以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
また、以下に示す項目順序に従って当該「発明を実施するための最良の形態」を説明する。
〔1〕本実施形態にかかる無線ネットワークの概要
〔2〕本実施形態に至る経緯
〔3〕本実施形態の詳細な説明
〔4〕まとめ
〔1〕本実施形態にかかる無線ネットワークの概要
まず、図1を参照し、本実施形態にかかる無線通信システムの一例としての無線ネットワークについて概略的に説明する。
図1は、自律分散型の無線ネットワーク群1の構成例を示した説明図である。図1における白丸印は同一のチャネルを用いて無線通信を行う無線通信装置10A〜10Eを示し、点線で示した領域は各無線通信装置10が通信を行うことが可能な電波到達範囲12A〜12Eを示す。また、図1における黒丸印は無線通信装置10A〜10Eと異なるチャネルを用いて無線通信を行う無線通信装置10Fおよび10Gを示し、点線で示した領域は各無線通信装置が通信を行うことが可能な電波到達範囲12Fおよび12Gを示す。すなわち、無線ネットワーク群1には、異なるチャネルを用いて無線通信を行う無線通信装置の電波到達範囲が重複している。
具体的には、無線通信装置10Aは、その電波到達範囲12Aに含まれる無線通信装置10Bと通信が可能である。無線通信装置10Bは、その電波到達範囲12Bに含まれる無線通信装置10Aと無線通信装置10Cとの間で通信が可能である。同様に、無線通信装置10Cは、無線通信装置10Bと無線通信装置10Dとの間で通信が可能である。また、無線通信装置10Dは、無線通信装置10Cと無線通信装置10Eとの間で通信が可能である。また、無線通信装置10Eは、無線通信装置10Dとの間で通信が可能である。このように、無線通信装置10A〜10Eが、それぞれの電波到達範囲に含まれる通信装置との間で通信を行い一の無線ネットワークを形成する。
また、無線通信装置10Fは無線通信装置10Gの電波到達範囲12Gに含まれ、無線通信装置10Gは無線通信装置10Fの電波到達範囲12Fに含まれるため、無線通信装置10Fおよび無線通信装置10Gは相互に通信を行うことができる。このように、無線通信装置10Fおよび無線通信装置10Gが一の無線ネットワークを形成する。
なお、以下では無線通信装置10A〜10Gを特に区別する必要が無い場合は単に無線通信装置10と、電波到達範囲12A〜12Gを特に区別する必要が無い場合は単に電波到達範囲12と称する。
また、無線通信装置10は、PC(Personal Computer)、家庭用映像処理装置(DVDレコーダ、ビデオデッキなど)、携帯電話、PHS(Personal Handyphone System)、携帯用音楽再生装置、携帯用映像処理装置、PDA(Personal Digital Assistant)、家庭用ゲーム機器、携帯用ゲーム機器、家電機器などの情報処理装置であってもよい。
以上、自律分散型の無線ネットワーク群1の構成例を説明した。続いて、各無線ネットワークにおける時分割制御のためのスーパーフレームについて図2を参照して説明する。
図2は、スーパーフレームの構成例を示した説明図である。スーパーフレーム周期は、所定の時間(例えば、約65ms)により定義され、256個のメディアアクセススロット(MAS:Media Access Slot;以下、単にスロットと称する場合がある。)に細分化されている。一の無線ネットワークを構成する無線通信装置10は、該スーパーフレーム周期を所定周期のフレームとして共有し、上記細分化されたスロットを単位としてメッセージの転送が行われる。
さらに、スーパーフレームの先頭には、ビーコン(ビーコン信号)により管理情報の送受信を行うための管理領域としてのビーコン期間(BP)があり、所定の間隔をおいてビーコンスロット(BS)が配置されている。また、無線通信装置10毎に、固有のビーコンスロットが設定され、周囲の無線通信装置10との間で、ネットワークの管理やアクセス制御を行うためのパラメータが交換される。図2においては、ビーコン周期として、BS0〜BS8の9個のビーコンスロットが設定されている例を示した。なお、ビーコン周期として設定されていない期間は、通常、データ伝送領域として利用される。
図3は、無線通信装置10A〜無線通信装置10Eが一の無線ネットワークを形成している場合に、各無線通信装置10が設定する自己のビーコンスロット位置を示した概念図である。ここでは、一の無線ネットワークを構成する各無線通信装置10が、利用されていないビーコンスロットを通知しあうことで、自己の利用するビーコンスロットを選定した様子が示している。
この例では、無線通信装置10AはBS2で自己のビーコンを送信し、無線通信装置10BはBS3で自己のビーコンを送信する。同様に、無線通信装置10CはBS4で自己のビーコンを送信し、無線通信装置10DはBS5で自己のビーコンを送信する。無線通信装置10EはBS6で自己のビーコンを送信する。このように、図3においては、各無線通信装置10が、それぞれ固有のビーコンスロットを占有し、ビーコンを送信している状態を示している。
なお、当該無線ネットワークに新規参入する無線通信装置などの為に、必要に応じてBS0、BS1、BS7及びBS8が確保されている。通常、自己のビーコンスロットの後方に所定数の空きビーコンスロットが設けられている。これらの空きビーコンスロットは、無線通信装置10の新規参入に備えて準備されているものである。また、各無線通信装置10のビーコン期間は、周囲に存在する無線通信装置10のビーコンに応じて、適宜、拡張することが可能な構成となっている。
〔2〕本実施形態に至る経緯
以上、図1〜図3を参照して無線ネットワークの概要を説明した。続いて、図4および図5を参照し、本実施形態に至った経緯について説明する。
