JP5172589B2 - プラント多変数連携非干渉制御方法 - Google Patents

プラント多変数連携非干渉制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、プロセスプラントの制御方法、操作弁制御方法、操作弁制御装置、操作弁制御プログラム及び製造設備に関し、詳しくはプロセス状態を表す多くの変数が連携して操作弁の干渉を制御する方法及び設備に関するものである。
従来からプロセスプラントの性能や安全性を確保して安定運転を継続することを目的として、流量(F)、温度(T)、圧力(P)、液面(L)などを目標設定値に維持するために、多数の流量調節計(FC)、温度調節計(TC)、圧力調節計(PC)、液面調節計(LC)を縦横に組み込み、各調節計では、「測定したプロセス値」が「設定した目標値」に近づいて行くように個別に「(PID)制御演算」を行い、その演算結果に基づき各操作弁の弁開度を開閉操作する制御方式が知られている。操作弁を制御する制御装置上の制御計算では、「測定値」(PV)の「目標値」(SV)からの「ずれ(偏差)」を検出し、その偏差を無くすように、「偏差(e)」に比例(P)して弁開度を加減操作し、さらにその「偏差(e)」の時間積分を加算して、その合計値によって操作弁を開閉操作する。この偏差(e)の時間積分(I)を加算するPI制御により、「測定値」を「目標値」に一致させることができる。時間微分(D)は「偏差(e)」の時間微分値(傾き)をさらに加算する制御計算であり、通常は応答の時間遅れの大きい温度制御に用いられる。
(1)式にPID調節計の基本演算式を示す。
Figure 0005172589
(1)式によって求められる計算値MVが操作弁の弁開度として出力されて操作弁の開閉操作を行う。このPID調節計の機能は、ディジタル式のDCS(制御専用計算機)上に組み込まれて構成される。
ここで、図6を参照して、従来技術による操作弁の弁開度の制御動作について説明する。図6は、従来技術による制御装置の構成を示す図である。図6は、一直線のライン上に流量調節計(FC)51と圧力調節計(PC1)52および圧力調節計(PC3)53が直列に配置されているプラント制御の構成を示している。なお、図6において、小さな○マークは実際には大きな容積を待つ反応装置あるいはベッセル類であり、また操作弁1、2、3のサイズは充分に大きいものとする。以下の説明において、1重の□マークで囲った変数は、外部から与えられる変数値を表しており、例えば、[Pu]と表記する。また、2重の□マークで囲った変数は、目標設定値を表しており、例えば、[[Q]]と表記する。また、□マークで囲っていない変数は、測定値や未知の変数であることを示している。
ここで、図6に示す各PI制御ループを作動させると、流量調節計51の目標設定値[[Q]]および圧力調節計52、53の目標設定値[[P1]]と[[P3]]に応じて個別のPI制御計算が機能して操作弁1、3、4の開度が操作され、最終的に各々の流量Q、圧力P1およびP3を目標設定値に偏差なく一致させるように制御動作が実施される。この時点で流量調節計51の目標設定値[[Q]]だけを若干大きくした場合に、PI制御が作動して操作弁1の弁開度が大きくなり流量Qが増加するが、同時に圧力P1が上昇し始めることになる。ここで、圧力調節計52が作動して、圧力P1を目標設定値[[P1]]に復帰させるべく操作弁3を開き始めて、排出流量が増加する。この時点で、さらに圧力P3が上昇し始める。この圧力P3の上昇を受けて、圧力調節計53が作動して、目標設定値[[P3]]に復帰させるべく操作弁4も開き始める。最終的な安定状態としては、流量Qは目標設定値[[Q]]に増加し、操作弁1、3、4の弁開度が各々若干開いた状態となって、圧力P1とP3が目標設定値[[P1]]と[[P3]]に一致して落ち着くことになる。
