JP5081930B2 - 心不全の評価におけるslim−1の使用 - Google Patents

心不全の評価におけるslim−1の使用

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Description

発明の分野
本発明は、a)個体から得られた試料中のマーカーSLIM-1の濃度を測定する工程、b)任意に、試料中の心不全の1種類以上の他のマーカーの濃度を測定する工程、ならびに工程(a)で測定された濃度および任意に工程(b)で測定された濃度(1つまたは複数)を、対照試料において確立されたこのマーカーまたはこれらのマーカーの濃度と比較することにより心不全を評価する工程を含む、個体において心不全を評価するための方法に関する。また、心不全の評価におけるマーカータンパク質としてのSLIM-1の使用、SLIM-1を含むマーカー組合せ、およびSLIM-1を測定するためのキットが開示される。
発明の背景
心不全(HF)は、増加している主な公衆衛生問題である。米国では、例えば、およそ500万人の患者がHFを有し、毎年、新たに55万人を超える患者がHFと診断されている(In:American Heart Association、Heart Disease and Stroke Statistics:2005年最新情報、Dallas、Texas、American Heart Association (2005))。同様に、米国の統計により、HFは、1200万〜1500万件の来診の主な理由であり、毎年、650万人が在院していると示されている。1990年から1999年までで、年間の入院数は、一次診断としてのHFでは、およそ81万人から100万人を超えるまで増加し、一次または二次診断としてのHFでは240万人から360万人に増加している。2001年では、ほぼ5万3000人の患者が、主な原因としてHFで死亡している。心不全は、主に高齢者の病気であり、したがって、広く認識される「集団の加齢」もまた、HFの発病の増加に寄与する。HFの発病は、65歳を超える集団では1000人あたり10人に近い。米国単独では、2005年のHFの直接および間接コストの推定総額は、およそ279億ドルであり、年間およそ29億ドルがHFの治療薬に費やされている(上記のAHA統計参照)。
心不全
心不全は、身体が必要とするだけ多くの血液をポンプ輸送する心臓の能力の低下を特徴とする。不全は、心臓がポンプ輸送を停止したことを意味するのではなく、心臓が本来ほど有効に血液をポンプ輸送することができなくなりつつあることを意味する。
NYHA[New York Heart Association(ニューヨーク心臓協会)]およびACC/AHA[American Association of Cardiology/American Heart Association(米国心臓学会/米国心臓協会)]の両方により、HFの疾患の進行を測定するための機能的クラスが確立された。NYHA分類スキームは、4つのクラスの疾患状態を有する。クラス1は、任意の労作レベルで無症候性である。クラス2は、重度の労作で症候性であり、クラスIIIおよびIVは、それぞれ、軽度の労作および労作なしで症候性である。
4つの病期のACC/AHAスキームにおいて、病期Aは、無症候性だがHF発症のリスクがある。病期Bは、症状はないが心臓機能不全の徴候がある。病期Cでは、症状を伴う心臓機能不全の徴候がある。病期Dでは、被験体は、最大限の治療にもかかわらずHFの症状を有する。
HFの病因
医学的には、心不全(HF)は、複合疾患と理解されるべきである。これは、心筋梗塞(心臓発作)などの誘発事象の発生によって引き起こされ得るか、または高血圧、糖尿病もしくは弁の疾患などの心臓の先天異常などの他の原因に続発性であり得る。心筋梗塞またはHFの他の原因により、例えば、心臓の筋肉の損傷により、最初に心臓のポンプ輸送能力の低下がもたらされる。ポンプ輸送能力におけるこの低下は、1つ以上の代償機構の活性化のため、すぐには気付かれ得ない。しかしながら、HFの進行は、患者の血行力学的状態とは独立していることがわかった。したがって、患者が無症候性のままであっても、該疾患によって引き起こされる損傷性の変化が存在し進行している。実際、HF初期の間で正常な心血管機能を維持する代償機構は、実際には、例えば、心臓および循環系中で血流の充分なレベルを維持する心臓の能力に対して有害な影響を及ぼすことにより、長期的には該疾患の進行に寄与し得る。
HFにおいて生じるより重要な病態生理学的変化のいくつかは、(i)視床下部-下垂体-副腎軸の活性化、(ii)全身性の内皮性機能不全および(iii)心筋リモデリングである。
