JP5184453B2 - 端子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、絶縁被覆を有する導線に被せた端子部材を電極具で押圧しながら通電することで、絶縁被覆を炭化させて端子部材と導線とを導電接合するヒュージング処理工程を有する端子の製造方法に関する。
従来、絶縁被覆を有する導線に端子部材を導電接合してなる端子の製造において、ヒュージング(抵抗溶接)処理が行われている。このヒュージング処理では、絶縁被覆を有する導線の外周に被せた金属具などの端子部材を一対の電極具で挟んで押圧し、その状態で、両電極具の間に電流を流すことで、端子部材の発熱によって絶縁被覆を炭化(溶融)させ、これにより端子部材と導線を導通状態で接合してなる端子(ターミナル)を形成する。
ところで、ヒュージング処理において絶縁被覆を炭化させるには、所定温度以上の高温で加熱しなければならない。しかしながら、この高温加熱によって、接合箇所だけでなくその近傍の絶縁被覆にも炭化が及んでしまい、端子近傍の絶縁被覆が絶縁の機能を果たさなくなるおそれがある。これにより、端子から所定距離内の導線の絶縁保障ができなくなるという問題があった。
この点に対処するため、特許文献1には、絶縁被覆付きの線材に端子部材をヒュージング処理で接合するときに、冷却治具によって端子から出ている線材を冷却することで、端子近傍の絶縁被覆が炭化することを抑制する技術が開示されている。この従来技術によれば、冷却治具による冷却作用で端子の近傍の絶縁被覆が炭化されることを抑制できる。
特許文献1で端子を形成する線材は、二本の導線のみを備えたものであるため、線材の外周面を冷却するだけで、絶縁被覆の炭化抑制が可能である。しかしながら、特許文献2に示すような絶縁被覆を有する導線を多数本束ねた束状の導線(導線束)に対してヒュージング処理で端子を形成する場合、特許文献1に記載の冷却治具では、導線束の外周側面の熱を除去することができても、導線束の内部の熱を十分に除去することができないという問題がある。そのため、このような導線束では、端子近傍の絶縁被覆の炭化を十分に抑制できないおそれがあった。特に、ハイブリッド車両などに搭載する比較的大型のモータのコイルとして用いる導線束は、数十本以上の導線を束ねていることで、その径が大きなものとなっている。そのため、ヒュージング処理による端子形成の際、端子近傍の導線束の内部が高温になり易く、導線束の外周の熱を除去するだけでは、端子近傍の絶縁被覆の炭化を十分に抑制できなかった。
特開平5−74541号公報 特開2003−153505号公報
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、絶縁被覆を有する導線を複数本束ねた導線束に端子部材を導電接合するヒュージング処理で端子を形成する際に、端子近傍の絶縁被覆の炭化を効果的に抑制できる端子の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明は、絶縁被覆を有する導線(L)を複数本束ねた導線束(2)に端子部材(3)を導電接合してなる端子(5)の製造方法であって、導線束(2)に被せた端子部材(3)を電極具(6,6)で押圧しながら通電することで、絶縁被覆を炭化させて端子部材(3)と導線束(2)とを導電接合するヒュージング処理工程と、このヒュージング処理工程を行う際に、端子部材(3)から出ている導線束(2)に冷却治具(10)を取り付けておくことで、該冷却治具(10)で端子部材(3)の近傍の導線束(2)を冷却する冷却工程と、を有し、冷却治具(10)は、導線束(2)に装着する型部材(20,40)を備え、該型部材(20,40)は、導線束(2)の外周側面(2a)に当接させる冷却面(21,41)と、導線束(2)の外周側面(2a)から導線(L)の隙間に差し込まれて導線束(2)の内部に延伸する冷却フィン(28,48)とを備えることを特徴とする。
本発明にかかる端子の製造方法によれば、冷却工程で用いる冷却治具は、導線束に装着する型部材を備え、該型部材は、導線束の外周面に当接させる冷却面と、導線束の外周面から導線の隙間に差し込まれて該導線束の内部に延伸する冷却フィンとを備えることで、端子近傍の導線束の外周面だけでなく内部も十分に冷却できるようになる。特に、導線束の内部に差し込まれる冷却フィンによって、導線束を構成する導線の本数が多い場合や、導線束の径が大きい場合でも、その内部の温度を効果的に下げることができる。また、導線束に差し込まれる冷却フィンによって、束ねられている導線が外周側に押し分けられるので、導線を冷却面に密着させることができる。これによっても、導線束の冷却効果を高めることができる。したがって、ヒュージング処理による端子製造の際、端子近傍の導線束の温度上昇並びに絶縁被覆の炭化を抑制できるので、端子から所定距離内の導線束の絶縁保障が可能となる。また、端子から出ている部分の導線束の温度上昇を抑制できるので、ヒュージング処理の際に、端子内で炭化(溶融)して外部に析出する炭化生成物(スラッジ)の析出量を少なく抑えることも可能となる。
