光通信の分野において、1本の光ファイバ伝送路に、複数チャンネルの光パルス信号を多重して伝送することを可能とするため、これまで、光時分割多重(OTDM: Optical Time Domain Multiplexing)や、波長多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)による送信信号の多重化が研究されてきた。OTDMは、光パルス信号を構成する光パルスが占めるタイムスロットによってチャンネルを分離する方法であり、一方、WDMは、光パルス信号を構成する光パルスの波長によってチャンネルを分離する方法である。
最近、これらに加えて、OCDM通信が注目されている。(例えば、非特許文献1〜3参照)。OCDMは、符号化された光パルス信号のパターンマッチングによってチャンネルを分離する方法である。すなわち、OCDM通信は、チャンネルごとに異なる符号(パターン)を割り当て、パターンマッチングにより信号を抽出する方法であって、具体的には、送信側で送信する光パルス信号を符号化して送信し、受信側でこの符号化されて送信された信号を復号化して元の光パルス信号を再生して受信する光多重通信である。
OCDMによる光多重通信は、波長あるいはタイムスロットをチャンネル識別のために利用する必要がなく、これら通信回線の有する物理的資源を節約できるという特長を有している。また、OCDM通信は、チャンネルの識別に利用する符号を公開しない限り、受信側が受信信号を識別することができないため、通信の秘匿性にも優れている(例えば、特許文献1参照)。OCDM通信は、これらの特長を備えているため、加入者系光ネットワークシステムへの応用が期待されている(例えば、特許文献2参照)。
ここで、「光パルスの波長」、あるいは「波長をチャンネル識別のために利用する」等と表現した場合における波長とは、光パルス列あるいは光パルス信号を構成する光パルスの搬送波の波長を意味する。以後の説明においては、単色光パルスあるいは多色光パルス等と表現することがあるが、これらはそれぞれ以下の意味で用いるものとする。すなわち、単色光パルスとは、一種類の波長の搬送波によって形成される光パルスを意味する。従って、単色光パルス列あるいは単色光パルス信号とは、それぞれ一種類の波長の搬送波によって形成される光パルスからなる単色光パルス列あるいは単色光パルス信号を意味する。また、多色光パルスとは、複数種類の波長の搬送波によって形成される光パルスを意味する。従って、多色光パルス列あるいは多色光パルス信号とは、それぞれ複数種類の波長の搬送波によって形成される光パルスからなる多色光パルス列あるいは多色光パルス信号を意味する。
ここで、一種類の波長の搬送波とは、この搬送波の波長あるいは周波数スペクトルが、1つだけピーク波長あるいは1つだけピーク周波数を有する搬送波を意味する。また、複数種類の波長の搬送波とは、この搬送波の波長あるいは周波数スペクトルが、複数のピーク波長あるいは複数のピーク周波数を有する搬送波を意味する。
ここで、OCDMによる従来の送受信システムの基本構成及び動作原理について、図1を参照して説明する。図1は、OCDMによる従来の送受信システムの基本構成及び動作原理の説明に供する、概略的ブロック構成図である。図1において、光ファイバ等の光信号の経路を太線で示し、電気信号の経路を細線で示してある。
OCDMによる従来の送受信システムは、基本的に少なくとも、光パルス信号生成部30、符号化部32及び復号化部34を具えて構成される。光パルス信号生成部30と符号化部32が送信側に具えられており、復号化部34が受信側に具えられている。
送信される光パルス信号41は、光パルス信号生成部30において生成されて出力される。光パルス信号生成部30は、送信信号供給部36と、光パルス列生成部38と、光変調器40とを具えて構成されている。送信信号供給部36は、送信信号を2値デジタル電気信号の形態で供給する。光パルス列生成部38は、時間軸上に等間隔で光パルスが並ぶ光パルス列39を生成して出力する。光変調器40は、入力された光パルス列39を、送信信号供給部36から供給される電気パルス信号37によって変調して、光パルス信号41を生成して出力する。
以後、光パルス信号との表現は、光パルス列を光変調して、電気パルス信号を光パルス信号に変換して得られる、2値デジタル電気信号を反映した光パルスの列を意味する場合のみに使用するものとする。一方、光パルス列との表現は、時間軸上で規則正しい一定の時間間隔で並ぶ光パルスの総体を指すものとして用いる。
図2(A)及び(B)を参照して、OCDMによる送受信システムにおいて送信される光パルス信号41の時間波形と、この光パルス信号41の生成のために使われる光パルス列39の時間波形の関連について説明する。図2(A)及び(B)の横軸は時間を、縦軸は光強度を、それぞれ任意スケールで目盛って示してある。
図2(A)は、光パルス列39の時間波形を示す図である。時間間隔がTbで規則正しく時間軸上に光パルスが並んで構成されている。この時間間隔Tbは、後述する信号周期に等しい。図2(B)は、光パルス信号41の時間波形を示す図である。図2(B)において、光パルス信号41として(1, 0, 1, 1, 0,...)で与えられる2値デジタル信号を例を挙げて示してある。光パルス信号41は、光変調器40において、光パルス列を電気パルス信号37で変調することによって生成された光パルス信号であるから、電気パルス信号37も(1, 0, 1, 1, 0,...)あるいは(1, -1, 1, 1, -1,...)等で与えられる2値デジタル信号である。
光パルス列生成部38から、単色の光パルスが時間軸上に等間隔で並ぶ単色光パルス列を生成して出力させるには、例えば、モード同期半導体レーザを単色光パルス光源として利用することで実現される。また、光パルス列生成部38を、連続発信する半導体レーザで構成し、単色光パルス列を生成して出力させることも可能である。この場合は、連続発振する半導体レーザの出力光を、周期的な電気パルス列によって駆動された光変調器によって変調する構成とすればよい。
光パルス列生成部38から、N種類(Nは2以上の整数)の波長成分を含む光パルスが時間軸上で等間隔に並ぶ光パルス列を生成して出力させるには、例えば、まず波長が互いに異なる連続発振するN個の半導体レーザからの連続波光を合波して、多波長連続波光を生成して出力する多波長光源を形成する。そして、この多波長連続波光を周期的な電気パルス列によって駆動された光変調器によって変調する構成とすればよい。
光パルス信号生成部30から出力される光パルス信号41は、符号化部32に入力されて符号化されて符号化光パルス信号33として生成され出力される。符号化光パルス信号33は、光ファイバ伝送路を伝搬して受信装置が具える復号化部34に入力される。符号化光パルス信号33は、復号化部34に入力されて復号化されて復号化光パルス信号35として生成されて出力される。
復号化部34に、符号化部32に設定されている符号と同一の符号が設定されている場合には、復号化部34に入力された符号化光パルス信号33は、復号化部34によって、送信時の光パルス信号41と同一の時間波形を有する復号化光パルス信号35として生成されて出力される。この場合の復号化光パルス信号35は、自己相関波と呼ばれる。一方、復号化部34に符号化部32に設定されている符号と異なる符号が設定されている場合には、復号化部34に入力された符号化光パルス信号33は、送信時の光パルス信号41とは異なる復号化光パルス信号35として生成されて出力される。この場合の復号化光パルス信号35は、相互相関波と呼ばれる。
符号化部32及び復号化部34においてそれぞれ実行される符号化及び復号化の方式として、これまで複数の方法が提案されている。これらの方法は、送信信号を時間軸上で符号化及び復号化を行う方法であるか、あるいは送信信号を波長軸上で符号化及び復号化を行う方法であるかといった観点から分類することができる。また、別の分類方法として、以下のように分類することもできる。すなわち、送信信号を強度変調することで符号化及び復号化を行う方法であるか、あるいは送信信号を位相変調することで符号化及び復号化を行う方法であるかといった観点から分類することもできる。以後、送信信号を位相変調することで符号化及び復号化を行う方法を位相変調方式ということもある。
更に、この他に、送信信号を時間軸上と波長軸上との両方において、符号化及び復号化を行う方法も提案されている(特許文献3参照)。後述するように、送信信号を時間軸上と波長軸上との両方において、符号化及び復号化を行う方法は、時間拡散波長ホップ方式と呼ばれることもある。
以上説明した符号化及び復号化の方法のうち、位相変調方式について、図3(A)〜(D)を参照して、以下に説明する。図3(A)〜(D)は、符号化及び復号化のそれぞれの前後における光パルス信号の時間波形を示す図である。図3(A)〜(D)の横軸は時間を、縦軸は光強度を、それぞれ任意スケールで目盛って示してある。
図3(A)は、光パルス信号生成部30から出力される光パルス信号41の時間波形を示す図であり、図2(B)と同じ波形である。図3(B-1)は、光パルス信号41を構成する光パルス1つについて、位相変調方式によって符号化された後の時間波形を示す図である。以後、光パルス信号を構成する光パルスのそれぞれをビットパルスと呼ぶこともある。すなわち、図3(B-1)は、光パルス信号41のビットパルス1つ分について、符号化部32によって符号化された結果得られる時間波形を示している。
符号化された結果、図3(B-1)に1〜5の番号を付して示す複数の光パルスに、時間軸上に分解される。この複数の光パルスの一つ一つを、チップパルスということもある。ここでは、チップパルスの数を5個として示してあるが、符号化に利用される符号によってこの数は決まり、この例に示すように5個に限られるわけではない。また、ビットパルス1つ分に対して、符号化されることによって生成されるチップパルスの数を、その符号化に用いられた符号の符号長ということもある。すなわち、符号長とは、符号を構成するチップの総数をいう。図3(B-1)に示す例では、符号長が5である符号によって符号化された結果生成されたチップパルスであるということになる。
図3(B-2)は、直接観測される時間波形ではないが、図3(B-1)に示す1〜5の番号が付されたそれぞれのチップパルスが、それぞれ復号化部34によって復号化されたものと想定した場合の時間波形を示す図である。図3(B-2)において、上段から下段に向う順序で、1〜5の番号が付されたチップパルスのそれぞれに対して、復号化された結果得られる時間波形を示してある。
図3(C)は、符号化部32に設定されている符号と、復号化部34に設定されている符号とが同一の符号である場合であって、復号化部34から出力される復号化光パルス信号35の時間波形を示す図である。すなわち、図3(C)は、自己相関波の時間波形を示す図である。また、図3(D)は、符号化部32に設定されている符号と、復号化部34に設定されている符号とが相異なる符号である場合であって、復号化部34から出力される復号化光パルス信号35の時間波形を示す図である。すなわち、図3(D)は、相互相関波の時間波形を示す図である。
図3(B)〜(D)には、図面を簡単化するために、図3(A)に示す光パルス信号を構成するビットパルス1つ分に対する、チップパルス、自己相関波、及び相互相関波の時間波形を示してある。
