光ファイバを伝送路(データリンクと呼称されることもある。)として用いて構成される光パケット通信システムにおいて、光パケットに応じて伝送経路を交換する機能を光学的な技術によって実現する、いわゆるフォトニックネットワークが検討されている。このフォトニックネットワークにおいて、伝送路の交換は、複数の伝送路を結合する節(ネットワークノードと呼称されることもある。)で実行される。伝送路の交換とは、伝送路を切り替えることによって、受け取った光パケットを転送すべき隣接するネットワークノードを選定し、この選定した隣接するネットワークノードに向けて光パケットを転送する機能をいう。
光パケットがネットワークノードに到達すると、この光パケットに付されたアドレス情報に基づいて、この光パケットの最終到達場所である終点のホスト(エンドシステム)に向けてこの光パケットが伝送されるように、ネットワークノードに結合している複数の伝送路の中から特定の伝送路が自律的に選択される。すなわち、ネットワークノードを光パケットが通過する際に、この光パケットが次に到達すべき隣接するネットワークが自律的に選択され、そのネットワークノードに向けて送り出される。
ネットワークノードを光パケットが通過する際に、この光パケットが伝送される伝送経路が自律的に決定されるためには、光パケットのアドレス情報を光符号化するための技術と、この光符号化されたアドレス情報を認識する技術が必要である。すなわち、光パケットを送り出す通信の始点となるネットワークノード(始点となるホスト)ではアドレス情報の光符号化が行なわれ、この光パケットを受け取ったネットワークノードでは光符号化されたアドレス情報を認識して、この認識結果に基づいて、この光パケットが伝送される経路を自律的に決定するという光パケットルーティングが必要となる。以後、光符号化されたアドレス情報を認識することを、光符号化されたアドレス情報を復号化するということもある。
アドレス情報を光符号化する方法として、時間分割波長ホップ光符号化と呼ばれる方法が知られている。従来知られた時間分割波長ホップ光符号化方法は、以下で説明するように幾つか存在する。
例えば、光符号分割多重(OCDM: Optical Code Division Multiplexing)を応用した、時間分割波長ホップ光符号化が知られている(例えば、非特許文献1乃至3を参照)。この時間分割波長ホップ光符号化においては、光符号化されたアドレス情報を担う光パルス列を構成する個々の光パルスは、それぞれの周波数(波長)が異なっている。光符号化されアドレス情報を担う光パルス列を構成する個々の光パルスを、以後チップパルスということもある。
すなわち、時間分割波長ホップ光符号化においては、周波数(波長)の異なるチップパルスからなる光パルス列が利用され、このチップパルスの相互間には決まった位相関係は存在しない。このように、時間分割波長ホップ光符号化によって、相互間には決まった位相関係の存在しないチップパルスから成る光パルス列を利用して光符号化されたアドレス情報を生成することを、以後、多波長光符号化と呼ぶこともある。
特定の符号系列の中の異なる符号が設定された光符号器によって多波長光符号化することで生成されたアドレス情報を有する光パケットを受け取ったネットワークノードにおいては、このアドレス情報は多波長光復号化される。多波長光復号化によるアドレス情報の認識は、例えば、時間領域での整合フィルタリングを行って自己相関関数を得、自己相関関数のピークの有無を判定することにより行なわれる。すなわち、自己相関関数のピークが存在すれば、送られてきた光パケットのアドレス情報であることが認識される。
図1を参照して、非特許文献1及び2に開示されているアドレス情報の多波長光符号化について、具体的に説明する。図1は、アドレス情報の従来の多波長光符号化方法の説明に供する図であり、この発明の理解に必要とされる部分のみを上記非特許文献1及び2に開示されている多波長光符号化及び多波長光復号化装置の構成図から抜き出し、この発明の理解に資するようにその構成図を書き直してある。従って、アドレス情報を担うヘッダを伝送すべき情報を担うペイロードに付して光パケットを生成する方法等に関する構成等は省略してある。
図1は、光パケットに付されたアドレス情報を多波長光符号化して送信し、この符号化されたアドレス情報を受信して認識する従来の装置の概略的ブロック構成図である。始点となるネットワークノード10は、多波長光源12、光変調器16及び多波長光符号部20を具えて構成される。また、ネットワークノード10から送られてくる光パケットを受信する、隣接のネットワークノード40は、多波長光復号部30とアドレス情報認識装置42を具えて構成される。
多波長光源12は、発振波長が異なる3個の半導体レーザLD1、LD2及びLD3を具え、これら半導体レーザLD1、LD2及びLD3からの出力光を合波器14で合波することにより、波長の異なる複数の光が混ぜ合わされた多波長連続光S15を出力する。光変調器16は、パルス発振器18から供給される電気パルス信号によって駆動され、光変調器16に入力される多波長連続光S15を多波長光パルス列S19に変換して出力する。多波長光パルス列S19は、多波長光符号部20で多波長光符号化されて、出力光S26として隣接のネットワークノード40に送信される。
