JP5142276B2 - 試料採取容器および容器抽出・分析方法 - Google Patents
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また、特許文献5の技術は、あらかじめ吸着剤が被覆された小瓶を蓋に固定化する必要や、目的物質を吸着剤に吸着させた後、小瓶を蓋から取り外す操作等が必要であり、操作が煩雑であるだけでなく、これらの操作は自動化が困難であった。また、小瓶の外面は、キャリア流体に直接ふれてしまうため、外部環境から分析対象物質が混入する危険性が増加する可能性が高まることや、有害な化学物質を測定する場合、分析従事者が小瓶の外面に付着した有害な化学物質に暴露される危険性や、血液や尿といった生体試料の測定において、小瓶の外面に付着した生体試料によって、分析従事者に対するバイオハザードの危険性を高めることが問題であり、更なる技術の改善が求められている。
(1)キャリア流体中に含まれる目的物質を吸着素子に吸着させ、吸着素子から目的物質を脱着させ、脱着した目的物質を分析する目的物質の抽出・分析方法であって、1.前記目的物質を吸着する吸着素子が内面にコーティングされ、蓋で密封された試料採取容器を準備すること、2.前記目的物質を含むキャリア流体を前記試料採取容器の内部に蓋の開閉をすることなく導入し、前記目的物質を含むキャリア流体を前記試料採取容器の内面に接触させ、前記目的物質を前記試料採取容器の吸着素子に吸着させること、3.前記吸着処理後のキャリア流体を蓋の開閉をすることなく前記試料採取容器から排出すること、および4.前記キャリア流体排出後の試料採取容器内に蓋の開閉をすることなく、前記吸着素子に吸着された前記目的物質を溶解する有機溶媒を導入し、前記吸着素子に吸着した前記目的物質を蓋の開閉をすることなく前記試料採取容器内で脱着させることを特徴とする目的物質の抽出・分析方法、
(2)さらに、脱着された目的物質を含む前記試料採取容器内の物質又は混合物を蓋の開閉をすることなく前記試料採取容器から分析機器に供給することを特徴とする上記(1)記載の目的物質の抽出・分析方法、
(3)目的物質に応じた材質及び体積の吸着素子を選択することを特徴とする上記(1)または(2)記載の目的物質の抽出・分析方法。
(4)内面の一部あるいは全部に吸着素子が被覆されたことを特徴とする試料採取容器、
(5)内面の一部あるいは全部に吸着素子が被覆されたことを特徴とする機器分析用試料採取容器、
(6)上記(4)または(5)のいずれかに記載の試料採取容器であって、二つ以上の試料採取容器が、相互に結合した試料採取容器、
(7)プレート状物に二つ以上の凹部を形成し、前記凹部の内面の一部あるいは全部に吸着素子が被覆され、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の目的物質の抽出・分析方法で使用することを特徴とする試料採取容器、
(8)吸着素子の材質が、高分子物質および/または無機物であることを特徴とする上記(4)〜(7)のいずれかに記載の試料採取容器、
(9)吸着素子の材質が、活性炭および/またはモノリス型シリカであることを特徴とする上記(4)〜(7)のいずれかに記載の試料採取容器、
(10)吸着素子に、抗体、アプタマー、酵素を含んだタンパク質、核酸から選ばれる少なくとも1種又は2種以上が含まれていることを特徴とする(4)〜(7)のいずれかに記載の試料採取容器、
(11)上記(4)〜(7)のいずれかに記載の試料採取容器であって、セプタムキャップ、キャップマット、および蓋としての機能を有する熱粘着シート(熱粘着シート製蓋ということもある)から選ばれる一つを備え付けていることを特徴とする試料採取容器。
上記本発明の目的物質の抽出・分析方法は、下記の抽出・分析方法でもある。
(12)キャリア流体中に含まれる目的物質の抽出・分析方法において、上記(4)〜(7)のいずれかに記載の試料採取容器を使用することを特徴とする目的物質の抽出・分析方法。
