JP5145560B2 - Dnaまたはrnaからなるプローブ、及び当該プローブを用いたスクリーニング方法 - Google Patents
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Description
一般に、植物の時計遺伝子として必要とされる条件は以下の5点である:(1)一遺伝子の機能喪失によって全ての概日リズムが失われる、(2)一遺伝子の機能喪失によって光周性が喪失する、(3)遺伝子発現が連続明条件下および連続暗条件下で概日リズムを示す、(4)遺伝子の過剰発現は全ての概日リズムを破壊する、(5)自身の遺伝子発現をフィードバック制御する。しかし、これらの条件を全て満たす植物の遺伝子は発見されていない。
シロイヌナズナにおいては、CCA1遺伝子(Wang and Tobin,Cell 93:1207−1217(1998))、LHY遺伝子(Schaffer et al.,Cell 93:1219−1229(1998))、TOC1/APRR1遺伝子(Makino et al.,Plant Cell Physiol.43:58−69(2000);Strayer et al.,Science 289:768−771(2000))、ELF4遺伝子(Doyle et al.,Nature 419:74−77(2002))、が時計遺伝子であるとする説が存在している(Young and Kay,Nat.Rev.Genet.2:702−715(2001);Yanovsky and Kay,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.4:265−275(2003))。また、シロイヌナズナにおいては概日リズムのパラメーター(リズムの周期や位相、および振幅)に影響する遺伝子が発見されているが、これらは光受容体および光シグナル伝達系の遺伝子である(Hayama and Coupland,Curr.Opin.Plant Biol.6:13−19(2003);Yanovsky and Kay,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.4:265−275(2003))。
そこで、本発明は、生理現象、生理活性を制御することが可能な生物時計を構成する遺伝子、及び当該遺伝子がコードするタンパク質を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明者らは、まず、シロイヌナズナにおいて網羅的かつ大規模な時計変異体のスクリーニングを行い、無周期変異体pcl1−1変異体とpcl1−2変異体を得た後、これらの変異体の原因遺伝子として本発明の核酸、及び当該核酸がコードするタンパク質を見出した。
すなわち、本発明の生物時計の制御に関与する核酸は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号1に示す、塩基配列番号1−2846で示される塩基配列からなる核酸、
(b)前記塩基配列番号1−2846の塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記塩基配列と80%の相同性を有する核酸、からなることを特徴とする。
また、本発明の生物時計の制御に関与する核酸は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号2に示す、塩基配列番号1−4554で示される塩基配列からなる核酸、
(b)前記塩基配列番号1−4554の塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記塩基配列と80%の相同性を有する核酸、からなることを特徴とする。
また、本発明の生物時計の制御に関与する核酸は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号3に示す、塩基配列番号1−4700で示される塩基配列からなる核酸、
(b)前記塩基配列番号1−4700の塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記塩基配列と80%の相同性を有する核酸、からなることを特徴とする。
また、本発明の生物時計の制御に関与する核酸は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号4に示す、塩基配列番号1−1505で示される塩基配列からなる核酸、
(b)前記塩基配列番号1−1505の塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記塩基配列と80%の相同性を有する核酸、からなることを特徴とする。
また、本発明の生物時計の制御に関与する核酸は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号5に示す、塩基配列番号1−400で示される塩基配列からなる核酸、
(b)前記塩基配列番号1−400の塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記塩基配列と80%の相同性を有する核酸からなる。
また、本発明の生物時計の制御に関与する核酸は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号6に示す、塩基配列番号1−641で示される塩基配列からなる核酸、
(b)前記塩基配列番号1−641の塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記塩基配列と80%の相同性を有する核酸、からなることを特徴とする。
また、本発明の生物時計の制御に関与する核酸は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号7に示す、塩基配列番号1−1400で示される塩基配列からなる核酸、
(b)前記塩基配列番号1−1400の塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記塩基配列と80%の相同性を有する核酸、からなることを特徴とする。
また、本発明のプローブは、請求項1〜7項のいずれか1項に記載の核酸からなることを特徴とする。
また、本発明のプローブの好ましい実施態様において、生物における生物時計の制御に関与する遺伝子を探索用に使用することを特徴とする。
本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号8に示す、アミノ酸配列番号1−323で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号8に示す、アミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなることを特徴とする。
また、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号9に示す、アミノ酸配列番号1−298で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号9に示す、アミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなることを特徴とする。
また、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号10に示す、アミノ酸配列番号1−238で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号10に示す、アミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなることを特徴とする。
また、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号11に示す、アミノ酸配列番号1−312で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号11に示す、アミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなることを特徴とする。
また、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号12に示す、アミノ酸配列番号1−70で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号12に示す、アミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなることを特徴とする。
また、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号13に示す、アミノ酸配列番号1−185で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号13に示す、アミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなることを特徴とする。
また、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号14に示す、アミノ酸配列番号1−314で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号14に示す、アミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなることを特徴とする。
また、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号15に示す、アミノ酸配列番号1−121で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号15に示す、アミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなることを特徴とする。
また、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号16に示す、アミノ酸配列番号1−200で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号16に示す、アミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなることを特徴とする。
また、本発明のプローブは、請求項10〜18項のいずれか1項に記載のペプチド断片からなることを特徴とする。
また、本発明の生物時計の制御に関与する遺伝子のスクリーニング方法は、請求項8、9、又は19項のいずれか1項に記載のプローブを用いたことを特徴とする。
また、本発明の生物時計の制御に関与する遺伝子のスクリーニング方法の好ましい実施態様において、スクリーニングを、in situハイブリダイゼーション法、サザンハイブリダイゼーション法、全塩基配列決定からなる群から選択される少なくとも1種を用いて行なうことを特徴とする。
また、本発明のペプチド断片の好ましい実施態様において、前記ペプチド断片が、細胞の核における特定の遺伝子の転写、概日リズムの発振と安定化を制御することを特徴とする。
また、本発明のペプチド断片の好ましい実施態様において、前記ペプチド断片が、GARPファミリーに属するDNA結合モチーフを有することを特徴とする。
また、本発明の生物時計制御用組成物は、請求項10〜18項のいずれか1項に記載のペプチド断片を含有することを特徴とする。
また、本発明のベクターは、請求項1〜7項のいずれか1項に記載のDNA又はRNAを含有していることを特徴とする。
また、本発明の形質転換体は、請求項1〜7項のいずれか1項に記載のDNA又はRNAを発現可能に保持することを特徴とする。
また、本発明のペプチドの生産方法は、本発明の形質転換体を培養する工程を含む、ことを特徴とする。
また、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号8に示す、アミノ酸配列番号1−210で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号8に示す、アミノ酸配列番号1−210で示されるアミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなる。
また、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号8に示す、アミノ酸配列番号1−143で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号8に示す、アミノ酸配列番号1−143で示されるアミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなる。
また、本発明のプローブは、請求項28又は29項に記載のペプチド断片からなる。
また本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片のスクリーニング方法は、請求項30記載のプローブを用いることを特徴とする。
