本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による位置推定装置の概略図である。この発明の実施の形態1による位置推定装置100は、2次元通信シート10と、端子11〜26と、同軸ケーブル27〜42と、位相測定器50と、クロック発生器60と、位置推定器70と、データバス80と、信号線90とを備える。
2次元通信シート10は、略四角形の平面形状を有し、平板形状からなる。端子11〜14は、2次元通信シート10の周縁10Aに等間隔に配置される。端子15〜18は、2次元通信シート10の周縁10Bに等間隔に配置される。端子19〜22は、2次元通信シート10の周縁10Cに等間隔に配置される。端子23〜26は、2次元通信シート10の周縁10Dに等間隔に配置される。
そして、端子11〜26は、一般的には、隣接する2つの端子の間隔が2次元通信シート10を伝搬する搬送波の波長λよりも短い間隔になるように配置され、好ましくは、隣接する2つの端子の間隔がλ/2の間隔になるように配置される。
また、端子11〜26は、2次元通信シート10の平面内の中心を通り、かつ、2次元通信シート10の1つの辺に平行な軸AXに対して対称に配置される。
このように、端子11〜26を軸AXに対して対称に配置することによって、搬送波の対向する周縁10A,10C;10B,10Dでの反射波の位相のぶれを可能な限り相殺して、位相測定器50による位相の測定の誤差を小さくできる。
同軸ケーブル27〜42は、それぞれ、端子11〜26を位相測定器50に接続する。データバス80は、位相測定器50および位置推定器70に接続される。信号線90は、位相測定器50およびクロック発生器60に接続される。
2次元通信シート10は、クライアント端末110から出射された搬送波を伝搬させる。この場合、2次元通信シート10は、周縁10A〜10Dで反射しながら搬送波を伝搬させる。
端子11〜26は、2次元通信シート10を伝搬した搬送波を取り込む。同軸ケーブル27〜42は、それぞれ、端子11〜26によって取り込まれた搬送波を位相測定器50へ導く。
位相測定器50は、同軸ケーブル27〜42を介して16個の搬送波wv1〜wv16を受け、クロック発生器60から信号線90を介して基準クロックを受ける。そして、位相測定器50は、基準クロックと搬送波wv1〜wv16とを比較することにより搬送波wv1〜wv16の位相θ1〜θ16を測定し、その測定した位相θ1〜θ16をデータバス80を介して位置推定器70へ出力する。
クロック発生器60は、基準クロックを発生し、その発生した基準クロックを信号線90を介して位相測定器50へ出力する。
位置推定器70は、位相測定器50からデータバス80を介して位相θ1〜θ16を受け、その受けた位相θ1〜θ16に基づいて、後述する方法によってクライアント端末110の2次元通信シート10上における位置を推定する。
データバス80は、位相測定器50によって測定された位相θ1〜θ16を位置推定器70へ導く。
信号線90は、クロック発生器60が発生した基準クロックを位相測定器50へ導く。
図2は、図1に示す2次元通信シート10の斜視図である。また、図3は、図2に示す線III−III間における2次元通信シート10の断面図である。
2次元通信シート10は、誘電体部1と、導体部2,3とを含む。誘電体部1は、たとえば、厚みがほぼ一定であるプラスチックまたは発泡材からなり、シート状の形状を有する。
導体部2は、たとえば、金属からなり、誘電体部1の一方の一主面にメッシュ状に形成される。この場合、メッシュ状の導体部2によって囲まれる開口部2Aは、正方形の形状を有し、複数の開口部2Aは、2次元通信シート10の外界における電磁波長よりも短い間隔で配置されている。
導体部3は、たとえば、金属からなり、誘電体部1の他方の一主面(導体部2が形成された面と反対面)の全面に形成される。
メッシュ状の導体部2は、外界とシート状の誘電体部1との相互電磁結合を弱める働きをするので、外界と誘電体部1との電磁結合が十分に弱いと仮定すると、シート状の誘電体部1の内部では、電磁波は、1/(με)1/2で伝搬する。この場合、μは、誘電体部1の透磁率であり、εは、誘電体部1の誘電率である。
開口部2Aは、2次元通信シート10の外界における電磁波長よりも短い間隔で配置されているので、各開口部2Aから漏れ出すエバネッセント波も、電磁波長よりも短い空間周期で電磁波位相が変化し、遠方まで伝搬する波動とはならない。
この場合の減衰係数は、exp(−(ε/ε0−1)1/2(ω/c)z)となる。ここで、ε0は、外界の誘電率であり、ωは、信号の角周波数であり、cは、外界における光速であり、zは、誘電体部1の導体部2が形成された面からの距離である。