本発明でのキャリア流体中に含まれる目的物質を抽出・分析する方法において、前記目的物質は特に制限されない。それら目的物質は通常他の化学物質と混合され、混合物として存在している場合が殆どである。それら目的物質の中では、好ましくは有機化合物であり、身近に存在する製品中に存在する有機化合物である。さらには、脂溶性の有機化合物が好ましい。これら有機化合物は複数の化合物が共存していてもよい。例えば、河川水中の農薬・環境ホルモン・ダイオキシン・PCBなど、血液や尿などの生体試料中のステロイドホルモン、代謝物、薬物などが挙げられるが、これらに何ら限定されない。
前記吸着素子を構成する材料としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリアクリレート、ポリジビニルベンゼン、ポリジアルキルシロキサン、ポリアクリルアミドなどの有機樹脂、ポリジアルキルロキサンに他の官能基を導入したものを含めた有機シリコン系ポリマーなどで、その繰返し単位が20を超える高分子物質、ポリエチレングリコール、ポリアクリレート、ポリジビニルベンゼンなどで、その繰返し単位が5以上20以下のオリゴマー、モノリス型シリカ、ポリウレタン、二酸化珪素、ゼオライト、シリカゲル、酸化アルミニウムなどの無機組成物質あるいは活性炭などの単独またはこれらの混合物を例示できる。
本発明の吸着素子には、ターゲットである目的物質によっては、抗体、アプタマー、酵素などのバイオアフィニティー媒体であるタンパク質や核酸等を含ませておいてもよい。例えば、キャリア流体中に特定の抗原が含まれている場合、本発明の吸着素子に抗体を含ませておき、抗原―抗体反応を応用して前記キャリア流体中の抗原を吸着素子に吸着させることができる。アプタマー、酵素などのバイオアフィニティー媒体であるタンパク質や核酸等も同様であって、キャリア流体中に含まれている特定の化学物質と反応するアプタマー、酵素などのバイオアフィニティー媒体であるタンパク質や核酸等を選び出し、吸着素子中に含ませておくことにより、前記キャリア流体中に含まれている特定の化学物質を分析することが可能となる。吸着素子に上記抗体、アプタマー、酵素などのバイオアフィニティー媒体であるタンパク質や核酸等を含ませる手段・方法は特に制限されないのであり、最適な方法を適宜選択すればよい。
なお、吸着素子の体積が多いと吸着できる目的物質の絶対量が増加するし、吸着素子の表面積が広いと短時間で効率的に目的物質を吸着することができるので、必要に応じて吸着素子の体積や表面積を変動させればよい。
さらに、大量のキャリア流体を用いることが必要な場合は、前記試料採取容器の容量や形状等を様々に変更すればよい。また、試料採取容器を結合させ、複数の試料採取容器を用いてもよい。複数の試料採取容器を作製する手段は特に制限されないのであるが、例えば試料採取容器を適当な接着剤で結合することが可能である。
これらの工夫により、キャリア流体の導入・排出、脱着溶媒の導入等の工程を全て自動的に行うことが可能である。さらに、前記工程に加えて、分析用試料の分析装置への導入工程を含めた工程を全て自動的に行うことが可能である。
上記試料採取容器は、キャリア流体の採取容器ということができるが、分析用試料調製容器ということもできるし、機器分析用試料調製容器ということもできる。
前記試料採取容器は一つであってもよいが、複数の前記試料採取容器が相互に結合して平板状の多数の試料採取容器とすることもできる。
また、一枚のプレートに複数個の凹部を形成させ、試料採取容器が多数設けられたプレートとしてもよい。具体的には、縦8 cm程度、横 12.5 cm程度、高さ 1.5 cm程度のガラス製あるいはポリプロピレンやアクリル系重合体等のプラスチック製のプレートに2個以上、好ましくは96個の凹部(直径7 mm程度、高さ1.2 cm程度)を形成させ、その内面に吸着素子が被覆された試料採取容器を例示することができる。
本発明の試料採取容器は目的物質の抽出・分析方法において使用される。前記抽出・分析方法は特に制限されないのであって、本発明の効果が保たれる限りどのような抽出・分析方法でも適用可能である。
キャリア流体が試料採取容器に導入された後、キャリア流体中の目的物質を吸着素子に吸着させるための条件は、吸着させる目的物質の物性、キャリア流体等により最適条件が異なるので一概に規定することができない。例えば、キャリア流体を本発明の試料採取容器に導入後、キャリア流体が吸着素子と接触し、キャリア流体中の目的物質が吸着素子に吸着されるよう、キャリア流体を撹拌することが好ましい。より具体的には試料採取容器を所定時間振とうすることが好ましい。試料採取容器を振とうする装置または器具としては、市販の振とう装置やボルテックスミキサーを用いればよく、試料採取容器の振とうを自動で行えるので、簡便である。また、当該容器を超音波処理してもよいし、それら超音波処理と撹拌操作を併用してもよい。
