JP5198944B2 - 審美性に優れた歯科鋳造用金合金 - Google Patents

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Description

本発明は生体適合性が高く、審美性に優れたクラウン、ブリッジ、クラスプ、床等の歯科補綴物を鋳造により作製する歯科鋳造用金合金に関する。
従来、歯科鋳造用金属は通常、金合金、金銀パラジウム合金、銀合金、等各種の合金を用いて、優れた物理的特性を発揮できるように検討され、ゴールド色、シルバー色を中心とした色調に調整されていた。特に歯科医師や患者が審美感及び高級感を持つ色調として、ゴールド色は好まれる色調である。
金合金は物理的特性を追及するために金をベースとした組成に微量元素を添加することでゴールド色が退色することが知られている。そこで、物理的性質及び耐食性を損なわず、かつ審美的に優れたゴールド色を保つ為に添加元素の配合量を調整している。
従来の金合金のようにPdを含有し物理的特性を向上させている場合は、色調は金のゴールド色が著しく低下して、白黄色を呈し、鋳造して作製された補綴物は口腔内でやや暗い色調になる。高度の審美を追求し、口腔内で調和した色調を再現する場合は、装着される補綴物の色調はできるだけ赤味の強いゴールド色に近い合金が好ましい。
また歯科鋳造用合金は補綴物として口腔内に装着され、長期にわたって使用されるために口腔内の環境下で不活性であり合金成分の溶出がなく、生体に対する親和性(biocompatibility)を具備すべきものである。最近、学術的見地からPdはアレルギー発現の可能性が報告され、バイオタイプの合金としてPdを含有しない合金が好まれる。
近年において、口腔内で用いるゴールド色も多様化し、数多くの金合金が開発され使用されている。しかし、歯科医師や患者はより扱いやすく審美的に良く生体親和性が高い歯科鋳造用合金を望んでいた。
特許文献1には重量%にてAuが68〜80%であり、Cuが15〜30%であり、Gaが1.5〜4.5%であり、IrとRuとの合計が0.1〜1.0%であり、残部が不可避的不純物である組成を有し、650〜700℃に加熱された後、急冷される溶体化処理が施された歯科用金合金が示されているが、色調のことについては何ら記載されていない。
特許文献2には0.5重量%〜5.0重量%の錫、14.5重量%〜36.5重量%の銅を含有し、残部が金及び不可避的不純物であることを特徴とする装飾用および歯科用金合金との記載があるが、アレルギー発現性の高いSnを含有しているため生体に対する親和性(biocompatibility)を具備すべきものでない。
特許文献3には金含有量が高い黄色の歯科用合金であって、本質的に、60〜90重量%の金、0〜20重量%の銀、0〜7重量%のパラジウム、0〜11重量%の白金、0〜20重量%の銅、0〜2重量%の亜鉛、0〜1重量%のスズ、および0〜3重量%のインジウムならびに微量の結晶粒リファイナから成る歯科用合金であり、金含有量が高く、濃い黄色を有しタイプIVの性質を有する合金を提供することとしているが、黄色の歯科用合金について記載されているにもかかわらず、色調のことについては何ら記載されておらず、アレルギー発現性の高いPd及びSnを含有しているため生体に対する親和性(biocompatibility)を具備すべきものでない。
特許第3492394号公報 特許第4058101号公報 特開平11−152531号公報
口腔内に装着した場合に、歯科医師や患者が好む審美感及び高級感をもたらすゴールド色であって、生体親和性を考慮しアレルゲン(Allergen)となり易い元素を含有していない歯科鋳造用合金を提供するものである。
本発明は金70〜75重量%、銀5〜9重量%、白金1〜4重量%、銅13〜17重量%、亜鉛0.1〜2重量%、及びイリジウム、レニウム、ロジウム及び/又はルテニウム0.01〜0.1重量%を含有し残部が不可避的不純物からなる歯科鋳造用金合金である。
本発明は分光測色計でのトレーシングペーパーを介在した測色値が、L*が79〜83、a*が4〜6、b*が10〜24であり、金70〜75重量%、銀5〜9重量%、白金1〜4重量%、銅13〜17重量%、亜鉛0.1〜2重量%、及びイリジウム、レニウム、ロジウム及び/又はルテニウム0.01〜0.1重量%を含有し残部が不可避的不純物からなる歯科鋳造用金合金である。
本発明の合金は、アレルギー発現性の高い元素を含有しないで歯科鋳造用合金に必要な物理的特性を具備し、口腔内に設置時において、多大な審美感と生体親和性を示す。口腔内は粘膜部分が紅色に発色し、歯牙部分はアイボリー色に発色している。これらの色調を肉眼で観察する場合は、隣接した紅色とアイボリー色がお互いに影響し合い正確な色調を判断できない。こういった口腔内環境に宝飾的なゴールド色の補綴物を装着したとしても、審美的な印象を与えないことが分かった。
多くのゴールド色を検討した結果、口腔内で特に優れた審美性を示す色調範囲が存在することを見出した。これらの色調範囲では多くの歯科医師や患者が審美感及び高級感を持ち、口腔内で調和が取れ違和感がなく用いることができる。