本発明によれば、PCL1遺伝子の相同遺伝子OsPCL1をイネゲノムからも単離できたので、イネにおいてもシロイヌナズナと同様な操作が可能となるという有利な効果を奏する。さらに、PCL1遺伝子の相同遺伝子のcDNAをジャガイモ、トマト、タバコ、モロコシ、マツにおいても見出した。これらの本発明の核酸、及びペプチド断片によれば、それぞれの植物において時計遺伝子として機能していると容易に推定され、本発明のPCL1遺伝子またはPCL1相同遺伝子およびPCL1類似遺伝子を人為的に操作することで、光周的花成を含めた高等植物の様々な生理現象・生理活性を制御するために基本的な研究材料を提供し得るという有利な効果を奏する。
また、本発明によれば、時計遺伝子のコードする時計タンパク質のアミノ酸配列が明らかとなったので、時計タンパク質の活性を制御する農薬を開発することで、任意の時期に効率的に植物の生理活性を制御する道も開かれるという有利な効果を奏する。これによって、農産物の生産性向上や品種改良などを効率的に進めることが可能となる。
図2は、明暗サイクル条件下または温度サイクル条件下におけるpcl1変異体のGI::LUC+生物発光パターンを示す。野生型株G−38(青)とpcl1−1変異体(赤)のGI::LUC+生物発光を12時間暗期/12時間暗期の明暗サイクル(a;12L12D)または12時間22℃/12時間17℃の温度サイクル(b;22℃17℃)を与えながら測定した。図中の白抜きのバーと黒塗りのバーは、それぞれ暗期と明期を表している。図中の黄色いバーと水色のバーは、それぞれ22℃の期間と17℃の期間を表している。図中のプロットは各96個体の平均値±標準偏差である。
図3は、pcl1変異体の葉の就眠運動を示す。野生型株G−38(青)とpcl1−1変異体(赤)の葉の就眠運動を連続明条件下で測定した。図中の白抜きのバーは暗期を表している。測定開始時の子葉のY軸方向の位置を0としてプロットした。
図4は、pcl1変異体におけるGI、CAB2、TOC1、ELF4、CCA1、LHYの遺伝子発現のノザンブロット解析を示す。連続明条件下における野生型株G−38(青)とpcl1−1変異体(赤)の細胞内のGI mRNA(a)、CAB2 mRNA(b)、TOC1 mRNA(c)、ELF4 mRNA(d)、CCA1 mRNA(e)、LHY mRNA(f)レベルのノザンブロット解析を行った。
図5は、pcl1変異体の光周的花成を示す。野生型Col−0株及びG−38株、pcl1変異体pcl1−1及びpcl1−2を16時間明期/8時間暗期(16L8D;薄緑)の長日条件下または10時間明期/14時間暗期(10L14D;濃緑)の短日条件下で培養して、花成時期を決定した。
図6は、PCL1遺伝子のマップベースクローニングとPCL1遺伝子の構造を示す。
図7は、PCL1タンパク質の構造を示す。PCL1タンパク質の構造とPCL1タンパク質、ARR1タンパク質、ARR10タンパク質のGARPモチーフのアミノ酸残基のアライメントを示した。PCL1タンパク質に対して一致するアミノ酸残基を赤線で囲んだ。
図8は、PCL1タンパク質の細胞内局在の様子を示す。(a,c,e)蛍光顕微鏡で観察したGFPの蛍光。(b,d,e)は光学顕微鏡で観察した細胞の像。(a,b)GFPのみを発現させた場合。(c,d)PCL1−GFP1融合タンパク質を発現させた場合。(e,f)GFP−PCL1融合タンパク質を発現させた場合。
図9は、PCL1タンパク質とPCL1類似タンパク質および相同タンパク質との比較を示す。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のPCL1タンパク質、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のPCL1類似タンパク質PCLL、イネ(Oryza sativa)のPCL1相同タンパク質OsPCL1、タバコ(Nicotiana benthamina)のPCL1相同タンパク質NbPCL1、トマト(Lycopersicon esculentum)のPCL1相同タンパク質LePCL1、ジャガイモ(Solanum tuberosum)のPCL1相同タンパク質StPCL1、マツ(Pinus taeda)のPCL1相同タンパク質PtPCL1の各アミノ酸配列のマルチプルアライメントを示した。一致するアミノ酸残基にはアスタリスク(*)を、類似するアミノ酸残基にはドット(.)を付した。ギャップはバー(−)で示した。GARPモチーフはアミノ酸残基の上に赤線を付した。PCL1アミノ酸配列中で赤文字で示したアミノ酸残基は、pcl1−1変異とpcl1−2変異で停止コドンに変わっているアミノ酸残基である。
図10は、PCL1遺伝子発現のノザンブロット解析を示す。連続明条件下における野生型株G−38(青)とpcl1−1変異体(赤)の細胞内のPCL1 mRNAのレベルをノザンブロット解析した。
図11は、PCL1::LUC+生物発光リズムを示す。野生型株G−38(青)とpcl1−1変異体(赤)のPCL1::LUC+生物発光を連続明条件下(a)または連続暗条件下(b)で測定した。図中の白抜きのバーと黒塗りのバーは、それぞれ暗期と明期を表している。図中のプロットは各48個体の平均値±標準偏差である。
図12は、PCL1−ox植物体のGI::LUC+生物発光パターンおよび葉の就眠運動を示す。(a,b)野生型株G−38(青)とPCL1−ox植物体(緑)のGI::LUC+生物発光を連続明条件下(a)または連続暗条件下(b)で測定した。図中の白抜きのバーと黒塗りのバーは、それぞれ暗期と明期を表している。図中のプロットは、それぞれ96個体(a)または48個体(b)の平均値±標準偏差である。(c)野生型株G−38(青)とPCL1−ox植物体(緑)の葉の就眠運動を連続明条件下で測定した。測定開始時の子葉のY軸方向の位置を0としてプロットした。図中の白抜きのバーは暗期を表している。図中のプロットは各12個体の平均値±標準偏差である。
図13は、PCL1−ox植物体における内在PCL1遺伝子発現のノザンブロット解析を示す。連続明条件下における野生型株G−38(青)、pcl1−1変異体(赤)、PCL1−ox植物体(緑)の細胞内の内在PCL1遺伝子由来のPCL1mRNAのレベルをノザンブロット解析した。
図14は、植物の生物時計のモデル図を示す。本発明で発見した遺伝子制御様式を赤線で、既知の遺伝子制御様式を青線で示した。矢印は遺伝子発現の促進を、横線は遺伝子発現の抑制を表している。PCL1遺伝子発現の負の自己フィードバックループは時計発振に必須であり、これが植物時計の中心振動体である。
図15−1は、PCL1遺伝子とPCL1タンパク質(Arabidopsis thaliana)の配列を示す図である。
図15−2は、PCL1遺伝子とPCL1タンパク質(Arabidopsis thaliana)の配列を示す図である。
図15−3は、PCL1遺伝子とPCL1タンパク質(Arabidopsis thaliana)の配列を示す図である。
図15−4は、PCL1遺伝子とPCL1タンパク質(Arabidopsis thaliana)の配列を示す図である。
図16−1は、PCLL遺伝子とPCLLタンパク質(Arabidopsis thaliana)の配列を示す図である。
図16−2は、PCLL遺伝子とPCLLタンパク質(Arabidopsis thaliana)の配列を示す図である。
図16−3は、PCLL遺伝子とPCLLタンパク質(Arabidopsis thaliana)の配列を示す図である。
図16−4は、PCLL遺伝子とPCLLタンパク質(Arabidopsis thaliana)の配列を示す図である。
図17−1は、OsPCL1遺伝子とOsPCL1タンパク質(Oryza sativa)の配列を示す図である。
図17−2は、OsPCL1遺伝子とOsPCL1タンパク質(Oryza sativa)の配列を示す図である。
図17−3は、OsPCL1遺伝子とOsPCL1タンパク質(Oryza sativa)の配列を示す図である。
図17−4は、OsPCL1遺伝子とOsPCL1タンパク質(Oryza sativa)の配列を示す図である。
図18−1は、NbPCL1遺伝子とNbPCL1タンパク質(Nicotiana benthamina)の配列を示す図である。
図18−2は、NbPCL1遺伝子とNbPCL1タンパク質(Nicotiana benthamina)の配列を示す図である。
図18−3は、NbPCL1遺伝子とNbPCL1タンパク質(Nicotiana benthamina)の配列を示す図である。
図19は、NtPCL1遺伝子とNtPCL1タンパク質(Nicotiana tabacum)の配列を示す図である。
図20−1は、LePCL1遺伝子とLePCL1タンパク質(Lycopersicon esculentum)の配列を示すである。
図20−2は、LePCL1遺伝子とLePCL1タンパク質(Lycopersicon esculentum)の配列を示すである。
図21−1は、StPCL1遺伝子とStPCL1タンパク質(Solanum tuberosum)の配列を示す図である。
図21−2は、StPCL1遺伝子とStPCL1タンパク質(Solanum tuberosum)の配列を示す図である。
図21−3は、StPCL1遺伝子とStPCL1タンパク質(Solanum tuberosum)の配列を示す図である。
図22は、PCLL::LUC+生物発光リズムを示す。野生型のPCLL::LUC+発光レポーター株の生物発光を連続明(a)または連続暗(b)で測定した。図中の白抜きのバーと黒塗りのバーは、それぞれ暗期と明期を表している。図中のプロットは各96個体の平均値±標準偏差である。
図23は、PCLL−ox植物体のGI::LUC+生物発光パターンを示す。PCL1−ox植物体のGI::LUC+生物発光を連続明で測定した。図中の白抜きのバーは明期を表している。図中のプロットは、それぞれ96個体の平均値±標準偏差である。
(a)配列表の配列番号1に示す、塩基配列番号1−2846で示される塩基配列からなる核酸、
(b)前記塩基配列番号1−2846の塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記塩基配列と80%、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有する核酸、からなる。当該核酸は、シロイヌナズナ由来のものである。本発明の核酸には、一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記塩基配列と80%、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有する核酸をも包含する。これは、一部が欠失、置換若しくは付加されているものであっても、後述するように、例えば、生物時計の制御に関与する遺伝子探索用のプローブとして利用することができるからである。なお、本明細書において、「遺伝子の一部が欠失、置換若しくは付加された遺伝子」とは、塩基配列において10個以下、好ましくは7個以下、更に好ましくは3個以下の塩基が欠失、置換若しくは付加された配列を有する遺伝子を意味する。また、当該遺伝子は、ストリンジェントな条件下で、配列表の配列番号1に示す遺伝子とハイブリッドを形成する。こうした遺伝子も生物時計の制御に関与する因子である限り、本発明の遺伝子に含まれる。
また、本発明の生物時計の制御に関与する核酸は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号2に示す、塩基配列番号1−4554で示される塩基配列からなる核酸、
(b)前記塩基配列番号1−4554の塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記塩基配列と80%、好ましくは90%、より好ましくは、95%の相同性を有する核酸、からなる。当該核酸は、シロイヌナズナ由来のものである。本発明の核酸には、一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記塩基配列と80%、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有する核酸をも包含する。これは、一部が欠失、置換若しくは付加されているものであっても、例えば、生物時計の制御に関与する遺伝子探索用のプローブとして利用することができるからである。また、当該遺伝子は、ストリンジェントな条件下で、配列表の配列番号2に示す遺伝子とハイブリッドを形成する。こうした遺伝子も生物時計の制御に関与する因子である限り、本発明の遺伝子に含まれる。
また、本発明の生物時計の制御に関与する核酸は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号3に示す、塩基配列番号1−4700で示される塩基配列からなる核酸、
(b)前記塩基配列番号1−4700の塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記塩基配列と80%、好ましくは90%、より好ましくは95%の相同性を有する核酸、からなる。本発明の遺伝子は、イネのゲノム由来の遺伝子である。遺伝子の一部が欠失、置換若しくは付加された遺伝子とは、配列番号3に示す塩基配列において10個以下、好ましくは7個以下、更に好ましくは3個以下の塩基が欠失、置換若しくは付加された配列を有する遺伝子を意図する。当該遺伝子は、ストリンジェントな条件下で、配列表の配列番号3に示す遺伝子とハイブリッドを形成する。
