JP5193476B2 - クロストリジウム・ブチリカムのバクテリオシンをコードする遺伝子およびそのタンパク質 - Google Patents

クロストリジウム・ブチリカムのバクテリオシンをコードする遺伝子およびそのタンパク質 Download PDF

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本発明は、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)のバクテリオシンをコードするDNAの3’末端側の特定のDNAからなる遺伝子、バクテリオシンのC末端側の特定のアミノ酸配列からなるタンパク質、当該遺伝子を有する組換えベクター、およびこの組換えベクターを含む宿主細胞を提供するものである。
クロストリジウム・ブチリカムは、現在、整腸剤などの医薬品、食品及び飼料添加剤など様々な分野において有用菌として使用されており、広く一般に知られている。例えば、非特許文献1または2では、クロストリジウム・ディフィシル下痢症に対してクロストリジウム・ブチリカム投与による治療が提案されている。これは、クロストリジウム・ブチリカムとクロストリジウム・ディフィシルとの腸内での競争的排除(competitive exclusion)を利用したものである。
日本細菌学会誌43(4)、829(1988) 感染症学会誌64(11)、1425(1990)
しかしながら、クロストリジウム・ブチリカムのクロストリジウム・ディフィシル下痢症への有効性に対する詳細なメカニズムや活性物質については、未だ十分には検討されていない。
一方、クロストリジウム・ブチリカムは、crypticプラスミドを有することが知られている。本発明者らは、該プラスミドが何らかの重要な機能を果たすのではないかと推定し、該プラスミドの塩基配列や活性部位についての詳細な検討を行った。
したがって、本発明の目的は、クロストリジウム・ブチリカムのcrypticプラスミドを解析し、その塩基配列、機能および活性部位を特定することにある。
本発明者らは、クロストリジウム・ブチリカム、具体的にはクロストリジウム・ブチリカムは、クロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ 588(Clostridium butyricum MIYAIRI 588) FERM BP−2789(微工研菌寄第2789号)が有するプラスミドの全塩基配列を決定し、該プラスミドの機能を決定した。
その結果、該プラスミドが発現するタンパク質の一つがバクテリオシンであることを見出した。さらに、該バクテリオシンを構成するアミノ酸配列のうち、C末端側の特定のアミノ酸配列からなるタンパク質が活性部位であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の(a)または(b)のDNAからなる遺伝子:(a)配列番号1の塩基配列からなるDNA;または(b)上記(a)の塩基配列と90%以上の相同性を有し、かつバクテリオシン活性を有するタンパク質をコードするDNAである。
本発明の(c)〜(f)の組換えタンパク質は、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、クロストリジウム・ベイジェリンキー(Clostridium beijerinckii)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)などの特定の細菌に対して抗菌スペクトルを示す。このため、本発明の(c)〜(f)の組換えタンパク質は、下痢症のクロストリジウム・ディフィシルが原因菌であるクロストリジウム・ディフィシルに有効である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の第1は、配列番号1の塩基配列からなるDNAを含有する遺伝子、配列番号2の推定されるアミノ酸配列からなるタンパク質、および配列番号2にメチオニン(M)を最初に付加した配列番号3のアミノ酸配列からなるタンパク質を提供するものである。
本発明の遺伝子を構成するDNAは、配列番号1の塩基配列からなるDNAと90%以上の相同性を有するDNA(以下、「DNA変異体」と称することもある)であってもよい。この際、DNA変異体は、クロストリジウム・ブチリカムの産生するバクテリオシンをコードすることが必須であり、さらに上記配列番号1の塩基配列からなるDNAと相同性が90%以上、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上、最も好ましくは99%以上の塩基配列からなることが好ましい。