図3(A)〜(D)を参照して以下に説明する、位相変調方式による符号化及び復号化の方法は、後述する参考例の光パルス信号生成装置において利用される符号化及び復号化の方法である。
光パルス信号生成部30から出力される光パルス信号41は、図3(A)に示すように、RZ(Return to Zero)フォーマットの光パルス信号である。
ここで、以後の説明の便宜のために、信号周期、通信レート、チップ周期、チップレート、及び符号周期という用語を、以下のように定義する。
信号周期とは、光パルス信号を構成する光パルス1つ当たりに割り当てられる時間間隔をいい、図3(A)に示す例ではTbを指す。
通信レートとは、伝送すべき光パルス信号のビットレート、すなわち、信号周期の逆数をいう。図3(A)に示す例では1/Tbを指す。
チップ周期とは、符号を構成する1チップあたりに割り当てられる時間間隔をいい、チップレートとは、チップ周期の逆数をいう。図3(B-1)に示す例では、チップ周期はTcであり、チップレートは1/Tcである。
符号周期とは、符号を構成する全てのチップを時間軸上に並べることによって、これらのチップの集合が時間軸上で占める時間間隔をいう。符号周期は、(チップ周期)×(符号長)で求められ、図3(B-1)に示す列では、符号周期はTc×5=Tsである。
また、時間軸上で、1チップ分に割り当てられる時間軸上の領域を、チップパルスに対するタイムスロットということもある。そして、時間軸上で光パルス信号を構成する光パルス1つ分に割り当てられる時間軸上の領域を、光パルスに対するビットスロットということもある。
光パルス信号41を構成するビットパルスの半値全幅はΔtfである。また、時間軸上で、光パルス信号41の1ビット分が割り当てられる時間領域をビットスロットといい、信号周期であるビットスロットの時間幅がTbである光パルス信号のビットレートは、1/Tbである。すなわち、光パルス信号のビットレートとは、単位時間に含まれるビットスロットの数である。従って、ビットレートが大きいほど単位時間内に伝送可能なビット数が多いことを意味し、伝送される信号の伝送効率が高いことを意味する。信号周期Tbは、ビット周期と呼ばれることもある。
図3(A)に示す時間波形を有する光パルス信号41は、符号化部32に入力されて符号化され、符号化光パルス信号33として生成されて出力される。符号化部32において、光パルス信号41を構成するビットパルスのそれぞれが、時間軸上に並ぶ複数のチップパルスに分解される。このチップパルスとチップパルス間の時間位相の相互関係は、符号化部32に設定されている符号に従って決定される。
このように、ビットパルスを、時間軸上に並ぶ複数のチップパルスに分解することを、時間拡散するという場合もある。図3(B-1)に示すように、1つのビットパルスが時間拡散されてチップパルスとして時間軸上に配置された場合、これらのチップパルスの時間軸上における存在範囲が符号周期である。
すなわち、図3(B-1)において、図3(A)の最も左側に存在しているビットパルスが時間拡散されて生成された、1〜5の番号が付された5つのチップパルスが時間軸上で存在する時間幅Tsが符号周期である。また、図3(B-1)に示すチップパルスの時間波形において、それぞれのチップパルスの時間軸上における存在範囲はTcであり、隣接するチップパルスの時間間隔はTcである。一般に、隣接するチップパルスの時間間隔Tcと、光パルス信号を構成するビットパルスの半値全幅Δtfとの間には、Δtf<Tcの関係がある。
復号化部34には、符号化光パルス信号33が入力されて復号化が実行される。復号化部34における復号化の具体的な内容は以下のとおりである。簡潔に説明するため、復号化の内容を、図3(B-1)に示す5つのチップパルスから自己相関波あるいは相互相関波が生成される過程として説明する。実際には、符号化の段階で、光パルス信号41を構成する全てのビットパルスが、5つのチップパルスに時間拡散されており、図3(B-2)に示すように復号化が実行されることによって、5つのチップパルスは、それぞれ5つずつの合計25のチップパルスに時間拡散される。
また、図3(B-1)に示す5つのチップパルスのそれぞれが、復号化が実行されることによって図3(B-2)に示すように、隣接するチップパルスの時間間隔である時間間隔Tcだけずれた関係で、時間軸上に重なり合う。
すなわち、図3(B-2)に1と示す最上段の時間波形は、図3(B-1)に示す5つのチップパルスのうち1の番号が付されたチップパルスが時間拡散されて生成された5つのチップパルスの列である。また、図3(B-2)に2と示す段の時間波形は、図3(B-1)に示す5つのチップパルスのうち2の番号が付されたチップパルスが時間拡散されて生成された5つのチップパルスの列である。以下同様に、図3(B-2)に3、4及び5と示す段の時間波形は、図3(B-1)に示す5つのチップパルスのうち3、4及び5の番号がそれぞれ付されたチップパルスが時間拡散されて生成された5つのチップパルスの列である。図3(B-2)の最上段から5の番号が付された各段の時間波形は、最上段から順に、時間間隔Tcだけずれた関係で時間軸上に重なり合っている。
図3(B-2)の1から5の番号が付された各段の時間波形の全てが、時間軸上で重なるチップパルス同士が位相関係を含めて合波された結果1つの光パルスとなる場合が、図3(C)に示す自己相関波を構成する光パルスである。また、図3(B-2)の1から5の番号が付された段の時間波形の全てが、時間軸上で重なるチップパルス同士が位相関係を含めて合波された結果、際立った光強度のピーク(光パルス)が現れない場合が、図3(D)に示す相互相関波となる。
図3(B-2)の1から5の番号が付された段の時間波形の全てが、時間軸上で重なるチップパルス同士が位相関係を含めて合波された結果1つの光パルスとなるためには、符号化に使われた符号と復号化に使われた符号とが同一であることが条件である。従って、受信側では、復号化部34から出力される復号化光パルス信号35に対して、自己相関波成分と相互相関波成分を分離することによって、自己相関波成分を受信信号として認識する。復号化光パルス信号35から自己相関波成分と相互相関波成分を分離する手法の一つとして、光ファイバの非線形光学効果を利用する方法が知られている(例えば、非特許文献4参照)。
以上、位相変調方式について説明したが、チップパルス間の強度関係を符号パターンとする方法もある。何れの方法も、符号化及び復号化において、光パルス信号を構成するビットパルスを時間拡散するという手法において共通するので、以後、この発明の光パルス信号生成装置における場合も含めて、これらの符号化及び復号化の方法を、時間拡散方式の符号化と呼ぶこともある。
次に、送信信号を時間軸上と波長軸上との両方において、符号化及び復号化を行う方法を説明する。この方法で使われる光パルス信号は、RZフォーマットの光パルス信号であって、多色光パルス(多色ビットパルス)から構成される光パルス信号である。そして、この光パルス信号が時間軸上に時間拡散され、チップパルス間の間隔及び個々のチップパルスを構成する搬送波の波長の並び順を符号パターンとする符号化が行われる。ここで、チップ個々のチップパルスは、単色光パルスである。
このように、時間軸上にチップパルス間の間隔及び波長の並び順を符号パターンとする符号化を時間拡散波長ホップ方式の符号化と呼ぶ。すなわち、送信信号を時間軸上と波長軸上との両方において符号化及び復号化を行う方法とは、時間拡散波長ホップ方式を指す。
時間拡散波長ホップ方式の符号化について図4(A)〜(D)を参照して、より具体的に説明する。図4(A)〜(D)の横軸は時間を、縦軸は光強度を、それぞれ任意スケールで目盛って示してある。
時間拡散波長ホップ方式の説明においても、上述した位相変調方式と同様に、図1に示したOCDM送受信システムを参照しつつ説明を行う。時間拡散波長ホップ方式を実現するには、光パルス列39が多色光パルスからなる光パルス列である必要がある。従って、光パルス列生成部38は、多色光パルスからなる光パルス列を出力する機能を有している点が、上述した位相変調方式を実行するOCDM送受信システムと異なる点である。N種類(Nは2以上の整数)の波長成分を含む光パルスが時間軸上で等間隔に並ぶ光パルス列を生成して出力させる光パルス列生成部38の構成例については、既に説明したとおりである。
図4(A)は、光パルス信号生成部30から出力される光パルス信号41の時間波形を示す図である。光パルス信号41を構成するビットパルスは、相異なる波長λ1、λ2及びλ3の搬送波成分を含んでいる。このことを示すために、便宜上、時間軸上で同一時刻に、波長λ1、λ2及びλ3である搬送波成分に対して、影を付して識別を可能とした矩形を同一時間上に重ねて表してある。ここでは、異なる3種類の波長を含む光パルスから構成される光パルス信号を仮定して説明する。しかし、一般的に光パルスに含まれる波長の種類は3種類に限らず、2種類でもまた、4種類以上含んでいる場合でも、以下の説明は同様に成立する。以後、多色光パルスを、その搬送波成分の波長にそれぞれ対応する矩形を同一時間上に重ねて示すものとする。
図4(B)は、光パルス信号41を構成する光パルス1つについて、時間拡散波長ホップ方式によって符号化された後の時間波形を示す図である。すなわち、図4(B)は、光パルス信号41のビットパルス1つ分について、符号化部32によって符号化されて得られる時間波形を示している。
符号化された結果、時間軸上に、図4(B)にλ1〜λ3の記号を付して示す複数のチップパルスに、隣接するチップパルス間の間隔及び個々のチップパルスの波長の並び順を符号パターンとして分解される。個々のチップパルスは、それぞれ波長がλ1、λ2及びλ3である単色光パルスである。ここでは、チップパルスの数を3個として示してあるが、符号化に利用される符号によってこの数は決まり、この例に示すように3個に限られるわけではない。図4(B)に示す例では、符号長が3である符号によって符号化された結果生成されたチップパルスである。
なお、符号化されて符号化部32から出力される符号化光パルス信号33の時間波形が同一であっても、波長ホップされて時間軸上に配列されたチップパルスの波長の並び順序が異なれば、異なる符号パターンで符号化されたものとみなされる。すなわち、符号化光パルス信号33は、隣接するチップパルス間の間隔に関する情報に加えて、個々のチップパルスを構成する搬送波の波長の並び順に関する情報も識別因子として機能する。隣接するチップパルス間の間隔に関する情報は、隣接するチップパルスの時間間隔であるTcを単位とする時間差として与えられる。
図4(C)は、符号化部32に設定されている符号と、復号化部34に設定されている符号とが同一の符号である場合であって、復号化部34から出力される復号化光パルス信号35の時間波形を示す図である。すなわち、図4(C)は、自己相関波の時間波形を示す図である。
また、図4(D)は、符号化部32に設定されている符号と、復号化部34に設定されている符号とが相異なる符号である場合であって、復号化部34から出力される復号化光パルス信号35の時間波形を示す図である。すなわち、図4(D)は、相互相関波の時間波形を示す図である。
図4(A)〜(D)には、図面を簡単化するために、図4(A)に示す光パルス信号を構成するビットパルス1つ分に対する、チップパルス、自己相関波、及び相互相関波の時間波形を示してある。
