JP5183462B2 - インクジェットインク画像形成用インクセット - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット画像の分野に関する。より詳細には、本発明は、高い色域体積、適切な色相値、高い彩度、及び/又は低ブロンズ現象を維持する一方、改善された空気褪色耐性及び耐光性をもたらすよう構成された染料セットに関する。
一般に、インクジェットインクは、染料系又は顔料系インクのいずれかである。両方とも、典型的には、染料及び/又は顔料を含むインクビヒクルにて調製される。染料系インクジェットインクは、一般に、媒体を特定の色に変えるのに、通常は、水をベースとする可溶性着色剤を用いる。一方、顔料着色インクは、典型的に、不溶性若しくは分散性の着色剤を用いて色を得る。
染料含有インクのカラー特性は、印刷されたインクジェット画像の品質に重要な役割を果す。感知されるカラー品質は、当分野で周知の、CIELABのような、幾つかの色空間系の1つを用いて表すことができる。CIELAB色空間に関しては、色は、3つの語、即ち、L、a、及びbを用いて定義される。この系では、Lは、色の明度を定義し、0から100(100はホワイトである)の範囲にある。また、語a及びbは、共に色相を定義し、aは、負の数(グリーン)から正の数(レッド)の範囲にあり、そしてbは、負の数(ブルー)から正の数(イエロー)の範囲にある。当業者に周知のように、所与の色をさらに記述するのにh°(色相角)及びC(彩度)のような他の語も使われる。良好な彩度、色域、色相角、及び耐光性を有する第1カラーの単一インクジェットインクは、その他のカラーと共に使用するには必ずしも最適とはいえない。換言すれば、個別のカラー、即ち、シアン、マゼンタ、又はイエローが許容されるカラー品質を有さねばならないだけではなく、それが用いられるインクセットもまた、そのインクジェットインクが許容し得る態様にて機能するか否かにおいて主要な役割を果たす。このように、インクセット用として一定の染料を共に適切に用いることによって、画像品質を改善することができる。
従って、諸特性が改善されており、且つ他の特性をさほど犠牲にすることなくそれらの特性が改善されている染料セットを開発する研究が続けられている。
許容し得る空気褪色耐性、色域、耐光性、彩度、信頼性、材料適合性、噴射特性等を呈するインクセットを開発することは有益であろうと考えられる。従って、インクセットは、第1有機溶媒系を含むブラックインクと、第2有機溶媒系を含むシアンインクと、第3有機溶媒系を含むマゼンタインクと、第4有機溶媒系を含むイエローインクとを含み得る。この実施形態では、有機溶媒系の少なくとも2つは互いに異なっている。第1有機溶媒系は、第1有機溶媒と第2有機溶媒を含み得る。第2及び第3有機溶媒系は、第1有機溶媒と第3有機溶媒を含み得る。第4有機溶媒系は、第2有機溶媒と第4有機溶媒を含み得る。
他の実施形態では、インクジェット画像形成用のインクセットは、以下の式Iの構造を有する染料を含むブラックインク:
Figure 0005183462
及び、それぞれ式II、III、又はIVを有するシアン染料、マゼンタ染料、又はイエロー染料を含む少なくとも1つのカラーインクを含み得る。染料式IIは次の通りである:
Figure 0005183462
式中、各R基は、平均2〜6のR基がH以外であるという条件付きで、個々独立してH、SOH、SONH、及びSONH−アルキル−OHから成る群から選択される。染料式IIIは、以下の構造のNi2+錯体である:
Figure 0005183462
染料式IVは次の通りである:
Figure 0005183462
他の実施形態では、インクジェット画像形成用のインクセットは、第1シアン染料を含むシアンインクと、第2シアン染料を含む淡色シアンインクとを含み得る。第1シアン染料及び第2シアン染料は、それぞれ、以下の同じ一般化学式を有し得る:
Figure 0005183462
式中、各R基は、平均2〜6のR基がH以外であるという条件付で、個々独立してH、SOH、SONH、及びSONH−アルキル−OHから成る群から選択される。しかしながら、第1シアン染料は、平均0.25〜1.5未満のSONH−アルキル−OH基を有することができ、且つ第2シアン染料は、平均1.5〜3のSONH−アルキル−OH基を有し得る。
さらに他の実施形態では、インクジェット画像形成用のインクセットは、第1マゼンタ染料と第2マゼンタ染料を含むマゼンタインクを含むことができ、この場合、第1マゼンタ染料は第2マゼンタ染料より彩度が高く、且つ第2マゼンタ染料は第1マゼンタ染料より高い画像永続性をもたらす。当該インクセットは、さらに、第2マゼンタ染料を含み且つ第1マゼンタ染料を含まない淡色マゼンタインクを含み得る。
本発明のその他の特徴並びに利点は、例示目的で本発明の特徴を説明する詳細な説明から明らかになろう。