また、この端子の製造方法では、冷却フィン(28,48)は、冷却面(21,41)から突出して導線束(2)の軸方向に沿って軸心(M)に向かって延伸する平板状の部材からなるとよい。これによれば、導線の隙間に沿って導線束の外周側面から軸心に向かって平板状の冷却フィンが延びた状態となるので、導線束の軸心近傍をより効果的に冷却できるようになる。また、導線束の外周側面から軸心までの径方向の全域を冷却できるようになる。
また、この端子の製造方法では、型部材(20,40)は、上記の冷却フィン(28,48)に加えて、該冷却フィン(28,48)に対して導線束(2)の径方向に沿って所定間隔で平行に配列された他の冷却フィン(28−2,28−3,48−2,48−3)を備えるとよい。これによれば、複数の冷却フィンで導線束の内部を均等に冷却することができるようになる。したがって、導線束の絶縁被覆の炭化を均一に抑制することが可能となる。
また、この端子の製造方法では、冷却フィン(28,48)は、根元(27,47)側から先端(28a,48a)側に向かって次第に厚みが薄くなるテーパ形状を有しているとよい。これによれば、冷却フィンを導線束の外周側面から導線の隙間にスムーズに差し込めるようになる。したがって、導線束への冷却治具の装着が簡単に行えるようになる。また、冷却フィン(28,48)の先端(28a,48a)の角部(R)には、面取りが施されているとよい。これによれば、冷却フィンを導線束の外周側面から導線の隙間に差し込む際、冷却フィンで導線の絶縁被覆を傷付けずに済むようになる。
また、この端子の製造方法では、冷却フィン(28,48)は、冷却面(21,41)における端子部材(3)側の端部(21b,41b)から離れた位置に設置するとよい。これによれば、冷却治具を端子に隣接する位置に取り付けた場合でも、冷却フィンが端子から離れた位置に配置されるので、導線と端子部材との接合箇所が過度に冷却されることを防止できる。したがって、端子近傍の絶縁被覆の炭化を抑制しつつ、導線と端子部材との確実な接合による接点の形成が可能となる。
また、この端子の製造方法では、型部材(20,40)は、導線束(2)に取り付ける少なくとも一対の型(20,40)を備えており、該一対の型(20,40)を導線束(2)に向けて付勢する付勢手段(62,62)を備え、該付勢手段(62,62)の付勢によって、一対の型(20,40)が導線束(2)の外周側面(2a)を加圧状態で保持するようにしてよい。これによれば、熱などによる導線束の外周形状の歪み(変化)に対して、冷却面及び冷却フィンを追従させることができるようになる。したがって、導線束の外周面に対して冷却面が確実に当接するとともに、冷却フィンが導線束の内部に深く差し込まれるようになるので、導線束の外周面と内部をより効果的に冷却することができる。
また、この端子の製造方法では、型部材(20,40)には、冷却媒体を流通させる冷媒通路(70)が設けられており、冷却工程において、この冷媒通路(70)に冷却媒体を流通させるようにするとよい。これによれば、ヒュージング処理の際、冷却治具を冷却媒体で冷やすことができるので、冷却治具の温度上昇を抑制できる。したがって、端子近傍の導線束をより効果的に冷却できるようになる。また、この場合の冷媒通路(70)は、冷却フィン(28,48)に接するように配置するとよい。これによれば、冷却媒体によって冷却フィンを直接冷やすことができるので、冷却フィンの温度上昇を抑制でき、導線束の内部をより効果的に冷却できるようになる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
本発明にかかる端子の製造方法によれば、絶縁被覆を有する導線が複数本束ねられた導線束に対してヒュージング処理で端子を形成する際に、端子近傍の絶縁被覆の炭化を効果的に抑制できる。
