JP5152748B2 - 予測乱気流域解析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、航空機前方の乱気流域を予測・表示する予測乱気流域解析装置、特に乱気流域の発現リスクの高い空域場所を高い精度で解析・予測することができ、乱気流域が予測される場合はその対応措置を事前に航空機等に伝送し、安全な航空機の運航の実現に寄与することが出来る予測乱気流域解析装置に関するものである。
従来から行われている乱気流域の予測は、定期的に気象庁から送られて来る天気図を用いて、乱気流域が発生した時の特徴を学習することで乱気流域の発生を予測している。この天気図は一日に2回、9時と21時における風速、気温、気圧等が図となって次の日までのデータが提供される。従って、その時間間隔の中で発生する事象は天気図に示されずに埋もれてしまうことがあった。また、様々な乱気流域発生指標を作成し、気象予測計算データを用いてその指標を計算した乱気流域発生予測も行われてきたが、気象予測計算データの格子間隔が大きいため、やはりそのなかに埋もれてしまうことがあった。また、観測データを重視するという観点から、先行する航空機が乱気流に遭遇した場合に、その強さ、位置、高度をPIREP(Pirot Report)として報告されることから、それを無線で受信することで乱気流発生域の状況を把握することが行われてきた。しかし、一つの乱気流は寿命が短いため、後行する航空機が同じ場所で乱気流に遭遇するとは限らないこと、またその発生場所は知ることは出来たとしても、それがどこまで広がっているのか等の情報は知ることが出来ないという問題があった。
上述した通り、現状の気象庁から送られて来る天気図を基にした乱気流発生予測では、時間間隔の途中のデータが欠如し更にはデータを算出する気象予測モデルの格子点間隔が大きいため、その時間間隔の中で発生する乱気流域を予測することは難しいという問題がある。他方、先行する航空機からのPIREPに基づいた乱気流発生予測では、発生した場所は知ることは出来るが、その乱気流の大きさ等は知ることは出来ないという問題がある。
そこで、本発明は、上記実情に鑑み創案されたものであって、乱気流域の発現リスクの高い空域場所を高い精度で解析・予測することができ、乱気流域が予測される場合はその対応措置を事前に航空機等に伝送し、安全な航空機の運航の実現に寄与することが出来る予測乱気流域解析装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための請求項1に記載の予測乱気流域解析装置は、航空機前方の乱気流域を予測・表示する装置であって、三次元格子点から成るある特定空域についての気象数学モデルを備えると共に、外部から送信されて来る上空および地上の風速や気温などの数値気象情報を該気象数学モデルの初期値・境界値として用いて更なる高分解能の数値気象情報を作成する気象予測モデル部と、該高分解能の数値気象情報に基づいて前記特定空域についてのリチャードソン数(RI)および温位鉛直勾配(Γ)を算出し乱気流域を予測する予測乱気流域計算解析部と、該乱気流域に関する情報を航空機または基地局に伝送するネットワーク部と、該乱気流域を航空機の航空路に対応して表示する予測乱気流域表示部とから成り、前記気象予測モデル部は、気象数学モデルとして、温位鉛直勾配(Γ)をx軸、リチャードソン数(RI)をy軸としてデータ領域区分が設定され、該データ領域区分に基いて違うタイプの4つの乱気流域にタイプ分けしたものを備え、前記予測乱気流域計算解析部は、前記データ領域区分に基づいて乱気流域を特定するとともに、リチャードソン数(RI)が大きい場合には鉛直流も加味して乱気流域を特定することを特徴とする。
本願発明者が乱気流域の特徴について鋭意研究したところ、大部分の乱気流域はリチャードソン数(RI)と温位鉛直勾配(Γ)によって特徴付けられるデータ領域区分を設定できることを見出した。従って、航空機の飛行空域におけるリチャードソン数(RI)と温位鉛直勾配(Γ)を高精度に推定することができれば、航空機前方の乱気流を予測することが可能となる。