また、本発明の生物時計の制御に関与する核酸は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号4に示す、塩基配列番号1−1505で示される塩基配列からなる核酸、
(b)前記塩基配列番号1−1505の塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記塩基配列と80%の相同性を有する核酸、からなる。当該核酸は、タバコ由来のものである。本発明の核酸には、一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記塩基配列と80%、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有する核酸をも包含する。これは、一部が欠失、置換若しくは付加されているものであっても、例えば、生物時計の制御に関与する遺伝子探索用のプローブとして利用することができるからである。また、当該遺伝子は、ストリンジェントな条件下で、配列表の配列番号4に示す遺伝子とハイブリッドを形成する。こうした遺伝子も生物時計の制御に関与する因子である限り、本発明の遺伝子に含まれる。
また、本発明の生物時計の制御に関与する核酸は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号5に示す、塩基配列番号1−400で示される塩基配列からなる核酸、
(b)前記塩基配列番号1−400の塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記塩基配列と80%の相同性を有する核酸からなる。当該核酸は、別の系統のタバコ由来のものである。本発明の核酸には、一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記塩基配列と80%、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有する核酸をも包含する。これは、一部が欠失、置換若しくは付加されているものであっても、例えば、生物時計の制御に関与する遺伝子探索用のプローブとして利用することができるからである。また、当該遺伝子は、ストリンジェントな条件下で、配列表の配列番号5に示す遺伝子とハイブリッドを形成する。こうした遺伝子も生物時計の制御に関与する因子である限り、本発明の遺伝子に含まれる。
また、本発明の生物時計の制御に関与する核酸は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号6に示す、塩基配列番号1−641で示される塩基配列からなる核酸、
(b)前記塩基配列番号1−641の塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記塩基配列と80%の相同性を有する核酸、からなることを特徴とする。当該核酸は、トマト由来のものである。本発明の核酸には、一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記塩基配列と80%、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有する核酸をも包含する。これは、一部が欠失、置換若しくは付加されているものであっても、例えば、生物時計の制御に関与する遺伝子探索用のプローブとして利用することができるからである。また、当該遺伝子は、ストリンジェントな条件下で、配列表の配列番号6に示す遺伝子とハイブリッドを形成する。こうした遺伝子も生物時計の制御に関与する因子である限り、本発明の遺伝子に含まれる。
また、本発明の生物時計の制御に関与する核酸は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号7に示す、塩基配列番号1−1400で示される塩基配列からなる核酸、
(b)前記塩基配列番号1−1400の塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記塩基配列と80%の相同性を有する核酸、からなることを特徴とする。。当該核酸は、ジャガイモ由来のものである。本発明の核酸には、一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記塩基配列と80%、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有する核酸をも包含する。これは、一部が欠失、置換若しくは付加されているものであっても、例えば、生物時計の制御に関与する遺伝子探索用のプローブとして利用することができるからである。また、当該遺伝子は、ストリンジェントな条件下で、配列表の配列番号7に示す遺伝子とハイブリッドを形成する。こうした遺伝子も生物時計の制御に関与する因子である限り、本発明の遺伝子に含まれる。
次に、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片について説明する。本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号8に示す、アミノ酸配列番号1−323で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号8に示す、アミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなる。当該ペプチド断片は、シロイヌナズナ由来のものである。本発明のペプチド断片には、一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記アミノ酸配列と80%、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有するペプチド断片をも包含する。これは、一部が欠失、置換若しくは付加されているものであっても、例えば、生物時計の制御に関与するペプチド断片探索用のプローブとして利用することができるからである。なお、本明細書において、「アミノ酸の一部が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸」とは、アミノ酸配列において10個以下、好ましくは7個以下、更に好ましくは3個以下のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された配列を有するアミノ酸配列を意味する。かかるアミノ酸配列であっても、抗原抗体反応を利用した免疫試験に用いることができる。
また、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号9に示す、アミノ酸配列番号1−298で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号9に示す、アミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなる。当該ペプチド断片は、シロイヌナズナ由来のものである。本発明のペプチド断片には、一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記アミノ酸配列と80%、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有するペプチド断片をも包含する。これは、一部が欠失、置換若しくは付加されているものであっても、例えば、生物時計の制御に関与するペプチド探索用のプローブとして利用することができるからである。またかかるアミノ酸配列であっても、抗原抗体反応を利用した免疫試験に用いることができる。
また、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号10に示す、アミノ酸配列番号1−238で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号10に示す、アミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなる。当該ペプチド断片は、イネ由来のものである。本発明のペプチド断片には、一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記アミノ酸配列と80%、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有するペプチド断片をも包含する。これは、一部が欠失、置換若しくは付加されているものであっても、例えば、生物時計の制御に関与するペプチド断片探索用のプローブとして利用することができるからである。かかるアミノ酸配列であっても、抗原抗体反応を利用した免疫試験に用いることができる。
また、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号11に示す、アミノ酸配列番号1−312で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号11に示す、アミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなる。本発明のペプチド断片は、タバコ由来のものである。本発明のペプチド断片には、一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記アミノ酸配列と80%、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有するアミノ酸をも包含する。これは、一部が欠失、置換若しくは付加されているものであっても、例えば、生物時計の制御に関与するペプチド断片探索用のプローブとして利用することができるからである。かかるアミノ酸配列であっても、抗原抗体反応を利用した免疫試験に用いることができる。
また、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号12に示す、アミノ酸配列番号1−70で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号12に示す、アミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなる。本ペプチド断片は、別の系統にかかるタバコ由来のものである。本発明のペプチド断片には、一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記アミノ酸配列と80%、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有するアミノ酸をも包含する。これは、一部が欠失、置換若しくは付加されているものであっても、例えば、生物時計の制御に関与するペプチド断片探索用のプローブとして利用することができるからである。かかるアミノ酸配列であっても、抗原抗体反応を利用した免疫試験に用いることができる。
また、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号13に示す、アミノ酸配列番号1−185で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号13に示す、アミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなる。本ペプチド断片は、トマト由来のものである。本発明のペプチド断片には、一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記アミノ酸配列と80%、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有するアミノ酸をも包含する。これは、一部が欠失、置換若しくは付加されているものであっても、例えば、生物時計の制御に関与するペプチド断片探索用のプローブとして利用することができるからである。かかるアミノ酸配列であっても、抗原抗体反応を利用した免疫試験に用いることができる。
また、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号14に示す、アミノ酸配列番号1−314で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号14に示す、アミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなる。本ペプチド断片は、ジャガイモ由来のものである。本発明のペプチド断片には、一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記アミノ酸配列と80%、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有するアミノ酸をも包含する。これは、一部が欠失、置換若しくは付加されているものであっても、例えば、生物時計の制御に関与するペプチド断片探索用のプローブとして利用することができるからである。かかるアミノ酸配列であっても、抗原抗体反応を利用した免疫試験に用いることができる。
