JP5109059B2 - 複雑な動的プロセスの運転方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は複雑なプロセスの運転(pilotaage)方法および装置に関するものである。
本発明はいわゆる「CIM」(Computer Integrated Manufacturing、計算機統合生産)モデルに従った数値制御・命令を有するプロセスに適用される。
【0002】
【従来の技術】
本発明方法および装置は下記(技術)を統合(integrent)する:
(1)数値データおよびシンボリックデータの入手と性格付け(qualification)、
(2)数値計算、(3)信号の処理およびフォームの認識、(4)人工知能(特に空間的、時間的に不確実な1次予測論理規則、対象物および履歴の知識の表現法)とそれに関連した推理法、
(5)連続および/または非連続システムの時間的および空間的な自動制御、
(6)リアルタイム系制御アルゴリズム。
【0003】
プロセスの状態とその変化の記述に用いられるものは下記の定義を有する:
(1)プロセスとは材料、エネルギーまたは情報の入力値を出力値へ変換する系である(製鉄所の高炉やセメント工業の回転炉等の系では、プロセスで材料またはエネルギーが変換される)。
(2)この変換系は各現象(生産目的に対応した合目的性に従って関連付けされた現象)の集合体に従って、不完全な環境下で、実施される。
【0004】
(3)プロセスの生産目的物は特定の入力値および特定の出力値に対する制約(contraintes)の尊重(respect)で表すことができる。制約は目標値または目標範囲で表すことができる。入力値に関する目標値はプロセスを運転する操作者が尊重しなければならない例えばプロセスのアクチュエータの位置であり、高炉の場合には石炭の最小・最大消費率、酸素の最小・最大供給量である。一方、出力に関する目標値は運転操作者が満足しなければならない出力値に対する制約を表し、例えば鋳造温度範囲、日産最小鋳造量、鋳鉄またはスラグ中のSi含有量である。
(4)定義が不明確、不確実、不十分である点で、環境は不完全にしか性格付けされない。この環境はプロセスの生産可能性を制限する。
【0005】
(5)プロセスの挙動(comprtement)モデルは知識の有機的集り(すなわち知識の「集合」)であり、これはこのシステムの知覚量(例えばこのモデルのパラメータ値)の関数で系の状態を予測するのに利用される。
(6)運転モデルに介入する量(grandeur)、例えば状態の変数X、入力の変数Uおよび出力の変数Yが時間的関係によって関係付けられている場合、そのプロセスは動的である。
(7)量(grandeur)の挙動はこの量の値xと時間tとの関係で定義でき、従って、x(t)で表わされる。
(8)システムの自動制御の分野で定義されている一般的な規則では、観測時間tでもシステムの状態は各知覚量に関連付けされた値の対(X(t)、X(t))の集合で定義できる(ここで、Xは量Xの時間tに対する導関数である)。従って、プロセスは下記〔数1〕の関係式で記述できる:
【0006】
【数1】
Figure 0005109059
【0007】
(ここで、θはパラメータを表し、tは連続する時間的変数を表し、f()およびh()はプロセスを記述する関数を表す)。
(9)時間[tmin,tmax]におけるプロセスの状態の軌跡は一連の点(X(t)、X(t))で定義される(ここで、tの値はこの時間間隔に関係する)。
(10)下記のいずれかの場合、動的プロセスは複雑である:
(a)挙動の数学モデルまたは無効な挙動の数学モデルがない場合
(b)挙動の物理モデルがない場合(例えば科学的知識が不十分なため)または無効な挙動の物理モデルが利用可能な数値計算アルゴリズムを全く与えない場合(例えば不可逆モデル、非計算機モデル、必要な応答時間に対して致命的欠陥計算時間を導くモデル、カオスモデル)。
【0008】
従って、複雑な動的プロセスの場合には一般に、知識とプロセスの挙動の観測から導かれる鑑定(expertise)とを合せたシンボリックモデルが用いられる。一般に、このような挙動モデルは下記の事項に基ずく対象プロセスの運転の専門家が有する知識から得られる:
(a)上記知識を表現できる論理形式主義(formalism)
(b)上記知識を入手して表現するための方法論的ツール
(c)上記論理形式主義によって表現される問題の解決策を自動的に見付けるための問題解決法。
【0009】
論理形式主義としては下記が挙げられる:
(a)対象物、クラス、メタクラスの形の記述的な知識の表現
(b)一次予測論理から演繹する知識の表現
(c)物象化された時間論理の形の時間的知識の表現
(d)ディスクリートな事象のグラフの形の時空的な知識の表現
【0010】
問題解決法としては下記が挙げられる:
(a)特性および挙動の継承(heritage)による推理、
(b)一次予測論理、例えばいわゆる「Ponen方式」による推理、
(c)事象による推理の制御、例えばバイナリー事象ツリーのコンパイル、
(d)時間的制約の管理、
(e)信号の処理、例えば濾過、時間的および/または空間的セグメント化、パラメータによる識別、
(f)フォームの認識、例えば多重線形回帰。
上記の知識を自動的に利用できる方法論的ツールとしては知識に基づくシステムの概念の方法論、例えばOpenKads(登録商標)とよばれる論理積や、一般的知識に基づく方法論、例えばKADS等が挙げられる。
【0011】
挙動モデルの動的キャラクタは時間的制約を統合する形式主義を用いる、例えば履歴および事象の概念を一次予測論理に加えることで得られる。このタイプの形式主義の例としては「DEVS」(Descrete Event System Specification)とよばれるものが周知である。これは入力U、状態X、出力Y、内部遷移関数X-> X、外部遷移関数U×X-> X、出力関数X× U-> Yおよび状態寿命関数によってディスクリート事象とよばれるものを定義する。
【0012】
図1はディスクリートな事象E1〜E4における入力U−出力Yの関係の抽象概念を示している。
問題の解決法は、要するに、複雑なプロセスを運転するために専門家が用いる知識の開発・利用を自動化でき、しかもこの知識を複雑な動的プロセスの挙動モデルに翻訳する技術的および方法論的ツールを提供する。
複雑な動的プロセスの例としては高炉、製鉄用電気炉、ガラス生産炉、セメント生産炉、圧延設備が挙げられる。
【0013】
ファジイ論理は予め割り当てられた(または実績の)生産目的値を目指してプロセスを運転するようにこのタイプの複雑な動的プロセスモデルを利用する従来の方法である。このタイプのモデルに適用されるファジイ論理ではこのモデルの入力の1つまたは複数の「シンボリック値」に対するプロセスの状態の帰属率を評価し、それに対応する出力の「シンボリック値」を演繹し、この出力値を対応する帰属率の関数として加重してシステム状態を計算する。この方法を用いることによってこのモデルの基礎となる各推理のブランチ間の遷移部がより進歩する。
しかし、この方法では例外的または長期的に極めて重要な結果、例えば破局的なまたは逆に極めて有益な結果をもたらすようなプロセスの挙動のいくつかの仮説を無視する。従って、まれではあるが極めて重要な現象を見逃すことになる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は複雑な動的プロセスのモデルを用いた場合の上記の問題を防止することにある。
本発明の目的は、不完全な環境下でプロセスの生産目的値に合わせてプロセスが運転されるように複雑な動的プロセスモデルを運転できるようにする方法と装置を提供することにある。
【0015】
本発明が追求する目的は、複雑な動的プロセスの状態の予測に基づく知覚現象およびその変化に従って以下のように変わる:
(1)直面する問題を解明することによってプロセスの現在の挙動に「問題がある」キャラクタについて警告する。
(2)追求する目的に対してプロセスの「出力」が向上または低下する大体の傾向を報告することによってプロセスの「性能」を評価する。
(3)「問題がある」挙動または不十分な性能の訂正動作の開始を提案する。この動作の開始は例えばアクチュエータの調整値の変更および/またはプロセスの「入力」の修正に対応する。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、プロセスの環境から出された情報によってプロセスを運転し、生産目的値の範囲内にプロセスを維持または回復するのを助ける情報をプロセスの操作者へ送る、プロセスの運転方法であって、
(1)プロセス状態の少なくとも1つの知覚量(des grandeurs de perception)の変化基準(criteres devolution)に基づいて、日付および/または位置の少なくとも1つの変数でプロセス現象(phenomenes-processus)を予め定義し、
(2)情報を定期的に入手し、得られた情報からプロセス現象の定義に用いる知覚量の値を作り、
(3)検出した一連のプロセス現象によってプロセスの状態と変化を記述し、