すなわち、流量の目標設定値[[Q]]を大きくさせるためには、操作弁1が開くだけではなく、操作弁3、4の弁開度も遅れながらであるが開いて行かざるを得ない。このことは、各操作弁での流量は、その弁の前後の差圧の平方根とCV値の乗算によって決まるというプロセス上の性質から説明できる。また、圧力P1とP3は、一旦上昇して、目標値からの偏差が発生して初めて、圧力調節計52、53のPI制御動作によって目標値に復帰することになるのである。(1)式のPID調節計の基本演算式においては、両方の圧力調節計52、53の目標設定値は一定のままであり、時間積分項の効果によってMV値が大きくなって操作弁が開いて行くのであるから、圧力P1および圧力P3に偏差が発生せざるを得ない。
なお、先行技術として、3入力3出力以上の入出力変数を有するプロセスと、このプロセスと共に3系列以上の制御ループを構成する制御系を有し、制御系が3系列以上の制御ループの間に各制御ループ間の相互干渉を打ち消す非干渉要素を備えることにより、自動制御を行う3系列以上の制御ループに容易に適用することができ、かつ各制御ループの相互干渉を十分に抑えることができる非干渉制御方法知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2007−11866号公報
前述したように、各操作弁を個別にPID制御を実施した場合に、圧力P1あるいは圧力P3での偏差が過大すぎて許容変動幅以上となる場合には、偏差を抑えるために比例帯(PB)、積分時間(Ti)等の制御感度を上げて敏感にすることになるが、過敏にし過ぎると制御系の相互干渉によりハンチング状態となり、各調節計のパラメータ調整が困難となり、制御系の調整が不可能な場合が生じるという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、制御系の相互干渉を低減するとともに、容易に制御系の調整を行うことができるプロセスプラントの制御方法、操作弁制御方法、操作弁制御装置、操作弁制御プログラム及び製造設備を提供することを目的とする。
本発明は、原料を物理的、化学的または物理化学的に処理して目的物を得るプロセスプラントであって、原料から目的物を生産するプロセスの制御を可能とする相互に干渉する要素を有する複数の操作弁と、前記プロセスの状態を表す変数を検知し、検知した値に応じた信号を前記操作弁に与える制御部とを備え、前記制御部からの信号を受けた各操作弁の弁開度操作により、プロセスの状態を制御するプラントの制御方法において、前記制御部は、前記操作弁の弁開度と、その弁開度に応じて変化するプロセスの状態を表す変数との関係を、定常状態での方程式で構築し、当該方程式により操作弁ごとに導出した解析解式に基づいて、前記操作弁の目標の弁開度である第1のCV値を算出し、検知した値に応じた前記操作弁の現状の弁開度である第2のCV値を算出するとともに、さらに前記第1及び第2のCV値の偏差eを算出する算出工程と、前記算出工程で算出した偏差eに基づいてプロセスの状態をフィードバック制御する制御工程とを有することを特徴とする。
本発明は、前記CV値は、流量Q、比重G、弁差圧ΔPとした場合に、式:CV=Q√(G/ΔP)を演算することによって算出することを特徴とする。
本発明は、相互に干渉する要素を有する複数の操作弁を制御する操作弁制御方法であって、前記操作弁の弁開度と、その弁開度に応じて変化するプロセスの状態を表す変数との関係を、方程式で構築し、当該方程式により操作弁ごとに導出した解析解式に基づいて、前記操作弁の目標の弁開度である第1のCV値を算出し、検知した値に応じた前記操作弁の現状の弁開度である第2のCV値を算出するとともに、さらに前記第1及び第2のCV値の偏差eを算出する算出工程と、前記算出工程で算出した偏差eに基づいて前記操作弁の弁開度を制御する制御工程とを有することを特徴とする。
本発明は、前記CV値は、流量Q、比重G、弁差圧ΔPとした場合に、式:CV=Q√(G/ΔP)を演算することによって算出することを特徴とする。
本発明は、相互に干渉する要素を有する複数の操作弁を制御する操作弁制御装置であって、前記操作弁の弁開度と、その弁開度に応じて変化するプロセスの状態を表す変数との関係を、方程式で構築し、当該方程式により操作弁ごとに導出した解析解式に基づいて、前記操作弁の目標の弁開度である第1のCV値を算出し、検知した値に応じた前記操作弁の現状の弁開度である第2のCV値を算出するとともに、さらに前記第1及び第2のCV値の偏差eを算出する算出手段と、前記算出手段によって算出した偏差eに基づいて、前記操作弁の弁開度を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