本発明において、DNA変異体は、当該分野において既知の方法によって、上記配列番号1の塩基配列からなるDNAから調製できる。このような操作としては、例えば、部位特異的突然変異誘発、点変異、欠失、重複、逆位、挿入、転座、遺伝コードの縮重によりアミノ酸配列を変えずに塩基配列のみを変更する保存的変更などが挙げられる。
また、本発明の組換えタンパク質は、配列番号2または3のアミノ酸配列において1若しくは数個、好ましくは1〜24個、より好ましくは1〜15個、さらに好ましくは1〜8個、特に好ましくは1〜3個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつバクテリオシン活性を有するタンパク質(以下、「タンパク質誘導体」とも称する)であってもよい。この際、タンパク質誘導体としては、上記したようなDNA変異体によってコードされるタンパク質、さらには基本的な活性は変化させずにアミノ酸配列が保存的あるいは半保存的に変更(例えば、グリシン、バリン、ロイシンやイソロイシン等の脂肪族鎖を有するアミノ酸同士の置換やフェニルアラニン、チロシンやトリプトファン等の芳香族鎖を有するアミノ酸同士の置換)されたタンパク質などが挙げられる。
本発明の配列番号1に示される塩基配列は、配列番号4の5’末端側から703〜954番目の塩基配列からなるDNAである。また、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、配列番号4から推定されるアミノ酸配列(配列番号5)のN末端側から235〜317番目のアミノ酸配列からなるタンパク質である。
本発明者らは、実施例で示されるように、クロストリジウム・ブチリカムのcrypticプラスミドを解析した結果、バクテリオシンをコードするDNA配列を決定した(配列番号4)。また、本発明者らは、該バクテリオシンを構成するアミノ酸配列のうち、該アミノ酸配列のC末端側配列である配列番号2のタンパク質が抗菌活性部位であることを特定した。さらに、配列番号4のうち、配列番号2に対応する塩基配列を塩基配列1とした。
以下、本明細書において、以下の(c)〜(f)の組換えタンパク質をCTバクテリオシンと称する:(c)配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質;(d)配列番号2のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつバクテリオシン活性を有するタンパク質;(e)配列番号3のアミノ酸配列からなるタンパク質;または(f)配列番号3のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつバクテリオシン活性を有するタンパク質。
配列番号4でコードされるバクテリオシンおよびCTバクテリオシンは、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・ベイジェリンキーに抗菌活性を有する。抗生物質等の化学療法薬は、今日、種々の感染症の予防や治療に使用されており、広域な抗菌スペクトルと強力な抗菌活性を有するものが主流となっている。したがって、抗生物質等を投与すると標的病原菌のみならず種々の有用菌にまで作用して、一定の割合で棲み分けがされていた腸内菌叢のバランスが崩れ、通常は他の正常菌叢構成菌と拮抗し菌数の少ない抗生物質耐性菌が爆発的に増殖して新たな感染症を惹起することがある。例えば、各種広域合成ペニシリン、セファロスポリン、クリンダマイシン、リンコマイシン等の抗生物質の投与によって重篤な下痢、偽膜性大腸炎の発症がみられるが、これは腸内に異常増殖したクロストリジウム・ディフィシルが産生する腸管毒(トキシンA、D−l毒素)および細胞毒(トキシンB、D−2毒素)によるものであることが知られている。バクテリオシンおよびCTバクテリオシンは、クロストリジウム・ディフィシルに対して抗菌活性を有し、また、抗菌スペクトルが狭い。したがって、クロストリジウム・ディフィシルに特異的に作用し、他の有用菌には作用しないため、非常に有用である。また、CBM588はクロストリジウム・ディフィシルに対する拮抗作用があることが知られているが(日本細菌学会誌43(4)、829(1988)、感染症学会誌64(11)、1425(1990))、バクテリオシンによる抗菌活性はそのメカニズムの1つであると考えられる。
また、バクテリオシンは、トリプシン処理により分解される(Journal of General Microbiology(1976),95,67−77)のに対し、CTバクテリオシンは、トリプシンにより分解されないことを本発明者らは見出した。これは、CTバクテリオシンを薬剤として摂取したときに、小腸で薬剤が分解されず、ターゲット器官である腸に適切に薬剤有効量を到達させることができるという点で、非常に有利である。
