JP5197580B2 - 航空機の可動部品をロックするための装置 - Google Patents

Description

本発明は、航空機の可動部品をロックするための装置に関する。

航空機が清掃作業やメンテナンス作業を受けるために地上に停止している場合には、制御システムの人的過誤や故障に起因する不慮の誤作動を防止するために、航空機の幾つかの構成部品を機械的に遮断又は固定しなければならない。地上でメンテナンスや管理をするニーズに応えるために航空機の降着装置を固定することが、特に知られている。この目的を達成するために、従来においては鋼製のピン又はカラーが利用されており、これにより降着装置の可動部品、例えば機械式ヒンジや伸展した攻略装置のアクチュエータはロック可能とされた。このような地上におけるロック装置は、地上作業員によって容易に駐機位置を知らせられるように、例えば高い明度の旗やペナントのような視覚識別信号を備えている。実際には、離陸前に可動部品を解放しなければならず、さもなければ、飛行中に重大な事故が発生する恐れがある。予防措置及び組織的な検査にもかかわらず、降着装置のロック装置が飛行前点検で取り外すことができないという問題が日常的に発生している。降着装置が引き上げられない場合には、航空機は出発した空港に至急戻らなくてはならない。降着装置の問題に関連して出発した空港に戻る確率は概算で１１％であり、降着装置をロックし忘れたことに起因する。着陸するために許可された最大重量を下回るように航空機の重量を低減するために、従来は燃料を消費させた後に戻っていた。燃料及び着陸の両方を考慮すれば、このような作業は、特に環境に悪影響を及ぼし、高コストである。

特定された原因は、装置のロックし忘れであって、特に損傷又は脱落した視覚識別信号が挙げられる。実際問題として、旗やペナントは、摩耗や正しくない運搬に起因して緩むか、又は風によって隣接する部品と重なり合い、これにより地上作業員の視界から消えてしまう。

旗やペナントを容易に配置するために、ロック装置は、高い明度で着色されている場合がある。しかしながら、塗料は大部分の作動油に含まれるリンエステル（phosphorus ester）によって急速に浸食されるので、特に暗い状況で視認しづらい場合にロック装置は注目されなくなる。

本発明の第１の目的は、ロック装置の存在を容易且つ急速に検知可能なロック装置を提案することである。本発明の第２の目的は、非常に高い信頼性を有し検知可能なロック装置を地上に設けることである。本発明の第３の目的は、ロック装置を自動的に検知するためのシステムを提供することである。

米国特許第５，８６０，６２２号明細書 国際公開第９４／０７７４３号パンフレット 欧州特許出願公開第１０３１６８５号明細書 独国特許出願公開第４０２９２０８号明細書 国際公開第０１／５４０８０号パンフレット 米国特許出願公開第２００３／０２０７８６号明細書 国際公開第２００５／００６２６１号パンフレット

本発明は、ポーリング信号を受信し且つロック装置の識別信号を応答するように適合されている電子タグを備えている航空機の可動部品をロックするための装置を提供する。

第１の実施例においては、ロック装置は、ピンの形態とされる。

優位には、ピンは、環状溝部を備えたシリンドリカル部分を有しており、環状溝部には、無指向アンテナが取り付けられている。アンテナは、好ましくは弾性レイヤによって密閉状態で覆われている。

ロック装置は、長手方向のヒンジによって共に結合された２つのシェルを備えたカラーの形態をしている。

優位には、これらシェルのうち少なくとも１つのシェルは、略半環状溝を備えた半シリンドリカル部分を含んでおり、略半環状溝部には、アンテナ要素が取り付けられている。アンテナ要素は、好ましくは弾性レイヤによって密閉状態で覆われている。

本発明は、少なくとも１つの上述のロック装置を検出するための検出システムであって、ポーリング信号を送信し且つロック装置の識別データを含む応答を受信するために、少なくとも１つの電子タグを読み取る読み取り手段と、読み取り手段を制御し、航空電子通信網を介して識別データを受信する制御手段と、ロック装置が識別されているか否かを示す信号手段とを備えている前記検出システムを提供する。

信号手段は、優位には航空機を表わす外形上にロック装置の位置を示し、及び／又は、ロック装置が検知された場合に音声信号を発するように適合されている。

最後に、本発明は、このような検出システムを機中に有する航空機に関する。

本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照しつつ本発明の好ましい実施例を精査することによって明らかとなる。