多波長光符号部20は、ファイバブラッググレーティング(FBG: Fiber Bragg Grating)で構成される光符号器24及び光サーキュレータ22を具えて構成される。多波長光符号部20において、多波長光パルス列S19は光サーキュレータ22を介して光符号器24に送られ、多波長光符号化されて(アドレス情報が多波長光符号化されて)再び光サーキュレータ22を介して伝送路(データリンク)に出力光S26として送り出され、隣接のネットワークノード40で受信される。
隣接のネットワークノード40では、多波長光復号部30で多波長光復号化されて、始点となるネットワークノード10において多波長光符号化される前の光パルス列と同一形状の光パルス列が再生されて、アドレス情報認識装置42に送られる。アドレス情報認識装置42において、時間領域での整合フィルタリングによって自己相関関数が求められ、自己相関関数のピークの有無が判定されて、アドレス情報が認識される。なお、多波長光復号部30は、光サーキュレータ32及び光復号器34を具えて構成される。多波長光復号部30において、光符号器24によって多波長光符号化されて出力された出力光S26は、光サーキュレータ32を介して光復号器34に送られ、多波長光復号化されて再び光サーキュレータ32を介して出力光S36として出力される。
図2(A)〜(D)を参照して、伝送路15、19、26及び36を伝送される光信号の時間軸上及び周波数軸上の形状を説明して、多波長光符号化及び多波長光復号化の原理を説明する。図1において、伝送路中A〜Dで示す位置における伝送路15、19、26及び36を伝送される光信号の時間軸上及び周波数軸上の形状を、それぞれ図2の(A)〜(D)で示す図に対応させて描いてある。
図2(A)〜(D)において、上段に示す図は周波数軸に対する光信号の形状を示し、下段に示す図は時間軸に対する光信号の形状を示している。各図において縦軸方向は光強度を任意スケールで示しているが、煩雑を避けるために各図において縦軸は省略してある。また、周波数軸上での光パルスは、その半値幅を無視して縦方向の線分によって近似的に表現してある。すなわち、線分の長さによって光パルスの強度を示している。
光源12を構成する半導体レーザLD1、LD2及びLD3からの出力光の周波数をそれぞれfa(Hz)、fb(Hz)及びfc(Hz)の連続光であるものとして説明する。これらの出力光は合波器14で合波されて多波長(多周波数)連続光とされる。従って、図1において伝送路中Aで示す位置での光信号の形状は、図2(A)に示す形状となる。すなわち、周波数軸上では周波数fa(Hz)、fb(Hz)及びfc(Hz)の位置に光パルスが存在し、時間軸上では連続光であるから強度は一定となる。
多波長連続光S15は、光変調器16によって多波長光パルス列S19に変換されて出力される。従って、図1において伝送路中Bで示す位置での光信号の形状は図2(B)に示す形状となる。すなわち、光変調器16によって多波長連続光S15が変換されて得られた多波長光パルス列S19の形状である。
多波長連続光S15が、光変調器16によって多波長光パルス列S19に変換されると、周波数軸上において、周波数fa(Hz)、fb(Hz)及びfc(Hz)の位置を中心として、それぞれ両側にサイドバンドと称される光パルスが発生する。この結果、図2(B)に示す周波数軸上におけるパルス列の形状が、図2(A)に示された周波数軸上の周波数fa(Hz)、fb(Hz)及びfc(Hz)の位置に存在する光パルスに加えて、それぞれの光パルスの両側に新たな光パルスが存在する。
多波長光パルス列S19は、光符号器24によって多波長光符号化されて、出力光S26として出力されて伝送路26を伝送される。出力光S26は、従って、図1において伝送路中Cで示す位置で観測される光信号であり、その形状は、図2(C)に示す形状となる。多波長光符号化された出力光S26は、多波長光パルス列S19と周波数軸上では変化は見られないが、時間軸上では図2(C)の下段に示すように、チップパルスに分解され時間軸上に拡散されて存在する。そして、光源12を構成する半導体レーザLD1、LD2及びLD3からの出力光の相互間には決まった位相関係が存在しないので、すなわち相互にインコヒーレントであるので、このチップパルスの相互間にも決まった位相関係は存在しない。
図2(B)及び(C)を参照して説明した経過をたどって、多波長光パルス列S19はチップパルス列に変換される。すなわち、光符号器24が有する符号化情報に従って、チップパルスが時間軸上で存在する位置が特異的に決定されるとともに、それぞれのチップパルスがもつ周波数でチップパルスを区別した場合のそれぞれのチップパルスの時間軸上での配列順序が特異的に決定される。このようにして、多波長光パルス列S19は光符号器24によって、多波長光符号化される。
多波長光符号化された出力光S26は伝送路26を伝送されて、光復号器34で多波長光復号化されて出力光S36として出力される。出力光S36は、従って、図1において伝送路中D示す位置で観測される光信号であり、その形状は図2(D)に示す形状となる。多波長光復号化された出力光S36も、多波長光パルス列S19と周波数軸上では変化は見られないが、時間軸上では図2(D)の下段に示すように、図2(B)の下段に示されたパルス形状と同一の形状の光パルス列となる。
