JP5107907B2 - 低速調理用加温配合剤 - Google Patents

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Description

本発明は加温用配合剤、さらに特定すると、低速調理用加温配合剤に関する。
物品、例えば食品および飲料、ならびに身体の各部を加温するための使い捨て化学的加温具は周知である。加温具の1例では、金属酸化物、典型的には酸化カルシウムと水との発熱反応を利用し、熱を発生させる。参照としてその全部を本明細書中に組み入れる(特許文献1)(「230特許」)には、発熱化学反応をもたらすために、適切な酸化剤による1級または2級アルコールの酸化を利用する加温具が開示されている。マンガンおよびクロムの化合物はもっとも一般的に利用される酸化剤である。グリセロールまたはエチレングリコールなどの1級アルコール燃料に関して、一般的に水性反応では、過マンガン酸のアルカリ金属塩が有用な酸化剤である。水は燃料成分を希釈して、燃料と酸化剤の接触を減少させることによって、化学反応速度を低下させる。「230特許」には、反応速度を制御するため、固体の酸化剤粒子、特に過マンガン酸カリウムの粒子を可溶性結合剤、例えばケイ酸ナトリウム中に埋め込むことによって、燃料と酸化剤の接触をさらに減少させることが開示されている。
参照として組み入れる(特許文献2)(「878公報」)(2005年11月17日公開)には、放出可能な反応抑制組成物を提供し、生成物区画での特定の温度に応答して、自動的に反応室中に抑制組成物を放出し、それによって発熱反応を抑制する方法が開示されている。
参照として本明細書に組み入れる(特許文献3)(「801特許」)には、周囲の状況に応じた形状になることができる、変形可能な使い捨ての加温具が開示されている。この加温具は燃料を含有する第1区画、酸化剤を含有する第2区画、および拡張室となることができるつぶれた第3区画からなっている。第1の壊れやすい仕切り具が第1区画と第2区画の間に設置されており、この第1の壊れやすい仕切り具を手動で操作して、両者の連絡がとれるようにし、これらの第1および第2室の少なくとも1つを含む反応室を確定させることができる。第2の壊れやすい仕切り具は反応室内での発熱化学反応に応答するように設けられている。この第2の壊れやすい仕切り具は反応室と第3区画との間で蒸気を連絡させるように動作可能である。第1区画と第2区画との間の連通により、燃料と酸化剤の混合を可能にして、蒸気を発生することができる発熱化学反応を開始させ、この発熱化学反応に伴う周囲のパラメーターが第2の仕切り具を動作させて、前記の蒸気が第3区画に流入することができるようにし、それによって反応室の圧力を低下させる。
米国特許第5,035,230号 国際公開第2005/108878号 米国特許第6,640,801号
本発明には加温用配合剤、この加温用配合剤を含む携帯用の使い捨て化学的加温具、および反応速度を変更するためにこの加温用配合剤を利用する加温方法が含まれる。
加温用配合剤は、例えば食品、飲料およびその他の品目の携帯用加温に有用な、長時間の加温を提供する。この加温用配合剤は燃料、酸化剤および錯化剤を含んでいる。錯化剤は燃料と可逆的に錯体化する。錯体化していない燃料が反応で消費されるにつれて、その濃度の低下に応答して、錯体化した燃料の一部は解離していく。錯化剤のタイプおよび錯化剤の(燃料に対する)量によって、解離が低速で制御される。ある特定の加温具について、さらに多くの錯化剤を添加することによって、反応の持続時間を長期化させることができる。こうした処置は、パスタ、シチューまたはセメントなどの低熱伝導性の物質を加温するためのより低速で長時間の反応を提供するのに役立つ。より長時間の反応によって、加温具によって供給される熱エネルギーのより効率的で安全な使用が可能になる。
本明細書で開示する方法は、燃料と酸化剤との間の酸化/還元発熱反応の反応混合物中への燃料用錯化剤の添加を含む。実施形態のいくつかでは、燃料はアルコール燃料、好ましくはグリセロールまたはエチレングリコールなどのポリオールである。実施形態によっては、酸化剤はマンガンまたはクロムの化合物、好ましくは過マンガン酸のアルカリ金属塩、より好ましくは固体酸化剤、そして最も好ましくは、可溶性結合剤、好ましくはケイ酸ナトリウムで被覆した過マンガン酸カリウム粒子である。
