JP5199002B2 - 少なくとも2層から構成された焼尽性容器 - Google Patents

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Description

本発明は、火砲などから飛翔体を発射するための発射薬や点火薬などの火薬類を収納するために使用される焼尽性容器に関する。
一般に焼尽性容器は、火砲に装填するなどの取り扱い中に破損しない機械的強度と、飛翔体を発射させた後に火砲内に残留物を極力発生させないための焼尽性を併せ持つ必要がある。従来の焼尽性容器は、焼尽性を確保するためニトロセルロースを多く含み、また機械的強度を確保するため、補強用のセルロース繊維を含有する。これらの焼尽性容器の製造方法としては、例えばニトロセルロース等の燃焼性繊維、補強用繊維、粘結剤、及びニトロセルロース等の安定剤などを水中に混濁させ、分散したスラリーを吸引成型し、そして乾燥して焼尽性容器を製造する方法が知られている。また焼尽性容器の用途については、発射薬や点火薬等のガス発生剤を容器内部に収納し、これを単数又は連結された複数個を火砲の薬室内にて燃焼させることで、飛翔体を発射するシステムが特許文献1〜5に開示されている。しかしながら、従来技術の焼尽性容器は当該容器全体にニトロセルロースを多く含むため、貯蔵、取り扱い時に外側よりかなりの熱が加わると発火の虞れがあるため、焼尽性を保ちつつ、外側からの熱に対する耐熱性に優れた焼尽性容器の開発が望まれてきた。焼尽性容器の耐熱性を改善する方策は、例えば特許文献6〜8に開示されている。
特許文献6には、焼尽性容器表面に難発火性塗料による被膜を作ることにより、防燃性及び防湿性を向上させた容器の例が示されているが、具体的な方法及び耐熱性に関する効果については言及されていない。
特許文献7には、難燃化ニトロセルロースと補強用繊維を主成分とし、機械的強度が高く耐熱性の良い焼尽性容器が例示されているが、ニトロセルロースを難燃化させていることより焼尽性が低下し、火砲内の残留する燃焼残さが多くなる虞がある。
特許文献8には、多孔質な可燃性筒体の表面を可燃性且つ熱可塑性の樹脂フィルムを密着させて被覆させることにより、耐火性及び耐湿性を改善した焼尽容器が例示されている。しかしながら、耐湿性及び燃焼残さに対する効果の記載はあるが、耐火性に関する効果については言及されていない。
特公昭62−31276号公報 特開平2−500772号公報 特開平5−118793号公報 特開平8−122000号公報 特開2005−140458公報 特開昭53−120900公報 特開平9−89499公報 特公平4−42599公報
本発明は、従来の焼尽性容器と同等の厚みで同等の焼尽性を有するとともに、耐熱性の優れた焼尽性容器を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、焼尽性容器の構成について鋭意研究した結果、容器外側の層(外層)と内側の層(内層)をニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比(セルロース誘導体の含有比率)の異なる層で構成することにより、前記課題が達成されることを発見し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は、以下の[1]〜[5]の通りである:
[1]焼尽性容器であって、該焼尽性容器の少なくとも一部は、主成分としてニトロセルロースとセルロース誘導体を含有する外層及び内層を含む少なくとも2層から構成され、該焼尽性容器の外層のニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比は0.4〜0.8の範囲であり、該焼尽性容器の内層のニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比は2.3〜4.0の範囲であり、そして該焼尽性容器の外層の厚みは0.4〜1.0mmの範囲である焼尽性容器。
[2]前記焼尽性容器の外層のニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比が0.5〜0.75の範囲であり、かつ、前記焼尽性容器の内層のニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比が2.5〜3.0の範囲である、前記[1]に記載の焼尽性容器。
[3]前記焼尽容器外層の厚みが0.5〜0.9mmの範囲である、前記[1]又は[2]に記載の焼尽性容器。
[4]前記セルロース誘導体が、クラフトパルプ、セルロースアセテート(CA)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチル(CAB)、及びエチルセルロースから成る群から選ばれる1種又は2種以上の混合物である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の焼尽性容器。