したがって、εがそれほど大きくなくても、誘電体部1の薄い膜厚に対して、エバネッセント波のしみ出し領域を波長程度まで小さくすることができる。
このように、2次元通信シート10は、電磁波を1/(με)1/2で伝搬させるとともに、その一主面(導体部2が形成された面)からエバネッセント波をしみ出させる。
図4は、図1に示すクライアント端末110の構成図である。なお、図4は、クライアント端末110の底面側から見たクライアント端末110の構成図である。
クライアント端末110は、カプラ111と、信号生成器112と、発振器113と、信号線114,115とを含む。
クライアント端末110は、略円形の形状からなる。カプラ111は、円形形状からなり、クライアント端末110の底面の略中心に配置される。そして、カプラ111は、クライアント端末110が2次元通信シート10上に設置されると、2次元通信シート10の開口部2Aに接する。
信号線114は、信号生成器112をカプラ111に接続する。信号線115は、発振器113を信号生成器112に接続する。
カプラ111は、信号生成器112から信号線114を介して受けた変調波形に応じて、内蔵した電極(図示せず)のスカラーポテンシャルおよび/またはベクトルポテンシャルを変化させる。これによって、カプラ111は、搬送波を無指向性で2次元通信シート10中へ出射する。
ここで、スカラーポテンシャルの変化は、電位の変化に対応し、ベクトルポテンシャルの変化は、電流分布の変化、電束密度の変化および変位電流の分布の変化に対応する。
信号生成器112は、発振器113から信号線115を介して発振波形を受け、その受けた発振波形をクライアント端末110の識別記号(ID)によって変調し、クライアント端末110のIDからなる変調波形を生成する。そして、信号生成器112は、その生成した変調波形を信号線114を介してカプラ111へ出力する。
発振器113は、一定の周波数を有する発振波形を発振し、その発振した発振波形を信号線115を介して信号生成器112へ出力する。
信号線114は、信号生成器112によって生成された変調波形をカプラ111に導く。信号線115は、発振器113によって発振された発振波形を信号生成器112へ導く。
クライアント端末110の位置を推定するとき、発振器113は、発振波形を発振し、その発振波形を信号線115を介して信号生成器112へ出力する。
そして、信号生成器112は、発振器113から受けた発振波形をクライアント端末110のIDによって変調して変調波形を生成し、その生成した変調波形を信号線114を介してカプラ111へ出力する。
そうすると、カプラ111は、信号生成器112から受けた変調波形に応じて、内蔵した電極のスカラーポテンシャルおよび/またはベクトルポテンシャルを変化させる。
図5は、2次元通信シート10における搬送波の伝搬を示す概念図である。図1に示す端子15〜18が2次元通信シート10の周縁10Bに設置され、端子23〜26が2次元通信シート10の周縁10Dに設置され、クライアント端末110が2次元通信シート10上に配置される。この場合、端子15〜18,23〜26が2次元通信シート10の誘電体部1に接し、クライアント端末110のカプラ111が2次元通信シート10の開口部2Aに接する。
なお、図5に図示されていないが、端子11〜14,19〜22も、2次元通信シート10の誘電体部1に接している。
クライアント端末110のカプラ111は、信号生成器112から受けた変調波形に応じて、内蔵した電極(図示せず)のスカラーポテンシャルおよび/またはベクトルポテンシャルを変化させる。そうすると、2次元通信シート10の誘電体部1に電磁波が発生し、その発生した電磁波は、搬送波として2次元通信シート10の表面付近のみを伝搬する(図5の矢印ARW1,ARW2参照)。
そして、2次元通信シート10の周縁10Bまで伝搬した搬送波は、周縁10Bで反射されて2次元通信シート10を伝搬する(図5の矢印ARW3参照)。また、2次元通信シート10の周縁10Dまで伝搬した搬送波は、周縁10Dで反射されて2次元通信シート10を伝搬する(図5の矢印ARW4参照)。
このように、2次元通信シート10においては、クライアント端末110から出射された搬送波と、周縁10B,10Dで反射された反射波とが伝搬し、搬送波および反射波は、相互に干渉する。
そして、端子15〜18,23〜26は、2次元通信シート10の誘電体部1を伝搬して来た搬送波を取り込む。