なお、吸着素子から目的物質の脱着効率を高めるために、導入された有機溶媒を撹拌することが好ましい。より具体的には試料採取容器(試料調製容器)を所定時間振とうすることが好ましい。試料採取容器(試料調製容器)を振とうする装置または器具としては、上記と同様である。また、当該容器を超音波処理してもよいし、それら超音波処理と撹拌操作を併用してもよい。
前記有機溶媒としては、例えば、メタノールやアセトニトリルが好ましい。
上記吸着素子から目的物質を脱着する操作を試料採取容器内で行うことが本発明の一つの大きな特徴である。
なお、吸着素子から目的物質を脱着させる操作を行う前に、キャリア流体中の目的物質を吸着素子に吸着処理した試料採取容器から、当該キャリア流体を排除することが好ましい。ここで前記キャリア流体を排除する際には、外部環境から分析対象物質が混入しないように、前記キャリア流体を試料採取容器から排除する方法を選択することが好ましい。具体的な方法は、上記有機溶媒を試料採取容器内部に導入する方法とほぼ同様である。
試料採取容器(試料調製容器)内にて調製された目的物質を含む分析用試料を、外部環境から分析対象物質が混入しないように分析することが本発明の一つの大きな特徴である。外部環境から分析対象物質が混入しないように分析する手段は特に制限されないが、例えば、試料採取容器(試料調製容器)の蓋の開閉を行わないで前記目的物質を含む分析用試料を、機器分析装置に直接供給し、分析処理することが好ましい。より具体的には、試料採取容器(試料調製容器)の蓋としてセプタムキャップ、キャップマット、および熱粘着シート製蓋から選ばれる一つを使用した場合、シリンジを用いることで蓋の開閉を行わないで、前記目的物質を含む分析用試料を、機器分析装置に直接供給し、分析処理することができる。
本発明で用いる機器分析法としては特に制限されないが、例えば、液体クロマトグラフィー法またはガスクロマトグラフィー法が好ましい。
容器6及び9は、吸着素子を構成する材料の溶液を塗布し、加熱乾燥させて得た、吸着素子が被覆された試料採取容器の例である。容器7及び8は、吸着素子を構成する材料の溶液を塗布し、図に示されるような形状となるような鋳型を押し当て加熱乾燥させて得た、吸着素子が被覆された試料採取容器の例である。容器10及び11は、試料容器自体の底部のガラスが特殊な形状に成型してある試料採取容器に吸着素子を構成する材料の溶液を塗布し、加熱乾燥させて得た、吸着素子が被覆された試料採取容器の例である。
ガラス製の96穴プレート(市販)のそれぞれの穴に液状ポリジメチルシロキサン(東レダウコーニング社製 品番:SILPOT 184 W/C)を加え、60oC、2時間乾燥させ固定化させ、試料採取容器を得た。
(1)吸着素子の材質の決定
目的物質に合わせて吸着素子の材質を決定する。ここでは、目的物質であるプロゲステロンの疎水性が比較的高いので、材質がポリジメチルシロキサンである吸着素子を選択した。
試料採取容器の内面に吸着素子を被覆する。ここでは、前記容器として、高さ3.2 cm 、直径 1.1 cm、底面はほぼ平面であるガラス製円柱状容器を用いた。この容器の底面に液状ポリジメチルシロキサン(東レダウコーニング社製 品番:SILPOT 184 W/C)を塗布し、60oC、2時間加熱・乾燥し、ポリジメチルシロキサンを200μ1含む被膜を形成させた。
キャリア流体を前記試料採取容器に加え、目的物質を吸着させる。ここでは、キャリア流体として、目的物質1.5μgを含んだ試験液1.5 mlをマイクロシリンジを用いて試料採取容器に導入し、10分間振とうした。
上記の工程により吸着・濃縮させた目的物質を分析した結果について説明する。
(A)目的物質を吸着させた試料採取容器から、マイクロシリンジを用いてキャリア流体を取り除き、マイクロシリンジを用いてアセトニトリル50μ1を加えた。10分間振とうし、吸着素子から目的物質をアセトニトリル中に移行させた。