[5]ニトロセルロース、セルロース誘導体、樹脂、及び添加剤を水中に混濁してスラリー状とし、それを真空吸引してフェルト状の粗筒体とする際に、ニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比の異なる外層及び内層を含む少なくとも2層を形成することを特徴とする、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の焼尽性容器の製造方法。
本発明の焼尽性容器は、火砲に装填するなどの取り扱い中に破損しない機械的強度と、飛翔体を発射させた後に火砲内に残留物を極力発生させないための焼尽性を併せ持ち、かつ外側からの熱に対する耐熱性に優れる。
以下、本発明について、特にその好ましい態様を中心に、詳細に説明する。
本願明細書中、「少なくとも2層から構成された焼尽性容器」とは、該焼尽性容器の少なくとも一部は、主成分としてニトロセルロースとセルロース誘導体を含有する外層及び内層を含む少なくとも2層から構成され、容器外側を難燃性の高い層(外層)で構成し、また内側には燃焼性の高い層(内層)で構成することにより、容器の焼尽性を確保しつつ同時に耐熱性を向上させた容器である。
本発明に係る焼尽性容器は、りゅう弾砲、戦車砲、機関砲、小銃等のあらゆる火砲及び小火器用の弾薬容器として用いることができ、必要に応じて焼尽性容器全体を2層で構成させることもできるが、部分的に2層とすることも可能である。また、焼尽性火管、点火用筒体としても使用することもできる。図1に本発明の焼尽性容器の一実施形態であるりゅう弾砲用発射装薬の例を、そして図2に戦車砲用弾薬の例を示す。これらの図中、焼尽性容器1は、外側の層2と内側の層3から構成されており、焼尽性火管4と点火用筒体5と焼尽性蓋部6と組み合わされる、発射薬7を充填した容器として機能する。
焼尽性容器の外層と内層は、ニトロセルロースとセルロース誘導体を主成分として含有し、必要に応じて安定剤、汎用樹脂、焼食抑制剤等の原材料をも含有する。容器外側の層(外層)はニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比が0.4〜0.8であることが好ましい。ニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比が0.4を下回ると、火砲等の薬室内で燃焼させた場合に焼尽性が低下し、燃焼残さが増加する虞れがある。また、ニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比が0.8を超えると耐熱性の効果が希薄となる。外層のニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比のより好ましい範囲は0.5〜0.75である。一方、容器内側の層(内層)のニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比は2.3〜4.0であることが好ましく、ニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比が2.3を下回ると火砲等の薬室内で燃焼させた場合に焼尽性が低下し、燃焼残さが増加する虞れがあり、4.0を超えると火砲等の薬室内で燃焼させた場合に激しい燃焼が伴い、振動燃焼などの異常圧力の発生要因と成ることから好ましくない。内層のニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比のより好ましい範囲は2.5〜3.0である。
焼尽性容器外側の層(外層)の厚みは、0.4〜1.0mmの範囲であることが好ましい。厚みが0.4mmを下回ると容器の製造性が乏しくなるとともに、耐熱性の効果が希薄となり、1.0mmを超えると火砲等の薬室内で燃焼させた場合に焼尽性に影響し、燃焼残さが増加する虞がある。外層の厚みは、より好ましくは0.5〜0.9mmの範囲である。
焼尽性容器に用いるセルロース誘導体は、容器の強靱性を確保するために用いる。その例としては、クラフトパルプ、セルロースアセテート(CA)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチル(CAB)、及びエチルセルロースから成る群から選ばれる1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
焼尽性容器の主成分であるニトロセルロースは、水中にて他の原材料と混濁させ、スラリー状にして焼尽性容器の形状に成型できるものであればいずれでもよい。また、ニトロセルロースの窒素量が少なすぎると燃焼性が低下し、逆に多すぎると耐熱性の効果が期待できないため、10.6〜13.4%のニトロセルロースの窒素量が好ましい。