本発明は、相互に干渉する要素を有する複数の操作弁を制御する操作弁制御装置上で動作する操作弁制御プログラムであって、前記操作弁の弁開度と、その弁開度に応じて変化するプロセスの状態を表す変数との関係を、方程式で構築し、当該方程式により操作弁ごとに導出した解析解式に基づいて、前記操作弁の目標の弁開度である第1のCV値を算出し、検知した値に応じた前記操作弁の現状の弁開度である第2のCV値を算出するとともに、さらに前記第1及び第2のCV値の偏差eを算出する算出ステップと、前記算出ステップにおいて算出した偏差eに基づいて、前記操作弁の弁開度を制御する制御ステップとをコンピュータに行わせることを特徴とする。
本発明は、原料から目的物を生産するプロセスの制御を可能とする相互に干渉する要素を有する複数の操作弁と、当該プロセスの状態を表す変数を検知し、検知した値に応じた信号を操作弁に与える制御部とを備え、前記制御部からの信号を受けた各操作弁の弁開度操作により、プロセスの状態を制御する製造設備であって、前記制御部は、前記操作弁の弁開度と、その弁開度に応じて変化するプロセスの状態を表す変数との関係を、方程式で構築し当該方程式により操作弁ごとに導出した解析解式に基づいて、前記操作弁の目標の弁開度である第1のCV値を算出し、検知した値に応じた前記操作弁の現状の弁開度である第2のCV値を算出するとともに、さらに前記第1及び第2のCV値の偏差eを算出する算出手段と、前記算出手段によって算出した偏差eに基づいて、前記操作弁の弁開度を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、制御系の相互干渉を低減するとともに、容易に制御系の調整を行うことができるという効果が得られる。また、偏差の発生を最小限に抑えることができ、制御応答性が飛躍的に改善されるともに、非干渉化を実現することができるという効果も得られる。
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態による操作弁制御装置を図面を参照して説明する。図1は第1の実施形態の構成を示す機能ブロック図である。この図において、制御対象のプラントは、図6に示すプラントの構成と同様に、一直線のライン上に操作弁1、2、3、4が設けられている構成であり、原料を物理的、化学的または物理化学的に処理して目的物を得るプロセスプラントにおいて、原料から目的物(中間物も含む)を生産するプロセスの制御を可能とするためのものである。図1に示す操作弁制御装置が図6に示す装置と異なる点は、検出器6、7、8の出力を制御装置5へ入力するようにして、制御装置5が3つの操作弁1、3、4を連携して制御するようにした点である。
制御装置5は、流量Qの目標設定値[[Q]]、圧力P1の目標設定値[[P1]]および圧力P3の目標設定値[[P3]]が外部から設定される。また、制御装置5は、外乱項として、上流側の圧力[Pu]、下流側の圧力[Pd]及び操作弁2の流量係数[CV2]が与えられる。そして、制御装置5は、検出器6によって測定した流量Q、検出器7によって測定した圧力P1および検出器8によって測定した圧力P3を入力し、操作弁1、3、4を弁開度を制御するための操作量MV1、MV3、MV4を出力する。
次に、操作弁1、3、4の弁開度を制御するための操作量MV1、MV3、MV4を求めるための偏差e1、e3、e4を演算によって求める動作を説明する。まず、操作弁1、2、3、4の容量を表す流量係数CVについて説明する。全開の弁に差圧ΔPを与えて水を流したときその流量をQとすると、Q=CV√(ΔP)となるが、一般に差圧・流量の単位をそれぞれpsi、U.S.gal/minにとったときの流量係数CVの値をもって弁の容量を表す。すなわち、差圧1psiのもとで全開の弁を通過する水(60F)の流量U.S.gal/minを弁の容量と呼ぶ。一般の流体に対しては、流量Q、比重G、弁差圧ΔPとした場合、