従来からのアクセス制御方法では、送信側の無線通信装置が送信権を管理するため、アドホックネットワークやメッシュネットワークにおいては、受信側の無線通信装置での伝送の要否を確認する必要があった。さらに、スロット予約の設定を行なう送信元の通信装置では、受信側の無線通信装置のさらに遠方に存在する無線通信装置の挙動を把握できないため、スロット予約の要否を受信先の通信装置に確認した後でないと、予約の設定ができないという問題があった。特に、ビーコングループ(属する無線ネットワーク)が異なる無線通信装置との間で予約の競合が発生してしまうと、相手の予約状況を常に把握しなければならず、競合を解消することが困難であった。
一方、WiMedia Distributed MAC仕様書においては、複数の無線通信装置が、ビーコンに付加されるスロット(DRP:Distributed Reservation Protocol)予約情報を利用して無線通信を行うスロットを予約する方法が記載されている。しかし、かかる方法では、例えば図4に示すように予約が完了するまでに4スーパーフレームの時間を要する場合があった。
図4は、スロット予約情報を利用してスロットが予約される流れを示したシーケンス図である。まず、送信側の無線通信装置は、送信するデータを受理した場合、自己の予約可能なスロットの一部を記載した暫定的なDRP予約要求(未確定)を示すスロット予約情報を含んだビーコンを送信する(S151)。また、S151と同一の1番目のスーパーフレームのビーコン期間では受信側の無線通信装置からもビーコンが送信されるが、当該ビーコンに含まれるスロット予約情報ではDRP予約設定されていない(S152)。なお、ビーコンおよびスロット予約情報の詳細な構成ついては図7および図9を参照して後述する。
そして、自己宛DRP予約要求を受信した受信側の無線通信装置は、要求されたスロット予約の要否を判定する(S153)。続いて、2番目のスーパーフレームのビーコン期間に送信側の無線通信装置がS151と同一のDRP予約要求を含むビーコンを送信する(S154)。その後、受信側の無線通信装置は、S153において予約が可能であると判定した場合、DRP予約設定(未確定)を示すスロット予約情報を含むビーコンを送信する(S155)。
送信側の無線通信装置は、自己宛のDRP予約設定(未確定)を受信し、当該DRP予約設定(未確定)を確認すると(S156)、3番目のスーパーフレームのビーコン期間にDRP予約設定(確定)を示すスロット予約情報を含むビーコンを送信する(S157)。また、3番目のスーパーフレームでは、受信側の無線通信装置は2番目のスーパーフレームと同一の予約設定(未確定)を示すスロット予約情報を含むビーコンを送信する(S158)。
また、4番目のスーパーフレームのビーコン期間では、送信側の無線通信装置が3番目のスーパーフレームと同一のDRP予約設定(確定)を示すスロット予約情報を含むビーコンを送信する(S159)。さらに、DRP予約設定(確定)を受信した受信側の無線通信装置は、自己宛の予約が確定していることから、予約設定(確定)を示すスロット予約情報を含むビーコンを送信する(S160)。
こうして、送信側の無線通信装置と受信側の無線通信装置が送信するビーコンに含まれるスロット予約情報が予約設定(確定)になると、送信側の無線通信装置が予約の確定されたスロットで実際にデータを送信することができる(S161)。このように、スロット予約情報を利用してスロットを予約する方法では、送信側の無線通信装置がデータを受領してから4スーパーフレーム経過しないと該データを送信ができなかった。
また、スロット予約情報を利用してスロットを予約する方法では、予約スロットを変更する場合、例えば図5に示すように6スーパーフレームの時間を要した。
図5は、スロット予約情報を利用して予約スロットが変更される流れを示したシーケンス図である。まず、1番目のスーパーフレームのビーコン期間において、送信側の無線通信装置がDRP予約設定(確定)を示すスロット予約情報を含んだビーコンを送信し(S171)、受信側の無線通信装置が同じDRP予約設定(確定)を示すスロット予約情報を含んだビーコンを送信して通信を行なっている(S172)。
ここで、受信側の無線通信装置がスロット競合を検出した場合には、該当する予約スロットでのデータ受信が不可能になるため(S173)、受信側の無線通信装置は、送信側の無線通信装置にDRP予約競合(未確定)を示すスロット予約情報を含むビーコンを2番目のスーパーフレームに送信する(S175)。なお、送信側の無線通信装置は、衝突を検出できないため、DRP予約設定(確定)を示すスロット予約情報を含んだビーコンを送信する(S174)。
送信側の無線通信装置は、自己宛DRP予約競合(未確定)を受信すると、該当するDRP予約を解消するとともに、3番目のスーパーフレームにおいて、新たに自己の予約可能なスロットの一部を記載した暫定的なDRP予約変更要求(未確定)を示すスロット予約情報を含んだビーコンを送信する(S177)。また、受信側の無線通信装置は2番目のスーパーフレームと同一のDRP予約競合(未確定)を示すスロット予約情報を含んだビーコンを送信する(S178)。
そして、自己宛DRP予約要求を受信した受信側の無線通信装置は、要求されたスロット予約の要否を判定する(S179)。続いて、4番目のスーパーフレームのビーコン期間に送信側の無線通信装置がS177と同一のDRP予約変更要求(未確定)を含むビーコンを送信する(S180)。その後、受信側の無線通信装置は、S179において予約が可能であると判定した場合、DRP予約変更設定(未確定)を示すスロット予約情報を含むビーコンを送信する(S181)。