焼尽性容器に用いる安定剤としては、硝酸エステルの自然分解を防止するものであればどのようなものを用いてもよい。用いる安定剤の例としては、メチルジフェニルウレア(AK2)、エチルセントラリット(ECL)、ジフェニルアミン(DPA)、2−ニトロジフェニルアミン(2−NDPA)等が挙げられる。
バインダーとして用いる汎用樹脂としては、スチレンブタジエンラテックス、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリブタジエン、ポリウレタン等が挙げられる。
焼尽性容器の密度は、800〜1000kg/m3の範囲が好ましい。容器の密度とは焼尽性容器の重量と体積を測定し、そこから求められた値のことであり、密度が800kg/m3を下回ると容器の機械的強度が低下し、火砲への装填衝撃に耐えられず破損する虞れがある。また、1000kg/m3を超えると製造時に金型内で容器が高圧縮され発火の危険が高まるため好ましくない。
焼尽性容器に耐水性が要求される場合は、容器表面を表面処理することが好ましく、耐水性の要求がない場合は表面処理をしなくてもよい。表面処理を行う場合の処理剤としては、水分の侵入を防止でき、著しく燃焼性を阻害することがないものであれば、どのようなものでもよい。一般的にはポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等の塗料が表面処理に用いられる。また、焼食抑制剤を容器原料に混合させるか容器表面に塗装することは、焼食抑制効果を持たせることができるため好ましい。焼食抑制剤として、酸化チタン、又はドイツ国特許DE101003912A1に開示される希土類元素の酸化物である酸化ランタン(La23)、酸化セシウム(CeO2)、酸化イットリウム(Y23)及び/又は6周期元素の酸化物である三酸化モリブデン(MoO3)、酸化タングステン(WO3)、ポリオキシメチレン(POM)等を用いることができる。
焼尽性容器の製造方法としては、ニトロセルロース、セルロース誘導体を水中に混濁して、バインダー成分である樹脂及び安定剤等を加えてスラリー状とし、真空吸引によって減圧脱水することで第1層のフェルトを形成する。同様の方法でニトロセルロース/セルロース誘導体重量比の異なるスラリーを製造して、第1層のフェルト表面に2層目のフェルトを形成する。こうして得られたフェルトを加熱した成型金型で加圧、乾燥することで所望の形状に成型することにより、焼尽性容器を製造することができる。
以下に、本発明を、非制限的な実施例により具体的に説明する。
実施例1
2層で構成された焼尽性容器の内側の層を得るため、ニトロセルロース、セルロース誘導体、汎用樹脂、エチルセントラリット、水を攪拌機に投入した後、水溶液が均一に分散されるよう撹拌を行い、スラリー状の水溶液を得た。次いで、この水溶液の濃度が0.5重量%となるよう希釈水を加え濃度を調整した。この時の成分配合割合は、ニトロセルロース(60重量%)、セルロース誘導体(24重量%)、汎用樹脂(15重量%)、エチルセントラリット(1重量%)であり、ニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比は2.5に調整した。ここではセルロース誘導体としてクラフトパルプを用いた。同様の方法にて外側の層となるニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比が0.5となるスラリーを別に製造した。次に、ニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比を2.5に調整したスラリー状の水溶液中に濾布付のフェルティング金型を浸し、金型内部から真空吸引を行い金型表面に一定重量のフェルトが形成される時間浸した。真空吸引をした状態で一度スラリーの中から取り出した。その後、ニトロセルロース重量(%)/セルロース誘導体重量(%)の比率が0.5に調整されたスラリーの中に浸し、外層を形成させ2層からなるフェルト状素材を得た。このフェルト状素材を約120℃に加温された成型金型にて約3分間加熱及び加圧し、フェルト状素材の水分を除去し、直径150mm、厚み約2mm(内層厚み約1mm、外層厚み約1mm)、密度900kg/m3からなる円筒状の成型体(2層から構成される焼尽性容器)を得た。
得られた成型体を温度21℃、湿度60%に調節された場所に24時間静置した後、幅約10mm、長さ約70mmの板状サンプルを打ち抜いた。このサンプルを230℃に加温した電熱プレート上に乗せ、反応を開始するまでの時間を計測し、これを耐熱時間とした。実施例1のサンプルの耐熱時間を、従来の焼尽性容器(基準サンプル、比較例1)の耐熱時間と比較した。その結果、実施例1のサンプルの耐熱時間は、基準サンプルの耐熱時間の約5.5倍であった。