なお、図5においては、図示されていないが、端子11〜14,19〜22も、2次元通信シート10の誘電体部1を伝搬して来た搬送波を取り込む。
図6は、端子11〜26とクライアント端末110との距離を示す図である。クライアント端末110を2次元通信シート10上の任意の位置に設置したときの端子11〜26とクライアント端末110との距離をそれぞれd1〜d16とすると、距離d1〜d16は、相互に異なる。
図7は、隣接する隣接端子間における搬送波の位相差を示す概念図である。なお、図7においては、2次元通信シート10の端で搬送波の反射がないものとしている。
クライアント端末110から出射された搬送波は、距離d1〜d16に応じた減衰と位相の遅れとが生じて端子11〜26に到達する。
従って、隣接する端子11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26から取り込まれた搬送波の隣接する端子11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間における位相差Δθ1〜Δθ12に基づいて、搬送波の発振源であるクライアント端末110の取り得る位置を計算すると、クライアント端末110の取り得る位置は、曲線L1〜L12の交点となる。
この場合、隣接する端子11,12間における搬送波の位相差がΔθ1であるので、d1−d2=k(Δθ1)λ/2π(kは正の整数)となる位置を示す曲線を演算すると、曲線L1が得られる。曲線L2〜L12の各々も、同様にして演算される。
そして、その演算した曲線L1〜L12の交点を求め、その求めた交点をクライアント端末110の位置と推定する。
従って、図1に示す位置推定器70は、2次元通信シート10の端における搬送波の反射がない場合、データバス80を介して受けた位相θ1〜θ16に基づいて、隣接する端子11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間における位相差Δθ1〜Δθ12を演算し、その演算した位相差Δθ1〜Δθ12が得られるときのクライアント端末110の2次元通信シート10上における位置を示す曲線L1〜L12を演算し、その演算した曲線L1〜L12の交点をクライアント端末110の2次元通信シート10上における位置と推定する。
図8は、隣接する隣接端子間における搬送波の他の位相差を示す概念図である。なお、図8においては、2次元通信シート10の端で搬送波の反射があるものとしている。
2次元通信シート10の端において搬送波が反射される場合、隣接する端子11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26から取り込まれた搬送波の隣接する端子11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間における位相差Δθ1’〜Δθ12’に基づいて、搬送波の発振源であるクライアント端末110の取り得る位置を示す曲線を演算すると、曲線L1’〜L12’となる。
そして、複数の曲線L1’〜L12’同士の複数の交点を演算し、それらの交点の重心をクライアント端末110の2次元通信シート10上における位置と推定する。
従って、図1に示す位置推定器70は、2次元通信シート10の端における搬送波の反射がある場合、データバス80を介して受けた位相θ1’〜θ16’に基づいて、隣接する端子11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間における位相差Δθ1’〜Δθ12’を演算し、その演算した位相差Δθ1’〜Δθ12’が得られるときのクライアント端末110の2次元通信シート10上における位置を示す曲線L1’〜L12’を演算し、その演算した曲線L1’〜L12’同士の複数の交点を演算し、更に、複数の交点の重心を演算し、その演算した重心をクライアント端末110の2次元通信シート10上における位置と推定する。
上述したように、実施の形態1においては、位置推定装置100は、複数の端子11〜26における搬送波の複数の位相を測定し、その測定した複数の位相に基づいて、隣接端子11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間における搬送波の位相差を演算し、その演算した位相差が得られるときのクライアント端末110の取り得る位置を示す複数の曲線を演算し、その演算した複数の曲線の交点またはその演算した複数の曲線の複数の交点の重心をクライアント端末110の2次元通信シート10上における位置と推定する。