(i)特に視床下部-下垂体-副腎軸の活性化の反対作用に特異的に指向される治療剤としては、β-アドレナリン作動性遮断剤(B-遮断薬)、アンギオテンシン変換酵素(ACE)インヒビター、ある種のカルシウムチャネル遮断薬、硝酸塩およびエンドセリン-1遮断剤が挙げられる。カルシウムチャネル遮断薬および硝酸塩は、臨床的改善をもたらすが生存を延長することは明白に示されておらず、一方、B-遮断薬およびACEインヒビターは、アルドステロン拮抗薬で示されたように有意に寿命を延長することが示されている。エンドセリン-1遮断剤を用いた実験的試験により、有益な効果が示された。
(ii)全身性の内皮性機能不全は、充分に認識されたHFの特徴であり、左心室機能不全の徴候が存在する時点までに明白に存在する。内皮性機能不全は、心筋微小循環と心筋細胞との直接的な関係に関して重要である。その証拠は、微小血管機能不全が、進行性の心筋不全をもたらす筋細胞機能不全および形態学的変化に有意に寄与することを示す。
基礎となる病態生理学に関して、証拠により、NADH依存性オキシダーゼによる血管のO2形成の増加および続くNOの過剰な除去に起因し得るNOの相対的欠如によって内皮性機能不全が引き起こされ得ることが示されている。O2生成の増加の潜在的な寄与因子としては、交感神経の状態(sympathetic tone)の増強、ノルエピネフリン、アンギオテンシンII、エンドセリン-1およびTNF-αが挙げられる。また、重要な抗炎症性サイトカインであるIL-10のレベルは、TNF-αレベルに対して不適切に低い。現在、TNF-αのレベルの上昇は、関連するIL-6などのプロ炎症性サイトカインおよび可溶性TNF-αレセプターとともに、心筋収縮性の減少、両心室性拡張および低血圧を引き起こすことにより、HFの進展に有意な役割を果たし、おそらく内皮の活性化および機能不全に関与していると考えられている。また、TNF-αは、重症なHF患者に起こるこれまで説明がつかなかった筋肉の消耗に、ある役割を果たし得ると考えられている。可溶性TNF-レセプター療法での少数の患者における予備試験により、NYHA機能的分類および生活の質指数で測定される患者の満足のいく状態における改善が示された。
(iii)心筋リモデリングは、無症候性から症候性の心不全への移行を伴う複雑な過程であり、心室の形状、質量および容積の改変などの心筋層内の一連の順応性変化として示され得る(Piano,M.R.,et al.,J. Cardiovasc. Nurs. 14 (2000)1-23, quiz 119-120;Molkentin,J.D.,Ann. Rev. Physiol. 63 (2001)391-426)。心筋リモデリングの主な構成要素は、筋細胞肥大などの筋細胞生物学における改変、壊死またはアポトーシスによる筋細胞の減少、細胞外マトリックスにおける改変、および左心室の室の外形における改変である。心筋リモデリングが長期神経ホルモン刺激の毒性効果への曝露の数年後に生じる単純な末端器官応答であるのかどうか、または心筋リモデリングが心不全の進行に独立して寄与するのかどうかは不明である。これまでの証拠では、適切な治療により心筋リモデリングの進行が遅延または停止し得ることが示されている。
マーカーおよび疾患状態
上記のように、筋細胞肥大は、HFへの道の第1段階の1つを示すようである。筋細胞肥大は、細胞の大きさの増加および細胞骨格の改変によって、p-ミオシン重鎖およびトロポニンT(TnT)などの収縮性タンパク質、ならびにA型およびB型ナトリウム利尿ペプチドなどのいくつかの非収縮性タンパク質をコードするいくつかの遺伝子の発現の増大を特徴とする(Piano,M.R.,et al.,J. Cardiovasc. Nurs. 14 (2000)1-23, quiz 119-120;Molkentin,J.D.,Ann. Rev. Physiol. 63 (2001)391-426)。
心不全のヒトおよび動物モデルの試験により、心不全の後期病期において筋細胞機能の低下が示されている。筋細胞機能不全の基礎となる機構は、カルシウム操作性ネットワーク、筋フィラメントおよび細胞骨格における改変を伴うことが示された(de Tombe,P.P.,Cardiovasc. Res. 37 (1998)367-380)。例えば、心不全のヒトおよび動物モデルでは、筋小胞体カルシウム-ATPase酵素活性が低下するが、筋細胞膜Na+/Ca2+交換体のmRNAレベルおよびタンパク質レベルはともに増加する。さらに、心不全のヒトおよび動物モデルの両方において、TnTのアイソフォーム-スイッチング、トロポニンI(TnI)のリン酸化の低減、筋原線維のアクトミオシンATPase活性の減少、および微小管形成の増強がある。