更に実施例1のサンプルの燃焼後の残さ量を、発射薬や焼尽性容器の一般的な評価を行うための密閉爆発試験器を用いて求めた。密閉爆発試験器として容積0.80×10-43に装填密度0.20×103kg/m3(装填薬量16g)で装填し、硝化綿を点火薬として燃焼させた。燃焼後に密閉爆発試験器内に残った残さを回収し、その残さ量を、(比較例1の)基準サンプルの残さ量と比較した。実施例1のサンプルの燃焼後の残さ量は、基準サンプルの燃焼後の残さ量の約0.8倍であった。
実施例2〜6
実施例1と同様の製造方法、及び以下の表1に示す原材料の配合割合を用いて、直径150mm、厚み約2mm(外層厚み:表1)、密度(表1)を有する円筒状の成型体(2層から構成される焼尽性容器)を製造した。得られた成型体を実施例1と同様に耐熱時間と残さ量の評価を実施した。この試験で得られた値を以下の表3に示す。
比較例1
ニトロセルロース(60重量%)、セルロース誘導体(30重量%)、汎用樹脂(9重量%)、エチルセントラリット(1重量%)を水中に懸濁しニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比が2.0に調整されたスラーリーとした後、実施例1と同様の方法で吸引フェルティング、加熱・加圧成型を行い直径150mm、厚み約2mm、密度900kg/m3からなる単層の円筒状成型体(焼尽性容器)を得た。
比較例2〜9
実施例1と同様の製造方法、及び以下の表2に示す原材料の配合割合を用いて、直径150mm、厚み約2mm(外層の厚み:表2)、密度(表2)からなる円筒状の成型体(2層から構成される焼尽性容器)を製造した。得られた成型体を実施例1と同様に耐熱時間と残さ量の評価を実施した。この試験で得られた値を以下の表4に示す。
比較例10
比較例1と同一組成にて同様の製造方法により吸引フェルティングを行い、加熱・加圧成型前のフィルト粗筒体を得た。このフェルト粗筒体の表面に、水85(重量%)、汎用樹脂6.5(重量%)、酸化チタン8.5(重量%)からなる混合水溶液を約170gスプレーガンにて均等に吹き付けした。その後、加熱・加圧成型を行い、焼食抑制剤の被膜を形成させた直径150mm、厚み約2mm、密度900kg/m3からなる単層の円筒状成型体(焼尽性容器)を製造した。
Figure 0005199002
Figure 0005199002
Figure 0005199002
Figure 0005199002
りゅう弾砲発射装薬の断面図の例である。 戦車砲弾薬の断面図の例である。 図1及び図2中、A−A’部の詳細断面図である。
符号の説明
1 焼尽性容器
2 外側の層(外層)
3 内側の層(内層)
4 焼尽性火管
5 点火用筒体
6 焼尽性蓋部
7 発射薬

Claims (5)

  1. 焼尽性容器であって、該焼尽性容器の少なくとも一部は、主成分としてニトロセルロースとセルロース誘導体を含有する外層及び内層を含む少なくとも2層から構成され、該焼尽性容器の外層のニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比は0.4〜0.8の範囲であり、該焼尽性容器の内層のニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比は2.3〜4.0の範囲であり、そして該焼尽性容器の外層の厚みは0.4〜1.0mmの範囲である焼尽性容器。
  2. 前記焼尽性容器の外層のニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比が0.5〜0.75の範囲であり、かつ、前記焼尽性容器の内層のニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比が2.5〜3.0の範囲である、請求項1に記載の焼尽性容器。
  3. 前記焼尽容器外層の厚みが0.5〜0.9mmの範囲である、請求項1又は2に記載の焼尽性容器。
  4. 前記セルロース誘導体が、クラフトパルプ、セルロースアセテート(CA)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチル(CAB)、及びエチルセルロースから成る群から選ばれる1種又は2種以上の混合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼尽性容器。
  5. ニトロセルロース、セルロース誘導体、樹脂、及び添加剤を水中に混濁してスラリー状とし、それを真空吸引してフェルト状の粗筒体とする際に、ニトロセルロース/セルロース誘導体の重量比の異なる外層及び内層を含む少なくとも2層を形成することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の焼尽性容器の製造方法。
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