図4(A)〜(D)を参照して以下に説明する、時間拡散波長ホップ方式による符号化及び復号化の方法は、後述するこの発明の光パルス信号生成装置において利用される符号化及び復号化の方法である。
光パルス信号生成部30から出力される光パルス信号41は、図4(A)に示すように、RZフォーマットの光パルス信号である。図4(A)では、ビットパルスの形状を便宜上矩形の積み重ねとして示してあるので、ビットパルスの半値幅は図面に反映されていないが、光パルス信号41を構成するビットパルスの半値全幅はΔtfである。また、光パルス信号41のビットレートは1/Tbであり、ビットスロットの時間幅はTbである。
図4(B)に示すように、1つのビットパルスが時間拡散されてチップパルスとして時間軸上に配置された場合、これらのチップパルスの時間軸上における存在範囲が符号周期である。すなわち、図4(B)において、図4(A)の最も左側に存在しているビットパルスが時間拡散されて生成された、λ1〜λ3の番号が付された3つのチップパルスが時間軸上で存在する時間幅Tsが符号周期である。
復号化部34には、符号化光パルス信号33が入力されて復号化が実行される。復号化部34における復号化の具体的な内容は以下のとおりである。簡潔に説明するため、復号化の内容を、図4(B)に示す3つのチップパルスから自己相関波あるいは相互相関波が生成される過程として説明する。
図4(B)に示す3つのチップパルスが、復号化され時間軸上で重なる結果1つの光パルスとなる場合が、図4(C)に示す自己相関波を構成する光パルスである。また、復号化された結果、際立った光強度のピーク(光パルス)が現れない場合が、図4(D)に示す相互相関波となる。
図4(B)に示す3つのチップパルスが、復号化され時間軸上で重なり1つの光パルスとなるためには、符号化に使われた符号と復号化に使われた符号とが同一であることが条件である。従って、受信側では、上述した位相変調方式による符号化の場合と同様に、復号化部34から出力される復号化光パルス信号35に対して、自己相関波成分と相互相関波成分を分離することによって、自己相関波成分を受信信号として認識する。
複数チャンネルの送信信号である光パルス信号を、それぞれのチャンネルに割り当てられた符号が設定された符号化部によって符号化して符号化光パルス信号に変換して、これら複数チャンネルの符号化光パルス信号を多重して送信し、受信側では、この多重された送信信号から、チャンネルごとに割り当てられた符号が設定された復号化部によって復号化して、それぞれのチャンネルにおいて自己相関波を受信信号として受信する通信方法が、OCDMによる通信である。OCDMによる通信において、受信側の各チャンネルにおいて、復号化部から出力される信号は、自己相関波と、多元接続干渉(MAI: Multiple Access Interference)と呼ばれる雑音成分からなる信号である。
各チャンネルの復号化部から出力される信号に含まれる自己相関波は、そのチャンネルに割り当てられた符号によって符号化され、かつ復号化された信号成分である。すなわち、各チャンネルの復号化部から出力される信号に含まれる自己相関波は、そのチャンネルに向けて送信された情報信号であることを意味する。
一方、各チャンネルの復号化部から出力される信号に含まれるMAIは、そのチャンネルに割り当てられた以外の符号によって符号化され、そのチャンネルに割り当てられた符号で復号化されて得られた相互相関信号の和である。例えば、Nチャンネル(Nは2以上の整数)から構成されるOCDM送受信システムにおいて、第Jチャンネル(Jは1〜Nのいずれかの整数)の復号化部から出力される信号に含まれるMAIは、第Kチャンネル(KはJを除く1〜Nの全ての整数)の符号化光パルス信号を第Jチャンネルに割り当てられた符号が設定された復号化部で復号化され結果得られた信号成分の総和で与えられる。すなわち、MAIは各チャンネルの復号化部から出力される信号の雑音成分である。
雑音成分であるMAIのピーク強度に対する、信号成分である自己相関波のピーク強度の比が大きいほど、自己相関波成分の分離が容易となり、受信誤り率の低い高精度の通信が可能となる。MAIのピーク強度に対する自己相関波のピーク強度の比は、信号対干渉比(SIR: signal to Interference ratio)と呼ばれる。高精度の通信を実現するための1つの方法として、符号化に利用される符号の符号長を大きくすることが提案されている(例えば、非特許文献4参照)。
符号長を大きくするためには、符号周期Tsを決定してチップ周期Tcを小さくするアプローチと、チップ周期Tcを決定して符号周期Tsを大きくするアプローチとがあり得る。符号周期Tsを大きくしていき信号周期Tbの8倍に達した時点で、エラーフロアが生じるという、ビット誤り率の測定実験結果が報告されている(例えば、非特許文献5参照)。そのため、伝送すべき光パルス信号のビットレート1/Tbが決定されると、符号周期Tsの値に制限が発生する。すなわち、符号長を大きくするには、チップ周期Tcを小さくする必要がある。チップ周期Tcを小さくするとは、光パルス信号41を構成するビットパルスの半値全幅Δtfを狭くする必要がある。すなわちビットパルスのデューティー比(=Δtf/Tb)を小さくする必要がある。
図1に一例として示したように、OCDMによる送受信システムは、光パルス列を変調して光パルス信号を生成する光変調器を具えている。光変調器は、例えば、電界吸収型変調器(Electro-absorption Modulator、EA変調器)等が利用される。EA変調器に代表される光変調器は、一般にその損傷あるいは破壊を防止するために、変調する対象となる入力光信号の光ピーク強度の上限値が制限されている。この上限値を、以後、許容入力最大値ということもある。
そのため、光変調器へ入力する光パルスのデューティー比(=Δtf/Tb)を小さくすればするほど、光変調器へ入力する光パルス列の平均光強度を弱くする必要がある。すなわち、光パルス列発生部によって光ピーク強度の大きな光パルス列が生成されても、光パルス信号を生成する光変調器に入力する前段において、光ピーク強度を低減するために、光パルス列の平均光強度を低減する処置を取らなければならない。
光変調器に入力する光パルス列の平均光強度が弱ければ、光変調器から出力される光パルス信号の平均光強度も弱く、これに伴い光パルス信号の光ピーク強度も弱くなる。従って、光伝送路における損失等を考慮すれば、送信側あるいは受信側で、光パルスの強度を増幅する必要が生じる。光パルスの強度を光増幅器によって増幅すると、光増幅器において発生する自然放出光(ASE: Amplified Spontaneous Emission)による雑音成分が混入する。このため、雑音成分に対する光パルス信号の光ピーク強度の比であるOSNR(Optical Signal to Noise Ratio)が小さくなる。
一方、光変調器の損傷あるいは破壊は、入力される光パルスの光ピーク強度が大きいほど起こりやすい。従って、光パルスの半値全幅が狭く光ピーク強度が大きい光パルス列ほど、光変調器に入力する前段において光パルス列の平均強度を大きく低減させる必要がある。すなわち、光変調器に入力する前段において光パルス列の平均強度の低減量を少なくするには、入力される光パルスの半値全幅が広く光ピーク強度が小さい光パルス列とすればよいことになる。
しかしながら、既に説明したように、入力される光パルスの半値全幅を広くすればOSNRは大きくすることが可能であるが、SIRは低下する。従って、OSNRとSIRとは、一方を大きくすれば他方が小さくなるという、互いにトレードオフの関係にある。また、受信誤り率の低い高精度の通信を実現するには、SIRを大きくすれば良く、これは上述したように符号化に利用される符号の符号長を大きくすることによって実現される。符号長を大きくするためには、チップ周期Tcを小さくする必要があるので、光パルス信号を構成する光パルスのデューティー比を小さくする必要がある。
そこで、この発明の目的は、RZフォーマットの光パルス信号を構成する光パルスのデューティー比を小さく保ち、SIRを低下させることなくかつOSNRも低下させないで、OCDM通信が可能となる光パルス信号を生成する光パルス信号生成装置を提供することにある。すなわち、光パルスのピーク強度が十分強く、かつ光パルスのデューティー比が十分小さい光パルス信号生成装置を提供することにある。
上述の目的を達成するため、参考例の光パルス信号生成装置は、単色光パルス列生成部と、光パルス幅拡張器と、光変調器と、光パルス幅縮小器とを具えている。
単色光パルス列生成部は、単色の光パルスが時間軸上に等間隔で並ぶ単色光パルス列を生成して出力する。
光パルス幅拡張器は、単色光パルス列が入力され、かつこの単色光パルス列を構成する単色光パルスの時間軸上での半値全幅を拡張することにより、単色光パルスのピーク強度を減少させて生成した、半値全幅拡張光パルス列を出力する。
光変調器は、半値全幅拡張光パルス列が入力され、かつ2値デジタル信号形式の送信情報に従って半値全幅拡張光パルス列を変調して生成した、半値全幅拡張光パルス信号を出力する。
光パルス幅縮小器は、半値全幅拡張光パルス信号が入力され、かつこの半値全幅拡張光パルス信号を構成する単色光パルスの時間軸上での半値全幅を縮小することによってこの単色光パルスのピーク強度を増大させて生成した、半値全幅縮小光パルス信号を出力する。
参考例の光パルス信号生成装置によれば、以下のステップを含む参考例の光パルス信号生成方法を実施することが可能である。
参考例の光パルス信号生成方法は、単色光パルス列生成ステップと、光パルス幅拡張ステップと、光変調ステップと、光パルス幅縮小ステップとを含んでいる。
単色光パルス列生成ステップは、単色の光パルスが時間軸上に等間隔で並ぶ単色光パルス列を生成して出力するステップである。
光パルス幅拡張ステップは、単色光パルス列が入力されて、かつこの単色光パルス列を構成する単色光パルスの時間軸上での半値全幅を拡張することにより、この単色光パルスのピーク強度を減少させて生成した、半値全幅拡張光パルス列を出力するステップである。
光変調ステップは、半値全幅拡張光パルス列が入力され、かつ2値デジタル信号形式の送信情報に従って半値全幅拡張光パルス列を変調することにより生成した、半値全幅拡張光パルス信号を出力するステップである。
光パルス幅縮小ステップは、半値全幅拡張光パルス信号が入力され、かつこの半値全幅拡張光パルス信号を構成する単色光パルスの時間軸上での半値全幅を縮小することにより単色光パルスのピーク強度を増大させて生成した、半値全幅縮小光パルス信号を出力するステップである。
この発明の光パルス信号生成装置は、多色光パルス列生成部と、波長分散器と、光変調器と、波長逆分散器とを具えている。
多色光パルス列生成部は、N種類(Nは2以上の整数)の波長成分を含む多色光パルスが時間軸上で等間隔に並ぶ多色光パルス列を生成して出力する。
波長分散器は、多色光パルス列が入力され、かつこの多色光パルス列を構成する多色光パルスのそれぞれを相異なる波長のN個の単色光パルスからなる単位光パルス列に変換することにより生成した、単位光パルス列が時間軸上で直列に配置されて構成される波長分解光パルス列を出力する。
光変調器は、波長分解光パルス列が入力され、かつ2値デジタル信号形式の送信情報に従って波長分解光パルス列を構成する単位光パルス列を最小単位として変調することにより生成した、波長分解光パルス信号を出力する。
