<第1の実施形態>
(アンテナ設計システムの構成)
以下において、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ設計システムの構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ設計システムの構成を示す図である。
なお、アンテナ設計システムによって設計されるアンテナは、所定数のブロックに区切られたアンテナ素子面が設けられたアンテナである。また、アンテナとは、曲面又は平面のアンテナ素子面を有するアンテナである。例えば、アンテナは、パッチアンテナ、逆Fアンテナ、逆Lアンテナ及びメアンダラインアンテナである。また、アンテナ素子面とは、アンテナ素子として機能する金属(金属パッチ)が配置される面である。
図1に示すように、アンテナ設計システムは、複数の計算機10(計算機10a〜計算機10h)によって構成される。各計算機10は、アンテナ素子面のサイズ及びブロックのサイズを少なくとも含む設定条件に従って遺伝的アルゴリズムを適用して、ブロックに配置される金属のパターン(金属配置パターン)の集団である「初期集団」から「子集団」を取得する。また、各計算機10には、互いに異なる設定条件が設定される。
具体的には、後述するように、アンテナ素子面のサイズは、アンテナ素子面の高さやアンテナ素子面の幅によって定められ、各計算機10にそれぞれ設定される設定条件には、互いに異なるアンテナ素子面の高さ(又は、アンテナ素子面の幅)が含まれている。
また、ブロックのサイズは、後述する基準点ブロックの高さや基準点ブロックの幅によって定められ、各計算機10にそれぞれ設定される設定条件には、互いに異なる基準点ブロックの高さ(又は、基準点ブロックの幅)が含まれている。
ここで、基準点ブロックの高さ(又は、基準点ブロックの幅)が変更されると、この変更に伴って、ラインの高さ(又は、ラインの幅)も変更される。また、ブロックのサイズが変更される例としては、各ブロック間のサイズの比率を保ちながら各ブロックのサイズが均一に変更される場合と、各ブロック間のサイズの比率が変更されて各ブロックのサイズが不均一に変更される場合とが挙げられる。
なお、アンテナ素子面のサイズ及びブロックのサイズの詳細については後述する(図5及び図6)。
(計算機の構成)
以下において、本発明の第1の実施形態に係る計算機の構成について、図面を参照しながら説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る計算機10を示すブロック図である。なお、計算機10a〜計算機10hは同様の構成を有しているため、以下においては、これらをまとめて計算機10として説明する。
図2に示すように、計算機10は、通信部11と、GA処理部12と、設定条件記憶部13と、評価結果計算部14とを有する。
通信部11は、他の計算機10と通信を行うインターフェースである。具体的には、通信部11は、GA処理部12が遺伝的アルゴリズムを適用して取得した金属配置パターン(個体)の集団(後述する子集団)を他の計算機10に出力する。また、通信部11は、他の計算機10が遺伝的アルゴリズムを適用して取得した金属配置パターン(個体)の集団(後述する子集団)を取得する。
GA処理部12は、遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm;GA)に基づいて、最適なアンテナ素子面の金属配置パターンを計算する。
具体的には、GA処理部12は、金属配置パターンを示すbit列を有する個体をランダムに生成し、所定数の個体を「初期集団」として取得する。また、GA処理部12は、「初期集団」に含まれる個体の中から、次世代の個体を生成するために複数の個体を選択する。
さらに、GA処理部12は、選択した複数の個体(親)から次世代の個体(子)を生成する。具体的には、GA処理部12は、親となる個体に含まれるbitを所定の交叉確率で交叉させる。なお、交叉されるbitは、1つ(1点交叉)であっても、2つ(2点交叉)であってもよい。また、GA処理部12は、所定の突然変異確率で子となる個体に含まれるbitを反転させる。
また、GA処理部12は、親となる個体から子となる個体を生成するまでを「一世代」として、所定のラウンド終了条件が満たされるまで、選択、交叉及び突然変異を繰り返す。
なお、所定のラウンド終了条件とは、処理された世代数が予め定められた世代数となったこと、処理を開始してから経過した時間が予め定められた時間となったこと、後述する評価結果計算部14によって計算されたアンテナ特性に係る評価が予め定められた評価となったことなどである。
さらに、GA処理部12は、所定のラウンド終了条件が満たされると、自計算機による計算によって得られた個体の集団(以下、「子集団」)の出力を通信部11に指示する。
また、GA処理部12は、自計算機による計算によって取得された「子集団」及び他の計算機による計算によって取得された「子集団」の中から、所定数の個体を「初期集団構成個体群」として抽出する。ここで、「初期集団構成個体群」には、自計算機による計算によって取得された「子集団」及び他の計算機による計算によって取得された「子集団」の少なくとも一部が含まれている。
さらに、GA処理部12は、抽出された「初期集団構成個体群」を含む「初期集団」を用いて、選択、交叉及び突然変異を再開する。
また、GA処理部12は、アンテナ特性に係る評価が高い順に選択された個体の集団を「エリート集団」として抽出し、「初期集団構成個体群」に「エリート集団」を含ませる。
なお、各計算機10のGA処理部12は、互いに連携して自計算機10用の「初期集団」を抽出するが、この処理の詳細については後述する(図8〜図10)。
設定条件記憶部13は、アンテナ素子面のサイズ及びブロックのサイズを設定条件として記憶する。なお、アンテナ素子面のサイズとは、後述するように、アンテナ素子面の高さ(HA)などであり、ブロックのサイズとは、基準点ブロックの高さ(RZj)などである。
また、設定条件記憶部13は、アンテナ特性に係る評価を計算するための評価関数の種類、評価関数による評価項目、評価関数に含まれる重付値などを設定条件として記憶する。