そこで、上記予測乱気流域解析装置では、気象予測モデル部は三次元格子点から成る気象数学モデルを備え、気象庁より一定時間間隔で送信されてくる数値気象情報を初期値・境界値としてその時間間隔の途中を補間する更なる高分解能の数値気象情報を作成する。 そして、予測乱気流域計算解析部はこれら高分解能の数値気象情報を用いて航空機の飛行空域におけるリチャードソン数(RI)と温位鉛直勾配(Γ)を高精度に計算し乱気流域を特徴づけるデータ領域区分にあてはめることにより、航空機前方の乱気流域を高精度に予測することが可能となる。また、予測した乱気流域はネットワーク部を介して航空機または地上局の予測乱気流域表示部に送信されるので、航空機が安全に航行することが出来るようになる。
請求項2に記載の予測乱気流域解析装置では、前記気象数学モデルは、水平方向の格子点間隔が2km以下であり且つ鉛直方向の格子点間隔が300m以下である8個の格子点から成る直方体を最小単位として複数の格子点によって前記特定空域を模擬していることとした。
上記予測乱気流域解析装置では、気象数学モデルの格子点間隔を上記構成とすることにより、高分解の数値気象情報を作成することができ、その結果、航空機の飛行空域におけるリチャードソン数(RI)と温位鉛直勾配(Γ)を高精度に計算し、それらを軸とした乱気流域を特徴づけるデータ領域区分を参照することで気流域の発生位置だけでなくその大きさについても高精度に予測することが可能となる。
また、前記予測乱気流域計算解析部は、前記データ領域区分を、前記リチャードソン数(RI)が0.6+α(-0.2≦α≦0.2)を基準に、該リチャードソン数(RI)が0.6+α(-0.2≦α≦0.2)未満の場合を第1予測乱気流域と、該リチャードソン数(RI)が0.6+α(-0.2≦α≦0.2)以上であり且つ鉛直流が180cm/s以上である場合を第2予測乱気流域とすることとした。
本願発明者がリチャードソン数(RI)と乱気流域との相関関係について鋭意研究したところ、リチャードソン数(RI)が0.6+α(-0.2≦α≦0.2)を境にして大きく分類できることを見出した。
そこで、上記予測乱気流域解析装置では、予測乱気流域計算解析部が気象予測モデル部から得た高分解能の数値気象情報に基づいて算出したリチャードソン数(RI)によって、乱気流域を上記の通り分類することにより、高精度の乱気流域の予測に寄与するようになる。
請求項3に記載の予測乱気流域解析装置では、前記予測乱気流域計算解析部は、前記第1予測乱気流域の中で、前記温位鉛直勾配(Γ)の値が(0.6+β)K/100m(-0.2≦β≦0.2)以上である場合、前記予測乱気流域表示部に晴天乱気流域(CAT)と表示させることとした。
本願発明者が第1予測乱気流域における温位鉛直勾配(Γ)と乱気流域との相関関係について鋭意研究したところ、温位鉛直勾配(Γ)の値が(0.6+β)K/100m(-0.2≦β≦0.2)を境にして大きく分類できることを見出した。
そこで、上記予測乱気流域解析装置では、予測乱気流域計算解析部が気象予測モデル部から得た高分解能の数値気象情報に基づいて算出した温位鉛直勾配(Γ)によって、乱気流域を上記の通り分類することにより、高精度の乱気流域の予測に寄与するようになる。
請求項4に記載の予測乱気流域解析装置では、前記予測乱気流域計算解析部は、前記第1予測乱気流域の中で、前記温位鉛直勾配(Γ)が(0.6+β)K/100m(-0.2≦β≦0.2)未満であり、前記リチャードソン数(RI)がRI≦0.6の場合、前記予測乱気流域表示部に上空不安定乱気流域と表示させることとした。
本願発明者は、温位鉛直勾配(Γ)の値が(0.6+β)K/100m(-0.2≦β≦0.2)未満の第1予測乱気流域中の乱気流域が、対流を起こしやすい不安定域であり且つ高度が高い場合は、更に異なる乱気流域として分類できることを見出した。
そこで、上記予測乱気流域解析装置では、予測乱気流域計算解析部が気象予測モデル部から得た高分解能の数値気象情報に基づいて算出した温位鉛直勾配(Γ)と他の数値気象情報によって、乱気流域を上記の通り分類することにより、高精度の乱気流域の予測に寄与するようになる。