(4)上記の検出したプロセス現象に関する情報を操作者に送る、
ようになっている運転方法において、
i) 検出された各プロセス現象を別のプロセス現象によって記述された固有のコンテキスト(contexte)に基いて判断する中間段階を含み、
ii) 上記コンテキストで生産目的値の範囲内にプロセスを維持または回復するのに必要かつ都合が良いという判断が確立されたときにのみ、判断されたプロセス現象に関する情報を操作者に送る、
ことを特徴とする方法を提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明は「都合の良い」メッセージを判断し、それだけ送る、それによって操作者の情報が飽和するのを防ぐことができ、プロセスの運転でその都合の良い瞬間の最も関連する情報に操作者の注意を集中させることができる。
量の変化は各プロセス現象の定義に基づいて統合され、プロセスの変化および運転のコンテキストを記述するのに用いられる。この量に次元が対応する状態空間とよばれる空間では、プロセスの全体的な変化またはこの量の変化によって生じる運転の全体的なコンテキストを各次元における投影が各量の変化に対応する軌跡によって表すことができる。
【0018】
基準が量の値に関する場合は、基準は状態空間内の軌跡の「タイプ」を暗黙的に定義している。
本発明は下記の特徴を単独または組み合わせて有することができる:
(1) プロセスの状態とその変化の記述および/またはプロセスの運転のコンテキストの記述が事象の履歴からなり、各事象は日付および/または位置に依存し、各事象の定義は少なくとも1つの知覚量の変化の1つまたは複数の基準の定義を統合したものであり、各履歴は日付および/または位置に基いて配列された一連の事象で形成される。
この追加の特徴によってプロセスの状態および変化および/またはプロセスのコンテキストの記述が完全になる。この特徴は非常に異なる事象および/または長期的な変化または非常に離れた位置での変化を関連させるのに有利な手段である。
【0019】
(2) プロセス現象の定義において事象の履歴のタイプの定義も統合される。
このより完全な定義によって長期的および/または非常に離れた位置でのプロセスの変化を評価することができ、プロセスの操作者はこれらの変化を予測しながらプロセスを操作することができる。この定義はコンテキストを記述するのに用いられ、判断を向上させ、操作者に送る情報をより良く選択することができる。以下、この事象の履歴のタイプを「信号現象(phenomene-signaux)」とよぶ。
【0020】
(3)プロセス現象および/または事象の定義で日付および/または位置の変数に対する少なくとも1つの量の一次導関数(この導関数は上記変数の関数である)の変化の1つまたは複数の基準の定義も統合される。
この量の一次導関数の変化が本発明のこの追加の特徴に固有の基準に従って所定のプロセス現象および/または事象の定義に統合される場合は、各量の変化は各量に固有の空間内の軌跡によって表すことができ、この空間は2つの次元がこの量とその一次導関数に対応しており、「位相空間」とよばれる。
【0021】
本発明では、プロセスの状態および変化およびその運転のコンテキストを記述する一連の検出されたプロセス現象が状態空間内の軌跡と位相空間内の軌跡の形の2つの表現を統合することができる。
従って、このより完全なプロセス現象の定義によって例えば状態空間内では同じ軌跡を示すが、所定の位相空間内では異なる軌跡を示す2つの現象を区別することができるので、プロセスの状態および変化の記述は大幅に向上する。
本発明のこの追加の特徴をコンテキストの記述に用いた場合には判断をさらに向上させることができる。
【0022】
(4)量の値(必要な場合にはその一次導関数の値)が日付および/または位置の変数に従って配列され、一つの「信号」を生成し、この信号から計算されたパラメータに依存する変化の基準に対して「分析目盛(echelle danalyse)」とよばれる変数の値を所定間隔で観測するだけの場合に、各基準の定義は各パラメータから計算された値で分類され、基準はパラメータの値の範囲の別の所定のサブドメイン(sous-domaine)内にあり、各サブドメインは上限および下限で定義される。
【0023】
パラメータが「識別(identite)された」場合および分析目盛が変数の値にのみ関する場合は、この基準の定義は状態空間の分割(量の値の各サブドメインごとの下限および上限)および位相空間の分割(量の値の各サブドメインごとおよび量の一次導関数の値の各サブドメインごとの下限および上限)に対応する。
【0024】
(5)少なくともいくつかの基準がプロセスの生産目的値の関数として決定され、情報の入手度に生産目的値が再評価され、従って基準が作られる。
本発明では入手の各サイクルで、例えば知覚量ごとに「目標値(visees)」を作り、生産目的値を再評価し、次いで現象を定義する基準を作る。このような本発明の運転方法はプロセスの利用条件またはコンテキストの変更およびプロセス自体の変化、例えば磨耗および/または老化による変化に自動的に適合する。
【0025】
すなわち、本発明の運転方法は環境の変化に自律して反応することができるので「反応的」運転方法である。
(6)基準を生産目的値の関数で求めるために生産目的値の関数でその境界を変える。
(7)本発明の他の対象は、高炉、セメント工業の炉、ガラス生産炉またはスラブ生産炉のような加熱炉、金属の連続鋳造設備および金属ストリップの圧延設備または連続被覆設備からなる群の中から選択される複雑な動的プロセスの運転での本発明方法の使用にある。
以下、添付図面を参照して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【0026】
【実施例】
以下、複雑なプロセスと、運転設備と、この設備の一般的な使用方法の例を説明する。
本発明の運転システムはセンサーすなわちプロセス状態の評価に必要な情報を捕捉する手段を備える。高炉の場合は例えば下記(1)〜(7)に関する情報である:
(1)鋳造温度、高炉口および炉のガス温度、火炎温度、内壁、特にステーブ、端縁部および耐火物の温度
(2)高炉口のガスの化学組成、特にCO、CO2、H2、O2の含有率、鋳鉄の化学組成、特にS、P、Si、Mn、Znの含有率、スラグの化学組成、特にFe、Mn、S、MgOの含有率、炉に入れる材料の化学組成、特にK2Oおよび第二鉄の含有率
【0027】
(3)全窒素供給量、ノズルでの窒素供給量、酸素供給量、熱風の温度および供給量、微粉炭の供給量および冷却水の供給量
(4)炉に入れる材料、特にコークスおよび鉱物の重量および排出材料、特に鋳鉄およびスラグの重量
(5)高炉口のガス速度、充填高さ、充填材料、特に練炭の粒度分布
(6)内壁の圧力、内壁の圧力差
(7)鋳造時間、スラグなしの鋳造時間
【0028】
この運転系はプロセスの状態を変化させるために調整値を変更させるアクチュエータを備えている。
高炉の場合は特に下記のアクチュエータを挙げることができる:
(1)コークス比および微粉炭の比を変更できるアクチュエータ
(2)全酸素供給量を変更できるアクチュエータ
(3)熱風の温度および含水率を変更できるアクチュエータ
(4)高炉の口の背圧を変更できるアクチュエータ
(5)充填材料の量、炉に入れる材料の化学組成およびこれら材料の動径分布を変更できるアクチュエータ
(6)充填サイクルで炉に入れられる鋳鉄の重量に依存する層の厚さを変更できるアクチュエータ。
【0029】
本発明の運転方法は下記の2つの一般的な基本機能を定期的かつ常時結び付ける:
(1)プロセスの運転状態をプロセスの「出力」、特にセンサーから出る情報によって知覚すなわち評価する機能
(2) 「入力」の調整適正値を決定する機能すなわちプロセスのアクチュエータをプロセスの知覚を関数としてプロセスの生産目的値を満足させるように作動させる機能。生産目的値を満足させるということは、目標値が全て満足されたときに目標値内にプロセスを維持するか、少なくとも1つの目標値が満足されないときに目標値内にプロセスを回復するかである。
【0030】
本発明の運転装置は「反応式合理的エージェント(dagent rationnel reactif)」と性格付けることができる。
「エージェント」とは下記(1)〜(3)を有する自律的装置を意味する:
(1)プロセスとその環境についての情報を入手可能な情報チャネルの集合体の形に編成された「入力」
(2)エージェントを環境に対して作動させる動作の集合体の形で編成された「出力」
(3)環境によって決定される外部目的値(buts externes)の集合体の形で編成されたプロセスに割り当てられた生産目的値。
【0031】
エージェントはこの動作が外部目的の1つを満足できることを識別した瞬間から1つの動作を有効に選択する場合に「合理的」と性格付けられる。また、合理的エージェントはこれらの外部目的値を満足しない場合はいずれの動作も選択しない。
この合理的なエージェントに合理性の原理を適用させる手段はプロセスの運転に関する知識群(corpus de connaissances)とよばれるものの中にある。この手段(本明細書では知識群とよぶ)が情報チャネル、外部目的値および動作間のリンクを構成する。
