JP5220520B2 - 粒子線治療装置 - Google Patents
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例えば、特開平11−47287号公報(特許文献1)には、患者の周りに回転自在な放射線照射部を有する放射線治療用回転照射室において、放射線照射部の移動経路を挟んで配置される固定側リングレールおよび移動側リングレールと、この固定側および移動側リングレールによって形成される「下側が水平なかまぼこ型の通路内」に配置される「互いにリンクで屈曲自在に連結された多数の板」からなる連続した移動床と、放射線照射部の回転と同期して移動床を移動させると共に、移動側リングレールを逆方向に同じ量だけ回転させる駆動手段とを備えた放射線治療用回転照射室が示されている。
例えば、粒子線照射部を治療用ベッドの下側に回転するとき、粒子線照射部は治療用ベッドと平行して下側に配置されている張り出しデッキと干渉(接触や衝突すること)してしまうが、それに対し、張り出しデッキの床を張り出し/退避できる移動床構造や、多数の板からなる連続したかまぼこ型の移動床にすることによって干渉を防ぐ方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
そして、治療用ベッド、治療用ガントリ、患者の外形座標データベースを用いて、治療用ベッドの回転角度位置に対する治療用ガントリの回転運動できる許容範囲をあらかじめ演算することによって、患者あるいは治療用ベッドに治療用ガントリが衝突しないよう工夫することが提案されている。
なお、JOG運転とは、操作ボタンを押している間だけ操作対象(駆動対処)を動かす運転のことである。
また、特許文献3で示される治療計画で作成した治療装置の目標軌道(姿勢)については、オフラインであらかじめ演算を実施することができるので、移動床以外についても、従来の3次元CADの干渉チェック機能等と同様な方法によって事前に確認でき、衝突を防ごうとしている。
JOG運転時の衝突防止(即ち、回転ガントリ、治療用ベッド、画像取得装置等の衝突防止)は、操作者が目視で確認するほか、エリア分割方式や座標空間分割方式が実施されている場合がある。
エリア分割方式とは、回転ガントリ、治療用ベッド、画像取得装置などの被駆動部が配置されるエリアをいくつかに分割して、同じエリアに2つ以上の被駆動部が存在する場合は干渉の恐れありとして警告を出す方式である。
即ち、治療装置の座標空間をいくつかの部分空間に分割し、各部分空間において、少しでも被駆動部が干渉する可能性がある場合は警告を出す。
例えば、回転ガントリの回転角度を分割(例えば、0度〜90度、90度〜180度・・・などに分割)して、分割したそれぞれの領域において、「粒子線照射部が通過しうる領域」と、「例えば治療用ベッドのX座標を分割して、分割したそれぞれの領域において治療用ベッドが通過しうる領域」とを比較して、粒子線照射部と治療用ベッド干渉の可能性が少しでもある場合は、データベースに警告を出す領域として登録する。
警告が出る可能性のある領域では、操作者は警告システムのインターロックをはずし、目視で確認しながら低速で運転(即ち、被駆動部の運転操作)しなければならず、作業が煩わしいという問題点もあった。
また、衝突防止に近接センサや監視カメラを用いることも考えられる。
近接センサあるいは監視カメラを用いても、効果的に機能するためには十分な個数が必要となり、個数増加にともない配線もしくは通信方法等を考える必要が生じる。
また放射線に対するロバスト(robust:強健)性も保障しなければならず、実現は容易ではない。
更に、被駆動部の制動距離を考慮して球モデル半径(大きさ)を決めるので、被駆動部の制動距離に応じて決め細かくセンシングすることができる。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による粒子線治療装置の治療室を表した概念図である。
粒子線治療装置の治療室は、回転ガントリ1、回転ガントリ1と共に回転運動し、角度を変えて粒子線を患者7の病巣(患部)に照射可能な粒子線照射部2、患者7を搭載して病巣を照射中心であるアイソセンタ6へ合致させるために回動可能な治療用ベッド3、例えば、回転ガントリ1によって下方からアイソセンタ6へ向けて粒子線を照射できるように粒子線照射部2を回転移動したときに、粒子線照射部2が床と干渉(接触や衝突)しないように奥(図に示すy方向)へ退避が可能な移動床4、患者7の患部の画像を取得するための画像取得手段(画像撮像装置)5などからなる。
なお、治療用ベッド3は、図示しない駆動制御装置によって、x方向(横方向)、y方向(奥行き方向)、z方向(高さ方向)への移動、およびx軸、y軸、z軸周りの回転移動も可能である。
