まず、本発明による一実施例の送信装置及び受信機について説明する。
(実施例1)
本発明による実施例1の電文情報フォーマットを図1に示す。
本発明による送信装置は、図1に示す実施例1の電文情報のフォーマットに基づく緊急速報を、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送のOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式に多重される各副搬送波のうちACキャリアを用いて伝送する。ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送に係る送信装置のハードウェア構成は既知であり、図示しない。しかしながら、伝送制御情報(TMCC又はAC)を用いて電文情報を伝送する送信装置、及びこの電文情報を受信して特有の動作を行う受信機、並びにこれらの送信装置及び受信機から構成される伝送システムは、以下に説明するように、特有の機能を発揮させる。
フレーム長は、TMCC信号と同一であり、OFDM信号の204シンボルで構成され、シンボル毎に1ビットが送信される。
「差動復調の基準」は、TMCC信号と同様に、キャリア番号kのSP信号に割り当てられるBPSK信号の値Wkと同じ生成多項式(x11+x9+1)に基づく値であり、例えば、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送波の部分受信セグメント(セグメント番号#0)におけるACキャリア(モード3の同期変調部)の場合、キャリア番号#7,#89,#206,#209,#226,#244,#377及び#407の8箇所に対し割り当てられる値である。この8箇所のACキャリアが運ぶAC情報に記述の差動復調の基準として格納されるWkは、各々0,0,0,0,0,1,1及び0である。
「同期信号」は、16ビットの同期信号であり、その値は「0011010111101110」(奇数フレーム)及びその反転(偶数フレーム)という、奇数フレームと偶数フレームで異なる値をとる。そのDBPSK変調波は、Wkが0の場合、奇数フレームが「1,1,−1,1,1,−1,−1,1,−1,1,−1,−1,1,−1,1,1」であり、偶数フレームが「−1,1,1,1,−1,−1,1,1,1,1,1,−1,−1,−1,−1,1」である。そして、Wkが1の場合、これらの反転となる。
このように、「同期信号」は、振幅と位相が既知の信号となっている。
「起動フラグ信号」は、緊急速報の有無を識別する1ビットの情報である。ここでは、「同期信号」につづいて伝送される。「起動フラグ信号」の値は、緊急速報がある場合には、‘1’のビットを表す値として「同期信号」の最後のシンボルの位相を反転し、緊急速報ない場合には、‘0’のビットを表す値としてその位相を継続する。
8本のACキャリアで伝送する場合、「起動フラグ信号」も各キャリアに同じ情報を載せて伝送すると、「同期信号」の場合と同様に、ダイバーシティ合成が可能である。
なお、ここでの説明は、本発明の理解を容易とするために、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送におけるモード3の部分受信セグメント(セグメント番号#0)内のACキャリアが運ぶAC情報の全てを用いる場合について行うが、他のモードにおいても適用可能であることに留意する。
「バッファ領域」は、3ビットの固定値、例えば、「111」を格納する。本発明の主たる部分を表すデータ領域である。後述のフレーム内間欠受信モードにおいて、待機動作時から電源投入する際に、データ検出までの間の緩衝用の時間を確保するために挿入する。
「緊急速報識別信号」は、緊急速報の種別を示す信号である。緊急速報が緊急地震速報を表すのか、緊急警報放送を表すのかといった情報を提供する。例えば、3ビットとし、「000」を緊急地震速報、「001」を緊急警報放送、「010」を緊急地震速報のテスト信号、「011」を緊急警報放送のテスト信号とする。なお、「起動フラグ信号」と同様に、各3ビットの値はDBPSK変調された値として伝送される。
「起動フラグ信号」が‘1’の値(緊急速報あり)を示した時に、「緊急速報識別信号」の値を読み、緊急速報の種別、つまり、緊急速報が何であるのかを識別する。
「各種識別信号」は、「速報ID」(12ビット)や「情報番号」(4ビット)、「電文種別」(2ビット)といった緊急速報に付随する情報信号や、放送事業者識別などの信号が該当する。
「速報ID」は、緊急速報の識別番号(ID番号)として挿入する。例えば、気象庁が発表する緊急地震速報には、“ND”で始まり、(西暦)年、月、日、時、分、秒を並べて作成される地震識別番号が付されている。この番号の下位12ビットを割り当てて利用する。緊急警報放送など他の場合にも、同様な考えで識別番号を割り当てる。
この「速報ID」により、同一の緊急速報に、続報やキャンセル報が発生しても、当該速報と他の速報を区別することができるようになる。
「情報番号」は、続報が出た場合に、その速報が発表される度に1ずつ加算される番号である。先に出た緊急速報と一連の情報である旨を受信機が認識するために付与される。0〜15の範囲で繰り返して用いる。
「電文種別」は、緊急速報が発報される通常の伝送か、先に出された緊急速報が取り消し(キャンセル報)となるかを示すために用いる。緊急速報の誤報が発生した場合に取り消しが可能なように格納する。2ビットを用いて、例えば「00」ならば、緊急警報放送あるいは一般向け緊急地震速報である旨を示し、「01」であればキャンセル報であることを示す。緊急速報のない場合には「11」を送信し、「起動フラグ信号」の判定に対する保険とすることもできる。
放送事業者識別は、ARIB規格STD−B14に準拠した識別信号が利用できる。この場合には、「放送地域識別」(6ビット)、「県複フラグ」(1ビット)、「地域事業者識別」(4ビット)が格納される。
「各識別信号」も同様に、DBPSK変調される。
「緊急速報情報」は、例えば、緊急地震速報のように放送とは別に伝達すべき情報があるものについて必要な情報を格納する部分である。
緊急速報の対象が緊急地震速報と緊急警報放送である場合を事例に具体例を示すと、緊急地震速報のときにのみ情報が格納され、緊急警報放送のときには固定ビット(例えばすべて‘1’)が置かれる。
緊急地震速報の情報のうち、放送とは別に伝達すべき情報としては、緊急地震速報が発せられたときに、受信者にとり最小限必要な情報であり、的確に、且つ、迅速、確実に伝送されるべき情報である。すなわち、受信者がいる地域において、どれぐらいの規模/震度の地震がどれぐらいの時間の後に起こるか、を受信者に認知させることができる情報である。