また、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号15に示す、アミノ酸配列番号1−121で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号15に示す、アミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなる。本ペプチド断片は、マツ由来のものである。本発明のペプチド断片には、一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記アミノ酸配列と80%、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有するアミノ酸をも包含する。これは、一部が欠失、置換若しくは付加されているものであっても、例えば、生物時計の制御に関与するペプチド断片探索用のプローブとして利用することができるからである。かかるアミノ酸配列であっても、抗原抗体反応を利用した免疫試験に用いることができる。
また、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号16に示す、アミノ酸配列番号1−200で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号16に示す、アミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなる。本ペプチド断片は、モロコシ由来のものである。本発明のペプチド断片には、一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記アミノ酸配列と80%、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有するアミノ酸をも包含する。これは、一部が欠失、置換若しくは付加されているものであっても、例えば、生物時計の制御に関与するペプチド断片探索用のプローブとして利用することができるからである。かかるアミノ酸配列であっても、抗原抗体反応を利用した免疫試験に用いることができる。
また、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号8に示す、アミノ酸配列番号1−210で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号8に示す、アミノ酸配列番号1−210で示されるアミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなる。本ペプチド断片は、シロイヌナズナ由来のものである。本発明のペプチド断片には、一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記アミノ酸配列と80%、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有するアミノ酸をも包含する。これは、一部が欠失、置換若しくは付加されているものであっても、例えば、生物時計の制御に関与するペプチド断片探索用のプローブとして利用することができるからである。かかるアミノ酸配列であっても、抗原抗体反応を利用した免疫試験に用いることができる。
また、本発明の生物時計の制御に関与するペプチド断片は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、
(a)配列表の配列番号8に示す、アミノ酸配列番号1−143で示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片、
(b)当該配列番号8に示す、アミノ酸配列番号1−143で示されるアミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記アミノ酸配列と80%の相同性を有するペプチド断片、からなる。本ペプチド断片は、シロイヌナズナ由来のものである。本発明のペプチド断片には、一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記アミノ酸配列と80%、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有するアミノ酸をも包含する。これは、一部が欠失、置換若しくは付加されているものであっても、例えば、生物時計の制御に関与するペプチド断片探索用のプローブとして利用することができるからである。かかるアミノ酸配列であっても、抗原抗体反応を利用した免疫試験に用いることができる。これらの配列は、本発明のペプチド断片を比較して理解することができるように、ホモロジーが非常に高く、この領域が生物時計としての機能に極めて重要な領域であることを導き出すことが出来る。したがって、これらの重要領域を、例えばプローブとして使用して、さらなる生物時計の解明にも役立たせることができる。
ここで、本発明の核酸、及びペプチド断片の精製、単離方法について説明する。上記核酸、及びペプチド断片は、特に限定されるものではないが、以下の手順によって、精製、単離することができる。
一度の測定で多検体の高等植物の生物発光リズムを全自動で測定して測定データの解析を行うために、生物発光測定装置2種類(Okamoto et al.,Anal.Biochem.340:187−192(2005);Okamoto et al.,Plant Cell Environ.28:1305−1315(2005);特開2004−267058;特開2005−143371)とリズム解析プログラム(Okamoto et al.,Anal.Biochem.340:193−200(2005);特許第3787631号)から構成される生物発光リアルタイムモニタリング・スクリーニングシステムを用いることができる。
これらを用いて、例えば、シロイヌナズナの時計関連遺伝子であり遺伝子発現が概日リズムを示すことが知られているシロイヌナズナのGI遺伝子(Fowler et al.,EMBO J.18:4679−4688(1999);Park et al.,Science 285:1579−1582(1999))のプロモーター領域と改良型ホタルルシフェラーゼ遺伝子(LUC+;Promega社)(LUC+(登録商標)、Promega(登録商標))のコード領域を接続した生物発光レポーター遺伝子カセット(GI::LUC+)を作製し、これを野生型シロイヌナズナのゲノムへ遺伝子移入し、生物発光レポーター株(G−38株)を作出した。作出した発光レポーター株G−38の種子をethyl methanesulfonate(EMS)で変異原処理し、変異原処理から2世代目の植物体(M2植物体)5万個体の生物発光リズムを測定してリズム変異体をスクリーニングし、この結果、生物発光リズムが完全に消失した無周期変異体を5個分離した。これらの無周期変異体は、連続明条件下と連続暗条件下のいずれにおいてもGI::LUC+発光レポーター遺伝子の生物発光リズムが無周期であり、さらに、葉の就眠運動リズムも無周期であり、そして、これらの無周期変異はいずれも劣性一遺伝子変異であり、3つの相補性群PHYTOCLOCK 1(PCL1),PCL2,PCL3に分類できた。PCL1,PCL2,PCL3遺伝子は、いずれも植物の時計遺伝子をコードしていると推測された。PCL遺伝子の一つであるPCL1遺伝子は、マップベースクローニング法によって以下の手順で特定した。pcl1−1変異体のF3ホモ個体(エコタイプCol−0)と野生型Ler株とを交配し、第2世代(F2)の種子を得た。F2植物体を培養し、GI::LUC+発光レポーター遺伝子の生物発光を連続明条件下で測定し、pcl1−1変異をホモで持っているホモ個体を選択した。そして、TAIRウェブサイト(http://www.arabidopsis.org/)で公開されているCol−0とLerの間の多型マーカー(CAPSマーカー及びSSLPマーカー)及びMonsanto Arabidopsis Polymorphism CollectionからリリースされたSNP多型マーカーを利用してpcl1−1変異と多型マーカーとの組換え率を算出した。組換え率がより小さくなる多型マーカーは物理的にPCL1遺伝子により近いので、様々なマーカーとの組換え率を調査することでPCL1遺伝子の染色体上の位置を決定した。その結果、PCL1遺伝子の物理的位置を第3染色体上のSNPマーカーF18L15−1(Monsanto Arabidopsis Polymorphism CollectionのSNP番号CER468139からCER468143を含む)とCAPSマーカーTOPP5の間の約150kbに位置づけた。この約150kbの領域における野生型Col−0株及びG−38株と無周期変異体pcl1−1及びpcl1−2の塩基配列を決定して比較したところ、TAIRウェブサイトのデーターベースに整理番号At3g46640として整理されている遺伝子上にpcl1−1とpcl1−2の両者で塩基置換が発見できたので、これをPCL1遺伝子であると結論した。PCL1遺伝子の構造は、RIKEN(RARGE;http://rarge.gsc.riken.go.jp/)及びTAIRウェブサイトで公開されている完全長cDNAの塩基配列とゲノムDNA配列とを比較することで決定した。タンパク質のアミノ酸配列は、ゲノムDNA又はcDNAの塩基配列から容易に推定することができる。
なお、核酸の塩基配列は、常法により、例えば、ダイターミネーター法などを用いて決定することができる。また、本発明のタンパク質のアミノ酸配列から類似タンパク質又はホモログタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列を予測し、その予測に基づいて様々なオリゴヌクレオチド合成して、これらをPCRプライマーとしてPCR法でゲノムDNA又はcDNA等から増幅することができる。さらに、本発明のタンパク質のアミノ酸配列から類似タンパク質又はホモログタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列を予測し、その予測に基づいて様々なオリゴヌクレオチド合成して、これらを各種ハイブリダイゼーション法に利用することで遺伝子を同定することができる。
次に、本発明のプローブについて説明する。
本発明のプローブの使用方法としては、上述の核酸を単離したい生物種のゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、cDNAライブラリー、RNAなどを直接又はPCR法で増幅し高分子膜にブロットして固定した後、本発明のプローブをハイブリダイズさせればよい。または、上述の核酸を単離したい生物種の細胞を固定し、細胞内の染色体へ直接本発明のプローブをハイブリダイズさせればよい。ハイブリダイズの方法は、常法により特に限定されるものではないが、例えば、サザンブロッティング法、in situハイブリダイゼーション法、塩基配列決定法、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、ノザンハイブリダイゼーション法などを挙げることができる。in situハイブリダイゼーション法は、迅速かつ、的確にスクリーニングすることができるという観点から望ましい。in situハイブリダイゼーション法には、蛍光in situハイブリダイゼーション法(以下、FISH法という)、ラジオアイソトープin situハイブリダイゼーション法等がある。RI施設を要求されないという観点から、FISH法が望ましい。FISH法の概略は、例えば、スライドグラス上に染色体標本を調製し、これに標識プローブをハイブリダイズし、直接検鏡するのが一般的である。
また、本発明のプローブのハイブリダイズに使用される支持体としては、薄膜、粉末、粒状物、ゲル、ビーズ、繊維等の他、分散液、エマルジョン等を挙げることができる。これらは適当なカラムに充填して使用してもよい。こららのうち薄膜が好ましく、例えばニトロセルロース膜、ナイロン膜が好ましい。
ここで、本発明のプローブに使用される標識の例を説明する。標識の例として当業者に周知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、32P、35Sなどの放射性原子、ビオチン基、アジピン基、または酵素類、蛍光標識等などのほか、抗原抗体系を利用する場合には、抗原を含んでいても良い。これらも本発明の範囲に包含される。
なお、核酸プローブの場合、プローブの塩基長は、用いるスクリーニング方法により異なり、特に限定されるものではない。
上述のペプチド断片は、また、好ましい実施態様において、前記ペプチド断片が、細胞の核における特定の遺伝子の転写、概日リズムの発振と安定化を制御する。これは、本発明者らの鋭意研究により、本発明の核酸が、生物時計の制御に関与している遺伝子の1つであることが明らかとされたことからである。本発明の遺伝子は、生物時計の中核をなすものであり、同時に他の遺伝子に対して、転写因子としても作用し、生物の概日リズムの発振と安定化を行っている。
また、本発明のペプチド断片の好ましい実施態様において、前記ペプチド断片が、GARPファミリーに属するDNA結合モチーフを有する。当該DNA結合モチーフを介して他の遺伝子へ結合し、転写因子として機能することによって概日リズムを形成していると考えられる。