本発明の第1実施形態にかかる端子の製造方法に用いる冷却治具を示す分解斜視図である。 冷却治具を導線束に取り付けた状態を示す図で、(a)は、斜視図、(b)は、側断面図である。 冷却治具を導線束に取り付ける手順を示す図で、(a),(b)はそれぞれ、固定ネジの締付前と締付後の状態を示す図である。 冷却フィンの構成例を示す図で、(a)は、側面図、(b)は、軸方向から見た断面図である。 本発明の第2実施形態にかかる端子の製造方法に用いる冷却治具を示す図である。 本発明の第3実施形態にかかる端子の製造方法に用いる冷却治具を示す図で、冷却治具を導線束に取り付けた状態を軸方向から見た側面図である。 本発明の第3実施形態にかかる冷却治具を示す図で、冷却治具を導線束に取り付けた状態を示す側断面図である。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1乃至図2は、本発明の第1実施形態にかかる端子の製造方法に用いる冷却治具10を示す図で、図1は、冷却治具10の分解斜視図、図2は、冷却治具10を導線束2に取り付けた状態を示す図で、(a)は、斜視図、(b)は、側断面図である。なお、図2では、後述するヒュージング処理によって製造される端子5も図示している。
冷却治具10は、図2に示すように、導線束(コイル)2に端子部材3を接合するヒュージング処理を行うときに、導線束2を冷却するための治具である。ここでの導線束2は、図2などに示すように、表面に絶縁被覆を有する導線Lを多数本(数十本程)束ねて構成されている。絶縁被覆を有する導線Lとして、エナメル銅線(EW)、ホルマール銅線(PVF)、ポリエステル銅線(PEW)、及びアミドイミド銅線(AIW)など各種材料で被覆された銅線を用いることができる。一方、導線束2の外周側面2aに被せて取り付ける端子部材3は、金属製の円筒状部材である。この端子部材3は、後述するヒュージング処理において、図2(b)に示すように、一対の電極具6,6でその両側面が挟み込まれて押圧されることで、幅方向に潰されるようになっている。なお、本実施形態の端子部材3の形状は一例であり、端子部材3は、導線束2の外周側面2aに被せるものであれば、他の形状であってもよく、例えば、略U字型の細片状などであってもよい。また、図2(a)では、端子具6,6の図示は省略している。
冷却治具10は、真鍮や銅などの熱伝導性に優れた金属材料で構成された塊状の部材で、導線束2の外周側面2aを囲む略直方体型の外形を有している。この冷却治具10は、二分割された上型20と下型40とからなる一対の型を備えている。上型20と下型40は、導線束2の外周側面2aに上側と下側からそれぞれ取り付けるもので、これら上型20と下型40には、導線束2の外周側面2aに当接させる冷却面21,41と、導線束2の外周側面2aから導線Lの隙間に差し込まれる冷却フィン28,48とが設けられている。なお、以下の説明では、図2に示すように、軸方向というときは、冷却治具10を取り付ける導線束2の軸方向を示し、幅方向というときは、該軸方向に直交する横方向を示す。
図1に示すように、上型20及び下型40は、幅方向で左右対称の形状を有している。上型20の下面側20bには、導線束2の上側の外周側面2aに当接させる冷却面21が設けられている。冷却面21は、上型20の幅方向の中央に配置されており、軸方向に沿って上側に窪む円弧状の湾曲面になっている。また、冷却面21の幅方向の両側には、略矩形状の凹部22が形成されている。凹部22は、後述する下型40の凸部42を挿入係合させるもので、冷却面21の両側に二つずつ合計4個が設けられている。なお、図1及び図2では、凹部22は、手前側の2個のみ図示されており、奥側の2個は現れていない。また、上型20の上面20aと冷却面21との間には、縦方向に貫通するスリット23が形成されている。スリット23は、冷却面21の幅方向の中央に配置されて、軸方向の一方の端辺(端子5と反対側の端辺)21aから冷却面21の中央付近まで直線状(平面状)に切り込まれている。また、上型20の上面20aにおけるスリット23の両側にはそれぞれ、ネジ25を固定するためのネジ穴24が形成されている。
そして、スリット23に差し込んで取り付ける冷却フィン28を備えたフィン部材26が設けられている。図4は、フィン部材26の構成例を示す図で、(a)は、側面図、(b)は、軸方向から見た断面図である。フィン部材26は、上型20と同じ熱伝導性に優れた金属材料で構成されており、略長方形の平板状に形成された基部27と、該基部27の下面から垂直下方に突出する冷却フィン28とを有する形状である。基部27には、ネジ25を挿通するための一対の挿通穴29が形成されている。