好ましい加温具は酸化剤区画、好ましくは被覆された固体の過マンガン酸カリウムを含有するもの、および燃料区画、好ましくは水性グリセロールなどの液状ポリオールを含有するもの、を含み、ここで使用者は、両区画の分断を解消して反応物の接触を可能にすることで発熱化学反応を開始させ、それによって反応を開始させる。特定の実施形態中、加温具は区画の一方に燃料用錯化剤を含む。ポリオール燃料については、錯化剤はホウ酸塩、炭酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩または硫酸塩などのポリ酸化イオンであり、好ましくはホウ酸またはホウ酸塩、最も好ましくはボラックス(Na2B2O7-10H2O)である。燃料区画中に燃料用錯化剤を含ませるのが好ましい。特定の実施形態中、加温具は酸化剤と可逆的に錯体化するのに適した錯化剤を含む。酸化剤用錯化剤の一例はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート化剤であり、これは一般的に金属化合物と錯体化させるのに適している。
1態様中、化学的加温具用の加温用配合剤を開示する。この配合剤は第1反応物質、第2反応物質および錯化剤を含んでいる。この錯化剤は、錯体化していない第1反応物質の濃度が第2反応物質との発熱反応中に減少するにつれて錯体化した第1反応物質が徐々に解離していくように、第1反応物質の少なくとも一部と可逆的に錯体化するのに適したものである。
実施形態のいくつかでは、第1反応物質は酸化剤であり、第2反応物質はアルコール燃料である。これらの実施形態中、錯化剤は、錯体化していない燃料の濃度が酸化剤との発熱反応中に減少するにつれて錯体化した燃料が徐々に解離していくように、燃料の少なくとも一部と可逆的に錯体化する。
別の実施形態中、第1反応物質はアルコール燃料であり、第2反応物質は酸化剤である。これらの実施形態中、錯化剤は、錯体化していない酸化剤の濃度が燃料との発熱反応中に減少するにつれて錯体化した酸化剤が徐々に解離していくように、酸化剤の少なくとも一部と可逆的に錯体化する。
特定の実施形態について、燃料はポリオール、例えば水性グリセロールである。錯化剤としてはホウ酸、ホウ酸塩、またはより好ましくはボラックスが可能である。あるいは、錯化剤として炭酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩または硫酸塩が可能である。
特定の実施形態では、酸化剤用の錯化剤として、キレート化剤、例えばエチレンジアミン四酢酸 (EDTA)を含んでいる。
実施形態のいくつかでは、錯化剤の燃料に対する比率は1:20〜1:5である。実施形態によっては、錯化剤の燃料に対する比率は1:100〜1:1である。
いくつかの実施形態では、過マンガン酸カリウムなどの過マンガン酸のアルカリ金属塩からなる酸化剤を含んでいる。燃料と錯化剤が水溶液を形成するものでもよい。燃料濃度は24重量%〜84重量%とすることができる。燃料濃度は34重量%〜44重量%とすることもできる。
別の態様中、使い捨て化学的加温具は第1区画と第2区画を持つ使い捨て容器を含む。第1反応物質は第1区画内に収容され、第2反応物質は第2区画内に収容される。仕切り具は第1区画と第2区画の間に設置される。仕切り具は第1区画と第2区画間の流体の連絡をもたらすようになっている。流体の連絡により容器内での第1反応物質と第2反応物質の発熱化学反応を開始させる。第1反応物質と可逆的に錯体化する錯化剤は第1区画および第2区画の少なくとも一方に収容される。
実施形態によっては、第1反応物質は酸化剤であり、第2反応物質はアルコール燃料である。これらの実施形態中、錯化剤は、錯体化していない燃料の濃度が酸化剤との発熱反応中に減少するにつれて錯体化した燃料が徐々に解離していくように、燃料の少なくとも一部と可逆的に錯体化する。
いくつかの別の実施形態中、第1反応物質はアルコール燃料であり、第2反応物質は酸化剤である。これらの実施形態中、錯化剤は、錯体化していない酸化剤の濃度が燃料との発熱反応中に減少するにつれて錯体化した酸化剤が徐々に解離していくように、酸化剤の少なくとも一部と可逆的に錯体化する。
さらに別の態様には、第1反応物質と第2反応物質の発熱化学反応によって動作可能な使い捨て化学的加温具からの熱の発生速度を抑制する方法が含まれる。この方法には、発熱化学反応において、錯体化していない第1反応物質の濃度が反応中に減少するにつれて第1反応物質の一部が解離していって第2反応物質と反応するように、第1反応物質の少なくとも一部と可逆的に錯体化する錯化剤が含まれる。
実施形態によっては、第1反応物質は燃料であり、第2反応物質は酸化剤である。これらの実施形態中、錯化剤は、錯体化していない燃料の濃度が反応中に減少するにつれて燃料の一部が解離していって酸化剤と反応するように、燃料の少なくとも一部と可逆的に錯体化する。
