものとする。
移動体10Aの作用において、移動体10Aの停車時に外部電源用インターフェース30の電源プラグPgが外部電源32のソケットに装着されると、変圧器Tr1の出力側に設置された電圧センサ(図示せず)から電圧信号がコントローラ60に出力され、コントローラはこの電圧信号に応答してパルス電源28をエネーブル状態にする。電源プラグPgを経由して取り出された商用電力は変圧器Tr1により電圧が所定電圧になるように降圧された後、AC/DC変換器34で直流電力に変換されて蓄電装置26を介してパルス電源28に供給される。パルス電源28から周期的なパルス電流が超臨界流体発生器42に供給されると同時に、コントローラ60から三方切替制御弁50に指令信号が出力される。この時、三方切替制御弁50が作動して、アキュムレータ46の高圧導電水は回転式流体機械40のインレットa2から第2回転機械部を経由して逆止弁54を介して超臨界流体発生器42に供給される。その結果超臨界流体発生器42では周期的なパルス電流に応答して発生したアーク放電により高圧導電水から超臨界水が発生する。この超臨界水は回転式流体機械40のインレットa1から第1回転機械部に流入して爆発的に膨張して機械エネルギーとしての推進力に変換される。この時、回転式流体機械40の第1回転機械部に同期して第2回転機械部はポンプモードで作動するため、第2回転機械部は逆止弁52を介して低圧貯蔵タンク48から低圧導電水を吸引・加圧して高圧導電水を生成する。したがって、アキュムレータ46の高圧導電水と第2回転機械部の高圧導電水とが合流し、この合流した高圧導電水は逆止弁54を介して超臨界流体発生器42に供給される。この工程において、アキュムレータ46の高圧導電水と第2回転機械部の高圧導電水との流量比率は、コントローラ60から三方切替制御弁50に出力される指令信号によって所定値となるように設定することができる。この時、アキュムレータ46の高圧導電水の供給量が制限されるように三方切替制御弁50の開度を制御しても良い。この場合、第2回転機械部によって生成される高圧導電水の供給比率が増大するため、超臨界流体発生器42には推進力を発生させるために必要なボリュームの超臨界水を発生させるための高圧導電水が供給される。この時、アキュムレータ46の高圧導電水の供給量が制限されているため、アキュムレータ46は比較的に長期に亘って高圧導電水を供給することが可能となる。
超臨界流体発生器42は、上述の如く、パルス電源28からパルス電流が供給されているため、導電水は通電によるジュール熱の発生により飽和蒸気発生ゾーンZ1で瞬時に飽和蒸気となり、該飽和蒸気は過熱蒸気発生ゾーンZ2でアークと接触して瞬時に過熱蒸気となり、過熱蒸気は超臨界流体発生ゾーンZ3で広域のアークと接触して高温高圧となる。この時、超臨界流体発生器42のインレット側には逆止弁54によって過熱蒸気の逆流が阻止され、一方、超臨界流体発生器42のアウトレット側は開閉制御弁56が閉状態となっているため、過熱蒸気の温度と圧力が急上昇して瞬時に超臨界水が発生する。
この状態において、コントローラ60から開閉制御弁56の開弁指令が出力される。すると、超臨界流体発生器42から超臨界水が噴出して回転式流体機械40のインレットa1から第1回転機械部に流入して爆発的に膨張して出力軸に機械エネルギーとしての推進力が発生する。この推進力の一部は発電機80を駆動しながら、出力装置16を介して推進手段としての駆動輪46に伝達され、移動体10Aが推進する。
移動体10Aの推進中において、アキュムレータ46の内部圧力が所定値以下に低下すると、コントローラ60から指令信号が出力されて三方切替制御弁50が切替わってロータリ加圧ポンプ44がアキュムレータ46と連通する。この時、ロータリ加圧ポンプ44は低圧貯蔵タンク48から低圧導電水を吸引・加圧して得た高圧導電水をアキュムレータ46に圧送して貯蔵する。高圧導電水の貯蔵の結果、アキュムレータ46の圧力が上限圧力レベルに達すると、圧力センサS3からの圧力検出信号に応答して、コントローラ60から圧力エネルギー貯蔵完了を表す指令信号が出力されて、三方切替制御弁50によってアキュムレータ46とロータリ加圧ポンプ44との流路が遮断される。この時、三方切替制御弁50によってロータリ加圧ポンプ44のアウトレットd2は回転式流体機械40の第2回転機械部のインレットa2と連通する。したがって、ロータリ加圧ポンプ44で生成した高圧導電水は回転式流体機械40の第2回転機械部及び逆止弁54を介して超臨界流体発生器42に継続的に供給される。このように、低圧貯蔵タンク48と、アキュムレータ46と、ロータリ加圧ポンプ44と、回転式流体機械40の第2回転機械部と、三方切替制御弁50とは高圧作動流体を超臨界流体発生器42に連続的に供給するための高圧作動流体供給源として機能する。
移動体10Aの運転に当って、シフトレバー74を操作して、アクセルペダル70を踏み込むと、出力装置16のクラッチCLが締結して推進力がプロペラシャフトPS及びディファレンシャル18を介して駆動輪14に伝達され、移動体10Aが推進する。アクセルペダル70をさらに踏み込むと、コントローラ60からの指令信号により、パワーコンバータ24が作動して蓄電装置26の直流出力を交流出力に変換してMG22に供給して、MG22をモータモードにて駆動してトルクアシストをし、移動体10Aの加速を促進する。