本発明の第１の実施例におけるロック装置を表わす。 図１Ａのロック装置の軸方向における断面図である。 本発明の第２の実施例におけるロック装置を表わす。 本発明におけるロック装置の存在を検知するための航空電子システムの概略図である。

本発明の基本概念は、“ＲＦＩＤタグ（RFID tag）”や単に“タグ”と呼称される電子式ＲＦＩＤ（Radio Frequency IDentification）タグを地上ロック装置（ground locking device）に適合させることである。

電子タグは、本発明が属する技術分野においてよく知られている。電子タグは、独立した電源を必要としない点において優位である。一般に、電子タグは、アンテナと、識別情報が格納されている不揮発性メモリと、前記識別情報を用いて、変調されたポーリング信号を再送信する前にアンテナによって受信されるポーリング信号を変調するためのモジュレータとを含んでいる。ポーリング信号のエネルギを利用する電源回路は、モジュレータに供給するために設けられている。従って、電子タグが所定周波数でポーリング信号を受信した場合に、ポーリング信号はモジュレータに給電するために検出され、識別情報を含む応答がポーリング装置に返される。

図１Ａは、本発明の第１の実施例におけるロック装置を表わす。このロック装置は、自身の下方部分において錐状部分１１５が延在し、且つ、自身の上方部分において第２のシリンドリカル部分１１７（second cylindrical part）が延在した第１のシリンドリカル部分１１０（first cylindrical part）を備えているピン１００の形態とされる。第２のシリンドリカル部分は、第１のシリンドリカル部分と同軸配置され、第１のシリンドリカル部分よりも大きな直径を有している。第１のシリンドリカル部分は、降着装置の対応する空洞部内で滑動可能に係合されている。例えば、この降着装置は、降着装置が伸展した場合に展開され、及び／又は、降着装置が持ち上げられた場合に収納される構造を有した構成部品である。ロッド１３０は、ピンの上端でピンの径方向にピンを貫通し、且つ該ロッドが第２のシリンドリカル部分の両側で実質的に突出しているので、ロックピンの取り外し及び操作を容易に行なうことができる。ピストン１４０は、下部ストッパ及び上部ストッパによって制限される軸方向の行程に従って、第１のシリンドリカル部分及び第２のシリンドリカル部分内部で滑動するように設けられている。スタンバイ位置（standby position）では、ピストンは、戻りバネによって上部ストッパに当接して保持されており、第２のシリンドリカル部分の上方部分から僅かに突出している。当該位置では、ピストンには、第１のシリンドリカル部分の径方向外側に突出した２つの突起１５０が形成されている。より正確には、これら突起、優位には金属製ボールは、バネ装填式であり、第１のシリンドリカル部分の下方部分において互いに径方向反対側に配置されている。運搬作業者が降着装置をロックしたいと考えた場合には、運搬作業者はピンを対応する空洞に押し込めば良い。作業者がピストン１４０を下部ストッパに当接するように押した場合、又はピンが強制的に前記空洞の内部に押し込まれた場合に、突起１５０はハウジング内に挿入される。ピンが所定位置に配置されると、突起は自然に突出位置に復帰し、空洞の対応する凹所に配置される。ピンを解放するために、ピストン１４０が押圧されるので、突起が収納され、ピンが空洞から取り外される。ロックピンの第２のシリンドリカル部分には、電子タグのアンテナを取り付け可能な環状の切欠部が形成されている。アンテナは、好ましくは高明度で着色された弾性レイヤ１７０によって覆われている。最後に、フラグ又はペナント１６０も高明度で着色されており、優位にはリング、ストラップやレジスタントストリング（resistant string）によってロックピンに取り付けられている。

図１Ｂは、軸方向におけるロックピンの上方部分の断面図である。図１Ｂは、特にアンテナのための切欠部１７５を表わす。この切欠部には、アンテナ１７３が取り付けられ、当該アンテナは、特に作動液（hydraulic fluid）による浸食からアンテナを密閉保護する弾性リング１７０によって覆われている。アンテナは、空洞の外側に配置されている第２のシリンドリカル部分内に収容されている場合に、陰影妨害（shadowing）されることなく電磁信号を送受信可能である。アンテナは、複数の部分に分割されているか否かに関わらず、優位には無指向性アンテナとされる。アンテナに設けられた電子ＲＦＩＤ回路も、衝撃及び機械的ストレスから保護された空洞（図示しない）内の第２のシリンドリカル部分内に収納されている。