別の実施形態によれば、第1反応物質は酸化剤であり、第2反応物質は燃料である。これらの実施形態中、錯化剤は、錯体化していない酸化剤の濃度が反応中に減少するにつれて酸化剤の一部が解離していって燃料と反応するように、酸化剤の少なくとも一部と可逆的に錯体化する。
特定の実施形態中、以下の利点の1つ以上が提供され得る。粘度が変化する物品を加温するのに十分適した携帯用加温具を提供することができる。この加温具は特に、ある種のソース、セメントなどのような比較的高粘度の流体を加温するのに十分適している。加温具は長時間にわたって加温することが可能である。その上、こうした加温具内に危険な高温部位が発生する可能性が低減される。
その他の特徴および利点は、詳細な説明、図面および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
本発明は、低速調理用加温配合剤、さらに特定すると、化学的加温具で使用するのに適したものに関する。「低速調理」とは、本件の場合、反応機構内にすでに放出された反応物質の1つ(例えば燃料)がその反応中へのさらなる燃料の放出を抑制するという放出機構によって、熱の発生速度が低下する、発熱反応を意味する。
1実施形態中、低速調理用加温配合剤は燃料およびこの燃料と発熱的に反応させるのに適した酸化剤を含む。低速調理用加温配合剤はさらに燃料用錯化剤を含む。実施形態によっては、錯化剤は発熱反応の持続時間に影響を与えるのに適したものである。さらに特定すると、錯化剤は反応の持続時間を延長し、かつその強度を調節するのに適したものであり得る。
特定の理論に束縛されるわけではないが、この現象について、以下の説明を提供する。燃料−酸化剤の配合剤に燃料と可逆的に錯体化する錯化剤を添加することによって、任意の所定の時間で反応させるために利用できる燃料の量を効果的に減少させることができるものと考えられている。これは錯化剤が一部の燃料と「タイアップ」するように燃料と可逆的に錯体化することによって、それが反応するのを妨げているからである。この錯化剤自体は酸化剤と反応しない。反応中のどの特定の時間でも、錯体化していない一部の燃料のみが酸化剤と反応すると考えられている。錯体の形成は可逆的であるので、錯体化していない燃料が酸化剤と反応するにつれて、錯化剤は「タイアップ」した一部の燃料を解離し、それによって反応に利用できる錯体化していない燃料の供給を補充する。可逆的な錯体の形成によって、加温される目的物の熱を吸収する能力に合わせて使い捨て化学的加温具を調整するか適応させて、過剰に高温にならないようにし、それによって必要に応じて熱の発生を遅延させ、また低速で長期間持続する加温を提供する手段が提供されるものと理解されたい。反応の経過中、錯体化および非錯体化燃料の大体の均衡が維持されると考えられる。したがって、加温配合剤中に錯化剤を含ませることによって、反応で発生する熱の強度を抑制することができ、また反応が持続する時間の長さを延長させることができる。
好ましい錯化剤であるボラックスはポリオール燃料と1:1のモル比で錯体を形成する。しかし、反応を抑制して延長させるためには、配合剤中の錯化剤:燃料がはるかに小さい比率で十分であることがわかった。好ましい実施形態中、錯化剤:燃料比率は1:100〜1:1である。別の好ましい実施形態中、錯化剤:燃料比率は1:20〜1:5である。錯化剤は典型的にはホウ酸またはホウ酸塩であり、好ましくはボラックス(Na2B4O7・10H2O)である。
実施形態によっては、酸化剤はマンガンまたはクロムの化合物である。より好ましくは、酸化剤は過マンガン酸のアルカリ金属塩である。最も好ましくは、酸化剤は過マンガン酸カリウムである。典型的な実施形態中、酸化剤として可溶性結合剤、好ましくはケイ酸ナトリウム中に分散させた固体過マンガン酸カリウム粒子が含まれる。
燃料は典型的にはアルコール燃料である。より好ましくは、燃料は液状、好ましくは水溶液状態のグリセロールまたはエチレングリコールなどのポリオールである。最も好ましい燃料は水性グリセロールである。水溶液中の燃料濃度は重量に基づいて24%〜84%であり得るが、好ましくは重量に基づいて34%〜44%である。特定の実施形態中、燃料および錯化剤は結合して水溶液を形成するのに適したものである。その他の酸化剤および燃料でも本明細書に開示した技術での使用に好適であり得ることに留意すべきである。