【0032】
合理的なエージェントは環境の変化に自律的に反応することができるときに「反応式」と性格付けられる。
本発明の運転装置の実施例では、
(1)情報チャネルは環境によってアドレスされた「メッセージ」を伝送する。
(2)外部目的値は「目標値」で変化し、各目標値はプロセスの出力値の変化範囲を定義する値の巾で定義される。
(3)動作は環境にアドレスされるメッセージを送信することにある。これらのメッセージは生産目標値に対する現在の状況に関する問題の記述(場合によってはこれらの問題を解決するために続行すべき運転についての助言)を含む。これらのメッセージには問題の重要性および忠告の妥当性を環境に「納得させる」ために必要且つ十分な情報が伴う。
【0033】
環境にアドレスされるこれらのメッセージは特に、
(1)プロセス状態(場合によってはプロセスの変化)に「問題がある」キャラクタを記述し、
(2)可能かつ必要な場合に、調整適正値を変更すべきアクチュエータと新しい調整適正値とを表示し、
(3)プロセスの操作者の要望に応じて、プロセスの状態、直面する問題、行うべき調整についての説明をする。
これらのメッセージの最適な受け手はプロセスの運転操作者である。この操作者は自動制御の「材料」の操作者または「個人」すなわち人間の操作者である。
【0034】
メッセージの言語および構文に関しては、下記の点を確認しておく必要がある:
(1)環境から出されるメッセージは一般に物理量を表す実数で形成される。
(2)次に、シンボリック空間で推理が行われる。
(3)次いで、環境に向けて出されるメッセージは受け手に合った言語、すなわち受け手が人間である場合はグラフ付きフレーズのような自然言語、シンボリック言語および/または現象学言語で作成される。
従って、本発明装置は数値−シンボリック変換を行うことができる。
【0035】
本発明の運転装置はプロセスの生産目標値を満足するように合わされる。すなわち、
(1)全ての目標値が満足されたときは生産目標値内にプロセスを維持するのを助け、
(2)目標値の少なくとも1つしか満足しないときは生産目標値内にプロセスを回復するのを助ける。
【0036】
本発明運転装置は同期運転または非同期運転でき、
(1)環境からアドレスされるメッセージを定期的に入手することで情報を入手する場合は同期運転。
(2)環境へアドレスするメッセージを送信する際は、これらのメッセージが目標値内にプロセスを維持または回復するのに必要であるときにしかアドレスされないので非同期運転。
【0037】
メッセージは必要なときにしかアドレスされないので、操作者の情報は従来法場合に比べて飽和しなくなり、メッセージの中で最も重要な情報に操作者の注意を集中させることができるのが有利である。また、本発明方法は都合の良い時間にメッセージを送信し、しかも、(その方が都合の良い場合は)できるだけ早く送信するようにする。
従って、情報の入手サイクルでは動作のメッセージは全く送信されないことが多い。
【0038】
本発明方法は主要な4つのサイクル段階の中の下記の少なくとも2つの最初の段階を含む:
(1)プロセスの状態およびその変化を情報、特にセンサーから送信された情報によって知覚すなわち評価する段階、
(2)プロセス運転のコンテキストの関数で知覚を重大度の点で判断または性格付けし、行われた判断に従ってメッセージを送信する段階。すなわち生産目的値を満足できない場合はプロセスの状態または変化に「問題がある」と判断され、生産目標値内にプロセスを維持または回復するためにアクチュエータの調整適正値を修正するのが適当である場合は、生産目的値に関するメッセージが送信される。
【0039】
(3)補正段階:この機能は必要に応じて、生産目的値を満足または維持するためにアクチュエータの調整適正値の必要な修正を定量化するものであり、これらの修正を時間的に計画化するものである。
(4)協働段階:この機能はプロセスの操作者に向けた通信およびインターフェースを保証するものである。本発明の装置から送信されるメッセージを受け手である運転操作者およびプロセスの運転のコンテキストに応じて適合させる。
【0040】
「知覚」機能のみがセンサーから伝送された情報と同期化される。他の機能は非同期で作動する。「判断」機能は「知覚」機能が「現象」を検出すると作動する。「補正」機能は「判断」機能がプロセスの状態に「問題がある」と決定した時に作動する。「協働」機能は必要な時に運転操作者の主導権か、装置の主導権で作動する。
【0041】
本発明の最初の主要機能である「知覚」は基本的に下記の段階からなる:
1.プロセスの状態の知覚量の値の生成および信号の生成。信号はこれらの量の値の配列された数値の集合である。
2.各量に関する状態空間内の軌跡および位相空間内の軌跡によるプロセスの状態の変化の記述と、空間の分割によるこれら軌跡の離散化(discretisation)。
3.知覚量自体の変化に基づくプロセス状態の変化の、これらの量に関与する事象の全体的な履歴の形での記述。これらの履歴は時間的、空間的または時空的な履歴にすることができる。2つのタイプの事象(すなわち離散事象および信号事象)が定義される。
4.事象の全体的な履歴内で「信号現象」とよばれる全体的な履歴の類型の標定によるプロセスの状態の変化の記述。
5.プロセス状態の変化の、プロセス現象の履歴の形での記述。プロセス現象の定義は上記の2、3、4を統合している。
【0042】
以下、これら5つの段階を詳細に説明する。
知覚の第1段階はプロセスの状態を記述できる量が進行中に取る値を構成および配列することにある。
本発明装置は下記の2つのタイプの量を区別する:
(1)測定量:測定量は値がプロセスを計装するセンサーから直接入手される量か、値が数値数学モデルに基づいて別の量の値から計算される量である。
(2)知覚量:知覚量はプロセスの状態および進行中の変化の情報を含む測定量である。すなわち、上記定義の(X(t)、X(t))である。これらの量の値は一般に直接測定することはできず、以下に示すように計算または演繹する。従って、知覚量はn次元(nは知覚量の数に対応する)の状態空間内でプロセスの状態ベクトルXと一般によばれる成分を形成する。
【0043】
これらの量の値はプロセスに関する自由に使用可能な情報、特にセンサーから伝送される情報を解釈することによって得られる。「値」は、一般に量の振幅または全識別符号、例えば量が有する真/誤キャラクタ(すなわちバイナリー値)を付与する実数である。
量のとる「値」は空間的および/または時間的に配列することができる。
【0044】
先ず最初に、量の値の時間的な配列、例えば値がデータ「バス」上にある時の配列を記述する。「値」の日付の決定は「バス」の一般的管理システムを用いることができる。このシステムは本発明装置の対象ではなく、互いに独立することもある異なるクロックでもよい。従って、各「値」は「DateValeur」に帰する。この日付決定は本発明装置に固有のクロックから独立している。
【0045】
値の日付決定の時間的な3つの主モダリティは量のタイプに応じて下記のように区別される。
(1)この量がとる2つの連続した値の間に進む時間が進行中に一定であるときの定期的な量。定期的な量の概念はこの量のサンプリング期間およびサンプリング頻度に関連する。定期的な量の「値」に関連した「DateValeur」はサンプリング期間の整数倍であり、これらの「DateValeur」は本発明装置によって「世界時間」とよばれる量の値として解釈される。
【0046】
(2)定期的でも非定期的でもない事象に関する量。事象に関する量の「値」は特定の日付でしか識別されないので「DateValeur」は任意のクロックを参考にして特定のモダリティに従って帰する。例えば、サンプルの取る日付、サンプルの分析の日付、分析値のデータ収集入力の妥当性検査の日付である。これら3つの例では、クロックは例えば操作者の腕時計、壁掛け時計またはデータ収集入力端末のクロックにすることができる。
従って、事象に関する量に関連した日付は「世界時間」としてではなく、事象に関する量の「値」の連続を配列することができるインデックスとして解釈される。
【0047】
(3)量が所定の時間でとる「値」の数値が進行中に一定であるときの非定期的な量。これはこの所定時間の間、プロセスの運転中、測度または「値」の定数が保証される、事象に関する量の特定の場合である。非定期的な量の値に関連した「DateValeur」は事象に関する量の特性と同じ特性を有する。
「DateValeur」は一般に有限寿命を有する物理的対象物に対して解釈されるので、非定期的であるか/事象に関するかを区別する必要はなくなる。各対象物の寿命は時間間隔を定義し、非定期的な量の値に帰する日付はこれらの対象物に帰することができ、寿命に対応する時間間隔の内部に配列される。
【0048】
従って、非定期的な量の値に関連した「DateValeur」は有限寿命の対象物において「相対時間」を測定する特定の量の測度として解釈される。全体的な履歴は対象物自体の履歴で保証される。
本発明装置の環境は異なる種類の複数のクロックを利用できるので、比較可能な量の値を配列する必要がある。これは異なるが比較可能な量に関連した異なる2つの「DateValeur」は異なる日付に対応することを意味する。