なお、各計算機10の設定条件記憶部13には、互いに異なる設定条件が記憶されているが、この内容については後述する(表1及び表2を参照)。
評価結果計算部14は、設定条件記憶部13に記憶された設定条件に従って、GA処理部12によって生成された個体(金属配置パターン)毎にアンテナ特性に係る評価を計算する。
ここで、上述した評価関数の一例について説明する。なお、以下においては、3つの周波数f1、f2、f3におけるリターンロス特性及び利得特性をアンテナ特性として計算する場合を例に挙げて説明する。
最初に、リターンロス特性について説明する。リターンロス(RL)は、式(1)によって表される
ここで、Γは、反射係数を表しており、式(2)によって表される。
ここで、Zinは、入力インピーダンスであり、Z0は、伝送路の特性インピーダンスである。
なお、リターンロス(RLOSS)は正の値であり、反射係数(Γ)が小さい場合には、リターンロス(RLOSS)は大きくなり、反射係数(Γ)が大きい場合には、リターンロス(RLOSS)は小さくなる。
次に、リターンロス特性及び利得特性を用いた評価関数について説明する。なお、以下においては、3つの周波数f1,f2,f3の「リターンロス」を、それぞれ、RLf1、RLf2、RLf3とし、所望とする3つの周波数f1,f2,f3の「利得」を、それぞれ、Gf1、Gf2、Gf3とする。
評価関数(EVAL)は、式(3)によって表される。
ここで、w1〜w6は、リターンロス又は利得に乗算される重付値である。
例えば、多周波共用アンテナを設計する際に、相互に関連する複数の条件について最適化を図る場合には、一の評価項目が所望特性を満たしたときは、他の所望特性を満たしていない評価項目に対して重付値が重くなるように重付値を設定する方法が有効である。
さらに、他の評価関数(O(x))は、式(4)によって表される。評価関数(O(x))において、所望の共振周波数は、900MHz(fl)、1.5GHz(fm)及び1.9GHz(fh)であり、所望のリターンロスは、10dB以上であり、所望の利得は、3dBi以上である。
ここで、RLfk(x)は、個体xの周波数fk(k:l,m,h)におけるリターンロスであり、Gfk(x)は、個体xの周波数fk(k:l,m,h)における利得であり、wi(i:1〜11)は、重付値である。また、DRLは、所望のリターンロスであり、DGAINは、所望の利得である。
さらに、RLflεl(x)、RLfmεm(x)及びRLfhεh(x)は、所望の周波数(fl、fm及びfh)からεl、εm、εh離れた周波数におけるリターンロスである。
このように、所望の周波数に近い周波数におけるリターンロスも低くなるように重み付けることによって、所望の特性が特異点でのみ現れることを避けている。
また、第1項及び第2項では、3波(fl、fm及びfh)の中で最も低いリターンロス及び利得に強い重みをかけるために、3波(fl、fm及びfh)の中で最も低いリターンロス及び利得を選んで重みを付けている。
第3項〜第8項は、各周波数におけるリターンロス及び利得が所望値に近づくにつれて評価が高くなり、所望値となった後では、リターンロス及び利得が所望値が所望値以上となっても評価が変わらないように定義されている。
(アンテナの構成)
以下において、本発明の第1の実施形態に係るアンテナの構成について、図面を参照しながら説明する。図3は、本発明の一実施形態に係るアンテナ100の構成を示す模式図である。
図3に示すように、アンテナ100は、スクロール形状のアンテナ素子面110と、板状の地板120とによって構成される。また、スクロール形状のアンテナ素子面110は、その一辺で地板120に接しており、給電点101によって地板120に接続されている。
なお、アンテナ素子面110は、スクロール形状に限定されるものではなく、逆Fアンテナの形状、逆Lアンテナの形状、柱状の形状、地板120と同一平面上にアンテナ素子面110が連続する形状などであってもよい。
図4は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ100の最終形状を示す図である。図4に示すように、アンテナ素子面110には、金属が配置されたブロックと金属が配置されていないブロックとによって構成されている。なお、アンテナ素子面110上に配置された金属のパターンは、遺伝的アルゴリズムに基づいて計算されるが、染色体の割当て方や計算方法については後述する。
(アンテナ素子面の構成)
以下において、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ素子面の構成について、図面を参照しながら説明する。図5は、本発明の一実施形態に係るアンテナ素子面110を示す展開図である。
図5に示すように、アンテナ素子面110は、複数のブロックに区切られており、各ブロックは、点ではなくて一辺で他のブロックと接している。また、アンテナ素子面110には、遺伝的アルゴリズムが適用される際に基準とされるブロック(以下、基準点ブロック)が配置されており、各基準点ブロックには、1〜nの識別番号が割り振られている。
また、基準点ブロックには、後述するように、基準点ブロックの周辺に位置するブロック(以下、周辺ブロック)のうち、どのブロックの金属を除去するかを示すbit列が染色体として割当てられる。
なお、本実施形態において、周辺ブロックとは、基準点ブロックの右側に隣接するブロック、基準点ブロックの右上のブロック、及び、基準点ブロックの上側に隣接するブロックである。
なお、本実施形態では、基準点ブロックについては、金属がデフォルトで除去されるようにbit列(染色体)が割当てられており、基準点ブロックの右上のブロックについては、金属がデフォルトで除去されないようにbit列(染色体)が割当てられている。一方、基準点ブロックの上側に隣接するブロック及び基準点ブロックの右側に隣接するブロックについては、金属が除去されるか否かがbit列に応じて定められる。
このように、基準点ブロックに割当てられる識別番号及びbit列によって、アンテナ素子面110の金属配置パターンが定められる。
また、上述したように、アンテナ素子面110は、その一辺(地板接地領域)で地板120に接地している。この地板接地領域の最下層のブロックのうち、金属が除去されないブロックがある場合には、そのブロックは、アンテナ素子面110と地板120との間を短絡する短絡素子として機能する。