具体的には、2つの方法事例を示す。
一般向けの緊急地震速報は、強い揺れ(震度5弱以上)が推定される場合に、その規模及び震度4以上が推定される地域に関する情報を発信することが所望される。
1つ目の方法事例は、強い揺れが予想される地域を直接的に伝えるものである。
つまり、全国放送であれば「震度4以上の強震地域(都道府県単位)」(56ビット)であり、県域或いは広域の放送であれば「震度4以上の強震地域(地域単位)」(38ビット)を格納する。一般向け緊急地震速報で用いる“強い揺れが推定される地域”であり、この各地域に1ビットを割り当て、対象となるか否かを1又は0で示す。「震度4以上の強震地域(都道府県単位)」の地域は、都道府県を単位とし、北海道を4分割するなど全国で現在56地域である。「震度4以上の強震地域(地域単位)」は、気象庁が地域コードを割り当てている最小の地域単位である。広域放送のエリアに分割した場合、最大は北海道で38地域である。
例えば、東京、神奈川、伊豆諸島が震度4以上を予測された場合、この3つの地域に割り当てるビットを1とし、その他は0とする。よって、送信側では、この値に基づくデータが送信され、受信側ではこの値をもとに「緊急地震速報(気象庁):地震発生。次の地域で強い揺れに警戒: 東京都、神奈川県、伊豆諸島」というメッセージを提示する。
なお、全国放送と県域或いは広域の放送を区別するため、全国県域識別フラグ信号を2ビット伝送し、全国放送時には「01」、県域放送或いは広域放送時には「00」、不使用時には「11」を伝送するものとする。
この他、必要により、「最大予測震度」(4ビット)が格納される。
「最大予測震度」は、震度4以上の4、5弱、5強、6弱、6強、7が相当する。「強」、「弱」を各々1、0と数値で区別する。よって、「0100」、「0101」、「1101」、「0110」、「1110」、「0111」で区別して表記できる。ただし、この最大予測震度は、特定の地域ごとではなく、全国放送ならば、当該地震による日本全国のいずれかの地域で観測が予測される最大予測震度であり、広域或いは県域放送であれば、当該地域内で観測が予測される最大予測震度である。日本全国のいずれかの地域で観測が予測される最大予測震度の値が震度5弱以上のとき、緊急地震速報が出される。
2つめの方法事例は、発生時刻、震源の緯度、経度、深さ、マグニチュードなど地震の詳細情報を伝送し、情報を受信した受信機において予測震度や予測到達時間などを計算する間接的な手法である。受信者の希望に基づく地域ごとのより詳細な警告が可能となる。
非特許文献1によると、取得した地震源の位置情報(緯度経度、深さ)と地震の規模(マグニチュード)並びに地盤増幅度から、予測震度及び強震動(主要動)の予測到達時刻を算出できる。
まず、予測震度は、計測震度IINSTRとして次式の計算式により算出される。
IINSTR=2.68+1.72 log(PGV)±0.21 ・・・(1)
ここで、PGVは地表面での各地点の最大速度[cm/s]であり、最大速度減衰式で計算される基準基盤(硬質基盤、S波速度600m/s)での最大速度PGV600と国土数値情報にある各対象となる地点での地盤増幅度ARViとの乗算で求められる値である。
PGV=1.31 PGV600×ARVi ・・・(2)
なお、最大速度減衰式は、(3)式で表され、PGV600[cm/s]の算出に必要となる情報は、マグニチュードM、震源の深さD[km]と断層最短距離x[km]のみである。
log(PGV600)=0.58 (M−0.171)+0.0038 D−1.29
−log(x+0.028×100.50(M−0.171))−0.002x ・・・(3)
受信機がその位置情報を取得する手段を有し、現在受信機が存在する地点が分かっているとすると、震源の位置情報と受信機の位置情報によりxを容易に算出することができる。
また、ARViは地点に依存する値であるので、予め受信機に記憶されていることで、位置情報に基づき選択利用することができる。
よって、計測震度IINSTRは、受信機において未知数である震源の位置情報とマグニチュードを送信側から取得することにより、当該受信機において容易に算出できる。
尚、計測震度IINSTRは小数点を含む数値として計算されるので、震度階級における最大予測震度は、その値をもとに次表に示す両者の関係に基づいて判定される。
一方、受信機のいる地点への地震の発生時刻からの予測到達時刻(到達所要時刻)は、震央距離Δ[km]と震源の深さD[km]をもとに気象庁が示す走時表(例えばJMA2001)を用いて算出することができる。震央距離Δは震源の位置情報(緯度経度)と当該受信機の位置情報から算出することができる値である。
よって、この場合「緊急速報情報」には、上記の計算に必要となる「地震発生時刻」(17ビット)、「震源の緯度」(11ビット)、「震源の経度」(12ビット)、「震源の深さ」(10ビット)、並びに「マグニチュード」(7ビット)が格納される。
「地震発生時刻」は、P波の観測後推定され、一般向けの緊急地震速報により放送局向けに伝えられた、地震が発生した時刻である。
「地震発生時刻」の時刻は24時間の範囲での表示とし、時の表示は5ビット、分及び秒の表示は6ビットの数値として、例えば、13時25分37秒は「01101|011001|100101」(合計17ビット)と、各々時、分、秒の単位で2進数表示する。尚、「|」は時、分、秒の区別を見やすくするために、ここでの表記のみとして挿入しており、実際の伝送には挿入されない。
「震源の緯度」及び「震源の経度」は、震源の地表面上の位置を表し、例えば、北緯36.3度、東経136.5度といったように、1/10度精度で表記した緯度及び経度である。これらを、北緯及び東経を正の値、南緯及び西経を負の値とし、且つ、小数点を除いた10倍の数値で表記する。
つまり、「震源の緯度」及び「震源の経度」はそれぞれ363と1365となり、各々11ビットと12ビットを割り当てて「00101101011」と「010101010101」のように2進数で表す。尚、南緯または西経の負の値は、1の補数とし、例えば、南緯36.3度は、「11010010100」と表記する。
「震源の深さ」は、震源の地表面からの深さであり、単位を[km]とした数値で表す。例えば、30kmの場合、30であり、10ビットの2進数「0000011110」で表記する。
「マグニチュード」は、地震の規模を表すマグニチュードの値であり、小数点以下1桁の数値、例えば、3.5といった値である。これを10倍の数値で表記する。つまり、35であり、7ビットの2進数「0010011」とする。