冷却フィン28は、略長方形の平板状で、その縦方向の長さ寸法がスリット23の縦方向の長さ寸法よりも長くなっている。また、先端辺28aの一方の角部(端子5側の角部)は、先端辺28aに対して略45度の傾斜角度をなす傾斜直線状に切り取られた切取部28bになっている。この切取部28bによって、発熱源である端子5から遠ざかるに従って冷却フィン28の面積が次第に拡大するように構成されている。なお、ここでの切取部28bの傾斜角度は一例であり、他の傾斜角度でもよい。さらに、冷却フィン28の先端辺28aの各角部Rには、面取りが施されており、いずれの角部Rも丸みを帯びた形状になっている。また、冷却フィン28は、図4(b)に示すように、基部27側(根元側)から先端辺28a側(導線束2の軸心M側)に向かって断面の厚みが次第に薄くなるようなテーパ形状の側面28dを有している。なお、図4に示す冷却フィン28の切取部28b、角部Rの面取り形状、テーパ形状の側面28dは、必要に応じて設ければよく、冷却フィン28は、これらを選択的に備えた構成とすることができる。また、図4以外の各図では、冷却フィン28が備える角部Rの面取り形状やテーパ形状の側面28dは図示していない。
フィン部材26は、冷却フィン28がスリット23に上側から差し込まれて、基部27が上型20の上面20aに載置される。その状態で、挿通穴29に挿通したネジ25を上型20のネジ穴24に締結することで上型20に固定される。これにより、図2に示すように、冷却フィン28が冷却面21から下側に突出した状態となる。
一方、下型40は、凸部42と凹部22の違いを除けば、上型20に対してほぼ上下対称な形状を有している。すなわち、下型40の上面側40bには、導線束2の下側の外周側面2aに当接させる冷却面41が設けられている。冷却面41は、下型40の幅方向の中央に配置されており、導線束2の軸方向に沿って下方に窪んだ円弧状の湾曲面になっている。また、冷却面41の両側には、上型20の凹部22に対応する凸部42が形成されている。また、冷却面41と下面40aとの間には、縦方向に貫通するスリット43が形成されている。スリット43は、上型20のスリット23に対して上下対称の配置及び形状であり、冷却面41の幅方向の中央に配置されて、軸方向における一方の端辺41aから中央付近まで直線状に切り込まれている。また、下型40の下面40aにおけるスリット43の両側にはそれぞれ、ネジ45を固定するためのネジ穴44が形成されている。
下型40のスリット43に差し込んで取り付ける冷却フィン48は、フィン部材46に設けられている。フィン部材46は、図4に示す上型20用のフィン部材26と同一の構成で、基部47と、該基部47の上面から突出する冷却フィン48とを有している。基部47には、ネジ45を挿通するための挿通穴49が形成されている。フィン部材46は、冷却フィン48がスリット43に下側から差し込まれて、基部47が下型40の下面40aに設置される。その状態で、挿通穴49に挿通したネジ45を下型40のネジ穴44に締結することで、下型40に固定される。これにより、図2に示すように、冷却フィン48が冷却面41から上側に突出した状態となる。
また、上型20と下型40は、固定ネジ61,61で一体に固定されるようになっている。すなわち、図1に示すように、上型20の幅方向の両側には、上下に貫通する挿通穴31,31が形成されており、下型40おける該挿通穴31,31に対応する位置には、ネジ穴51,51が形成されている。そして、上型20の上面20aから挿通穴31,31に挿通した固定ネジ61,61が下型40のネジ穴51,51に締結されることで、上型20と下型40が一体に固定されるようになっている。その際、固定ネジ61,61の頭部61a,61aと上型20の上面20aとの間にコイルスプリング62,62を介在させることで、固定ネジ61,61の締結に伴って上型20と下型40とが互いに近付く向きに付勢されるようにしている。
ここで、上記構成の冷却治具10を導線束2に取り付ける手順について説明する。図3は、冷却治具10を導線束2に取り付ける手順を説明するための図で、(a),(b)はそれぞれ、固定ネジ61,61の締め付け前と締め付け後の状態を示す図である。なお、図3では、導線束2を点線で示している。この点は、下記の図5,図6でも同様である。冷却治具10を導線束2に取り付ける前に、あらかじめフィン部材26,46をネジ25,45で上型20と下型40に固定しておく。その状態で、上型20と下型40を導線束2に上下から被せて取り付ける。その際、上型20の冷却面21と下型40の冷却面41とで導線束2の外周側面2aを挟み込み、冷却フィン28,48を導線束2の外周側面2aに差し込む。また、下型40の凸部42を上型20の凹部22に挿入して上型20と下型40を位置合わせする。その状態で、図3に示すように、上型20の挿通穴31,31に挿通した固定ネジ61,61を下型40のネジ穴51,51に締結することで、上型20と下型40を一体に固定する。その際、固定ネジ61,61の頭部61a,61aと上型20の上面20aとの間に介在させたコイルスプリング62,62によって、固定ネジ61,61の締め付けに伴い、上型20と下型40とが互いに近付く向きに付勢される。