請求項5に記載の予測乱気流域解析装置では、前記予測乱気流域計算解析部は、前記第1予測乱気流域の中で、前記温位鉛直勾配(Γ)が(0.6+β)K/100m(-0.2≦β≦0.2)未満であり、且つ山脈または孤立峰の風下でのリチャードソン数(RI)が0.25+γ(-0.1≦γ≦0.1)以下になる場合、前記予測乱気流域表示部に下層不安定乱気流域と表示させることとした。
本願発明者は、温位鉛直勾配(Γ)の値が(0.6+β)K/100m(-0.2≦β≦0.2)未満で対流を起こしやすい不安定域である第1予測乱気流域中の乱気流域が、高度が低く且つ山脈または孤立峰の風下でリチャードソン数(RI)が0.25+γ(-0.1≦γ≦0.1)以下になった場合は、更に異なる乱気流域として分類できることを見出した。
そこで、上記予測乱気流域解析装置では、予測乱気流域計算解析部が気象予測モデル部から得た高分解能の数値気象情報に基づいて算出した温位鉛直勾配(Γ)と他の数値気象情報によって、乱気流域を上記の通り分類することにより、高精度の乱気流域の予測に寄与するようになる。
請求項6に記載の予測乱気流域解析装置では、前記予測乱気流域計算解析部は、前記第2予測乱気流域の中で、鉛直流が180cm/s以上になる場合、前記予測乱気流域表示部に強い鉛直流域と表示させることとした。
本願発明者は、第2予測乱気流域中の乱気流域について、リチャードソン数(RI)により計算される不安定性とは関係なく、鉛直流が180cm/s以上になる場合は、更に異なる乱気流域として分類できることを見出した。
上記予測乱気流域解析装置では、予測乱気流域計算解析部が気象予測モデル部から得た高分解能の数値気象情報に基づいて算出した温位鉛直勾配(Γ)と他の数値気象情報によって、乱気流域を上記の通り分類することにより、高精度の乱気流域の予測に寄与するようになる。
本発明の予測乱気流域解析装置によれば、従来の乱気流域予測システムでは埋もれてしまうような乱気流域を高精度に予測することが出来ると共に、乱気流域の特徴を、データ領域区分を設定し、違うタイプの4つの乱気流域にタイプ分けすることにより、パイロットにその乱気流の特徴及びそれを避けるための情報を視覚的に前もって認識させることが可能となる。これにより、パイロットは乱気流域を安全無事に避けることが可能となり、安全な航空機の運航を実現することが出来る。
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の予測乱気流域解析装置100を示す構成説明図である。
この予測乱気流域解析装置100は、三次元格子点から成るある特定空域を模擬した気象数学モデルを備え、外部から送信されて来る上空および地上の風速や気温などの数値気象データをその気象数学モデルの初期値・境界値として用いてその気象数学モデルによって更なる高分解能の数値気象データを作成・出力する気象予測モデル部10と、出力される高分解能の数値気象情データを基にリチャードソン数(RI)や温位鉛直勾配(Γ)を算出すると共に、予測乱気流域をリチャードソン数(RI)や温位鉛直勾配(Γ)等によって特徴付けてデータ領域区分を設定し、違うタイプの4つの乱気流域にタイプ分けして予測する予測乱気流域計算解析部20と、予測乱気流域計算解析部20が出力する予測乱気流域を有線・無線によって必要とする部へ送信するネットワーク部30と、受信した予測乱気流域に係る情報を表示する予測乱気流域表示部40とを具備して構成される。
つまり、本発明は、現在の計算機の性能を生かし、乱気流域のスケールに近づけた予測計算を実施する。(気象数学モデルの)計算格子点の分解能としては予め水平方向、鉛直方向の格子点間距離をパラメータとして評価し過不足無く、乱気流域を予測できるスケールとして、水平方向2km以下、鉛直方向300m以下の格子間隔で計算を行う。また、画像出力の時間間隔は、例えば1時間ごとを基準とし、必要に応じて更に細かく出力する。なお、計算に当たっては、初期値・境界値が必要であり、たとえば気象庁の数値気象データを用いる。