実施形態のいくつかでは、相補関係にある一対の化学物質間の反応の発熱の原理に基づいて動作するタイプの廃棄可能な使い捨て化学的加温具中で、抑制用(「低速調理用」)の加温用配合剤を使用する。代表的な化学的加温具は酸化剤、好ましくは被覆された固体の過マンガン酸カリウムを含有する第1区画と、燃料、好ましくは水性グリセロールなどの液状ポリオールを含有する第2区画を含む。化学的加温具は典型的には区画同士の分断を解消すること、例えばバルブを回すか、壊れやすい仕切り具を損壊させることによって燃料と酸化剤が互いに接触することを可能にし、発熱化学反応を開始させることによって、使用者が反応を開始させることができるように構成される。錯化剤は当初は両区画の少なくとも一方に供給される。ポリオール燃料については、好ましい錯化剤はホウ酸またはホウ酸塩、最も好ましくはボラックス(Na2B4O7・10H2O)である。錯化剤を当初燃料区画に供給することが好ましい。錯化剤は液状であるか、燃料もしくは水性燃料混合物に溶解するもののいずれかである。
こうした加温具の1例を図1に示す。この例は一般的に「ヒートパック」として知られている。ヒートパックは典型的には2枚のプラスチックシートを含んでいる。図示した加温具には上部シート2および下部シート(図示していない)で形成された容器1がある。シート同士は端部で端部シール3、4、5および6によって互いに密封されている。熱または接着剤で端部の封をする。これは好ましくは使用者が容易に開けられないようなものとする。仕切り具7は加温具の端部シール3からもう一方の端部シール5まで配置され、これによって加温具1を第1区画8と第2区画9に分断している。仕切り具7はこの実施形態では壊しやすいシール材になっていて、成分同士の分断を解消して第1区画8と第2区画9間の流体の連絡を確立させるために、使用者が破壊するのに適したものである。この加温具の容器はヒートパックを使用したとき、反応物質の上に蒸気のための空間を持つように設計される。
実施形態のいくつかでは、第1区画8は燃料と錯化剤の水溶液を含み、第2区画9は酸化剤を含む。第1区画8内の燃料は錯化剤と錯体を形成していて、第1区画内の一部の燃料のみが錯体化されていない。使用者が仕切り具7を壊すと、燃料および錯化剤を含有する水溶液が第2区画9内に流入して酸化剤と混合される。錯体を形成していない一部の燃料が酸化剤と反応する。錯体を形成していない一部の燃料が反応するにつれて、基本的に酸化剤と反応させる燃料の供給を補充するために、錯体化した燃料が解離する。
燃料の可逆的な錯体化は次式によって示すことができる
錯体 = 燃料 + 錯化剤
式の右辺の遊離の燃料が反応によって減少するにつれて反応が平衡側に移動するために、錯体から燃料が解離するものと理解すべきである。
多数の実施形態を本明細書に開示する。加温しようとする物品に対して特定の容器/システムを組み立てるために、単純な試行錯誤によって調整することができる。膨大な改変が可能である。例えば、加温具に複数の第1および第2区画を設置し、各区画がバルブまたは壊しやすい仕切り具によって隣接する区画(群)と分断されているようにすることができる。別の例として、錯化剤を第1および第2区画の一方または両方に入れることができる。その上、その他の燃料、酸化剤、結合剤および/または錯化剤を利用することも実現可能である。
また、錯化剤は酸化剤と可逆的に錯体化するのに適したものでもよい。こうした錯化剤の1例はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート化剤である。
その上、本明細書に開示する技法は、制御された使い捨て化学的加温具のための技法および器具のどんな組み合わせとでも結び付けて実施することができる。例えば、好ましい実施形態中、加温具用配合剤に、米国特許第5,035,230号に開示されているような、可溶性結合剤中に埋設されるか、これで被覆された固体酸化剤を含ませることができる。この「230特許」に開示されているヒートパックは2タイプの分断されたゾーンを持っている。1つのゾーンタイプは乾燥反応物質、すなわちケイ酸ナトリウム結合剤内に過マンガン酸カリウム結晶を含む短い円柱状物を含有している。他方のゾーンタイプはグリセロール/水溶液を含有し、これが燃料混合物となる。特定の実施形態中、その燃料は溶媒としての役割を持ち、別の溶媒の必要性がない。2タイプのゾーンは例えば使い捨てに向いている脆いシール材によって分断されている。2つのゾーン間のシール材が破れると、燃料溶液は酸化剤ペレットに流れ込み、反応が起こる。反応速度、つまり熱発生速度は、結合剤の溶解速度によって加減される。なぜならば、酸化剤を燃料に曝露させるためには溶解が必要とされるからである。本明細書に開示される配合剤および方法は「230特許」のヒートパックに容易に組み込むことができる。
