JP5090431B2 - 受容器電位誘発剤のための有機色素化合物のスクリーニング方法 - Google Patents

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この発明は、視神経において、光刺激に応じた受容器電位を誘発する、受容器電位誘発剤のための有機色素化合物のスクリーニング方法とその用途に関するものである。
周知のとおり、視覚は、目が光刺激を電気エネルギーに変換し、脳がその色や形を識別し、判断することによって成立する。目に入った光刺激は網膜において電気エネルギーに変換され、視細胞にある受容器の閾値を超える光刺激が網膜上に結像すると、視神経に受容器電位が誘発され、インパルスの形で上位中枢へ伝達される。視覚が成立するうえで、光刺激を電気エネルギーに変換する網膜の機能は極めて重要であり、網膜が傷病などによって障害を受けると、視野狭窄、視力低下、夜盲などの視覚障害を招来することとなる。
現在、我国においては、網膜の障害による視野狭窄、視力低下、夜盲などの視覚障害に悩む患者が数百万人いると言われている。網膜障害の原因は網膜色素変性症、加齢黄斑変性症、糖尿病網膜症などの疾患によることが多く、例えば、厚生労働省が「特定疾患」に指定している、いわゆる、「難病」の一つである網膜色素変性症の場合、先天的素因により視細胞が変性して視野暗点を招来し、これが徐々に進行して失明にいたる。ただし、網膜がなんらかの障害を被ったとしても、例えば、網膜色素変性症などのように、傷害が視細胞に止まり、視神経が実質的に健常である場合には、光刺激を電気信号に変換し、視神経へ伝達する仕組みを人為的に設けることによって、視覚が完全には回復しないまでも、視野が明るくなり、いわゆる、「生活の質」が改善されるものと期待される。
現在、斯界においては、電荷結合素子(CCD)などの光電変換素子を主体とする光センサーをチップ状に形成し、これを眼球内外へ取り付けることによって、網膜の障害に起因する視覚障害を克服しようとする、いわゆる、「人工網膜」などの網膜代替用材の研究が鋭意進められている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。しかしながら、これまでに提案されている人工網膜は、光センサーや、光センサーを駆動するための外部電源の小型化が難しいことから、実際に眼球内へ挿入して用い得るものが開発されるまでには、今後、幾多の困難を解消しなければならないものと推定される。
特表平8−511697号公報 特表平11−506662号公報
斯かる状況に鑑み、この発明の課題は、視神経において、光刺激に応じた受容器電位を誘発する、受容器電位誘発剤のための有機色素化合物のスクリーニング方法とその用途にあり、視神経において、光刺激に応じた受容器電位を効果的に誘発し得る有機化学材料とその用途を提供することにある。
本発明者が吸光性有機色素化合物に着目し、鋭意研究し、検索した結果、ポリメチン系色素をはじめとする吸光性有機色素化合物のあるものは、動物の視神経、とりわけ、視神経を構成する網膜神経細胞において、光刺激に応じた受容器電位を誘発するという従来未知の全く新規な知見に到達した。そして、斯かる有機色素化合物を含んでなる受容器電位誘発剤は、網膜代替用材において、視覚関連物質を代替する材料として有利に用い得ることを見出した。
すなわち、この発明は、、視神経において、光刺激に応じた受容器電位を誘発する、受容器電位誘発剤のための有機色素化合物のスクリーニング方法を提供することにあり、視神経において、光刺激に応じた受容器電位を誘発する有機色素化合物を含んでなる受容器電位誘発剤を提供することによって前記課題を解決するものである。
さらに、この発明は、斯かる受容器電位誘発剤を用いる網膜代替用材を提供することによって前記課題を解決するものである。
この発明は、諸種の吸光性有機色素化合物のなかに、視神経において、光刺激に応じた受容器電位を誘発するものがあるという独自の知見に基づくものである。斯かる有機色素化合物を含んでなるこの発明の受容器電位誘発剤は、傷病に伴う網膜の障害に起因する視野狭窄、視力低下、夜盲などの視覚障害や、薬物中毒、視覚中枢の神経障害、網膜の疾患、特定の錘体の欠如に起因する色覚異常を緩和したり解消するための人工網膜をはじめとする網膜代替用材において、視覚関連物質を代替する材料として極めて有用である。