本発明を開示、記述する前に、本発明が、ここに開示する特定の処理ステップ並びに材料に限定されないことを理解されたい。それらの処理ステップ並びに材料は、ある程度変更し得るからである。また、ここで用いる用語は、特定の実施形態を専ら記述するだけの目的で用いられることも理解されたい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲並びにその等価物によってのみ限定され、その用語に限定の意はない。
本明細書並びに添付の特許請求の範囲において用いられるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途明確に指示のない限り、複数形の意味を包含することに留意されたい。
ここで用いるとき、「ビヒクル」とは、着色剤を基材へと運ぶのに用い得る液体組成物を包含するものと定義される。液体ビヒクルは、当分野においてよく知られており、種々のタイプのインクビヒクルを本発明の実施形態に従って用いることができる。液体ビヒクルは、限定はしないが、界面活性剤、有機溶媒及び共溶媒、緩衝剤、殺生物剤、粘度修正剤、金属イオン封止剤、安定化剤、抗コゲーション剤、及び水をはじめとする、様々な薬剤の混合物から構成することができる。それら自体は液体ビヒクルの一部ではないが、着色剤に加えて、液体ビヒクルは、ポリマー、ラテックス、UV硬化性材料、可塑剤、塩等のような固体添加物を保持することができる。
用語「有機溶媒系」は、無視し得る量よりは高い量にて、例えば、少なくとも2wt%の量にて、液体ビヒクル中に存在する有機溶媒を指す。界面活性剤、殺生物剤、金属イオン封止剤、塩等は、典型的には液体ビヒクルにも含まれるとはいえ、溶媒系の一部であるとは考えられない。
用語「金属化染料」には、染料構造の必須部分として染料分子にキレート化されたり、配位したり、又は錯化する、遷移金属を有する染料が包含される。金属化染料には、単に金属対イオンを含む染料は包含されない。例えば、DB199Naは、ナトリウム対イオンを有する銅フタロシアニン染料である。ナトリウム対イオンではなく、その銅成分によって、この染料は「金属化」染料にされる。
同様に、用語「非金属化染料」とは、染料分子にキレート化されたり、配位したり、又は錯化する、遷移金属を含まない染料を指す。従って、AR52Naは、Acid Red 52のナトリウム塩であるが、本発明の実施形態によれば、金属化されているとは考えられない。
淡色シアンインク及び淡色マゼンタインクについていう用語「淡色」とは、インクを、その非淡色相当物と比較した場合の、比較上の用語である。例えば、淡色マゼンタは、それが比較されるマゼンタインクよりも高いL値を有することになろう。同様に、淡色シアンインクも、それが比較されるシアンインクよりも高いL値を有することになろう。Lのカラー空間の他の値もまた、要求はされないが、任意に変更し得る。
数値又は範囲についていう用語「約」は、測定実施時に生じ得る実験誤差から生ずる値を包含する意がある。
本書においては、比、濃度、量、分子サイズ等のような数値を範囲形式で表示する場合がある。そのような範囲形式は、単に便利且つ簡潔のために用いられるものであり、従って、範囲の限界値として明記した数値を含むだけでなく、各数値及び副範囲が明記されているかのように、その範囲内に包含される個別の数値又は副範囲を全て包含するものと柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。例えば、約1wt%〜約20wt%という重量範囲は、1wt%〜約20wt%という明記された濃度限界を含むだけではなく、2wt%、3wt%、4wt%のような個別の濃度、並びに5wt%〜15wt%、10wt%〜20wt%等のような副範囲を含むものと解釈されるべきである。
このことを銘記して、本発明は、インクジェット画像の分野に関する。より詳細には、本発明は、インクジェットプリンタと共に用いられる染料系インクセットに関する。これらのインクセットは、典型的に、3〜8のインクを含み、且つ各インクは1つ又は複数の染料を含み得る。インクセットに使用される各染料を個別に説明するが、これらの染料が、本書では主としてインクジェットインク中にそれらが存在する場合に関連して、且つそれらの各インクセットと関連して提示されていることは理解されよう。さらに、インク又は具体的なインクジェットインクについては、染料は、各インクを形成するべく、液体ビヒクル内で混合されることは理解されよう。染料セットを構成する個々の染料又は染料ブレンドを、1つ又は複数のタイプの液体ビヒクルに添加することによって、インクセットを調製することができる。換言すれば、染料セットを構成する各染料又は染料ブレンドは、同じ又は類似するタイプの液体ビヒクルに存在し得るか、又は各染料又は染料対は特有の調合を有する別個の液体ビヒクルに存在し得る。