本発明の第2は、本発明の第1の遺伝子を含有する組換えベクターである。
該組換えベクターは、第1の遺伝子を含有する限り、特に限定されない。具体的には、配列番号1の塩基配列からなるDNAの最初に開始コドンATGを付加した遺伝子;配列番号4の塩基配列からなるDNAからなる遺伝子;配列番号6の塩基配列からなるDNAからなる遺伝子(配列番号4の塩基配列から、シグナル配列と推定される部位を除去した配列);を適当な制限酵素で切断された発現用ベクター中に連結されることによって調製される。
また、組換えベクターの形態としては、プラスミド、コスミド、人工的な染色体、ウィルスまたはファージなどが挙げられる。さらに、上記概念による組換えベクターは、本発明の遺伝子がトランスフェクションまたは形質転換された宿主細胞を選択できるような一以上の選択マーカーを含むものであってもよい。このような選択マーカーの例としては、カナマイシン、アンピシリン、ネオマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ゼオシン等の抗生物質、および細胞死関連遺伝子による制御などが挙げられる。
また、組換えベクターは、本発明の第1の遺伝子を発現させるプロモーターまたは他の制御配列(例えば、細菌発現用のリボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナル、転写終止配列、上流制御領域、エンハンサー、オペレーターやシグナル配列等)が本発明の遺伝子に連結されるものであることが好ましい。このようなプロモーターまたは他の制御配列は、本発明の第1の遺伝子を発現できるものであれば特に制限されることなく、当該分野において既知のものが使用される。具体的には、T7プロモーター、T7ターミネーター、lacプロモーター、trpプロモーター、tacプロモーター、spaプロモーター、SV40プロモーター、CMVプロモーター、レトロウィルスLTR(long terminal repeat)、EFプロモーター等、およびこれらのプロモーターの一部などが挙げられる。組換えベクターは、上記制御配列に加えて、タンパク質の発現を調節できる調節配列を含むものであってもよい。この際、調節配列としては、調節化合物の存在や種々の温度若しくは代謝条件等がある。
本発明の第3は、上記した本発明の組換えベクターを含む宿主細胞が提供される。
宿主細胞は、当該分野において既知の方法によって、本発明の組換えベクターを宿主細胞にトランスフェクションまたは形質転換することによって得られる。また、トランスフェクションまたは形質転換される宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌等の原核細胞、および酵母、カビ、ヒト腎胚細胞(293)、サル腎細胞、COS細胞、CHO細胞、ショウジョウバエ(Drosophila)細胞またはネズミL細胞等の哺乳動物細胞、バキュロウィルスによる昆虫細胞、ガン細胞等の真核細胞、カイコ等の個体が挙げられ、これらのうち、操作が容易でかつ当該分野において良く知られている点、大量培養が容易で目的とする遺伝子やタンパク質を大量に産生できる点及び目的とする遺伝子やタンパク質の精製方法がよく確立されている点などを考慮すると、大腸菌、CHO細胞が本発明において好ましく使用される。
本発明の第2のベクター、および宿主細胞を使用することにより、活性部位であるCTバクテリオシンを製造することが可能となり、さらに大量生産が可能であるため、工業生産的にも非常に有意である。
本発明の組換えCTバクテリオシンは、バクテリオシン活性を有するため、該CTバクテリオシンを有効成分とする医薬組成物とすることができる。該医薬組成物は、クロストリジウム・ディフィシル下痢症および偽膜性大腸炎の予防および治療用として患者に投与することができる。
医薬組成物は、上記CTバクテリオシン、および製薬上許容される担体と配合して、または製薬上許容される溶剤に溶解もしくは懸濁した組成物として、経口的または非経口的に患者に投与できる。たとえば、該タンパク質を添加剤、例えば、乳糖、ショ糖、マンニット、トウモロコシデンプン、合成もしくは天然ガム、結晶セルロース等の賦形剤、デンプン、セルロース誘導体、アラビアゴム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボシキメチルセルロースカルシウム、カルボシキメチルセルーロースナトリウム、デンプン、コーンスターチ、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム等の滑沢剤、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム等の充填剤または希釈剤等と適宜混合して、錠剤、散剤(粉末)、丸剤、および顆粒剤等の固型製剤にすることができる。また、硬質または軟質のゼラチンカプセル等を用いてカプセル剤としてもよい。これらの固型製剤には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、セルロースアセテートフタレート、メタアクリレートコポリマー等の被覆用基剤を用いて腸溶性被覆を施してもよい。さらに、バクテリオシンを一般的に用いられる不活性希釈剤に溶解して、必要に応じて、この溶液に浸潤剤、乳化剤、分散助剤、界面活性剤、甘味料、フレーバー、芳香物質等を適宜添加することにより、シロップ剤、エリキシル剤等の液状製剤とすることもできる。