以上の2つの方法に基づく情報の他、「緊急速報情報」には、「ページ番号」(2ビット)などの情報を付加して伝送する。「ページ番号」は、上記2つの手法による「緊急速報情報」を2フレームにわたって伝送し、受信者の利便性を向上する場合に両手法に基づく情報を区別するために用いる。
なお、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送波の部分受信セグメント(セグメント番号#0)におけるACキャリア、例えば、モード3の同期変調部の場合、204シンボル、つまり、1フレーム伝送するのに必要な時間は、0.231秒である。上記2つの手法による「緊急速報情報」を2フレームにわたって伝送する場合、1フレーム情報を見るために要する時間が増えるが、警報そのものはいずれのフレームを検知した時点でも出すことが可能である。
「緊急速報情報」も同様に、DBPSK変調される。
「パリティビット」は、誤り訂正に用いるパリティビットである。「差動復調の基準」及び「同期信号」の合わせて17ビットを除く18ビット目から「パリティビット」の直前の122ビット目までの105ビットを対象に、誤り訂正が可能なパリティビットが82ビット格納される。例えば、ISDB−T方式のTMCC信号と同様に、差集合巡回符号(273、191)の短縮符号(187、105)を用いて誤り訂正符号化する。8ビット程度の誤り訂正が可能となるので、情報の信頼度を高め、より確実な伝送を可能とすることができる。
「パリティビット」も、DBPSK変調される。
「リザーブビット」は、将来の拡張に向けた予備のビットである。通常‘1’を格納しておく。「緊急速報情報」が手法1の情報を全国の都道府県に向けて伝送し、「最大予測震度」、「ページ番号」を送信すると、「リザーブビット」には7ビット残る。手法2では同様に10ビットとなる。
ここでは、リザーブビットをまとめて置いたが、必要な情報の単位で付加する構成とする方が運用の途中での変更に対応しやすい場合がある。
「リザーブビット」も、DBPSK変調される。
本実施例において、放送事業者は、例えば気象庁から緊急地震速報を受信した場合、送信装置によって、図1に記載の電文情報のフォーマット例に基づいて、例えば、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送波の部分受信セグメント(セグメント番号#0)におけるACキャリア(モード3の同期変調部)の場合を考えると、8本のACキャリアがあるが、この全てに同じ情報を各キャリアの「差動復調の基準」に基づくDBPSK変調波として格納して送信する。
なお、ARIB規格STD−B31の記載に準拠してDBPSK変調波を送信する事例で説明してきたが、受信段でダイバーシティ利得を向上できるように、「差動復調の基準」に基づき ‘1’を設定する、BPSK変調波として伝送するようなことも考えられる。
次に、本発明による実施例1の受信機について説明する。
前述したように、送信側では、緊急速報を含む電文情報(図1に示す電文情報のフォーマット)として、例えば地上デジタルテレビジョン放送の部分受信セグメント内の8本のACキャリアに、同期信号と緊急速報を識別する起動フラグ信号を連続して伝送するとともに、緊急速報識別信号、各種識別信号、緊急速報情報、リザーブビット及び誤り訂正符号のパリティビットを伝送する。
本発明による実施例1の受信機は、図1に示す電文情報のフォーマットを受信する。ここで、受信機は、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、腕時計、置時計、パーソナルコンピュータ又は家電製品など、あらゆる機器に具備させることができるものである。
図2は、実施例1の受信機のブロック図を示す。実施例1の受信機は、アンテナ1と、AC受信・同期確立部2と、AC情報解析部3と、同期保持・電源制御部4と、警告発生手段5と、電源回路6と、AC受信・同期確立部2への電源供給の切り替えを行う第1の電源スイッチ7と、AC情報解析部3への電源供給の切り替えを行う第2の電源スイッチ8とを備える。
また、AC受信・同期確立部2は、周波数変換回路9と、AD変換回路10と、FFT11と、AC抽出回路12と、起動フラグ復調回路13と、フレーム同期検出回路14とを備える。
更に、AC情報解析部3は、AC復調回路15と、電文マスク回路29と、誤り訂正回路16と、AC復号回路17と、情報処理回路18とを備える。情報処理回路18は、位置検出手段及び現在時刻検出手段を備える。
そして、同期保持・電源制御部4は、フレーム同期保持回路19と、タイミング制御回路20と、起動フラグ監視回路21と、電源制御回路22とを備える。
以下、図2に示す受信機の各構成要素の機能を説明する。
周波数変換回路9は、アンテナ1から入力された地上デジタル放送波の受信信号のうち、所定のフィルタにより不要な周波数成分を除去した後、指定されたチャンネルを選択し、中間周波信号に周波数変換するとともに適宜増幅して出力する回路である。このチャネル選択は、受信機にて予め定めておくこともできる。
AD変換回路10は、周波数変換回路9から出力される受信信号の中間周波信号をデジタルに変換し、デジタルベースバンド信号を送出する。
FFT11は、OFDMシンボルの有効シンボル期間についてFFT(Fast Fourier Transform)演算を行い、受信信号のデジタルベースバンド信号をOFDM形式のストリームに復調する。尚、有効シンボル期間は、ガードインターバル相関などによりシンボル同期を行って規定することができ、予め定めた伝送モードに従ったFFTサンプル周波数でFFT演算を行う。
AC抽出回路12は、受信信号のOFDM形式のストリームから部分受信セグメント(セグメント番号#0)内の8箇所のACキャリアのみを抽出する。ここで抽出されたACキャリアは、まずフレーム同期検出回路14及び起動フラグ復調回路13に供給される。
フレーム同期検出回路13は、AC抽出回路12により抽出された受信信号のACキャリアと、AC信号に「同期信号」として格納されて送信されるものと同じDBPSK変調波の、予め定めた、例えばモード3の、パターンとの一致検出を行って、両者が一致したときAC信号の先頭のタイミングでフレーム同期信号(リセットパルス)を発生する。また、フレーム同期信号に基づいて緊急速報のフレーム同期確立の有無を示す緊急速報同期確立情報を生成する。
起動フラグ復調回路13は、AC抽出回路12で抽出された受信信号の8箇所のACキャリアのストリームから各フレームの同期信号の最終シンボル(第16シンボルであり、フレームの先頭シンボルを第0シンボルとして、フレームの先頭から17シンボル目に相当する)と起動フラグ信号(第17シンボルであり、フレームの先頭から18シンボル目)を抜き出し、起動フラグ信号を復調して、送信された起動フラグ信号の値を推定する。