初期では、心筋リモデリングをもたらす心臓の変化は、身体の酸素および栄養分の要求を維持するために、心筋層の疾患部分を代償することを意味する。しかしながら、心不全の代償期は限られており、最終的に、不全性の心臓は、身体の必要を満たすのに充分な心拍出量を維持することができなくなる。したがって、代償期から代償不全期へと移行する。代償不全期では、心臓の変化のカスケードが継続するが、もはや有益ではなく、患者は心不全へと進行し、慢性状態となり、最終的に死亡する。
「ACC/AHA 2005 Guideline Update for the Diagnosis and Management of Chronic Heart Failure in the Adult」(S. Hunt et al.,www.acc.org = ACC/AHA実務ガイドライン)によれば、現在、心不全の領域の疾患連続状態は、上記の4つの病期に分類される。病期AおよびBでは、心不全を発症するリスクのある個体が見られるが、病期CおよびDは、心不全の徴候および症状を示す患者群を表す。上記文献に示した異なる病期A〜Dを定義する詳細は、参照により本明細書に包含される。
心不全の診断方法
HFを有する患者の評価において単独で最も有用な診断試験は、心筋層、心臓弁または心膜の異常が存在するかどうか、どの房室が関与しているかを調べるためのドップラー血流試験とカップリングさせた包括的2次元心エコー図である。3つの基本的な問題:1)LVEFは保持されているか低下しているか、2)LVの構造は正常であるか異常であるか、および3)弁、心膜または右心室異常などの臨床的提示を説明し得る他の構造的異常があるかに取り組まなければならない。この情報は、EFの推定値、心室の寸法および/または容積の測定、壁厚の測定、ならびに房室外形および局所の壁運動の評価で定量されるべきである。右心室の大きさおよび収縮期の動作が評価されるべきである。また、心房の大きさが半定量的に測定されるべきであり、左心房の寸法および/または容積も測定されるべきである。
心エコー検査時に得られた非侵襲的血行力学的データは、保持または低下したEFを有する患者の重要なさらなる相関因子である。僧帽弁流入パターン、肺静脈流入パターン、および僧帽環状速度の定量を組み合わせると、LV充填および左心房圧の特徴に関するデータが提供される。下大静脈の寸法および呼吸中のその応答の測定と合わせた三尖弁の逆流勾配の評価により、収縮期肺動脈圧および中心静脈圧の推定値が提供される。
一回拍出量は、寸法測定およびLV流出路におけるパルスドップラーを組み合わせて測定され得る。しかしながら、HFの非存在下ではこれらのパラメータのいずれかに異常が存在し得る。必ずしもこれらの1つがHFと特異的に相関するとは限らない。しかしながら、完全に正常な充填パターンは臨床的HFでないといえる。
臨床的観点から、該疾患は、代償期および初期代償不全期では臨床的に無症候性である(病期Aおよび構造的心臓疾患では完全に無症候性であるが、病期BのHFでは徴候および症状はない、ACC/AHA実務ガイドライン参照)。該疾患の外見的徴候(息切れなど)は代償不全期(すなわち、ACC/AHA ガイドラインによる病期CおよびD)まで充分に現れない。現在の診断は、病期CおよびDの患者の外見的症状に基づいている。
典型的に、心不全を有する患者は、心不全に関与する特定の機構と相互作用する薬物を用いる標準的な治療を受ける。該特定の機構を確実に反映し、医師が正しい患者に正しい薬物(および用量)(例えば、ACEインヒビター、AT II、β-遮断薬など)を選択するのを補助する診断試験はない。
マーカーによるHFの事前診断
心不全のリスクがある患者の早期評価は、この病期では、心不全を発症するリスクのある個体はまだ臨床的HF症状がないため、生化学的マーカーのみによって可能なようである。該疾患の症状が出る前の確実な評価に現在利用可能な確立された生化学的マーカーはない。現在、HFの診断が確立される時点までに、該疾患はすでに進行している。
ナトリウム利尿ペプチドファミリー、特に、心房ナトリウム利尿ペプチドファミリーおよび脳ナトリウム利尿ペプチドファミリーは、近年、HFの評価に重要な価値があることが証明された。
HFの予後および必要性
少なくとも一部は診断の遅れにより、HFの患者の50%は診断の2年以内に死亡する。5年生存率は30%未満である。心不全の早期診断を補助する新たな生化学的マーカーの有意な必要性がある。