また、本発明の生物時計制御用組成物は、本発明のペプチド断片またはDNA断片またはRNA断片を含有し、細胞の生物時計機能活性を促進または抑制するものであり、生物時計制御用組成物の様態に制約はない。本発明の生物時計制御用組成物の対象は、生物個体や培養細胞、細胞抽出物、無細胞系の生物時計のin vitro再構築系などである。
また、本発明のベクターは、上記本発明の核酸(DNA又はRNA)を含有する。また、本発明の形質転換体は、上記本発明の核酸(DNA又はRNA)を発現可能に保持する。そして、本発明のペプチドの生産方法は、本発明の形質転換体を培養する工程を含む。
以下、本発明の組換えベクターの作製について説明する。
本発明の組換えベクターは、本発明の生物時計に関与する遺伝子を適当なベクター上に連結することにより得ることができる。ベクターとしては、形質転換する宿主中で本発明の生物時計に関与する遺伝子から発現された生物時計に関与するタンパク質を生産させうるものであればどのようなものでも用いることが出来る。例えば、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス、染色体組み込み型、人工染色体などのベクターを用いることができる。上記ベクターには、形質転換された細胞を選択することを可能にするためのマーカー遺伝子が含まれていてもよい。マーカー遺伝子としては、例えば、URA3、niaDのような、宿主の栄養要求性を相補する遺伝子や、アンピシリンやカナマイシン、オリゴマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ハイグロマイシンB、バスタ(登録商標)などの薬剤に対する耐性遺伝子などが挙げられる。また、組換えベクターは、宿主細胞中で本発明の遺伝子を発現することの出来るプロモーター又はその他の制御配列(例えばエンハンサー配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列等)を含むことが望ましい。プロモーターとしては、具体的には、例えば、CAL1プロモーター、amyBプロモーター、lacプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、CaMV35Sプロモーター等が挙げられる。
また、本発明の形質転換体は、宿主を本発明の組換えベクタで形質転換することにより得られる。宿主としては、本発明の生物時計に関与するタンパク質を生産することが出来るものであれば特に限定されず、例えば、タバコ培養細胞BY−2やシロイヌナズナ培養細胞、タバコ植物体、シロイヌナズナ植物体などの植物系細胞、昆虫の培養細胞、動物細胞、分裂酵母や出芽酵母などの酵母、アスペルギルス・ソーヤやアスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・ニガー、アカパンカビ等の糸状菌類、大腸菌やバチルス、藍色細菌などの細菌であってもよい。形質転換は、宿主に応じて公知の方法で行うことが出来る。植物系細胞の場合は、例えば、アグロバクテリアを介した形質転換法(Horsch et al.,Science 227:1229−1231(1985);Hooykaas and Schilperoort,Plant Mol.Biol.19:15−38(1992);Clough and Bent,Plant J.16:735−743(1998))などを用いることが出来る。酵母の場合は、例えば、酢酸リチウム法(Ausubel et al.,Current protocols in molecular biology.Greene Publishing Assoc and Wiley−Interscience,New York(1987);Methods Mol.Cell.Biol.5:255−269(1995))などを用いることができる。糸状菌の場合は、例えば、プロトプラスト化した後ポリエチレングリコール及び塩化カルシウムを用いる、Mol.Gen.Genet.218:99−104(1989)の方法を用いることが出来る。細菌を用いる場合は例えば、自然形質転換法(Ausubel et al.,Current protocols in molecular biology.Greene Publishing Assoc and Wiley−Interscience,New York(1987);Onai et al.,Mol.Genet.Genomics 271:50−59(2004))や塩化カルシウム法(Ausubel et al.,Current protocols in molecular biology.Greene Publishing Assoc and Wiley−Interscience,New York(1987))、電気穿孔法(Ausubel et al.,Current protocols in molecular biology.Greene Publishing Assoc and Wiley−Interscience,New York(1987);Methods Enzymol.194:182−187(1990))などを用いることができる。
本発明の生物時計に関与するタンパク質の製造方法は、本発明の形質転換体を培養し、得られる培養物から生物時計に関与するタンパク質を採取することからなる。培地及び培養方法は、宿主の種類と組換えベクター中の発現制御配列によって適当なものを選ぶ。例えば、宿主が植物系培養細胞であり、発現制御配列がCaMV35Sプロモーターである場合、例えば、ショ糖を含む培地で細胞を培養することにより、本発明の生物時計に関与するタンパク質を生産させることができる。また、例えば、宿主が植物体であり、発現制御配列がCaMV35Sプロモーターである場合、例えば、植物体を土壌で培養することにより、本発明の生物時計に関与するタンパク質を生産させることができる。また、例えば、宿主が酵母であり、発現制御配列がGAL1プロモーターである場合、例えば、ラフィノースを炭素源とする液体最少培地で前培養した菌体を、ガラクトースとラフィノースを炭素源とする液体最少培地に希釈・接種し、培養することにより、本発明の生物時計に関与するタンパク質を生産させることができる。また、例えば、宿主がアスペルギルス・ソーヤであり、発現制御配列がamyBプロモーターである場合、例えば、マルトースを炭素源とする液体最少培地で培養することにより、本発明の生物時計に関与するタンパク質を生産させることができる。また、例えば、宿主が大腸菌であり、発現制御配列がlacプロモーターである場合、IPTGを含有する液体培地で培養することにより本発明の生物時計に関与するタンパク質を生産させることができる。本発明の生物時計に関与するタンパク質が宿主細胞内または菌体表面に生産された場合は、宿主細胞を培地から分離し、その細胞を適当に処理することにより本発明のタンパク質を得ることができる。例えば、細胞内に生産された場合、細胞を物理的又は酵素的に破砕した後、遠心分離および各種クロマトグラフィー等を使用して本発明の生物時計に関与するタンパク質を分離・精製することができる。培養液中に本発明の本発明の生物時計に関与するタンパク質が生産された場合は、遠心分離・ろ過等により菌体を除去することにより本発明のタンパク質を得ることができる。何れの場合も、硫安分画、各種クロマトグラフィー、アルコール沈殿、限外ろ過等を用いた常法により、本発明の生物時計に関与するタンパク質を更に純度の高いものとして精製することもできる。
本発明の生物時計に関与するタンパク質は、無細胞系のタンパク質合成系を使用してin vitroで合成することも出来る。無細胞系のタンパク合成系の例としては、例えば、コムギ胚芽抽出液由来の無細胞タンパク質合成システムであるPROTEIOS(東洋紡)(PROTEIOS(登録商標))などを挙げることができる。また、本発明の生物時計に関与するタンパク質のアミノ酸配列の一部をin vitroで人工的にペプチド合成することもできる。こうした本発明の生物時計に関与するタンパク質のin vitroタンパク質合成およびペプチド合成も本発明に含まれる。
本発明の生物時計に関与するタンパク質には、精製の際にアフィニティークロマトグラフィーを用いるためのタグ配列を付加して生産してもよい。このようなタグ配列の例としては、例えば、GSTタグやHisタグ、Mycタグなどを挙げることができる。
本発明は、高等植物の生物時計の中枢を構成する時計遺伝子PHYTOCLOCK 1(PCL1)とそれがコードするタンパク質PCL1、及びPCL1遺伝子の応用に関するものである。本発明のPCL1遺伝子が破壊されたシロイヌナズナでは、調査した全ての概日リズムが失われており、光周的花成が野生型の長日性に対して日長不感受性を示した。したがって、本発明のPCL1遺伝子を人為的に操作することで、光周的花成を含めた高等植物の様々な生理現象・生理活性を制御することが可能であると考えられる。
[実施例1]
本発明者らは、モデル高等植物であるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)において、シロイヌナズナのGI遺伝子のプロモーターと改変型ホタルルシフェラーゼ遺伝子(LUC+)のコード領域を接続したGI::LUC+発光レポーター遺伝子の生物発光リズムを指標として、概日リズムに異常を示すリズム変異体を網羅的にスクリーニングし、無周期変異体を5個分離した。これらの無周期変異体は、連続明条件下と連続暗条件下のいずれにおいてもGI::LUC+発光レポーター遺伝子の生物発光リズムが無周期であり、さらに、葉の就眠運動リズムも無周期であった。そして、これらの無周期変異はいずれも劣性一遺伝子変異であり、3つの相補性群PHYTOCLOCK 1(PCL1),PCL2,PCL3に分類できた(Onai et al.,Plant J.,41:1−11(2004))。無周期変異の原因遺伝子の一つであるPCL1遺伝子をマップベースクローニング法でクローニングした。PCL1遺伝子は、先に述べた高等植物の時計遺伝子の条件を全て満たしていたので、植物の真の時計遺伝子であり、また、PCL1遺伝子のコードするタンパク質は、植物の時計タンパク質であると結論した。PCL1遺伝子の相同遺伝子はイネ、タバコ、トマト、ジャガイモ、モロコシ、マツにも存在しており、植物一般に時計遺伝子として機能していることが容易に推定できる。
本発明は、植物細胞の核における特定の遺伝子の転写、概日リズムの発振と安定化を制御している植物の時計遺伝子PCL1とその相同遺伝子および類似遺伝子、より詳細には、GARPファミリーに属するDNA結合モチーフを有することを特徴とする植物の時計タンパク質PCL1とその相同タンパク質および類似タンパク質、それらをコードするDNA及びRNA、さらにはPCL1タンパク質とPCL1相同タンパク質およびPCL1類似タンパク質の組成物、PCL1タンパク質とPCL1相同タンパク質およびPCL1類似タンパク質の発現を可能とするベクター及び形質転換体、PCL1タンパク質とPCL1相同タンパク質およびPCL1類似タンパク質の生産方法に関する。
実施例における植物体、培養条件、概日リズムの測定方法
GI::LUC+発光レポーター遺伝子をもつシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の生物発光レポーター株G−38は、エコタイプがCol−0であり、特に記載がない限りこれを野生型として使用した。シロイヌナズナの無周期変異体pcl1−1とpcl1−2は、生物発光レポーター株G−38から分離された無周期変異体であり、本発明者らの報告(Onai et al.,Plant J.,41:1−11(2004))において、それぞれ23−15D9と32−5E2として分離された変異体である。無周期変異体pcl1−1とpcl1−2は、いずれも野生型G−38と戻し交配後の第4世代(F4)のホモ個体を使用した。シロイヌナズナは、特に言及しない限り、22.0±0.3℃、1.5%(w/v)ショ糖を含むMS(Murashige and Skoog,Physiol.Plant.15:473−497(1962))固体培地上で本発明者らの方法(Onai et al.,Plant J.,41:1−11(2004))に従って無菌的に生育させた。植物体培養時の照射光は、70μmol/m2/sの白色光であった。
<連続明条件下または連続暗条件下におけるpcl1変異体のGI::LUC+生物発光>
一般に、概日リズムは連続明や連続暗などの一定環境下で自律的に継続する。そこで、まず、pcl1変異体のGI::LUC+生物発光が一定環境下で自律振動するのか否かを調べた。連続明および連続暗条件下におけるGI::LUC+生物発光の測定は、本発明者らの方法(Onai et al.,Plant J.,41:1−11(2004))に従って行った。12時間明期/12時間暗期の明暗サイクルまたは12時間暗期/12時間明期のサイクルを与えて生物時計をリセットした後、連続明または連続暗で生物発光を測定した。
野生型株G−38とpcl1変異体のGI::LUC+生物発光パターンを図1に示した。野生型株G−38は連続明と連続暗のいずれの条件下においても明瞭な生物発光リズムを示したが、pcl1変異体はどちらの条件下でも無周期であり、リズムを全く示さなかった。したがって、PCL1遺伝子は、GI::LUC+生物発光リズムに必須であることが判明した。
[実施例2]
<明暗サイクル条件下または温度サイクル条件下におけるpcl1変異体のGI::LUC+生物発光>