波長逆分散器は、波長分解光パルス信号が入力され、かつ単位光パルス列を構成するN個の単色光パルスを合成してN種類の波長成分を含む単一光パルスに変換することにより生成した、N種類の波長成分を含む多色光パルスから構成される多色光パルス信号を出力する。
この発明の光パルス信号生成装置によれば、以下のステップを含むこの発明の光パルス信号生成方法を実施することが可能である。
この発明の光パルス信号生成方法は、多色光パルス列生成ステップと、波長分散ステップと、光変調ステップと、波長逆分散ステップとを含んでいる。
多色光パルス列生成ステップはN種類(Nは2以上の整数)の波長成分を含む多色光パルスが時間軸上で等間隔に並ぶ多色光パルス列を生成して出力するステップである。
波長分散ステップは、多色光パルス列が入力され、かつこの多色光パルス列を構成する多色光パルスのそれぞれを相異なる波長のN個の単色光パルスからなる単位光パルス列に変換することにより生成した、単位光パルス列が時間軸上で直列に配置されて構成される波長分解光パルス列を出力するステップである。
光変調ステップは、波長分解光パルス列が入力され、かつ2値デジタル信号形式の送信情報に従って波長分解光パルス列を構成する単位光パルス列を最小単位として変調することにより生成した、波長分解光パルス信号を出力するステップである。
波長逆分散ステップは、波長分解光パルス信号が入力され、かつ単位光パルス列を構成するN個の単色光パルスを合成してN種類の波長成分を含む単一光パルスに変換することにより生成した、N種類の波長成分を含む多色光パルスから構成される多色光パルス信号を出力するステップである。
参考例の光パルス信号生成装置及びこの発明の光パルス信号生成装置を利用することによって、次に示すOCDM送受信システムを構成することが可能である。
OCDM送受信システムは、送信部と受信部とを具えるOCDM送受信システムであって、送信部が、参考例の光パルス信号生成装置またはこの発明の光パルス信号生成装置を具えている。以後、参考例の光パルス信号生成装置を具えているOCDM送受信システムを参考例のOCDM送受信システムといい、この発明の光パルス信号生成装置を具えているOCDM送受信システムをこの発明のOCDM送受信システムということもある。
送信部は、チャンネルごとに相異なる符号を割り当て、各チャンネルの光パルス信号を、割り当てられた符号でそれぞれ符号化して、チャンネルごとの符号化光パルス信号を生成し、これら符号化光パルス信号を合波して符号分割多重信号を生成して送信する。
受信部は、符号分割多重信号を、割り当てられた符号によって復号化して受信信号を取得する。
また、このOCDM送受信システムによれば、以下のステップを含むOCDM送受信方法を実施することが可能である。
OCDM送受信方法は、送信ステップと受信ステップとを具えるOCDM送受信方法であって、送信ステップが、参考例またはこの発明の光パルス信号生成方法の各ステップを具えている。以後、参考例の光パルス信号生成方法の各ステップを具えているOCDM送受信方法を参考例のOCDM送受信方法といい、この発明の光パルス信号生成方法の各ステップを具えているOCDM送受信方法をこの発明のOCDM送受信方法ということもある。
送信ステップは、チャンネルごとに相異なる符号を割り当て、各チャンネルの光パルス信号を、割り当てられた符号でそれぞれ符号化して、チャンネルごとの符号化光パルス信号を生成し、これら符号化光パルス信号を合波して符号分割多重信号を生成して送信するステップである。
受信ステップは、符号分割多重信号を、割り当てられた符号によって復号化して受信信号を取得するステップである。
参考例の光パルス信号生成装置は、光変調器の前段に光パルス幅拡張器を具え、光変調器の後段に光パルス幅縮小器を具えていることが特徴である。
まず、光変調器の前段に光パルス幅拡張器が具えられていることによって、単色光パルス列生成部から出力される光パルス列は、その光パルスのピーク強度が減少させられて光変調器に入力される。すなわち、光パルス幅拡張器において、単色光パルス列生成部から出力される光パルス列を構成する光パルスの、時間軸上での半値全幅が拡張されて光パルスのピーク強度が減少させられた、半値全幅拡張光パルス列が生成されて、この半値全幅拡張光パルス列が光変調器に入力される。
ここで、光パルス幅拡張器においては、出力される半値全幅拡張光パルス列と入力される光パルス列の、それぞれを構成する光パルスのエネルギーはほとんど変化しない。すなわち、両者の光パルスの時間波形において、時間軸と光パルスの時間波形を与える曲線(光パルスの強度を与える関数を表す曲線)で囲まれた面積はほぼ等しい。
上述のように、光変調器に入力される半値全幅拡張光パルス列の光パルスは、単色光パルス列生成部から出力される光パルス列の半値幅に比べて、その半値全幅が拡大された代わりに、そのピーク強度は低減されている。このため、単色光パルス列生成部から出力される光パルス列の光パルスのピーク強度が光変調器の許容入力最大値を超えていても、半値全幅拡張光パルス列の光パルスのピーク強度は、この許容入力最大値を超えないようにすることが可能である。
光変調器には、光パルスのピーク強度が、許容入力最大値を超えない半値全幅拡張光パルス列が入力されて、半値全幅拡張光パルス信号が生成されて出力される。
また、光変調器の後段に光パルス幅縮小器が具えられていることによって、半値全幅拡張光パルス信号の光パルスの時間軸上での半値全幅が縮小されて、この光パルスのピーク強度が増大させられた、半値全幅縮小光パルス信号が生成されて出力される。この半値全幅縮小光パルス信号を構成する光パルスの半値全幅は、単色光パルス列生成部から出力される光パルス列の光パルスの半値全幅と等しくすることが可能である。
この光パルス幅縮小器においても、出力される半値全幅縮小光パルス信号と入力される半値全幅拡張光パルス信号の、それぞれを構成する光パルスのエネルギーはほとんど変化しない。
以上説明した様に、参考例の光パルス信号生成装置によれば、半値全幅が十分に狭く、かつピーク強度が光変調器の許容入力最大値を超える光パルスからなる光パルス列を基にして、2値デジタル信号形式の送信情報に従って変調されて生成された半値全幅縮小光パルス信号が出力される。しかも、生成されて出力される半値全幅縮小光パルス信号の光パルスは、その半値全幅が十分に狭くかつピーク強度が光変調器の許容入力最大値を超える光パルスである。
光パルス幅拡張器における光パルスの半値全幅の拡張量と、光パルス幅縮小器における光パルの半値全幅の縮小量とを等しく設定すれば、単色光パルス列生成部から出力される単色光パルスの時間波形の形状と、光パルス幅縮小器から出力される光パルス幅縮小器から出力される半値全幅光パルス信号の光パルスの時間波形形状とを等しくすることが可能である。
光パルス幅拡張器における光パルスの半値全幅の拡張量、及び光パルス幅縮小器における光パルの半値全幅の縮小量の具体的な設定手法については、後述する。
参考例の光パルス信号生成装置から出力される半値全幅縮小光パルス信号は、光パルス列を光変調器によって、2値デジタル信号形式の送信情報に従って変調されて生成された光パルス信号であるので、RZフォーマットの光パルス信号である。
従って、参考例の光パルス信号生成装置によれば、RZフォーマットの光パルス信号を構成する光パルスのデューティー比を小さく保ち、SIRを低下させることなくかつOSNRも低下させないで、OCDM通信が可能となる光パルス信号を生成することが可能である。すなわち、参考例の光パルス信号生成装置によれば、光パルス幅拡張器における光パルスの半値全幅の拡張量と、光パルス幅縮小器における光パルスの半値全幅の縮小量とを調整することによって、光変調器の許容入力最大値に係わりなく、光パルスのピーク強度が十分強く、かつ光パルスのデューティー比が十分小さい光パルス信号を生成して出力することが可能である。
この発明の光パルス信号生成装置は、光変調器の前段に波長分散器を具え、光変調器の後段に波長逆分散器を具えていることが特徴である。
まず、光変調器の前段に波長分散器が具えられていることによって、多色光パルス列を構成する多色光パルスのそれぞれが、相異なる波長のN個の単色光パルスからなる単位光パルス列に変換されて出力される。すなわち、波長分散器において、多色光パルスの一つ一つがN個の単色光パルスからなる単位光パルス列に変換され、多色光パルスのピーク値の1/Nのピーク強度をもつ単色光パルスからなる単位光パルス列に変換される。
言い換えると、多色光パルス列生成部から出力される多色光パルス列は、波長分散器によって、多色光パルス列生成部から出力される多色光パルス列を構成する光パルスのピーク強度の1/Nに減少させられた単色光パルスからなる、波長分解光パルス列に変換されて光変調器に入力される。
波長分散器においては、入力される多色光パルス列を構成する単一の多色光パルスのエネルギーと、この単一の多色光パルスが波長分解されて得られた一組の単位光パルス列を構成する単色光パルスのエネルギーの総和とはほぼ等しい。すなわち、多色光パルス列を構成する単一の多色光パルスの時間波形を与える曲線と時間軸とで囲まれた面積と、単位光パルス列を構成する単色光パルスの時間波形を与える曲線と時間軸とで囲まれた面積とはほぼ等しい。
従って、光変調器に入力される波長分解光パルス列を構成する単色光パルスのピーク強度は、多色光パルス列生成部から出力される多色光パルス列の光ピーク強度に比べて低減されている。このため、多色光パルス列生成部から出力される多色光パルス列の多色光パルスのピーク強度が光変調器の許容入力最大値を超えていても、波長分解光パルス列の単色光パルスのピーク強度は、この許容入力最大値を超えないようにすることが可能である。
光変調器には、単色光パルスのピーク強度が、許容入力最大値を超えない波長分解光パルス列が入力されて、2値デジタル信号形式の送信情報に従って波長分解光パルス列を構成する単位光パルス列を最小単位として変調されて、波長分解光パルス信号が生成されて出力される。
また、光変調器の後段に具えられた波長逆分散器によって、次のことが行なわれる。波長分解光パルス信号の単位光パルス列を構成するN個の単色光パルスが合成されてN種類の波長成分を含む単一光パルスに変換される。このようにして変換されたN種類の波長成分を含む単一光パルスは、N個の波長成分を含む多色光パルスである。波長逆分散器からは、この多色光パルスから構成される多色光パルス信号が出力される。
波長逆分散器においても、入力される波長分解光パルス信号を構成する1組の単位光パルス列を構成する単色光パルスのエネルギーの総和と、波長逆分散器から出力される多色光パルス信号を構成する1つの多色光パルスのエネルギーとはほぼ等しい。
波長分散器における波長分散量と、波長逆分散器における波長逆分散量とを等しく設定すれば、多色光パルス列生成部から出力される多色光パルスの時間波形の形状と、波長逆分散器から出力される多色光パルス信号の多色光パルスの時間波形の形状とを等しくすることが可能である。
以上説明した様に、この発明の光パルス信号生成装置によれば、半値全幅が十分に狭く、かつピーク強度が光変調器の許容入力最大値を超える多色光パルスからなる多色光パルス列を基にして、2値デジタル信号形式の送信情報に従って変調された多色光パルス信号が生成されて出力される。しかも、生成されて出力される多色光パルス信号の多色光パルスは、その半値全幅が十分に狭くかつピーク強度が光変調器の許容入力最大値を超える光パルスである。