一般に、本書に記載するインクセットは、インクジェットインクの長期信頼性をもたらす個々の染料を含む。特定の液体ビヒクルにおけるそれらの高い信頼性のために、それらは、より多くの在来プリンタにも使用し得るとはいえ、オフアクシスプリンタでの使用に適している。オフアクシスプリンタは、半永久的なインクジェット印刷ヘッドを具備し、そしてインクサプライだけが交換されるため、印刷ヘッドの長期信頼性を実現する必要がある。従って、特定の染料(及び関連する液体ビヒクル)の選択は、この目標を達成するうえで重要である。さらに、空気褪色及び光退色の両方に耐性のある、より堅牢な画像を印刷するのに用い得るインクを提供することも望ましい。本発明のインクセットは、特殊写真紙(例えば、膨潤性且つ無機多孔性媒体)上における良好な写真画像品質、並びに普通紙上に印刷される際の良好な画像品質との間で良好なバランスをもたらす。
従って、一実施形態では、インクセットは、第1有機溶媒系を含むブラックインクと、第2有機溶媒系を含むシアンインクと、第3有機溶媒系を含むマゼンタインクと、第4有機溶媒系を含むイエローインクとを含み得る。本実施形態では、有機溶媒系の少なくとも2つは異なっている。第1有機溶媒系は、第1有機溶媒と第2有機溶媒を含み得る。第2及び第3有機溶媒系は、第1有機溶媒と第3有機溶媒を含み得る。第4有機溶媒系は、第2有機溶媒と第4有機溶媒を含み得る。
本発明のさらに詳細な態様では、ブラックインクは、第3有機溶媒及び第4有機溶媒の少なくとも一方を含まない。あるいはまた、シアンインク及びマゼンタインクの少なくとも1つは、第2有機溶媒及び第4有機溶媒の少なくとも一方を含まない。さらに、他の実施形態では、イエローインクは、第1有機溶媒及び第3有機溶媒の少なくとも1つを含まない。互いに異なる溶媒系に関して、当該インクの任意の2つは異なる溶媒系を有し得る。例えば、イエローインクの溶媒系は、シアンインク又はマゼンタインクの溶媒系とは異なり得る。あるいは、ブラックインクの溶媒系は、シアンインク、マゼンタインク、又はイエローインクの溶媒系とは異なり得る。またさらに、溶媒系の全てを互いに異なるようにしたり、又はシアンインク(群)及びマゼンタインク(群)を除く全てを異なるようにすることもできる。
本発明の他の態様では、当該インクセットは、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラック以外の追加のインクを含み得る。例えば、その他のカラーを使用するために選択したり、これらのカラーのバリエーションを調製することができる。従って、一実施形態では、当該インクセットは、さらに、淡色シアンインク及び/又は淡色マゼンタインクを含み得る。この実施形態では、簡単のため、これらのインクの各々は、第1有機溶媒と第3有機溶媒の少なくとも1つを含み得る。これらの溶媒系は、非反応性のインク系、即ち、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクが相互に非反応性である系、において有用である。
本発明の特定の一実施形態では、第1有機溶媒は1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノンとし得、第2有機溶媒は、2−ピロリジノンとし得、第3有機溶媒は2−メチル−1,3−プロパンジオールとし得、及び/又は第4有機溶媒は、テトラエチレングリコール、エチルヒドロキシプロパンジオール、及びそれらの混合物から成る群から選択し得る。これらの溶媒はまた、インクセットを構成する3つ又は4つの(又はそれを上回る)インク内へのそれらの添加に関して、再構成することができる。
特定の実施形態では、或るインクセットはまた、ある特定の染料との使用に関してのみ有用である。従って、本書に説明する特定の染料は、これらの染料の使用は要求されないとはいえ、その実施形態において記載するインクセットに対し利用し得ることは分かろう。
他の実施形態では、インクジェット画像形成用のインクセットは、以下の式Iの構造を有するブラック染料を含むブラックインクを含み得る。
Figure 0005183462
このインクセットはまた、それぞれ式II、III、又はIVを有するシアン染料、マゼンタ染料、又はイエロー染料を含む、少なくとも1つのカラーインクを含み得る。シアン染料は、以下の式IIの構造を有し得る。
Figure 0005183462
式中、各Rは、平均2〜6のR基がH以外であるという条件付で、個々独立してH、SOH、SONH、及びSONH−アルキル−OHから成る群から選択される。この特定の実施形態においては、SOH、SONH、及びSONH−アルキル−OH基が平均いくつ存在するかに関しては特別の制限はない(但し、全ての基が平均2〜6存在する)。マゼンタ染料は、下記のように、式IIIの構造のNi2+錯体であり得る。
Figure 0005183462