そして、2次元通信シート10上におけるクライアント端末110の位置がmmオーダーまたはcmオーダーで変化しても、隣接端子11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間における搬送波の位相差が変化し、演算した位相差が得られるときのクライアント端末110の取り得る位置を示す複数の曲線も変化する。その結果、2次元通信シート10上におけるクライアント端末110の位置の変化に応じて、2次元通信シート10上の異なる位置がクライアント端末110の2次元通信シート10上における位置と推定される。
従って、この発明によれば、クライアント端末110の2次元通信シート10上における位置を精度良く推定できる。
上記においては、位相測定器50は、クロック発生器60から受けた基準クロックを基準にして端子11〜26が取り込んだ搬送波wv1〜wv16の位相θ1〜θ16を測定すると説明したが、この発明においては、これに限らず、位相測定器50は、搬送波wv1〜wv16のいずれか1つを増幅して基準信号を生成し、その生成した基準信号と残りの15個の搬送波とを比較することによって位相θ1〜θ16を測定するようにしてもよい。
この場合、基準信号にした搬送波の位相(位相θ1〜θ16のいずれか)は、“0”に設定される。
また、上記においては、2次元通信シート10は、略四角形の平面形状を有すると説明したが、実施の形態1においては、これに限らず、2次元通信シート10は、略三角形の平面形状を有していてもよい。略三角形の平面形状を有する2次元通信シートに対しても、上述した方法が適用可能であるからである。
[実施の形態2]
図9は、実施の形態2による位置推定装置の概略図である。実施の形態2による位置推定装置100Aは、図1に示す位置推定装置100の位置推定器70を位置推定器70Aに代えたものであり、その他は、位置推定装置100と同じである。
なお、実施の形態2においては、2次元通信シート10の端において、搬送波が複数回反射されることを前提とする。
位置推定器70Aは、データバス80を介して位相測定器50に接続される。そして、位置推定器70Aは、データバス80を介して位相測定器50から受けた位相θ1’〜θ12’に基づいて、後述する方法によって、クライアント端末110の2次元通信シート10上における位置を推定する。
図10は、反射を考慮して隣接端子間の位相差を計算するときの反射の概念を説明する図である。
2次元通信シート10は、4点(0,0),(Sx,0),(Sx,Sy),(0,Sy)によって規定される四角形からなる。そして、図10において、2次元通信シート10の周囲に配置された白い領域は、2次元通信シート10の周縁10A〜10Dにおける搬送波の1回反射波の見かけの発振源が存在する領域を表し、白い領域の周囲に配置された各領域(ハッチングされた領域)は、2次元通信シート10の周縁10A〜10Dにおける搬送波の2回反射波の見かけの発振源が存在する領域を表す。
クライアント端末110を2次元通信シート10上の位置P0に配置した場合を考える。クライアント端末110を位置P0に配置した場合、クライアント端末110から端子13に届く搬送波wvpは、2次元通信シート10の周縁10A〜10Dでの反射を2回までとした場合、9個の位置P0〜P8から端子13へ届く9個の搬送波wv0,wv1−1,wv1−2,wv1−3,wv2−1,wv2−2,wv2−3,wv2−4,wv2−5を重ね合わせたものになる。
この場合、搬送波wv0は、クライアント端末110が配置された位置P0から端子13へ届く直接波であり、搬送波wv1−1,wv1−2,wv1−3の各々は、1回反射波であり、搬送波wv2−1,wv2−2,wv2−3,wv2−4,wv2−5の各々は、2回反射波である。
そして、搬送波wv1−1,wv1−2,wv1−3は、それぞれ、位置P1=(−Cx,Cy)、位置P2=(Cx,2・Sy−Cy)および位置P3=(2・Sx−Cx,Cy)に見える発振源からの波である。
また、搬送波wv2−1,wv2−2,wv2−3,wv2−4,wv2−5は、それぞれ、位置P4=(−2・Sx+Cx,Cy)、位置P5=(−Cx,2・Sy−Cy)、位置P6=(Cx,2・Sy+Cy)、位置P7=(2・Sx−Cx,2・Sy−Cy)および位置P8=(2・Sx+Cx,Cy)に見える発振源からの波である。