上述したうち、好ましい投与形態や投与経路などは、担当の医師によって選択される。
また、本発明の医薬組成物全体における有効成分の含有量は、投与時の形態、病気の種類や重篤度や目的とする投与量などによって様々であるが、一般的には、原料の全質量に対して、0.1〜100質量%、好ましくは5〜20質量%、特に好ましくは2〜10質量%である。
本発明の医薬組成物の投与量は、患者の年齢、体重及び症状、目的とする投与形態や方法、治療効果、および処置期間等によって異なり、正確な量は医師により決定されるものであるが、通常、1日当たり、好ましくは1〜50mg、より好ましくは10〜30mgの範囲である。
以下、実施例を用いて、より具体的に本発明を説明する。なお、本発明が下記実施例に
限定されることはない。
(操作1)プラスミドの抽出
Cloctridium butyricum MIYAIRI 588(以下、CBM588と称する)の菌体200mgを50mM Tris−HCl(pH8.0)(25%sucrose,1mg/ml lysozyme)1mlに懸濁し、室温で15分間インキュベートした。該懸濁液に10mlの溶解バッファー(50mM Tris−20mM EDTA中2% SDS,pH12.5)を加えて混合した後、34℃で20分間インキュベートした。その後、7mlの2M Tris−HCl(pH7.0)と1.2mlの5M NaClとを添加し、4℃で4時間静置した。フェノール抽出、エタノール沈殿処理し、該処理物を150μlのRNase(20μg/ml)を含むTEバッファーで溶解した。これを0.7%のアガロースゲルで電気泳動後、エチジウムブロマイドで染色し、QIAquick Gel extraction キット(Qiagen社製)を用いてプラスミドを抽出した。
得られたプラスミドを制限酵素HindIIIとEcoRVとで37℃、3時間消化し、それぞれの制限酵素断片を予め制限酵素処理したクローニングベクターpCR2.1(Invitorgen社製)にライゲーションした。その後、E.coli TOP10(Invitorgen社製)に形質転換し、100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地で生育した株を選択した。
選択した株からベクターを抽出し、シーケンス解析した。シーケンス解析は、Dye Terminator Cycle sequencing FC Ready Reaction Kitによって得られた反応産物をGenetic Analyzer310(Applied Biosystems Inc.)で解析を行い、プラスミドの全塩基配列を決定した。該プラスミドをpCBM588と称した。
pCBM588の構造を図1に示す。pCBM588の全塩基数は、8060bp、GC%は24.3%であり、9つのオープンリーディングフレーム(ORF)が推定された。なお、オープンリーディングフレーム(ORF)は、GenMark.hmm software program によって解析した。
図1のORF3がコードする塩基配列は、配列番号4で示される配列であった。また、ORF3がコードする34kDaのタンパクはC.tyrobutyricumの産生するClosticin574(Applied and Environmental Microbiology(2003),Vol.69,No.3,p.1589−1597)と48%のアミノ酸の相同性が認められた。Closticin574は、バクテリオシンであり、配列番号4から推定されるアミノ酸配列の配列番号5で示されるタンパク質は、バクテリオシンであると断定した。また、該タンパク質は、分子量や抗菌スペクトルからbutyricin7423(Journal of General Microbiology(1976),95,67−77)と同一であると推察された。なお、アミノ酸配列の相同性検索は、NCBI−BLAST検索によって行った。
次に、得られたアミノ酸配列から、シグナルペプチドの検索を行った。シグナルペプチドの検索はsignalP3.0を用いた。その結果、シグナルペプチドの配列は、N末端側の29アミノ酸(MIKKISKITSYILFAALTTSLLPSINANA)であることがわかった。このため、以下の操作例2においては、該シグナルペプチドを除去した部分の遺伝子(配列番号6)を用いた。