従って、アドレス情報認識装置42において、始点となるネットワークノード10から伝送されたアドレスであることが以下のようにして認識される。すなわち、図2(D)の下段に示す光パルス列の形状が、図2(B)の下段に示されたパルス形状と同一なので、時間領域での整合フィルタリングによって求められる自己相関関数は顕著なピークを有する。従って、多波長光復号部30とアドレス情報認識装置42とにおいて、時間領域での整合フィルタリングによって自己相関関数が求められ、自己相関関数のピークの有無が判定されることに相当する動作が行なわれて、アドレス情報が認識される。
図1を参照して説明した多波長光符号化とは別の方法による多波長光符号化を行なう多波長光符号化装置も研究されている(例えば非特許文献3参照)。この多波長光符号化装置では、図1を参照して説明した多波長光符号化で採用された、発振波長が異なる3個の半導体レーザLD1、LD2及びLD3を組み合わせて構成した多波長光源12に換えて、スーパーコンティニアム(SC: Supercontinuum)光を発生させることができるSC光源を採用している。
図3を参照して、非特許文献3に開示されている多波長光符号化装置の構成上の特徴を説明する。図3においては、図1と同様に発明の理解に必要とされる部分のみを上記非特許文献3に開示されている多波長光符号化及び認識装置の構成図から抜き出し、特に必要となる図1の多波長光源12に相当する部分を説明に便利なように書き直してある。
始点となるネットワークノード50は、SC光源60、光変調器62及び多波長光符号部70を具えて構成されている。光変調器62は、パルス発振器64から供給される電気パルス信号によって駆動され、光変調器62に入力されるSC光59を多波長光パルス列S65に変換して出力する。多波長光パルス列S65は、多波長光符号部70で多波長光符号化されて、出力光S69として出力されて伝送路(データリンク)69を伝送される。多波長光符号部70は、光サーキュレータ66と光符号器68とを具えて構成され、光サーキュレータ66は、多波長光パルス列S65をFBGで構成される光符号器68に導き、かつ光符号器68からの出力光S69を伝送路(データリンク)69に伝送させる役割をする。
SC光源60は、パルス発振器54、モード同期半導体レーザ52、光増幅器56及び分散補償光ファイバ58を具えて構成されている。そして、モード同期半導体レーザ52からの出力光S55を光増幅器56で増幅して、分散補償光ファイバ58に入力することでSC光59を発生させる構成とされている。
非特許文献3に開示されている多波長光符号化装置の光源であるSC光源60から出力されるSC光59は、波長連続的に変化した無数の光が混ぜ合わされた多波長連続光であり、波長の異なる光の相互間には決まった位相関係が存在しない。この点は上述の非特許文献1及び2の光源12と共通する。
非特許文献3に開示されている多波長光符号化装置においても、出力光S69である多波長光パルス列は時間軸上で光符号器68が有する符号化情報に従って、多波長光パルス列の時間軸上での波長の配列順序が特異的に決定され多波長光符号化される。多波長光符号化された出力光S69は伝送路を伝送されて光復号器に送られ、上述の非特許文献1および2における場合と同様にして光復号化され、アドレス情報が認識される。すなわち、出力光S69の時間軸上で光パルス列の形状が光復号器において多波長光復号化されて、多波長光符号化される前のパルス列の形状となり、送信されたアドレス情報が認識される。
"Experimental Study On Time-Spread/Wavelength-Hop Optical Code Division Multiplexing With Dispersion Compensating En/Decoder," H. Tamai et al., Proceedings of the 8th optoelectronics and communication conference (OECC'2003) vol. II, pp. 425-726, 2003.
" Experimental Study On Time-Spread/Wavelength-Hop Optical Code Division Multiplexing With Group Delay Compensating En/Decoder," H. Tamai et al., IEEE Photon. Technol. Lett. vol. 16, No. 1,pp. 335-337, January 2004.
"Multi-hop, 40Gbit/s Variable Length Photonic Packet Routing Based On Multi-Wavelength Label Switching, Waveband Routing, And Label Swapping," N. Wada et al., Optical Fiber Communication Conference (OFC) Tech. Dig., WG3, pp. 216-217, 2002.