【0049】
以下、例として高炉を操作する場合の空間的な量の値の配列を説明する。この量が内壁の温度に関する場合は、量の各値は内壁の所定の点に対応する。各点は「位置」によって区別される「入手点」とよばれ、「点」の集合が「ゾーン」を形成する。
【0050】
これらの「点」は1つの集合体を生成し、この集合体は例えばシステムのセンサー取付部に結合される構造を有し、配列される。高炉内壁温度の場合には、これらは例えば内壁の径での「位置」および/または内壁の高さ「位置」によって配列することができる。この「点」の集合体の配列によってこれらの「点」に関する「値」を「値」−「位置」対で配列でき、一つの空間的信号が生成される。
【0051】
最後に、「値」の配列は空間的および時間的に同時にできる、すなわち時空的に行うことができる。カップルまたはトリプレットの配列が一つの空間的信号を生成する。
さらに、本発明の方法は上記の入手期間に従って「律動的(cadence)」である。本発明方法はサイクルの開始ごとにプロセス−「値」−「DateValeur」対または「値」−「PositionValeur」対または「値」−「DateValeur」−「PositionValeur」トリプレットに関する情報を入手する。各「情報」には例えば装置の最後の初期化から計算されるサイクル番号に対応する「入手日」が関連付けられる。
【0052】
サイクル番号による「入手日」の特定(reperage)で時間の離散化がされす。
各「データ」はトリプレットまたはカルテット「値」−「DateValeur」−「入手日」または「値」−「PositionValeur」−「入手日」または「値」−「DateValeur」−「PositionValeur」−「入手日」になる。
これらのデータは「入手日」に従ってインデックス付けされたデータベースにストックされる。
【0053】
量の各値は2つの日付および/または1つの日付と1つの位置に結合される:
(1)データストックのインデクシングのための入手日、
(2)同じ量の「値」の数値群を配列し、量の時間的信号を定義するためのDateValeur、
(3)同じ量の「値」の数値群を配列し、量の空間的信号を定義するための入手点の位置、
(4)同じ性質の量の集合の「値」の数値群を、例えば高炉の内壁で測定された温度として配列し、同じ種類の量の集合に関連した時空的信号を定義するためのDateValeurおよび位置。
【0054】
一連のプロセスでプロセスの変化を下記(1)および(2)の両方で記述する:
(1)全ての量の「値」が統合され、入手日に従って配列された一群の数値、
(2)各信号が同じ量の「値」の配列された連続として定義される量の信号。
ダブルインデクシングによるこのデータ処理システムによって、本発明装置が連続する時間で推理し、システムのモダリティに従って数値データをディスクリートな時間で管理することができる。
【0055】
知覚の第2段階ではプロセスの変化を下記(1)と(2)の両方で記述する:
(1)全ての量の「値」を統合した一群の数から得られる状態空間内のプロセスの状態が追随する「非連続」軌跡、
(2)各量に固有の時間的、空間的または時空的信号から得られる位相空間内の量の値が追随する「非連続」軌跡。
【0056】
軌跡の「離散化(discretisees)」は生産の目標値または目的値に依存し、これらの「目標値」の関数として状態空間および位相空間で分割される。本発明では、この分割は情報の入手サイクルごとに行われる。
状態空間は知覚量である次元を有する空間として定義され、この状態空間ではプロセスの状態はこの状態に対応する知覚量の「値」である成分を有する状態ベクトルX(t)によって表される。これら全ての「値」をR(特殊文字をRで代用)で定義した場合、状態空間はRn(ここで、nは状態ベクトルXの成分の数値である)で定義される。状態空間の点の座標はこの点によって記述される状態の知覚量の「値」である。
【0057】
状態空間内の点によって表される一連の状態によってプロセスの変化を記述することができる。この一連の状態はこの空間内のプロセスの変化の軌跡を生成している。このプロセスの変化の軌跡は状態空間の各次元における投影を有している。この投影は軌跡によって表されるプロセスの変化の進行中の知覚量の連続した値に対応している。
状態空間の分割または「離散化」は空間の部分集合で行われる。各部分集合は所定の1つのタイプの状態に対応し、状態ベクトルXではなく、状態の部分集合またはこの状態が属する状態のタイプによってプロセスの各状態を標定することができる。
【0058】
この分割によって、プロセスの変化の表現も「離散化」できる。「連続した」変化の軌跡による表現から、状態のタイプの変更の連続による表現に移行する。これはプロセスの変化の「非連続軌跡」とよばれる。
状態空間の分割のために、この空間の部分集合の有限および可算数値が定義される。
本発明の特徴はこの分割がプロセスに関する情報の入手サイクルごとに、プロセスに関した生産目的値の関数として行なわれる点にある。
【0059】
プロセスに関連した生産目的値、例えばプロセスの「入力」入力値および「出力」入力値のいくつかを満足しなければならない、量および質の基準で示される生産目的値によって、およびプロセスの挙動に関与する知識の集成によって、プロセスの状態がこれらの各目標に属する知覚量の値で定義される場合には、この状態が生産目的値を満足するとして判断されるように、知覚量の「目標値」が定義される。
各入手サイクルでは、「目標値」を再発見し、新しい「目標値」の関数として状態空間の分割を新たに行う。
【0060】
値が実数である量の場合は、「目標値」は下限値「ValeurInf」および上限値「ValeurSup」によって規定された範囲に対応し、この範囲は例えば[ValeurInf,ValeurSup]で表され、両端の値は閾値で固定されることがある。
これらの「目標値」の定義および/またはこれらの範囲の端点の定義はプロセスの運転操作者 によって特に経験に応じて行われる。端点の値は一定にするか、別の量の値および別の端点の値の関数にすることができる。必ずしも「十分な値の範囲」または知覚量ごとの両端の値を定義できるとは限らない。
従って、状態空間の次元では、〔数2〕で表される3つの部分に分割することができる:
【0061】
【数2】
Figure 0005109059
【0062】
各次元に固有の部分集合[ValeurInf,ValeurSup]の集合は状態空間内の「ハイパーキューブ」を定義する。
従って、プロセスの所定の状態はプロセスの生産目的値を満足するか、しないかによってこのハイパーキューブに属するもの、属しないものとみなすことができる。
しかし、連続する状態空間の分割のフィネスは部分集合のより大きな数値の定義を必要とすることがある。
従って、状態空間の分割は、入手サイクルごとおよび連続した状態ベクトルの各成分ごとにRnでの値の範囲を定義し、各値の範囲に整数を関連させる。従って分割された状態空間はZn上で定義される空間である。
【0063】
位相空間は信号、すなわち変数に従って配列された同じ量の値の連続によって、時間的信号の場合の時間としてまたは空間的信号の場合の位置として定義される。定義上、この空間は、量の値に対応する第1の次元と、変数の関数であるこの変数の導関数に対応する第2の次元の2つの次元のみを有する。従って位相空間は知覚量に固有の空間であり、少なくとも知覚量と同じ量の位相空間が存在する。
変数が時間の場合は、状態空間内で成分がX1(t), X2(t),...,Xi(t),... Xn(t)である状態ベクトルXによって表されるプロセスの状態に対して、各成分は瞬間tに対応する知覚量Giの「値」=Xi(t)を表す。
【0064】
「DateValeur」に従って配列されたこの量の「値」の連続から生成されかつX(t)が属する量Gの時間的信号から、値X(t)の一次導関数X(t)を計算することができる。
従って、X(t)およびX(t)はこの量の位相空間内の点の座標を決定する。この量の挙動の変更の進行中に、(X(t),X(t))対のとる値の集合と、それに対応する点の連続がこの量の挙動の軌跡を生成する。
この量に関連した位相平面内の「連続した」位相軌跡によって量の挙動を記述することができる。「非連続」軌跡によってこの挙動を記述するには、位相空間を分割する。
【0065】
量の位相空間の分割または「離散化」は、値(X(t),X(t))ではなく、それに対応する点が属する部分集合によってプロセスの量の「値」を標定できるように決定されたタイプにそれぞれ対応する部分集合で行わなければならない。
位相空間を分割するには、この空間の部分集合の有限および可算数値を定義する。量の値に対応する第1の次元に同一の「目標値」を回復することによって、状態空間を分割するための上記の方法と同様に、位相空間を分割することができる。
【0066】
本発明の特徴は、この分割がさらに状態空間を分割するための上記の生産目的値に応じて入手サイクルごとに行われる点にある。
量の位相空間の各点はこの空間の部分集合に割り当てられることができる。割り当てによる表現は量の値の非連続表現を構成する。