これにより、上型20の冷却面21と下型40の冷却面41が導線束2の外周側面2aに加圧状態で当接する。したがって、上下の冷却面21,41の間に導線束2が挟持された状態となる。こうして、導線束2が加圧されてその外周側面2aが冷却面21,41に沿った円弧面状になるように導線Lが整列状態で束ねられる。また、図2に示すように、冷却面21から下方に突出する冷却フィン28と、冷却面41から上方に突出する冷却フィン48とはそれぞれ、互いが導線束2の軸心Mを通る一直線上に並んだ状態で軸心Mの近傍まで延伸し、両者の先端辺28a,48aが軸心Mの両側で対向した状態となる。
また、図2(b)に示すように、上型20のスリット23と下型40のスリット43が冷却面21,41における端子5と反対側の端辺21a,41aに形成されていることで、該スリット23,43内に設置された冷却フィン28,48は、冷却面21,41における端子5側の端辺21b,41bから離れた位置に配置されている。これにより、冷却治具10を端子5に隣接する位置に取り付けた場合でも、導線束2における冷却フィン28,48が差し込まれる箇所と端子5との間に所定の隙間(過剰な冷却が抑制されるエリア)を確保できるようになる。したがって、後述するように、ヒュージング処理による導線Lと端子部材3との接合箇所が冷却フィン28,48の冷却作用で過度に冷却されることを防止できるようになる。
本実施形態の端子の製造方法では、ヒュージング処理工程を行う際に、端子部材3から出ている導線束2に冷却治具10を取り付けておくことで、該冷却治具10で端子部材3の近傍の導線束2を冷却するようにしている。ここでのヒュージング処理は、図2(b)に示すように、導線束2の外周側面2aに端子部材3を取り付け、その状態で、端子部材3の両側面を一対の電極具6,6で押圧しながら通電することで、端子5内の導線Lの絶縁被覆を炭化(溶融)させ、端子部材3と導線Lとを導電接合する。
その際、同図に示すように、端子5に隣接する位置の導線束2に冷却治具10を取り付けておくことで、端子5近傍の導線束2を冷却治具10で冷却する。この冷却治具10は、既述のように、導線束2の外周側面2aに当接させる冷却面21,41と、導線束2の外周側面2aから導線Lの隙間に差し込まれる冷却フィン28,48とを備えている。これにより、端子5近傍の導線束2の外周側面2aだけでなく内部も十分に冷却できるようになる。特に、導線束2の内部に差し込まれる冷却フィン28,48によって、導線束2を構成する導線Lの本数が多い場合や、導線束2の径が大きい場合でも、その内部の温度を効果的に下げることができる。また、導線束2に差し込まれる冷却フィン28,48によって、束ねられている導線Lが外周側に押し分けられるので、導線Lを冷却面21,41に密着させることができる。これによっても、導線束2の冷却効果を高めることができる。したがって、ヒュージング処理による端子5の製造の際、端子5近傍の導線束2の温度上昇並びに絶縁被覆の炭化を抑制できるので、端子5から所定距離内の導線束2の絶縁保障が可能となる。また、端子5から出ている部分の導線束2の温度上昇を抑制できるので、ヒュージング処理の際に、端子5内で炭化(溶融)して外部に析出する炭化生成物(スラッジ)の析出量を少なく抑えることも可能となる。
また、本実施形態の冷却治具10が備える冷却フィン28,48は、冷却面21,41から突出して導線束2の軸方向に沿って軸心Mに向かって延伸する平板状の部材からなる。すなわち、複数の導線Lの隙間に沿って導線束2の外周側面2aから軸心Mに向かって平板状の冷却フィン28,48が延びた状態となっているので、導線束2の軸心Mの近傍を効果的に冷却できる。また、導線束2の外周側面2aから軸心Mまでの径方向の全域を冷却できるようになる。
また、冷却フィン28,48は、根元側から先端側に向かって(導線束2の軸心Mに近付くにつれて)次第に厚みが薄くなるようなテーパ形状の側面28dを有している。これにより、冷却フィン28,48を導線束2の外周側面2aから導線Lの隙間にスムーズに差し込めるようになる。したがって、導線束2への冷却治具10の装着が簡単に行えるようになる。また、冷却フィン28,48の先端辺28a,48aの角部Rには、面取りが施されている。これにより、冷却フィン28,48を導線束2の外周側面2aから導線Lの隙間に差し込む際に、冷却フィン28,48で導線Lの絶縁被覆を傷付けずに済むようになる。