この発明でいう有機色素化合物とは、視神経において、光刺激に応じた受容器電位を誘発する有機化合物全般、とりわけ、可視領域に吸収極大を有し、可視光が入射すると、視神経、特に、視神経を構成する網膜神経細胞において、光刺激に応じた受容器電位を誘発する有機色素化合物を意味するものとする。いかなる構造の有機色素化合物であろうとも、それが、可視光に対する吸光能を具備し、かつ、視神経において、光刺激に応じた受容器電位を誘発するものであるかぎり、この発明において有利に用いることができる。斯かる有機色素化合物の具体例としては、可視領域における青色域、緑色域及び/又は赤色域の光を吸収する、例えば、アクリジン系、アザアヌレン系、アゾ系、アントラキノン系、インジゴ系、インダンスレン系、オキサジン系、キサンテン系、クマリン系、ジオキサジン系、チアジン系、チオインジゴ系、テトラポルフィラジン系、トリフェニルメタン系、トリフェノチアジン系、ナフトキノン系、フタロシアニン系、ベンゾキノン系、ベンゾピラン系、ベンゾフラノン系、ポリメチン系、ポルフィリン系及びローダミン系のものが挙げられる。
好ましい有機色素化合物としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などの脂肪族炭化水素基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、クロヘキシル基、シクロヘキセニル基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、ビフェニリル基などの芳香族炭化水素基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基などによる置換基を1又は複数有することあるジメチン鎖、トリメチン鎖、テトラメチン鎖、ペンタメチン鎖、ヘキサメチン鎖、へプタメチン鎖などのポリメチン鎖の両端に、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−ペンテニル基、ヘキシル基、イソヘキシル基などの脂肪族炭化水素基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの脂環式炭化水素基、フェニル基などの芳香族炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのエーテル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基などのエステル基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基などのアミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、さらには、それらの組合わせによる置換基を1又は複数有することある、互いに同じか異なるイミダゾール環、インダンジオン環、インドレニン環、オキサゾール環、キノリン環、セレナゾール環、チアゾリン環、チアゾール環、チオオキサゾリドン環、チオナフテン環、チオバルビツール酸環、チオヒダントイン環、ナフトオキサゾール環、ナフトセレナゾール環、ナフトチアゾール環、ピラゾロン環、ピリジン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾインドレニン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾセレナゾール環、ベンゾチアゾール環、ロダニン環などの環状核が結合してなる、例えば、オキソノール色素、シアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素などのポリメチン系の有機色素化合物が挙げられ、これらのうちで、可視領域における青色域、緑色域及び/又は赤色域の光を吸収するものが特に好ましい。ポリメチン系有機色素化合物における対イオンとしては、例えば、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオンなどの陰イオンや、アンモニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオンなどの陽イオンから選択され、分子内に陰又は陽に荷電する置換基を有する場合には、見掛け上、対イオンを有しない。
斯かる有機色素化合物の具体例としては、例えば、化学式1乃至化学式17で表されるものが挙げられる。生体における光電変換過程は、光刺激による視物質のシス−トランス異性化を経由していると言われており、公知の網膜代替用材においても、光刺激によってシス−トランス異性化する化合物を採用する試みがあるけれども、上記した有機色素化合物は、いずれも、光照射してもシス−トランス異性化を招来することがない。この発明は、光照射によってシス−トランス異性化しない化合物であっても、網膜代替用材として用い得ることを明らかにするものである。