一般に、概日リズムは明暗サイクルや温度サイクルに同調する。そこで、野生型株G−38とpcl1変異体のGI::LUC+生物発光が明暗サイクルおよび温度サイクルに同調するか否かを調べた。明暗サイクルおよび温度サイクル条件下におけるGI::LUC+生物発光の測定は、植物体に12時間明期/12時間暗期の明暗サイクル(明暗サイクル中の温度は22℃で一定)または12時間22℃/12時間17℃の温度サイクル(温度サイクル中は連続明)を与えながら行った。
明暗サイクル条件下における野生型株G−38とpcl1変異体のGI::LUC+生物発光パターンを図2aに、温度サイクル条件下における野生型株G−38とpcl1変異体のGI::LUC+生物発光パターンを図2bにそれぞれ示した。明暗サイクル条件下において野生型株G−38は明瞭な生物発光リズムを示したが、pcl1変異体の発光パターンは明期に発光量が一定レベルのまま高く保たれ、暗期に発光量が低下するという矩形を示した。これは、GI遺伝子が光誘導性の遺伝子であり、暗条件よりも明条件で発現量が高いことを反映しているにすぎず、pcl1変異体の生物発光は明暗条件下でリズムを示さないことを意味している。同様に、温度サイクル条件下においても野生型株G−38は明瞭な生物発光リズムを示したが、pcl1変異体は17℃よりも22℃で発光量が僅かに高い矩形の発光パターンを示した。これは、発光タンパク質として使用しているホタルルシフェラーゼの酵素活性が17℃よりも22℃で僅かに高いことを反映しているにすぎず、pcl1変異体の生物発光は温度サイクル条件下でリズムを示さないことを意味している。したがって、PCL1遺伝子はGI::LUC+生物発光リズムの明暗サイクルおよび温度サイクルに対する同調に必須であることが判明した。
[実施例3] <pcl1変異体の葉の就眠運動>
高等植物においては、葉の上下運動(就眠運動)が概日リズムを示すことが広く知られている(Lumsden and Millar,Biological Rhythms and Photoperiodism in Plants.Oxford:Bios Scientific Publisher(1998))。pcl1変異体の生物発光の無周期性が生物時計本体の異常によってもたらされているのであれば、GI::LUC+生物発光とは別の指標である葉の就眠運動リズムも無周期になっていると予想される。そこで、pcl1変異体の葉の就眠運動を測定した。葉の就眠運動の測定は、本発明者らの方法(Onai et al.,Plant J.,41:1−11(2004))に従って行った。
野生型株とpcl1変異体の葉の就眠運動パターンを図3に示した。野生型株は明瞭な就眠運動リズムを示したが、pcl1変異体では就眠運動は観察されず無周期であり、リズムを全く示さなかった。したがって、PCL1遺伝子は葉の就眠運動リズムに必須であることが判明した。
[実施例4]
<pcl1変異体におけるGI、CAB2、TOC1、ELF4、CCA1、LHYの遺伝子発現のノザンブロット解析>
高等植物の生物時計に深く関与すると考えられている遺伝子としてGI、TOC1、ELF4、CCA1、LHYが発見されており、これらの遺伝子のmRNAレベルは概日リズムを示すことが知られている(Young and Kay,Nat.Rev.Genet.2:702−715(2001);Salom▲e▼ and McClung,J.Biol.Rhytms 19:425−435(2004))。また、光合成系の遺伝子であるCAB2遺伝子もmRNAレベルが概日リズムを示すことが知られている(Millar and Kay,Science 267:1161−1163(1995))。pcl1変異体において、これらの遺伝子のmRNAレベルの概日リズムが損なわれているのか否かをノザンブロット解析で調べた。野生型株G−38とpcl1−1変異体の細胞内のGI遺伝子、CAB2遺伝子、TOC1遺伝子、ELF4遺伝子、CCA1遺伝子、LHY遺伝子のmRNAレベルのノザンブロット解析は以下の手順で行った。まず、表面滅菌した野生型株G−38とpcl1−1変異体の種子を1.5%(w/v)ショ糖を含むMS(Murashige and Skoog,Physiol.Plant.15:473−497(1962))固体培地に播種し、連続明、22.0±0.3℃の条件下で11日間培養し、12時間明期/12時間暗期の明暗サイクルを3サイクル与えた後、連続明条件に戻した。植物体培養時の照射光は、50μmol/m2/sの白色光であった。3サイクル目の暗期終了時、すなわち連続明開始時を0時間目として、連続明開始時から3時間間隔で各タイムポイントごとに10個体の植物体をサンプリングして即座に液体窒素で凍結した。そして、QIAGEN社製のRNeasy Midi Kit(Rneasy(登録商標))を使用して、凍結した植物体から全RNAを抽出した。5μgの全RNAをホルムアルデヒドを含んだ1.2%アガロースゲルで電気泳動し、ナイロン膜に転写した。転写した全RNAを32Pラベルした遺伝子特異的なDNAプローブとハイブリダイズさせ、各遺伝子のmRNA蓄積量を放射活性として検出した。TOC1遺伝子、CCA1遺伝子、LHY遺伝子それぞれに特異的な32PラベルDNAプローブは、牧野らの方法(Makino et al.,Plant Cell Physiol.43:58−69(2002))に従って調製した。GI遺伝子特異的な32PラベルDNAプローブは、GenBank/EMBL/DDBJデータベースに登録番号NC_003070で登録されている塩基配列の8,064,660から8,066,052を野生型株Col−0からクローニングして調製した。CAB2遺伝子特異的な32PラベルDNAプローブは、GenBank/EMBL/DDBJデータベースに登録番号NC_003070で登録されている塩基配列の10,474,729から10,475,025を野生型株Col−0からクローニングして調製した。ELF4遺伝子特異的な32PラベルDNAプローブは、GenBank/EMBL/DDBJデータベースに登録番号NC_003070で登録されている塩基配列の16,741,294から16,742,019を野生型株Col−0からクローニングして調製した。
ノザンブロット解析の結果を図4に示した。野生型株G−38においては、いずれの遺伝子のmRNAレベルも明瞭な概日リズムを示した。これに対してpcl1変異体においては、いずれのmRNAレベルもリズムを示さなかった。また、pcl1変異体においては、GI mRNA、CAB2 mRNA、TOC1 mRNA、ELF4 mRNAのレベルが野生型株のmRNAレベルと比較して上昇しており、逆にCCA1 mRNA、LHY mRNAのレベルは極端に低下していた。これらの結果は、PCL1遺伝子は、GI遺伝子、CAB2遺伝子、TOC1遺伝子、ELF4遺伝子のリズミックな概日発現に必須であり、また、PCL1遺伝子がGI遺伝子、CAB2遺伝子、TOC1遺伝子、ELF4遺伝子の発現を抑制し、CCA1遺伝子とLHYの遺伝子の発現を促進することを示している。
[実施例5]<pcl1変異体の光周的花成>
高等植物の光周的花成は生物時計によって支配されていることが広く知られている(Sweeney,Rhythmic Phenomena in Plants 2nd ed.,Academic Press,San Diego(1987);Lumsden and Millar,Biological Rhythms and Photoperiodism in Plants.Oxford:Bios Scientific Publisher(1998))。pcl1変異体が光周性を損なっているのか否かを調べた。光周的花成の測定は、大藤らの方法(Ohto et al.,Plant Physiol.127:252−261(2001))に従って、以下の手順で行った。野生型Col−0株及びG−38株、pcl1変異体pcl1−1及びpcl1−2の種子を吸水させた後、4℃、2日間暗黒下で静置し、土(バーミキュライト)に播種した。そして、22.0±0.5℃、長日条件下(16時間明期/8時間暗期)または短日条件(10時間明期/14時間暗期)で培養した。明期における植物体への照射光は、100μmol/m2/sの白色光であった。花成時期は、植物体が1.5cmの高さまで抽台したときの植物体の全ての葉の数をカウントすることで定量化した。シロイヌナズナは長日植物であり、野生型では、長日条件で培養した場合よりも短日条件で培養した場合の方が、より多くの葉をつける。野生型株Col−0とG−38、pcl1変異体pcl1−1とpcl1−2の花成時期の測定結果を図5に示した。野生型株では長日条件下で葉の枚数が少なく、短日条件下で葉の枚数が多いという長日性を示したが、pcl1変異体では長日と短日のいずれの日長でもほぼ同数の葉の枚数であり、日長不感受性であった。すなわち、pcl1変異体は光周性を損なっていた。したがって、PCL1遺伝子は光周的花成に必須であることが判明した。
[実施例6]<PCL1遺伝子のマップベースクローニングとPCL1遺伝子の構造>
PCL1遺伝子のクローニングはマップベースクローニング法によって以下の手順で行った。pcl1−1変異体のF3ホモ個体(エコタイプCol−0)と野生型Ler株とを交配し、第2世代(F2)の種子を得た。F2植物体を培養し、GI::LUC+発光レポーター遺伝子の生物発光を連続明条件下で測定し、pcl1−1変異をホモで持っているホモ個体を選択した。そして、TAIRウェブサイト(http://www.arabidopsis.org/)で公開されているCol−0とLerの間の多型マーカー(CAPSマーカー及びSSLPマーカー)及びMonsanto Arabidopsis Polymorphism CollectionからリリースされたSNP多型マーカーを利用してpcl1−1変異と多型マーカーとの組換え率を算出した。組換え率がより小さくなる多型マーカーは物理的にPCL1遺伝子により近いので、様々なマーカーとの組換え率を調査することでPCL1遺伝子の染色体上の位置を決定した。図6にPCL1遺伝子のマップベースクローニングの模式図とPCL1遺伝子の構造を示した。PCL1遺伝子の物理的位置を第3染色体上のSNPマーカーF18L15−1(Monsanto Arabidopsis Polymorphism CollectionのSNP番号CER468139からCER468143を含む)とCAPSマーカーTOPP5の間の約150kbに位置づけた。この約150kbの領域における野生型Col−0株及びG−38株と無周期変異体pcl1−1及びpcl1−2の塩基配列を決定して比較したところ、TAIRウェブサイトのデーターベースに整理番号At3g46640として整理されている遺伝子上にpcl1−1とpcl1−2の両者で塩基置換が発見できたので、これをPCL1遺伝子であると結論した。PCL1遺伝子の構造は、RIKEN(RARGE;http://rarge.gsc.riken.go.jp/)及びTAIRウェブサイトで公開されている完全長cDNAの塩基配列とゲノムDNA配列とを比較することで決定した。PCL1遺伝子の塩基配列と推定されるPCL1タンパク質のアミノ酸配列を配列表の配列番号1に記載した。pcl1−1とpcl1−2どちらの変異も、コード領域に停止コドンを生じるナンセンス変異であった。pcl1−1変異は配列表の配列番号1に記載の塩基配列中の605番目の塩基GがAに置換した変異であり、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列中の149番目のアミノ酸残基Trpが停止コドンになってしまうことが分かる。pcl1−2変異は配列表の配列番号1に記載の塩基配列中の474番目の塩基CがTに置換した変異であり、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列中の106番目のアミノ酸残基Glnが停止コドンになってしまうことが判明した。
[実施例7] <PCL1タンパク質の構造>
推定されるPCL1タンパク質の構造を図7に示した。PCL1タンパク質は323アミノ酸残基から成り、既知のタンパク質との相同性をもたない新規のタンパク質であった。しかし、タンパク質の中央部分(配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列の143番目から201番目のアミノ酸残基)に植物の転写因子に広く見られるDNA結合モチーフであるGARPモチーフを発見した。シロイヌナズナのレスポンスレギュレーターであるARR1タンパク質(Sakai et al.,Plant Cell Physiol.39:1232−1239(1998))やARR10タンパク質(Imamura et al.,Plant Cell Physiol.40:733−742(1999))のGARPモチーフはその機能と構造が詳細に調べられている。ARR1タンパク質とARR10タンパク質は、核に局在してGARPモチーフを介して特定のDNAに結合することが知られている。また、ARR10タンパク質のGARPモチーフのアミノ酸残基はヘリックス−ループ−ヘリックスのMyb様の立体構造を形成してDNAに結合することも知られている(Hosoda et al.,Plant Cell 14:2015−2029(2002))。PCL1アミノ酸配列中のGARPモチーフはARR1タンパク質やARR10タンパク質のGARPモチーフに極めて似ていることから、PCL1タンパク質は核に局在してGARPモチーフを介してDNAに結合し、特定のDNAに結合して転写制御を行っていると考えられる。pcl1−1変異とpcl1−2変異は、ともに劣性変異であり、GARPモチーフを欠いた不完全なPCL1タンパク質を生じるナンセンス変異であることから、pcl1−1変異体とpcl1−2変異体はともにpcl1欠損変異体であると考えられる。