なお、起動フラグ信号の復調は、例えば第16シンボルの受信信号の位相共役と第17シンボルの受信信号との乗算により行われる。
8箇所(8本)のACキャリアに基づくダイバーシティ合成は、上記2シンボル分の受信信号間の位相共役積を8本のキャリアについて行い、積算する。
同期保持・電源制御部4におけるフレーム同期保持回路19とタイミング制御回路20、起動フラグ監視回路21と電源制御回路22は、常時、電源回路から給電されている。
フレーム同期保持回路19は、例えばクロック発生器とカウンタで構成され、フレーム同期検出回路14が出力するフレーム同期信号に基づき制御される、クロック発生器で発生したクロックをカウンタでカウントし、カウント値が所定値となる毎にフレームパルスを発生すると共にカウント値をフレーム同期信号(リセットパルス)に従ってリセットし、このフレームパルスをタイミング制御回路20に供給する。これにより、フレーム同期保持回路19は自己保持したフレームパルスを発生することができる。
タイミング制御回路20は、フレーム同期保持回路19からのフレームパルスと、フレーム同期検出回路14からの緊急速報同期確立情報から、後述するフレーム間間欠受信モードか、又はフレーム内間欠受信モード、或いはこれらの組み合わせの間欠受信モードを決定し、各間欠受信モードのタイミングでオン/オフ(0又は1の値)の制御信号を送出する。
起動フラグ監視回路21は、起動フラグ復調回路21が出力する起動フラグ信号の値を取得して、その値をサンプル&ホールドするとともに、電源制御回路22にその値を出力する。
なお、図示していないが、起動フラグ監視回路21が起動フラグ信号を検出するタイミングもフレーム同期保持回路19が出力するフレームパルスを基準に制御されている。
電源制御回路22は、起動フラグ監視回路21の出力値が起動フラグ信号の‘0’(緊急速報が無い通常の状態であること)を検出している場合には、AC受信・同期確立部2の電源供給を制御するように第1の電源スイッチ7を制御する。一方で、起動フラグ監視回路21が、起動フラグ信号の‘1’(緊急速報が発報された状態であること)を出力した場合には、AC受信・同期確立部2への電源供給を継続して行うように第1の電源スイッチ7の切り替えを行うとともに、AC情報解析部3への電源供給を開始するように第2の電源スイッチ8の切り替えを行う。
それとは逆に、電源制御回路22は、緊急速報がある旨を示す起動フラグ信号値‘1’から、平常時の‘0’の状態に変更されるのを判別した場合には、タイミング制御回路20からの制御信号のタイミングで、起動フラグ信号の値のみを常時監視するように、AC受信・同期確立部2への電源供給を第1の電源スイッチ7によって制御するとともに、AC情報解析部3への電源供給を遮断するように第2の電源スイッチ8の切り替えを行う。
これにより、極めて消費電力を節約しながら、緊急速報の情報を確実に、且つ即時に取得できるようにする。
なお、FFT11及び起動フラグ復調回路13の動作において、一定シンボル分メモリ等に保持する必要がある。そのため、後述のフレーム内間欠受信モードにより動作する場合には、消費電力の大きい前段の回路の動作を節約するために、RF部を構成する周波数変換回路9やAD変換回路10とそれ以降の回路との間で電源投入、電源遮断のタイミングをずらす必要がある。
よって、同図に示していないが、AC受信・同期確立部2への電源供給の切り替えを行う第1の電源スイッチ7は、2系統の回路の各々に接続されており、電源制御回路は、この2系統の回路のタイミングをうまく調整して動作するように、制御信号を出力する。
そして、後述するように、図1の電文情報フォーマットにおいて、「バッファ領域」を設けているのは、この電源投入並びに遮断のタイミングずらしと関係する。
AC情報解析部3への電源供給が為された場合には、AC復調回路15、電文マスク回路29、誤り訂正回路16、並びにAC復号回路17が順次起動する。フレーム同期検出回路14によって生成されたフレーム同期信号に同期して、まずAC復調回路15は、受信信号のOFDM形式のストリームから抽出された部分受信セグメント(セグメント番号#0)内の8箇所全てのACキャリア上のDBPSK変調波を起動フラグ復調回路13と同様な動作で検波、並びにダイバーシティ合成した後、0又は1のレベル判定を行い、AC信号のビットストリームを得る。
電文マスク回路29は、「バッファ領域」の受信信号を抜き取るか、送信側で格納されるデータと同じ「111」と入れ替える。
これにより、電源制御回路22による電源の再投入に伴う、受信信号の消失、或いは、受信信号のひずみによる影響を無視しての、以後の処理が可能となる。
続いて誤り訂正回路16は、受信したAC信号のビットストリームをパリティビットの値に基づき例えば差集合巡回符号方式を用いて誤り訂正する。
そして、AC復号回路17は、送信側の符号化方式に対応する復号形式で各信号の内容、即ち「起動フラグ信号」、「緊急速報識別信号」、「各種識別信号」並びに「緊急速報情報」の内容を復号する。
このとき、誤り訂正回路16は、AC信号のビットストリームの誤り訂正の可否を確認し、訂正できない誤りがあった場合には、信号を出力せず、AC復号回路17に向けて受信誤りがあった旨の制御信号を出力し、起動フラグ信号の監視を継続する。
尚、電源制御回路22は、緊急速報の全ての情報のみを取得するように、フレーム内間欠受信動作又はフレーム間間欠受信動作で、AC情報解析部3に電源供給するように制御することもできる。特に、フレーム間間欠受信動作で動作する場合に、起動フラグ復調回路13及びAC復調回路15にて、複数のフレーム間で多数決判定した結果を送出するように動作させることもできる。
本発明に係る受信機においては、AC情報の誤りを検出又は訂正し、復号する様々な態様が考えられ、「復号手段」として総括して説明する。
情報処理回路18は、AC復号回路17が出力する各信号の内容を受信し、「起動フラグ信号」が確かに「緊急速報」のあることを示すのを確認するとともに、「緊急速報識別信号」により緊急速報が緊急地震速報であるのか緊急警報放送であるのかを分類する。
「起動フラグ信号」が‘1’である(緊急速報がある)ことを確認できなかった場合には、以後の処理を保留し、起動フラグの監視を継続する。
続いて情報処理回路18は、緊急速報が緊急警報放送である場合には、地上デジタルテレビジョン放送の全受信機が機能するように、ワンセグ受信機は部分受信セグメント内の全信号、固定向けの受信機は全セグメントの信号を受信する動作を開始させる制御信号を出力する。