この発明の光パルス信号生成装置から出力される多色光パルス信号は、多色光パルス列が光変調器によって、2値デジタル信号形式の送信情報に従って変調されて生成された光パルス信号であるので、RZフォーマットの光パルス信号である。
したがって、この発明の光パルス信号生成装置によれば、RZフォーマットの多色光パルス信号を構成する多色光パルスのデューティー比を小さく保ち、SIRを低下させることなくかつOSNRも低下させないで、OCDM通信が可能となる多色光パルス信号を生成することが可能である。すなわち、この発明の光パルス信号生成装置によれば、光変調器の許容入力最大値に係わりなく、多色光パルスのピーク強度が十分強く、かつ多色光パルスのデューティー比が十分小さい多色光パルス信号を生成して出力することが可能である。
以下、図を参照して、この発明の実施形態につき説明する。なお、各図は、この発明に係る一構成例を示し、この発明が理解できる程度に各構成要素及びその配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、特定の材料および条件等を用いることがあるが、これら材料および条件は好適例の一つにすぎず、したがって、何らこれらに限定されない。各図において同様の構成要素については、同一の番号を付して示し、その重複する説明を省略することもある。また、以下に示す概略的ブロック構成図においては、光ファイバ等の光信号の経路を太線で示し、電気信号の経路を細線で示してある。
<参考例の光パルス信号生成装置の実施形態>
(構成及び動作の概略的説明)
図5を参照して、参考例の光パルス信号生成装置の構成及びその動作の概略について説明する。図5は、参考例の光パルス信号生成装置の実施形態の概略的ブロック構成図である。参考例の光パルス信号生成装置の実施形態では、光パルスは全て単色光パルスであるので、参考例の光パルス信号生成装置の説明に限り、単色光パルスを光パルスと記載することもある。
参考例の光パルス信号生成装置50は、単色光パルス列生成部10と、光パルス幅拡張器12と、光変調器14と、光パルス幅縮小器16とを具えている。
単色光パルス列生成部10は、単色の光パルスが時間軸上に等間隔で並ぶ単色光パルス列11を生成して出力する。
光パルス幅拡張器12は、単色光パルス列11が入力されて、半値全幅拡張光パルス列13を生成して出力する。半値全幅拡張光パルス列13は、単色光パルス列11を構成する各光パルスの、時間軸上での半値全幅を拡張することによって、各光パルスのピーク強度を減少させて生成される。光パルス幅拡張器12は、光通信に使われる通常の光ファイバの他、チャープトファイバブラッググレーティング、ホーリーファイバ、フォトニック結晶等を適宜利用して構成できる。
光変調器14は、半値全幅拡張光パルス列13が入力されて、半値全幅拡張光パルス信号15を出力する。半値全幅拡張光パルス信号15は、2値デジタル信号形式の送信情報19に従って半値全幅拡張光パルス列13を変調することにより生成される。2値デジタル信号形式の送信情報19は、送信信号供給部18から出力され、光変調器14に供給される。
光パルス幅縮小器16は、半値全幅縮小光パルス信号17を出力する。半値全幅縮小光パルス信号17は、半値全幅拡張光パルス信号15を構成する各光パルスの時間軸上での半値全幅を縮小してこの各光パルスのピーク強度を増大させることにより生成される。光パルス幅縮小器16は、光パルス幅拡張器12と同様に、光通信に使われる通常の光ファイバの他、チャープトファイバブラッググレーティング、ホーリーファイバ、フォトニック結晶等を適宜利用して構成できる。
参考例の光パルス信号生成装置50によれば、以下のステップを含む参考例の光パルス信号生成方法を実施することが可能である。
参考例の光パルス信号生成方法は、単色光パルス列生成ステップと、光パルス幅拡張ステップと、光変調ステップと、光パルス幅縮小ステップとを含んでいる。
単色光パルス列生成ステップは、単色の光パルスが時間軸上に等間隔で並ぶ単色光パルス列11を生成して出力するステップであり、単色光パルス列生成部10によって実行される。
光パルス幅拡張ステップは、単色光パルス列11が入力されて、半値全幅拡張光パルス列13を出力するステップであり、光パルス幅拡張器12によって実行される。半値全幅拡張光パルス列13は、単色光パルス列11を構成する光パルスの時間軸上での半値全幅を拡張してこの光パルスのピーク強度を減少させることにより生成される。
光変調ステップは、半値全幅拡張光パルス列13が入力されて、半値全幅拡張光パルス信号15を生成して出力するステップであり、光変調器14によって実行される。半値全幅拡張光パルス信号15は、2値デジタル信号形式の送信情報19に従って半値全幅拡張光パルス列13を変調することにより生成される。
光パルス幅縮小ステップは、半値全幅拡張光パルス信号15が入力されて、半値全幅縮小光パルス信号17出力するステップであり、光パルス幅縮小器16によって実行される。半値全幅縮小光パルス信号17は、半値全幅拡張光パルス信号15を構成する光パルスの時間軸上での半値全幅を縮小して光パルスのピーク強度を増大させることにより生成される。
図6(A)〜(D)を参照して、単色光パルス列11、半値全幅拡張光パルス列13、半値全幅拡張光パルス信号15、半値全幅縮小光パルス信号17の時間波形について説明する。図6(A)は単色光パルス列11の時間波形、図6(B)は半値全幅拡張光パルス列13の時間波形、図6(C)は半値全幅拡張光パルス信号15の時間波形、図6(D)は半値全幅縮小光パルス信号17の時間波形を示す図であり、横軸に時間を、縦軸に光強度をそれぞれ任意スケールで示してある。
単色光パルス列生成部10から出力される単色光パルス列11は、図6(A)に示すように、時間間隔がTbで規則正しく時間軸上に光パルスが並んで構成されている。時間間隔Tbは、光パルス幅縮小器16から出力される半値全幅縮小光パルス信号17、すなわちOCDM送受信装置の送信光パルス信号の信号周期に等しい。
単色光パルス列11の光パルスのピーク強度Piは、光変調器14の許容入力最大値PMAXを超えているものとする。すなわちPi>PMAXである。単色光パルス列11は、光パルス幅拡張器12に入力され、光パルスの半値全幅が拡張されて、半値全幅拡張光パルス列13に変換されて出力される。半値全幅拡張光パルス列13は、図6(B)に示す時間波形を有する光パルス列となる。半値全幅拡張光パルス列13の時間波形は、時間軸上に並ぶ光パルスの時間間隔Tbは変化していないが、半値全幅が、図6(A)に示す光パルスがΔtであるのに対して、Δt'に広げられている。そして、半値全幅拡張光パルス列13のピーク強度はPi'に減少している。
上述したように、光パルス幅拡張器12においては、図6(A)に示す光パルス1つ分のエネルギーと図6(B)に示す光パルス1つ分のエネルギーとはほぼ等しい。すなわち、Pi×Δt≒Pi'×Δt'が成り立つ。従って、光パルスのピークが低下した代わりに光パルスの半値全幅が広がっている。そして、光パルス幅拡張器12の光パルス幅の拡張量を調整すれば、半値全幅拡張光パルス列13の光パルスのピーク強度Pi'が、光変調器14の許容入力最大値PMAXを超えないようにすることが可能である。すなわちPi'<PMAXとすることが可能である。
半値全幅拡張光パルス列13は、光変調器14に入力されて半値全幅拡張光パルス信号15に変換されて出力される。光変調器14には、2値デジタル信号形式の送信情報19が入力されており、送信情報19によって半値全幅拡張光パルス列13を変調して図6(C)にその時間波形を示す、半値全幅拡張光パルス信号15が生成されて出力される。
図6(C)では、2値デジタル信号形式の送信情報19が(1, 0, 1, 1, ...)であることを仮定して示してある。図6(C)に示す半値全幅拡張光パルス信号15は、2値デジタル信号形式の(1, 0, 1, 1, ...)を反映して、「1」のビットには光パルスが存在し、「0」のビットには光パルスが不存在である光パルス信号として生成されている。
半値全幅拡張光パルス信号15は、光パルス幅縮小器16に入力されて、光パルスの半値全幅が縮小されて半値全幅縮小光パルス信号17に変換されて出力される。上述したように、光パルス幅縮小器16においては、図6(C)に示す光パルス1つ分のエネルギーと図6(D)に示す光パルス1つ分のエネルギーとはほぼ等しい。すなわち、Pi'×Δt'≒Pi×Δtが成り立つ。従って、光パルスのピークが増大した代わりに光パルスの半値全幅が狭まっている。そして、光パルス幅縮小器16の光パルス幅の縮小量を光パルス幅拡張器12の光パルス幅の拡張量に等しく調整すれば、光パルス列11の光パルスのピーク強度Piと半値全幅縮小光パルス信号17の光パルスのピーク強度Pi'を等しくすることが可能である。
(動作についての詳細な説明)
光パルス列11の光パルスのピーク強度Pi、半値全幅拡張光パルス列13のピーク強度はPi'、光パルス列11の光パルスの半値全幅Δt、半値全幅拡張光パルス列13の光パルスの半値全幅Δt'の関係を、半ば定性的に説明したが、以下において、実際の光通信で使われる、ガウスの誤差曲線によって光パルスの時間波形が与えられるガウシンアンパルスを例にとって、定量的に説明する。そして、参考例の光パルス信号生成装置を設計する際に必要となる、光パルス幅拡張器及び光パルス幅縮小器の設定条件を定量的に明らかにする。また、以下では、光パルス幅拡張器及び光パルス幅縮小器として、光ファイバを用いる場合を仮定して説明する。
単色光パルス列生成器10から出力される光パルスの1つの時間波形を、次式(1)で与えられるガウシアンパルスと仮定する。
ここで、E、E0、t、δt0、及びC0は、それぞれ電界包絡線の複素振幅(以下、単に電界振幅ということもある。)、光パルスのピーク電界振幅、時間、パルス幅、チャープパラメータである。光パルスとは、光搬送波がパケットの形態で集中したエネルギーの塊が空間を伝搬する対象であり、その時間波形は光搬送波の電場強度のピーク値を連ねる包絡線で与えられる。この包絡線を電界包絡線という。
パルス幅δt0は、ガウス誤差曲線における分散値の2乗を与えるパラメータであって、ガウス誤差曲線ピーク値の半分の強度におけるガウス誤差曲線の幅である半値全幅Δtf0とは次式(2)で与えられる関係がある。上述した半定性的説明においては、光パルスの半値全幅をΔtと表現したが、ここでは、具体的に光パルスの時間波形を、ガウス誤差曲線で与えられると仮定したので、ガウス誤差曲線の半値全幅をΔtf0と書き分けてある。しかしながら、半値全幅をΔtf0及び半値全幅をΔtの何れも、光パルスの時間波形のピーク値の半分の強度に置ける時間波形の幅である半値全幅を意味することには変わりがない。
光パルスの瞬時強度P(t)は、電界振幅E(t)の絶対値の2乗に比例するから、次式(3)で与えられる。ここで、P0は光パルスのピーク強度の値である。
光パルス列を構成する光パルスであって、隣接する光パルスの時間軸上での重なりが十分に小さい(隣接する光パルス同士の時間軸上での間隔が、光パルスの半値全幅に比べて十分広い)と見なせる場合は、その光パルス列の平均強度Pav0は、次式(4)で与えられる。