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ちなみに、斯かるポリメチン系の有機色素化合物は、いずれも、例えば、速水正明監修、『感光色素』、産業図書株式会社、1997年10月17日発行、11乃至31頁に記載された方法か、それらの方法に準じて所望量を得ることができる。市販品がある場合には、必要に応じて、それを精製して用いればよい。また、有機色素化合物が、視神経において、光刺激に応じた受容器電位を誘発する性質を具備するかどうかは、例えば、一戸裕子編集、『実験医学』、1989年4月5日、株式会社羊土社発行、第7巻、第6号に記載された細胞内カルシウム実験法に準じて、蛍光カルシウム指示薬を含有する培養液中で動物の網膜細胞を培養する際、有機色素化合物を培養液中に共存させたときに指示薬から放出される蛍光の強度や細胞内に発生する電位を調べることによって判定することができる。
この発明でいう受容器電位誘発剤とは、用途に応じた斯かる有機色素化合物の1又は複数を含んでなるものである。ただし、この発明の受容器電位誘発剤は、発明の目的を逸脱しない範囲で、斯かる有機色素化合物の1又は複数とともに、用途に応じたそれ以外の、例えば、眼科用剤、賦形剤、溶解剤、安定化剤、抗酸化剤、その他の調製用剤の1又は複数を含んでいてもよい。用途にもよるけれども、この発明の受容器電位誘発剤を網膜代替用材として、例えば、視覚障害や色覚異常の患者へ適用する場合には、可視領域に吸収極大を有し、かつ、吸収極大波長が互いに相違する複数の有機色素化合物を組み合わせることによって、受容器電位誘発剤の主体となる有機色素化合物が、全体として、全可視領域に亙って吸光能を発揮するようにするのが望ましい。
この発明の受容器電位誘発剤の用途について説明すると、既述したとおり、この発明で用いる有機色素化合物は、視神経において、光刺激に応じた受容器電位を誘発する性質を具備することから、傷病などによる視覚傷害や、傷病若しくは先天的素因による色覚異常を緩和したり解消するための網膜代替用材を作製するための材料、とりわけ、視覚関連物質を代替するための材料として極めて有用である。
この発明でいう網膜代替用材とは、人をはじめとする動物の網膜の一部又は全体の機能を代替し得る人工材料を意味するものとする。具体的には、視覚関連物質の代替物として、この発明の受容器電位誘発剤を薬理学的に許容し得る、例えば、水、エタノール、ジメチルスルホキシド若しくはそれらの混液などの溶剤を用いて溶液の形態となし、これを注射などによって眼球内へ導入するもの、さらには、受容器電位誘発材の主体となる有機色素化合物を不溶性の基材へ付着させた形態となし、これを外科術などによって眼球内へ導入し、網膜表面へ移植する、一種の「人工網膜」ともいうべきものが挙げられる。
前者の形態のものとしては、例えば、網膜における受容器に特異的なリガンドを有機色素化合物へ化学的に結合せしめ、これを溶液の形態で眼球内へ注射することによって、有機色素化合物を網膜の表面へ特異的に結合させるものが挙げられる。この場合、受容器に特異的なリガンドとしては、例えば、視覚関連物質、チャネル蛋白質に対する受容器蛋白質若しくは抗体、受容器蛋白質に対する抗体、膜蛋白質に対する抗体、さらには、それらのフラグメントなどが挙げられる。
後者の形態のものとしては、例えば、眼杯や患部の形状、大きさに応じたフィルム状、シート状、ネット状などの適宜形状に形成した生体適合高分子を基材に用い、有機色素化合物が眼球内液へ実質的に接触するようにその一側又は両側へこの発明の受容器電位誘発剤を化学的に結合させたものや、この発明の受容器電位誘発剤を含有せしめた生体適合高分子を上記のごとき形状、大きさのフィルム状、シート状、ネット状に形成したものが挙げられる。
基材となる生体適合高分子としては、適度の親水性、剛性及び柔軟性を有し、かつ、全可視領域に亙って実質的に透明であって、生体内の酵素や磨耗に耐性を有するものであれば特に制限はない。個々の生体適合高分子としては、眼球内移植などに用いられる、例えば、コラーゲン、ゼラチン、セルロース、ヒアルロン酸などの天然高分子、デキストラン、セルロース、プルラン、ヘパリンの架橋物、誘導体などの半合成高分子、シリコーン系、ポリアクリルアミド系、ポリアクリルニトリル系、ポリアクリレート系、ポリウレア系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリエチレンオキシド系、ポリエチレングリコール系、ポリカーボネート系、ポリカルバメート系、ポリ酢酸ビニル系、ポリヒドロキシアルキルメタクリレート系、ポリビニルアルコール系、ポリビニルピロリドン系、ポリメタクリレート系の重合体及び共重合体をはじめとする合成高分子、さらには、それらの複合物が挙げられる。有機色素化合物を結合させた基材を網膜表面へ移植するに当たって、網膜が基材における有機色素化合物を結合させていない面と接触する場合には、基材として電気伝導性を有する生体適合高分子を選択して用いるのが望ましい。