一方、情報処理回路18は、緊急速報が緊急地震速報である場合には、AC復号回路17により復号される全情報を読み出し、読み出した情報に基づき、警告発生手段5に必要な警告を発するための制御信号を出力する。
情報処理回路18は、復号した「緊急速報情報」から、例えば、「震度4以上の強震地域」を読み出し、位置検出手段によって検出した位置情報と当該「震度4以上の強震地域」が一致する場合、警告発生手段5に向けてその旨の制御信号を出力する。
情報処理回路18は、復号した「緊急速報情報」から、例えば、「地震発生時刻」、「震源の緯度」、「震源の経度」、「震源の深さ」、並びに「マグニチュード」を読み出し、位置検出手段によって検出した位置情報を参照して、(1)式に基づく演算を実施して計測震度の予測値を算出する。また、位置検出手段によって検出した位置情報と、現在時刻検出手段によって検出した現在時刻情報とを参照して、例えばJMA2001などの走時表を用いて主要動の予測到達時間を算出する。
位置検出手段は、当該受信機の地域的な位置を表す位置情報を検出する。好適に、位置検出手段は、電文情報に記載の「各種識別信号」内の放送事業者識別により県域或いは広域の地域を把握する。より詳細には、固定受信においては設置時の受信機による入力或いはGPS(Global Positioning System)による位置検出、移動又は携帯受信においては、GPSによる位置検出或いは携帯電話の場合基地局情報、無線LANの場合ホットスポット情報(場所を認識可能な場合、場所の手入力も含む)などにより自身の位置を検出することができる。
現在時刻検出手段は、当該受信機の現在時刻を表す現在時刻情報を検出する。好適に、現在時刻検出手段は、受信機の入力による時刻設定、標準電波(電波時計、JJY)、GPS、或いは受信している地上デジタル放送波の受信信号に含まれるTDT(Time Date Table)などから現在時刻情報を検出することができる。或いは、現在時刻検出手段は、受信機が携帯電話に具備される場合、基地局からの信号により現在の時刻を検出することができる。
警告発生手段5は、当該受信機が備える表示器に文字で表示するか、当該受信機が備えるスピーカーから音で発生させるか、当該受信機が備えるバイブレータによる振動警告を発するか、又は通常動作時とは異なる動作で知覚的に警告を発生する。或いは又、当該受信機が携帯電話、携帯情報端末(PDA)、腕時計、置時計、パーソナルコンピュータ等の何らかの機器に具備される場合には、これらの機器の機能を用いて、スピーカーから音で発生させるか、バイブレータによる振動警告を発するか、又は通常動作時とは異なる動作で知覚的に警告を発生するようにすることもできる。
本発明によるAC信号を用いる受信機では、フレーム内間欠受信モードとフレーム間間欠受信モードとを好適に用いることができる。受信信号の信頼性を高める場合はフレーム間間欠受信モードがより好適に機能し、AC信号の同期確立の信頼性を高める場合にはフレーム内間欠受信モードがより好適に機能する。また、フレーム間間欠受信モードとフレーム内間欠受信モードを併用することも可能である。これらの間欠受信モードを利用することにより、本発明の受信機は消費電力を大幅に低減することができる。
フレーム間間欠受信モードは、例えば、AC信号の同期が未確立を示す緊急速報同期確立情報を供給されている場合に決定される。この場合、第1の電源スイッチ7又は第2の電源スイッチ8のオン継続時間は、最低1フレーム以上とする。例えば、1フレームのみを用いる場合には、受信機の消費電力を大幅に低減することができる。更に、例えば2フレームを用いる場合には、偶数パリティを利用して、受信信号の信頼性を高めることができる。或いは又、例えば3フレームを用いる場合には、多数決判定して、受信信号の信頼性を高めることができる。
尚、地上デジタルテレビジョン放送の送信モードがモード3でガードインターバル比(GI比)1/8の場合、1フレームは231.336msecである。また、フレーム間間欠受信モードではAC受信・同期確立部2の電源投入タイミングの制約はなく、例えばオン/オフ間隔は所定値(例えば10秒間隔)とする。
このように、AC信号の同期未確立時のAC受信・同期確立部2への電源供給時間を1フレーム以上とすることで、AC信号の取りこぼしを防止することができ、更には、AC情報解析部3における受信信号の信頼性を高めることができる。また、オン/オフ間隔を長くすることで待機消費電力を低減することができる。
また、フレーム内間欠受信モードは、例えば、AC信号の同期が確立していることを示す緊急速報同期確立情報を供給されている場合に決定される。この場合、第1の電源スイッチ7又は第2の電源スイッチ8のオン継続時間は、図1の電文情報フォーマットと合わせて示すように、例えば20.412msec=(18/204)フレームとし、AC信号の前のフレームの最後のシンボルから電源を投入し、所要のビット、例えば既知信号の受信が終了した時点で電源を遮断する。あるいは、フレーム同期保持回路19がある程度高い精度を保てる状態であるならば、「同期信号」の一致を検出する周期を伸ばして、大半は、2.268msec=(2/204)フレームとし、「同期信号」の最後のビット、「起動フラグ信号」、及びそれに続く「既知信号」のみの期間電源を投入し、それ以外は電源を遮断することもできる。
このように、AC信号の同期確立時のAC受信・同期確立部2への電源供給時間を18シンボルあるいは2シンボルとすることで、待機消費電力を低減することができる。
なお、図2には記載しないAGC回路などの立ち上がり動作を考慮する必要のある場合には、該当する時間分早く電源を投入する。
そして、FFT11の動作においては、時間軸の受信信号を周波数軸に変換するにあたり、少なくとも1シンボル分のサンプルを一旦メモリ等に保持して、積算演算などを行うことから、当該処理時間に相当する遅延が発生する。そのため、フレーム内間欠受信モードにより動作する場合には、消費電力の大きいRF部の電源投入(オン)時間を効果的に減ずる目的で、電源投入、電源遮断のタイミングを後続のFFT11などの回路と少なくとも1シンボルずらして動作させる。
図1の電文情報フォーマットにおける、「バッファ領域」は、RF部(周波数変換回路9及びAD変換回路10)と後続の回路(FFT11以降の回路)との間の電源投入期間のずれにより、起動フラグ信号を検知したタイミングにおいて、すでに電源遮断となるAC受信・同期確立部2内のRF部のため、続く少なくとも1シンボルは信号の消失が伴うことに対応する。これに、AGC回路(図示せず)の立ち上がりに必要なシンボル数を加味して、事例では「バッファ領域」を3シンボルとしている。
ここで、起動フラグ信号監視の待機消費電力を低減するフレーム内間欠受信モードの省電力アルゴリズムについてより詳細に説明する。