式(2)及び(3)を式(4)に代入すると、次式(5)が得られる。
ここで、Tbは、ビット周期であり、Δtf0/Tbはデューティー比を与える。よって、光パワーメータ等で平均強度Pav0を測定し、オシロスコープで半値全幅Δtf0を測定することによって、光パルスのピーク強度P0は次式(6)から算出される。
次に、光パルス幅拡張器12である光ファイバにおける光パルスの伝搬の様子を解析する。光ファイバ中の光パルスE1(z,t)の伝搬の様子は、次式(7)で記述される偏微分方程式(例えば、G. P. アグラワール著、小田垣孝、山田興一共訳「非線形ファイバー光学」原書第2版、物理学叢書、吉岡書店pp. 67-77, 1997年出版、71ページ、式(3.2.1)等を参照)で与えられる。
ここで、zは搬送波の伝搬方向の座標値であり、k1''は分散パラメータD1と次式(8)で与えられる関係をもつ量である。すなわち、式(7)に示す方程式は、光ファイバ中を伝搬する光パルスの伝播方向をz軸方向にとって示してある。ここで、λ0及びcはそれぞれ、搬送波の真空中での波長及び真空中での光速である。
式(1)で与えられるガウシアンパルスをz=0における時間波形であるとの初期条件下で、式(7)で与えられる偏微分方程式を解き、この解に式(2)及び式(8)を代入すると、距離zだけ伝搬した光パルスの時間波形は、次式(9)で与えられる。
図7(A)及び(B)を参照して、光ファイバにおける光パルスの伝搬の様子を特徴づける、振幅の減衰率を表すパラメータA1及び光パルス幅を表すパラメータδt1の伝搬距離z依存性について説明する。図7(A)はパラメータA1の伝搬距離z依存性を示すグラフであり、図7(B)はパラメータδt1の伝搬距離z依存性を示すグラフである。それぞれのグラフにおいて、横軸に伝搬距離zを任意スケールで目盛って示してある。図7(A)の縦軸はパラメータA1を任意スケールで目盛って示してあり、図7(B)の縦軸はパラメータδt1を任意スケールで目盛って示してある。
パラメータβ1C0の値が正であるか負であるかによってパラメータA1及びδt1の変化の仕方は異なる。図7(A)及び(B)において、β1C0>0である場合を実線で示し、β1C0≦0である場合を破線で示してある。
β1C0≦0である場合、図7(A)に示しようにパラメータA1の値は単調減少し、図7(B)に示すようにパラメータδt1の値は単調増加する。また、β1C0>0である場合、図7(A)及び(B)に示すように、0≦z≦C0/{β1(1+C0 2)}の範囲で、パラメータA1及びδt1はそれぞれ単調増加及び単調減少し、2C0/{β1(1+C0 2)}≦zのときパラメータA1及びδt1はそれぞれ単調減少及び単調増加する。z=2C0/{β1(1+C0 2)}のとき、パラメータA1及びδt1は、それぞれz=0のときの値に等しくなる。
式(9a)で与えられるA1(z)は、光パルス幅拡張器12である光ファイバを光パルスが距離zだけ伝搬したときのピーク電界振幅の減衰率を表している。ここで、光パルスのピーク強度は、ピーク電界振幅の2乗に比例することから、光ファイバを光パルスが伝搬することによるピーク強度の減衰率は、{A1(z)}2で表される。従って、光ファイバを光パルスが距離zだけ伝搬したときの光パルスのピーク強度は、{A1(z)}2×P0となる。
光変調器14への光パルスの入力ピーク強度がP1(上述した許容入力最大値PMAXに相当する値)以下に制御される場合、次式(10)で与えられる条件が、光ファイバの設計に課せられる。ここで、P1<P0である。
式(9b)で与えられるδt1(z)は、光ファイバを光パルスが距離zだけ伝搬したときの光パルスのパルス幅を表している。ここにおいて行っている解析は、単色光パルス列11を構成する光パルスの時間波形の形状をガウシアンパルスであると仮定しているので、単色光パルス列11の個々の光パルスのエネルギーの一部は、隣接する光パルスが配置されているビットスロットにも侵入しており、パラメータδt1(z)が十分大きければ、その侵入するエネルギーの量が大きくなる。以後、隣接する光パルスが配置されているビットスロットに侵入するエネルギー成分を、侵入光と呼ぶこともある。後述するように、侵入光は、光変調器14及び光パルス幅縮小器16を通過することで生成される半値全幅縮小光パルス信号17の個々の光パルスのエネルギーの一部は、隣接する光パルスが配置されているビットスロットにも侵入する。
この状態で、当該ビットスロットが情報「0」を与える光パルス非存在で、隣接するビットスロットの少なくとも一方が情報「1」を与える光パルス存在の状態である場合、光パルス非存在のビットスロットに侵入した侵入光が、光パルス幅縮小器16である光ファイバを通過後に、当該ビットスロット(光パルスが非存在のビットスロット)に再度侵入する。そのため、光パルスの隣接ビットスロットへの侵入量は少ないことが望まれる。
そこで、一例として、次式(11)で与えられる条件を課して、光パルス幅拡張器12である光ファイバの長さ等を設計する。式(11)におけるαは、Δtf0/Tb<α<1を満たすパラメータである。
この場合、式(10)及び式(11)の条件を満たす光ファイバの長さz1は、次式(12)で与えられる範囲に設定すればよい。
ここで、式(12)に含まれているチャープパラメータC0は、次のようにして測定値から求めることが可能である。
式(1)で与えられる関数E(t)をフーリエ変換すると次式(13)となることから、スペクトル幅δf0は、次式(14)で与えられる。
ここで、fは、光パルスの搬送波の周波数であって、同じく光パルスの搬送波の波長λとは、f×λ=cの関係がある。
式(14)から時間帯域幅積δf0×δt0は、次式(15)で与えられる。
式(2)を用いて、式(15)の左辺のスペクトル幅δf0及びパルス幅δt0を、それぞれ半値全幅に換算して時間帯域幅積を求めると、次式(16)で与えられるとおりとなる。
従って、チャープパラメータC0は、次式(17)で与えられる。
単色光パルス列11をオシロスコープ等で観測することにより半値全幅Δtf0を測定し、また、単色光パルス列11を光スペクトラムアナライザ等で観測することによりスペクトルの半値全幅Δff0を測定すれば、式(17)を用いてチャープパラメータC0の絶対値を算出することが可能である。
チャープパラメータC0の値が正であるか負であるかは、以下のように決定される。光ファイバを伝搬する光パルスの伝搬特性は式(7)に従うので、単色光パルス列11を、長さがz'であり、分散パラメータの値がD'である光ファイバを伝搬させると、光ファイバの出力端における光パルスのパルス幅は、式(9b)を導出する過程と同様に、次式(18)で与えられる。ただし、β'は次式(19)で与えられる。
従って、単色光パルス列11を光パルス幅拡張器12である光ファイバに入力して、この光ファイバを伝搬した後の光パルスの時間波形のパルス幅をオシロスコープ等で測定し、式(18)に基づく計算結果と比較することによって、先に求めたチャープパラメータC0の値が正であるか負であるかが決定される。
次に、光パルス幅縮小器16である光ファイバにおける、半値全幅拡張光パルス信号15を構成する光パルスの動作解析を行う。この光パルスの光ファイバ中の伝搬を記述する式は、分散パラメータの値がD2となっている他は、式(7)と同様である。式(7)では、この分散パラメータの値がD1であった。従って、式(9)において、z=z1とした電界振幅を初期条件とし、式(6)を用いた解析と同様に計算を行うと、光ファイバを距離zだけ伝搬した後の光パルスの時間波形E2(z, t)は、次式(20)で表される。
光パルス幅縮小器16である光ファイバ通過後光パルスのパルス幅を、単色光パルス列11の単色光パルス列生成部10から出力された直後の光パルス幅に等しくする。つまり、δt(z2)=δt0となるように、光パルス幅縮小器16である光ファイバの長さz2を設定する。このように設定された光ファイバの長さz2は、式(20b)から次式(21)で与えられる。
また、単色光パルス列生成部10から出力される単色光パルス列11のチャープパラメータC0と、光パルス幅拡張器12を構成する光ファイバの分散パラメータβ1との間に、β1C0>0の関係がある場合、光ファイバの長さz2は、次式(22)で与えられる長さに設定することもできる。
これは、光パルス幅縮小器16である光ファイバにより半値全幅拡張光パルス信号15の光パルスのパルス幅を、光パルス幅拡張器12を構成する光ファイバのz=2C0/{β1(1+C0 2)}におけるパルス幅に戻すように設定することを意味する。
分散パラメータβ1は、式(9e)を用いて分散パラメータの値D1から算出される。また、図7に示すように、β1C0>0である場合、δt1(z=2C0/{β1(1+C0 2)})=δt0となる。
光パルス幅拡張器12を構成する光ファイバの分散パラメータ、及び光パルス幅縮小器16である光ファイバの分散パラメータが、光ファイバの長手方向に一様でない場合、式(12)、(21)及び(22)で与えられるz1及びz2の設定条件は、以下のとおり変更される。分散パラメータが光ファイバの長手方向に一様でない光ファイバとは、チャープトファイバブラッググレーティング等が相当する。
z依存性を明確にするために、光パルス幅拡張器12を構成する光ファイバの分散パラメータをD1(z)とし、光パルス幅縮小器16である光ファイバの分散パラメータをD2(z)とする。そして、次式(23a)及び(23b)で、それぞれ定義される物理量s1及びs2を導入する。
式(12)で与えられるz1の設定条件は、0≦s1のとき式(24a)で与えられ、s1<0のとき式(24b)で与えられる。
式(21)で与えられるz2の設定条件は、次式(25)と変更され、式(22)で与えられるz2の設定条件は、次式(26)と変更される。
ここで、式(23a)及び式(23b)中で、それぞれD1(z)及びD2(z)の積分値として与えられる量は、それぞれ、光パルス幅拡張器12を構成する光ファイバ、及び光パルス幅縮小器16である光ファイバの累積分散と呼ばれる量である。D1(z)及びD2(z)の積分値として与えられるそれぞれの量を、S1及びS2と定義すると、光ファイバの長さではなく累積分散を設定することによっても、光パルス幅拡張器12を構成する光ファイバ、及び光パルス幅縮小器16を構成する光ファイバを設計することが可能である。
累積分散S1の設定条件は、0≦S1である場合は式(27a)で与えられ、S1<0である場合は式(27b)で与えられる。
S2の設定条件は、次式(28)で与えられる。S1C0>0であるときS2の設定条件は、次式(29)で与えられる。
以上説明した様に、参考例の光パルス信号生成装置の実施の形態によれば、2値デジタル信号形式の送信情報に従って変調処理を行う光変調器の前段に光パルス幅拡張器12を構成する光ファイバを設置したので、光変調器14の許容入力最大値を超えるピーク強度を有する光パルス列からRZフォーマットの光パルス信号(半値全幅縮小光パルス信号17)を生成して出力することが可能である。その結果、以下に(A)及び(B)として箇条書きする効果を得ることが可能である。