そこで、位置P0〜P8の各々と端子13との距離を求め、その求めた距離によって端子13へ届く搬送波wv0,wv1−1,wv1−2,wv1−3,wv2−1,wv2−2,wv2−3,wv2−4,wv2−5の減衰量および遅延を演算し、その演算した減衰量および遅延を用いて端子13の位置における9個の搬送波wv0,wv1−1,wv1−2,wv1−3,wv2−1,wv2−2,wv2−3,wv2−4,wv2−5を演算し、その演算した9個の搬送波wv0,wv1−1,wv1−2,wv1−3,wv2−1,wv2−2,wv2−3,wv2−4,wv2−5を合成して合成波wvpを演算し、その合成波wvpの位相を求める。
合成波wvpの求め方を具体的に説明する。距離dによって減衰した後の波のエネルギーと減衰前の波のエネルギーとの比をf(d)とすると、f(d)は、次式によって表される。
式(1)においては、波のエネルギーが面状に拡散しない場合の2次元通信シート10内における損失をk[dB/m]としている。
また、2次元通信シート10の端における反射率をrとする。そして、座標(Cx,Cy)の波源から振幅aおよび波長λの波が出ているとき、0から2πの範囲で値を取り得る変数φ(=ωt)を用いて、その波源における波wは、次式によって表される。
同じ波を例えば端子13の位置(Px,Py(=0))から見ると、直接波wv0は、位置P0=(Cx,Cy)に見え、次式によって表される。
また、1回反射波である搬送波wv1−1,wv1−2,wv1−3は、それぞれ、位置P1=(−Cx,Cy)、位置P2=(Cx,2・Sy−Cy)および位置P3=(2・Sx−Cx,Cy)に見え、それぞれ、式(4)〜式(6)によって表される。
更に、2回反射波である搬送波wv2−1,wv2−2,wv2−3,wv2−4,wv2−5は、それぞれ、位置P4=(−2・Sx+Cx,Cy)、位置P5=(−Cx,2・Sy−Cy)、位置P6=(Cx,2・Sy+Cy)、位置P7=(2・Sx−Cx,2・Sy−Cy)および位置P8=(2・Sx+Cx,Cy)に見え、それぞれ、式(7)〜式(11)によって表される。
その結果、端子13における搬送波wvpは、次式によって表される。
そして、2次元通信シート10上で一定間隔ごとにクライアント端末110の配置位置をi(iは100以上の整数)個の配置位置に変えた場合について、端子13に届く合成波の位相φpを式(12)を用いて求める。
また、端子11,12,14〜26に届く合成波の位相についてもi個の配置位置に対して同様に求める。
その後、クライアント端末110が1つの位置に配置されたときに端子11〜26について求められた16個の位相を用いて、隣接端子間11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間における12個の位相差を演算する。
2次元通信シート10上のクライアント端末110の各配置位置についても、同様にして12個の位相差を演算する。
そして、クライアント端末110のi個の配置位置と、i組の12個の位相差とを相互に対応付けた対応表を作成し、その作成した対応表を予め位置推定器70Aに格納しておく。
図11は、クライアント端末110を2次元通信シート10上の各配置位置に配置したときの1組の隣接端子間における搬送波の位相差の分布を示す図である。
図11においては、2次元通信シート10は、4点(0,0),(100,0),(0,80),(100,80)によって規定される四角形の形状からなる。
そして、z軸は、4点(0,0),(100,0),(0,80),(100,80)によって規定される2次元通信シート10上の各位置にクライアント端末110を配置したときの1組の隣接端子間における搬送波の位相差を表す。
この場合、1組の隣接端子を構成する2つの端子の一方は、点(0,40)に配置されており、他方は、点(0,46)に配置されている。また、2次元通信シート10の周縁10A〜10Dにおける反射率は、80%であり、搬送波の反射は、6回までを考慮した。
図11に示す位相差の分布DTB1は、4点(0,0),(100,0),(0,80),(100,80)によって規定される2次元通信シート10上の各位置に対応付けて、1組の隣接端子間における搬送波の位相差を示したものである。
そして、4点(0,0),(100,0),(0,80),(100,80)によって規定される2次元通信シート10上の各位置に対応付けた1組の隣接端子間における搬送波の位相差は、12個の隣接端子対について演算されるので、図11に示すような分布DTB1が12個存在する。
従って、位置推定器70Aは、4点(0,0),(100,0),(0,80),(100,80)によって規定される2次元通信シート10上の各位置に対応付けた12組の隣接端子間における搬送波の位相差の分布を示す12個の分布DTB1〜DTB12を予め保持する。
図12は、位置推定器70Aが保持する位相差と2次元通信シート10上の各位置との対応表の概念図である。