(操作例2)組換えバクテリオシンの産生
シグナルペプチドを除いたバクテリオシン遺伝子を大腸菌発現ベクターに組み込むために、図2に示されるようにして以下の操作を行った。
制限酵素NcoIの認識部位を持つプライマーFbac−01(配列番号7) 5’ ACTGCCATGGCTCAATCTAATGAATCATC 3’と制限酵素HindIII認識部位を持つプライマーRbac−02(配列番号8) 5’TGGAGCAAGCTTAGAAAAACAATTTTCTTTAATAT 3’とを用いて、操作1で得られた配列番号6の遺伝子をPCRによって増幅した(図2)。PCR産物はNcoIとHindIIIとで37℃、3時間制限酵素処理を行い、予めNcoIとHindIIIとで切断した発現ベクターpET21d(Novagen社製)にライゲーションして、バクテリオシン発現ベクターpBAC01を構築した。
pBAC01を発現宿主であるE.coli BL21DE3(Novagen社製)に形質転換し、100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地で生育した株を選択した。選択されたシングルコロニーを100mlのLB培地(アンピシリン100μg/ml)に接種し、37℃で振とう培養した(非誘導菌体)。
OD600が0.6に達した時点でバクテリオシン遺伝子の発現を誘導するために、Isopropyl−β−D−thiogalactopyranoside(IPTG)を1mMの濃度になるように添加してさらに4時間培養した。培養終了後、遠心分離に
よって菌体を回収し、−20度で凍結した(誘導菌体)。
組換えタンパクの精製はNi−NTA fast start kit(Qiagen社製)を用いて行った。菌体ペレットを融解した後、lysozyme 10mgとBensonase nuclease(Merck社製)250Uを含む10mlのnative lysis buffer(pH8.0)で懸濁して30分間氷上でインキュベートした(可溶化画分)。これを14,000gで30分間遠心分離し、その上清を0.5mlのnickel−nitrilotriacetic acid(Ni−NTA)カラムにアプライした(通過したものを「カラム通過画分」とする)。4mlのnative wash buffer(pH8.0)で2回洗浄した後(図3中、1回目の洗浄を「洗浄1」と、2回目の洗浄を「洗浄2」とする)、1mlのnative elution buffer(pH8.0)で2回溶出し、6×His tagタンパクを溶出した。
回収した全ての画分は等量の2×Laemmliサンプルバッファーを添加し95℃で5分間加熱した後、Sodium dodecyl sulfate−polyacrylamide gel electrophoresis(SDS−PAGE)(14%)によって分離した。ゲルはCoomassie blue R−250によって染色した。結果を図3に示す。図3に示すように、溶出1回目(図中、「溶出1」)および溶出2回目(図中、「溶出2」)のサンプルには、約29kDaおよび約10kDaにバンドが検出された。
次に、組換えタンパク質を免疫学的手法によって検出した。SDS−PAGEの後、ポリアクリルアミドゲル中のタンパクをPVDF膜にブロッティングした。1次抗体としてPenta His Antibody(Qiagen社製)、2次抗体として西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG1heavy chain(Serotec社製)を使用した。検出は4−クロル−1−ナフロールと過酸化水素を使用した発色法を用いた。結果を図4Aに示す。なお、図4Aに示したものは、溶出1回目のサンプル(図3のレーン7)である。
また、SDS−PAGEの後、アミノ酸配列分析装置はProcise 492cLCを使用して、PVDF膜にブロッティングした組換えタンパク質のアミノ酸分析を行った。その結果、約10kDaのタンパク質のN末端アミノ酸配列はPSAWQであることがわかった。すなわち約10kDaのタンパク質は、配列番号5のN末端側から235〜317番目のアミノ酸配列(配列番号2)からなるタンパク質であることがわかった。
(評価例1)