[実施例8]<PCL1タンパク質の細胞内局在>
PCL1タンパク質の細胞内局在は、丹羽らの方法(Niwa et al.,Plant J.18:455−463(1999))を参考にして、GFP−PCL1融合タンパク質及びPCL1−GFP融合タンパク質をタマネギの表皮細胞で一過的に発現させて、GFPの蛍光を蛍光顕微鏡で観察した。対照としてGFPのみをタマネギ表皮細胞で一過的に発現させて、GFPの蛍光を蛍光顕微鏡で観察した。その結果、GFP−PCL1融合タンパク質及びPCL1−GFP融合タンパク質は核に局在していた(図8)。したがって、PCL1タンパク質は細胞内で核に局在すると考えられる。
[実施例9] <PCL1類似タンパク質および相同タンパク質の探索>
PCL1タンパク質の相同タンパク質および類似タンパク質を公的なデータベースで検索した。その結果、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)においてPCL1類似タンパク質をコードする遺伝子を、イネ(Oryza sativa)においてPCL1相同タンパク質をコードする遺伝子を、タバコ(Nicotiana benthaminaおよびNicotiana tabacum)、トマト(Lycopersicon esculentum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、マツ(Pinus taeda)、モロコシ(Sorghum)においてPCL1相同タンパク質をコードするcDNAを、それぞれ発見した。PCL1タンパク質とPCL1類似タンパク質およびPCL1相同タンパク質のアミノ酸配列を比較した結果を図9に示した。シロイヌナズナにおいては、TAIRウェブサイトのデータベースで整理番号At5g59570として整理されている推定遺伝子(配列表の配列番号2の塩基配列)がPCL1タンパク質と有意に類似したタンパク質(配列表の配列番号9のアミノ酸配列)をコードしていた。本発明者らはこの遺伝子をPCL1−LIKE(PCLL)と名付けた。また、イネのゲノムDNA配列上にPCL1タンパク質と相同なアミノ酸配列(配列表の配列番号10のアミノ酸配列)をコードする推定遺伝子(配列表の配列番号3の塩基配列)を発見し、これを本発明者らはOsPCL1遺伝子と名付けた。タバコ(Nicotiana benthamina)においては、不完全長である可能性があるが、PCL1タンパク質の相同タンパク質(配列表の配列番号11のアミノ酸配列)をコードすると推定されるcDNA(配列表の配列番号4の塩基配列)を発見し、これを本発明者らはNbPCL1遺伝子と名付けた。別の系統のタバコ(Nicotiana tabacum)においても、不完全長ではあるが、PCL1タンパク質の相同タンパク質(配列表の配列番号12のアミノ酸配列)をコードすると推定されるcDNA(配列表の配列番号5の塩基配列)を発見し、これを本発明者らはNtPCL1遺伝子と名付けた。トマト(Lycopersicon esculentum)においては、不完全長ではあるが、PCL1タンパク質の相同タンパク質(配列表の配列番号13のアミノ酸配列)をコードすると推定されるcDNA(配列表の配列番号6の塩基配列)を発見し、これを本発明者らはLePCL1遺伝子と名付けた。ジャガイモ(Solanum tuberosum)においては、不完全長である可能性があるが、PCL1タンパク質の相同タンパク質(配列表の配列番号14のアミノ酸配列)をコードすると推定されるcDNA(配列表の配列番号7の塩基配列)を発見し、これを本発明者らはStPCL1遺伝子と名付けた。マツ(Pinus taeda)においては、不完全長ではあるが、、PCL1タンパク質の相同タンパク質(配列表の配列番号15のアミノ酸配列)をコードすると推定されるcDNAを発見し、これを本発明者らはPtPCL1遺伝子と名付けた。モロコシ(Sorghum)においては、不完全長ではあるが、PCL1タンパク質の相同タンパク質(配列表の配列番号16のアミノ酸配列)をコードすると推定されるcDNAを発見した。
[実施例10]<PCL1遺伝子発現のノザンブロット解析>
これまでに時計遺伝子が発見されている生物種においては、ほとんどの時計遺伝子の発現が概日リズムを示す(Ishiura et al.,Science 281:1519−1523;Dunlap,Cell 96:271−290)。そこで、PCL1遺伝子発現が概日リズムを示すのか否かをノザンブロット解析で調べた。野生型株G−38とpcl1変異体の細胞内のPCL1 mRNAレベルのノザンブロット解析は以下の手順で行った。まず、表面滅菌した野生型株G−38とpcl1−1変異体の種子を1.5%(w/v)ショ糖を含むMS(Murashige and Skoog,Physiol.Plant.15:473−497(1962))固体培地に播種し、連続明、22.0±0.3℃の条件下で11日間培養し、12時間明期/12時間暗期の明暗サイクルを3サイクル与えた後、連続明条件に戻した。植物体培養時の照射光は、50μmol/m2/sの白色光であった。3サイクル目の暗期終了時、すなわち連続明開始時を0時間目として、連続明開始時から3時間間隔で各タイムポイントごとに10個体の植物体をサンプリングして即座に液体窒素で凍結した。そして、QIAGEN社製のRNeasy Midi Kitを使用して、凍結した植物体から全RNAを抽出した。5μgの全RNAをホルムアルデヒドを含んだ1.2%アガロースゲルで電気泳動し、ナイロン膜に転写した。転写した全RNAを32PラベルしたPCL1遺伝子特異的なDNAプローブとハイブリダイズさせ、PCL1遺伝子のmRNA蓄積量を放射活として検出した。PCL1遺伝子特異的な32PラベルDNAプローブは、配列表の配列番号1に記載の塩基配列の1,021から1,992を野生型株Col−0からクローニングして調製した。
ノザンブロット解析の結果を図10に示した。野生型株G−38においては、PCL1遺伝子のmRNAレベルは主観的夕方にピークをもつ明瞭な概日リズムを示した。これに対してpcl1変異体においては、PCL1mRNAレベルは概日リズムを示さなかった。したがって、PCL1遺伝子発現は概日リズムを示し、自身のリズミックな概日発現に必須であることが判明した。
[実施例11]<PCL::LUC+生物発光レポーター株の作出と生物発光リズム>
PCL1遺伝子の発現を生物発光として詳細にリアルタイムモニタリングするために、PCL1::LUC+生物発光レポーター株を以下の手順で作出した。まず、PCL1遺伝子のプロモーター領域(配列表の配列番号1に記載の塩基配列の1から1,020)と改良型ホタルルシフェラーゼ遺伝子(LUC+;Promega社)のコード領域を接続した生物発光レポーター遺伝子カセット(PCL1::LUC+)を作製し、これをバイナリーベクターpBIB−Hyg(Becker,Nucleic Acids Res.18:203(1990))のクローニングサイトへ挿入してpBIB/PCL1::LUC+を作製した。CloughとBentの方法(Clough and Bent,Plant J.16:735−743(1998))に従って、pBIB/PCL1::LUC+のT−DNA領域(ハイグロマイシンB耐性遺伝子HPTとPCL::LUC+を含む)をアグロバクテリアを介してシロイヌナズナの野生型株Col−0のゲノムへ遺伝子移入した。遺伝子移入された形質転換体は、WeigelとGlazebrookの記載(Weigel and Glazebrook,ARABIDOPSIS:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor(2002))に従って、ハイグロマイシンB耐性植物体として選択し、さらに、T−DNAが一遺伝子座へ挿入されたホモ植物体(T3)を選択し野生型PCL1::LUC+生物発光レポーター株として使用した。
連続明および連続暗条件下における野生型PCL1::LUC+発光レポーター株の生物発光測定は、本発明者らの方法(Onai et al.,Plant J.,41:1−11(2004))に従って行った。12時間明期/12時間暗期の明暗サイクルまたは12時間暗期/12時間明期のサイクルを与えて生物時計をリセットした後、連続明または連続暗で生物発光を測定した。
野生型PCL1::LUC+発光レポーター株の生物発光パターンを図11に示した。連続明条件下における野生型PCL1::LUC+発光レポーター株の生物発光は、ノザンブロット解析によるPCL1mRNAの概日リズムと一致する明瞭な概日リズムを示した。また、生物発光量は連続明の場合と比較して約3分の1に低下したが、野生型PCL1::LUC+発光レポーター株の生物発光は連続暗条件においても明瞭な概日リズムを示した。これらの結果は、PCL1遺伝子の発現が連続明と連続暗いずれの条件下においても明瞭な概日リズムを示すことを意味している。
[実施例12]
<PCL1過剰発現体PCL1−oxの作出とPCL1−ox植物体のGI::LUC+生物発光パターンおよび葉の就眠運動>
これまでに時計遺伝子が発見されている生物種においては、ほとんどの時計遺伝子の発現が概日リズムを示し、この概日発現を破壊すると全ての概日リズムが消失してしまうことが広く知られている(Ishiura et al.,Science 281:1519−1523;Dunlap,Cell 96:271−290)。そこで、PCL1遺伝子を過剰発現するPCL1過剰発現体PCL1−oxを作出してPCL1遺伝子の概日発現を破壊した場合に、概日リズムが消失するのか否かを調べた。PCL1過剰発現体PCL1−oxは以下の手順で作出した。まず、カリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーター(CaMV35S;GenBank/EMBL/DDBJデータベースに登録番号AF485783で登録されている塩基配列の4,951から5,815)とPCL1遺伝子のコード領域(配列表の配列番号1に記載の塩基配列の997から2,001)を接続したPCL1過剰発現カセット(CaMV35S::PCL1)を作製し、これをバイナリーベクターpBIB−Hyg(Becker,Nucleic Acids Res.18:203(1990))のクローニングサイトへ挿入してpBIB/35S::PCL1を作製した。CloughとBentの方法(Clough and Bent,Plant J.16:735−743(1998))に従って、pBIB/35S::PCL1のT−DNA領域(ハイグロマイシンB耐性遺伝子HPTと35S::PCL1を含む)をアグロバクテリアを介してシロイヌナズナの野生型株G−38(GI::LUC+発光レポーター遺伝子をもつ野生型株)のゲノムへ遺伝子移入した。遺伝子移入された形質転換体は、WeigelとGlazebrookの記載(Weigel and Glazebrook,ARABIDOPSIS:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor(2002))に従って、ハイグロマイシンB耐性植物体として選択し、さらに、T−DNAが一遺伝子座へ挿入されたホモ植物体(T3)を選択し、植物細胞内のPCL1 mRNAレベルが上昇していることをノザンブロット解析で確認した後、PCL1過剰発現体PCL1−oxとして使用した。
連続明および連続暗条件下における野生型株G−38およびPCL1−ox植物体のGI::LUC+生物発光パターンを図12aと図12bに示した。GI::LUC+生物発光の測定は、本発明者らの方法(Onai et al.,Plant J.,41:1−11(2004))に従って行った。12時間明期/12時間暗期の明暗サイクルまたは12時間暗期/12時間明期のサイクルを与えて生物時計をリセットした後、連続明または連続暗で生物発光を測定した。野生型株G−38は連続明と連続暗のいずれの条件下においても明瞭な生物発光リズムを示したが、PCL1−ox植物体はどちらの条件下でも3〜4日目まででにリズムが消失した。また、PCL1−ox植物体では野生型株G−38と比較してGI::LUC+生物発光のレベルが常に低かった。すなわち、PCL1遺伝子の過剰発現は、GI::LUC+生物発光リズムを破壊し、かつGI::LUC+レポーター遺伝子発現を抑制していた。
野生型株とPCL1−ox植物体の葉の就眠運動パターンを図12cに示した。葉の就眠運動の測定は、本発明者らの方法(Onai et al.,Plant J.,41:1−11(2004))に従って行った。野生型株は明瞭な就眠運動リズムを示したが、PCL1−ox植物体では就眠運動は4日目までにリズムが消失した。すなわち、PCL1遺伝子の過剰発現は、葉の就眠運動リズムも破壊した。
これらの結果は、PCL1遺伝子の概日発現を破壊すると概日リズムが消失することを示している。すなわち、PCL1遺伝子のリズミックな概日発現が概日リズム発振に必須である。
[実施例13]<PCL1遺伝子発現の自己フィードバック制御>