送信側の無線通信装置は、自己宛のDRP予約変更設定(未確定)を受信し、当該DRP予約変更設定(未確定)を確認すると(S182)、5番目のスーパーフレームのビーコン期間にDRP予約設定(確定)を示すスロット予約情報を含むビーコンを送信する(S183)。また、5番目のスーパーフレームでは、受信側の無線通信装置は4番目のスーパーフレームと同一の予約変更設定(未確定)を示すスロット予約情報を含むビーコンを送信する(S184)。
また、6番目のスーパーフレームのビーコン期間では、送信側の無線通信装置が5番目のスーパーフレームと同一のDRP予約設定(確定)を示すスロット予約情報を含むビーコンを送信する(S185)。さらに、DRP予約設定(確定)を受信した受信側の無線通信装置は、自己宛の予約が確定していることから、予約設定(確定)を示すスロット予約情報を含むビーコンを送信する(S186)。
こうして、送信側の無線通信装置と受信側の無線通信装置が送信するビーコンに含まれるスロット予約情報が予約設定(確定)になると、送信側の無線通信装置が予約の確定されたスロットで実際にデータを送信することができる(S187)。このように、スロット予約情報を利用してスロット予約を変更する方法では、6スーパーフレーム経過しないと変更後のスロットにおいてデータを送信ができなかった。
また、受信側の無線通信装置が受信可能な受信スロットを事前に報知し、送信側の無線通信装置が該受信スロットにおいて無線信号を送信する方法では、複数の無線通信装置から同時に無線信号が送信されて競合が発生する危険性があった。
また、従来からのQoSサービスの実現方法は、コンテンションベースの伝送路におけるデータ送信の優先順位を差別化して伝送路に投入する手法であったため、優先順位に応じたバッファを構成する必要があった。しかし、1つの無線通信装置には、同時に1つのアプリケーションしか接続されない場合が多く、結局、送信の優先順位をつけたところで、伝送路の混雑状況に依存して伝送遅延が発生するという問題があった。
また、WiMedia Distributed MAC仕様書に記載のPCAアクセス制御方法は、DRP予約のされていないスロットでのみ伝送が可能なため、スロットの大多数が予約されていると、PCAでデータ送信が行なえないという問題があった。
そこで、上記事情に着眼して本実施形態にかかる無線通信装置10を創作するに至った。本実施形態にかかる無線通信装置10によれば、例えば、事前に報知された受信スロットにおいて送信される無線信号の競合を抑制することができる。以下、このような本実施形態について図6〜図18を参照して詳細に説明する。
〔3〕本実施形態の詳細な説明
図6は、本実施形態にかかる無線通信装置10の構成を示した説明図である。図6に示したように、無線通信装置10は、アンテナ101と、ベースバンド受信処理部102と、受信ビーコン情報解析部103と、スーパーフレーム周期管理部104と、送信ビーコン情報生成部105と、ベースバンド送信処理部106と、受信スロット管理部107と、周囲装置スロット管理部108と、送信スロット設定部109と、優先順位アクセス制御部110と、受信データ格納部111と、優先送信装置設定部112と、入出力インターフェース113と、送信データ格納部114と、アプリケーションデータ特定部115と、を備える。
アンテナ101は、周囲の無線通信装置とのインターフェースであって、ベースバンド受信処理部102と協働して無線信号を受信する受信部として機能し、また、ベースバンド送信処理部106と協働して無線信号を送信する送信部として機能する。
ベースバンド受信処理部102は、アンテナ101により受信された無線信号(高周波ウルトラワイドバンド信号)に付加されているプリアンブルに同期して無線信号の受信処理を行う。例えば、ベースバンド受信処理部102は、アンテナ101により受信された無線信号をベースバンド信号にダウンコンバージョンしてビット列に変換する。受信データ格納部111は、ベースバンド受信処理部102により受信処理されたデータを保持する。
受信ビーコン情報解析部103は、ビーコン期間に受信されたビーコンの内容を解析する。例えば、受信ビーコン情報解析部103は、ビーコンに含まれる受信スロット情報を抽出して周囲装置スロット管理部108に供給する抽出部としての機能を有する。スーパーフレーム周期管理部104は、受信されたビーコンに基づいてスーパーフレーム周期の調整を行なう。
送信ビーコン情報生成部105は、自己のビーコンスロットにおいて送信するためのビーコンを生成する情報生成部としての機能を有する。かかる送信ビーコン情報生成部105により生成されるビーコンの具体的構成を図7〜図9を参照して説明する。
図7は、ビーコンフレームの構成例を示した説明図である。図8Aは、MACヘッダの構成例を示した説明図である。図8Bは、ビーコンパラメータの構成例を示した説明図である。図8Cは、ビーコンスロット情報エレメントの構成例を示した説明図である。図8Dは、受信スロット情報エレメントの構成例を示した説明図である。図9は、スロット予約情報エレメントの構成例を示した説明図である。
図7に示したように、ビーコンは、MACヘッダ41、ヘッダーチェックシーケンス(HCS)42、ビーコンパラメータ43、ビーコンスロット情報エレメント44、受信スロット情報エレメント45、情報エレメント(その1)46、情報エレメント(そのN)47、およびフレームチェックシーケンス(FCS)48を含む。
ビーコンには毎回固定的なパラーメータが付加されるが、具体的に固定的なパラーメータは、MACヘッダ41、HCS42、およびビーコンパラメータ43に該当する。また、ビーコンには、ビーコンペイロード情報として任意の情報エレメントが1つ以上付加される。図7に示した例では、ビーコンペイロード情報はビーコンスロット情報エレメント44と、受信スロット情報エレメント45、その他の情報エレメント(その1)46〜情報エレメント(そのN)47が該当する。なお、ここでの「N」は、ビーコンに付加されて送信される情報エレメントの数を示しており、送信ビーコンごとに異なる値をとってもよい。また、各情報エレメントは、必要に応じて追加、削除が行なわれてビーコンフレームが構成されてもよい。
