JP5130671B2 - 有機高分子組成物及び光導波路並びに光導波路の製造方法 - Google Patents
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Description
このシステムの低価格化においては、システムを構成する各種光デバイスの低価格化が必須であり、光デバイスを低コストで製造することがシステム低価格化における大きな課題となっている。
これらの光デバイスにおいては、二次元もしくは三次元構造の光導波路が採用されており、これらの光導波路は、石英基板等のリジッド基板の光導波路形成領域にイオン交換法や不純物熱拡散法等によりイオンを拡散させることにより形成される。
これらの従来型の導波路形成方法は、低損失の光導波路が得られるものの、石英基板等の材料が比較的高価な上に工程数も多く、低コスト化の要求に応えることは困難であった。
有機ポリマーを用いた光導波路(以下、有機ポリマー導波路と称する)は、光導波路のコア及びクラッドを、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリイミド等の有機ポリマーにより構成したもので、低価格で大面積化が容易である上、各種印刷法やスタンピング、エンボシング等、量産性に優れた光導波路形成方法が適用可能であることから、光導波路構造を有する各種光デバイスを低コストで製造し得る材料として期待されている。
さらに、この有機ポリマー導波路は、基材にフィルムを使用することにより、フレキシブル性を有する光導波路を形成することが可能であるから、従来のリジッド基板を用いた光導波路では適用することができなかった用途、例えば、電子部品間等を光によって接続するいわゆる光インターコネクト用途へ適用することが可能である。
直接露光法は、下部クラッド層上に形成した感光性樹脂前駆体層を、紫外線(UV)等を用いて所定のパターンで露光・現像してコア層とする方法であり、このコア層及び下部クラッド層上に上部クラッド層を形成することにより光導波路を作製することができる。
また、微粒子添加法は、有機ポリマーからなるクラッド部上に、この有機ポリマーにこれより屈折率が高い光透過性微粒子を含有してなるコア部を形成する方法であり、このコア部及びクラッド部上にさらにクラッド部を形成することにより光導波路を作製することができる。
この微粒子添加法では、粒径が50nm以下の微粒子が用いられているが、その理由は、可視光としては短波長である紫〜青色の光に対するミー散乱がほぼ無視することができ、散乱による光損失が低減するからと考えられている。
また、従来の反応性イオンエッチング法では、真空プロセスを必要とするために、製造工程が複雑になるとともに、製造装置の構造も複雑かつ高価になり、したがって、量産性及び低コスト化の点で問題点があった。
しかも、この成形加工法は、導波路パターン毎に金型を変える必要があるために、少量多品種の光導波路に対応するためには、膨大な量の金型を用意する必要があり、製造コストの点からも問題点があった。
さらに、この金型は受注生産が主であるから、金型を発注してから納品されるまでに長時間を要し、リードタイムが長くなってしまうという問題点もあった。
このため、予め形成されたクラッド部上にコア部形成用の微粒子添加有機ポリマーを塗布した後、導波路パターンを露光して光導波路を製造するような場合、クラッド部との界面にまで十分な量の紫外線が到達せず、パターンの転写性が悪化して光導波路の寸法精度が低下するという問題点があった。
前記クラッド部は、本発明の有機高分子組成物に含まれる有機高分子と同一組成の有機高分子を硬化してなることが好ましい。
また、光透過性微粒子の含有量を調整することにより、この有機高分子組成物の屈折率を容易に制御することができる。
また、この有機高分子組成物の塗膜をパターニングすることにより、より簡便かつより低コストで高精度に光導波路を形成することができる。
また、光透過性微粒子の含有量を調整することにより、コア部の屈折率を容易に制御することができる。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本発明の有機高分子組成物は、有機高分子と、この有機高分子の屈折率を調整するための光透過性微粒子とを含有してなる有機高分子組成物であり、この光透過性微粒子の平均粒径が20nm以下の有機高分子組成物である。