図6は、本発明の第1の実施形態に係る他のアンテナ素子面110を示す展開図である。図6に示すように、遺伝的アルゴリズムに基づいて金属配置パターンを計算する際に、基準点ブロックの高さ(RZj)の設定を自由に変更してもよい。なお、基準点ブロックの高さ(RZj)の変更に伴って、ラインの高さ(LZj)も変更される。
また、基準点ブロックの高さと同様に、基準点ブロックの幅(RXj、RYj)の設定を自由に変更してもよい。なお、基準点ブロックの幅(RZj)の変更に伴って、ラインの幅(LXj、LYj)も変更される。
以下において、本発明の第1の実施形態に係る基準点ブロックに割当てられるbit列(染色体)について説明する。図7は、本発明の第1の実施形態に係る基準点ブロックに割当てられるbit列(染色体)を示す図である。
図7(a)〜図7(d)に示すように、基準点ブロックには、2bit長のbit列が割当てられる。
図7(a)に示すように、基準点ブロックに“00”が割当てられる場合には、基準点ブロックの上側及び右側に隣接するブロックの金属が除去され、図7(b)に示すように、基準点ブロックに“10”が割当てられる場合には、基準点ブロックの右側に隣接するブロックの金属が除去される。
同様に、図7(c)に示すように、基準点ブロックに“01”が割当てられる場合には、基準点ブロックの上側に隣接するブロックの金属が除去され、図7(d)に示すように、基準点ブロックに“11”が割当てられる場合には、いずれの周辺ブロックの金属も除去されない。
また、本実施形態では、地板接地領域の最下層のブロックに基準点ブロックが含まれているため、アンテナ素子面110と地板120とを短絡するブロックが遺伝的アルゴリズムに基づいて計算される。従って、アンテナ素子面110と地板120とを短絡する位置や数について多様性を持たせることができる。
(アンテナ設計方法)
以下において、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ設計方法について、図面を参照しながら説明する。図8は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ設計方法を示す図である。ここで、図8に示すように、計算機10a〜計算機10hは、選択、交叉及び突然変異を並列で処理する。
また、計算機10aの処理は、計算機10b〜計算機10hの処理と同様であるため、ステップ10a〜ステップ60aを例に説明する。
ステップ10aにおいて、計算機10aは、金属配置パターンを示すbit列、すなわち、上述した基準点ブロックに割当てられたbit列の組合せを個体としてランダムに生成し、所定数の個体を「初期集団a」として取得する。
ステップ20aにおいて、計算機10aは、アンテナ設計方法の計算を終了する条件(以下、計算終了条件)が満たされているか否かを判定する。
ここで、計算終了条件とは、後述するステップ70(「初期集団構成個体群」の抽出)の回数が予め定められた回数となったこと、処理を開始してから経過した時間が予め定められた時間となったこと、後述する評価結果計算部14によって計算されたアンテナ特性に係る評価が予め定められた評価となったことなどである。
また、計算機10aは、計算終了条件が満たされている場合には、アンテナ設計方法に係る処理を終了し、計算終了条件が満たされていない場合には、ステップ30aの処理に移る。
ステップ30aにおいて、計算機10aは、「初期集団a」に含まれる個体の中から、次世代の個体(子となる個体)を生成するために複数の個体(親となる個体)を選択する。ここで、計算機10aは、親となる個体を選択する際に、アンテナ特性に係る評価が高い順に個体を選択することが好ましい。
ステップ40aにおいて、計算機10aは、親となる個体に含まれるbitを所定の交叉確率で交叉させ、子となる個体を生成する。なお、上述したように、交叉されるbitは、1つ(1点交叉)であっても、2つ(2点交叉)であってもよい。
ステップ50aにおいて、計算機10aは、所定の突然変異確率で子となる個体に含まれるbitを反転させる。
ステップ60aにおいて、計算機10aは、ラウンド終了条件が満たされたか否かを判定する。
ここで、ラウンド終了条件とは、上述したように、処理された世代数が予め定められた世代数となったこと、処理を開始してから経過した時間が予め定められた時間となったこと、後述する評価結果計算部14によって計算されたアンテナ特性に係る評価が予め定められた評価となったことなどである。
また、計算機10aは、ラウンド終了条件が満たされている場合には、ステップ70の処理に移り、ラウンド終了条件が満たされていない場合には、ステップ30aの処理に戻る。
ステップ70において、計算機10aは、自計算機10aによる計算によって取得された「子集団a」及び他の計算機10による計算によって取得された「子集団」(「子集団b〜子集団h」の中から所定数の個体を「初期集団構成個体群a」として抽出する。また、計算機10aは、「初期集団構成個体群a」を含む「初期集団a」を再生成し、ステップ20aの処理に戻る。
(「初期集団構成個体群」の抽出方法)
以下において、本発明の第1の実施形態に係る「初期集団構成個体群」の抽出方法について、図面を参照しながら説明する。図9及び図10は、上述した「初期集団構成個体群」の抽出方法を示す図である。
まず、「初期集団構成個体群」の抽出方法の一例について、図9を参照しながら説明する。
図9に示すように、各計算機10は、選択、交叉及び突然変異に係る処理をラウンド終了条件が満たされるまで繰り返すことによって、金属配置パターンの集団である「初期集団」(「初期集団a」〜「初期集団h」)から金属配置パターンの集団である「子集団」(「子集団a」〜「子集団h」)をそれぞれ取得する。
次に、各計算機10によって取得された「子集団」(「子集団a」〜「子集団h」)の中から、アンテナ100のアンテナ特性に係る評価が高い順に選択された個体(金属配置パターン)の集団が「エリート集団」(「エリート集団a」〜「エリート集団h」)としてそれぞれ抽出される。