対応表TBL1は、端子11,12間における位相差と位置との対応関係からなる分布DTB1と、端子12,13間における位相差と位置との対応関係からなる分布DTB2と、端子13,14間における位相差と位置との対応関係からなる分布DTB3と、端子15,16間における位相差と位置との対応関係からなる分布DTB4と、端子16,17間における位相差と位置との対応関係からなる分布DTB5と、端子17,18間における位相差と位置との対応関係からなる分布DTB6と、端子19,20間における位相差と位置との対応関係からなる分布DTB7と、端子20,21間における位相差と位置との対応関係からなる分布DTB8と、端子21,22間における位相差と位置との対応関係からなる分布DTB9と、端子23,24間における位相差と位置との対応関係からなる分布DTB10と、端子24,25間における位相差と位置との対応関係からなる分布DTB11と、端子25,26間における位相差と位置との対応関係からなる分布DTB12とを含む。
そして、位置推定器70Aは、クライアント端末110の2次元通信シート10上における位置を推定する場合、位相測定器50によって測定された端子11〜26における位相θ1’〜θ16’をデータバス80を介して位相測定器50から受ける。
その後、位置推定器70Aは、位相θ1’〜θ16’に基づいて、隣接端子間11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間における12個の位相差Δθ1’〜Δθ12’を演算する。
そうすると、位置推定器70Aは、12個の位相差Δθ1’〜Δθ12’をそれぞれ12個の分布DTB1〜DTB12と比較し、実測されたΔθ1’〜Δθ12’と、計算された位相差(=分布DTB1〜DTB12)との差をクライアント端末110の各配置位置において演算する。
例えば、位置推定器70Aは、位相差Δθ1’と分布DTB1とを比較する場合、z=Δθ1’からなる平面と分布DTB1との差を演算することによって、実測された位相差Δθ1’と、計算された位相差(=分布DTB1)との差DFT1を演算する。
その後、位置推定器70Aは、同様にして、実測された位相差Δθ2’と、計算された位相差(=分布DTB2)との差DFT2を演算する。
以下、同様にして、位置推定器70Aは、実測された位相差Δθ3’〜Δθ12’と、計算された位相差(=分布DTB3〜DTB12)との差DFT3〜DFT12を演算する。
この場合、差DFT1〜DFT12の各々は、クライアント端末110の各配置位置に対応付けられたものになっている。
そうすると、位置推定器70Aは、差DFT1〜DFT12から最小の差を検出し、その検出した最小の差が得られる位置をクライアント端末110の2次元通信シート10上における位置と推定する。
このように、実施の形態2においては、2次元通信シート10の周縁10A〜10Dにおける搬送波の反射を考慮して演算した12組の隣接端子間における位相差と2次元通信シート10上の各位置との対応表TBL1を予め求めておき、実測された隣接端子間11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間における12個の位相差Δθ1’〜Δθ12’に最も近い位相差を対応表TBL1を参照して検出し、その検出した位相差が得られるときの位置をクライアント端末110の2次元通信シート10上における位置と推定する。
そして、2次元通信シート10上におけるクライアント端末110の位置がmmオーダーまたはcmオーダーで変化しても、隣接端子11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間における搬送波の実測された位相差が変化し、その実測された位相差に最も近い位相差も変化し、実測された位相差に最も近い位相差が得られるときの位置も変化する。その結果、2次元通信シート10上におけるクライアント端末110の位置の変化に応じて、2次元通信シート10上の異なる位置がクライアント端末110の2次元通信シート10上における位置と推定される。
従って、この発明によれば、クライアント端末110の2次元通信シート10上における位置を精度良く推定できる。
搬送波の反射を考慮して隣接端末間における位相差を演算する場合、何回までの反射を考慮すればよいかについて説明する。
図13は、反射の回数を変えたときの2次元通信シート10における搬送波の分布を示す図である。
反射回数がゼロ回である場合、クライアント端末110から2次元通信シート10を伝搬する搬送波は、同心円状の分布を有する。そして、搬送波は、反射回数が増えるに従って複雑な分布になり、反射回数が4回以上においては、その分布が殆ど変化しない。