本発明の好ましい実施の形態に係る金合金は、金70〜75重量%、銀5〜9重量%、白金1〜4重量%、銅13〜17重量%、亜鉛0.1〜2重量%、及びイリジウム、レニウム、ロジウム及び/又はルテニウム0.01〜0.1重量%を含有し残部が不可避的不純物からなる歯科鋳造用金合金である。
本発明は、トレーシングペーパーを介在した測色値が、L*が79〜83、a*が4〜6、b*が10〜24である金70〜75重量%、銀5〜9重量%、白金1〜4重量%、銅13〜17重量%、亜鉛0.1〜2重量%、及びイリジウム、レニウム、ロジウム及び/又はルテニウム0.01〜0.1重量%を含有し残部が不可避的不純物からなる歯科鋳造用金合金である。
本発明の好ましい実施の形態に係る金合金は、金及び白金族元素の合計が75%以上であることが好ましい。
さらに好ましくは、金72〜73重量%、銀6.5〜8重量%、白金2.5〜4重量%、銅15〜17重量%、亜鉛0.5〜1.5重量%、及びイリジウム、レニウム、ロジウム及び/又はルテニウム0.01〜0.1重量%を含有し残部が不可避的不純物からなる合金であって、かつトレーシングペーパーを介在した測色値が、L*が81〜83、a*が4〜5、b*が10〜14の合金である。
銀の添加量を5〜9重量%としたのは、5重量%以下にすると合金の物理的特性が低く、9重量%以上にすると赤系のゴールド色が損なわれるからである。白金の添加量を1〜4重量%としたのは、1重量%以下にすると合金の物理的特性が低く、4重量%以上にすると金本来のゴールド色が白黄化するばかりでなく合金のコスト高となるからである。また、銅の添加量を13〜17重量%としたのは、13重量%以下にすると赤系ではなく黄系のゴールド色を呈すからであり、17重量%以上にすると赤味が強くなりすぎ、機械的性質を劣化させるからである。さらに、亜鉛の添加量を0.1〜2重量%としたのは、0.1重量%以下にすると鋳造時の脱酸効果が望めず、2重量%以上にすると溶融温度が低下しさらに合金に脆さを与えるためである。
好ましくは、本発明の金合金は、0.01〜0.1重量%のイリジウム、レニウム、ロジウム又はルテニウムのうち1種類以上を更に含有している。
イリジウム、レニウム、ロジウム又はルテニウムの添加量を0.1重量%以下としたのは、これらの金属は0.01重量%〜0.05重量%でも所要の効果を十分に得られる。
(試験体の作製)
下記の組成表(表1)に基づいてそれぞれ秤量し、これらの地金を高周波溶解装置を用いてアルゴンガス雰囲気下において溶解してインゴットを作製した。ロストワックス法を用いて12mm×12mm×1mmの平板を鋳造し、得られた試験体は耐水研磨紙で最終#1200で表面を研磨した。
Figure 0005198944
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(合金の測定)
測色は各試験片の研磨面をミノルタ社製の分光測色計CM2002を用いてSCI方式で光源をD65とし2度視野にてL***を測定した。なお測定は金属の光反射による誤差を最小限にするため、試料表面をトレーシングペーパーでマスキングをおこなった。その際色差の測定は、純金を色彩基準値として各試験片との色差
Figure 0005198944
を算出した。
(色調評価方法)
また、口腔内に装着した場合に口腔内と調和し審美感をもたらすゴールド色かどうか調べるため、松風社製のポアーレジン(U3色)を用いて50×30×2mmの平角板1枚と、松風社製ヴィンテージハロー(A3色)を用いて10×10×1mmの天然歯牙色平板を2枚を作製した。平角板の中心に合金試験片を置き、左右に天然歯牙色平板を配置して、審美性に優れているかどうかを、歯科医師、技工士及び患者の20名を対象に調査を行った。評価は歯科医師、技工士及び患者が審美感をもたらすゴールド色と判断した試料の合計数が20〜16人を◎、15人〜11人を△、10人以下を×とした。その測定結果を表2及び表3に示す。
(使用適合試験)
臨床での使用上問題がないか調べるため、臨床で行われている通法の工程、つまりロストワックス法で3本ブリッジを鋳造して作製し最終研磨まで行った。評価方法は問題なく使用できたを○、使用できなかったを×とした。
Figure 0005198944
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分光測色計での測色値が、L*が79〜83、a*が4〜6、b*が10〜24であることが口腔内色調環境にて特に審美性を示すことがわかった。また、評価が高かった試料はPdを含有していない合金であり、生体親和性が高い合金であることが分かる。また、実施例1〜7は歯科鋳造用金合金のJIS規格に規定されている規格を満足していた。
歯科領域で用いる鋳造用金合金への応用が可能である。

Claims (1)

  1. 金70〜75重量%、銀5〜9重量%、白金1〜4重量%、銅13〜17重量%、亜鉛0.1〜2重量%、及びイリジウム、レニウム、ロジウム及び/又はルテニウム0.01〜0.1重量%を含有し残部が不可避的不純物からなり、トレーシングペーパーを介在した測色値が、L*が79〜83、a*が4〜6、b*が10〜24である歯科鋳造用金合金。

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