MACヘッダ41は、図8Aに示したように、フレーム制御情報411、受信側の無線通信装置を識別する届け先アドレス412、送信側の無線通信装置を識別する送り元アドレス413、シーケンス番号などのシーケンス制御情報414、およびアクセス制御に必要なパラメータが記載されたアクセス制御情報415を含む。
ビーコンパラメータ43は、図8Bに示したように、無線通信装置のMACアドレス情報などが記載されたデバイス識別子431、自己が利用しているビーコンスロットを示すビーコンスロット番号432、およびデバイス固有の情報等を含んだデバイス制御情報433を含む。
ビーコンスロット情報エレメント44は、ビーコン期間に収集したビーコンの情報を記載するために利用されるものであって、図8Cに示したように、エレメント固有の識別子441、情報長442、自己が設定しているビーコン期間長さ443、前回に受信のあったビーコンスロットを全て通知するビーコンスロット情報ビットマップ444、ビーコン受信のあったデバイスアドレス(その1)445や、デバイスアドレス(その2)446、を含む。すなわち、前回のビーコン期間に受信することができた無線信号の送信元装置のアドレスが、デバイスアドレスとして記載される。
受信スロット情報エレメント45は、自己の受信スロットを周囲の無線通信装置に知らしめるために利用される。具体的には、受信スロット情報エレメント45は、図8Dに示したように、エレメント固有の識別子451、情報長452、アクセス制御パラメータ453、優先アクセス送信元デバイスアドレス454、受信スロット配置ビットマップ455を含む。
アクセス制御パラメータ453に記載される内容としては、優先的に送信を許可する時間であるQIFS(クイック・インター・フレーム・スペース)、従属して送信を許可する時間であるXIFS(クロス・インター・フレーム・スペース)、受信スロットとしての利用を解放するまでの期間であるOIFS(オープン・インター・フレーム・スペース)などがあげられる。
優先アクセス送信元デバイスアドレス454には、優先送信装置設定部112により優先送信装置として設定された無線通信装置10のアドレスが記載される。詳細については後述するが、優先アクセス送信元デバイスアドレス454に記載されたアドレスを有する無線通信装置10は、受信スロット配置ビットマップ455により示される受信スロットにおいて優先的に無線信号を送信することができる。なお、優先アクセス送信元デバイスアドレス454においてアドレスの指定がない場合には、任意の無線通信装置10が公平にアクセスする。
受信スロット配置ビットマップ455には、自己の受信スロットとして設定されているスロット位置がビットマップ形式で記述された情報である。
図7に示したビーコンフレームの構成例には含まれていないが、スロット予約情報エレメント(DRP IE)は、図9に示したように、エレメント固有の識別子461、情報長462、予約パラメータを記載した予約制御情報463、予約の相手を示す予約対象デバイスアドレス464、実際の予約スロットの配置をゾーン配置とMAS位置とを2バイトのビットマップ形式で示した、予約スロット割当て(その1)465〜予約スロット割当て(そのN)466を含む。かかるスロット予約情報を利用することで、各無線通信装置10は任意のスロットを予約し、予約したスロットにおいて無線信号を送受信することができる。
ここで、図6を参照して無線通信装置10の構成の説明に戻ると、ベースバンド送信処理部106は、送信ビーコン情報生成部105または送信データ格納部114から得られるデータの情報ビットを信号処理により送信信号に符号化する。さらに、ベースバンド送信処理部106は、符号化した送信信号を高周波のウルトラワイドバンド信号に変調し、アンテナ101から無線信号として送信させる。
受信スロット管理部107は、受信スロットを設定し、該受信スロットを管理する。受信スロット管理部107により設定された受信スロットにおいては、ベースバンド受信処理部102が受信処理を行う時間帯管理部としての機能を有する。また、受信スロット管理部107により設定された受信スロットが記載された受信スロット情報エレメントを含むビーコンを送信ビーコン情報生成部105が生成する。
周囲装置スロット管理部108は、受信ビーコン情報解析部103から周囲の無線通信装置の受信スロット情報が供給され、該周囲の無線通信装置の受信スロット情報を管理する。例えば、周囲装置スロット管理部108は、周囲のある無線通信装置の受信スロット位置を保持する。
送信スロット設定部109は、自己から無線信号を送信する際に利用する送信スロットを設定する。例えば、送信スロット設定部109は、周囲装置スロット管理部108を参照し、受信側の無線通信装置の受信スロットのいずれかを送信スロットとして設定してもよい。
優先順位アクセス制御部110は、送信スロット設定部109により設定された送信スロットにおいて、自己の優先順位に従ったアクセス制御を行なう。ここで、優先順位は、周囲の無線通信装置により設定されたり、アプリケーションデータ特定部115により特定されたデータ種別あるいは属性に応じて設定されてもよい。また、優先順位アクセス制御部110は、優先順位が高いほど、送信スロットが到来してから無線信号の送信をベースバンド送信処理部106に開始させるまでの時間を短くしてもよい。
インターフェース113は、受信データ格納部111に保持されている受信データをアプリケーション機器に受け渡したり、送信データ格納部114に保持させる送信データをアプリケーション機器から受け取ったりする。送信データ格納部114は、インターフェース113を介してアプリケーション機器から得られた送信データを保持する。