以下、図を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、各図は、この発明に係る一構成例を図示するものであり、この発明が理解できる程度に各構成要素の配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、特定の機器及び条件等を用いることがあるが、これら材料及び条件は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。また、各図において同様の構成要素については、同一の番号を付して示し、その重複する説明を省略することもある。
以下に示す図において、光ファイバ等の光信号の経路を太線で示し、電気信号の経路を細線で示してある。
<実施の形態>
図4を参照して、この発明実施の形態である、時間分割波長ホップ光符号による通信装置の構成及び時間分割波長ホップ光符号による通信方法を説明する。
この発明の時間分割波長ホップ光符号による通信装置は、始点となるネットワークノード110と隣接のネットワークノード140とを具えて構成される。始点となるネットワークノード110は、モード同期半導体レーザ116と光符号部120とを具えている。光符号部120は、上述の多波長光符号部20あるいは70と同様の構造である。すなわち、光符号部120は、光サーキュレータ122と光符号器124を具えて構成される。光サーキュレータ122は、光パルス列S119をFBGで構成される光符号器124に導き、かつ光符号器124からの出力光を伝送路(データリンク)126に伝送させる役割をする。
モード同期半導体レーザ116には、パルス発振器118から電気パルス信号が供給されることにより能動モード同期が実現されている。このためモード同期半導体レーザ116から出力される出力光は、パルス発振器118から供給される電気パルスに同期した光パルス列である。
モード同期半導体レーザ116には、光ファイバレーザや半導体レーザが利用できるが、コンパクトであるという利点から半導体レーザを利用するのが好適である。以後、能動モード同期状態で発振する半導体レーザをモード同期半導体レーザというものとする。またこの実施の形態においては、光源としてモード同期半導体レーザを利用するものとして説明する。なお、モード同期半導体レーザの構造及びその動作原理については、その詳細を後述する。
隣接のネットワークノード140は、光復号部130とアドレス情報認識装置142を具えて構成される。光復号部130は、上述の多波長光復号部30と同様の構造である。すなわち、光復号部130は、光サーキュレータ132及び光復号器134を具えて構成される。光符号器124によって光符号化されて出力された出力光(アドレス信号)S126は、光復号部130において、光サーキュレータ132を介して光復号器134に送られ、光復号化されて再び光サーキュレータ132を介して出力光S136として出力される。
隣接のネットワークノード140では、光復号部130で光復号化されて、始点となるネットワークノード110において光符号化される前の光パルス列と同一形状の光パルス列が再生されて、アドレス情報認識装置142に送られる。アドレス情報認識装置142において、時間領域での整合フィルタリングによって自己相関関数が求められ、自己相関関数に顕著なピークが存在するか否かが判定されることに相当する動作が行なわれて、アドレス情報が認識される。
図5を参照して、モード同期半導体レーザ116から出力される光パルス列S119の、周波数軸上における形状を説明する。横軸は周波数をHzのスケールで目盛ってあり、縦軸方向は光強度を任意スケールで示してある。煩雑を避けるために縦軸は省略してある。また、一般に半導体レーザから出力される出力光の周波数軸上における形状は、図5に示したように多数の縦モードスペクトルから成っている。モード同期半導体レーザ116から出力される光パルス列S119も、図5に示すように周波数f0(Hz)に最大強度の縦モードスペクトル成分が存在し、この両側にサイドバンドと呼ばれる複数の縦モードスペクトル成分が存在する。サイドバンドを構成する複数の縦モードスペクトル成分も含めて、これら隣接して存在する縦モードスペクトル成分の周波数差は、光パルス列S119の時間軸上での繰り返し周波数B(Hz)に等しい。
周波数軸上で周波数f0(Hz)の最大強度の縦モードスペクトル成分の高周波数側に隣接して存在する縦モードスペクトル成分を1次のサイドバンド、更にその隣に存在する縦モードスペクトル成分を2次のサイドバンドと称する。すなわち、周波数f0(Hz)の最大強度の縦モードスペクトル成分から高周波数側に向かってB(Hz)の周波数間隔で1次、2次、3次と複数の縦モードスペクトル成分が存在する。一方、周波数f0(Hz)の最大強度の縦モードスペクトル成分から低周波数側に向かっても、同様にB(Hz)の周波数間隔で、周波数f0(Hz)の縦モードスペクトル成分を中心として対称に-1次、-2次、-3次と複数の縦モードスペクトル成分(サイドバンド)が存在する。従って、k次(kは整数)のサイドバンドの周波数は、(f0+kB)(Hz)である。上述のf0(Hz)やB(Hz)の値は、モード同期半導体レーザ116の構造及びパルス発振器118から供給される電気パルスによって決定する。