CV=Q√(G/ΔP)・・・(2)
である。また、気体または蒸気に対しては水に対する(2)式をもととして、比重換算してそれぞれに対するCV式が得られる。これらのCV式を図3に示す(出典:「改訂 自動制御便覧」、計測自動制御学会編、コロナ社)。
図1に示すガス流れ系の構成において、定常状態における操作弁1、2、3、4の容量を表す流量係数CV1、[CV2]、CV3、CV4を求めるCV式(図3の気体の欄に示す式)を連立させると(3)〜(6)式のようになる。
Figure 0005172589
ここで、[G]は比重、[T]は温度である。
この連立方程式を、未知変数CV1、CV3、CV4、P2について解析解を導出すると(7)〜(9)式となる。
Figure 0005172589
ここで、K=383である。
これらの解析解((7)〜(9)式)は、流量Qの目標設定値[[Q]]、圧力P1の目標設定値[[P1]]および圧力P3の目標設定値[[P3]]を実現することができる定常状態における各操作弁1、3、4の流量係数CV1、CV3およびCV4を導出したことになる。これが請求項でいう操作弁1、3、4の目標の容量(弁開度)である第1のCV値となる。
一方、解析解((7)〜(9)式)における目標設定値[[Q]]、圧力P1の目標設定値[[P1]]および圧力P3の目標設定値[[P3]]を、測定値である流量Q、圧力P1、P3に置き換えた(10)〜(12)式によって、現在値となる流量係数CV1’、CV3’、CV4’を求めることができる。これが請求項でいう検知した値に応じた操作弁の現状の容量(弁開度)である第2のCV値となる。
Figure 0005172589
したがって、操作弁1の偏差e1は、e1=CV1−CV1’によって求めることができる。同様に操作弁3の偏差e3は、(8)、(11)式を用いて、e3=CV3−CV3’によって求めることができる。また、操作弁4の偏差e4は、(9)、(12)式を用いて、e4=CV4−CV4’によって求めることができる。
このように、操作弁1、3、4それぞれの弁開度と、その弁開度に応じて変化するプロセスの状態を表す変数との関係を、定常状態での方程式で構築し、この方程式により操作弁1、3、4のそれぞれについて導出した解析解式に基づいて、操作弁1、3、4の目標の弁開度である第1のCV値を算出し、検知した値に応じた操作弁1、3、4の現状の弁開度である第2のCV値を算出し、第1のCV値と第2のCV値の偏差e1、e3、e4を算出して、これらの偏差に応じて各操作弁の操作量を求める。
なお、前記方程式の構築は、設計図における流量や圧力等を制御する操作弁と検知センサとの配置から人間が行うが、コンピュータ装置を用いて行うようにしてもよい。また、この方程式から操作弁ごとに解析解式を導出することも人間が行うが、コンピュータ装置を用いて行うようにしてもよい。
すなわち、図1に示す制御装置5は、最終目標値としての流量係数CV1、CV3、CV4に対して、現在値の流量係数のCV1’、CV3’、CV4’との偏差に基づいて、出力値である操作量MV1、MV3、MV4を求めるものである。この出力(MV値)は、該当する操作弁の弁開度(CV値に相当する)を直接制御操作するのであるため、(1)式における制御ゲインは各々、PB=100[%]近辺とすることができ、パラメータ調整を容易に行うことが可能となる。
また、積分項による偏差eの積分効果により、各被制御変数Q、P1、P3はオフセットなしに、目標設定値[[Q]]、[[P1]]および[[P3]]に収束させることができる。また、比例項としては、偏差eではなく単にCV1、CV3、CV4の値とすることにより、最終目標値としての流量係数を操作弁開度として直接に出力することになるため、外乱効果を反映できるフィードフォワード制御機能を自然な形で包含できることになる。すなわち、測定できる外乱効果を直接的に補償することができる機能を備えた制御系の構成とすることができる。さらに、従来のPID制御方式において採用されている「微分先行型PID制御」あるいは「I−PD型制御」等の変形PID制御方式も適用可能である。