イエロー染料は、以下の式IVの構造を有し得る。
Figure 0005183462
この実施形態では、並びに上式Iで表されるブラック染料を利用する他の実施形態においては、注目すべきは、このブラック染料は、フルカラーの染料セットにおける使用に有用であり、また、優れた黒色テキスト印刷能をもたらすということである。さらに、このブラック染料は、普通紙、並びに無機多孔質被覆媒体及び膨潤性媒体のような写真媒体上において優れた光学濃度を有し、且つ特定の液体ビヒクル中にて調合することによってレーザー品質の黒色テキストを形成し得る。この実施形態では、本発明の実施形態に従って実施し得るバリエーションもある。例えば、インクセットにはただ2つのインクが必要とされるだけであるとはいえ、当該インクセットは、3インク、4インク、5インク、6インク等を含み得る。6インクを含むインクセットにおいては、その個々のインクは、ブラックインク、シアンインク、淡色シアンインク、マゼンタインク、淡色マゼンタインク、及びイエローインクとし得、この場合、これらのカラーインクの1つは式II〜IVの染料を含む。
その他の実施形態では、マゼンタインクと淡色マゼンタインク、及び/又はシアンインクと淡色シアンインクは、種々のL、a、及びbの座標を有し得る。シアンインクと淡色シアン、及び/又はマゼンタインクと淡色マゼンタインクもまた、種々の染料を使って調製し得る。種々の染料を用いることによって、L座標の1つ、2つ、又は3つ全てに関して、種々の色空間値を得ることができる。
他の実施形態では、インクジェット画像形成用のインクセットは、第1シアン染料を含むシアンインクと、第2シアン染料を含む淡色シアンインクとを含み得る。第1シアン染料及び第2シアン染料は、それぞれ、以下の同じ一般化学式を有し得る。
Figure 0005183462
上式IIにおいて、染料は、銅(II)フタロシアニン核を含む。第1シアン染料と第2シアン染料の両方に関して、ここに開示する2つの特定の染料間の差異を画定するのは、R基の選択である。両染料に関して、各R基は、平均2〜6のR基がH以外であるという条件付きで、個々独立してH、SOH、SONH、及びSONH−アルキル−OHから成る群から選択される。しかしながら、この特定の実施形態においては、第1シアン染料に関しては、平均0.25〜1.5未満のSONH−アルキル−OH基があり、そして第2シアン染料に関しては、平均1.5〜3のSONH−アルキル−OH基がある。注目されるべきは、インクセットが同じ一般化学式をもつ2つの異なったシアン染料を含むこの特定の実施形態に関しては、式IIの染料を利用する従来の実施形態とは異なり、第1シアン染料と第2シアン染料の各々について、SONH−アルキル−OH基は、重複しない平均範囲で存在するということである。「アルキル」は、炭素数1〜4の低級アルキルを意味する。
第1シアン染料に関しより詳細に説明すると、一実施形態では、フタロシアニン核には、平均1〜4のSOH基と、平均0.25〜2のSONH基と、そして平均0.25〜1.5未満のSONH−アルキル−OH基が垂れ下がっている。一実施形態では、H以外には、平均約4の全R基が存在し得る。第1シアン染料として用いるのに有用である1つの具体的染料を引き合いに出せば、平均約1.8のSOH基、平均約1のSONH基、及び/又は平均約1.2のSONH−アルキル−OH基がフタロシアニン核に垂れ下がって存在する。この具体例では、SONH−アルキル−OH基のアルキル基はエチルであり得る。
第2シアン染料に関しより詳細に説明すると、一実施形態では、フタロシアニン核には、平均0.25〜2のSOH基と、平均0.25〜2.5のSONH基と、そして平均1.5〜3のSONH−アルキル−OH基が垂れ下がって存在し得る。一実施形態では、H基以外には、平均約4の全R基が存在し得る。第1シアン染料として用いるのに有用である1つの具体的染料を引き合いに出せば、平均約1のSOH基、平均約1.2のSONH基、及び/又は平均約1.8のSONH−アルキル−OH基がフタロシアニン核に垂れ下がって存在し得る。この具体例では、SONH−アルキル−OH基のアルキル基はエチルであり得る。
上記各実施形態において、各フタロシアニン核に結合する垂れ下がり基(pendent groups)の平均数が重要である。「平均」とは、染料の或るロット又はバッチにおけるある任意の垂れ下がり基の総数は、述べた平均数値範囲内の値であろうことを意味する。例えば、垂れ下がり基の範囲が0.5〜1であるとは、染料バッチの幾つかの分子については垂れ下がり基を欠くことがあり、他は1つ以上の垂れ下がり基を含み得るということを意味する。従って、或る染料バッチは0.5の平均値を有し得、他の染料バッチは1の平均値を有し得、そして両バッチは挙げられた範囲内にあることになる。注目すべきは、この特定の染料セットの実施形態では、第1シアン染料と第2シアン染料とのSONH−アルキル−OH基に関しては、平均範囲は重複しないということである。