また、本実施形態の冷却治具10では、冷却フィン28,48は、冷却面21,41における端子5側の端辺21a,41aから離れた位置に設置されている。これによって、本実施形態のように冷却治具10を端子5に隣接する位置に取り付けている場合でも、冷却フィン28,48を端子5から離れた位置に配置できるので、導線Lと端子部材3との接合箇所が過度に冷却されることを防止できる。すなわち、冷却治具10内で導線束2の内部の冷却を促進するエリア(端子5から離れた側)と導線束2の内部の冷却を抑制するエリア(端子5に近い側)とを区画することができる。したがって、端子5近傍の導線束2の冷却を行いつつ、端子5内での導線Lと端子部材3との確実な導電接合が可能となる。
また、冷却フィン28,48の先端辺28a,48aの端子5側に設けた切取部28b,48bによって、発熱源である端子5から遠ざかるに従って冷却フィン28,48の面積が次第に拡大するように構成されている。これにより、端子5に近い側では、冷却フィン28,48による冷却作用が小さく、端子5から離れるに従って冷却フィン28,48による冷却効果が徐々に大きくなるようになっている。これによっても、ヒュージング処理による導線Lと端子部材3との接合箇所が冷却フィン28,48の冷却作用で過度に冷却されることを防止できる。
また、本実施形態の冷却治具10は、上型20と下型40を一体に固定するための固定ネジ61,61と、上型20と下型40を導線束2に向けて付勢するコイルスプリング62,62とを備えており、固定ネジ61,61で上型20と下型40を一体に固定した状態で、コイルスプリング62,62の付勢によって、上型20の冷却面21と下型40の冷却面41が導線束2の外周側面2aに加圧状態で当接するようになっている。このように構成したことで、ヒュージング処理工程の進行中に、熱などによって導線束2の外周形状に歪み(変形)が生じた場合でも、導線束2の外周側面2aに冷却面21,41を追従させることができる。したがって、ヒュージング処理の際に冷却面21,41が導線束2の外周側面2aにより確実に当接するとともに、冷却フィン28,48が導線束2の内部で軸心M近くまで確実に到達するので、導線束2の外周側面2aと内部の両方を効果的に冷却することができる。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の説明及び対応する図面においては、第1実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項については、第1実施形態と同じである。これらの点は、他の実施形態についても同様である。
図5は、本発明の第2実施形態にかかる端子の製造方法に用いる冷却治具10−2を示す図である。本実施形態の冷却治具10−2は、第1実施形態の冷却治具10が備えるフィン部材26,46とは異なる構成のフィン部材26−2,46−2を備えている。すなわち、本実施形態の冷却治具10−2が備えるフィン部材26−2,46−2は、中央の冷却フィン28,48に加えて、それらの両側に一枚ずつ設置した他の冷却フィン28−2,28−3,48−2,48−3を備えている。つまり、フィン部材26−2,46−2にはそれぞれ、3枚ずつの冷却フィン28−1〜28−3,48−1〜48−3が設置されている。これら冷却フィン28−1〜28−3,48−1〜48−3は、上型20に設けたスリット23,23−2,23−3と下型40に設けたスリット43,43−2,43−3とにそれぞれ挿入されており、互いの面を平行にして導線束2の幅方向に沿って等間隔に配列されている。また、上型20の冷却フィン28−1〜28−3と下型40の冷却フィン48−1〜48−3は、上下で互いに対向する位置に設けられている。
本実施形態の冷却治具10−2では、冷却フィン28−1〜28−3と冷却フィン48−1〜48−3とを導線束2の幅方向(径方向)に沿って等間隔に配列していることで、導線束2の内部をより均等に冷却できるようになる。したがって、導線束2の絶縁被覆の炭化を均等に抑制できるようになる。なお、冷却フィン28,48の枚数は、上記実施形態に示す3枚以外の枚数であっても良く、具体的な枚数は、導線束2を構成する導線Lの本数や導線束2の径の大きさに応じて決めるようにすれば、導線束2の冷却効率の最適化を図ることができる。
なお、本実施形態では、冷却フィン28−1〜28−3と冷却フィン48−1〜48−3は、上下で互いに対向する位置に設けているが、これ以外にも、図示は省略するが、冷却フィン28−1〜28−3と冷却フィン48−1〜48−3を幅方向で互い違いの位置に配列するようにしてもよい。さらにその場合には、冷却フィン28−1〜28−3と冷却フィン48−1〜48−3をそれぞれ、軸心Mの高さ位置を越えて導線束2の上下端の近傍まで延伸させるようにしてもよい。このように構成すれば、導線束2の内部をより効果的に冷却できるようになる。