(A)光パルス信号生成装置から出力される光パルス信号のビットレート及びパルス幅が指定されている場合、光変調器14の前段に光パルス幅拡張器12を構成する光ファイバが配置されているので、光パルス列11の平均強度を、この光ファイバを配置しなかった場合と比べて、1/{A1(z1)}2倍(1/{A1(z1)}2>1)にすることが可能である。その結果、参考例の光パルス信号生成装置から出力される半値全幅縮小光パルス信号17(光パルス信号)の平均強度を、従来の同種の光パルス信号生成装置から出力される光パルス信号より大きくできる。
従って、参考例の光パルス信号生成装置を組み込んで構成されるOCDM送受信システムは、OSNRを向上させることが可能であり、伝送損失マージンを十分広く拡大することが可能であり、受信感度の向上を図ることができる。
(B)光変調器14に入力される光パルス列の平均強度が指定されている場合、単色光パルス列11のデューティー比を、光変調器14の前段に光パルス幅拡張器12を構成する光ファイバが配置されていない場合と比べて、{A1(z1)}2倍({A1(z1)}2<1)に減少させることが可能である。そのため参考例の光パルス信号生成装置を組み込んで構成されるOCDM送受信システムは、符号長が大きい符号化方式を採用することが可能となり、OCDM送受信システムにおけるSIRを増加させることが可能である。その結果OCDM送受信システムにおける多重数を拡大することができる。
<この発明の光パルス信号生成装置の実施形態>
(構成及び動作の概略的説明)
図8を参照して、この発明の光パルス信号生成装置の実施形態の構成及びその動作について説明する。図8は、この発明の光パルス信号生成装置の実施形態の概略的ブロック構成図である。
この発明の光パルス信号生成装置52は、多色光パルス列生成部20と、波長分散器22と、光変調器24と、波長逆分散器26とを具えている。
多色光パルス列生成部20は、N種類(Nは2以上の整数)の波長成分を含む多色光パルスが時間軸上で等間隔に並ぶ多色光パルス列21を生成して出力する。
波長分散器22は、多色光パルス列21が入力され、単位光パルス列が時間軸上で直列に配置されて構成される波長分解光パルス列23を出力する。波長分解光パルス列23は、多色光パルス列21を構成する多色光パルスのそれぞれを相異なる波長のN個の単色光パルスからなる単位光パルス列に変換することにより生成される。波長分散器22は、光通信に使われる通常の光ファイバの他、チャープトファイバブラッググレーティング、ホーリーファイバ、フォトニック結晶等を適宜利用して構成できる。
光変調器24は、波長分解光パルス列23が入力されて、波長分解光パルス信号25を生成して出力する。波長分解光パルス信号25は、2値デジタル信号形式の送信情報29に従って波長分解光パルス列23を構成する単位光パルス列を最小単位として変調することにより生成される。
波長逆分散器26は、波長分解光パルス信号25が入力されて、N個の波長成分を含む多色光パルスから構成される多色光パルス信号27を生成して出力する。多色光パルス信号27は、単位光パルス列を構成するN個の単色光パルスを合成してN個の波長成分を含む単一光パルスに変換することにより生成される。波長逆分散器26も、波長分散器22と同様に、光通信に使われる通常の光ファイバの他、チャープトファイバブラッググレーティング、ホーリーファイバ、フォトニック結晶等を適宜利用して構成できる。
光変調器24は、波長分解光パルス列23が入力されて、波長分解光パルス信号25を生成して出力する。2値デジタル信号形式の送信情報29は、送信信号供給部28から出力され、光変調器24に供給される。
この発明の光パルス信号生成装置52によれば、以下のステップを含むこの発明の光パルス信号生成方法を実施することが可能である。
この発明の光パルス信号生成方法は、多色光パルス列生成ステップと、波長分散ステップと、光変調ステップと、波長逆分散ステップとを含んでいる。
多色光パルス列生成ステップはN種類(Nは2以上の整数)の波長成分を含む多色光パルスが時間軸上で等間隔に並ぶ多色光パルス列21を生成して出力するステップであり、多色光パルス列生成部20によって実行される。
波長分散ステップは、多色光パルス列21が入力されて、単位光パルス列が時間軸上で直列に配置されて構成される波長分解光パルス列23を生成して出力するステップであり、波長分散器22によって実行される。波長分解光パルス列23は、多色光パルス列を構成する多色光パルスのそれぞれを相異なる波長のN個の単色光パルスからなる単位光パルス列に変換することにより生成される。
光変調ステップは、波長分解光パルス列23が入力されて、波長分解光パルス信号25を生成して出力するステップであり光変調器24によって実行される。波長分解光パルス信号25は、2値デジタル信号形式の送信情報29に従って波長分解光パルス列23を構成する単位光パルス列を最小単位として変調することにより生成される。
波長逆分散ステップは、波長分解光パルス信号25が入力されて、N種類の波長成分を含む多色光パルスから構成される多色光パルス信号27を生成して出力するステップであり、波長逆分散器26によって実行される。多色光パルス信号27は、単位光パルス列を構成するN個の単色光パルスを合成してN種類の波長成分を含む単一光パルスに変換することにより生成される。
図9(A)〜(D)を参照して、多色光パルス列21、波長分解光パルス列23、波長分解光パルス信号25、多色光パルス信号27の時間波形について説明する。図9(A)は多色光パルス列21の時間波形、図6(B)は波長分解光パルス列23の時間波形、図9(C)は波長分解光パルス信号25の時間波形、図9(D)は多色光パルス信号27の時間波形を示す図であり、横軸に時間を、縦軸に光強度をそれぞれ任意スケールで示してある。
多色光パルス列生成部20から出力される多色光パルス列21は、図9(A)に示すように、時間間隔がTbで規則正しく時間軸上に光パルスが並んで構成されている。時間間隔Tbは、波長逆分散器26から出力される多色光パルス信号27、すなわちOCDM送受信装置の送信光パルス信号の信号周期に等しい。
多色光パルス列21の光パルスのピーク強度Poは、光変調器24の許容入力最大値PMAXを超えているものとする。すなわちPo>PMAXである。多色光パルス列21が入力され波長分散器22から出力される波長分解光パルス列23は、図9(B)に示す時間波形を有する光パルス列となる。波長分解光パルス列23の時間波形は、多色光パルス列21を構成する多色光パルスのそれぞれを相異なる波長のN個の単色光パルスからなる単位光パルス列に変換し、単位光パルス列が時間軸上で直列に配置された形状となっている。
多色光パルスは、時間軸上で時間間隔がTbで仕切られたビットスロットに1つずつ配置されている。図9(A)に示す多色光パルス列21を構成する光パルスのうち最も左側のビットスロットに配置されている多色光パルスを例にして、この多色光パルスが図9(B)に示す波長分解光パルス列23を構成する単色光パルスからなる単位光パルス列に変換される様子について説明する。
以後の説明において、時間間隔がTbで仕切られたビットスロットを、図9(A)〜(D)において、左側から順に第1ビットロット、第2ビットスロット等の順番をつけて指示することもある。
説明の便宜上、多色光パルスが、波長λ1、λ2及びλ3の3色の波長成分を含んでいるものとして説明するが、以下の説明は2色以上の波長成分を含んでいる全ての場合に対して成立する。多色光パルスが、波長分散器22によって、単位光パルス列に変換されると、図9(B)に示すように、時間軸上で時間間隔がTbで仕切られたビットスロットに、波長λ1、λ2及びλ3である単色光パルスの組が1組ずつ配置される。1つのビットスロットに配置される波長λ1、λ2及びλ3である単色光パルスの組が単位光パルス列である。
波長分散器22においては、多色光パルス1つ分のエネルギーと単位光パルス列を構成する波長λ1、λ2及びλ3である単色光パルスのエネルギーの総和はほぼ等しい。
波長λ1、λ2及びλ3である単色光パルスのそれぞれのエネルギーが等しければ、多色光パルス列21のエネルギーが時間軸上で時間間隔がTbで仕切られたビットスロットに1組ずつ配置される単位光パルス列を構成する、それぞれの波長がλ1、λ2及びλ3である単色光パルスに均等に分配される。従って、単位光パルス列を構成する単色光パルスのピーク値はPo/3となっている。すなわち、一般に、多色光パルス列21を構成する多色光パルスのそれぞれが相異なる波長のN個の単色光パルスからなる場合は、単位光パルス列を構成する単色光パルスのピーク値はPo/Nとなっている。
以上説明した様に、波長分解光パルス列23は、構成する光パルスの数がN倍に増えた代わりに、光パルス一つ一つのピーク値が低減されている。多色光パルス列21が有する単色波長成分の種類を増大させる、すなわち、多色光パルスに含まれる波長成分をλ1、λ2、λ3、...λNとするとき、Nを適宜選択することによって、波長分解光パルス列23の光パルスのピーク強度Po/Nが、光変調器14の許容入力最大値PMAXを超得ないようにすることが可能である。すなわち(Po/N)<PMAXとすることが可能である。
波長分解光パルス列23は、光変調器24に入力されて波長分解光パルス信号25に変換されて出力される。すなわち、光変調器24には、2値デジタル信号形式の送信情報29が入力されており、送信情報29によって波長分解光パルス列23を構成する単位光パルス列を最小単位として変調して、図9(C)にその時間波形を示す、波長分解光パルス信号25が生成されて出力される。
波長分解光パルス列23を構成する単位光パルス列を最小単位として変調するという具体的な意味を、2値デジタル信号形式の送信情報29が(1, 0, 1, 1, ...)であると仮定して説明する。
送信情報29の最初のビットが「1」であるから、図9(C)に示す波長分解光パルス信号25の第1ビットスロットには、波長λ1、λ2及びλ3である単色光パルスの組である単位光パルス列が配置される。次に、送信情報29の第2番目のビットは「0」であるから、図9(C)に示す波長分解光パルス信号25の第2ビットスロットには、波長λ1、λ2及びλ3である単色光パルスの組である単位光パルス列が存在していない。しかしながら、送信情報29の第3番目のビットは、第1番目のビットと同様に「1」であるから、図9(C)に示す波長分解光パルス信号25の第3ビットスロットには、波長λ1、λ2及びλ3である単色光パルスの組である単位光パルス列が配置される。
このように、送信情報29のビットが「1」であるビットスロットに対しては、光変調器から単位光パルス列の一組が透過され、送信情報29のビットが「0」であるビットスロットに対しては、光変調器24から単位光パルス列が透過しないように、単位光パルス列を最小単位として透過あるいは不透過として変調することを、波長分解光パルス列23を構成する単位光パルス列を最小単位として変調するという。
波長分解光パルス信号25は、波長逆分散器26に入力されると、単位光パルス列を構成する波長λ1、λ2及びλ3である3個の単色光パルスが合成されて波長λ1、λ2及びλ3の成分を含む単一光パルスに変換されて、波長λ1、λ2及びλ3の成分を含む多色光パルスから構成される多色光パルス信号27が生成されて出力される。
上述したように、波長逆分散器26においては、図9(C)に示す単色光パルス3つ分のエネルギーと、図9(D)に示す光パルス1つ分のエネルギーとはほぼ等しい。従って、多色光パルス信号27はその光パルスのピークが増大した代わりに、複数個の単色の光パルス列が合成されて1つの光パルスに変換されている。そして、多色光パルス列21の光パルスのピーク強度Poと、多色光パルス信号27の光パルスのピーク強度Po'とを等しくすることが可能である。