また、移動床4および画像取得手段5は、y方向(奥行き方向)への移動が可能である。
また、回転ガントリ1と共に回転運動する粒子線照射部2は、必要に応じて粒子線の照射方向に沿って移動する。
図3は、実施の形態1による粒子線治療装置の被駆動部を球モデルによりモデル化した球モデル概念図であり、図3(a)は図1に相当する部分を、図3(b)は図3(a)のA部を拡大したものである。
図3では、例えば、粒子線照射部2をモデル化した粒子線照射部球モデル9および治療用ベッド3をモデル化した治療用ベッド部球モデル10を示している。
ここで、治療用ベッド部球モデル10は、治療用ベッド3に搭載されている患者7をも含む球モデルであってもよい。
なお、図3は、粒子線照射部球モデル9および治療用ベッド部球モデル10が複数の球でモデル化された場合を示している。
図4は、実施の形態1による球モデルを用いた干渉チェックの原理を説明するための模式図である。
放射線の一種である粒子線を用いた粒子線治療は、他の一般的な放射線(例えば、X線、ガンマ線)治療と同じように、粒子線を癌などの患部に照射し、細胞のDNAなどを破壊することによって治療する方法である。
したがって、本装置を用いた治療においても、治療前準備を行う治療計画段階と実際に粒子線を行う治療段階がある。
その後、実際の治療段階においては、患者7を治療室の治療用ベッド3に固定し、画像取得装置5によって患者7の患部の画像を治療画像として取得する。
治療計画段階で作成した参照画像に基づいて、治療画像中の患部を特定し、治療用ベッド3を回動して粒子線の照射中心であるアイソセンタ6に患部の位置と姿勢を合わせて治療を行う。
そのため、図2に示したように、制御装置8によって、粒子線照射部2を取り付けた回転ガントリ1、治療用ベッド3、移動床4および画像撮像手段5のそれぞれを駆動制御できるように構成されている。
制御装置8は、目標座標を入力して動かす位置決め制御モードと、操作ボタンを押している間だけ特定軸だけを一定方向に動かすいわゆるJOG運転モードとを備える。
前述したように、図3は、粒子線照射部2に対応した(粒子線照射部2を覆い包む)粒子線照射部球モデル9と、治療用ベッド3に対応した(治療用ベッド3および患者7を覆い包む)治療用ベッド部球モデル10を示している。
本実施の形態おいては、各被駆動部(例えば、粒子線照射部2および治療用ベッド3など)は、単数もしくは複数の球によって球モデル化され、モデル化された球モデルの干渉をチェック(監視)することにより、各被駆動部の接触・衝突を防止するものである。
前述したように、図4は、実施の形態1による球モデルを用いた干渉チェックの原理を説明するための模式図であり、図4(a)は球モデルAと球モデルBが干渉していないときを、図4(b)は球モデルAと球モデルBが干渉しているときを示している。
なお、図4において、例えば、球Aは治療用ベッド3の球モデルを、球Bは粒子線照射部2の球モデルを概念的に示している。
また、図4において、“rA”は球Aの半径、“rB”は球Bの半径、“O”は座標系の原点である。
中心間距離が2つの球の半径の和よりも大きければ干渉することはない。
2つの球の半径の和が中心間距離と一致したとき、2つの球は接する(干渉の境界)。
この球モデルは、あたかも近接センサのセンシング範囲を表しているかのごとく働くので、球モデルの半径は制動距離や安全率を考慮して設定すればよい。
このように、球モデル同士の干渉チェックは非常に簡単に行えるため、本方式は高速に演算が要求されるリアルタイム処理に適している。
制御装置8には、各被駆動部の現在位置、姿勢、大きさ等の幾何学的情報が記憶されている。
球モデルは、これら幾何学的情報から対応する被駆動部に張り付いて動くかのように、その中心座標を計算する。
治療室に張り付いた固定座標系と、粒子線照射部2に張り付いた移動座標系を考える。
球モデル9は粒子線照射部2に張り付いているため、粒子線照射部2に張り付いた移動座標系でその中心座標を記憶する。
回転ガントリ1を駆動すると、制御装置8は回転ガントリの状態量(この場合回転角度)が判り、記憶されている幾何学的情報から、固定座標系から移動座標系の座標変換(式、行列、写像)が求まる。
前述した干渉チェックの原理(図4)を用いて、球モデル間の干渉をチェックする。
なお、球モデル間の干渉をチェックするための座標系は、実座標系である固定座標系でなくともよく、実座標系を変換して得られる任意の新たな座標系で定義されていてもよい。
このように、本実施の形態においては、制御装置8に各被駆動部に対応した球モデルの干渉をチェックする機能を設けたことにより、リアルタイムに(即ち、駆動と並行して)干渉をチェックが行え、治療計画時、治療時、またはメンテナンス時、必要に応じて行われるJOG運転等において、被駆動部同士の衝突防止がなされる。