一般に、半導体レーザから出力される出力光の縦モードスペクトルを構成する一つ一つの縦モードスペクトル成分は、互いに独立に発振しており、互いの間に決まった位相関係があるわけではない。この場合の半導体レーザから出力される出力光は、多くの縦モードスペクトル成分の合成信号としての、時間軸上では連続した、いわゆる連続発振光である。そこで、何らかの手段を用いてこれらの縦モードスペクトル成分の互いの間に一定の位相関係を導入したとすると、半導体レーザから出力される出力光は、連続発振光ではなく、時間軸上で繰り返し周期がB(Hz)である光パルス列となる。このような状態の半導体レーザをモード同期状態にあるといい、このような状態を実現することをモード同期という。
以上説明したように、モード同期半導体レーザ116から出力される出力光S119の縦モードスペクトル形状は、図5に示すような形状であり、この縦モードスペクトルを構成する一つ一つの縦モードスペクトル成分の互いの間には一定の位相関係が存在する。すなわち、この出力光S119の時間軸上での形状は、繰り返し周期がB(Hz)である光パルス列となる。
図6(P)、(Q)及び(R)を参照して、この発明の時間分割波長ホップ光符号化及び光復号化装置の動作原理を説明する。図6(P)、(Q)及び(R)の上段の3つの図は、それぞれ図4に示すこの発明の時間分割波長ホップ光符号化装置及び光復号化装置において、P、Q及びRと示してある位置において観測される光パルス信号の周波数軸上の形状を示している。また、図6(P)、(Q)及び(R)の下段の3つの図は、同じくP、Q及びRと示してある位置において観測される光パルス信号の時間軸上の形状を示している。
図6(P)、(Q)及び(R)の上段の3つの図の横軸は周波数をHzのスケールで目盛ってあり、縦軸方向は光強度を任意スケールで示してある。煩雑を避けるために縦軸は省略してある。また、図6(P)、(Q)及び(R)の下段の3つの図の横軸は、時間を任意のスケールで目盛ってあり、縦軸方向は光強度を任意スケールで示してある。煩雑を避けるために、これらの図においても縦軸は省略してある。
図6(P)、(Q)及び(R)の上段の3つの図においては、煩雑を避けるために、周波数f0(Hz)に存在する最大強度の縦モードスペクトル成分と、1次及び-1次のサイドバンドスペクトルだけを描いてある。1次及び-1次より高次の縦モードスペクトル成分を省略してあるが、以下の説明では、1次及び-1次のサイドバンドスペクトルに対する説明において、特に限定しない限り、この省略されたこれら高次の縦モードスペクトル成分も含めて説明しているものとして理解されたい。
図4に示すモード同期半導体レーザ116から出力される出力光S119は、図4においてPで示した位置において観測すれば、周波数軸に対する縦モードスペクトルは、図6(P)の上段に示された形状であり、時間軸に対する形状は、図6(P)の下段に示された形状である。出力光S119は、モード同期された半導体レーザからの出力光であるので、周波数f0(Hz)の最大強度の縦モードスペクトル成分の両側に存在する1次及び-1次のサイドバンドスペクトルの間には、一定の位相関係が存在する。
周波数f0(Hz)は、後述するように半導体レーザの利得が最大となる周波数に一番近い縦モードスペクトル成分であり、その強度は縦モードスペクトル成分の中で最大となる。図6(P)の上段において、1次及び-1次のサイドバンドスペクトルの間には、一定の位相関係が存在することを意味するために、1次及び-1次のサイドバンドスペクトルのそれぞれに0の符号を付してある。
一方、図6(P)の下段に示す時間に対するモード同期半導体レーザ116から出力される出力光S119の形状は、上述したように繰り返し周波数がB(Hz)の光パルス列であるから、これら光パルス間の時間間隔は1/B(sec)となる。
次に、モード同期半導体レーザ116から出力される出力光S119が光符号部120に入力され光符号化されて光符号部120から出力される出力光(アドレス信号)S126を、図4においてQで示した位置において観測すれば、図6(Q)に示す形状の信号が得られる。すなわち、周波数軸に対する縦モードスペクトルは、図6(Q)の上段に示された形状であり、時間軸に対する形状は、図6(Q)の下段に示された形状である。
モード同期半導体レーザ116から出力される出力光S119が光符号部120で光符号化されることによって、周波数f0(Hz)の縦モードスペクトル成分の両側に存在する1次及び-1次のサイドバンドスペクトルの間に存在した一定の位相関係は変更される。つまり、1次のサイドバンドにはφ1(ラジアン:radian)、-1次のサイドバンドにはφ-1(radian)の位相変化が加えられる。そこで、この事実を表現するために、図6(Q)の上段においては、1次及び-1次のサイドバンドスペクトル成分のそれぞれにφ1及びφ-1の符号を付してある。±2次以上のサイドバンドに対しても加えられる位相変化量が異なるだけで、以下の説明はそのまま成り立つ。