心不全のリスクのある個体、すなわち、心不全について臨床的に無症候性の個体の早期評価における改善は当然である。
近年、B型ナトリウム利尿ペプチドマーカーが、HFの患者における疾患進行をモニターするため、および心臓発作などの心血管合併症のリスクを評価するための優れたツールを表すことが確立された。
しかしながら、多くの他の診断領域に関して、単独マーカーは充分ではない。
NT-proBNPの低い値は、HFまたはLVDを排除するための非常に高い負の予測値を有するが、上記および他の研究(Triepels R.H.,et al.,Clin. Chem. 49,Suppl. A (2003)37-38参照)において心不全の正の予測値は、50〜60%の範囲であることがわかった。したがって、それ自体で例えば高いHFの正の予測値を有するか、またはNT-proBNPとの組合せでNT-proBNP単独と比べて改善されたHFの正の予測値を有する心不全のリスクのある個体の評価に有用なマーカーは、臨床的/実用的に非常に重要である。
心不全を有する患者の評価を補助するマーカーもまた、この臨床的に非常に重要で要求の厳しい診断領域において、さらなる技術的進歩を得るために非常に重要である。
発明の概要
マーカーSLIM-1により心不全の評価が補助され得ることが見出され、確立された。一態様において、個体が心不全を発症するリスクがあるかどうかの評価が補助され得る。さらなる局面において、疾患進行の評価が補助され得る。別の態様において、心不全の発症の予測が補助され得る。別の態様において、心不全を予防または治療するための適切な治療計画の評価および選択が補助され得る。
本明細書において、個体から得られた試料中のマーカーSLIM-1の濃度を測定する工程、任意に、試料中の心不全の1種類以上の他のマーカーの濃度を測定する工程、ならびにSLIM-1の濃度および任意に1種類以上の他のマーカーの濃度を対照試料において確立されたこのマーカーまたはこれらのマーカーの濃度と比較することにより心不全を評価する工程を含む、個体において心不全を評価するための方法が開示される。
また、本発明は、心不全の評価におけるマーカー分子としてのタンパク質SLIM-1の使用に関する。
さらに、心不全の評価におけるSLIM-1および心不全の1種類以上の他のマーカーを含むマーカー組合せの使用が開示される。
また、試料中のマーカーSLIM-1の濃度を測定する工程、任意に、試料中の心不全の1種類以上の他のマーカーの濃度を測定する工程、ならびにSLIM-1の濃度および任意に1種類以上の他のマーカーの濃度を、参照集団において確立されたこのマーカーまたはこれらのマーカーの濃度と比較することにより心不全を評価する工程を含む、心不全をインビトロで評価するための方法を行なうためのキットであって、SLIM-1および任意に心不全の1種類以上の他のマーカーを特異的に測定するために必要とされる試薬を含むキットが提供される。
本発明のさらなる局面および利点は、以下の説明を考慮すると自明となろう。しかしながら、詳細な説明および具体例は、本発明の好ましい態様を示すが、本発明の精神および範囲内の種々の変更および修正は当業者にはこの詳細な説明から自明となるため、単なる例示として示していることを理解されたい。
図1は、野生型およびR9Cマウスの表現型解析である。(A)野生型マウス(n=79)およびR9Cマウス(n=44)の生存曲線は、24週間後に作成される。(B)超音波心臓検査によって評価される心臓短縮(=短縮割合(fractional shortening))。R9Cトランスジェニック動物の有意な機能障害が8週齢ほどで早く始まる。 図2は、野生型マウスおよびABマウスにおける超音波心臓検査および血行力学パラメータである。(A)手術後2週、4週、8週での最大血圧mmHgの変化。(B)手術後2週、4週、8週での左心室駆出率(LVEF)%の変化。(黒丸は偽手術マウスのデータを示し、白丸は大動脈バンディング(AB)を有するマウスのデータを示す 図3は、それぞれR9Cマウスおよび対照マウスの心臓組織で得られたウエスタンブロッティングデータである。SLIM-1の強力な過剰発現が、心不全に罹患する実験(R9C)動物由来の組織試料対健常マウス(=+/+)由来の組織試料で観察される。染色バンドの下の数字は記録された質量スペクトルの数によって決定された相対発現レベルを示す。 図4は、それぞれ10個のHFおよび対照試料中で測定されたSLIM-1である。SLIM-1アッセイの光学密度(OD)は、心不全(HF=ひし形)を有する患者由来の標識された試料および健常対照(正常ヒト血清=NHS=正方形)由来の試料それぞれを示す。 図5はそれぞれ10個のHFおよび対照試料中で測定されたSLIM-1である。ODは、心不全を有する患者由来の試料(HF)と表示したおよび健常対照(正常ヒト血清=NHS)由来の試料それぞれで測定されたSLIM-1について示す。ボックスおよびウイスカーブロットは、下および上四分(ボックス)ならびに最大および最低値(ウイスカー)を示す。