実施形態によっては、加温具は米国特許第5,984,953号に開示された、事前に調製した硬化性のゲルを含んでいてもよい。この「953特許」に開示されたヒートパックも発熱酸化/還元化学反応を利用している。これらのヒートパックでは可溶性の結合剤が利用されている。その上、あらかじめ調製した硬化性のゲルは反応速度に影響を与えるために収容されたものである。これらの2つの速度制御機能を調節することによって、当業者ならばヒートパック内の温度上昇速度および動作温度を設定かつ達成することができるはずである。本発明のヒートパックに望まれる自己調節効果をもたらすために、硬化性ゲルの実装により、この反応媒体の特定の可逆的な物理的変化を介して発熱化学反応を調節する。調節は発熱化学反応についてヒートパックの動作温度が既定の最大温度よりも上昇するのを防止する助けとなるものである。容器温度が反応媒体の物理的変化を逆行させる程度まで低くなったときには、調節は進行中の発熱反応の速度を増大させるようにも作用する。本明細書に開示した配合剤および方法は「953特許」のヒートパックに容易に組み込むことができる。
実施形態によっては、加温具に「878公報」に開示されているような高温の発熱を防止するための放出可能な反応抑制剤を含ませることができる。「878公報」に開示された方法には、容器に放出可能な反応抑制組成物を収容し、生成物区画で発生する特定の温度に応答して、反応室に抑制組成物が自動的に放出され、それによって発熱反応を抑制することが含まれる。実施形態によっては、抑制組成物は水を含む。本明細書に開示した配合剤および方法は「878公報」に容易に適応させることができる。
実施形態によっては、加温具に「801特許」に開示された拡張室を含ませることができる。「801特許」はその周囲によって決まる形状に成形可能な柔軟性の使い捨て加温具を開示している。この加温具は燃料を含有する第1ゾーン、酸化剤を含有する第2ゾーンおよび拡張室となることができるつぶれた第3ゾーンを含んでいる。第1ゾーンと第2ゾーンの間には第1の脆い仕切り具が設置され、この第1の脆い仕切り具は手動で操作可能で、これらの間が連通し、前記第1および第2室の少なくとも一方を含む反応室が確定する。反応室内の発熱化学反応に応答する第2の脆い仕切り具が設置される。第2の脆い仕切り具は蒸気が反応室と第3のゾーンとの間を連絡するように、動作可能である。第1ゾーンと第2ゾーンの間が連通することによって、燃料と酸化剤の混合がなされ、蒸気を発生させることができる発熱化学反応が開始され、発熱化学反応にともなう周囲のパラメーターが第2の脆い仕切り具を動作させて、前記蒸気が前記第3のゾーン内に流入することが可能になり、それによって反応室内の圧力を低下させる。本明細書に開示した配合剤および方法はこの「801特許」の加温具に容易に組み込むことができる。
図2はこの実施例で報告する実験作業を実施するために使用した加温具組立品の試作品を説明する。
図示した組立品は一対の入れ子式の円形ボウルであって、直径14cm x 深さ7cmの外側(または底部)プラスチックボウル22に入れ子になった直径14cm x 深さ5cmの内側(または上部)プラスチックボウル21を含み、上部ボウル21と底部ボウル22との間に約2cmの環状の隙間24がある。隙間部分から蒸気/湯気の排出を可能にするため、いくつかの排気孔11が設けられている。
外側ボウル22の底の隙間部分に45gの被覆された過マンガン酸カリウム結晶23を入れた。過マンガン酸カリウム結晶は水溶性バリア被覆剤で被覆され、被覆が溶解されないと過マンガン酸カリウム結晶は反応しない。溶解性バリア被覆剤はケイ酸ナトリウムとした。
被覆された過マンガン酸カリウム23は種々の厚さの被覆を持つ結晶の混合物とした。特に、25%の過マンガン酸カリウム粉末が14重量%の被覆を有し、30%の過マンガン酸カリウム粉末が17重量%の被覆を有し、そして45%の過マンガン酸カリウム粉末が20重量%の被覆を有した。加温される物品として働く水24を300ml、内側ボウル21に入れた。上部ボウル21内の水および底部ボウル22内の過マンガン酸カリウム粉末23中に熱電対を入れた。
封を破るかバルブを開けることによって、分断された区画から液状燃料が放出された場合に発揮されるはずの機能を実現させるため、グリセロールの38.2重量%水溶液約70mlを、底部ボウル22、具体的には酸化剤23を含有する隙間に、排気孔11を介して添加した。グリセロールは過マンガン酸カリウム粉末23と発熱的に反応して蒸気を発生させ、これが上部ボウル21内の水24を加温した。
図3に、底部ボウル23にグリセロールを添加した後数分間の水(曲線「D」で示す)および反応物質(曲線「A」で示す)の温度プロフィールを示す。曲線「D」は水の温度が約6分間で約21℃から約64℃に上昇したことを示している。曲線「A」は反応物質の温度が約6分後に低下し始めたことを示している。