図2は図の左側に示すように時間の関数として変化する知覚量x(t)およびその導関数x(t)、すなわち状態ベクトルの成分での原理を示している。この原理から演繹された非連続表現は図の右側に示してある。
【0067】
この分割によって、一つの量の挙動の表現を「離散化」することができ、「連続した」軌跡による表現から量の挙動の「非連続軌跡」とよばれるタイプの一連の変化による表現に移行する。
本発明は知覚量ごとに「目標値」を求め、次いで状態空間の分割および位相空間の分割を新たに行なっう。この本発明の運転方法は下記(1)および(2)に自動的に適合される:
(1)プロセスを利用する条件またはコンテキストの変更、例えば運転点の変更または入力材料またはエネルギーの種類の変更。
(2)プロセス要素の磨耗、老化または損傷等に関するプロセスの変化。
【0068】
従って、本発明運転方法は環境の変化に自律して反応することができる点で「反応性」である。
本明細書では、本発明の2つの観点は分割の結果として強調されかつ区別されるべきである。すなわち、ディスクリートな事象の検出によって生成された反応度、および再発見された数値目標値に基づく分割によって生成された適応性であり、これら2つの特性によって従来技術のファジイ論理の処理法に比べて大きな利点がもたらされる。
【0069】
従って、本発明の特徴は、プロセスの変化が状態空間内の軌跡によってだけではなく、位相空間内の各知覚量の軌跡によっても「知覚」される点にある。
状態空間の知覚量に対応する次元に従ってゼロである軌跡が、この量の位相空間内の点に必ずしも対応していないため、状態空間内および位相空間内で同時に行われるこの知覚のダブルモードは特に適している。これはプロセスの変化が、状態空間内の変化の不在を示す空の「翻訳」を有する場合でも、位相空間内の各知覚量の挙動の位置ではその「翻訳」は必ずしも空ではない(逆の場合も同じ)ことを意味する。
【0070】
プロセスの変化(状態空間内の軌跡)と知覚量の挙動(位相空間内の軌跡)とは互いによく関連付けられるが、これらを結合する関係は複雑な動的プロセスの場合には確立することが特に難しい。本発明は特に第3、第4、第5の知覚段階によってこの困難を緩和することができる。
知覚の第3段階は知覚量自体の変化に基づいてこれらの量に関する事象の履歴の形でプロセスの変化を記述することにある。これらの履歴は時間的履歴、空間的履歴または時空的履歴にすることができる。
【0071】
時間的「履歴」をカップル(Evt,DateEvt)(ここで、「Evt」は量に関与する事象を表し、「DateEvt」はこの事象に割り当てられる日付を表す)の連続とよぶ。空間的「履歴」をカップル(Evt, PositionEvt)(ここで、「PositionEvt」はこの事象に割り当てられる位置を表す)の連続とよぶ。時空的「履歴」をトリプレット(Evt, DateEvt,PositionEvt)の連続とよぶ。
これらの履歴を得るには、事象、事象の検出モードおよび事象の日付決定モードおよび/またはローカリゼーションモードを定義するのが便利である。
【0072】
以下、事象の第1のタイプ、すなわち「離散事象(evenements-discrete)」を定義する。
定義上、プロセスの変化によって位相空間内でこの量の現在の代表点が属する部分集合が、部分集合の定義および上記の位相空間の分割の定義に従って生じるときに、知覚量に関与する「離散事象」が形成される。
一方の部分集合から他方の部分集合への移行に対応する所定の離散事象は、従ってこの移行の日付に帰する。例えば、図6に示すように、部分集合1から部分集合2への移行に対応する離散事象E1は、日付e1に帰する。
【0073】
すなわち、各量の挙動はこの量の離散事象の履歴を生成するカップル(Evt,DateEvt)の連続によって記述することができる。図6は知覚量に関するこの原理を示している。
以下、信号事象(evenemente-signaux)の定義を説明する。
同一の量の「値」の配列された数値の連続が信号を定義することはわかっている。この信号は時間的信号、空間的信号または時空的信号にすることができる。
この信号を分析することによって、この信号に関連した量の挙動を標定し、挙動の変更ごとに「信号事象」を生成する。
【0074】
そのために、本発明では挙動のクラス、これらクラスのうちの1つに割り当てられたり、割り当てられないで量の挙動を認識するための方法、および挙動のクラスの変更を日付決定する方法を定義する。これらの定義および方法に従って、挙動のクラスの変更ごとに信号事象を生成および日付決定して信号事象の履歴(Evt,DateEvt)を得ることができる。
挙動の認識方法を用いるには、その挙動を送信する信号を定めることが必要なこともある。従って、用いる方法に合わせた信号の濾過方法を上流側に追加する必要がある。
【0075】
挙動のクラスは定数または変数のパラメータにすることができる。本発明の実施例では、これらのパラメータは特に各モデルに関与する制約および分析目盛に関するものである。
以下、信号事象の定義および日付決定モードに関する本発明実施例を説明する。
各知覚量ごとに、可能性のある複数の挙動モデルを定義する。各挙動モデルはこの量の位相空間内の軌跡のタイプによって表現できる。従って、本明細書では各挙動モデルおよび/または軌跡の各タイプによって挙動のクラスが定義される。
【0076】
下記1〜3の条件が検出されると、所定の量に関する信号事象が作られる:
1.挙動モデルの確立の認識
2.予め認識され挙動モデルの完成の認識
3.挙動モデルの認識能力がないこと。
これらの条件を検出するためには、例えば下記の2つの生成方法のいずれかまたは両方を用いることができる:
【0077】
(1)基準の時間的挙動モデルの集合に対してかつ信号の所定の時間的分析目盛に従って、信号の挙動を認識するように適合された、信号分析方法。時間的挙動モデルは所定の信号の時間的区間にかかわる制約の集合に対応している。時間的分析目盛は挙動モデルを認識するための信号の分析に必要な時間的区間に対応している。そのために、量の信号の挙動の定義の時間的区間は時間的分析目盛より継続時間が短い。
【0078】
(2)基準の時間的フォームモデルの集合に対してかつ所定の観測目盛に従って、信号の現在の挙動を認識するように適合された、時間的フォームの認識方法。時間的フォームは時間的挙動モデルの組立にかかわる制約の集合である。この方法を用いる場合は、時間的分析目盛を少なくとも、認識すべき時間的フォームのモデルを構成する時間的挙動モデルに関連した時間的分析目盛と同じにする。
【0079】
次いで、信号事象の日付決定方法を定義するのが適当である。時間的信号の場合は、この方法の単純な例は、信号事象「Evt」の生成の始点であり、かつこの信号事象に関連した「DateEvt」でこのデータの「DateValeur」に割り当てられる信号のデータ(上記定義のトリプレットまたはカルテット)を決定することにある。挙動のクラスを定義するためのモデルを用いる場合は、日付決定方法は保持された挙動モデルに依存し、信号事象の生成の始点である信号データの調査がこのモデルに関連した分析目盛で行われる。
【0080】
離散事象の場合と同様に、各量の挙動もこの量の信号事象履歴を生成するカップル(Evt,DateEvt)の連続によって記述される。図6は知覚量に関するこの原理を示している。離散事象に基づく挙動の記述がこの量の位相空間の分割に基づいているのと同様に、この各量の挙動の記述は例えばモデルまたは軌跡のタイプの形でこの量の挙動のクラスの定義に結合されている。
全体的なに、Evtが離散事象か、信号事象を表すカップル(Evt,DateEvt)の連続、すなわちこの量に関与する事象の履歴の連続が得られる。
【0081】
プロセスの変化を記述するために、これらの履歴を単一の事象の全体的な履歴に凝集(agregees)させることができる。
この凝集は各「量」の履歴(Evt,DateEvt)を収集し、1つに凝集して行われ、トリプレット(Evt,DateEvt,量)が得られる。これらのトリプレットは量の集合の挙動の変化を記述する事象の全体的な履歴を構成する。この全体的な履歴は各トリプレットの値「DateEvt」に従って配列されるのが好ましい。
【0082】
この原理によって連続したプロセスの全ての時間的変化に事象の全体的な履歴を関連させることができる。この各事象は量の挙動のタイプ(信号事象)の変更または量の位相空間内でみられる部分集合(離散事象)の変更に対応している。
本発明の特徴は、プロセスの変化の間中、知覚量の挙動は事象の全体的な履歴の形で考慮に入れられる点にある。この履歴の各事象はこれらの量の1つの量の変化に関与している。
【0083】
知覚の第4段階の目的は事象の全体的な履歴の中で、全体的な履歴の類型を標定することによってプロセスの変化を記述することにある。これらの履歴の事象は信号の観測によって検出されるので「信号現象」とよばれる。
信号現象、その検出方法および日付決定方法を定義する。さらに、これらの信号現象の性格付け方法を定義する。