発明の詳細な説明
第1の態様において、本発明は、a)個体から得られた試料中のマーカーSLIM-1の濃度を測定する工程、b)任意に、試料中の心不全の1種類以上の他のマーカーの濃度を測定する工程、ならびにc)工程(a)で測定された濃度および任意に工程(b)で測定された濃度(1つまたは複数)を、対照試料において確立されたこのマーカーまたはこれらのマーカーの濃度と比較することにより心不全を評価する工程を含む、個体において心不全を評価するための方法に関する。
本明細書で使用する場合、以下の用語のそれぞれは、このセクションにおけるものと関連する意味を有する。
冠詞「a」および「an」は、本明細書で使用する場合、1つまたは1つより多い(即ち少なくとも1つの)冠詞の文法上の目的語のことをいう。一例として、「an antibody(抗体)」は、1つの抗体または1つより多い抗体を意味する。
「1(種類)以上」という表現は、1〜50、好ましくは1〜20、また好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、12または15を表す。
用語「マーカー」または「生化学的マーカー」は、本明細書で使用する場合、患者試験試料の分析用の標的として使用される分子のことをいう。一態様において、かかる分子標的の例はタンパク質またはポリペプチドである。本発明においてマーカーとして使用されるタンパク質またはポリペプチドは、前記タンパク質の天然に存在する断片、特に、免疫学的に検出可能な断片を含むことを意図する。免疫学的に検出可能な断片は、好ましくは、前記マーカーポリペプチドの少なくとも6、7、8、10、12、15または20個の連続するアミノ酸を含む。
当業者は、細胞によって放出されるタンパク質、または細胞外マトリックス中に存在するタンパク質が、例えば炎症の際に損傷を受け得、かかる断片に分解または切断され得ることを理解し得る。ある種のマーカーは不活性の形態で合成され、その後タンパク質分解により活性化され得る。また、当業者が理解し得るように、タンパク質またはその断片は複合体の一部として存在し得る。かかる複合体はまた、本発明の意味におけるマーカーとして使用され得る。また、あるいは代替的に、マーカーポリペプチドは、翻訳後修飾を有し得る。翻訳後修飾の例は、とりわけ、グリコシル化、アシル化および/またはリン酸化である。
用語「心不全を評価する」は、本発明による方法により、医師が、個体に心不全を発症するリスクがあるかどうかを評価することが補助されること、または、医師が、HFに診断上関連する1つまたはいくつかの他の領域においてHF患者を評価することが補助されることを示すために使用される。HFを有する個体の評価に診断上関連する好ましい領域は、心不全の病期分類、急性および慢性心不全の鑑別診断、疾患進行のリスクの判断、適切な薬物の選択の手引き、治療への応答のモニタリング、ならびにHF患者の追跡である。
本発明の意味における「心不全のマーカー」は、マーカーSLIM-1と組み合わせた場合、HFの評価において調査中の診断上の疑問に関連情報を付加するマーカーである。既にマーカーSLIM-1を含むマーカー組合せに前記マーカーを含めることにより、HFの評価について、それぞれ所定の特異性での感度または所定の感度での特異性が改善され得る場合、その情報は関連する、または付加的に重要であるとみなされる。好ましくは、それぞれ感度または特異性における改善は、p=0.05、0.02、0.01またはそれより小さい有意性のレベルで統計学的に有意である。好ましくは、心不全の1種類以上の他のマーカーは、ナトリウム利尿ペプチドマーカー、心臓トロポニンマーカー、および炎症マーカーからなる群より選択される。
用語「試料」は、本明細書で使用されるように、インビトロ評価の目的のために得られる生物試料をいう。本発明の方法において、試料または患者試料は、好ましくは任意の体液を含み得る。好ましい試験試料としては、血液、血清、血漿、尿、唾液および滑液が挙げられる。好ましい試料は全血、血清、血漿または滑液であり、血漿または血清が最も簡便な型の試料である。当業者が理解し得るように、任意のかかる診断はインビトロでなされる。患者試料は使用後廃棄される。患者試料は本発明のインビトロ法のためだけに使用され、患者試料の物質は患者の体内に戻されない。典型的に、該試料は液体試料、例えば、全血、血清、または血漿である。