優先送信装置設定部112は、受信スロット管理部107により設定された受信スロットにおいて受信された無線信号の送信元装置を、優先送信装置として登録、設定する設定部としての機能を有する。優先送信装置設定部112は、優先送信装置に設定した無線通信装置のアドレスを送信ビーコン情報生成部105に供給し、送信ビーコン情報生成部105は優先送信装置に設定した無線通信装置のアドレスが優先アクセス送信元デバイスアドレスとして記載されたビーコンを生成することができる。
続いて、以上説明した構成を有する無線通信装置10Aおよび無線通信装置10Bによる通信の流れを説明する。
図10は、複数の無線通信装置10Aおよび10Bによる通信の流れを示したシーケンス図である。まず、送信側の無線通信装置10A、および受信側の無線通信装置10Bの双方は、ビーコンに各々の受信スロットを示す受信スロット配置ビットマップ455を含み、優先アクセス送信元デバイスアドレス454が記載されていないビーコンをビーコン期間に送信する(S201、S202)。
その後、送信するデータを受理した無線通信装置10Aの周囲装置スロット管理部108は、無線通信装置10Bから送信されたビーコンに含まれる受信スロット配置ビットマップ455を確認し、無線通信装置10Bの受信スロットを特定する(S203)。さらに、無線通信装置10Aの送信スロット管理部109は、周囲装置スロット管理部108により特定された無線通信装置10Bの受信スロットを送信スロットに設定し、該送信スロットでアンテナ101が無線信号を無線通信装置10Bに対して送信する(S204)。なお、受信スロットの設定については、優先送信元デバイスアドレスが記載されていなければ、(優先なし)として任意の通信装置からのデータを受け付ける構成としても良い。また、無線通信装置10Aは、データを受理した直前のビーコン期間で受信した受信スロット情報を格納しておけば、1スーパーフレーム周期早く無線通信装置10Bの受信スロットにおいて無線信号を送信することができる。
無線通信装置10Bの優先送信装置設定部112は、自己の受信スロットにおいて自己宛の無線信号が受信されたことにより、当該無線信号の送信元装置である無線通信装置10Aを優先送信装置に設定する(S205)。すなわち、優先送信装置設定部112は、受信スロットにおいて一度無線信号を送信した通信装置からの無線信号を優先的に受信するための設定をする。
そして、次のスーパーフレームのビーコン期間で、無線通信装置10Aは前回のスーパーフレームと同様に優先アクセス送信元デバイスアドレス454が記載されていないビーコンを送信する(S206)。一方、無線通信装置10Bは、優先アクセス送信元デバイスアドレス454に無線通信装置10Aのアドレスが記載された受信スロット情報を含むビーコンを送信する(S207)。
優先アクセス送信元デバイスアドレス454に無線通信装置10Aのアドレスが記載された受信スロット情報を含むビーコンを無線通信装置10Aが受信すると(S208)、優先順位アクセス制御部110がベースバンド送信処理部106を制御し、無線通信装置10Aの受信スロットにおいて優先的に無線信号を送信する(S209)。
このように、送信側の無線通信装置10Aは、従来の予約の設定は行なわないため、データの受理から比較的早期に送信を開始することができる。なお、無線通信装置10Aは、必要に応じ、以降のビーコン交換において、優先的設定された受信スロットにDRP予約を設定して、より強固にスロットの利用を宣言してもよい。
上記では、無線通信装置10Aが、優先送信装置に設定されると優先的に無線信号を送信すると説明した。続いて、図11を参照し、優先的に無線信号を送信する具体的方法について説明する。
図11は、優先送信装置に設定された無線通信装置による送信開始タイミングと、他の無線通信装置による送信開始タイミングの関係を示した説明図である。図11に示したように、優先送信装置は、受信側の無線通信装置の受信スロットの開始から、QIFS(第1の期間)が経過した後にデータ信号の送信を開始する。これに対し、優先送信装置に設定されておらず、受信側の無線通信装置に無線信号を送信しようとする従属送信装置は、受信側の無線通信装置の受信スロットの開始から、QIFSより長いXIFS(第2の期間)が経過した後にデータ信号の送信を開始する。
したがって、優先送信装置の方が、従属送信装置より優先的に受信側の無線通信装置の受信スロットにおいてデータ信号を送信することができる。
一方、受信側の無線通信装置の受信スロットにおいて送信を事前に予約している送信予約装置は、受信側の無線通信装置の受信スロットの開始から、QIFSが経過する前にデータ信号の送信を開始する。さらに、伝送路を有効活用するために、受信側の無線通信装置の受信スロットの開始からOIFSが経過した後は、受信側の無線通信装置の受信スロットにおいて任意の無線通信装置が任意のデータ送信を行えるようにしてもよい。
なお、図11においては各装置が受信スロットの開始から所定期間が経過するとデータ信号の送信を開始する場合を説明したが、図12および図13に示すように、送信要求信号の一例であるRTS(Request To Send)を送信してもよい。
図12は、優先送信装置によるアクセス制御例を示した説明図である。図12に示すように、優先送信装置は、受信側の無線通信装置(受信先装置)の受信スロット開始からQIFSが経過すると、受信側の無線通信装置へRTS52を送信する。そして、RTS52を受信した受信側の無線通信装置は、優先送信装置へ応答信号の一例であるCTS54(Clear To Send)を送信する。
優先送信装置は、受信側の無線通信装置からCTS54を受信すると、データ信号56の送信を開始する。そして、受信側の無線通信装置は、データ信号56を正常に受信すると、確認信号の一例であるACK58を優先送信装置へ送信し、当該受信スロットにおける無線通信が終了する。