気象予測モデル部10は、水平方向2km以下かつ鉛直方向300m以下の(8個の格子点から成る)直方体を最小単位としたメッシュの細かい気象予測モデル(気象数学モデル)を基に、気象庁から送信されて来る数値気象データを初期値・境界値として再計算し、新たな高分解能の数値気象データを作成し、予測乱気流域計算解析部20へ出力する。なお、出力される数値気象データとしては、気温・気圧・湿度・東西風速・南北風速・鉛直風速・相対湿度・水蒸気・雲水量・雨水量・降雨量・地表面温度・地中温度・乱流エネルギー・数値雲量・短波放射加熱量・長波放射冷却量・地表面短波放射量・地表面長波放射量・地表面潜熱・地表面顕熱等である。
予測乱気流域計算解析部20は、上記新たな高分解能の数値気象データに基づいて、リチャードソン数(RI)や温位鉛直勾配(Γ)を算出する。なお、リチャードソン数(RI)は分子に温位の高度変化(温位鉛直勾配(Γ))、分母に風速の高度変化(VS)を使用し、値が小さいほど乱気流域が起きやすくなる指標である。具体的には、下記数式によって定義される。
Figure 0005152748
そして、これら温位鉛直勾配(Γ)、リチャードソン数(RI)をx軸・y軸とした乱気流域判定のためのデータ領域区分を設定し、これを参照することで乱気流域を予測する。なお、乱気流域の予測の詳細については図2および図3を参照しながら後述する。
ネットワーク部30は、機上や地上の複数の表示装置に予測乱気流域に関するデータを配信する制御を行う。
予測乱気流域表示部40は、ネットワーク部30から送信されて来る予測乱気流域に関するデータを蓄積すると共にこれらのデータをパイロット、地上の管制官等が認識しやすい形態で表示する。詳細については図4および図5を参照しながら後述する。
図2は、本発明に係る予測乱気流域計算解析部20の乱気流域を4つのタイプに分類する基準を示すデータ領域区分の説明図である。なお、分類の基準(境目)となるリチャードソン数(RI)については、一般に0.6+α(-0.2≦α≦0.2)および0.25+γ(-0.1≦γ≦0.1)と多少の幅を持っている。同様に、また分類の基準(境目)となる温位鉛直勾配(Γ)についても、(0.6+β)K/100m(-0.2≦β≦0.2)と多少の幅を持っている。従って、以下の説明では、これらの代表例としてα=β=γ=0の場合を説明する。
乱気流域を本発明のデータ領域区分に基いて分類すると、晴天乱気流域(CAT)、上空不安定乱気流域、下層不安定乱気流域、強い鉛直流域の4つの区分となる。
晴天乱気流域(CAT)は、温位鉛直勾配(Γ)が大きく安定な場に対して、風速の高度変化(VS)がそれ以上に大きく加わり乱気流域が発生するものである。リチャードソン数(RI)および温位鉛直勾配(Γ)による特徴付けとしては、リチャードソン数(RI)<0.6かつ温位鉛直勾配(Γ)≧0.6K/100mとなる。
上空不安定乱気流域は、上空で温位鉛直勾配(Γ)が小さく不安定な場に対して更に風速の高度変化(VS)が加わり乱気流域が発生するものである。リチャードソン数(RI)および温位鉛直勾配(Γ)による特徴付けとしては、リチャードソン数(RI)<0.6かつ温位鉛直勾配(Γ)<0.6K/100mとなる。
下層不安定乱気流域は、下層で温位鉛直勾配(Γ)が小さく不安定な場に対して、地形性の外乱が加わり乱気流域が発生するものである。リチャードソン数(RI)および温位鉛直勾配(Γ)による特徴付けとしては、リチャードソン数(RI)<0.25かつ温位鉛直勾配(Γ)<0.6K/100mとなる。
強い鉛直流域は、温位鉛直勾配(Γ)や風速の高度変化(VS)とは直接関係なく、水平風が地形にあたり上昇流となるものである。リチャードソン数(RI)による特徴付けとしては、リチャードソン数(RI)≧0.6となる。
図3は、本発明に係る予測乱気流域計算解析部20の乱気流域判定をデータ領域区分に基づいて行う場合の論理を示すフロー図である。