ここで、計算機10aを例に挙げて説明すると、計算機10aは、各計算機10によって取得された「子集団」(「子集団a」〜「子集団h」)からそれぞれ抽出された「エリート集団」(「エリート集団a」〜「エリート集団h」)を集めて、集められた「エリート集団」の中から「初期集団構成個体群a」を抽出する。また、計算機10aは、「初期集団構成個体群a」を含む「初期集団a」を用いて、選択、交叉及び突然変異に係る処理を再開する。
計算機10b〜計算機10hについても、計算機10aと同様にして、「エリート集団」(「エリート集団a」〜「エリート集団h」)の中から「初期集団構成個体群b」〜「初期集団構成個体群h」をそれぞれ抽出して、「初期集団構成個体群b」〜「初期集団構成個体群h」をそれぞれ含む「初期集団b」〜「初期集団h」を用いて、選択、交叉及び突然変異に係る処理を再開する。
次に、「初期集団構成個体群」の抽出方法の他の例について、図10を参照しながら説明する。
図10に示すように、各計算機10は、選択、交叉及び突然変異に係る処理をラウンド終了条件が満たされるまで繰り返すことによって、金属配置パターンの集団である「初期集団」(「初期集団a」〜「初期集団h」)から金属配置パターンの集団である「子集団」(「子集団a」〜「子集団h」)をそれぞれ取得する。
次に、各計算機10によって取得された「子集団」(「子集団a」〜「子集団h」)の中から、アンテナ100のアンテナ特性に係る評価が高い順に選択された個体(金属配置パターン)の集団が「エリート集団」(「エリート集団a」〜「エリート集団h」)としてそれぞれ抽出される。
また、各計算機10によって取得された「子集団」(「子集団a」〜「子集団h」)の中からランダムに選択された個体(金属配置パターン)の集団が「ランダム集団」(「ランダム集団a」〜「ランダム集団h」)としてそれぞれ抽出される。
ここで、計算機10aを例に挙げて説明すると、計算機10aは、各計算機10によって取得された「子集団」(「子集団a」〜「子集団h」)からそれぞれ抽出された「エリート集団」(「エリート集団a」〜「エリート集団h」)及び「ランダム集団」(「ランダム集団a」〜「ランダム集団h」)を集めて、集められた「エリート集団」及び「ランダム集団」の中から「初期集団構成個体群a」を抽出する。また、計算機10aは、「初期集団構成個体群a」を含む「初期集団a」を用いて、選択、交叉及び突然変異に係る処理を再開する。
計算機10b〜計算機10hについても、計算機10aと同様にして、「エリート集団」(「エリート集団a」〜「エリート集団h」)及び「ランダム集団」(「ランダム集団a」〜「ランダム集団h」)の中から「初期集団構成個体群b」〜「初期集団構成個体群h」をそれぞれ抽出して、「初期集団構成個体群b」〜「初期集団構成個体群h」をそれぞれ含む「初期集団b」〜「初期集団h」を用いて、選択、交叉及び突然変異に係る処理を再開する。
なお、各計算機10によって取得された「子集団」から抽出される「ランダム集団」に含まれる個体の数は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
また、「初期集団構成個体群」としては、各計算機10に共通する「初期集団構成個体群」が抽出されてもよく、計算機10毎に異なる「初期集団構成個体群」が抽出されてもよい。
さらに、選択、交叉及び突然変異係る処理が再開される際に用いられる「初期集団」は、「初期集団構成個体群」のみによって構成されていてもよく、「初期集団構成個体群」に加えて、「初期集団構成個体群」以外の個体を含んでいてもよい。
(設定条件)
以下において、各計算機10に設定される設定条件の一例について、表を参照しながら説明する。表1及び表2は、本発明の一実施形態に係る設定条件の一例を示す表である。
表1に示すように、各計算機10には、アンテナ素子面110の高さ(HA)がアンテナ素子面のサイズとして設定され、基準点ブロックの高さ(RZj)がブロックのサイズとして設定されている。また、各計算機10には、アンテナ特性を評価する周波数の数及びラウンド終了条件が設定されている。
また、表2に示すように、各計算機10には、評価関数(例えば、上述した評価関数(O(x))で用いられる重付値が設定され、遺伝的アルゴリズムによる計算で用いられる交叉確率、突然変異確率及び乱数の種が設定されている。
このように、各計算機10には、互いに異なる設定条件がそれぞれ設定されている。なお、各計算機10に設定される設定条件の一部が共通していてもよいことは勿論である。
(作用及び効果)
上述した第1の実施形態に係るアンテナ設計方法によれば、アンテナ素子面のサイズ及びブロックのサイズを少なくとも含み、互いに異なる設定条件に従って遺伝的アルゴリズムが適用されて、「初期集団」から「子集団」が取得される。また、各計算機10によって取得された「子集団」の中から「初期集団構成固体群」が抽出される。さらに、各計算機10は、「初期集団構成固体群」を含む「初期集団」を用いて遺伝的アルゴリズムに係る処理を再開する。
従って、遺伝的アルゴリズムが適用されることによって取得される金属配置パターンに多様性を保つことができる。
また、金属配置パターンに多様性を持たせることにより、アンテナ特性を十分に最適化することができる。
また、各計算機10に設定される設定条件が、アンテナ素子面のサイズ及びブロックのサイズを少なくとも含み、互いに異なる条件であることにより、アンテナ素子面のサイズを何度も設定し直して、設定されたサイズ毎にアンテナ特性を十分に最適化する場合に比べて、アンテナ素子面の小型化をどこまで図ることができるかを容易に把握することができる。
すなわち、アンテナに設けられたアンテナ素子面の金属配置パターンに係る計算量を抑制することができる。
また、各計算機10が並列で処理を進めることにより、所望のアンテナ特性を有する金属配置パターンが計算されるまでの時間を短縮することができる。
さらに、アンテナ素子面の金属配置パターンに係る計算量を抑制することにより、計算に時間がかかるFDTD(Finite Difference Time Domain)法をアンテナ特性の評価方法として用いても、所望のアンテナ特性を有する金属配置パターンの計算の収束が極端に遅くなることを防止することができる。
(変更例)