次に、図1に示す制御装置5の効果を確認するために、ダイナミック・シミュレーションを実施した結果について説明する。図4は、図6に示す制御系を使用してPID制御を実施した場合の弁開度、圧力、流量をシミュレーション処理によって求めた結果を示す図である。図5は、図1に示す制御装置5を使用してPID制御を実施した場合の弁開度、圧力、流量をシミュレーション処理によって求めた結果を示す図である。図4、5は、流量の目標設定値Qn1setを10000[Nm/hr]から11000[Nm/hr]ヘステップ状に増加させた場合の制御応答グラフである。
図6に示す従来の制御系の場合には、流量設定値Qn1setを増加させると、まず操作弁1の開度が大きくなる。続いて、圧力P1が上昇するため、操作弁3の開度が大きくなり、更に引き続いて圧力P3が上昇するので操作弁4の開度が大きくなり落ち着く(整定)ことになる。すなわち、各操作弁が遅れながら追従して行き、かつ圧力P1およびP3に偏差が発生せざるを得ない状態となる。
一方、図1に示す制御装置5の場合には、流量設定値Qn1setが増加すると同時に、操作弁1、3、4が、即座に最終の弁開度に向かって一斉に開度が大きくなる方向に作動する。また、圧力P1およびP3での偏差発生は最小限に抑えられ、制御応答性が大幅に改善し非干渉化が実現できていることが分かる。この最小限の偏差発生は、圧力P2の容積部分の圧力が低下するまでに若干の時間が掛かるためであり、不可避の偏差である。また、図4と図5における各操作弁の最終開度が同一の弁開度に収束していることが分かる。
このように、図1に示す本発明による制御装置5は、図6に示す制御系の構成に比較して偏差の発生を最小限に抑えることができ、制御応答性が飛躍的に改善されるともに、非干渉化を実現することができるため、外乱効果を反映するフィードフォワード制御の機能も実現することが可能である。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態による操作弁制御装置を図面を参照して説明する。図2は第2の実施形態の構成を示す機能ブロック図である。この図において、制御対象のプラントは、完全混合槽の熱交換器18を備えた構成であり、操作弁11、12、13、14が設けられている。図2に示す制御装置15は、検出器16、17によって測定した測定値W4とTmを入力し、操作弁12、13の開度を制御する。各変数を式で表すと、(13)〜(22)式となる。
Figure 0005172589
第1の実施形態で説明したように、偏差e2と偏差e3を求めるための式を、(13)〜(22)式を変形させて、(23)〜(32)式を得る。
Figure 0005172589
(23)〜(32)式に基づいて、目標設定値に基づく操作弁12、13の容量を表す目標流量係数CV2、CV3と、測定値に基づく操作弁12、13の容量を表す測定流量係数CV2’、CV3’を求め、e2=CV2−CV2’及びe3=CV3−CV3’によって偏差e2、e3を求める。そして、(1)式によって、操作量MV2、MV3を求める。
このように、図2に示す制御装置15は、最終目標値としての流量係数CV2、CV3に対して、現在値の流量係数のCV2’、CV3’との偏差に基づいて、出力値である操作量MV2、MV3を求めるものである。この出力(MV値)は、該当する操作弁の弁開度(CV値に相当する)を直接制御操作するのであるため、(1)式における制御ゲインは各々、PB=100[%]近辺とすることができ、パラメータ調整を容易に行うことが可能となる。
以上説明したように、本発明による制御方式は、弁の流量係数CVに相当する非線形モデル式の導出にあたって、多少の不正確さ(近似モデルの誤差等)があっても、傾向と方向性が概略正しくて同一形式でさえあれば、PI制御によってオフセット無しに整定することができ、ロバストな制御構成である。すなわち、多少のモデル誤差があっても制御可能である。また、本発明の制御方式に使用する非線形の式を、解析的に直接的に導出できない場合には、定常状態モデル式の基礎式を局所線形化する等の工夫により近似的な解析解式にて代用することができる。