ステップS1では、気象予測モデル部10から出力される新たな高分解能の数値気象データ中の温位(θ),東西風(u),南北風(ν),高度(z),∂z間の温位の平均値等を参照して、リチャードソン数(RI)を算出し、その値が0.6未満か否かをチェックする。0.6以上の場合は、ステップS2へ進む。他方、0.6未満の場合は、ステップS3へ進む。
ステップS2では、鉛直流の風速をチェックする。鉛直流の風速が180cm/s以上ならば、強い鉛直流域(Type4)と判定する。180cm/s未満ならば、乱気流域ではないと判定する。
ステップS3では、温位鉛直勾配(Γ)の値が0.6K/100m未満か否かをチェックする。0.6K/100m未満の場合は、ステップS4へ進む。0.6K/100m以上の場合は、晴天乱気流域(CAT)(Type1)と判定する。
ステップS4では、乱気流の発生が予測される高度が低層で、かつリチャードソン数が0.25以下であれば下層不安定乱気流域(Type3)と判定し、そうでなければ、上空不安定乱気流域(Type2)と判定する。
以上の通りデータ領域区分を使って分類することで、Type1〜3はリチャードソン数(RI)=0.6以下が基準となり、その中で温位鉛直勾配(Γ)が大きい場合(安定域)は晴天乱気流域(CAT) (Type1)が出力される。そして、温位鉛直勾配(Γ)が、小さい場合は更に2つに分類される。高度が高い場合には上空不安定乱気流域(Type2)が出力される。他方、高度が低い場合には山岳波の発生有とのAND条件をとり、下層不安定乱気流域(Type3)が出力される。山岳波の代わりに、山頂の200m程度上空の風速を使っても同じ結果を得ることが出来る。山岳波が強いほど、または山頂の上空200m程度の高さの風が強いほど航空機が遭遇する乱気流域も強くなる。これらをType3の乱気流域発生条件に入れることは、山岳波により部分的に風速の高度変化VSが強まりリチャードソン数(RI)の値が0.25以下になることと同じ内容を示していることになる。揺れ方がもう少し弱い場合にもType3の乱気流域として定義したい場合は、スレッシュホールド値を0.3のように設定しなおせばよい。
データ領域区分を使って分類される乱気流域の最後の項目は強い鉛直流である。山岳波もその一つとして分類され、上空で山岳波による上昇流または下降流に遭遇することもあるが、それ以外に、地形性の上昇流が下層から上層まで風が吹き上がる場合がある。これに伴い下降流も発生する。この中に航空機が入ると乱気流に遭遇することになる。鉛直流が180cm/s以上が予測される場合は強い鉛直流域(Type4)が出力される。
これら4つのTypeのどれか一つでも予測されたときには、乱気流域に遭遇する可能性があるものとして、乱気流域を表示する。いずれの場合も、発生要因に対応するTypeを一緒に表示する。
上記によって得られた予測乱気流域を、利用する人にわかりやすいように表示することが重要である。以下では2種類(Type1とType2)の表示方式を説明する。
図4は平面図上に予測乱気流域を表示したものである。飛行経路に対して、乱気流域の発生が予測される場合にその予測乱気流域エリアを高度に対応した色またはメッシュパターン等で示す。その際、音声によって乱気流域の特徴およびその対処方法をパイロットに知らせることが望ましい。乱気流域の表示はリチャードソン数(RI)の値により色を変えたり濃淡をつける表示に切り換えることも可能とする。図4は時刻を指定することで表示されるもので、乱気流域の遷移は時刻の違う複数枚の画面を開けることで把握できる。図4では3枚の画面を開けた例を示している。複数枚を画面分割で表示することも出来る。
図5は図4の高度方向の断面表示を示す説明図である。
上記予測乱気流域解析装置100によれば、従来の乱気流域予測システムでは埋もれてしまうような乱気流域を高精度に予測することが出来ると共に、乱気流域の特徴をType1からType4にパターン化することにより、パイロットにその乱気流の特徴及びそれを避けるための情報を視覚的に前もって認識させることが可能となる。これにより、パイロットは乱気流域を安全無事に避けることが可能となり、安全な航空機の運航に寄与することが出来るようになる。