各計算機10で用いられる評価関数の種類、評価関数による評価項目、評価関数に含まれる重付値は、互いに異なる値であることが好ましい。各計算機10で用いられるこれらの値が互いに異なっており、各計算機10によって取得された「子集団」の中から「初期集団構成個体群」を抽出することによって、個体(金属配置パターン)の多様性を保つことができる。
また、処理された世代数が所定の世代数となったことがラウンド終了条件である場合には、所定の世代数は、アンテナ特性を評価する周波数の数に応じて定められることが好ましい。
所定の世代数が、アンテナ特性を評価する周波数の数に応じて定められることにより、各計算機10が「初期集団」から「子集団」を取得するタイミングについて同期を取ることができ、各計算機10によって取得された「子集団」から「初期集団構成個体群」を抽出する際に、各計算機10の待ち時間を短くすることができる。
さらに、アンテナ100が誘電体を用いた構成を有している場合には、各計算機10に適用されるアンテナ特性の評価方法として、波長短縮率が設定されたFDTD法とモーメント法とを用いてもよい。
また、遺伝的アルゴリズムで適用される交叉確率及び突然変異確率、評価関数に用いられる重付値は、個体(金属配置パターン)の多様性を保つために、「初期集団」から取得された「子集団」から「初期集団構成個体群」が抽出される毎に変更されてもよい。
さらに、アンテナ設計プログラムが、上述したアンテナ設計方法をコンピュータに実行させてもよい。
また、上述した実施形態では、子となる個体(金属配置パターン)の計算は、複数の計算機10によって並列で行われるが、これに限定されるものではなく、計算結果を一時的にメモリ等に格納しておくことによって、一つの計算機10によって順次行われてもよい。
さらに、ラウンド終了条件は、各計算機10に共通であってもよく、計算機10毎に異なっていても良い。
また、金属を除去するか否かを示すbit列の割当て方(染色体の割当て方)については、上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な染色体の割当て方を本発明の一実施形態に係るアンテナ設計方法に適用してもよい。例えば、金属を除去するか否かを示す1bitのbit列を全てのブロックにそれぞれ割当ててもよい。
(実施例1)
以下において、本発明の実施例1について図面を参照しながら説明する。図11は、計算機10a〜計算機10hに設定された設定条件を示す図である。
なお、実施例1では、図5及び図6に示したアンテナ素子面のブロックの数及び図7に示した基準点ブロックに割当てられるbit列は、各計算機10に共通である。
図11に示すように、各計算機10には、14mm〜20mmの範囲内で互いに異なるアンテナ素子面の高さ(HA)をアンテナ素子面のサイズとして設定した。
また、各計算機10には、ライン幅(LZj)との比が0.85〜1.25の範囲内で互いに異なる基準点ブロックの高さ(RZj)をブロックのサイズとして設定した。
すなわち、基準点ブロックの高さ(RZj)はライン幅(LZj)との比で表されており、計算機10c、計算機10e及び計算機10fの基準点ブロックの高さ(RZj)は、実際には互いに異なる。
ラウンド終了条件は、処理された世代数が5世代となったことという共通の条件にして、各計算機10が「初期集団」から「子集団」を取得するタイミングについて同期をとった。
また、交叉確率、突然変異確率及び評価関数に含まれる重付値については、個体の多様性を保つために、計算機10毎に異なるものとした。
図12及び図13は、各世代におけるリターンロスを計算機10毎に示す図である。図12及び図13に示すように、各世代におけるリターンロスは、100世代を超えても最適値に近づいており、各計算機10による計算の多様性が保たれていることが確認できた。
これに加えて、図12に示すように、最も大きい高さ(20mm)がアンテナ素子面の高さ(HA)として設定された計算機10aによって計算された個体(金属配置パターン)のリターンロスは、遺伝的アルゴリズムを開始した当初から所望のレベル(−10dB以下)に達することが確認された。
2番目に大きい高さ(18mm)がアンテナ素子面の高さ(HA)として設定された計算機10bによって計算された個体(金属配置パターン)のリターンロスは、遺伝的アルゴリズムを開始してから75世代程で所望のレベル(−10dB以下)に達することが確認された。
3番目に大きい高さ(16mm)がアンテナ素子面の高さ(HA)として設定された計算機10cによって計算された個体(金属配置パターン)のリターンロスは、遺伝的アルゴリズムを開始してから270世代程で所望のレベル(−10dB以下)に達することが確認された。
最も小さい高さ(14mm)がアンテナ素子面の高さ(HA)として設定された計算機10dによって計算された個体(金属配置パターン)のリターンロスは、遺伝的アルゴリズムを開始してから300世代を超えても所望のレベル(−10dB以下)に達しないことが確認された。
一方、図13に示すように、計算機10aと同じ高さ(20mm)がアンテナ素子面の高さ(HA)として設定された計算機10eでは、計算機10aと基準点ブロックの高さ(RZj)が異なっていると、個体(金属配置パターン)のリターンロスは、300世代を超えても所望のレベル(−10dB以下)に達しないことが確認された。
計算機10bと同じ高さ(18mm)がアンテナ素子面の高さ(HA)として設定された計算機10fでは、計算機10bと基準点ブロックの高さ(RZj)が異なっていても、個体(金属配置パターン)のリターンロスは、遺伝的アルゴリズムを開始してから75世代程で所望のレベル(−10dB以下)に達することが確認された。
計算機10cと同じ高さ(16mm)がアンテナ素子面の高さ(HA)として設定された計算機10gでは、計算機10cと基準点ブロックの高さ(RZj)が異なっていると、個体(金属配置パターン)のリターンロスは、300世代を超えても所望のレベル(−10dB以下)に達しないことが確認された。
計算機10dと同じ高さ(14mm)がアンテナ素子面の高さ(HA)として設定された計算機10hでは、計算機10dと基準点ブロックの高さ(RZj)が異なっていても、個体(金属配置パターン)のリターンロスは、300世代を超えても所望のレベル(−10dB以下)に達しないことが確認された。