基材へ受容器電位誘発剤を付着させるには、基材の主体となる高分子と、受容器電位誘発剤の主体となる有機色素化合物とを直接化学反応させるか、あるいは、例えば、アズラクトン基、アミノ基、アルデヒド基、イソシアナート基、エチレンイミノ基、エポキシ基、ケテン基、酸アジド基、酸ヒドラジド基、酸無水物基、スルホン酸基、スルホン酸ハライド基、チオイソシアナート基、ヒドロキサム酸基、ビニル基、メルカプト基、ラクトン基などの活性官能基を複数有する多官能試薬を用いて、生体適合高分子へ有機色素化合物を結合させる方法が挙げられる。
いずれの形態を採用する場合であっても、有機色素化合物を生体へ接触させて用いることに変わりはないことから、毒性が低い有機色素化合物を選別して用いるのが望ましい。有機色素化合物のうちでも、例えば、既述したごときポリメチン系の有機色素化合物は、一般に、細胞毒性などの毒性を有しないか、毒性が極めて微弱であることから、この点においても、この発明を実施するうえで好適である。
この発明による網膜代替用材の適用対象としては、例えば、網膜色素変性症、加齢黄斑変性症、糖尿病網膜症などの傷病に伴う視野狭窄、視力低下、夜盲などの視覚障害や、二色型色覚(色盲)、異常三色型色覚(色弱)などの網膜における特定の錘体の欠如や薬物中毒、視覚中枢の神経障害、網膜の疾患などに起因する色覚異常を緩和したり解消するための医療用材として極めて有用である。この発明の受容器電位誘発剤は、光エレクトロニクスなどの医療分野以外の用途において、例えば、制御機器などにおける光センサーを構成する材料としても有用である。
以下、この発明の実施の形態につき、実施例に基づいて説明する。
〈受容器電位誘発剤〉
いずれもポリメチン系の有機色素化合物である、表1に示す4種類の化合物につき、一戸裕子編集、『実験医学』、1989年4月5日、株式会社羊土社発行、第7巻、第6号に記載された細胞内カルシウム実験法に準じて受容器電位誘発能の有無を調べた。なお、化学式14乃至化学式17で表される有機色素化合物は、株式会社林原生物化学研究所から、それぞれ、商品名『NK−2761』、『NK−5962』、『NK−3041』及び『NK−3630』で販売されている。
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孵卵10日目の受精卵を70%(v/v)水性エタノールで殺菌した後、卵殻へ小穴を穿設し、そこから胚を取り出した。胚から眼球を摘出し、中央部で切断し、前半部を硝子体とともに除去した後、網膜を剥離し、0.25%(w/v)トリプシンと1mMエチレンジアミンとを含有する、Ca2+/Mg2+無含有のハンクス緩衝液(pH7.4)に浸漬させて網膜細胞を分散させた。網膜細胞を遠心分離により採取し、ダルベッコ変法イーグル培地(pH7.4)により洗浄した後、10(v/v)仔ウシ血清、0.1mg/mlストレプトマイシン及び0.1mg/mlアンピシリンを補足したダルベッコ変法イーグル培地(pH7.4)を用いて24ウェル培養プレートへ細胞密度6×105個/mlになるように播種し、培地を適宜交換しながら、視神経を構成する網膜神経細胞の成長が優勢になるまで培養した。
その後、培養プレートにおける各ウェルへ蛍光カルシウム指示薬の1種であるFluo−4 アセトキシメチルエステル(モレキュラー・プローブズ社製造)を10μMになるように加え、37℃で30分間培養した後、Fluo−4 アセトキシメチルエステルを省略した以外は上記と同様にしてさらに30分間培養した。次いで、各ウェルにおける培地を10mM N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N´−2−エタンスルホン酸、145mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM塩化カルシウム及び10mMグルコースを含有する生理食塩水(pH7.4)で置換した後、汎用の細胞内カルシウム顕微測定装置における倒立顕微鏡のステージへ培養プレートを取付けた。そして、培養物に対して、表1に示す有機色素化合物のいずれかをジメチルスルホキシドに溶解し、濃度0.0005乃至0.5μg/mlになるように添加する前後に、波長470乃至490nm付近の光を照射してFluo−4 アセトキシメチルエステルを励起し、Fluo−4 アセトキシメチルエステルから波長510乃至550nm付近に放出される蛍光の強度と細胞内電位をそれぞれ調べた。
表1の結果に見られるとおり、試験に供した化学式14乃至化学式17で表される4種類の有機色素化合物は、いずれも、Fluo−4 アセトキシメチルエステルから放出される蛍光の強度を有意に上昇させた。また、化学式14乃至化学式17のいずれかを添加した系においては、顕著な受容器電位が細胞内電位として観察された。ところが、別途、培養液にカルシクルジン(L型、N型及びP型の高閾値カルシウムチャネルに対する拮抗阻害剤)を2.5μM添加した以外は上記と同様に試験したところ、化学式14乃至化学式17のいずれかで表される有機色素化合物の存在下においても、Fluo−4 アセトキシメチルエステルから放出される蛍光の強度は上昇せず、細胞内電位も観察されなかった。