移動体10Aの推進中にブレーキペダル72を踏み込むと、MG22は減速時に発生する回生エネルギーを利用して発電する。発電電力はパワーコンバータ24を介して蓄電装置26に蓄電される。
上述したように、超臨界流体発生器42ではアーク放電の発生により高圧導電水から発生した超臨界水は温度が、少なくとも、600℃〜800℃において350bar前後の超臨界圧となり、この超臨界水が回転式流体機械40で爆発的に膨張する。このとき発生する爆発圧力はロータリピストンの回転方向において10平方cm当り1000Kg前後に達する。回転式流体機械40のロータリピストン本体の圧力作用面は少なくとも100平方cm以上となるため、ロータリピストンの回転方向において10000Kg以上の圧力に達する。このため、移動体10Aは大きな推進力を得ることができる。なお、作動流体としては、導電水の他に、単純な水、炭酸ガス、水と炭酸ガスの混合流体、水とアセトン(50%:50%の比率)の混合流体、導電水とアセトン(50%:50%の比率)の混合流体やその他の作動流体を用いても良い。
上述のように、電気的流体圧力変換型推進装置12が高圧作動流体供給源を備えていることで、超臨界流体発生器42に連続的に高圧作動流体を供給することが可能となり、パルス電源28からのパルス電流を超臨界流体発生器42に供給することにより電気的流体圧力変換型推進装置12が連続的に推進力を発生させる。この結果、小容量の蓄電装置26によって、移動体10Aの航続距離を飛躍的に向上させることができる。また、推進力の一部を利用して発電機80を駆動することにより発電し、交流電力をパワーコンバータ24で直流出力に変換して蓄電装置26に供給する。このため、蓄電装置26には電気エネルギーが常に補充され、少容量の蓄電装置24の採用を可能にして小型軽量、低コストのプラグインハイブリッド移動体の実用化が可能となる。
本発明の各実施例によるプラグインハイブリッド移動体が記載されたが、本発明はこれら実施例に示された構成に限定されず、様々な変更が可能である。例えば、発電機80は回転式流体機械40と同心的に配列したものとして図示したが、発電機80を出力装置16と並列に配置してプーリーとタイミングベルト等のトルク伝達手段を介して駆動するように変更してもかまわない。その際、トルク伝達手段にクラッチ装置を組み込んで、ECUその他のコントローラにより移動体の低負荷運転状態において該クラッチ装置をONし、高負荷運転時にはOFFしても良い。
12 電気的流体圧変換型推進装置;16 出力装置;18 ディファレンシャル;22 モータ発電機;24 パワーコンバータ;26 蓄電装置;28 パルス電源;32 外部電源;34 A/D変換器;46 アキュムレータ;48 低圧貯蔵タンク;40 回転式流体機械;42 超臨界流体発生器;50 三方切替制御弁;56 開閉制御弁;58 冷却器;60 コントローラ; 62 入力装置;80 発電機
Claims (5)
- 蓄電装置と、
前記蓄電装置の出力電力から所定周期のパルス電流を供給するパルス電源と、
前記パルス電流に応答してアーク放電を発生させることにより高圧作動流体から超臨界流体を発生させる超臨界流体発生器と、
前記高圧作動流体を前記超臨界流体発生器に連続的に供給する高圧作動流体供給源と、
前記超臨界流体を膨張させて推進力に変換する回転式流体機械と、
前記回転式流体機械により駆動されて発電する発電機と、
前記発電機の出力電力を直流出力に変換して前記蓄電装置に蓄電させるAC/DC変換器と、
前記推進力を推進手段に伝達する出力装置と、
を備えることを特徴とする電気的流体圧変換型推進装置。 - 前記高圧作動流体供給源が作動流体を貯蔵する低圧貯蔵タンクと、前記回転式流体機械により駆動されて前記低圧貯蔵タンクから前記作動流体を吸引・加圧して前記高圧作動流体を生成するロータリ加圧ポンプと、前記高圧作動流体を貯蔵するアキュムレータと、前記アキュムレータの前記高圧作動流体と前記ロータリ加圧ポンプの前記高圧作動流体とを選択的に前記超臨界流体発生器に供給する切替制御弁とを備えることを特徴とする請求項1記載の電気的流体圧変換型推進装置。
- 前記回転式流体機械が前記超臨界流体を膨張させて前記推進力に変換する第1回転機械部と、前記ロータリ加圧ポンプから独立して前記作動流体を吸引・加圧して高圧作動流体を生成して前記超臨界流体発生器に供給する第2回転機械部とを備えることを特徴とする請求項2記載の電気的流体圧変換型推進装置。
- 前記超臨界流体発生器が、リアクタケーシングと、前記リアクタケーシングに形成されていて飽和蒸気発生ゾーンと、過熱蒸気発生ゾーンと、超臨界流体発生ゾーンとを有するアーク放電発生室と、前記パルス電源に接続されていて前記アーク放電発生室でアーク放電を発生させる複数のアーク電極と、前記アーク電極の間に介在していて前記飽和蒸気発生ゾーン、前記過熱蒸気発生ゾーン及び前記超臨界流体発生ゾーンの広域にて前記アーク放電を発生させる複数のアーク放電球体とを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電気的流体圧変換型推進装置。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の電気的流体圧変換型推進装置により駆動される移動体。
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