図14は、計算機10cによって計算された個体(金属配置パターン)のリターンロスを示す図である。図12に示すように、所望の3つの周波数におけるリターンロスが所望のレベル(−10dB以下)に達することが確認できた。
上述した考察結果の通り、個体(金属配置パターン)のリターンロスが所望のレベル(−10dB以下)に達した計算機のうち、最も小さい高さがアンテナ素子面の高さ(HA)として設定されていた計算機は、計算機10cであることが確認された。
このように、アンテナ素子面のサイズをどこまで小さくすることが可能であるか分からない状況であっても、互いに異なるアンテナ素子面のサイズ、及び、互いに異なる基準点ブロックの高さ(RZj)を各計算機10に設定することによって、所望の特性を有する最適な(最小の)アンテナ素子面を確認することができた。
これは、アンテナ素子面のサイズ及び基準点ブロックの高さ(RZj)として異なる値が設定された各計算機10によって取得された「子集団」(「子集団a」〜「子集団h」)の一部を含む「初期集団構成個体群」を用いて、遺伝的アルゴリズムに係る計算が再開されることによって、各計算機10による計算の多様性が図られた結果であると考えられる。
(実施例2)
以下において、本発明の実施例2について図面を参照しながら説明する。図15は、計算機10a〜計算機10hに設定された設定条件を示す図である。
なお、実施例2では、図5及び図6に示したアンテナ素子面のブロックの数及び図7に示した基準点ブロックに割当てられるbit列は、各計算機10に共通である。
図15に示すように、各計算機10には、アンテナ素子面の高さ(HA)として共通な値(20mm)を設定した。また、各計算機10には、指数表示で0.85〜1.25の範囲内で互いに異なる基準点ブロックの高さ(RZj)をブロックのサイズとして設定した。
さらに、計算機10a〜計算機10dには、アンテナ特性を評価する周波数の数として“3”を設定し、処理された世代数が10世代となったことをラウンド終了条件として設定した。
一方、計算機10e〜計算機10hには、アンテナ特性を評価する周波数の数として“6”を設定し、処理された世代数が5世代となったことをラウンド終了条件として設定した。
このように、アンテナ特性を評価する周波数の数に応じて、選択、交叉及び突然変異に係る処理を繰り返す世代数を定めることによって、各計算機10が「初期集団」から「子集団」を取得するタイミングについて同期をとった。
図16は、各計算機によって計算された個体(金属配置パターン)のうち、最適な個体のリターンロスを示す図である。図16に示すように、所望の3つの周波数におけるリターンロスが所望のレベル(−10dB以下)に達することが確認できた。このように、第2実施例では、所望の3つの周波数におけるリターンロスが所望のレベル(−10dB以下)に達する基準点ブロックの高さ(RZj)を見つけることができた。
<第2の実施形態>
図17乃至図21を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。以下、上述の第1の実施形態との相違点を主として、本発明の第2の実施形態について説明する。
本実施形態に係るアンテナ設計方法は、図17(a)に示すような「open状態(すなわち、携帯通信端末の金属板120A,120Bを開いた状態)」や、図17(b)に示すような「close状態(すなわち、携帯通信端末の金属板120A,120Bを閉じた状態)」といった異なる状態で使用されることが想定される携帯通信端末用のアンテナにおいて、設計条件を満足するように設計を行うものである。
また、本実施形態に係るアンテナ設計方法は、半田の方法や材料の違い等から生じる個体ごとのバラつきのような異なる形状で使用されることが想定される携帯通信端末用のアンテナにおいて、設計条件を満足するように設計を行うものである。
図18に、図17に示すように、ヒンジ5近くにアンテナ100を設置した携帯通信端末において、従来のアンテナ設計方法によって計算された金属配置パターンを有するアンテナ100におけるリターンロス(open状態及びclose状態のそれぞれについて)を示す。
図18に示すように、従来のアンテナ設計方法によって計算された金属配置パターンを有するアンテナ100では、「open状態」の場合の共振周波数と「close状態」の場合の共振周波数との間で、ずれが大きくなっていることが確認できる。
図19に示すように、本実施形態に係るアンテナ設計方法は、所定数のブロックに区切られたアンテナ素子面が設けられたアンテナ100を設計するものである。
そして、本実施形態に係るアンテナ設計方法では、携帯通信端末が「open状態」であるものとして計算されて取得された「第1の子集団」を、携帯通信端末が「close状態」であるものとして評価し、携帯通信端末が「colese状態」であるものとして計算されて取得された「第2の子集団」を、携帯通信端末が「open状態」であるものとして評価する。そして、かかる動作を繰り返すことによって、「open状態」及び「colese状態」のいずれの状態においても、所望特性を満たすアンテナ100を設計する。
以下において、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ設計方法について、図面を参照しながら説明する。図20は、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ設計方法を示す図である。ここで、図20に示すように、計算機10a,計算機10bは、選択、交叉及び突然変異を並列で処理する。なお、並列で処理を行う計算機10の数は、2つ以上であってもよい。
ステップ10aにおいて、計算機10aは、金属配置パターンを示すbit列、すなわち、上述した基準点ブロックに割当てられたbit列の組合せを個体としてランダムに生成し、所定数の個体を「初期集団a」として取得する。
ステップ20aにおいて、計算機10aは、アンテナ設計方法の計算を終了する条件(以下、計算終了条件)が満たされているか否かを判定する。