また、本実施形態の冷却治具10−2は、第1実施形態の冷却治具10が備えていた固定ネジ61,61とコイルスプリング62,62とを省略している。すなわち、冷却治具10−2は、他の部材などに支持などによって、導線束2を挟み込んだ状態を維持できれば、必ずしも上型20と下型40を一体に固定しなくてもよい。ただし、本実施形態の冷却治具10−2においても、図示は省略するが、第1実施形態の冷却治具10と同様に、固定ネジ61,61とコイルスプリング62,62を設けることも可能である。
〔第3実施形態〕
図6は、本発明の第3実施形態にかかる端子の製造方法に用いる冷却治具10−3を示す図で、(a)は、軸方向から見た側面図、(b)は、平面図、(c)は、下面図である。また、図7は、導線束2に取り付けた冷却治具10−3を示す側断面図である。本実施形態の冷却治具10−3は、上型20と下型40に冷却媒体を流通させるための冷媒通路70を備えている。冷媒通路70を流れる冷却媒体は、真鍮や銅で形成された上型20及び下型40を冷却することが可能な媒体であれば、水、油などの液体、CO2,N2などの気体(ガス)のいずれであってもよい。
冷媒通路70は、上型20と下型40にそれぞれ設けた幅方向に貫通する貫通路71(71a,71b),72(71a,72b)と、該貫通路71,72に挿通した配管73(73a,73b),74(74a、74b)とで構成されている。上型20の貫通路71及び配管73は、図6(b)に示すように、上型20の軸方向に所定間隔で並べられた貫通路71a,71bと配管73a,73bからなり、これら貫通路71a,71bと配管73a,73bは、上型20の幅方向に直線状に延伸している。また、配管73a,73bの一端同士を連通する連通管75が取り付けられている。これによって、上型20に流通する冷却媒体は、一方の配管73aの端部から導入されて連通管75を経由して他方の配管73bの端部から導出されるようになっている。
また、下型40の貫通路72及び配管74は、図6(c)に示すように、下型40の軸方向に所定間隔で並べられた貫通路72a,72bと配管74a,74bからなり、これら貫通路72a,72bと配管74a,74bは、下型40の幅方向に直線状に延伸している。また、配管74a,74bの一端同士を連通する連通管76が取り付けられている。これによって、下型40に流通する冷却媒体は、一方の配管74aの端部から導入されて連通管76を経由して他方の配管74bの端部から導出されるようになっている。
そして、図7に示すように、上型20の一方の配管73aは、冷却フィン28に設けた貫通穴28cを貫通している。また、下型40に設けた一方の配管74aは、冷却フィン48に設けた貫通穴48cを貫通している。したがって、冷媒通路70を流れる冷却媒体によって、上型20及び下型40が冷却されるとともに、上型20及び下型40に設置した冷却フィン28,48が直接冷却されるようになっている。
本実施形態の冷却治具10−3を用いた端子の製造方法では、ヒュージング処理工程を行う際、図示しない供給源から供給された冷却媒体を冷却治具10−3の冷媒通路70に流通させる。これにより、冷却治具10−3の上型20及び下型40が冷媒通路70の冷媒で冷却される。したがって、上型20及び下型40の温度上昇を抑制できるので、端子5の近傍の導線束2をより効果的に冷却できるようになる。特に、配管73a,74aが冷却フィン28,48を貫通している(冷媒通路70が冷却フィン28,48に接している)ことで、冷却媒体によって冷却フィン28,48が直接冷却されるようになる。したがって、ヒュージング処理の際に冷却フィン28,48の温度上昇を抑制できるので、導線束2の内部をより効果的に冷却することができる。なお、冷却治具10−3を連続して使用する場合には、本実施形態のような冷却媒体による冷却を行うことが望ましい。
なお、本実施形態の冷却治具10−3でも、図示は省略するが、第1実施形態の冷却治具10と同様に、上型20と下型40を固定するための固定ネジ61,61と、上型20と下型40を導線束2に向けて付勢するコイルスプリング62,62とを設けることも可能である。
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお、直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