式IIのシアン染料は、ブロンズ現象を低く抑えつつ、優れた空気褪色及び光退色耐性を実現する。ブロンズ現象は、インクジェットで作製された印刷物の印刷領域上に生じ得る金属のような光沢であるが、特に、ブラック、シアン、及び/又はブルーの印刷領域で起こる。さらに、この染料は、膨潤性媒体、無機多孔質媒体、普通紙、及びその他の基材上での使用に有用である。これまで、空気褪色耐性とブロンズ現象耐性の両方を達成することは困難であった。一般に、比較的褪色耐性のある染料分子はより激しくブロンズ化する傾向がある。染料含量と同様に、官能基、即ち、R基の比が、ブロンズ現象に影響し得ることが見出されている。従って、これらのパラメータを注意深く選択することによって、画像品質と耐用年数を改善することができる。
この実施形態はまた、本書に記載する他の実施形態と同様のバリエーションを含み得る。しかしながら、特にこの実施形態では、第1シアンインク中の第1シアン染料の濃度は1wt%〜6wt%とし得、及び/又は第2シアンインク中の第2シアン染料の濃度は0.5wt%〜4wt%とし得る。重ねて、このインクセットは、さらに、ブラックインク、マゼンタインク、淡色マゼンタインク、及びイエローインクを含むことによって、6インクを有するインクセットを作ることができる。
さらに別の実施形態では、インクジェット画像形成用のインクセットは、第1マゼンタ染料と第2マゼンタ染料を含むマゼンタインクを含むことができ、この場合、第1マゼンタ染料は第2マゼンタ染料より彩度が高く、且つ第2マゼンタ染料は第1マゼンタ染料より高い画像耐久性をもたらす。当該インクセットは、さらに、第2マゼンタ染料を含み且つ第1マゼンタ染料を含まない淡色マゼンタインクを含み得る。
他の詳細な態様では、インクセットは、マゼンタインクと淡色マゼンタインクを調合するために一対のマゼンタ染料を含み得る。この実施形態では、その一対のマゼンタ染料を構成する両染料がマゼンタインクジェットインクを調合するのに使用され、そして一対のマゼンタ染料のうちの1つの染料だけが淡色マゼンタインクを調合するのに使用される。一実施形態では、一対のマゼンタ染料は、遷移金属含有アゾ染料、例えば、以下に示す式IIIの染料のNi2+錯体:
Figure 0005183462
及び/又は非金属化染料、例えば、AR52Naを含み得る。
マゼンタインク及び淡色マゼンタインクに使用される染料の選択物を調整することによって、種々のL、a、及びbの座標を有するように、これらの2つのインクを調合することができる。特定の一実施形態では、第1マゼンタ染料は、非金属化キサンテンの染料群といった、比較的彩度の高い染料とし得る。このような染料の一例は、Acid Red 52である。第2マゼンタ染料は、式IIIの染料のような、遷移金属含有アゾ染料とし得る。これらの染料及び他のマゼンタ染料に関しては、第1マゼンタインク中の第1マゼンタ染料の濃度は0.2wt%〜1wt%とし得、第1マゼンタインク中の第2マゼンタ染料の濃度は1wt%〜6wt%とし得、そして淡色マゼンタインク中の第2マゼンタ染料の濃度は0.5wt%〜4wt%とし得る。
優れた色を得るためには、典型的に、明るい染料をマゼンタインクジェットインク用に選択することができる。しかしながら、明るい染料は、多くの場合、耐光性が劣っている。本書に記載するマゼンタインクセットに関連する例示的な一実施形態によれば、この問題は、式IIIの染料を、非金属化キサンテン染料のような第2タイプの染料と注意深く混ぜ合わせることによって解決することができる。例えば、極めて明るい染料であるAR52(キサンテン)は、マゼンタインクに鮮やかな色を与えるのに使用され、そして式IIIの染料は、同じインクに改善された画像耐久性を与えるのに使用することができる。淡色マゼンタインクに関しては、明るい又は鮮明な色はそれ程必要でないため、淡色マゼンタインクジェットインクは、例えば、式IIIの染料のみを使って調合することができる。
本発明の染料セットはまた、典型的に、イエロー染料を含む。イエロー染料は、一実施形態では、以下の式IVに示す構造を有し得る。
Figure 0005183462
上述のように、本発明のインクセットは、3インク、4インク、5インク、6インク等のセット形態とし得る。より詳細には、2、3、4、5、又は6インクセットをはじめとするインクセットは、当分野において一般的であり、本書に記載するシアン−マゼンタ−イエロー−ブラックのインクセットは、当分野で知られている系へと組み込むことができる。