(B)次いで、前記試料採取容器からマイクロシリンジを用いてアセトニトリルを取り出し、当該アセトニトリルを下記高速液体クロマトグラフ装置に導入(注入)し、アセトニトリル中の目的物質を下記条件で分析した。
使用機器: 島津社製HPLC Prominence
使用カラム:野村化学製 Develosil C30 (2.1 mm × 25 cm)
各種条件: 移動相(水/アセトニトリル=50/50)、流速 0.2 ml/min、注入量 5 μl、カラムオーブン 40 oC、検出波長 UV 254 nm
未処理の前記試験液と容器抽出・分析方法を行った場合の測定結果を図5に示す。
以上説明したように、本発明は、煩雑ではなく簡単な工程により目的物質の容器抽出・分析方法が可能となったので、本発明により、汚染の可能性が低い分析の実施と、分析感度を向上させることができる。
(1)キャリア流体中に含まれる目的物質の抽出・分析方法において、下記の工程1〜3を有することを特徴とする目的物質の抽出・分析方法、
1.前記目的物質を吸着する吸着素子を試料採取容器の内面にコーティングする工程
2.前記目的物質を含むキャリア流体を前記試料採取容器の内部に導入し、前記目的物質を含むキャリア流体を試料採取容器の内面に接触させ、前記目的物質を試料採取容器の吸着素子に吸着させる工程、
3.前記吸着素子に吸着した前記目的物質を試料採取容器内で脱着させる工程、
(2)キャリア流体を導入する試料採取容器が蓋で密閉されている試料採取容器であって、蓋の開閉をすることなくキャリア流体を導入できる試料採取容器であることを特徴とする上記(1)記載の目的物質の抽出・分析方法。
(3)さらに、目的物質に応じた材質及び体積の吸着素子を選択する工程を含むことを特徴とする上記(1)記載の目的物質の抽出・分析方法、
(4)吸着素子が内面の一部あるいは全部に被覆され、上記(1)〜(3)のいずれかに記載された目的物質の抽出・分析方法で使用することを特徴とする試料採取容器。
(5)二つ以上の上記(4)記載の試料採取容器が、相互に結合したことを特徴とする試料採取容器、
(6)プレート状物に二つ以上の凹部を形成し、前記凹部の内面の一部あるいは全部に吸着素子が被覆され、上記(1)〜(3)のいずれかに記載された目的物質の抽出・分析方法で使用することを特徴とする試料採取容器、
2 試料採取容器
3 吸着素子
4 セプタムキャップ
5 キャリア流体
6 底面及び側面の一部が吸着素子で被覆された試料採取容器
7 円柱の空洞を有する吸着素子で被覆された試料採取容器
8 円錐の空洞を有する吸着素子で被覆された試料採取容器
9 底面が吸着素子で被覆された試料採取容器
10 底面が吸着素子で被覆された円柱の空洞を有する試料採取容器
11 底面が吸着素子で被覆された円錐の空洞を有する試料採取容器
12 プレート状の試料採取容器
13 プレート状の凹部
14 プロゲステロンのピーク
Claims (3)
- キャリア流体中に含まれる目的物質を吸着素子に吸着させ、吸着素子から目的物質を脱着させ、脱着した目的物質を分析する目的物質の抽出・分析方法であって、1.前記目的物質を吸着する吸着素子が内面にコーティングされ、蓋で密封された試料採取容器を準備すること、2.前記目的物質を含むキャリア流体を前記試料採取容器の内部に蓋の開閉をすることなく導入し、前記目的物質を含むキャリア流体を前記試料採取容器の内面に接触させ、前記目的物質を前記試料採取容器の吸着素子に吸着させること、3.前記吸着処理後のキャリア流体を蓋の開閉をすることなく前記試料採取容器から排出すること、および4.前記キャリア流体排出後の試料採取容器内に蓋の開閉をすることなく、前記吸着素子に吸着された前記目的物質を溶解する有機溶媒を導入し、前記吸着素子に吸着した前記目的物質を蓋の開閉をすることなく前記試料採取容器内で脱着させることを特徴とする目的物質の抽出・分析方法。
- さらに、脱着された目的物質を含む試料採取容器内の物質又は混合物を、蓋の開閉をすることなく前記試料採取容器から分析機器に供給することを特徴とする請求項1記載の目的物質の抽出・分析方法。
- 目的物質に応じた材質及び体積の吸着素子を選択することを特徴とする請求項1又は2記載の目的物質の抽出・分析方法。
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