図3は、本発明の実施例1の受信機における起動フラグ信号監視のフレーム内間欠受信モードの省電力アルゴリズム事例である。
本発明の実施例1の受信機は、電源の投入後、受信する地上デジタルテレビジョン放送波の周波数を設定する(S1)。これに伴い、周波数変換回路9の局部発振周波数が変更され、所要の中間周波信号がAD変換回路10に入力される。
そして、FFT11並びにAC抽出回路12を経て、AC信号に多重された同期信号との一致検出により、フレーム同期が確立する(S2)。
その後、起動フラグ信号を監視するステップ(S3)になり、指定するNfフレーム(Nfは整数)ごとに同期信号を含めて検出する電源のオン/オフ(図1(B)のT1’)と、その間の同期信号の一部と起動フラグ信号のみを検出する電源のオン/オフ(図1(B)のT2’)とを繰り返して以下動作する。
起動フラグ監視回路21は起動フラグ信号が示す緊急速報の有無を毎フレームにおいて監視し(S4)、通常の状態(緊急速報が出ていない状態が継続)の場合には、フレーム毎に図2に図示しないフレームカウンタがフレームの値を計数(n++、整数nの値を1ずつ加算)し、Nfに達する度に、n=0に戻す一方、電源制御回路22は同期信号を再検出するようにAC受信・同期確立部2への電源供給の切り替えを行う第1の電源スイッチ7をオン/オフする(S5)。
起動フラグ監視回路21は起動フラグ信号の値が緊急速報であることを検知すると、同一フレーム内で直ちに、電源制御回路22は第1の電源スイッチを常時オンとすると同時に、AC情報解析部3への電源供給の切り替えを行う第2の電源スイッチ8もオンとし、電文情報を全文読み出し、バッファ領域をマスクした後パリティビットに基づき誤り訂正を行う(S6)。
その結果、読み出された起動フラグ信号の値が再度緊急速報を示すと(S7)、緊急速報が緊急地震速報(EEW)であるか緊急警報放送(EWS)であるかを識別し(S8)、緊急警報放送の場合には、前述するように、地上デジタルテレビジョン放送の全受信機が機能するように、情報処理回路18は、図示しない別の制御回路を経て、ワンセグ受信機は部分受信セグメント内の全信号、固定向けの受信機は全セグメントの信号を受信する動作を開始させる(S9)。
一方、緊急地震速報の場合には、情報処理回路18は、警告発生手段5に当該情報を速やかに表示させる(S10)。
そして、読み出された起動フラグ信号の値が緊急速報のあることを再現しなかった場合には、フレーム内間欠受信モードによる起動フラグ信号の監視状態に復帰する(S7)。
このように、本発明によれば、受信回路の消費電力を節約しながら起動フラグ信号を監視でき、かつ、緊急速報が出て、放送局が電波に載せる時間並びに送信と受信のタイミングのずれを考慮しても、1秒程度の短時間での速やかな緊急速報の伝送が可能となる。
(実施例2)
本発明の実施例2の受信機について説明する。
本発明の実施例2の受信機は、ACキャリアの同期検波を行う場合の事例である。
送信側では、緊急速報を含む電文情報として、例えば地上デジタルテレビジョン放送の部分受信セグメント内の8本のACキャリアに、同期信号と緊急速報を識別する起動フラグ信号を連続して伝送するとともに、緊急速報識別信号、各種識別信号、緊急速報情報、リザーブビット及び誤り訂正符号のパリティビットを伝送する。なお、実施例1では、ACキャリアがDBPSK変調波として送信された事例を紹介したが、実施例2の事例では、同期信号を除き、BPSK変調波として送信されるものとする。
本発明による実施例2の受信機は、本発明の実施例1と同様の電文情報フォーマット(図1に示す電文情報のフォーマット)を受信する。ここで、受信機は、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、腕時計、置時計、パーソナルコンピュータ又は家電製品など、あらゆる機器に具備させることができるものである。
図4は、実施例2の受信機のブロック図を示す。実施例2の受信機は、アンテナ1と、AC受信・同期確立部2と、AC情報解析部3と、同期保持・電源制御部4と、警告発生手段5と、電源回路6と、AC受信・同期確立部2への電源供給の切り替えを行う第1の電源スイッチ7と、AC情報解析部3への電源供給の切り替えを行う第2の電源スイッチ8とを備え、実施例1の受信機と同様の構成となっている。
図2と異なる部分は、AC受信・同期確立部2内にあり、FFT11の後段にSP抽出回路25が設けられていること、伝搬路推定回路23と内挿補間フィルタ24がこのSP抽出回路25に続いていることである。
SP抽出回路15は、受信信号のOFDM形式のストリームから部分受信セグメント(セグメント番号#0)内のSPキャリアのみを抽出する。前述するように、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送では、振幅と位相の値が既知のSP信号p(l,k)をデータとともに伝送している。そしてSP信号は、シンボル毎12キャリア間隔で、連続したシンボルではその位置が3キャリアずつずれて4シンボル毎に繰り返して配置されている。また、その位相の値はキャリア番号kで決まり、前述の電文情報フォーマットの差動復調の基準に記載したWk(生成多項式x11+x9+1に基づく値)の値であり、これをBPSK変調波として多重している。
SP抽出回路25が抽出したSPキャリアは、伝搬推定回路23に供給される。
伝搬路推定回路23は、SP抽出回路25で抽出された、例えばISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送波の部分受信セグメント(セグメント番号#0)に多重される4シンボル分のSP信号の受信信号とWkの値によるBPSK変調波とを用いた演算を行い、各SPキャリアにおける伝搬路特性を算出する。
内挿補間フィルタ24は、起動フラグ信号が格納されているACキャリア並びにシンボル位置の伝搬路特性を求めるために、SPキャリア位置における複数の伝搬路特性から内挿補間した値を算出するためのFIRフィルタである。
そして、起動フラグ復調回路21は、ACキャリアの同期信号と起動フラグ信号間の位相変化を算出する代わりに、AC抽出回路12から抽出したAC信号に格納された起動フラグ信号の受信信号と内挿補間フィルタ24から出力された同キャリア、シンボルにおける伝搬路特性の内挿補間値の位相共役との間で乗算を行って、起動フラグ信号を復調する。
以下の動作は、本発明の実施例1の受信機と同じである。
本発明の実施例2の受信機は、本発明の実施例1の受信機と比べて回路構成がやや込み入ったものになるが、BPSK変調波の同期検波を実施するため、また、最大比合成のダイバーシティ合成が実現できるため、より高感度で起動フラグ信号を検出でき、また、緊急速報を受信できる特徴がある。