例えば、本発明にかかる冷却治具が備える一対の型を導線束に向けて付勢する付勢手段の具体的な構成は、上記実施形態に示す固定ネジ61,61で取り付けられたコイルスプリング62,62には限らず、他の構成であってもよい。したがって、例えば、付勢手段として、エアや油などの媒体による加圧手段(シリンダなど)で一対の型を導線束に向けて付勢するように構成してもよい。また、その場合は、一対の型を導線束に対して移動可能な状態で設置しておけば、一対の型を固定するための固定具は必ずしも設けなくてよい。
また、本発明の冷却治具が備える型部材は、上記実施形態に示すように上下に二分割された上型20と下型40には限られず、他の形状あるいは他の配置や数であってもよい。また、冷却フィンは、上記実施形態に示すように、必ずしも型と別の部材である必要はなく、型と一体に形成されていてもよい。また、上記実施形態に示す冷却フィンの具体的な形状や配置は一例である。
また、本発明にかかる端子の製造方法は、ハイブリッド車両などに搭載する比較的大型のモータのコイルとして用いる導線束など、数十本以上の導線を束ねた導線束に用いて好適であるが、本発明にかかる導線束は、絶縁被覆を有する導線を複数本束ねたものであれば、具体的な導線の本数や太さは、特に限定されない。
2 導線束
2a 外周側面
3 端子部材
5 端子
6,6 電極具
10 冷却治具
20 上型
21 冷却面
23 スリット
28 冷却フィン
28a 先端辺
28b 切取部
28c 貫通穴
40 下型
41 冷却面
43 スリット
48 冷却フィン
48a 先端辺
48c 貫通穴
61,61 固定ネジ
62,62 コイルスプリング(付勢手段)
70 冷媒通路

Claims (9)

  1. 絶縁被覆を有する導線を複数本束ねた導線束に端子部材を導電接合してなる端子の製造方法であって、
    前記導線束に被せた前記端子部材を電極具で押圧しながら通電することで、前記絶縁被覆を炭化させて前記端子部材と前記導線束とを導電接合するヒュージング処理工程と、
    前記ヒュージング処理工程を行う際に、前記端子部材から出ている前記導線束に冷却治具を取り付けておくことで、該冷却治具で前記端子部材の近傍の前記導線束を冷却する冷却工程と、を有し、
    前記冷却治具は、
    前記導線束に装着する型部材を備え、
    該型部材は、前記導線束の外周側面に当接させる冷却面と、前記導線束の外周側面から前記導線の隙間に差し込まれて前記導線束の内部に延伸する冷却フィンとを備える
    ことを特徴とする端子の製造方法。
  2. 前記冷却フィンは、前記冷却面から突出して前記導線束の軸方向に沿って軸心に向かって延伸する平板状の部材からなる
    ことを特徴とする請求項1に記載の端子の製造方法。
  3. 前記型部材は、前記冷却フィンに加えて、該冷却フィンに対して前記導線束の径方向に沿って所定間隔で平行に配列された他の冷却フィンを備える
    ことを特徴とする請求項2に記載の端子の製造方法。
  4. 前記冷却フィンは、その根元側から先端側に向かって次第に厚みが薄くなるテーパ形状を有している
    ことを特徴とする請求項2又は3に記載の端子の製造方法。
  5. 前記冷却フィンの先端の角部には、面取りが施されている
    ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の端子の製造方法。
  6. 前記冷却フィンは、前記冷却面における前記端子部材側の端部から離れた位置に設置されている
    ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の端子の製造方法。
  7. 前記型部材は、前記導線束に両側から取り付ける少なくとも一対の型を備えており、
    前記一対の型を前記導線束に向けて付勢する付勢手段を備え、該付勢手段の付勢によって、前記一対の型が前記導線束の外周側面を加圧状態で保持する
    ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の端子の製造方法。
  8. 前記型部材には、冷却媒体を流通させる冷媒通路が設けられており、
    前記冷却工程において、前記冷媒通路に冷却媒体を流通させる
    ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の端子の製造方法。
  9. 前記冷媒通路は、前記冷却フィンに接して配置されている
    ことを特徴とする請求項8に記載の端子の製造方法。
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