本発明の錯体化した燃料を使用して、実施例1の試験を繰り返した。この実施例では図2の加温具組立品を使用した。
実施例1で使用したものと同一の被覆した過マンガン酸カリウム粉末23を45g、底部ボウル22に入れた。水24を300ml、上部ボウル21に入れた。水24および底部ボウル22内の被覆した過マンガン酸カリウム23中に熱電対を入れた。底部ボウル22に、37.9重量%グリセロールおよび0.9重量%ボラックス(Na2B4O7・10H2O)の水溶液70mlを添加した。グリセロールは過マンガン酸カリウムと反応して、蒸気を発生した。
図3に、底部ボウル22にグリセロールを添加した後数分間の水24(曲線「E」で示す)および反応物質(曲線「B」で示す)の温度プロフィールを示す。曲線「E」は水の温度が約6分間で約21℃から約64℃に上昇したことを示している。曲線「B」は反応物質2の温度が約7分後に低下し始めたことを示し、これは最大温度での加温が約1分または約17%延長されたことを表している。
実施例1の試験を再度繰り返した。今回はより強く錯体化した本発明の燃料を使用した。この実施例では図2の組立品を使用した。
実施例1および2で使用したものと同一の被覆した過マンガン酸カリウム粉末45gを、底部ボウル22に入れた。水300mlを上部ボウル21に入れた。水および被覆した過マンガン酸カリウム粉末23中に熱電対を入れた。底部ボウル22に、37.4重量%グリセロールおよび2.2重量%ボラックスの水溶液70mlを添加した。グリセロールは過マンガン酸カリウムと反応して、蒸気を発生した。
図3に、水(曲線「F」で示す)および反応物質(曲線「C」で示す)の温度プロフィールを示す。曲線「F」は水の温度が約8分間で約21℃から約64℃に上昇し、実施例1よりも2分間程度、または3分の1遅くなったことを示している。曲線「C」は反応物質の温度が約8分後に低下し始めたことを示している。
上記実施例を考慮に入れると、加温用配合剤中のボラックスの濃度を徐々に増加させることからなるこの実施形態の場合は、錯化剤を徐々に増量して添加することによって、発熱反応の速度を低下させ、反応の持続時間を徐々に延長させることができるものと理解される。実施例1(ボラックスを含まない)では、反応物質の温度は約6分後に低下し始めた。実施例2(0.9%ボラックス)では、反応物質の温度は約7分後に低下し始めた。最終的に、実施例3(2.2%ボラックス)では、反応物質の温度は約8分後になってから低下し始めた。
実施例1、2および3が、加温用配合剤に添加されたボラックス錯化剤の量に応じて、実施例1、2および3での水の加温速度(それぞれ曲線4、5および6)が変化したことを示していることにも注目される。例えば、実施例1および2(それぞれボラックス無しおよび0.9%ボラックス)では、水を約21℃から約64℃に加温するのに要した時間は約6分であった。しかし、実施例3(2.2%ボラックス)では、水を約21℃から約64℃に加温するのに要した時間は約8分であった。
上記の実施例は、発熱化学反応およびこれらの反応によって加温される物品に関する温度プロフィールを、これらの反応物質にボラックスを添加することによって変更することができる、一定の方法を説明している。
実施形態によっては、加温しようとする物品の特性に応じて、加温用配合剤にボラックスを増減して添加するのが望ましいようである。例えばより高粘度の物品(例えばシチューまたはオートミール)については、加温配合剤により多くのボラックスを添加するのが望ましいようである。それは、より高粘度の物品は低粘度物品と同様には対流加温の恩恵を受けないからである。高粘度物品中では連動する流動量が少ないので、反応時間を延長するのが望ましい。反応時間を延長することによって、高粘度物品をより完全に加温することが可能になると見られる。
他方、低粘度物品(例えばコーヒーまたはお茶)については、より少量のボラックスを加温用配合剤に添加するのが望ましいようである。これは対流が低粘度物品全体に熱を分配する助けになるからである。したがって、こうした物品を加温するためには、より短い反応時間が適当であるものと見られる。
図4は実施例4および5で報告する試験を実施するために使用した加温具組立品を説明する。
図示した組立品は一対の長方形の鍋またはトレーであって、29cm x 23cmのプラスチック製底部または外側トレー42に入れ子になった29cm x 23cm x 5cmのプラスチック製上部または内側トレー41を含み、上部トレー41と底部トレー42との間に約3cmの隙間45がある。隙間45は両トレーの底の間と、その垂直側壁の上方まで広がっている。上部トレーと底部トレーの間の隙間45からの排気のため、外側トレー42に排気孔43も設けられている。