本発明の予測乱気流域解析装置は、航空機の安全運航支援システムに適用することが可能である。
本発明の予測乱気流域解析装置を示す構成説明図である。 本発明に係る予測乱気流域計算解析部の乱気流域の分類基準を示す説明図である。 本発明に係る予測乱気流域計算解析部の乱気流域判定の論理を示すフロー図である。 本発明に係る予測乱気流域の表示例を示す説明図である。 図4の高度方向の断面表示を示す説明図である。
10 気象予測モデル部
20 予測乱気流域計算解析部
30 ネットワーク部
40 予測乱気流域表示部(機上)
50 予測乱気流域表示部(地上)
100 予測乱気流域解析装置

Claims (6)

  1. 航空機前方の乱気流域を予測・表示する装置であって、三次元格子点から成るある特定空域についての気象数学モデルを備えると共に、外部から送信されて来る上空および地上の風速や気温などの数値気象情報を該気象数学モデルの初期値・境界値として用いて更なる高分解能の数値気象情報を作成する気象予測モデル部と、該高分解能の数値気象情報に基づいて前記特定空域についてのリチャードソン数(RI)および温位鉛直勾配(Γ)を算出し乱気流域を予測する予測乱気流域計算解析部と、該乱気流域に関する情報を航空機または基地局に伝送するネットワーク部と、該乱気流域を航空機の航空路に対応して表示する予測乱気流域表示部とから成り、
    前記気象予測モデル部は、気象数学モデルとして、温位鉛直勾配(Γ)をx軸、リチャードソン数(RI)をy軸としてデータ領域区分が設定され、該データ領域区分に基いて違うタイプの4つの乱気流域にタイプ分けしたものを備え、
    前記予測乱気流域計算解析部は、前記データ領域区分に基づいて乱気流域を特定するとともに、リチャードソン数(RI)が大きい場合には鉛直流も加味して乱気流域を特定することを特徴とする予測乱気流域解析装置
  2. 前記気象予測モデル部は、気象数学モデルとして、水平方向の格子点間隔が2km以下であり且つ鉛直方向の格子点間隔が300m以下である8個の格子点から成る直方体を最小単位とする計算結果を前記データ領域区分に対応させたものを備え、
    前記予測乱気流域計算解析部は、前記データ領域区分を前記リチャードソン数(RI)が0.6+α(-0.2≦α≦0.2)を境に、該数値未満の場合を第1予測乱気流域、該数値以上であり且つ鉛直流が180cm/s以上である場合を第2予測乱気流域とパターン化することを特徴とする請求項1に記載の予測乱気流域解析装置。
  3. 前記予測乱気流域計算解析部は、前記第1予測乱気流域の中で、前記温位鉛直勾配(Γ)の値が(0.6+β)K/100m(-0.2≦β≦0.2)以上である場合、前記予測乱気流域表示部に晴天乱気流域(CAT)と表示させること特徴とする請求項2に記載の予測乱気流域解析装置。
  4. 前記予測乱気流域計算解析部は、前記第1予測乱気流域の中で、前記温位鉛直勾配(Γ)が(0.6+β)K/100m(-0.2≦β≦0.2)未満であり、前記リチャードソン数(RI)がRI≦0.6の場合、前記予測乱気流域表示部に上空不安定乱気流域と表示させることを特徴とする請求項2又は3に記載の予測乱気流域解析装置。
  5. 前記予測乱気流域計算解析部は、前記第1予測乱気流域の中で、前記温位鉛直勾配(Γ)が(0.6+β)K/100m(-0.2≦β≦0.2)未満であり、且つ山脈または孤立峰の風下でのリチャードソン数(RI)が0.25+γ(-0.1≦γ≦0.1)以下になる場合、前記予測乱気流域表示部に下層不安定乱気流域と表示させることを特徴とする請求項2から4の何れかに記載の予測乱気流域解析装置。
  6. 前記予測乱気流域計算解析部は、前記第2予測乱気流域の中で、鉛直流が180cm/s以上になる場合、前記予測乱気流域表示部に強い鉛直流域と表示させることを特徴とする請求項2に記載の予測乱気流域解析装置。
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