図２は、本発明の第２の実施例におけるロック装置を表わす。このロック装置は、例えば伸展した降着装置のアクチュエータを阻止するためにカラー２２０から構成されている。ロック装置には、長手方向のヒンジ２１５を中心として折り曲げられた２つのシェル２１０が形成されている。シェルの自由端は、急速結合システム又は単なるボルトナットシステム２２０によって一体とされる。シェルは、それぞれアクチュエータの脱落を防止するために略半シリンドリカルとされるか、又は２つの半シリンドリカル部分から構成されている。高明度に彩色されたペナント又はフラグもカラーに取り付けられている。カラーを構成する半シリンドリカル状シェルのうち１つ又は２つのシェルの外面には、アンテナを収容する半環状溝として切欠が形成されている。優位には、アンテナは、両シェルの各半環状溝内に取り付けられた２つの半環状要素から成る。１つ又は２つのアンテナ要素は、電子ＲＦＩＤ回路に電気的に接続されており、電子ＲＦＩＤ回路は、一方のシェルに取り付けられ、衝撃及び機械的負荷から保護されている。アンテナの各部分は、高明度で彩色された弾性レイヤ２３０によって覆われている。

上述のロック装置は、整備中の航空機の可動部品、例えば前部降着装置又は主降着装置の構成部品を固定するために利用される。

このようなロック装置が設けられているか否かを検出するために、航空機には、ポーリング信号を送信するように構成された複数のアンテナが胴体の全体に亘って配置されている。

このようなアンテナは、優位にはコンフォーマルアンテナである。すなわち、当該アンテナは胴体と一体化され、胴体と同一形状とされるか、又は複合材料から成る部品の内面に取り付けられている。さらに、当該複合材料から成る部品は、低電磁吸収性を有している部品であって、航空機の降着装置のノーズ及びフラップの部品とされる。アンテナは、優位にはロック装置が見通し線方向（line of sight）すなわちＬＯＳ方向においてポーリング信号を受信するように配置されている。

様々なアンテナがＲＦＩＤ読み取り装置と結合されている。ＲＦＩＤ読み取り装置がロック装置の存在を確認するための指令を受信した場合に、ＲＦＩＤ読み取り装置は、例えば１２５ｋＨｚや１３４．２ｋＨｚの低周波電磁波から成るポーリング信号を送信する。低周波電磁波を利用することによって、航空機の金属構造体による吸収現象及び回折現象が低減され、比較的一様な電磁場がポーリング領域に形成される。さらに、電子タグを読み取るための装置は、一般にこれら周波数で利用可能とされる。ポーリング信号を受信したロック装置は、自身の識別データを含む応答をＲＦＩＤ読み取り装置に返す。この識別データは、応答がロック装置によって送信されたことを示している。識別データには、必要に応じてロック装置の型式が含まれている。従って、航空機の異なる構成部品を阻止するために異なる型式のロック装置を利用する場合には、ロック装置の検知は、航空機の対応する構成部品と独自に関連している。

図３は、本発明におけるロック装置の存在を検出可能な航空電子システム（avionics system）を表わす。

各読み取り装置３３０は、制御捕捉モジュール３５０（control and acquisition module）に接続されており、当該制御捕捉モジュールは、ＡＲＩＮＣ規格、例えばＡＦＤＸ（航空電子全二重通信切替式イーサネット（登録商標）；Avionics Full Duplex Switched Ethernet（登録商標））通信網のような切替式イーサネット（登録商標）通信網に応答する航空電子通信網３６０に接続されている。ＦＷＳ（Flight Warning System）と呼称される警告システムは、航空機の様々な構成部品の故障を監視し、危険な飛行条件を決定するためのものであり、通信網に接続されている。警告システム３７０は、自動的に又は手作業による有効化によってロック装置の存在を検知するトリガーとして機能する。離陸前の制御手続において、この検知は特に系統的に実施される。警告システムは、すべてのロック装置が適切に配置されたことを確認するために保守作業員によって初期化される。警告システム３７０は、制御捕捉モジュール３５０を介して読み取り装置３３０にポーリング指令を送信する。代替的には、警告システムは、様々な装置にポーリング指令を逐次的に送信する。読み取り装置３３０は、応答を検出した場合に、応答されたロック装置の識別情報を、警告システムに関連する制御捕捉モジュールを介して当該警告装置に返す。優位には、ロック装置の電子タグは、衝突を回避するために、異なる時間遅延を有した各応答を送信する。この目的を達成するために、各電子タグは、異なる値に設定された加算型カウンタセット又は減算型カウンタセットを備えており、期限切れになった場合に限り応答する。警告システム３７０は、中心的に様々な制御捕捉モジュール３５０の応答を受信する。従って、当該警告システムは、ロック装置が存在するか否かを決定し、必要であればロック装置を識別する。ロック装置が存在する場合に、警告システムは、コックピットの制御パネル３８０上に音声信号及び／又は光表示から成る警告を発生させる。光表示は、優位には航空機を表わす外形を表示するので、ロック装置が異常に配置されているか又は存在しないことが即時に表示可能とされる。従って、本発明によって、地上の作業員は、航空機が空港から飛び立つ前にロック装置を取り外すことができる。