これまでに時計遺伝子が発見されている生物種においては、時計遺伝子の発現が自身の遺伝子発現を制御する、すなわち自己フィードバック制御し、これによってリズミックな概日発現を可能としている。そして、この自己フィードバックループが時計発振の本質であることが広く知られている(Ishiura et al.,Science 281:1519−1523;Dunlap,Cell 96:271−290)。例えば、ショウジョウバエや哺乳類のPeriod遺伝子、アカパンカビのfrequency遺伝子や藍色細菌のkaiC遺伝子、は自身の遺伝子発現を負のフィードバック制御している。そこで、PCL1遺伝子の発現が自己フィードバック制御されているのか否かを明らかにするため、PCL1−ox植物体(内在のPCL1遺伝子とに加えてPCL1遺伝子過剰発現カセットであるCaMV35S::PCL1遺伝子を染色体上のエクトピックな部位に持っている植物体)において内在のPCL1遺伝子発現をノザンブロット解析によって調べた。野生型株G−38、pcl1変異体、そしてPCL1−ox植物体のノザンブロット解析は以下の手順で行った。まず、表面滅菌したそれぞれの種子を1.5%(w/v)ショ糖を含むMS(Murashige and Skoog,Physiol.Plant.15:473−497(1962))固体培地に播種し、連続明、22.0±0.3℃の条件下で11日間培養し、12時間明期/12時間暗期の明暗サイクルを3サイクル与えた後、連続明条件に戻した。植物体培養時の照射光は、50μmol/m2/sの白色光であった。3サイクル目の暗期終了時、すなわち連続明開始時を0時間目として、連続明開始時から4時間間隔で各タイムポイントごとに10個体の植物体をサンプリングして即座に液体窒素で凍結した。そして、QIAGEN社製のRNeasy Midi Kitを使用して、凍結した植物体から全RNAを抽出した。5μgの全RNAをホルムアルデヒドを含んだ1.2%アガロースゲルで電気泳動し、ナイロン膜に転写した。転写した全RNAを内在のPCL1遺伝子から転写されたmRNAのみにハイブリダイズするRNAプローブとハイブリダイズさせ、内在PCL1遺伝子由来のmRNA蓄積量を放射活として検出した。内在のPCL1遺伝子由来のmRNAに特異的にハイブリダイズするRNAプローブは、32Pを取り込ませながら試験管内合成したPCL1 mRNAの3’非翻訳領域(配列表の配列番号1に記載の塩基配列の1,992から2,237)を使用した。
ノザンブロット解析の結果を図13に示した。野生型株G−38においては、PCL1 mRNAはリズミックに変動して明瞭な概日リズムを示したが、PCL1−ox植物体においては、内在のPCL1遺伝子から転写されるmRNAのレベルの概日リズムは3日目で消失し、かつそのレベルは野生型と比較して低レベルであった。また、pcl1変異体では、PCL1 mRNAレベルは野生型と比較して高く、概日リズムを示さなかった。これらの結果は、PCL1遺伝子発現は自分自身の遺伝子発現を負に制御している、すなわち負のPCL1遺伝子発現制御は自己フィードバックループを形成しており、このフィードバックループが概日リズム発振に必須であることを示している。
以上の結果、上述したような、高等植物における生物時計遺伝子として必要とされる条件である以下の5つ、すなわち、(1)一遺伝子の機能喪失によって全ての概日リズムが失われる、(2)一遺伝子の機能喪失によって光周性が喪失する、(3)遺伝子発現が連続明条件下および連続暗条件下で概日リズムを示す、(4)遺伝子の過剰発現は全ての概日リズムを破壊する、(5)自身の遺伝子発現をフィードバック制御する、を本発明の遺伝子が満足することが判明した。これらの条件を満たす遺伝子は、上述のように本発明が成されるまで発見されていなかった。
実施例6において本発明者らは、シロイヌナズナのゲノムから概日リズムを支配する生物時計遺伝子PCL1をクローニングした。さらに、実施例1〜4と実施例10においてpcl1変異体では調べた全ての概日リズムが失われていた。したがって、PCL1遺伝子は一遺伝子の機能喪失で全ての概日リズムが失われるので、上記条件(1)を満たしていることが判明した。
実施例5においてpcl1変異体では、光周的花成が日長不感受性であった。したがって、PCL1遺伝子は一遺伝子の機能喪失で光周性が喪失するので、上記条件(2)を満たしていることが判明した。
実施例10と実施例11においてPCL1遺伝子の発現は、連続明および連続暗条件下で概日リズムを示した。したがって、PCL1遺伝子は上記条件(3)を満たしていることが判明した。
実施例12と実施例13においてPCL1遺伝子の過剰発現は、調べた全ての概日リズムを破壊した。したがって、PCL1遺伝子は上記条件(4)を満たしていることが判明した。
実施例13においてPCL1遺伝子の機能喪失は自身の発現を上昇させ、過剰発現は自身の発現を抑制した。したがって、PCL1遺伝子は負の自己フィードバックによって自らの発現を制御しているので、上記条件(5)を満たしていることが判明した。
以上から、PCL1遺伝子は植物の生物時計遺伝子として必要とされる条件を全て満たしていたので、植物の時計遺伝子であることが判明した。
また、実施例7と実施例8においてPCL1遺伝子は、GARPモチーフをもつ核局在のタンパク質をコードしていた。したがって、PCL1タンパク質は植物細胞において核に局在して特定のDNAに結合し遺伝子発現を制御する転写因子として機能していると考えられる。
実施例9においてPCL1タンパク質の類似タンパク質および相同タンパク質ををコードする遺伝子を多数の植物に見出した。これらのタンパク質は、時計タンパク質として機能していると容易に推測される。
本発明に基づく植物の生物時計のモデルを図14に示した。PCL1遺伝子は負の自己フィードバックループを形成し、このフィードバックループが生物時計の本質であると考えられる。また、PCL1遺伝子は、既知の時計関連遺伝子であるTOC1、GI、ELF4の発現を促進的に、CCA1とLHYの発現を抑制的に制御しており、これらの遺伝子発現ネットワークが概日振動を安定化させていると考えられる。
[実施例14]<PCLL::LUC+生物発光レポーター株の作出と生物発光リズム>
シロイヌナズナのPCL1類似遺伝子PCLLの発現を生物発光として詳細にリアルタイムモニタリングするために、PCLL::LUC+生物発光レポーター株を以下の手順で作出した。まず、PCLL遺伝子のプロモーター領域と改良型ホタルルシフェラーゼ遺伝子のコード領域を接続した生物発光レポーター遺伝子カセット(PCLL::LUC+)を作製し、これをバイナリーベクターpBIB−Hyg(Becker,Nucleic Acids Res.18:203(1990))のクローニングサイトへ挿入してpBIB/PCLL::LUC+を作製した。CloughとBentの方法(Clough and Bent,Plant J.16:735−743(1998))に従って、pBIB/PCLL::LUC+のT−DNA領域(ハイグロマイシンB耐性遺伝子HPTとPCLL::LUC+を含む)をアグロバクテリアを介してシロイヌナズナの野生型株Col−0のゲノムへ遺伝子移入した。遺伝子移入された形質転換体は、WeigelとGlazebrookの記載(Weigel and Glazebrook,ARABIDOPSIS:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor(2002))に従って、ハイグロマイシンB耐性植物体として選択し、さらに、T−DNAが一遺伝子座へ挿入されたホモ植物体(T3)を選択し野生型PCLL::LUC+生物発光レポーター株として使用した。
連続明および連続暗条件下における野生型PCLL::LUC+発光レポーター株の生物発光測定は、本発明者らの方法(Onai et al.,Plant J.,41:1−11(2004))に従って行った。12時間明期/12時間暗期の明暗サイクルまたは12時間暗期/12時間明期のサイクルを与えて生物時計をリセットした後、連続明または連続暗で生物発光を測定した。
野生型PCLL::LUC+発光レポーター株の生物発光パターンを図22に示した。連続明と連続暗のいずれの場合においても、野生型PCLL::LUC+発光レポーター株の生物発光は、PCL1::LUC+発光レポーター株の生物発光リズムと一致する明瞭な概日リズムを示した。これらの結果は、PCLL遺伝子発現がPCL1遺伝子発現と全く同じパターンであることを意味している。
[実施例15]<PCLL過剰発現体PCLL−oxの作出とPCLL−ox植物体のGI::LUC+生物発光パターン>
実施例11で示したように、PCL1遺伝子を過剰発現すると、概日リズムが破壊されてしまう。PCLL遺伝子がPCL1遺伝子と同一または極めて類似した機能を果たしている、すなわち時計遺伝子として機能している、と仮定すると、PCLLの過剰発現も概日リズムに深刻な影響を与えると予想される。そこで、PCLL過剰発現体PCLL−oxを作出してPCLL遺伝子の概日発現を破壊した場合に、概日リズムがどのような影響を受けるのかを調べた。PCLL過剰発現体PCLL−oxは以下の手順で作出した。まず、カリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーター(CaMV35S;GenBank/EMBL/DDBJデータベースに登録番号AF485783で登録されている塩基配列の4,951から5,815)とPCLL遺伝子のコード領域を接続してPCLL過剰発現カセット(CaMV35S::PCLL)を作製し、これをバイナリーベクターpBIB−Hyg(Becker,Nucleic Acids Res.18:203(1990))のクローニングサイトへ挿入してpBIB/35S::PCLLを作製した。CloughとBentの方法(Clough and Bent,Plant J.16:735−743(1998))に従って、pBIB/35S::PCLLのT−DNA領域(ハイグロマイシンB耐性遺伝子HPTと35S::PCLLを含む)をアグロバクテリアを介してシロイヌナズナの野生型株G−38(GI::LUC+発光レポーター遺伝子をもつ野生型株)のゲノムへ遺伝子移入した。遺伝子移入された形質転換体は、WeigelとGlazebrookの記載(Weigel and Glazebrook,ARABIDOPSIS:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor(2002))に従って、ハイグロマイシンB耐性植物体として選択し、PCLL過剰発現体PCLL−oxとして使用した。
連続明におけるPCLL−ox植物体のGI::LUC+生物発光パターンを図23に示した。GI::LUC+生物発光の測定は、本発明者らの方法(Onai et al.,Plant J.,41:1−11(2004))に従って行った。12時間明期/12時間暗期の明暗サイクルを与えて生物時計をリセットした後、連続明で生物発光を測定した。その結果、PCLL−ox植物体の生物発光リズムは、徐々に減衰しながら5日目までは野生型株と比較して約2時間短周期を示し、その後、消失した。この結果は、PCLL遺伝子の概日発現を破壊すると、生物時計が正常に機能しなくなってしまうことを意味している。
実施例14と実施例15の結果から、PCLL遺伝子はPCL1遺伝子に塩基配列が類似しているだけではなく、発現パターンや機能も極めて類似していることが示された。したがって、PCLL遺伝子は時計機能に重要な遺伝子であると言える。また、これらの結果から、本明細に記載したPCLL遺伝子以外のPCL1類似遺伝子や、今後発見されると予想されるPCL1類似遺伝子に関してもPCLL遺伝子と同様に、時計機能に重要な働きを持つことが強く示唆される。
[配列表]
Claims (4)
- 生物における生物時計の制御に関与する遺伝子配列を有する、以下の(a)、又は(b)のDNAまたはRNAからなるプローブであって、生物における生物時計の制御に関与する遺伝子またはペプチド断片探索用のプローブ。
(a)配列表の配列番号1に示す、塩基配列番号1-2846で示される塩基配列からなるDNAまたはRNA。
(b)前記塩基配列番号1-2846の塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記塩基配列と95%の同一性を有するDNAまたはRNA。 - 生物における生物時計の制御に関与する遺伝子配列を有する、以下の(a)、又は(b)のDNAまたはRNAからなるプローブであって、生物における生物時計の制御に関与する遺伝子またはペプチド断片探索用のプローブ。
(a)配列表の配列番号2に示す、塩基配列番号1-4554で示される塩基配列からなるDNAまたはRNA。
(b)前記塩基配列番号1-4554の塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ前記塩基配列と95%の同一性を有するDNAまたはRNA。 - 請求項1または2に記載のプローブを用いた生物時計の制御に関与する遺伝子またはペプチド断片のスクリーニング方法。
- スクリーニングを、insituハイブリダイゼーション法、サザンハイブリダイゼーション法、全塩基配列決定、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、ノザンハイブリダイゼーション法、サウスウエスタン法からなる群から選択される少なくとも1種を用いて行なう請求項3記載の方法。
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