(実施例3)
本発明による実施例3の電文情報フォーマットを図5に示す。
本発明による送信装置は、図5に示す実施例3の電文情報のフォーマットに基づく緊急速報を、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送のOFDM方式に多重される各副搬送波のうちACキャリアを用いて伝送する。ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送に係る送信装置のハードウェア構成は既知であり、図示しない。
本実施例のAC信号のフレーム長は、図1に示す実施例1の電文情報のフォーマットと同様に、TMCC信号と同一であり、OFDM信号の204シンボルで構成され、シンボル毎に1ビットが送信される。
「差動復調の基準」、「同期信号」及び「起動フラグ信号」は、図1に示す実施例1の電文情報のフォーマットと同じである。
なお、「同期信号」のうち、最後のビット(第16シンボル)を前付きの「既知信号」として用いる。
「起動フラグ信号」に後付きの「既知信号」は、例えば前付きの既知信号である「同期信号」の最後の第16シンボルと同じ値の1ビット(BPSK変調波としてみた値)を割り当てる。
そして、本発明の主たる要素である「バッファ領域」、その後の「緊急速報識別信号」、「各種識別信号」、「緊急速報情報」、「リザーブビット」並びに「パリティビット」は、図1の電文情報フォーマットにおける各情報と同じである。よって、ここでの説明は省略する。
ただし、この実施例3の電文情報フォーマットにおいては、「起動フラグ信号」以降の各ビットの情報がBPSK変調波によって送信されているものとする。また、8本のACキャリア全てに同じ情報が多重されており、唯一その位相関係がWkの値により規定されるものとする。
同期検波において、各ACキャリアはWkの値によるBPSK変調波を乗算することにより、同一の信号となり、8本すべてをダイバーシティ合成のため加算できる。
本発明の実施例3の受信機の主たる特徴は、図5に示す電文情報フォーマットに格納される「起動フラグ信号」をシンボル方向に挟んで置かれた2つの「既知信号」を有する点である。
これにより、図4の実施例2の受信機における、SP抽出回路25とともに動作する伝搬路推定回路23並びに内挿補間フィルタ24の動作を簡略化できる。
つまり、伝搬路推定回路23は、ACキャリアの受信信号と2つの既知信号との間の演算により該ACキャリア上の、該2つの既知信号のシンボルにおける伝搬路特性hA、hBを算出するとともに、両者の和の1/2、つまり、(hA+hB)>>1(「>>1」は1ビットの右シフトとする)を計算するのみにより、「起動フラグ信号」における伝搬路特性を算出して出力できる。
次に、本発明による実施例3の受信機の構成について説明する。
前述したように、送信側では、緊急速報を含む電文情報(図5に示す電文情報のフォーマット)として、例えば地上デジタルテレビジョン放送の部分受信セグメント内の8本のACキャリアに、同期信号とともに、緊急速報を識別する起動フラグ信号、既知信号、緊急速報識別信号、各種識別信号、緊急速報情報、及びリザーブビットに誤り訂正符号のパリティビットをつけて伝送する。
本発明による実施例3の受信機は、図5に示す電文情報のフォーマットを受信する。ここで、受信機は、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、腕時計、置時計、パーソナルコンピュータ又は家電製品など、あらゆる機器に具備させることができるものである。
図6は、実施例3の受信機のブロック図を示す。実施例3の受信機は、アンテナ1と、AC受信・同期確立部2と、AC情報解析部3と、同期保持・電源制御部4と、警告発生手段5と、電源回路6と、AC受信・同期確立部2への電源供給の切り替えを行う第1の電源スイッチ7と、AC情報解析部3への電源供給の切り替えを行う第2の電源スイッチ8とを備える。
また、AC受信・同期確立部2は、周波数変換回路9と、AD変換回路10と、FFT11と、AC抽出回路12と、伝搬路推定回路23と、起動フラグ復調回路13と、フレーム同期検出回路14とを備える。
更に、AC情報解析部3は、AC復調回路15と、電文マスク回路29と、誤り訂正回路16と、AC復号回路17と、情報処理回路18とを備える。情報処理回路18は、位置検出手段及び現在時刻検出手段を備える。
そして、同期保持・電源制御部4は、フレーム同期保持回路19と、タイミング制御回路20と、起動フラグ監視回路21と、電源制御回路22とを備える。
各回路の大半の構成要素は、これまで記述した実施例1並びに実施例2の受信機と同じであるので、同じ機能を有する構成要素の説明は省略し、異なる部分について述べる。
図6に示す実施例3の受信機の、実施例2の受信機と異なる部分は、図4におけるSP抽出回路25並びに内挿補間フィルタ24がないことと、伝搬路推定回路23の作用である。
実施例3の受信機は、SPを用いずに伝搬路特性を推定する。よって、SP抽出回路25を持たない。また、直接ACキャリアから伝搬路特性の推定値を算出できるので、内挿補間フィルタ24も不要である。
そして、伝搬路推定回路23は、AC抽出回路で抽出された受信信号の8箇所のACキャリアのストリームから各フレームの第16シンボルと第18シンボル(先頭シンボルを第0シンボルとする)を抜き出し、AC信号に「既知信号」として格納されて送信されるものと同じBPSK変調波(「同期信号」の最終ビットと同じ)との演算を行って、hAとhBと求め、両者に挟まれる「起動フラグ信号」のシンボルにおける伝搬路特性を(hA+hB)>>1の演算を行って算出する。
起動フラグ復調回路13は、AC抽出回路12で抽出された受信信号の8箇所のACキャリアのストリームから各フレームの起動フラグ信号(第17シンボル)を抜き出し、伝搬路推定回路が出力する伝搬路特性の位相共役との間で乗算を行い、起動フラグ信号を復調して、送信された起動フラグ信号のBPSK変調波を推定する。
8箇所(8本)のACキャリアに基づくダイバーシティ合成は、受信信号と伝搬路特性の位相共役との積を8本のキャリアについて積算し、同様に別途算出する伝搬路特性の電力値の積との除算を行うことで、最大比合成によるダイバーシティ受信とする。
再び図5(A)及び図5(B)を参照するに、本実施例では、起動フラグ信号を‘1’か‘0’の1ビットで表す場合(‘1’のとき緊急速報があるとする)、起動フラグ信号の前後に既知信号1ビットずつを配置して伝送することで、従来型のSP信号を用いる方法よりも簡便に精度良く伝搬路特性を推定することができるようにしている。