Fluo−4 アセトキシメチルエステルは、これを神経細胞内へ取り込ませた状態で光照射すると、細胞内へカルシウムイオンが流入したときのみ波長510乃至550nm付近に蛍光を放出する性質がある。視神経において、受容器電位が誘発されると、カルシウムチャネルが開き、細胞内へカルシウムイオンが流入することは周知の事項であることから、化学式14乃至化学式17のいずれかで表される有機色素化合物が共存したときにのみFluo−4 アセトキシメチルエステルの蛍光強度が上昇したことは、それらの有機色素化合物が、視神経において、光刺激に応じた受容器電位を誘発する性質を具備することを物語っており、このことは、カルシクルジンの非存在下において顕著な細胞内電位が観察されたことによっても裏付けられている。
視覚は、ロドプシン、G蛋白質(トランスデューシン)、サイクリックGMP、ホスホジエステラーゼなどの視覚関連物質が自然の摂理にしたがって化学反応することによって、視神経において、光刺激に応じた受容器電位が誘発される過程を経由して成立する。本例の結果は、吸光性有機色素化合物、とりわけ、ポリメチン系の有機色素化合物が、視神経、特に、視神経を構成する網膜神経細胞において、光刺激に応じた受容器電位を誘発する性質を具備するものであることを示している。このことは、斯かる有機色素化合物を含んでなるこの発明の受容器電位誘発剤が、網膜代替用材において、視覚関連物質を代替する材料として有用であることを物語っている。
以上説明したごとく、この発明は、諸種の吸光性有機色素化合物のなかに、視神経において、光刺激に応じた受容器電位を誘発するものがあるという独自の知見に基づくものである。斯かる有機色素化合物を含んでなるこの発明の受容器電位誘発剤は、傷病に伴う網膜の障害に起因する視野狭窄、視力低下、夜盲などの視覚障害や、薬物中毒、視覚中枢の神経障害、網膜の疾患、特定の錘体の欠如に起因する色覚異常を緩和したり解消するための人工網膜をはじめとする網膜代替用材において、視覚関連物質を代替する材料として極めて有用である。
斯くも顕著な効果を奏するこの発明は、斯界に貢献すること誠に多大な、意義のある発明であると言える。

Claims (2)

  1. 同一分子内において、可視領域に吸収極大を与えるエチレン性共役二重結合、芳香性二重結合、及び/又は、アゾ結合を有し、かつ、網膜細胞の維持に好適な水性媒体に対して親和性を示す、イミニウム基、ヒドロシキ基、及び/又は、有機酸基を有するとともに、可視光を吸収する有機色素化合物の中から、視神経において、光刺激に応じた受容器電位を誘発する、受容器電位誘発剤のための有機色素化合物をスクリーニングする方法であって、当該方法は、カルシウムイオン存在下、カルシクルジンの非存在下で、蛍光カルシウム指示薬を含有する培養液中で孵卵の網膜細胞を培養する際、被験有機色素化合物を当該培養液中に共存させて、当該網膜細胞に可視光を照射したとき、光刺激に応じた受容器電位を誘発し、当該網膜細胞内にカルシウムイオンを流入させ、当該網膜細胞内に取り込まれた蛍光カルシウム指示薬から放出される蛍光の強度を上昇させ、かつ、当該被験有機色素化合物が、カルシウムイオン存在下、カルシクルジンの存在下では、蛍光の強度を上昇させないとき、当該被験有機色素化合物が、視神経において、光刺激に応じた受容器電位を誘発する、受容器電位誘発剤のための有機色素化合物であると判定することを特徴とする、視神経において、光刺激に応じた受容器電位を誘発する、受容器電位誘発剤のための有機色素化合物のスクリーニング方法。
  2. 請求項1に記載のスクリーニング方法により、視神経において、光刺激に応じた受容器電位を誘発する、受容器電位誘発剤のための有機色素化合物であると判定された下記化学式14、15、16又は17で表されるポリメチン系の有機色素化合物を結合させた、コラーゲン、ゼラチン、セルロース、ヒアルロン酸;デキストラン、セルロース、プルラン、ヘパリンの架橋物;及びシリコーン系、ポリアクリルアミド系、ポリアクリルニトリル系、ポリアクリレート系、ポリウレア系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリエチレンオキシド系、ポリエチレングリコール系、ポリカーボネート系、ポリカルバメート系、ポリ酢酸ビニル系、ポリヒドロキシアルキルメタクリレート系、ポリビニルアルコール系、ポリビニルピロリドン系、ポリメタクリレート系の重合体及び共重合体から選ばれる生体適合高分子。
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