従って、この発明においては、4回以上の搬送波の反射を考慮して隣接端子間11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間における12個の位相差Δθ1’〜Δθ12’を2次元通信シート上の各位置に対して演算するものとする。
なお、上記においては、位置推定器70Aは、12個の隣接端子間11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間における12個の位相差を予め演算し、その演算した12個の位相差を2次元通信シート10上の各位置に対応付けて保持すると説明したが、この発明の実施の形態2においては、これに限らず、位置推定器70Aは、4個以上の位相差と位置との対応関係を保持していればよい。
4個以上の位相差と位置との対応関係を保持していれば、クライアント端末110の2次元通信シート10上における位置を正確に推定できるからである。
その他の部分については、実施の形態1と同じである。
[実施の形態3]
図14は、実施の形態3による位置推定装置の概略図である。実施の形態3による位置推定装置100Bは、図1に示す位置推定装置100の位置推定器70を位置推定器70Bに代えたものであり、その他は、位置推定装置100と同じである。
位置推定器70Bは、データバス80を介して位相測定器50に接続される。そして、位置推定器70Bは、データバス80を介して位相測定器50から位相θ1’〜θ16’を受け、その受けた位相θ1’〜θ16’に基づいて、後述する方法によって、クライアント端末110の2次元通信シート10上における位置を推定する。
位置推定器70Bにおいてクライアント端末110の位置を推定する方法について説明する。
クライアント端末110を2次元通信シート10上で1cm間隔で全ての位置へ移動させ、クライアント端末110を各位置に配置したときに端子11〜26の位置における搬送波の位相を測定し、その測定した位相に基づいて、隣接端子11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間における位相差を演算し、その演算した位相差と位置とを対応付けてメモリに記憶しておく。
図15は、位置推定器70Bが保持する位置と位相差との対応表を示す図である。対応表TBL2は、12個の対応表TBL2_1〜TBL2_12からなる。そして、対応表TBL2_1〜TBL2_12は、それぞれ、隣接端子11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間において実測された位相差とクライアント端末110の配置位置との対応関係を示す。
位置推定器70Bは、クライアント端末110の2次元通信シート10上における位置を推定する場合、位相測定器50によって測定された端子11〜26における位相θ1’〜θ16’をデータバス80を介して位相測定器50から受ける。
そして、位置推定器70Bは、位相θ1’〜θ16’に基づいて、隣接端子11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間における12個の位相差Δθ1’〜Δθ12’を演算する。
そうすると、位置推定器70Bは、12個の位相差Δθ1’〜Δθ12’をそれぞれ12個の対応表TBL2_1〜TBL2_12の位相差と比較し、実測されたΔθ1’〜Δθ12’と、予め実測された位相差(=対応表TBL2_1〜TBL2_12の位相差)との差をクライアント端末110の各配置位置において演算する。
具体的には、位置推定器70Bは、実測された位相差Δθ1’と対応表TBL2_1の位相差Δθ1_1〜Δθj_1との差DFT1_2を演算する。
その後、位置推定器70Bは、実測された位相差Δθ2’と、対応表TBL2_2の位相差Δθ1_2〜Δθj_2との差DFT2_2を演算する。
以下、同様にして、位置推定器70Bは、実測された位相差Δθ3’〜Δθ12’と、対応表TBL2_3〜TBL2_12の位相差Δθ1_3〜Δθj_3;・・・;Δθ1_12〜Δθj_12との差DFT3_2〜DFT12_2を演算する。
この場合、差DFT1_2〜DFT12_2の各々は、クライアント端末110の各配置位置に対応付けられたものになっている。
そうすると、位置推定器70Bは、差DFT1_2〜DFT12_2から最小の差を検出し、その検出した最小の差が得られる位置をクライアント端末110の2次元通信シート10上における位置と推定する。