信号現象はプロセスの変化に関する事象の全体的な履歴のタイプによって定義され、各履歴のタイプは同一の量または異なる量の離散事象および/または信号事象を収集する。既に述べたように、履歴のタイプの信号事象は時間的、空間的、または時空的にすることができる。
【0084】
履歴のタイプは下記(1)および(2)によってパラメータ化され特徴付けられる:
(1)事象を構成し、信号事象の場合に量の信号フォームに関与する制約を統合する各事象の定義「Evt」
(2) 各事象の値「DateEvt」および/または「PositionEvt」、および事象の順序付けまたは位置決めに関する時間的または空間的制約を統合する、これらの事象の日付および/または位置および事象を隔離する時間または位置の範囲。
【0085】
時間的信号事象しか含まないタイプの履歴はいわゆる「時間的」信号事象に対応する。空間的信号事象しか含まないタイプの履歴はいわゆる「空間的」信号事象に対応する。時間的信号事象および空間的信号事象を同時に含むタイプの履歴はいわゆる「時空的」信号事象に対応する。
従って、信号現象の認識または検出はプロセスの変化に関与する事象の全体的な履歴がどのタイプの履歴に属するかを識別することにある。従って、プロセスの変化に関与する事象の全体的な履歴の中で、予め定義された事象の履歴のタイプを認識する度に信号現象が生成される。
【0086】
次いで、プロセス現象または信号現象の開始点(「信号現象開始日」および終点(「信号現象終了日」)の日付決定方法を詳細に定義する。この日付決定に関して、本発明の実施例では下記のようにする:
(1) 認識された履歴のタイプに対応する履歴の中で最も古い離散事象または信号事象の値「DateEvt」は「信号現象開始日」に帰する。
(2) 認識された履歴のタイプに対応する履歴の中で最も新しい離散事象または信号事象の値「DateEvt」は「信号現象終了日」に帰する。
【0087】
(3) 信号現象の検出時または認識時に本発明装置の内部クロックが生成する値は「検出開始日」に帰する。
(4) 信号現象の検出の終了時または認識の終了時の同一の内部クロックが生成する値は「検出終了日」に帰する。
さらに、信号現象の修飾方法を定義する。
信号現象は下記の関数として修飾される:
【0088】
(1)信号現象の振幅とよばれるもの。信号現象の振幅は所望基準の挙動に対して挙動の範囲の測度である。現象−時間的または時空的信号の場合は、振幅は所定の信号現象の検出に関与する信号現象の検出始点での分割された状態空間の部分に関連したラベルに対応する。
(2)ローカリゼーションとよばれるもの。信号現象のローカリゼーションは、特定の挙動が観測される量のリストに記載される。現象−時間的信号の場合は、このリストには信号現象に関連した知覚量しか記載されない。現象−空間的または時空的信号の場合は、このリストには信号現象の検出始点での量の集合が記載される。より正確には、このリストは信号現象が対象とするプロセスの地理的なゾーンを決定するものである。
【0089】
これらのラベルは特に現象の広がり、現象の速度または現象の非対称なキャラクタを修飾する形容詞を含むキャラクタの連鎖であり、例としては下記の修飾が挙げられる:
(1)振幅の修飾:
信号現象が、増加または減少する一次元線形空間とみなされる量の時間的修正に関与する場合、信号現象の可能性のある形容語は、「極めて大幅に増加」「大幅に増加」「増加」「減少」「大幅に減少」「極めて大幅に減少」である。
信号現象が、高さとみなされる量の時間的修正に関与する場合、信号現象の可能性のある形容語は、「極めて高い」「高い」「低い」「極めて低い」である。
【0090】
(2)速度の修飾:
信号現象が、増加または減少する一次元線形空間とみなされる量の時間的修正に関与する場合、信号現象の可能性のある形容語は、「極めて急上昇」「急上昇」「高速上昇」「上昇」「低下」「高速に低下」「急低下」「極めて急低下」である。
(3)非対称性の修飾:
時間的非対称性:
「極めて不規則」「不規則」「一定」
空間的非対称性:
「非対称」「非常に異形」
【0091】
知覚の第5段階の目的はプロセスの変化の記述に関して詳述した要素を全て統合してプロセスの変化を記述することにある。
そのために、これら全ての要素を統合して「プロセス現象」または「Ph-Pr」を定義し、「プロセス現象」の連続または履歴によってプロセスの変化を記述することができる。
「プロセス現象」の定義は、量の時間的信号、空間的信号、時空的信号によって、位相空間内の各量の軌跡によって、および状態空間内のプロセスの変化の連続または「非連続」軌跡によってプロセスの変化を記述することができる上記の全ての要素を統合しなければならない。
【0092】
これら全ての要素を統合することによって、プロセスの変化のより完全な記述およびより適切な知覚を得ることができ、プロセスの操作を大幅に向上させることができる。
プロセスの変化を記述するための各種手段のこの統合および凝集の問題は下記のように示すこともできる:プロセスの状態の記述の量Xは下記の2つのタイプの一般的な挙動の法則に従う:
第1の法則:X=f(t,x)(ここで、tは日付または時間、xは位置である)
第2の法則:f(X,dX/dt, dX/dx)=0(一次の微分方程式)
【0093】
第1の法則は、成分が量Xである状態ベクトルおよびこの空間内のこのベクトルの軌跡による状態空間内の上記の記述に対応する。第2の法則は各量Xの位相空間内の上記の記述に対応する。
本発明が解決する問題は複雑な動的プロセスの場合の量の挙動のこれら2つの法則を統合および凝集させることである。
この問題を解決するために、まず最初に「署名(signature)」すなわち状態空間内の連続または「非連続」「軌跡のタイプ」によってプロセス現象を定義し、この「署名」に情報/確認を含めた検出手段、日付決定手段および修飾手段を関連させ、プロセスの変化の記述に関して詳述した他の要素を統合する。
【0094】
このプロセス現象の定義はプロセスの変化の記述に関して詳述した全ての要素を統合するので、必要に応じて、状態空間内の同一の軌跡を有するがこの同じ軌跡上でいくつかの知覚量の異なる変化を有する2つの現象を区別できるのが有利である。プロセス現象の定義は離散事象または信号事象(第1レベル)の形および/または事象の履歴(すなわち、信号現象:第2レベル)の形、信号現象(第3レベル)の履歴の形で知覚量の変化をさらに統合する。
本発明の方法の実施例では、プロセス現象の定義すなわち「プロセス現象」は下記で構成される:
【0095】
(1)状態空間内の軌跡のタイプの定義
(2)事象のクラス、および/または事象の履歴(信号現象)、および/または信号現象の履歴、特にプロセス現象の開始点を検出するためのクラス、プロセス現象の終点を検出するためのクラスおよび性格付けのクラスの定義。さらに情報のためのクラスおよび/またはプロセス現象の確認のためのクラスの定義を追加することができる。
既に述べたように、履歴はカップル(Evt,DateEvt)のリストとして表記される時間的履歴、カップル(Evt,PositionEvt)のリストとして表記される空間的履歴、トリプレット(Evt,DateEvt,PositionEvt)のリストとして表記される時空的履歴にすることができる。
【0096】
プロセス現象の完全かつ詳細な定義の利点を例としての下記の単純な例によって示す。自動車の放電した電池およびショートした電池は自動車の挙動に共通に作用する、すなわち始動しない、カーラジオが鳴らない。異なる2つの現象である電池「ショート」の現象−事象と、「放電」の現象−事象とを混同する恐れがある。従って、電池の「放電」は「ショート」よりも遅いと性格付けられる現象であることを考慮してこれら2つの現象は区別される。確認手段は例えば前の晩に自動車のライトが点灯していたか、点灯していないかによって、これら2つの現象を事象として区別するのに用いることもできる。この「点灯したライト」の事象および「前の晩」の期間は確認または情報の要素のみにクラスを生成する履歴または信号現象を構成する。
【0097】
特に検出および情報/確認のクラスのレベルでのプロセス現象のこの定義によって所定の現在の状況においてプロセス現象の検出に適当または適当でないキャラクタを考慮して、過去、現在、直未来の要素を統合できるのが有利である。認識能力の点では、これらのクラスの定義は現象間の因果関係における知識を翻訳する。例えば、これらの「原因」、別の事象または過去または現在の現象が既に考慮されている場合、またはこの「結果」、別の事象または未来の現象が生成されていない場合は、プロセス現象を考慮することは必ずしも「都合が良い」ことではない。
【0098】
プロセス現象の定義は、プロセス現象の開始点および終点を検出するためのクラスの要素(事象、履歴)に適用される日付決定の規則の定義も受ける。例えば、開始点の日付の決定規則は事象の「DateEvt」または開始点検出クラスの現象の「プロセス現象開始日」をとることにある。
プロセス現象の定義は修飾の規則も受ける。信号現象の場合と同様に、プロセス現象の形容語は例えばその現象および/またはローカリゼーションの振幅に関与する。プロセス現象の形容語はその出現からその終わりまで変化することができるが、それ以降は変化しない。形容語の例としては下記のものが挙げられる:
【0099】
(1)最新または最も重大な形容語:プロセス現象に帰する形容語は修飾クラスの要素の集合の中で最新または最も重大なインスタンスの形容語である。
(2)過半数の修飾:プロセス現象に帰する形容語は修飾クラスの要素の集合の中のインスタンスに帰する最多の形容語である。
(3)ローカリゼーションの修飾:修飾クラスの要素が対象とする量の集合を含む最小の地理的ゾーンとして、または修飾クラスの要素の位置の集合によって形成されたゾーンとして定義されたもの。
【0100】
ローカリゼーションの修飾がない場合は、プロセス現象は「全体的な」と形容される。
このプロセス現象の定義によって、プロセスの変化時に、一連のプロセス現象が検出され、各要素が少なくとも下記の点を含むリストまたは「履歴」が得られる:プロセス現象の名前、開始日、終了日、二重項(形容語,形容語の帰属日)のリスト。
本発明の方法では、状態の知覚およびプロセスの変化は状態空間内で説明したような全体的な挙動と、知覚量の挙動とを同時に統合する。
【0101】
本発明では、第2の主機能である「判断」は、プロセスの環境、特にシステムの運転操作者に向けられたメッセージを送信して、運転操作者がいくつかのアクチュエータの調整適正値をプロセスの生産の現在の目的が満足されるように修正する機会を評価するのを助けることができなければならない。
これらのメッセージは生産目標値値に対する現在の状況に関与する問題の記述を含んでいなければならず、かつ可能性のある問題の重要性を操作者に「納得させる」のに必要且つ十分な情報が伴わなければならない。
【0102】
特に、これらのメッセージはプロセスの状態およびその「問題がある」キャラクタを記述し、必要に応じて、プロセスの状態および直面する問題を解明しなければならない。
これらのメッセージの送信は都合の良い時間に都合の良い方法で行わなければならない。メッセージは重大度によって選別することができ、最も重大なメッセージだけを送信する。情報の入手サイクルの結果によっては全くメッセージが送信されないこともある。
【0103】
最後に、これらのメッセージが操作者に向けられる場合は、これらのメッセージはグラフ付きフレーズのような自然言語、シンボリック言語および/または現象学言語で作成されなければならない。
本発明の第2の主要機能「判断」は基本的に下記の段階からなる:
1.プロセスの変化のコンテキストを評価し、待機中のプロセス現象を重大度の基準およびこのコンテキストに従って分類し、
2.最も重大として分類されたプロセス現象に関与するメッセージを送信する。
【0104】
判断の第1段階はプロセスの変化のコンテキストを評価し、待機中のプロセス現象を重大度の基準およびこのコンテキストに従って分類することによって、送信する可能性のあるメッセージおよびこれらのメッセージの送信基準を作成することにある。
本発明方法の実施例では、プロセスの運転のコンテキストを考慮するには、プロセス現象の重大度に関する修飾(qualification)が下記定義に従う:
【0105】
(1) コンテキストおよび/または重大度を修飾するために考慮すべきプロセスの運転のコンテキストの要素を定義する事象のクラス、および/または事象の履歴(信号現象)、および/または信号現象の履歴(プロセス現象)、
(2)待機中すなわち検出されかつ進行中のプロセス現象のコンテキストおよび/または重大度の修飾規則。この定義はこのクラスに属する特定のプロセス現象の性質および振幅として、このクラスの要素に適用される。
【0106】
本発明方法の実施例では、プロセス現象のコンテキストおよび重大度の修飾はコンテキストの管理規則にも従う。
まず最初に、一般的な規則またはこれらの規則が適用されるコンテキストおよび要素、特にプロセス現象の修飾に特有の規則を記述する。
プロセス現象の重大度の修飾は、運転データの入手サイクルごとに発見されるプロセスの運転目標値の満足度の点で「問題がある」キャラクタに関与する。プロセス現象の存在が生産目的値を満足させる運転操作者の能力を低下させる場合は、プロセス現象に問題がある。
【0107】
従って、プロセスの挙動の変化を解釈するためおよび/または補正動作を開始するためにプロセス現象を考慮する必要がある場合は、プロセス現象は「問題がある」、「警告」または「忠告」の重大度で修飾される。これらの修飾規則の定義から、「警告」で修飾されたプロセス現象のインスタンスは「忠告」で修飾されたインスタンスより危惧すべきものである。逆に、プロセスの挙動の変化を解釈するために検出されたプロセス現象を考慮に入れる必要がない場合は、プロセス現象は「重大でない」と修飾されることがある。
【0108】
「重大度による分類のコンテキスト」を定義することによって、プロセスの利用の実際コンテキストに応じてプロセス現象の重大度を判断することができる。すなわち、検出された全てのプロセス現象をまず最初に下記の修飾のうちの1つに従って重大度で修飾する:
(1)「重大でない」:プロセス現象の集合の中には、検出が問題のあるキャラクタを呈さないプロセス現象のカテゴリーが存在する。これらの検出はプロセスのできるだけ完全な状態を構成する必要性によって証明される。
(2)「常に重大」:プロセス現象の集合の中には、検出がプロセスの通常の利用条件で問題があるキャラクタを常に呈するプロセス現象のカテゴリーが存在し、プロセス現象のインスタンスの検出は常にプロセスの操作者 に通報する必要がある。
【0109】
(3)「コンテキスト上重大」:このカテゴリーのプロセス現象は運転のコンテキストにおいて問題があるキャラクタを呈するプロセス現象であるが、別のカテゴリーの場合にはこれらは取るに足らないとみなされることがある。前者の場合は、操作者に通報する必要があるが、後者の場合は通報は無益である。従って、プロセス現象のこのカテゴリーにかかわる判断は特に進行中(すなわち開始日は識別されているが、終了日は識別されていない)のプロセス現象、および終了したばかりのプロセス現象の集合によって定義され記述された現在の状況に依存する。定義上、「コンテキスト上重大」なプロセス現象の重大度は現在のコンテキストに依存する。
【0110】
次いで、「コンテキスト上重大」なプロセス現象のカテゴリーのプロセス現象の重大度は例えばこのプロセス現象のコンテキストのクラス要素によって記述されるようなプロセスの現在の状態と過去の状態との合成によって判断される:
この合成は現在の目標値または生産目的値を満足している知覚において行われる。
このクラスは信号事象現象または別のプロセス現象からなり、分類のコンテキストは特に、現在および過去の期間における少なくとも1つの別のプロセス現象のインスタンスの有無で表される時間的制約によって定義される。
【0111】
一般に、例えば下記のコンテキストを定義することができる:
(1)「補正プロセス」コンテキスト:動作を開始せずに生産の目標値または目的が考慮される可能性がある点で、プロセスの現在および過去の状態が運転操作者の待機中にある場合。従って、このコンテキストは「十分である」判断に対応する。
【0112】
(2)「緩やかなプロセス」コンテキスト:プロセスの現在および過去の状態によって、操作者が現在の状況で続行している生産の目標値または目的を満足させることができない場合。このコンテキストは「不十分である」判断に対応し、生産が損失する危険を意味する。定義上、このコンテキストはこのコンテキストを定義するクラスに特有の少なくとも1つの別の進行中のプロセス現象に対応する。このコンテキストでは、「問題がある」プロセス現象のみが一般に「破局的」と修飾されたプロセス現象である。これはこれらのプロセス現象のインスタンスが、プロセスを完全に停止してプロセスの全てまたは一部を破壊する(すなわち、生産および生産設備の部分損失)状況および危険を悪化させるからである。
【0113】
(3)「規格外プロセス」コンテキスト
定義上、このコンテキストはこの新しいコンテキストを定義するクラスに特有の少なくとも1つの別の進行中のプロセス現象に対応する。このコンテキストはプロセスが利用されなくなることを意味する。
このコンテキストでは、本発明の方法はプロセスの運転を有効に助けることができなくなる。なぜなら、信号現象をプロセス現象に結合する因果関係が妥当ではなくなるとみなされるからである。このコンテキストでは、プロセスの知覚に関与する本発明方法の第5段階は定期的に続行し、分析の連続性を保証しかつプロセス現象のメッセージを送信し続けるが、待機中のプロセス現象の重大度は修飾されなくなる。
【0114】
高炉の場合には、所定のプロセスおよび所定のプロセス現象でより固有に、例えば下記の特定のコンテキストを定義することができる:
(1)「正しい炉床排出」コンテキスト:8時間で任意の修飾の「炉床鋳鉄保持レベル」プロセス現象のインスタンスの不在で定義される。
(2)「正確な鋳鉄To」コンテキスト:「極めて高い」「低い」または「極めて低い」で修飾された「正確鋳鉄Toレベル」プロセス現象の終了していないインスタンスの不在、および8時間での「極めて高い」または「極めて低い」で修飾された「鋳造鋳造To」プロセス現象のインスタンスの不在で定義される。従って、コンテキストの定義にはコンテキストのクラスの中の異なる2つの要素(プロセス現象)が必然的に伴うことは理解できよう。