図7(A)、(B)及び(C)を参照して、時間分割波長ホップ光符号化の動作原理を説明する。図7(A)は、モード同期半導体レーザ116から出力される出力光S119の周波数軸に対する縦モードスペクトル(上段の図)及び時間軸に対する形状(下段の図)を示している。図7(B)は、上記出力光S119が光符号部120で時間分割波長ホップ光符号化され出力される出力光(アドレス信号)S126の周波数軸に対する縦モードスペクトル(上段の図)及び時間軸に対する形状(下段の図)を示している。また、図7(C)は、光符号部120を構成する光符号器124の概略的模式図であり、上記出力光S119が光符号部120で時間分割波長ホップ光符号化される原理の説明に供するための図である。
光符号器124は光ファイバの実効屈折率を周期的に変調することでブラッグ反射構造が形成されているFBGが利用されている。光符号器124に利用されるFBGは、図7(C)に示すように、実効屈折率の変調周期がΛ0、Λ1及びΛ-1であるグレーティング(回折格子)が、それぞれ光ファイバの別々の箇所に設けられている。実効屈折率の変調周期Λ0、Λ1及びΛ-1は、それぞれ、周波数がf0(Hz)、f1(Hz)及びf-1(Hz)の光を反射する条件に設定されている。すなわち、fi=c/2nΛi(ここで、i=0, 1, -1)となるように設定されている。ここで、nはFBGの実効屈折率、及びcは光速度(3×108 m/s)である。
また、図7(C)に示すように、実効屈折率の変調周期がΛ0であるグレーティングと実効屈折率の変調周期がΛ1であるグレーティングとはL1の間隔を隔てて配置されており、実効屈折率の変調周期がΛ0であるグレーティングと実効屈折率の変調周期がΛ-1であるグレーティングとはL-1の間隔を隔てて配置されている。この間隔L1及びL-1をどのように設定するかによって、周波数f0(Hz)の縦モードスペクトル成分の両側に存在する1次及び-1次のサイドバンドスペクトルそれぞれに加えられる位相変化φ1(radian)、及びφ-1(radian)の位相変化量を制御できる。すなわち、間隔L1及びL-1が光符号器124に設定された光符号化情報である。
図7(A)に示す周波数軸に対する縦モードスペクトル及び時間軸に対する形状を有する光パルス列(出力光S119)を図7(C)に示すFBGに入力すると、周波数f0(Hz)、f1(Hz)及びf-1(Hz)のそれぞれの光は、実効屈折率の変調周期がΛ0、Λ1及びΛ-1であるグレーティングにおいて反射される。そのために、図7(C)に示すFBGに入力された光パルス列(出力光S119)を構成する、周波数f1及び周波数f-1の縦モードスペクトル成分は、それぞれ距離L1及びL-1を往復するのに要する時間だけ周波数f0の縦モードスペクトル成分の位相に対して遅れが付加される。このことによって、光パルス列(出力光S119)の周波数f0(Hz)の最大強度の縦モードスペクトル成分の両側に存在する1次及び-1次のサイドバンドスペクトルの間に存在した一定の位相関係が変更され、1次のサイドバンドには、φ1(radian)、-1次のサイドバンドにはφ-1(radian)の位相変化が加えられる。つまり、
φ1=(2π/c)(2nL1 f1)-2πm=(4π/c) f1 n L1-2πm、同様に
φ-1=(4π/c) f-1 n L-1-2πm
で与えられる位相変化が加えられ、光パルス列(出力光S119)が、時間分割波長ホップ光符号化される。ここで、mは整数である。
すなわち、モード同期半導体レーザ116から出力される出力光S119の周波数軸に対する縦モードスペクトル及び時間軸に対する形状は、図7(A)に示す形状から、図7(B)に示す形状に変更される。
このように、光パルス列(出力光S119)の周波数f0(Hz)の最大強度の縦モードスペクトル成分の両側に存在する1次及び-1次のサイドバンドスペクトルの間に存在した一定の位相関係が変更されるので、サイドバンドスペクトル間に一定の位相関係が存在することが前提となって、時間軸上に一定の間隔に光パルスが並ぶ光パルス列が、その形状を変えることになる。すなわち、時間軸上での光パルスが規則的に並んだ光パルス列の形状が、図7(B)に示すように複雑な形状の不規則な形状に変化する。従って、図4に示す伝送路(データリンク)126を伝播する光信号の時間軸上での形状は、図7(B)に示すように複雑な形状を有しており、規則正しい光パルス列ではない。
上述のように、光パルス列(出力光S119)が光符号器124によって、図7(A)に示すような規則正しい光パルス列から図7(B)に示すような複雑な形状の光信号に変換することが、時間分割波長ホップ光符号化である。
次に、図8(A)、(B)及び(C)を参照して、光符号器124によって、時間分割波長ホップ光符号化された伝送路(データリンク)126を伝播する光信号が光復号器134によって光復号化される原理を説明する。図8(A)は、光符号部120によって時間分割波長ホップ光符号化された伝送路(データリンク)126を伝播する光信号に対する縦モードスペクトル(上段の図)及び時間軸に対する形状(下段の図)を示している。図8(B)は、伝送路(データリンク)126を伝播する光信号が光復号部130で時間分割波長ホップ光復号化され出力される出力光(アドレス信号)S136の周波数軸に対する縦モードスペクトル(上段の図)及び時間軸に対する形状(下段の図)を示している。また、図8(C)は、光復号部130を構成する光復号器134の概略的模式図であり、上記出力光S126が光復号部130で時間分割波長ホップ光復号化される原理の説明に供するための図である。