また、本発明の制御方式は、定常状態でのプロセス収支式に基づいているため、動特性モデル(ダイナミック・モデルの同定)は含んでいないが、PI制御の比例帯(PB)と積分時間(Ti)のパラメータ調整によって、制御応答性をチューニングすることが可能である。操作弁がEQ%形の非線形タイプであっても、PI制御によって制御可能である。また、図1に示す制御式中の[Pu]、[Pd]、[CV2]、[G]、[T]は、通常測定されないパラメータであるが、オンラインで実測できる場合には、その実測値を使用することによりフィードフォワード制御機能を実現できる。また、測定されていない場合には、概略値を設定するだけで充分である。また、変数[CV2]は、想定される手動弁の例として定式化モデル内に含めたが、配管の流れ抵抗としてもよい。
本発明の制御方式は、次に示す(a)〜(g)のような課題があるPID制御系の場合に、適用すると有効である。
(a)ハンチングしやすく、安定させるのが困難な系。
(b)制御追従性の良くない系。
(c)パラメータ調整(チューニング)に苦慮している系。
(d)複数の制御ループの入出力ペアリングの組合せ選定に難渋している系。
(e)従来のフィードフオワード制御では困難な場合で外乱による変動を抑制したい系。(f)偏差が許容変動範囲以上となってしまう系。
(g)制御対象の非線形特性あるいは相互干渉特性が原因して制御性が良くない系。
また、目標設定値の変更、外乱効果の考慮、あるいは制御操作の効果が、逆に過激すぎて内乱発生(制御ループ間のダイナミックな相互干渉)の恐れがある場合には、それぞれに一次遅れフィルターを付加すること等によって緩衝化を図ることも可能である。
本発明によるPID制御方式は、次のような効果を得ることができる。すなわち、複数の各プロセス制御目標値を実現できる当該操作弁のCV値を、多変数連携PID制御の目標設定値として集約しているので、プロセス的に無理がなく自然である。また、この多変数連携PID制御の出力値が、その操作弁のCV値自体を直接に制御操作するのであるため、比例ゲイン(PB=約100%)の調整に苦慮する必要がない。また、図6に示す構成のPID制御では、誤って不整合な構成にしてしまっても気が付かない危険性があるが、本発明によるPID制御方式は、不整合なプラントワイド制御構成については適用できないため、誤って不整合な構成にしてしまう危険性がない。また、外乱の影響を補償できるフィードフォワード(FF)制御が自然な形で無理なく包含される。また、多変数連携PID制御の積分項の効果によって、オフセット(定常偏差)なしに収束させることができる。また、従来のPID制御構成の入出力ペアリングの選択問題を統合できている。
なお、図1、2における制御装置1、15の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより弁制御処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
本発明の第1の実施形態の構成を示す機能ブロック図である。 本発明の第2の実施形態の構成を示す機能ブロック図である。 弁の容量を表す流量係数CVの計算式を示す説明図である。 従来技術による制御を実施した場合の弁開度と圧力の変化を示す図である。 本発明による制御を実施した場合の弁開度と圧力の変化を示す図である。 従来技術による制御装置の構成を示す図である。
符号の説明
1、2、3、4・・・操作弁、5・・・制御装置、6、7、8・・・検出器、11、12、13、14・・・操作弁、15・・・制御装置、16、17・・・検出器、18・・・熱交換器

Claims (7)

  1. 原料を物理的、化学的または物理化学的に処理して目的物を得るプロセスプラントであって、
    原料から目的物を生産するプロセスの制御を可能とする相互に干渉する要素を有する複数の操作弁と、
    前記プロセスの状態を表す変数を検知し、検知した値に応じた信号を前記操作弁に与える制御部とを備え、
    前記制御部からの信号を受けた各操作弁の弁開度操作により、プロセスの状態を制御するプラントの制御方法において、