ここで、計算終了条件とは、後述するステップ71a(「子集団a」の抽出)の回数が予め定められた回数となったこと、処理を開始してから経過した時間が予め定められた時間となったこと、後述する評価結果計算部14によって計算されたアンテナ特性に係る評価が予め定められた評価となったことなどである。
また、計算機10aは、計算終了条件が満たされている場合には、アンテナ設計方法に係る処理を終了し、計算終了条件が満たされていない場合には、ステップ30aの処理に移る。
ステップ30aにおいて、計算機10aは、「初期集団a」に含まれる個体の中から、次世代の個体(子となる個体)を生成するために複数の個体(親となる個体)を選択する。ここで、計算機10aは、親となる個体を選択する際に、アンテナ特性に係る評価が高い順に個体を選択することが好ましい。
ステップ40aにおいて、計算機10aは、親となる個体に含まれるbitを所定の交叉確率で交叉させ、子となる個体を生成する。なお、上述したように、交叉されるbitは、1つ(1点交叉)であっても、2つ(2点交叉)であってもよい。
ステップ50aにおいて、計算機10aは、所定の突然変異確率で子となる個体に含まれるbitを反転させる。
ステップ60aにおいて、計算機10aは、ラウンド終了条件が満たされたか否かを判定する。
ここで、ラウンド終了条件とは、上述したように、処理された世代数が予め定められた世代数となったこと、処理を開始してから経過した時間が予め定められた時間となったこと、後述する評価結果計算部14によって計算されたアンテナ特性に係る評価が予め定められた評価となったことなどである。
また、計算機10aは、ラウンド終了条件が満たされている場合には、ステップ71aの処理に移り、ラウンド終了条件が満たされていない場合には、ステップ30aの処理に戻る。
ステップ71aにおいて、計算機10aは、自計算機10aによる計算によって取得された「子集団a」を取得する。
そして、ステップ10bにおいて、計算機10bは、計算機10aによる計算によって取得された第1の子集団を、初期集団bとして用いてステップ10b乃至71bを行って、第2の子集団を計算して取得する。
その後、ステップ10aにおいて、計算機10aは、計算機10bによる計算によって取得された第2の子集団を、初期集団aとして用いてステップ10a乃至71aを再開する。
なお、ステップ10aにおいて、計算機10aは、計算機10bによる計算によって取得された第2の子集団ではなく、計算機10aによる計算によって取得された第1の子集団を、初期集団aとして用いてステップ10a乃至71aを再開してもよい(図27乃至図31参照)。
すなわち、本実施形態に係るアンテナ設計方法では、図21に示すように、ラウンド1では、計算機10aが、ランダムに生成された初期集団aを用いて、「close」状態の携帯通信端末におけるアンテナ100の最適化を図る(すなわち、最適な金属配置パターンであると推定される子集団aを取得する)と共に、計算機10bが、ランダムに生成された初期集団bを用いて、「open」状態の携帯通信端末におけるアンテナ100の最適化を図る(すなわち、最適な金属配置パターンであると推定される子集団bを取得する)。
具体的には、上述の第1の実施形態と同様に、ラウンド1において、計算機10aは、アンテナ素子面のサイズ又はブロックのサイズを少なくとも含む第1の設定条件に従って、ラウンド1の終了条件(第1のラウンド終了条件)が満たされるまで遺伝的アルゴリズムを適用して、かかるブロックに金属が配置されているか否かを示す金属配置パターンの集団である初期集団aから、かかる金属配置パターンの集団である第1の子集団を取得する。
同様に、ラウンド1において、計算機10bは、アンテナ素子面のサイズ又はブロックのサイズを少なくとも含み、上述の第1の設定条件と異なる第2の設定条件に従って、ラウンド1の終了条件(第2のラウンド終了条件)が満たされるまで遺伝的アルゴリズムを適用して、初期集団bから、金属配置パターンの集団である第2の子集団を取得する。
ラウンド2では、計算機10aが、ラウンド1で取得された子集団bを初期集団aとして用いて、「close」状態の携帯通信端末におけるアンテナ100の最適化を図る(すなわち、最適な金属配置パターンであると推定される子集団aを取得する)と共に、計算機10bが、ラウンド1で取得された子集団aを初期集団bとして用いて、「open」状態の携帯通信端末におけるアンテナ100の最適化を図る(すなわち、最適な金属配置パターンであると推定される子集団bを取得する)。
すなわち、ラウンド2では、計算機10aが、ラウンド1で取得された子集団bを初期集団aとして用いて、ラウンド1と同様の動作を再開し、計算機10bが、ラウンド1で取得された子集団aを初期集団bとして用いて、ラウンド1と同様の動作を再開する。
ラウンド3以降も、本実施形態に係るアンテナ設計方法における計算終了条件を満たすまで、かかる動作を繰り返すことによって、「open状態」と「close状態」といった異なる状態において、それぞれ所望特性を満たす個体(金属配置パターン)を取得することができる。
なお、各ラウンドにおいて、計算機10a又は計算機10bの少なくとも一方が、上述の第1の実施形態に係るアンテナ設計方法によって取得される最適な金属配置パターンを、子集団a又は子集団bとして取得するように構成されていてもよい。
すなわち、各ラウンドにおいて、計算機10a又は計算機10bの少なくとも一方が、ステップ(1)において、一の設定条件に従って、一のラウンド終了条件が満たされるまで遺伝的アルゴリズムを適用して、前記初期集団から前記金属配置パターンの集団である子集団を取得し、ステップ(2)において、アンテナ素子面のサイズ又はブロックのサイズを少なくとも含み、一の設定条件と異なる他の設定条件に従って、他のラウンド終了条件が満たされるまで遺伝的アルゴリズムを適用して、初期集団から子集団を取得する他の計算ステップと、ステップ(3)において、ステップ(1)で取得された子集団及びステップ(2)で取得された子集団の中から、所定数の金属配置パターンの集団を初期集団構成個体群として抽出することによって取得された子集団を、上述の子集団a(第1の子集団)又は子集団b(第2の子集団)としてもよい。