このように、実施の形態3においては、予め実測された12組の隣接端子間における位相差と2次元通信シート10上の各位置との対応表TBL2を予め求めておき、実際の位置推定時に測定された隣接端子11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間における12個の位相差Δθ1’〜Δθ12’に最も近い位相差を対応表TBL2を参照して検出し、その検出した位相差が得られるときの位置をクライアント端末110の2次元通信シート10上における位置と推定する。
そして、2次元通信シート10上におけるクライアント端末110の位置がmmオーダーまたはcmオーダーで変化しても、隣接端子11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間における搬送波の実測された位相差が変化し、その実測された位相差に最も近い位相差(実測値)も変化し、実測された位相差に最も近い位相差が得られるときの位置も変化する。その結果、2次元通信シート10上におけるクライアント端末110の位置の変化に応じて、2次元通信シート10上の異なる位置がクライアント端末110の2次元通信シート10上における位置と推定される。
従って、この発明によれば、クライアント端末110の2次元通信シート10上における位置を精度良く推定できる。
なお、上記においては、2次元通信シート10は、略四角形の平面形状を有すると説明したが、実施の形態3においては、これに限らず、2次元通信シート10は、任意の平面形状を有していてもよい。実施の形態3においては、クライアント端末110を2次元通信シート10上の全ての位置に配置したときの隣接端子間における位相差を予め測定し、その測定した位相差とクライアント端末110の各配置位置とを対応付けた対応表を予め保持しておくので、実施の形態1,2において説明した計算が不要であるからである。
その他の部分については、実施の形態1と同じである。
上述した実施の形態1においては、隣接端子11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間における位相差が得られる複数の曲線を求め、その求めた複数の曲線の交点または複数の曲線の複数の交点の重心をクライアント端末110の2次元通信シート10上における位置と推定した。
また、実施の形態2においては、隣接端子11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間における位相差を2次元通信シート10上の各位置に対して演算して記憶しておき、隣接端子11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間における実測された位相差に最も近い位相差を、予め記憶しておいた位相差から検出し、その検出した位相差に対応する位置をクライアント端末110の2次元通信シート10上における位置と推定した。
更に、実施の形態3においては、クライアント端末110を2次元通信シート10上の各位置に配置したときの隣接端子11,12;12,13;13,14;15,16;16,17;17,18;19,20;20,21;21,22;23,24;24,25;25,26間における位相差を予め実測し、その実測した位相差を各位置に対応付けて記憶しておき、位置推定時に測定した位相差に最も近い位相差を、予め記憶しておいた位相差から検出し、その検出した位相差に対応する位置をクライアント端末110の2次元通信シート10上における位置と推定した。
従って、この発明による位置推定装置は、一般的には、位相測定器50によって測定された3個以上の位相に基づいて、隣接する端子間の位相差を2組以上の隣接端子対について演算し、その演算した2個以上の位相差が得られる2次元通信シート10上の位置をクライアント端末110の2次元通信シート10上における位置と推定する位置推定器を備えるものであればよい。
また、この発明の実施の形態においては、2次元通信シート10の周縁10A〜10Dに設置される端子の個数は、3個以上であればよい。端子が3個以上あれば、隣接端子対が2個以上になり、隣接端子間における位相差を2個以上演算してクライアント端末110の位置を推定することが可能であるからである。
更に、上記においては、端子11〜26は、等間隔に配置されると説明したが、この発明においては、これに限らず、端子11〜26は、2次元通信シート10を伝搬する搬送波の波長よりも短い間隔であれば、任意の間隔で配置されていてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。