    前記制御部は、前記操作弁の弁開度と、その弁開度に応じて変化するプロセスの状態を表す変数との関係を、定常状態での方程式で構築し、当該方程式により操作弁ごとに導出した解析解式に基づいて、前記操作弁の目標の弁開度である第1のCV値を算出し、検知した値に応じた前記操作弁の現状の弁開度である第2のCV値を算出するとともに、さらに前記第1及び第2のCV値の偏差eを算出する算出工程と、
    前記算出工程で算出した偏差eに基づいてプロセスの状態をフィードバック制御する制御工程と
    を有することを特徴とするプロセスプラントの制御方法。
  2. 前記CV値は、流量Q、比重G、弁差圧ΔPとした場合に、式:CV=Q√(G/ΔP)を演算することによって算出することを特徴とする請求項1に記載のプロセスプラントの制御方法。
  3. 相互に干渉する要素を有する複数の操作弁を制御する操作弁制御方法であって、
    前記操作弁の弁開度と、その弁開度に応じて変化するプロセスの状態を表す変数との関係を、方程式で構築し、当該方程式により操作弁ごとに導出した解析解式に基づいて、前記操作弁の目標の弁開度である第1のCV値を算出し、検知した値に応じた前記操作弁の現状の弁開度である第2のCV値を算出するとともに、さらに前記第1及び第2のCV値の偏差eを算出する算出工程と、
    前記算出工程で算出した偏差eに基づいて前記操作弁の弁開度を制御する制御工程と
    を有することを特徴とする操作弁制御方法。
  4. 前記CV値は、流量Q、比重G、弁差圧ΔPとした場合に、式:CV=Q√(G/ΔP)を演算することによって算出することを特徴とする請求項3に記載の操作弁制御方法。
  5. 相互に干渉する要素を有する複数の操作弁を制御する操作弁制御装置であって、
    前記操作弁の弁開度と、その弁開度に応じて変化するプロセスの状態を表す変数との関係を、方程式で構築し、当該方程式により操作弁ごとに導出した解析解式に基づいて、前記操作弁の目標の弁開度である第1のCV値を算出し、検知した値に応じた前記操作弁の現状の弁開度である第2のCV値を算出するとともに、さらに前記第1及び第2のCV値の偏差eを算出する算出手段と、
    前記算出手段によって算出した偏差eに基づいて、前記操作弁の弁開度を制御する制御手段と
    を備えることを特徴とする操作弁制御装置。
  6. 相互に干渉する要素を有する複数の操作弁を制御する操作弁制御装置上で動作する操作弁制御プログラムであって、
    前記操作弁の弁開度と、その弁開度に応じて変化するプロセスの状態を表す変数との関係を、方程式で構築し、当該方程式により操作弁ごとに導出した解析解式に基づいて、前記操作弁の目標の弁開度である第1のCV値を算出し、検知した値に応じた前記操作弁の現状の弁開度である第2のCV値を算出するとともに、さらに前記第1及び第2のCV値の偏差eを算出する算出ステップと、
    前記算出ステップにおいて算出した偏差eに基づいて、前記操作弁の弁開度を制御する制御ステップと
    をコンピュータに行わせることを特徴とする操作弁制御プログラム。
  7. 原料から目的物を生産するプロセスの制御を可能とする相互に干渉する要素を有する複数の操作弁と、当該プロセスの状態を表す変数を検知し、検知した値に応じた信号を操作弁に与える制御部とを備え、前記制御部からの信号を受けた各操作弁の弁開度操作により、プロセスの状態を制御する製造設備であって、
    前記制御部は、前記操作弁の弁開度と、その弁開度に応じて変化するプロセスの状態を表す変数との関係を、方程式で構築し当該方程式により操作弁ごとに導出した解析解式に基づいて、前記操作弁の目標の弁開度である第1のCV値を算出し、検知した値に応じた前記操作弁の現状の弁開度である第2のCV値を算出するとともに、さらに前記第1及び第2のCV値の偏差eを算出する算出手段と、
    前記算出手段によって算出した偏差eに基づいて、前記操作弁の弁開度を制御する制御手段と
    を備えることを特徴とする製造設備。
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