１００ ロック装置（ピン）
１１０ 第１のシリンドリカル部分
１１５ 錐状部分
１１７ 第２のシリンドリカル部分
１３０ ロッド
１４０ ピストン
１５０ 突起
１６０ フラグ（ペナント）
１７０ 弾性レイヤ
１７３ アンテナ
１７５ 切欠部
２００ カラー
２１０ シェル
２１５ 長手方向のヒンジ
２２０ 急速結合システム（ボルトナットシステム）
２３０ 弾性レイヤ
３３０ 読み取り装置
３５０ 制御捕捉モジュール
３６０ 航空電子通信網
３７０ 警告システム
３８０ 制御パネル

Claims (12)

1. 航空機の降着装置の可動部品をロックするための取り外し可能なロック装置であって、
   前記ロック装置は、ポーリング信号を受信し且つ前記ロック装置の識別信号を返すように適合された電子タグを備えていることを特徴とするロック装置。
2. 前記ロック装置は、ピン（１００）の形態をしていることを特徴とする請求項１に記載のロック装置。
3. 前記ピンは、環状溝部（１７５）を有しているシリンドリカル部分（１１７）を備えており、
   前記環状溝部には、無指向アンテナ（１７３）が取り付けられていることを特徴とする請求項２に記載のロック装置。
4. 前記無指向アンテナは、弾性レイヤ（１７０）によって密閉された状態で覆われていることを特徴とする請求項３に記載のロック装置。
5. 前記ロック装置は、長手方向のヒンジ（２１５）によって互いに結合された２つのシェル（２１０）を備えているカラー（２００）の形態をしていることを特徴とする請求項１に記載のロック装置。
6. 少なくとも１つのシェルは、略半環状溝を有している半シリンドリカル形状の部品を含み、
   前記略半環状溝には、アンテナ要素が取り付けられていることを特徴とする請求項５に記載のロック装置。
7. アンテナ要素が、弾性レイヤ（２３０）によって密閉状態で覆われていることを特徴とする請求項６に記載のロック装置。
8. 少なくとも１つの請求項１〜７のいずれか一項に記載のロック装置を検出するための検出システムにおいて、
   ポーリング信号を送信し且つ前記ロック装置の識別データを含む応答を受信するために少なくとも１つの電子タグを読み取る読み取り手段（３３０）と、
   前記読み取り手段を制御し、航空電子通信網（３６０）を介して前記識別データを受信する制御手段（３７０）と、
   前記ロック装置が識別されているか否かを示す信号手段（３８０）と、
   を備えていることを特徴とする検出システム。
9. 前記信号手段は、航空機を表わす外形に前記ロック装置の位置を示すように適合されていることを特徴とする請求項８に記載の検出システム。
10. 前記信号手段は、前記ロック装置が検知された場合に音声信号を送信するように適合されていることを特徴とする請求項８又は９に記載の検出システム。
11. 前記読み取り手段は、降着装置のフラップの内部部品に取り付けられた少なくとも１つのアンテナに結合されていることを特徴とする請求項８〜１０のいずれか一項に記載の検出システムを備える航空機。
12. 請求項８〜１０のいずれか一項に記載の検出システムを備えている航空機において、
    前記読み取り手段が、少なくとも１つのコンフォーマルアンテナに結合されていることを特徴とする航空機。

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