という顕著な効果を奏する。
従って、被駆動部のJOG運転を行ったときに対しても、リアルタイムに(即ち、駆動中に)被駆動部間の干渉をチェックでき、衝突を防止できる。
また、エリア分割方式のように保守的(安全過保護的)に過剰な警告を出すことがないので、作業者がインターロックをはずして目視しながら低速で運転する、といった煩わしさがない。
また、本実施の形態による粒子線治療装置は、単一または複数の球によって、他の被駆動部、例えば、移動床や画像取得手段の全部または一部を覆い包むあらたな球モデルをそれぞれ生成する球モデル生成手段を更に備え、球モデル干渉監視手段は、すべての球モデルの干渉を監視するようにしてもよい。
実施の形態1で前述したように、球モデルはあたかも近接センサのセンシング範囲を表しているかのごとく働く。
従って、球モデルの半径は、被駆動部の制動距離や安全率を考慮して設定すればよい。
例えば、回転ガントリ1と治療用ベッド3とを比べると、圧倒的に回転ガントリ1の方が重く慣性があり、したがって制動距離は回転ガントリ1の方が長い。
したがって、回転ガントリ1と共に動く粒子線照射部2の球モデル9の半径を、他の球モデルの半径よりも大きくすることは合理的である。
球モデルの配置場所や個数は、被駆動部の形状に合わせて、干渉の可能性がある部分を覆うように決定する。
このように、被駆動部の制動距離を考慮して球モデル半径を決めたことにより、被駆動部の制動距離に応じて決め細かくセンシングすることができる。
実施の形態3では、さらに工夫して球モデルを定義する。
実施の形態2でも述べたが、粒子線治療装置において、回転ガントリ1は重くて慣性があり、治療用ベッド3など他の被駆動部に比べて圧倒的に制動距離が長い。
したがって、回転ガントリ1の移動方向に座標軸がくるような座標系を考える。
具体的には、回転ガントリ1と同心の円柱座標系20を考えて、この円柱座標系上で球を定義する。
回転ガントリ1と同心の円柱座標系20の座標軸は、半径方向r、角度方向θ、奥行き方向yの3軸からなる。
これら座標の単位長も制動距離と関連して定義すればよい。
粒子線照射部2は、回転ガントリ1とともに動く角度方向θと、半径方向rに動き、奥行き方向yへは動かない。
また、制動距離は回転ガントリ1とともに動く角度方向θが長いので、θ軸の単位長を制動距離に合わせて長くすればよい。
円柱座標系20上で定義した球モデルの数式は、以下の式(1)のとおり表される。
また、円柱座標系20上で定義される球モデルは、前掲の式式(1)で表される。
3 治療用ベッド 4 移動床
5 画像取得手段 6 アイソセンタ
7 患者 8 制御装置
9 粒子線照射部球モデル(第一の球モデル)
10 治療用ベッド部球モデル(第二の球モデル)
20 円柱座標系
Claims (5)
- 回転ガントリと共に回転駆動され、患者の患部に粒子線を照射する粒子線照射部と、
前記患者を搭載し、粒子線の照射対象である前記患者の病巣が前記粒子線照射部から照射される粒子線のアイソセンタに合致するように駆動される治療用ベッドと、
前記病巣の画像を取得する画像取得手段と、
単一または複数の球によって、前記粒子線照射部の全部または一部を覆い包む第一の球モデルを生成する第一の球モデル生成手段と、
単一または複数の球によって、前記治療用ベッドの全部または一部を覆い包む第二の球モデルを生成する第二の球モデル生成手段と、
前記第一の球モデルと前記第二の球モデルの干渉を監視する球モデル干渉監視手段とを備えた粒子線治療装置において、
前記第一の球モデルは、前記第二の球モデルより大きいことを特徴とする粒子線治療装置。 - 前記第一の球モデルおよび前記第二の球モデルは、実座標系を変換して得られる新たな座標系で定義されていることを特徴とする請求項1に記載の粒子線治療装置。
- 単一または複数の球によって、前記画像取得手段を覆い包む第三の球モデルを生成する第三の球モデル生成手段を備え、
前記球モデル干渉監視手段は、前記第一、第二および第三の球モデルの干渉を監視することを特徴とする請求項1に記載の粒子線治療装置。 - 前記第一の球モデルおよび前記第二の球モデルは、前記回転ガントリと同心の円柱座標系で定義されていることを特徴とする請求項1に記載の粒子線治療装置。
- 前記円柱座標系で定義される球モデルは、以下の式で表されることを特徴とする請求項4に記載の粒子線治療装置。
(r−r 0 ) 2 +(θ−θ 0 ) 2 +(y−y 0 ) 2 =r q 2
ただし、r q は球モデルの半径、(r 0 、θ 0 、y 0 )は球の中心座標
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