本発明のインクセットは、種々の染料濃度にて調合することができ、それは、調合すべきインクのタイプに応じて変更し得る。例えば、淡色シアン及び淡色マゼンタに比べて、シアン及びマゼンタインクには比較的重い染料含量(比較的高濃度)が存在し得る。選択した具体的染料及び/又はビヒクル成分に応じて、先に挙げたものよりもさらに広い範囲を用い得る。一般的に、ほとんどのシアン及びマゼンタインクについては、染料濃度は、例えば、約0.1wt%〜約10wt%とし得る。淡色シアン及び淡色マゼンタインクについては、染料濃度は、約0.1wt%〜約6wt%とし得る。ブラックインクジェットインクに関しては、ブラック染料の濃度は約0.1wt%〜約10wt%とし得、そしてイエローインクジェットインクに関しては、イエロー染料の濃度は約0.1wt%〜約10wt%とし得る。
本発明のインクセットは、DESKJET(商標)又はPHOTOSMART(商標)のような市販のインクジェットプリンタ及びヒューレット−パッカード社で製造されたその他の類似プリンタに用いることができる。注目すべきは、これらのインクは、サーマルインクジェットプリンタ及び圧電式インクジェットプリンタの両方に十分に使用し得ることである。それらはまた、詰まりの発生の少ない信頼性の高いインクを用いることが強く望まれるオフアクシスプリンタにおいて使用することができる。これらのインクセットは、未被覆媒体、粘土被覆媒体、無機多孔質被覆媒体(例えば、シリカ−及びアルミナ−ベースの媒体)、及び有機膨潤性媒体(例えば、ゼラチン被覆媒体)をはじめとする各種媒体上で、それぞれ耐光性、色域が改善され、且つその他の印刷品質を向上させつつ、真の色を生ずることができる。
上述のように、本発明の幾つかの実施形態では、インクセットの各カラー又はブラック、即ち、ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエロー(及び任意に、淡色シアン及び淡色マゼンタ)は、単一インク中に、それぞれ、1つを上回る染料含量を有する、1つ又は複数の染料を含むことができる。即ち、各インクカラーに関し充填された2つ以上のインクジェット容器が存在し得、各容器は、異なる染料含量、異なる染料、異なるビヒクル成分、異なるビヒクル成分量等を有し得るインクをその中に含む。例えば、それぞれが異なる染料含量及び/又は異なるマゼンタ染料を含んでいる、2つのマゼンタ容器が存在し得る。
本発明の染料セットに用い得る典型的な液体ビヒクル調合物は、全部で5.0wt%〜50.0wt%にて存在する1つ又は複数の有機共溶媒、0.01wt%〜10.0wt%にて存在する1つ又は複数の非イオン、陽イオン、及び/又は陰イオン性界面活性剤を含むことができる。当該調合物の残部は、純水であるか、又は、殺生物剤、粘度修正剤、pH調節剤、金属イオン封鎖剤、防腐剤、抗コゲーション剤、にじみ抑制剤、乾燥剤、噴射促進(jettability)剤等の、当分野で知られているその他のビヒクル成分とし得る。
使用できる共溶媒の種類は、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、ジオール、グリコールエーテル、ポリグリコールエーテル、カプロラクタム、ホルムアミド、アセトアミド、及び長鎖アルコールが含まれ得る。当該化合物の例としては、第1脂肪族アルコール、第2脂肪族アルコール、1,2−アルコール、1,3−アルコール、1,5−アルコール、エチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルエーテルの高次同族体、N−アルキルカプロラクタム、未置換カプロラクタム、置換及び未置換の両ホルムアミド、置換及び未置換の両アセトアミド等が挙げられる。用い得る溶媒の具体例を幾つか挙げれば、2−ピロリジノン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノンを含む誘導化2−ピロリジノン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、テトラエチレングリコール、及びエチルヒドロキシプロパンジオール(EHPD)がある。
インク調合の当業者には周知のように、多くの界面活性剤のうち1つ以上を用いることもでき、それらは、アルキルポリエチレンオキシド、アルキルフェニルポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドブロック共重合体、アセチレンポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド(ジ)エステル、ポリエチレンオキシドアミン、プロトン化ポリエチレンオキシドアミン、プロトン化ポリエチレンオキシドアミド、ジメチコンコポリオール、置換アミンオキシド、等であり得る。使用に向く好ましい界面活性剤の具体例には、SOLSPERSE(商標)、TERGITOL(商標)、DOWFAX(商標)等が含まれる。本発明の調合物に添加される界面活性剤の量は、0.01wt%〜10.0wt%の範囲とし得る。