組換えバクテリオシンの活性を測定するために、SDSとβ−メルカプトエタノールを2×Laemmliサンプルバッファーから除いた非還元のSDS−PAGEを行った。サンプルは溶出電気泳動終了後、ゲルを固定液(20%イソプロパノール、10%酢酸、70%水)で固定した後、水で洗浄し、最後にPBS中で30分間振とうした。変法GAM寒天培地「ニッスイ」(日水製薬社製)にゲルを載せ、その上に0.75%寒天と1%の指示菌(C.pasteurianum JCM1408)の培養液を含むGAMブイヨン「ニッスイ」(日水製薬社製)を重層し、37℃で16時間嫌気培養を行った。図4Bに、溶出1回目のサンプル(図3のレーン7)の結果を示す。図4Bに示すように、図3の10kDa付近のバンドのタンパク質(以下、このタンパク質をバクテリオシンAと称する)が抗菌活性を示すことがわかった。バクテリオシンAは、約34kDaの完全なバクテリオシン(バクテリオシンB)の一部である。バクテリオシンAは図4Aで示したように免疫染色によってHisタグが検出されたため、バクテリオシンBのC末端領域であることが示された。
(評価例2)
96穴のマルチプレートにGAMブイヨンでバクテリオシンを含む試料(溶出画分とCBM588をGAMブイヨン24時間培養した上清)を連続2倍希釈して100μずつ分注し、そこに1%の指示菌(C.pasteurianum JCM1408(ATCC6013))を含むGAMブイヨンを100μL添加した。37℃で16時間嫌気培養した後、600nmの吸光度を測定した。サンプル無添加の対照と比べ50%以上の増殖抑制が認められた希釈段階をバクテリオシンの活性単位(AU)とした。結果を表1に示す。
(評価例3)
GAM寒天培地「ニッスイ」(日水製薬社製)の上に0.75%寒天と1%の指示菌(Clostridium difficile JCM 1296(ATCC9689))の培養液を含むGAMブイヨンを重層した。その上に6mmのペーパーディスクを載せ、25μlのサンプルを添加後、37℃で16時間嫌気培養を行った。ディスクの周囲に認められる透明の増殖阻止帯を観察した。サンプルは、上記溶出1を用い、50mM PBSを用いて10倍〜100倍に希釈した。
結果を図5に示す。図5に示すように、バクテリオシンAを含むサンプルは、Clostridium diffcileに対して、抗菌活性を有することがわかる。C末端側であるバクテリオシンAであっても活性が維持されることから、バクテリオシンの抗菌活性部位は、C末端側にあることが明らかとなった。
(評価例4)
試料は、溶出1を50mM トリスバッファー(pH8.0)で100倍希釈したものを用いた。
トリプシン処理:ウシ脾臓製トリプシン(和光純薬工業製)を1mg/lの濃度で50mM トリスバッファー(pH8.0)を用いて37℃、6時間反応を行った。
その結果、図6に示すようにバクテリオシンAは、トリプシンで処理しても、抗菌活性が維持されることが明らかとなった。
プラスミドpCBM588の構造を示す概略図である。 操作例2のPCRの概略を示す図である。 操作例2におけるSDS−PAGEの結果を示す図である。 操作例2におけるイムノブロッティングの結果を示す図および組換えバクテリオシンの活性の結果を示す図である。 Clostridium diffcile JCM 1296に対するバクテリオシン活性の結果を示す図である。 バクテリオシンをトリプシン処理した結果を示す図である。

Claims (7)

  1. 以下の(a)または(b)のDNAからなる遺伝子:
    (a)配列番号1の塩基配列からなるDNA;または
    (b)上記(a)の塩基配列と90%以上の相同性を有し、かつバクテリオシン活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  2. 以下の(c)または(d)の組換えタンパク質:
    (c)配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質;または
    (d)配列番号2のアミノ酸配列において1〜8個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつバクテリオシン活性を有するタンパク質。
  3. 以下の(e)または(f)の組換えタンパク質:
    (e)配列番号3のアミノ酸配列からなるタンパク質;または
    (f)配列番号3のアミノ酸配列において1〜8個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつバクテリオシン活性を有するタンパク質。
  4. 請求項1に記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
  5. 請求項1に記載の遺伝子および該遺伝子に連結されたプロモーターまたは他の調節配列を含有する組換えベクター。
  6. 請求項4または5に記載の組換えベクターを含む宿主細胞。
  7. 請求項2または3に記載の組み換えタンパク質を含む医薬組成物。
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