図13は、従属送信装置によるアクセス制御例を示した説明図である。図13に示すように、従属送信装置は、受信側の無線通信装置の受信スロット開始からXIFSが経過すると、受信側の無線通信装置へRTS62を送信する。そして、RTS62を受信した受信側の無線通信装置は、従属送信装置へCTS64を送信する。
従属送信装置は、受信側の無線通信装置からCTS64を受信すると、データ信号66の送信を開始する。そして、受信側の無線通信装置は、データ信号66を正常に受信すると、ACK68を従属送信装置へ送信し、当該受信スロットにおける無線通信が終了する。
このように、データ信号の送信に先立ってRTSを送信することにより、優先送信装置や従属送信装置などの無線通信装置10から見ていわゆる隠れ端末が存在した場合に、該隠れ端末とのデータ信号の衝突を防止することができる。
次に、図14および図15を参照し、本実施形態による送信多重例について説明する。
図14は、無線通信装置のある配置例を示した説明図である。図15は、図14に示した配置例において行なわれるアクセス制御の様子を示した説明図である。
図14に示した例では、優先送信装置#1の電波到達範囲16に優先送信装置#2および受信側の無線通信装置#1が含まれ、優先送信装置#2の電波到達範囲17に優先送信装置#1および受信側の無線通信装置#2が含まれている。また、優先送信装置#1は、受信側の無線通信装置#1により特定の受信スロットにおける優先送信装置に設定されており、優先送信装置#2は、受信側の無線通信装置#2により優先送信装置#1と同一の特定の受信スロットにおける優先送信装置に設定されているものとする。
この場合、優先送信装置#1および優先送信装置#2は同時期に無線信号を送信するが、受信側の無線通信装置#1および#2において無線信号が競合しなければ、図15に示しように特に問題は生じないと考えられる。
図15に示したように、優先送信装置#1が受信側の無線通信装置#1の受信スロットからQIFSが経過するとRTS72を受信側の無線通信装置#1へ送信し、同時期に優先送信装置#2が受信側の無線通信装置#2へRTS82を送信する。続いて、RTS72を受信した受信側の無線通信装置#1がCTS74を優先送信装置#1へ送信し、同時期に、RTS82を受信した受信側の無線通信装置#2もCTS84を優先送信装置#2へ送信する。
そして、CTS74を受信した優先送信装置#1はデータ信号76の受信側の無線通信装置#1への送信を開始し、同時期に、CTS84を受信した優先送信装置#2もデータ信号86の受信側の無線通信装置#2への送信を開始する。ここで、データ信号76は受信側の無線通信装置#2へ到達せず、データ信号86は受信側の無線通信装置#1へ到達しないため、受信側の無線通信装置#1はデータ信号76を、受信側の無線通信装置#2はデータ信号86を正常に受信できる。受信側の無線通信装置#1は、データ信号76を正常に受信するとACK78を優先送信装置#1へ送信し、受信側の無線通信装置#2は、データ信号86を正常に受信するとACK88を優先送信装置#2へ送信する。
なお、上記では優先送信装置が一律のQIFSに基づいて無線信号の送信を開始する例を説明したが、優先送信装置は、図16に示すように、接続されるアプリケーション機器の属性に応じて送信開始タイミングを変化させてもよい。
図16は、接続されるアプリケーションと送信開始タイミングの関係を示した説明図である。図16に示したように、音声アプリケーション機器が接続されている音声アプリ通信装置は、優先順位第1位でオーディオ・インタ・フレーム・スペース(AIFS)経過後にアクセス制御が可能となる。すなわち、音声アプリ通信装置では、受信側の無線通信装置の受信スロットの開始から、AIFS経過後にRTSを送信することができる。
また、画像アプリケーション機器が接続されている画像アプリ通信装置は、優先順位第2位でビデオ・インタ・フレーム・スペース(VIFS)経過後にアクセス制御が可能となる。すなわち、画像アプリ通信装置では、受信側の無線通信装置の受信スロットの開始から、VIFS経過後にRTSを送信することができる。
また、ベストエフォートアプリケーション機器が接続されているベストエフォート通信装置は、優先順位第3位でベストエフォート・インタ・フレーム・スペース(BIFS)経過後にアクセス制御が可能となる。すなわち、ベストエフォート通信装置は、受信側の無線通信装置の受信スロットの開始から、BIFS経過後にRTSを送信することができる。
そして、背景(バックグランド)アプリケーション機器が接続される背景アプリ通信装置は、優先順位第4位でバックグランド・インタ・フレーム・スペース(GIFS)経過後にアクセス制御が可能となる。すなわち、背景アプリ通信装置は、受信側の無線通信装置の受信スロットの開始から、GIFS経過後にRTSを送信することができる。
なお、図16においては4通りの優先順位について示したが、アプリケーションによってさらに優先順位を細分化し、5以上の種類の優先順位を定義してもよい。または、図16に示したうちのいずれかの優先順位のみを利用してもよい。また、自律分散的なアドホックネットワークにおいては、RTS送信後、CTS返送まで伝送路の利用が確定しない。したがって、各優先順位に基づくRTSの送信開始タイミングには、図16に示したVIFSとBIFSの間隔に相当する間隔を設けてもよい。
次に、図17を参照し、受信側の無線通信装置が受信スロットを変更する場合について説明する。
図17は、受信スロットが変更される流れを示したシーケンス図である。図17に示したように、送信側の無線通信装置10Aおよび受信側の無線通信装置10Bは、ビーコンに各々の受信スロットを示す受信スロット配置ビットマップ455を含むビーコンをビーコン期間に送信する(S211、S212)。ここで、受信側の無線通信装置10Bが送信するビーコンには、優先アクセス送信元デバイスアドレス454として無線通信装置10Aのアドレスが記載されている。