【0115】
(3)「正確な材料降下」コンテキスト:1時間で「衝突」プロセス現象のインスタンスの不在で定義され、4時間で「材料の降下の短期間の品質」プロセス現象のインスタンスの不在で定義される。
(4)「正確な熱損失」:任意の修飾の「内壁での熱レベル」プロセス現象のインスタンスの不在で定義される。
【0116】
次いで、コンテキストの管理規則を下記のように記述する:プロセス現象の重大度を修飾するのに使用可能なコンテキストは「アクティブ」という。反対推論により、アクティブでないコンテキストはプロセス現象の重大度を修飾するのに使用できない。
上記のコンテキストの定義からコンテキストの管理規則は以下の通り:
(1)「規格外プロセス」コンテキストはこれを定義する制約が検証される場合は「アクティブ」であり、検証されない場合は「アクティブでない」。
(2)「規格外プロセス」コンテキストが「アクティブ」の場合は、全ての他のコンテキストは「アクティブでない」。この制約は一般的であり、コンテキストの管理の下記の規則には表出されない。
【0117】
(3)「緩やかなプロセス」コンテキストはこれを定義する制約が検証される場合は、「アクティブ」であり、検証されない場合は「アクティブでない」。
(4)「緩やかなプロセス」コンテキストが「アクティブ」の場合は、特定の全てのコンテキストおよび「正確なプロセス」は「アクティブでない」。
(5)特定のコンテキストは「緩やかなプロセス」コンテキストがアクティブでない場合およびこれを定義する論理時間的制約が満足される場合は、「アクティブ」であり、そうでない場合は「アクティブでない」。
(6)「正確なプロセス」コンテキストは「緩やかなプロセス」コンテキストがアクティブでない場合および全ての中間コンテキストがアクティブである場合は、アクティブであり、そうでない場合は「アクティブでない」。
【0118】
コンテキストの重大度の修飾規則は以下のように完全にすることができる:
(1) いずれのプロセス現象の重大度も「規格外プロセス」コンテキストの中では修飾されない。
(2)「重大ではないプロセス現象」のカテゴリーの全てのプロセス現象の重大度は「規格外プロセス」以外の任意のアクティブなコンテキストで「重大ではない」と修飾される。
【0119】
(3)「常に重大なプロセス現象」のカテゴリーの全てのプロセス現象の重大度は「規格外プロセス」以外のアクティブなコンテキストで、操作者に帰する形容語に応じて「警告」または「忠告」で修飾される。
(4)「コンテキスト上重大なプロセス現象」のカテゴリーの全てのプロセス現象の重大度は「規格外プロセス」以外で常に、各アクティブなコンテキストに帰する形容語の集合の中で最も重大な形容語である。
【0120】
プロセス現象の重大度の修飾の合目的性がプロセスの運転操作者に向けてメッセージをリアルタイムで送信することにあるので、コンテキストの日付決定はできるだけ早く、すなわちコンテキストを定義するクラスの要素のインスタンスの開始点および終点の検出日、例えばプロセス現象の日付に行わなければならない。従って、終了していないプロセス現象の重大度は現在のコンテキストに応じて判断される。
そのために、分類のコンテキストは現在の日付に対して日付決定される。
(1)コンテキストの開始日はアクティブでない状態からアクティブな状態への移行の検出日である。
(2)コンテキストの終了日はアクティブな状態からアクティブでない状態への移行の検出日である。
【0121】
判断の第2段階はプロセスの変化の現在のコンテキストの中で最も重大な検出されたプロセス現象のみを考慮して環境へメッセージを送信することにある。
本発明では、上記のように評価された現在のコンテキストの中で必要に応じて行われた重大度の修飾に従って、検出されたプロセス現象を分類する。
「警告」または「忠告」で修飾された全てのプロセス現象の場合は、このプロセス現象の記述要素、特にその位置決め、日付決定および形容語に関与する性質および要素を含むメッセージが送信される。
【0122】
メッセージの有効な送信が「通報」である。
本発明方法じは「警告」または「忠告」で修飾されたプロセス現象のみを運転操作者にリアルタイムで知らせるので、プロセス運転のコンテキストがいかなるものであっても、重大でないプロセス現象の存在は少なくともリアルタイムでは知らされない。従って、操作者の情報が飽和するのを防ぎ、プロセスの操作に作用するのに最も都合の良い時間に最も適切な情報に操作者 の注意を集中させることができるのが有利である。
【0123】
最後に、「通報」には下記のように日付付けができる:
「通報」の日付は現在の重大度の修飾に関連した修飾の可能性のあるコンテキストの開始日から、プロセス現象のインスタンスの広がりおよび場所の修飾日(すなわち形容語帰属日)までの間で最新の日付である。
従って、通報日はプロセスの状態の変化すなわち修飾のコンテキストの変更およびプロセス現象のインスタンスの広がりおよび場所の修飾に応じてリアルタイムで固定される。
本発明は高炉、セメント工業の炉、ガラス生産炉またはスラブ生産炉のような加熱炉、金属の連続鋳造設備および金属ストリップの圧延設備または連続被覆設備の運転で有利に使用できる。しかし、本発明は参考として挙げた上記の一般的な実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 入力U−出力Yの関係のディスクリートな事象E1〜E4の抽象概念を示す図。
【図2】 知覚量x(t)およびその導関数x(t)の量に関する非連続表現原理を示す図。

Claims (8)

  1. プロセスの環境から出された情報によってプロセスを運転し、生産目的値の範囲内にプロセスを維持または回復するのを助ける情報をプロセスの操作者(オペレータ)へ送る、加熱炉、金属の連続鋳造設備および金属ストリップの圧延または連続被覆設備からなる群の中から選択される動的プロセスの運転で使用されるプロセスの運転方法であって、
    (1)日付および/または位置の少なくとも1つを変数とした、プロセス状態の少なくとも1つの知覚量の変化基準(criteres devolution)に基づいたプロセス現象を予め定義し、
    (2)プロセスの環境から出された上記の情報を定期的に入手し、得られた情報からプロセス現象の定義用い知覚量の値を作り、
    (3)見出した一連のプロセス現象によってプロセスの状態と変化を記述し、
    (4)上記の検出したプロセス現象に関する情報を操作者に送る、
    ようになっている運転方法において、
    i) 検出された各プロセス現象を別のプロセス現象によって記述された固有のコンテキストに基いて判断する中間段階を含み、
    ii) 上記コンテキストで生産目的値の範囲内にプロセスを維持または回復するのに必要かつ都合が良いという判断が確立されたときにのみ、判断されたプロセス現象に関する情報を操作者 に送る、
    ことを特徴とする方法。
  2. 上記加熱炉が高炉、セメント工業の炉、ガラス生産炉、スラブ生産炉である請求項1に記載の方法。
  3. 上記プロセスの状態とその変化の記述および/またはプロセスの運転のコンテキストの記述が事象(イベント)の履歴(ログ)からなり、各事象は日付および/または位置に依存し、各事象の定義は少なくとも1つの上記知覚量の1つまたは複数の変化基準の定義を統合したものであり、各履歴は日付および/または位置に基いて配列された一連の事象で形成される請求項1または2に記載の方法。
  4. プロセス現象の定義で事象の履歴のタイプの定義も統合される請求項1または2に記載の方法。
  5. プロセス現象および/または事象の定義で日付および/または位置の変数に対する少なくとも1つの量の一次導関数(この導関数は上記変数の関数である)の変化の1つまたは複数の基準の定義も統合される、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  6. 上記知覚量の値(必要な場合にはその一次導関数の値)が日付および/または位置の変数に従って配列され、一つの「信号」を生成し、この信号から計算されたパラメータに依存する変化の基準に対して「分析目盛」とよばれる変数の値を所定間隔で観測するだけの場合に、各基準の定義は各パラメータから計算された値で分類され、基準はパラメータの値の範囲の別の所定のサブドメイン内にあり、各サブドメインは上限および下限で定義される請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  7. 少なくともいくつかの変化基準がプロセスの生産目的値の関数として決定され、情報の入手期間毎に生産目的値が再評価され、従って変化基準が作られる請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  8. 変化基準を生産目的値の関数で求めるために生産目的値の関数で変化基準の境界を変える請求項に従属する請求項に記載の方法。
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