被覆された過マンガン酸カリウム粉末500gを底部トレー42に入れた。加温する物品として2700mlの水を上部トレー41に入れた。上部トレー41の水および底部トレー42の過マンガン酸カリウム粉末に熱電対を入れた。
29.2%グリセロールおよび0.2% Dow Corning H-10 シリコーン消泡剤エマルジョンを含む水溶液700mlを底部トレー42に添加した。この水溶液には錯化剤を含ませなかった。グリセロールは過マンガン酸カリウムと反応して蒸気を発生させた。蒸気は反応の期間中排気孔43から排気させるようにした。反応物質は最大温度119℃までになった。蒸気によって上部トレー41の水が約21分間で約21℃の初期温度から約66℃の最終温度まで加温された。したがって、平均加温速度は以下のようになった:
(66℃−21℃)/21分 = 2.1℃/分
被覆された過マンガン酸カリウム粉末(実施例1に関して記載した被覆過マンガン酸カリウム粉末44と同様のもの)500gを底部トレー42に入れた。加温すべき物品として作用するための2700mlの水を上部トレー41に入れた。上部トレー41の水および底部トレー42の過マンガン酸カリウム粉末に熱電対を入れた。
33.5%グリセロール、3.2%ボラックスおよび0.2% Dow Corning H-10 シリコーン消泡剤エマルジョンの水溶液600mlを底部トレー42に添加した。グリセロールは過マンガン酸カリウムと反応して蒸気を発生させた。蒸気は反応の期間中排気孔43から排気させるようにした。反応物質は最大温度約107℃になった。蒸気によって上部トレー41の水が約23分間で約21℃の初期温度から約69℃の最終温度まで加温された。したがって、水の平均加温速度は以下のようになった:
(69℃−21℃)/23分 = 2.1℃/分
実施例4についての加温速度および最終水温は実施例5のものと同様であるが、反応器の温度はより高かったので、実施例4では実施例5よりも大量の蒸気が排気孔43から失われたことを意味している。排気された蒸気はもちろん無駄になった熱であり、これは実施例5では減少した。
その他の実施形態は特許請求の範囲の範囲内に入るものである。
加温具の平面図を示す。 実験1、2および3を実施するのに使用したボウルを示す。 実施例1、2および3に関係する温度プロフィールを表わすグラフを示す。 実験4および5を実施するのに使用したボウルを示す。
符号の説明
1 ヒートパック
2 上部シート
3,4,5,6 端部シール
7 仕切り具
8 第1区画
9 第2区画
11 排気孔
21 上部ボウル
22 底部ボウル
23 過マンガン酸カリウム
24 隙間
41 上部トレー
42 底部トレー
43 排気孔
44 被覆過マンガン酸カリウム粉末
45 隙間
46 水

Claims (36)

  1. 化学的加温具のための加温用配合剤であって:
    第1反応物質;
    第2反応物質;および
    錯化剤、
    を含み、前記錯化剤が、錯体化していない第1反応物質の濃度が第2反応物質との発熱反応中に減少するにつれて錯体化した第1反応物質が徐々に解離していくように、第1反応物質の少なくとも一部と可逆的に錯体を形成している、前記配合剤。
  2. 第1反応物質がアルコール燃料であり;
    第2反応物質が酸化剤であり;
    錯化剤が、錯体化していない燃料の濃度が酸化剤との発熱反応中に減少するにつれて錯体化した燃料が徐々に解離していくように、燃料の少なくとも一部と可逆的に錯体を形成している、請求項1に記載の加温用配合剤。
  3. 第1反応物質が酸化剤であり;
    第2反応物質がアルコール燃料であり;
    錯化剤が、錯体化していない酸化剤の濃度が燃料との発熱反応中に減少するにつれて錯体化した酸化剤が徐々に解離していくように、酸化剤の少なくとも一部と可逆的に錯体を形成している、請求項1に記載の加温用配合剤。
  4. 燃料がポリオールからなる、請求項2または3に記載の加温用配合剤。
  5. 燃料が水性グリセロールからなる、請求項4に記載の加温用配合剤。
  6. 錯化剤がホウ酸またはホウ酸塩からなる、請求項2に記載の加温用配合剤。
  7. 錯化剤がボラックスからなる、請求項6に記載の加温用配合剤。
  8. 錯化剤が炭酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩および硫酸塩からなる群から選択される、請求項2に記載の加温用配合剤。
  9. 錯化剤がキレート化剤からなる、請求項3に記載の加温用配合剤。
  10. 錯化剤と燃料の比が1:100〜1:1である、請求項2に記載の加温用配合剤。