そして、無線通信装置10Aが無線通信装置10Bの受信スロットにおいて優先的に無線信号を送信する(S213)。ここで、無線通信装置10Bの受信スロットにおいて競合が発生すると、無線通信装置10Bの受信スロット管理部107は受信スロットを変更する(S214)。
続いて、無線通信装置10Aは、次のスーパーフレームのビーコン期間に、前回のスーパーフレームと同様の受信スロット配置ビットマップ455を含むビーコンをビーコン期間に送信する(S215)。一方、無線通信装置10Bは、変更後の受信スロットを示す受信スロット配置ビットマップ455を含むビーコンを送信する(S216)。ここで、図17においては、S216において送信されるビーコンの優先アクセス送信元アドレス454に無線通信装置10Aのアドレスが記載されない例を示しているが、継続して優先アクセス送信元アドレス454に無線通信装置10Aのアドレスが記載されてもよい。
そして、変更後の受信スロットを示す受信スロット配置ビットマップ455を含むビーコンを無線通信装置10Aが受信すると、周囲装置スロット管理部108が無線通信装置10Bの受信スロットを更新し、送信スロット設定部109が変更後の受信スロットを無線通信装置10Aからの送信スロットとして設定する(S217)。その後、無線通信装置10Aは、変更後の受信スロットにおいて無線信号を送信する(S218)。
無線通信装置10Bの優先送信装置設定部112は、自己の受信スロットにおいて自己宛の無線信号が受信されたことにより、当該無線信号の送信元装置である無線通信装置10Aを優先送信装置に設定する(S219)。すなわち、優先送信装置設定部112は、受信スロットにおいて一度無線信号を送信した通信装置からの無線信号を優先的に受信するための設定をする。
そして、次のスーパーフレームのビーコン期間で、無線通信装置10Aは前回のスーパーフレームと同様に優先アクセス送信元デバイスアドレス454が記載されていないビーコンを送信する(S220)。一方、無線通信装置10Bは、優先アクセス送信元デバイスアドレス454に無線通信装置10Aのアドレスが記載された受信スロット情報を含むビーコンを送信する(S221)。
優先アクセス送信元デバイスアドレス454に無線通信装置10Aのアドレスが記載された受信スロット情報を含むビーコンを無線通信装置10Aが受信すると(S222)、優先順位アクセス制御部110がベースバンド送信処理部106を制御し、無線通信装置10Aの受信スロットにおいて優先的に無線信号を送信する(S223)。
このように、本実施形態にかかる受信スロットを用いたアクセス制御によれば、無線通信装置10Aによる無線信号の送信が中断されるスーパーフレームが存在しないため、送信側である無線通信装置10Aが無線信号を継続的に送信することができる。
次に、図18を参照し、本実施形態にかかる無線通信装置10において実行される無線通信方法について説明する。
図18は、本実施形態にかかる無線通信装置10において実行される無線通信方法の流れを示したフローチャートである。図18においては、所定のネットワーク形成処理が行なわれていて、スーパーフレーム周期が設定されていて、自己のビーコンスロットも設定されていることを前提にしている。
図18に示したように、無線通信装置10の受信スロット管理部107は、自己の受信スロット位置について初期設定をしておく(S501)。そして、無線通信装置10は、ビーコン期間内であれば(S502)、自己のビーコンスロットの到来時に(S503)、設定した自己の受信スロットを示す受信スロット配置ビットマップ455をビーコンに記載し(S504)、該ビーコンを送信する(S505)。
また、無線通信装置10は、ビーコン期間内の自己のビーコンスロット以外では、ビーコン受信を行ない(S506)、ビーコン受信時に(S507)、ビーコンの送信元装置の受信スロット情報の記載があれば(S508)、受信スロット情報を周囲装置スロット管理部108に格納する(S509)。さらに、優先送信元に自己のアドレスが記載されていれば(S510)、優先順位アクセス制御部110が優先的なアクセス制御のインターフレーム間隔(QIFS)の設定を行なう(S511)。
また、自己の受信スロット位置と競合があれば、受信スロット管理部107は受信スロットの変更を行なう(S513)。なお、相手の受信スロット情報に優先送信元が設定されていれば、自己の受信スロットの変更を行なう構成としておくと、無用な受信スロットの変更を避けることができる。
一方、無線通信装置10は、ビーコン期間外で、入出力インターフェース113から送信データを受理し(S514)、接続されるアプリケーション機器のパラメータからそのデータのアプリケーション情報が判明した場合に(S515)、該当するアプリケーションごとの優先順位を設定する(S516)。なお、アプリケーションが判明しない場合や、優先順位の設定を行なわない場合には、当該設定を行なわなくてもよい。
そして、無線通信装置10は、受理した送信データを送信データ格納部114(場合によっては優先順位に応じたバッファ)に格納する(S517)。さらに、無線通信装置10は、受信側の無線通信装置の情報を抽出し(S518)、受信側の無線通信装置の受信スロットが周囲装置スロット管理部108において管理されていれば(S519)、送信スロットを受信側の無線通信装置の受信スロットに設定する(S520)。ここで、優先順位アクセス制御部110は、無線通信装置10が優先送信装置に設定されていない場合(S521)、従属的なアクセス制御のインターフレーム間隔(XIFS)の設定を行なう(S522)。なお、受信側の無線通信装置の受信スロットが周囲装置スロット管理部108において管理されていなければ、無線通信装置10は、一般的なPCAによる任意のタイミングでの送信設定を行なう(S523)。