ここで、平均粒径とは、光透過性微粒子を水、メチルエチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の各種溶媒に分散した分散液における平均粒径のことであり、動的光散乱法により測定したものである。
このような感光性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリキノリン系樹脂、ポリキノキサリン系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂、ポリベンゾチアゾール系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂等が挙げられる。
ここで、光透過性微粒子の平均粒径を20nm以下とした理由は、この光透過性微粒子の平均粒径と、有機高分子組成物の塗膜をパターニングする際のパターン再現性との間に相関性があるために、光透過性微粒子の平均粒径を20nm以下とすることで、パターニングに用いられる紫外線等の散乱に起因するパターン鈍りをフォトマスクの線幅精度以下に抑えることが可能になり、したがって、光導波路をより高精度で形成することが可能になるからである。
ここで、光透過性微粒子のエネルギーギャップEgを3.2eV以上とした理由は、上記の有機高分子組成物の塗膜を紫外線(UV)によりパターニングして光導波路を形成する際に、この有機高分子組成物における紫外線の透過性を高め、パターン精度の良い光導波路を形成することが可能になるからである。
特に、ジルコニア(ZrO2)は、エネルギーギャップEgが5.0eVと極めて高く、また、酸化物としては高い屈折率(2.17)を有するので、好適である。
図1は、ジルコニア(ZrO2)微粒子の平均粒径の違いによる可視光透過率を示す図である。
ここでは、ジルコニア微粒子として、分散液とした場合の平均分散粒径が9nm及び40nmの2種類のものを用い、各ジルコニア微粒子をトルエン中に0.8v/v%の濃度で分散した2種類のジルコニア微粒子分散液を作製し、これらのジルコニア微粒子分散液を光路長が10mmとなるように調整された石英セルにそれぞれ封入した後、波長400nm〜800nmにおける透過スペクトルを測定した。
図中、実線(−)は平均分散粒径が9nmの分散液の透過スペクトルを示し、また、破線(…)は平均分散粒径が40nmの分散液の透過スペクトルを示している。
この光透過率の差は、ジルコニア微粒子によるレイリー散乱の大きさの違いと見なすことができるので、ジルコニア微粒子の平均分散粒径、すなわち光透過性微粒子の平均粒径を20nm以下とすることで、光の散乱損失を低減することができることが明らかになった。
図2は、本発明の一実施形態の光導波路を示す断面図であり、図において、1は基板、2は基板1上に形成された本実施形態の有機高分子組成物に含まれる有機高分子と同一組成の有機高分子を硬化してなる下部クラッド層(クラッド部)、3は下部クラッド層2上に形成された本実施形態の有機高分子組成物を硬化してなるストライプ状のコア部、4は下部クラッド層2と同一組成の有機高分子を硬化してなる上部クラッド層である。
なお、熱処理温度が200℃〜250℃程度の場合、熱変形等が生じないのであれば、耐熱性プラスチック基板も用いることができる。
基板1上に、本実施形態の有機高分子組成物に含まれる有機高分子と同一組成の有機高分子を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を加熱・硬化して下部クラッド層2とする。
次いで、この下部クラッド層2上に本実施形態の有機高分子組成物を塗布して塗膜を形成し、この塗膜をフォトリソグラフィ等を用いてコアの形状にパターニングし、このコアの形状の塗膜を加熱・硬化し、所定の形状の光導波路領域であるコア部3とする。
この化学反応としては、上記の有機高分子を紫外線に対して感光性を有する感光性樹脂とし、パターニングの際に塗膜の光導波路領域に紫外線を照射し、この光導波路領域の感光性樹脂の架橋反応を進行させることが好ましい。