  11. 酸化剤が過マンガン酸のアルカリ金属塩からなる、請求項2または3に記載の加温用配合剤。
  12. 酸化剤が過マンガン酸カリウムからなる、請求項11に記載の加温用配合剤。
  13. 燃料および錯化剤が水溶液を含む、請求項2または3に記載の加温用配合剤。
  14. 燃料濃度が24重量%〜84重量%である、請求項2に記載の加温用配合剤。
  15. 第1区画と第2区画を持つ使い捨て容器;
    第1区画内に配置された第1反応物質;
    第2区画内に配置された第2反応物質;
    第1区画と第2区画との間に設置された仕切り具;および
    第1反応物質と可逆的に錯体を形成する錯化剤、
    を含む使い捨て化学的加温具であって、
    前記仕切り具は第1区画と第2区画との間で流体が連絡できるようになっていて、流体の連絡により容器内で第1反応物質と第2反応物質との発熱化学反応を開始させ、
    前記錯化剤が第1区画および第2区画の少なくとも一方に配置されている、前記加温具。
  16. 第1反応物質がアルコール燃料であり;
    第2反応物質が酸化剤であり;
    錯化剤が、錯体化していない燃料の濃度が酸化剤との発熱反応中に減少するにつれて錯体化した燃料が徐々に解離していくように、燃料の少なくとも一部と可逆的に錯体を形成している、請求項15に記載の加温具。
  17. 第1反応物質が酸化剤であり;
    第2反応物質がアルコール燃料であり;
    錯化剤が、錯体化していない酸化剤の濃度が燃料との発熱反応中に減少するにつれて錯体化した酸化剤が徐々に解離していくように、酸化剤の少なくとも一部と可逆的に錯体を形成している、請求項15に記載の加温具。
  18. 第1区画が水性ポリオール燃料を含有し、その一部がボラックスからなる燃料用錯化剤と錯体を形成している、請求項16に記載の加温具。
  19. 水性ポリオール燃料がグリセロールからなる、請求項18に記載の加温具。
  20. 錯化剤と燃料の比が1:100〜1:1である、請求項16に記載の加温具。
  21. 燃料濃度が24重量%〜84重量%である、請求項16に記載の加温具。
  22. 燃料用錯化剤がホウ酸またはホウ酸塩からなる、請求項16に記載の加温具。
  23. 燃料用錯化剤がボラックスからなる、請求項22に記載の加温具。
  24. 燃料用錯化剤が炭酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩および硫酸塩からなる群から選択される、請求項19に記載の加温具。
  25. 錯化剤がキレート化剤からなる、請求項17に記載の加温具。
  26. 酸化剤が過マンガン酸カリウムからなる、請求項16に記載の加温具。
  27. 第1反応物質と第2反応物質との発熱化学反応によって動作可能な使い捨て化学的加温具からの熱の発生速度を抑制する方法であって、発熱化学反応において、錯体化していない第1反応物質の濃度が反応中に減少するにつれて第1反応物質の一部が解離していって第2反応物質と反応するように、第1反応物質の少なくとも一部と可逆的に錯体を形成する錯化剤を含む、前記方法。
  28. 第1反応物質が燃料であり、第2反応物質が酸化剤であって、錯化剤が、錯体化していない燃料の濃度が反応中に減少するにつれて燃料の一部が解離していって酸化剤と反応するように、燃料の少なくとも一部と可逆的に錯体を形成する、請求項27に記載の方法。
  29. 第1反応物質が酸化剤であり、第2反応物質が燃料であって、錯化剤が、錯体化していない酸化剤の濃度が反応中に減少するにつれて酸化剤の一部が解離していって燃料と反応するように、酸化剤の少なくとも一部と可逆的に錯体を形成する、請求項27に記載の方法。
  30. 錯化剤がホウ酸またはホウ酸塩からなる、請求項28に記載の方法。
  31. 燃料がポリヒドロキソール化合物であり、錯化剤がボラックスである、請求項28に記載の方法。
  32. 錯化剤が炭酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩および硫酸塩からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
  33. 燃料が水性グリセロールである、請求項28に記載の方法。
  34. 燃料濃度が24重量%〜84重量%である、請求項28に記載の方法。
  35. 錯化剤と燃料の比が1:20〜1:5である、請求項28に記載の方法。
  36. 酸化剤が過マンガン酸カリウムである、請求項28に記載の方法。
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