特定用途に向くようにインク組成物の諸性質を最適化すべく、本発明の調合物と共に他の種々の添加剤を用いることができる。これらの添加剤の例は、有害微生物の成長を阻害するのに添加されるものである。これらの添加剤は、インク調合物に日常的に用いられるところの、殺生物剤、殺菌剤、及びその他の微生物剤であり得る。適切な抗菌剤の例としては、限定はしないが、NUOSEPT(商標)、UCARCIDE(商標)、VANCIDE(商標)、PROXEL(商標)、及びそれらの組合せが挙げられる。
金属不純物の有害な影響を排除するために、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)のような、金属イオン封鎖剤を含むことができる。当該金属イオン封鎖剤は、典型的に、インクジェットインク組成物の0wt%〜2wt%にて含まれる。インクの諸性質を望み通りに改質するために、当業者に周知の他の添加剤及び粘度調節剤も含ませ得る。当該添加剤は、インクジェットインク組成物中に0wt%〜20wt%にて含ませることができる。
任意に、種々の緩衝剤又はpH調節剤もまた、本発明のインクジェットインク組成物中に用いることができる。代表的なpH調節剤には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような、アルカリ金属とアミンの水酸化物;クエン酸;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びジメチル−エタノールアミンのような、アミン;塩酸;並びに他の塩基性又は酸性成分のようなpH制御溶液が含まれる。用いる場合、pH調節剤は、典型的に、インクジェットインク組成物の約10wt%未満の量にて含まれる。同様に、限定はしないが、TRIS、MOPS、クエン酸、酢酸、MES等のような、緩衝剤も用いることができる。用いる場合、緩衝剤は、典型的に、インクジェットインク組成物の約3wt%未満、多くの場合約0.01wt%〜2wt%、最も一般的には0.2wt%〜0.5wt%にて含まれる。さらに、用い得る抗コゲーション剤としては、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、脂肪アルコールアルコキシレートのリン酸エステル等を、約0.01wt%〜5wt%の量にて含む。
以下の実施例において、現在最もよく知られている本発明の実施形態を説明する。以下は、本発明の原理の応用についての単なる例示又は説明にすぎないことを理解されたい。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、数々の修正及び代替の組成物、方法、並びにシステムが当業者によって案出されよう。添付の特許請求の範囲は、前述の修正並びに代替構成を網羅するべく意図されたものである。従って、これまで特定のものに関して本発明を説明してきたが、以下の実施例は、本発明の最も実用的且つ好ましい実施形態であると現在思われるものに関しさらに詳述するものである。
(実施例1)
インクセット
表1〜6に従って6インクから成るインクセットを調製することができ、又は代わりに、表1〜4に従って4インクから成るインクセットを調製することができる。
Figure 0005183462
Figure 0005183462
Figure 0005183462
Figure 0005183462
Figure 0005183462
Figure 0005183462
特定の好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な修正、変更、省略、及び置換を成し得ることは、当業者には明らかであろう。例えば、実施例1に使用されるものとして具体的ビヒクルを示しているが、その他のビヒクルも用いることができる。それ故、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。

Claims (13)

  1. インクジェット画像形成用のインクセットであって、
    (a)第1有機溶媒系を含むブラックインクであって、前記第1有機溶媒系が、第1有機溶媒と第2有機溶媒を含む、ブラックインク、
    (b)第2有機溶媒系を含むシアンインクであって、前記第2有機溶媒系が、第1有機溶媒と第3有機溶媒を含む、シアンインク、
    (c)第3有機溶媒系を含むマゼンタインクであって、前記第3有機溶媒系が、第1有機溶媒と第3有機溶媒を含む、マゼンタインク、
    (d)第4有機溶媒系を含むイエローインクであって、前記第4有機溶媒系が、第2有機溶媒と第4有機溶媒を含む、イエローインク、
    を含んで成り、