次いで、このコア部3及び下部クラッド層2上に、本発明の有機高分子組成物に含まれる有機高分子と同一組成の有機高分子を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を加熱・硬化して上部クラッド層4とする。
加熱・硬化の温度及び時間は、有機高分子の化学反応を進行させ硬化させるに充分な温度であることが好ましく、例えば、75℃以上、5分〜30分が好ましい。
「実施例」
光透過性微粒子として、5.0eVと極めて高いエネルギーギャップEgを有し、酸化物としては2.17という高屈折率を有する平均粒径10nmのジルコニア微粒子を用い、また、有機ポリマー(有機高分子)として、可視光領域での透過性に優れたポジ型の感光性アクリル樹脂前駆体を用い、これらジルコニア微粒子及び感光性アクリル樹脂前駆体を、ジルコニア微粒子の感光性アクリル樹脂前駆体に対する含有率が0.7v/v%となるようにメチルエチルケトン(MEK)中に分散させ、有機ポリマー組成物を作製した。
次いで、この下部クラッド層上に、上記の有機ポリマー組成物をスピンコート法により塗布し、80℃にて5分間プリベークさせて塗膜とし、この塗膜にコア径が10μmの直線導波路形成用フォトマスクを用いて紫外線照射を行うことにより、所定の光導波路パターンを転写し、その後現像を行った。
次いで、大気中、80℃にて30分間加熱し、有機ポリマー組成物を完全に硬化させ、コア径が10μmのストライプ状のコア部を形成した。このコア部の幅を10点測定した結果、平均で9.8μmであった。
この3次元埋込型光導波路の波長1.3μmにおける光伝播損失を測定した結果、0.02dB/cmであった。
実施例にてジルコニア微粒子の平均粒径を40nmとした以外は、実施例に準じて3次元埋込型光導波路を作製した。
この3次元埋込型光導波路の現像・硬化後のコア部の幅を10点測定した結果、平均で9.4μmであった。
また、この3次元埋込型光導波路の波長1.3μmにおける光伝播損失を測定した結果、0.3dB/cmであった。
実施例にてジルコニア微粒子を平均粒径が10nmの酸化チタン微粒子とした以外は、実施例に準じて3次元埋込型光導波路を作製した。
この3次元埋込型光導波路の現像・硬化後のコア部の幅を10点測定した結果、平均で9.2μmであった。
また、この3次元埋込型光導波路の波長1.3μmにおける光伝播損失を測定した結果、0.03dB/cmであった。
2 下部クラッド層
3 コア部
4 上部クラッド層
Claims (6)
- 光導波路のコア部を形成するのに用いられ、有機高分子と、この有機高分子の屈折率を調整するための光透過性微粒子とを含有してなる有機高分子組成物であって、
前記光透過性微粒子を溶媒に分散した分散液における平均分散粒径は20nm以下であり、
前記有機高分子は感光性樹脂であり、前記光透過性微粒子のエネルギー帯におけるエネルギーギャップEgは3.2eV以上であることを特徴とする有機高分子組成物。 - 前記光透過性微粒子は、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、タンタル酸カリウム、窒化ガリウムの群から選択された1種または2種以上からなる微粒子であることを特徴とする請求項1記載の有機高分子組成物。
- 請求項1または2記載の有機高分子組成物を硬化してなるコア部と、前記有機高分子組成物に含まれる有機高分子と同一組成の有機高分子を硬化してなるクラッド部とを備えてなることを特徴とする光導波路。
- クラッド部上に請求項1または2記載の有機高分子組成物を塗布して塗膜を形成し、次いで、この塗膜をパターニングして所定の形状の光導波路領域とすると共に該光導波路領域の化学反応を進行させ、次いで、この光導波路領域を硬化し、コア部とすることを特徴とする光導波路の製造方法。
- 前記有機高分子を紫外線に対して感光性を有する感光性樹脂とし、
前記パターニングの際に、前記塗膜の光導波路領域に紫外線を照射し、この光導波路領域の感光性樹脂の架橋反応を進行させることを特徴とする請求項4記載の光導波路の製造方法。 - 前記クラッド部は、請求項1または2記載の有機高分子組成物に含まれる有機高分子と同一組成の有機高分子を硬化してなることを特徴とする請求項4または5記載の光導波路の製造方法。
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