具体的に説明するに、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送の伝送においては、OFDM方式を用いている。よって、シンボルl、キャリアk(l,kは整数)の送信信号、伝搬路特性、受信信号ならびに雑音を、s(l,k),h(l,k),r(l,k),n(l,k)とおくと、これらには次式の関係がある。
r(l,k)=h(l,k)×s(l,k)+n(l,k) ・・・(4)
通常、これらのうち値が既知なのは、受信信号r(l,k)のみである。
ARIB規格STD−B31において、TMCC信号やAC信号はDBPSK変調波にマッピングされて送信される。
情報を前後する2シンボル間の位相変化に置き換えて伝送するこのDBPSK変調波を用いると、連続する2シンボルl1とl2により情報d(dは‘−1’または‘1’とする)が送信されるため、情報dと送信信号s(l1,k)及びs(l2,k)との間には、次式の関係が得られる。
s(l2,k)=d×s(l1,k) ・・・(5)
(4)式において、シンボルl1とl2を代入すると、次式が得られる。
r(l1,k)=h(l1,k)×s(l1,k)+n(l1,k)・・・(6)
r(l2,k)=h(l2,k)×s(l2,k)+n(l2,k)・・・(7)
ここで、h(l,k)がシンボルl1とl2の間で変化がなく、雑音n(l,k)も他に比し無視できる程度に小さければ、(7)式を(6)式で除算することにより、次式のとおり情報dを復調できる。
r(l2,k)/r(l1,k)≒s(l2,k)/s(l1,k)=d
・・・(8)
このため、信号を受信する際、何よりも先に復調される伝送制御に係る情報を伝送するTMCC信号やAC信号では、DBPSK変調波が用いられる。
(8)式あるいは(8)式の変形である2シンボル間の位相共役による乗算は、非同期検波あるいは遅延検波の代表的な手法である。
しかしながら、遅延検波は、同期検波に比べて同じビット誤り率(BER)を得るために必要なC/Nが1dB程度大きくなってしまうので、受信機がポケットやカバンの中にあっても、緊急速報の起動フラグ信号を高感度に受信しようとする場合に課題となる。
また、ダイバーシティ受信(ワンセグの場合)についても、TMCC信号の4本、AC信号の8本を有効に利用できない。理論的には、それぞれ6dBと9dBの改善が期待されるところであるが、雑音n(l,k)が無視できない、伝搬路特性h(l,k)の変化が無視できないなどにより劣化する。
そこで、図5(A)に示す電文フォーマットを用いる伝送システムの場合では、送信装置側はBPSK変調波によりTMCC信号やAC信号を送信し、受信機側は、このBPSK変調波のTMCC信号やAC信号を同期検波により受信するように構成することができる。
このため、(4)式において、伝搬路特性h(l,k)を近似的に既知のものとする。
従来からのISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送では、この伝搬路特性h(l,k)を取得できるように、振幅と位相の値が既知のSP信号p(l,k)をデータとともに伝送している。ここでも雑音n(l,k)が無視できることを前提に、SP信号が送信されるシンボルlとキャリアkにおいて、(1)式から伝搬路特性h(l,k)を算出できるので、この値をh(l,k)の推定値として、ISDB−T方式の規格で定められているDBPSK変調波を用いるTMCC信号やAC信号のキャリア位置での伝搬路特性h(lt,k),h(la,k)を内挿補間により求め、送信信号s(lt,k),s(la,k)の推定値を計算する。
SP信号は4シンボル周期でキャリア位置を変えて送信されており、また、TMCC信号やAC信号のキャリア位置で送信されることはないため、伝搬路特性h(l,k)を算出する回路が複雑であることは、容易に推測できる。
よって、本発明では、TMCC信号あるいはAC信号のみを受信して、起動フラグ信号の伝送されるタイミングでの伝搬路特性h(l,k)を求めることができるように、起動フラグ信号のシンボル方向に前後するビットで既知信号を送るフォーマットとしている(図5(A)参照)。
この場合も内挿補間は必要だが、得られた2シンボル分の伝搬路特性を単純に加算して1ビット分ビットシフトをすればよく、簡単に求められる。
該当するシンボルをl1、l2、l3とすると、
h(l2,k)=(h(l1,k)+h(l3,k))/2
=(h(l1,k)+h(l3,k))>>1 ・・・(6)
(「>>1」は1ビットの右シフトとする)と表せる。
また、本発明の内挿補間では起動フラグと同一キャリアかつ隣接したシンボルの伝送路特性を用いるので、従来型のSP信号を用いる方法よりも精度良く伝搬路特性を推定することができる。
また、起動フラグ信号の監視にあたって、この起動フラグ信号の前後の既知信号を含む期間のみ電源供給を行うようにすることにより(図5(B)参照)、受信機の消費電力を節約することもできる。
そして、起動フラグ信号の値が緊急速報であることを検知すると、同一フレーム内で直ちに、AC情報解析部3は電源供給され、電文情報を全文読み出し、本発明の主たる構成であるバッファ領域と電文マスク回路29を用いて誤り訂正を行って、起動フラグ信号の値の再検出の後、例えば、緊急速報が緊急地震速報であれば、警告発生手段5に当該情報を速やかに表示させることもできる。
このように、本実施例によれば、受信回路の消費電力を節約しながら起動フラグ信号を監視でき、かつ、より高感度で受信可能であり、緊急速報が出て、放送局が電波に載せる時間並びに送信と受信のタイミングのずれを考慮しても、1秒程度の短時間での速やかな緊急速報の伝送が可能となる。
上述の実施例については特定の符号化方式を代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変形及び置換をすることができることは当業者に明らかである。例えば、上述した実施例では、本発明の理解を容易にするために、本発明に係る受信機を、例えば携帯電話に具備させることが可能であるとして説明したが、当該携帯電話が予め有する復調及び復号機能に本発明に係る受信機の機能を統合させることもできる。例えば、当該携帯電話が待機モードである場合には、上述の実施例と同様に動作させることができ、或いは又、当該携帯電話が通常動作モードである場合には、電文情報におけるフラグの値の判定に応じて、電源供給制御を行うことなく、緊急速報を復号し、当該携帯電話の位置する地域の震度及び到達時間の予測情報を計算し、警告を発するようにしてもよい。従って、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。