光復号器134は、光ファイバの実効屈折率を周期的に変調することでブラッグ反射構造が形成されているFBGであり、上述の光符号器124とは同一の実効屈折率分布構造を有するFBGである。ただし、光符号器124とは光信号の入力端と出力端とが逆に設置されている。
従って、光復号器134として利用されるFBGは、図8(C)に示すように、実効屈折率の変調周期がΛ0、Λ1及びΛ-1であるグレーティングがそれぞれ、光信号の入力端から順にΛ-1、Λ1及びΛ0の順に配列されている。光符号器124として利用されるFBGは、図7(C)で示したように、この配列が、光信号の入力端から順にΛ0、Λ1及びΛ-1の順に配列されており、光復号器134として利用されるFBGとは、光信号の入力端から見てグレーティングの配列が逆になっている。
図8(A)に示す周波数軸に対する縦モードスペクトル及び時間軸に対する形状を有する伝送路(データリンク)126を伝播する光信号を図8(C)に示すFBGに入力すると、伝送路126を伝播する光信号の周波数f0(Hz)、f1(Hz)及びf-1(Hz)成分の光は、実効屈折率の変調周期がΛ0、Λ1及びΛ-1であるグレーティングにおいて反射される。そのために、図8(C)に示すFBGに入力された伝送路126を伝播する光信号を構成する周波数f1及び周波数f-1の縦モードスペクトル成分は、それぞれ距離L1及びL-1を往復するのに要する時間だけ周波数f0の縦モードスペクトル成分に対して位相が進む。
このことによって、伝送路126を伝播する光信号の周波数f0(Hz)の最大強度の縦モードスペクトル成分の両側に存在する1次及び-1次のサイドバンドスペクトルの間に存在した、1次のサイドバンドにはφ1(radian)、-1次のサイドバンドにはφ-1(radian)の位相変化がそれぞれ0(radian)となり、モード同期半導体レーザ116からの出力光S119に存在した一定の位相関係が復元される。
このように、伝送路126を伝播する光信号の周波数f0(Hz)の最大強度の縦モードスペクトル成分の両側に存在する1次及び-1次のサイドバンドスペクトルの間の位相関係が、モード同期半導体レーザ116からの出力光S119に存在した一定の位相関係に復元される。従って、時間軸上での複雑な形状の不規則な形状であった光信号が、図8(B)に示すように光パルスが規則的に並んだ光パルス列形状に復元される。
上述のように、伝送路126を伝播する光信号が光復号器134によって、図8(A)に示すような複雑な形状の光信号から図8(B)に示すような規則正しい光パルス列に復元することが、時間分割波長ホップ光復号化である。このように、時間分割波長ホップ光復号化されて出力された出力光(アドレス信号)S136を受け取ったアドレス情報認識装置142は、その受け取った出力光が、時間軸上規則正しく等間隔に並ぶ光パルスからなる光パルス列であることを認識する。このことによって、隣接のネットワークノード140において、始点となるネットワークノード110から送られてきたアドレス情報が認識される。
仮に、隣接のネットワークノード140において、光符号器124とは異なる構造のFBGで時間分割波長ホップ光符号化された光信号を受信すると、周波数f0(Hz)の縦モードスペクトル成分の両側に存在する1次及び-1次のサイドバンドスペクトルの間存在した、位相変化φ1(radian)及びφ-1(radian)が0(radian)に戻ることはないので、時間軸上規則正しく等間隔に並ぶ光パルスからなる光パルス列として復元することはできない。このことによって、光符号器124以外の光符号器で時間分割波長ホップ光符号化された光信号(アドレス信号)は隣接のネットワークノード140において認識されることはない。すなわち、光符号器124で時間分割波長ホップ光符号化されて送られてきたアドレス情報のみを正しく認識できることとなる。
光復号部130から出力される出力光S136が、光復号器134によって図8(A)に示すような複雑な形状の光信号(時間軸上の光パルス信号)から図8(B)に示すような規則正しい光パルス列(時間軸上の光パルス信号)に復元できた場合と、できなかった場合とでは、出力光S136の時間軸上の光パルスのピーク値が異なるので、アドレス情報認識装置142において、この出力光S136の時間軸上でのピーク値に対して閾値処理をすることで、始点となるネットワークノード110から送られてきたアドレス情報が認識される。
時間軸上で規則正しい光パルス列に復元できた場合には、光パルスの存在位置に光信号のエネルギーがまとまって存在する。これに対して、復元できなかった場合には、時間軸上に平均的に光信号のエネルギーが分散して存在するので、ピーク値は復元できた場合の方が当然に大きい。従って、ピーク値に対して上記閾値を超える時間軸上の光パルスのピーク値を観測することにより、始点となるネットワークノード110おいて時間分割波長ホップ光符号化されたアドレス情報であることが認識される。また、時間軸上で規則正しい光パルス列に復元できた場合、時間領域での整合フィルタリングによって求められる自己相関関数には顕著なピークが存在する。従って、自己相関関数に顕著なピークが存在するか否かを判定することによって、アドレス情報の認識が可能である。