ここで、初期集団構成個体群には、ステップ(1)で取得された子集団及びステップ(2)で取得された子集団の一部が少なくとも含まれており、ステップ(1)及びステップ(2)は、ステップ(3)で抽出された初期集団構成個体群を含む初期集団を用いて再開されるものとする。
また、各ラウンドにおいて、図20のステップ60a及び60bにおけるラウンド終了条件を、世代数によって決定し、かかる世代数を小さい値にすれば、各ラウンドにおいて個体(子集団)を早く作ることが可能になるが、かかる世代数をあまりに小さくすると、各計算機間でデータをやり取りするだけになってしまい、子集団の最適化が進まなくなる(進化しなくなる)場合がある。
したがって、かかる点を解消する手段として、各ラウンドにおいて、各計算機における子集団の評価値が、前のラウンドにおける評価値よりも改善されることを、図20のステップ60a及び60bにおけるラウンド終了条件としてもよい。
(変更例)
なお、上述のアンテナ設計方法は、所定数のブロックに区切られたアンテナ素子面が設けられたアンテナを設計する場合に限定されず、任意の構造のアンテナを設計する場合に適用可能である。
例えば、上述のアンテナ設計方法によれば、携帯通信端末が開閉したり、携帯通信端末のアンテナが伸縮したりするように、構造が変換するアンテナを設計する場合にも適用可能である。
(実施例3)
次に、図22乃至図24を参照して、実施例3について説明する。
すなわち、図22に示すように、上述の第2の実施形態に係るアンテナ設計方法を用いて設計したアンテナ100を、携帯通信端末のトップの位置に設置した場合の実施例3について説明する。
図23は、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ設計方法によって計算した最終結果の金属配置パターンのアンテナ素子面を有するアンテナ100について、「open状態」の場合と、「close状態」の場合のリターンロスの周波数特性を求めたものである。
図18に示す従来技術に係るアンテナの例では、「close状態」の特性が劣化してしまったのに対して、図23に示す本実施形態に係るアンテナ設計方法で設計されたアンテナの場合には、「open状態」及び「close状態」のいずれの場合でも、「リターンロスが、−7dB以下である」という所望特性を満たしている。
ここで、周波数比は、図18の場合と同様に、857.5:1795:2045と設定した。
図24に、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ設計方法によって設計されたアンテナについて、世代ごとのリターンロスの変化の様子を示す。
ここで、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ設計方法において、「open状態」で、3つの所望周波数において所望特性を満たすものを、「close状態」における初期集団として計算を始めた。また、集団数(人口)を「30」とし、各ラウンドにおける世代数を「2」とした。
元々、「open状態」において評価の高い個体(金属配置パターン)を初期集団としているため、2世代ごと、すなわち、ラウンドが変わるたびに、かかるアンテナの特性が増減する。
すなわち、「close状態」及び「open状態」における優良個体を、次のラウンドで、「close状態」及び「open状態」に代入すると特性が劣化する。
かかる動作を何度も繰り返すことにより、リターンロスの最悪値が、次第に小さくなっていくことがわかる。
「close状態」及び「open状態」のいずれの場合のリターンロスの最悪値も、−6dB以下となってから、約30世代で計算を終了した。
ここで、それぞれ計算機ごとの人口を「30」としているため、最終世代の評価値が最も高い個体は、2つの計算機で同じとは限らない。
なお、図23におけるのデータは、「close状態」の最優良個体(金属配置パターン)を、アンテナ素子面に採用して、「close状態」及び「open状態」における特性を、それぞれ計算して求めたものである。
(実施例4)
次に、図25及び図26を参照して、実施例4について説明する。
すなわち、図17に示すように、上述の第2の実施形態に係るアンテナ設計方法を用いて設計したアンテナ100を、携帯通信端末におけるヒンジ5の近くに設置した場合の実施例4について説明する。
図25は、上述の第2の実施形態に係るアンテナ設計方法を、図17に示すように、ヒンジ5の近くに設置されたアンテナ100について、「close状態」及び「open状態」の両方の状態で、所望特性を満たすための設計に適用した場合の例であり、世代ごとのリターンロスの変化の様子を示している。
実施例4においては、各ラウンドにおける計算を、10世代とした。「open状態」のときに所望特性を満たす個体群を、「close状態」における初期集団とする設定を用いた。
「close状態」の場合のリターンロス特性に着目すると、各ラウンドにおいて、ラウンド終了条件に達するまで(10世代ごと)、3つの周波数におけるリターンロスの最悪値が小さくなるように動作するが、ラウンドが変わると、「open状態」において最適化されたデータと入れ替わるため、リターンロスの最悪値が悪い方に引き戻される。
しかしながら、ラウンドが繰り返されるにつれて、徐々に引き戻されたリターンロスの最悪値も、小さくなるように収束していく様子が確認できる。
一方、「open状態」の場合のリターンロス特性に着目すると、元々、「open状態」で特性の高いものを、「close状態」における初期集団としているため、ラウンド1で、かかる初期集団の進化したものが、「open状態」における初期集団として入るため、初めの方の特性がよく、「close状態」におけるリターンロスの優良値と融合されることにより、一旦、やや特性が劣化する。
図26に、実施例4における「close状態」の最終個体を用いて、アンテナ100を形成し、かかるアンテナ100について、「open状態」の場合と「close状態」の場合とで比較したリターンロスの周波数特性を示す。
域が得られていることが確認できる。
図26に示す本実施形態に係るアンテナ設計方法で設計されたアンテナの場合も、「open状態」及び「close状態」のいずれの場合でも、「リターンロスが、−7dB以下である」という所望特性を満たしている。