他方、ビーコン期間であって、入出力インターフェース113から送信データを受理していない間であって、自己の受信スロットの期間であれば(S524)、ベースバンド受信処理部102が受信処理を行う(S525)。ここで、ベースバンド受信処理部102により自己宛データが受信されれば(S526)、自己宛データを受信データ格納部111に格納する(S527)とともに、優先送信装置設定部112が送信元装置を優先送信装置に設定してもよい(S528)。さらに、受信スロット管理部107は、自己の受信スロットの数を追加してもよい(S529)。
また、優先送信装置設定部112は、優先送信装置からの優先的な送信がなければ(S530)、優先送信装置の設定を解除する(S531)。また、優先送信装置から他宛のDRP予約通信のデータを受信した場合(S532)、受信スロット管理部107は自己の受信スロット位置を変更する(S533)。なお、当該受信動作は、受信スロットが続く限り、S524に戻って繰り返される。
そして、無線通信装置10は、自己が送信を設定した送信スロットが到来した場合には(S534)、優先順位に従って指定されたインターフレーム間隔の待ち時間を設定し(S535)、待ち時間の満了までに他の信号を検出しなければ(S536)、アクセス権を獲得してデータを送信することができる(S537)。
また、無線通信装置10は、他の信号を検出した場合でも、検出した通信が終了した後(S538)、送信予定のデータ長を獲得し(S539)、さらにその時間と該当するスロットの残り時間を比較して、残り時間があれば(S540)、S537に移行しそのデータを送信することができるが、残り時間がなければそのスロットでの送信は行なわれない。これら各ブロックでの処理の後、再びS502に戻って一連の動作が繰り返される。
〔4〕まとめ
以上説明したように、本実施形態においては、無線通信装置10の受信スロットに無線信号を送信した他の無線通信装置が、優先送信装置設定部112により優先送信装置に設定される。したがって、上記他の無線通信装置は、以降の無線通信装置10の受信スロットにおいて周囲の無線通信装置に比べて優先的に無線信号を送信することができる。すなわち、新規に送信する無線通信装置からの無線信号より、既に送信済みの無線通信装置からの無線信号が優先される。その結果、上記他の無線通信装置および周囲の無線通信装置が送信する無線信号の競合を抑制することができる。
また、本実施形態によれば、無線通信装置10の受信スロットにおいて、送信側の無線通信装置が、格納している送信データの送信優先順位に基づきデータ送信を行ない、データの優先順位に基づいたアクセス制御を実現できる。また、本実施形態によれば、特段の予約ネゴシエーションを行なうことなく、連続データを安定して受信、あるいは送信することができる。
また、無線通信装置10の優先送信装置設定部112は、優先送信装置からの送信がなくなれば、優先送信装置の設定を解除するため、再び任意の無線通信装置に無線通信装置10の受信スロットを利用する機会が与えられる。
さらに、受信スロット管理部107は、必要最低限の受信スロットのみを設定するだけでよいため、自己宛の通信需要がない場合には、より少ない受信スロットの設定を行い、不要に予約されるスロット数を抑制することができる。
受信側の無線通信装置の受信スロットの競合が生じた場合には、受信側の無線通信装置が受信スロット位置を変更することで、容易に競合を解消することができる。特に、受信側の無線通信装置は、受信側の無線通信装置で競合しないスロットを利用して送信された無線信号を、送信側の無線通信装置で競合が生じているか否かにかかわらず正常に受信することができる。このため、ある無線通信装置が送信する無線信号が他の無線通信装置の受信に干渉を与える場合を抑制し、無線伝送路を空間的に無駄なく多重化して利用することができる。
また、本実施形態にかかる無線通信装置10は受信スロットの設定を継続的に行なうことで、従来からのスロット予約のように予約するスロット位置をお互いに交渉する必要がなくなり、送信データの受領後、迅速にデータ送信を行うことができる。また、本実施形態にかかる無線通信装置10は、隣接する無線通信装置との間で受信スロットの衝突が発生しても、その受信スロットで無線信号が送信されなければ、衝突が発生しないという効果が得られる。また、本実施形態にかかる無線通信装置10は、衝突が発生した受信スロットを、周囲で利用が設定されていないスロットに変更することで、より安定的にデータ受信を行なうことができる。さらに、本実施形態にかかる無線通信装置10は、既存のスロット予約が行なわれていた場合には、その予約伝送動作を優先することで、例えば無線通信装置10の移動によって一時的にスロットの競合が発生しても、既存のスロット予約に従属して共存することができる。
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、本明細書の無線通信装置10の処理における各ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、無線通信装置の処理における各ステップは、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)を含んでもよい。
また、無線通信装置10に内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアを、上述した無線通信装置10の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。また、図6の機能ブロック図で示したそれぞれの機能ブロックをハードウェアで構成することで、一連の処理をハードウェアで実現することもできる。