上述したように、この発明の時間分割波長ホップ光符号による通信方法によれば、モード同期半導体レーザから出力される光パルス列が利用されて、光パケット用のアドレス情報が生成される。従って、使用する光源の周波数(波長)帯域幅を考慮する必要がない。また、従来のSC光源から得られるSC光を用いて多波長光符号化を実施する場合のように、モード同期半導体レーザから出力される光パルス列を構成する光パルスの半値幅を狭くするという工夫をする必要もない。
すなわち、この発明の時間分割波長ホップ光符号による通信方法及び通信装置によれば、サイドバンドと称される光パルス同士の干渉によって引き起こされる問題を、使用する光源の周波数帯域幅を広くしたり、あるいはSC光の周波数帯域幅を広くしたりせずに、モード同期半導体レーザから出力される光パルス列そのものを利用して、時間分割波長ホップ光符号化及び光復号化を行なうことで解決される。
<モード同期半導体レーザ>
モード同期半導体レーザの一例について、図9を参照してその構造及びその動作原理を説明する。図9に示すモード同期半導体レーザは、電界吸収型光変調領域240と利得領域200とがモノリシックに構成されており、パルス発振器214から電界吸収型光変調領域電極層222に供給される電気パルス信号によって電気的に変調することで動作する、いわゆる能動モード同期半導体レーザである。能動モード同期半導体レーザは、強制モード同期半導体レーザと呼称されることもある。
電界吸収型光変調領域電極層222にはバイアス直流電源212から供給されるバイアス電圧と、パルス発振器214から供給される電気パルス信号とが印加されている。直流電源212から供給されるバイアス電圧は、電界吸収型光変調領域240が、パルス発振器214から供給される電気パルス信号によって透明体となったり不透明体となったりして、いわゆる光シャッターとして動作する状態とするために印加される。また、利得領域電極層224には利得領域駆動用直流電源210から活性層216に注入する注入電流が供給される。
利得領域200はレーザ発振のための誘導放出が起こる領域であり、利得領域電極層224、第1クラッド層226、活性層216、第2クラッド層228及びアース電極層220から構成されている。また、電界吸収型光変調領域240は、電界吸収型光変調領域電極層222、第1クラッド層226、電界吸収層218、第2クラッド層228及びアース電極層220から構成されている。第1クラッド層226、第2クラッド層228及びアース電極層220は、利得領域200と電界吸収型光変調領域240とで共有する。
半導体レーザとして発振縦モードを決定する光共振器は、光出力端面230と電界吸収型光変調領域の端面232とで構成される。従って半導体レーザとしての共振器長Lは、電界吸収型光変調領域の端面232と光出力端面230との間隔に等しい。
能動モード同期状態を実現するには、半導体レーザの発振周波数B=c/2n'Lに等しい周波数で、電界吸収型光変調領域240によって光損失変調を行なう。ここで、n'は、活性層216及び電界吸収層218の実効屈折率である。このことによって、周波数がfk=f0+kB(kは整数)で与えられる、側帯波が生ずる。また、図9に示すモード同期半導体レーザから出力される発振光の縦モードスペクトルは、周波数fkの縦モードスペクトル成分が足し合わされたものとなる。ここで、kは縦モードスペクトル成分の次数を示すパラメータであり整数である。
縦モードスペクトル成分が存在するのは、半導体レーザの利得領域内であり、この利得領域における利得の大きさは周波数の関数である。従って、周波数f0(Hz)は、半導体レーザの利得が最大となる周波数に一番近い位置に存在する縦モードスペクトル成分の周波数であり、図5に示した最大強度の縦モードスペクトル成分の周波数に対応する。
上述の側帯波の位置は隣接する縦モードの位置に一致するから、これら側帯波と隣接モード間に結合が生ずる。厳密に言えば各縦モード相互の間隔は、活性層216及び電界吸収層218を構成する物質の屈折率の波長分散などの影響により厳密にはc/2n'Lに等しくなく多少ずれている。それで側帯波の位置は隣接縦モードの位置に完全には重ならず、ごく近傍に位置する。しかし、この側帯波は隣接縦モードに対する注入信号として作用し、隣接縦モードの発振周波数をf0+kBに引き込む働きをする。このようなことが全ての縦モードについて生ずる結果、全ての縦モードが互いに結合し一定の位相関係と同一のモード間隔c/2n'Lを保って発振する状態、すなわちモード同期状態が実現する。
また、上述したことから明らかなように、モード同期半導体レーザからの発振光(光パルス列)は、電界吸収型光変調領域240において、パルス発振器214から供給される電気パルス信号(電気パルス列)と同期している。従って、始点となるネットワークノードの光符号部と、アドレス情報を受け取ったネットワークノードの光復号部との間で、電界吸収型光変調領域240に供給される電気パルス信号に同期した電気信号を共通のベースレートクロックとして利用することができ、これによってアドレス情報の光符号化と光復号化が行なえる利点がある。