(動作についての詳細な説明)
以上、この発明の光パルス信号生成装置の実施形態の構成及びその動作についての概略的説明を半ば定性的に行ったが、ここでもこの発明の光パルス信号生成装置の動作について、光パルスの時間波形が与えられるガウシンアンパルスを例にとって、定量的に説明する。また、以下では、波長分散器及び波長逆分散器として、光ファイバを用いる場合を仮定して説明する。
参考例の光パルス信号生成装置は単色光パルス信号の生成装置であった。従って、参考例の光パルス信号生成装置は時間拡散符号化方式を採用したOCDM送受信システムに適用することが可能である。一方、時間拡散波長ホップ符号化方式は、多色光パルス信号が利用される。この発明の光パルス信号生成装置はこの時間拡散波長ホップ符号化方式を採用したOCDM送受信システムに適用される。
この発明の光パルス信号生成装置が、参考例の光パルス信号生成装置と異なる点は、光パルス幅拡散器の替わりに波長分散器を具え、光パルス幅縮小器の替わりに波長逆分散器が具えられている点である。波長分散器及び波長逆分散器の何れも、光パルス幅拡散器及び光パルス幅縮小器と同様に、通常の光ファイバを利用することが可能である。ただし、利用される光ファイバの分散パラメータ及びその長さが、光パルス幅拡散器及び光パルス幅縮小器として利用する場合と、波長分散器及び波長逆分散器として利用する場合とでは異なっている。
そこで、以下の説明では、図8に示した波長分散器22として利用される光ファイバ、及び波長逆分散器26として利用される光ファイバの、それぞれの分散パラメータをD3及びD4とし、それぞれの光ファイバの長さをz3及びz4とする。
多色光パルス列21を構成する光パルスの時間波形を次式(30)で与えられるものとする。
ここで、E及びtは、それぞれ電界振幅及び時間を示す。Nは、多色光パルスに含まれる搬送波の波長成分の数であり、E(j)は、搬送波の波長がλjである単色光パルスの電界振幅である。ここで、jは、1からNまでの全ての整数である。ωjは角周波数であり、波長λjと次式(31)で与えられる関係がある。
波長分散器22を構成する光ファイバを伝搬する光パルスの様子を記述する偏微分方程式は、上述したように式(6)で与えられる。式(30)を初期条件として式(6)で与えられる偏微分方程式を解くと、距離zだけ光ファイバ中を伝搬した後の多色光パルスの電界振幅E3(z, t)は、次式(32)で与えられる。ただし、分散パラメータをD3としてある。
ここで、E(j)は、式(9)で与えられるE1と同様に距離zだけ伝搬した後の単色光パルスの電界振幅であり、添え字(j)は、搬送波の波長がλjである単色光パルス成分であることを表している。以後、混乱が生じない範囲で、単色光パルス成分を、単色光パルスと記載することもある。
式(32)によって以下のことが判明する。単色光パルス成分は、波長分散器22を構成する光ファイバを伝搬した後、その電界振幅、パルス幅、チャープ、及び位相の変化は、上述した式(9)で与えられる、電界振幅、パルス幅、チャープ、及び位相の変化と同様である。
更に、搬送波の波長が異なる単色光パルス成分の、パルスの時間中心位置は、搬送波の波長がΔλ異なれば、光ファイバ中を距離zだけ伝搬後には、ΔλD3zずれる。Δλは、通常単色光パルス成分のスペクトル幅よりも大きくとるので、単色光パルス成分のパルスの時間中心位置のずれ量が、単色光パルス成分のスペクトル幅に比べて支配的である。
また、単色光パルス成分のパルスの波長の相違に基づく時間中心位置ずれにより、多色光パルスに含まれる全ての単色光パルス成分は、波長分散器22を構成する光ファイバを伝搬後、先端に位置する波長の単色光パルス成分と最後端に位置する波長の単色光パルス成分との間に存在することになる。
先端に位置する波長の単色光パルス成分と最後端に位置する波長の単色光パルス成分との波長差をΔλMAXとすると、先端に位置する波長の単色光パルス成分と最後端に位置する波長の単色光パルス成分との光ファイバ内での間隔は、ΔλMAXD3zとなる。
そこで、一例として、ΔλMAXD3zの値が、隣接するビットスロットの間隔を越えない条件、すなわち次式(33)を満たすように、波長分散器22を構成する光ファイバを設計するとすれば、この光ファイバの長さz3は、式(34)で与えられる範囲に設定すればよい。ここで、αは、Δtf0/Tb<α<1を満たすパラメータである。
また、波長分散器22を構成する光ファイバを通過することによって、多色光パルス列21のピーク強度は、以下のとおり変化する。
単色光パルスの位置ずれ量が単色光パルスのパルス幅よりも十分に大きい場合、波長分散器22を構成する光ファイバによって生成される波長分解光パルス列23の光パルスのピーク強度は、多色光パルスのピーク強度の1/Nになる。単色光パルスの位置ずれ量が単色光パルスのパルス幅と同程度かそれ以下である場合は、波長分解光パルス列23の光パルスのピーク強度は、式(32)から求める必要がある。
次に、波長逆分散器26を構成する光ファイバを伝搬する光パルスについて解析する。この光パルスの伝搬の様子は、式(6)において、分散パラメータをD1に替えてD4に設定した式(6)で与えられる偏微分方程式で記述される。従って、式(32)において、z=z3とした電界振幅を初期条件として、波長分散器22を構成する光ファイバの解析と同様に解析できる。この解析によれば、波長逆分散器26を構成する光ファイバを距離zだけ伝搬した後の時間波形E4(z, t)は、次式(35)で与えられる。
波長逆分散器24を構成する光ファイバを通過後の光パルス(多色光パルス信号27を構成する多色光パルス)の時間波形が、多色光パルス列21を構成する多色光パルス列の時間波形に等しくなるように、光ファイバの長さz4を設定するとすれば、式(30)及び式(35)を用いて、次式(36)で与えられることが導かれる。
以上の解析結果について、図9(A)〜(D)を参照して説明する。図9(B)においては、N=3に設定されている。すなわち、既に説明したように、搬送波の波長がそれぞれλ1、λ2、λ3である単色光パルス成分からなる多色光パルスを仮定している。
また、参考例の光パルス信号生成装置と同様に、波長分散器22を構成する光ファイバ、及び波長逆分散器26を構成する光ファイバのそれぞれの分散パラメータD3及びD4が光ファイバの長手方向に一様でない場合、z3及びz4の設定条件は、以下の条件式(37)及び(38)で与えられるように変更される。ここで、s3及びs4は、それぞれ、式(39a)及び式(39b)で与えられる。
波長分散器22を構成する光ファイバ、及び波長逆分散器26を構成する光ファイバのそれぞれの累積分散を、それぞれS3及びS4とすれば、S3及びS4の設定条件は、それぞれ式(40)及び(41)で与えられる。
以上説明した様に、この発明の光パルス信号生成装置によれば、波長分散器22を構成する光ファイバ、及び波長逆分散器26を構成する光ファイバのそれぞれの長さを調整することにより、光変調器24の許容入力最大値を超えるピーク強度を有する多色光パルス列から、RZフォーマットの光パルス信号を生成することが可能である。その結果、以下に(C)及び(D)として箇条書きする効果を得ることが可能である。
(C)光パルス信号生成装置から出力される光パルス信号のビットレート及びパルス幅が指定されている場合、光変調器24の前段に波長分散器22を構成する光ファイバが配置されているので、多色光パルス列21の強度を、光変調器24の前段に波長分散器22を配置しなかった場合と比べてN倍にすることが可能である。その結果、この発明の光パルス信号生成装置から出力される多色光パルス信号27を構成する多色光パルス(この発明の光パルス信号生成装置で生成される光パルス信号)の時間波形の平均強度を、従来の同種の光パルス信号生成装置から出力される光パルス信号より大きくできる。
その結果、この発明の光パルス信号生成装置を組み込んで構成されるOCDM送受信システムは、OSNRを向上させることが可能であり、伝送損失マージンを十分広く拡大することが可能であり、受信感度の向上を図ることができる。
(D)光変調器24に入力される単色光パルス列の平均強度が指定されている場合、多色光パルス列21のデューティー比を、光変調器24の前段に波長分散器22を配置しなかった場合と比べて1/N倍({1/N<1)に減少させることが可能である。そのためこの発明の光パルス信号生成装置を組み込んで構成されるOCDM送受信システムは、符号長が大きい符号化方式を採用することが可能となり、OCDM送受信システムにおけるSIRを増加させることが可能である。その結果OCDM送受信システムにおける多重数を拡大することができる。
<参考例のOCDM送受信システムの実施形態>
図10を参照して、参考例のOCDM送受信システムの実施形態の構成及びその動作について説明する。図10は、参考例のOCDM送受信システムの実施形態の概略的ブロック構成図である。
参考例のOCDM送受信システムは、光パルス信号生成部、符号化部32及び復号化部34を具えて構成される。光パルス信号生成部と符号化部32が送信側に具えられており、復号化部34が受信側に具えられている。そして、光パルス信号生成部に参考例の光パルス信号生成装置50が利用されることが特徴である。
送信される光パルス信号17は、参考例の光パルス信号生成装置である光パルス信号生成部50において生成されて出力される。光パルス信号生成部50の構成及びその動作については既に説明したので、ここでは省略する。
参考例の光パルス信号生成装置は、上述したように、光パルス信号生成部50が具える光変調器14の許容入力最大値に係わりなく、光パルスのピーク強度が十分強く、かつ光パルスのデューティー比が十分小さい光パルス信号を生成して出力することが可能である。従って、参考例の光パルス信号生成装置を具える参考例のOCDM送受信システムによれば、SIRが十分大きくかつOSNRも十分に大きい、OCDM通信が可能となる。
<この発明のOCDM送受信システムの実施形態>
図11を参照して、この発明のOCDM送受信システムの実施形態の構成及びその動作について説明する。図11は、この発明のOCDM送受信システムの実施形態の概略的ブロック構成図である。
この発明のOCDM送受信システムは、光パルス信号生成部、符号化部32及び復号化部34を具えて構成される。光パルス信号生成部と符号化部32が送信側に具えられており、復号化部34が受信側に具えられている。そして、光パルス信号生成部にこの発明の光パルス信号生成装置52が利用されることが特徴である。
送信される光パルス信号27は、この発明の光パルス信号生成装置である光パルス信号生成部52において生成されて出力される。光パルス信号生成部52の構成及びその動作については既に説明したので、ここでは省略する。
この発明の光パルス信号生成装置は、上述したように、光パルス信号生成部52が具える光変調器24の許容入力最大値に係わりなく、光パルスのピーク強度が十分強く、かつ光パルスのデューティー比が十分小さい光パルス信号を生成して出力することが可能である。従って、ここの発明の光パルス信号生成装置を具えるこの発明のOCDM送受信システムによれば、SIRが十分大きくかつOSNRも十分に大きい、OCDM通信が可能となる。