    前記第1有機溶媒が1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノンであり、且つ前記ブラックインク、シアンインク、及びマゼンタインクの少なくとも1つに5wt%〜20wt%の量にて含まれ、前記第2有機溶媒が2−ピロリジノンであり、且つ前記ブラックインク及びイエローインクの少なくとも1つに5wt%〜20wt%の量にて含まれ、前記第3有機溶媒が2−メチル−1,3−プロパンジオールあり、且つ前記シアンインク及びマゼンタインクの少なくとも1つに5wt%〜9.8wt%の量にて含まれ、前記第4有機溶媒が、テトラエチレングリコール、エチルヒドロキシプロパンジオール、及びそれらの混合物から成る群から選択され、且つテトラエチレングリコール及びエチルヒドロキシプロパンジオールの一方又は両方が、個々独立して、イエローインク中に3wt%〜9wt%にて含まれ、
    前記有機溶媒系の少なくとも2つが異なっている、インクセット。
  2. 前記インクセットが、(e)淡色シアンインク及び(f)淡色マゼンタインクを含み、該(e)及び(f)の各々が、第1有機溶媒及び第3有機溶媒の少なくとも1つを含む、請求項1に記載のインクセット。
  3. 前記ブラックインクが第3有機溶媒及び第4有機溶媒の少なくとも1つを含まず、前記シアンインク及びマゼンタインクの少なくとも1つが第2有機溶媒及び第4有機溶媒の少なくとも1つを含まず、且つ前記イエローインクが第1有機溶媒及び第3有機溶媒の少なくとも1つを含まない、請求項1に記載のインクセット。
  4. 前記テトラエチレングリコール及び前記エチルヒドロキシプロパンジオールの両方がイエローインク中に含まれる、請求項1に記載のインクセット。
  5. 前記ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクが相互に非反応性である、請求項1に記載のインクセット。
  6. 前記ブラックインクが、式I:
    Figure 0005183462
    を有するブラック染料を含み、
    前記シアンインク、前記マゼンタインク及び前記イエローインクが、それぞれ式II、III、又はIVを有するシアン染料、マゼンタ染料及びイエロー染料を含み、
    式II、III、及びIVが、
    (II):
    Figure 0005183462
    (式中、各R基は、平均2〜6のR基がH以外であるという条件付で、個々独立してH、SOH、SONH、及びSONH−アルキル−OHから成る群から選択される);
    (III):
    Figure 0005183462
    のNi2+錯体;及び
    (IV):
    Figure 0005183462
    のように定義される、請求項1から5のいずれか1項に記載のインクセット
  7. 第1シアン染料を含む前記シアンインク、
    第2シアン染料を含む前記淡色シアンインク
    を含み、前記第1シアン染料及び前記第2シアン染料が、それぞれ、同じ一般化学式:
    Figure 0005183462
    (式中、各R基は、平均2〜6のR基がH以外であるという条件付で、個々独立してH、SOH、SONH、及びSONH−アルキル−OHから成る群から選択され、前記第1シアン染料は平均0.25〜1.5未満のSONH−アルキル−OH基を含み、且つ前記第2シアン染料は平均1.5〜3のSONH−アルキル−OH基を含む)を有する、請求項2に記載のインクセット。
  8. 前記ブラックインクが、式I
    Figure 0005183462
    を有するブラック染料を含み、
    前記イエローインクが、式IVのイエロー染料を含み、式IVが、
    (IV):
    Figure 0005183462
    のように定義される、請求項7に記載のインクセット。
  9. 前記マゼンタインクが、第1マゼンタ染料と第2マゼンタ染料を含み、前記第1マゼンタ染料が前記第2マゼンタ染料より彩度が高く、且つ前記第2マゼンタ染料が前記第1マゼンタ染料より高い画像耐久性をもたらし、
    前記淡色マゼンタインクが、前記第2マゼンタ染料を含み且つ第1マゼンタ染料を含まない、請求項2に記載のインクセット。
  10. 前記ブラックインクが、式I
    Figure 0005183462
    を有するブラック染料を含み、
    前記イエローインクが、式IVのイエロー染料を含み、式IVが、
    (IV):
    Figure 0005183462
    のように定義される、請求項9に記載のインクセット。
  11. 前記第1マゼンタ染料が非金属化染料である、請求項10に記載のインクセット。
  12. 前記第2マゼンタ染料が遷移金属含有のアゾ染料である、請求項10に記載のインクセット。
  13. 前記遷移金属がニッケルであり、且つ前記遷移金属含有アゾ染料が、以下の構造:
    Figure 0005183462
    のNi2+錯体である、請求項12に記載のインクセット。
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