表現「〜の濃度を対照試料において確立された濃度と比較する」は、単に、とにかく当業者に自明なことをさらに示すために使用される。対照試料は、内部対照試料または外部対照試料であり得る。一態様において、内部対照試料が使用される、すなわち、前記マーカー(1種または複数種)のレベルになんらかの変化があるかどうかを調べるため、マーカーレベル(1つまたは複数)が試験試料中および同じ被験体から採取した1種類以上の他の試料中で評価される。別の態様において、外部対照試料が使用される。外部対照試料では、個体由来の試料中のマーカーの存在または量が、所定の状態に苦しんでいることが知られた、もしくはそのリスクがあることが知られた個体;または所定の状態がないことが知られた個体、すなわち、「正常個体」におけるその存在または量と比較される。例えば、患者試料中のマーカーレベルは、HFの特定の疾患過程と関連していることが知られたレベルと比較され得る。通常、試料のマーカーレベルは、診断と直接または間接的に相関し、マーカーレベルは、例えば、個体にHFのリスクがあるかどうかを決定するために使用される。あるいは、試料のマーカーレベルは、例えば、疾患進行のリスクの判断またはHF患者の追跡において、HF患者における治療に対する応答、急性および慢性心不全の鑑別診断、HFを治療するための適切な薬物の選択の手引きと関連することが知られたマーカーレベルと比較され得る。意図される診断的使用に応じて、適切な対照試料が選択され、それにおいてマーカーの対照値または参照値が確立される。当業者には、かかる対照試料は、一態様において、年齢が適合し、見分けられない疾患のない参照集団から得られることが認識されよう。また、当業者には明白なように、対照試料において確立された絶対マーカー値は、使用するアッセイに依存する。好ましくは、適切な参照集団の100個の充分に特徴付けされた個体由来の試料を用いて対照(参照)値を確立する。また、好ましい参照集団は、20、30、50、200、500または1000名の個体からなるように選択され得る。健常個体は、対照値を確立するための好ましい参照集団を表す。一態様において、対照試料は、内部対照試料である。この態様では、調査中の個体から連続試料を得、マーカーレベルを比較する。
個体由来の試料で測定されたSLIM-1の値の増加は、心不全を示す。
対照群または対照集団において測定されたSLIM-1の値を用いて、例えば、排除値または参照範囲を確立する。かかる排除値より上または参照範囲およびその上端の外側の値は、上昇したとみなされる。
一態様において、固定排除値が確立される。かかる排除値は、目的の診断上の疑問に適合するように選択される。
一態様において、対照群または対照集団において測定されたSLIM-1の値を用いて参照範囲を確立する。好ましい態様において、測定値が参照範囲の90%パーセンタイルより上である場合、SLIM-1濃度は上昇したとみなす。さらに好ましい態様において、測定値が参照範囲の95%パーセンタイル、96%パーセンタイル、97%パーセンタイルまたは97.5%パーセンタイルより上である場合、SLIM-1濃度は上昇したとみなす。
一態様において、対照試料は内部対照試料である。この態様では、調査中の個体から連続試料を得、マーカーレベルを比較する。このことは、例えば、治療の有効性評価に有用であり得る。
本発明による方法は、個体から得られた液体試料およびかかる試料中のSLIM-1の測定に基づく。「個体」は、本明細書で使用されるように、単一のヒトまたは非ヒト生物をいう。したがって、本明細書に記載の方法および組成物は、ヒトおよび獣医学的疾患の両方に適用可能である。好ましくは、個体はヒトである。
SLIMタンパク質、特にSLIM-1
SLIM-1、SLIM-2およびSLIM-3のタンパク質配列は、各々、4つの完全なLIMドメインおよび第5のLIMドメインの後半部分を含む(FHL、4.5LIMタンパク質)。SLIM-1は、36kDの分子量を有し、280個のアミノ酸(配列番号:1参照)からなる。
当初、LIMタンパク質ファミリーは、LIM配列が最初に見られた3つの同定転写因子のイニシャルで命名された:lin-11(Freyd,G.,et al.,Nature 344 (1990) 876-879)、isle(Karlsson,O.,et al.,Nature 344 (1990) 879-882)、ならびにmec-3 (Way,J.C.およびChalfie,M.,Cell 54 (1988) 5-16)。LIMタンパク質は、転写、発癌性形質転換、シグナル伝達および細胞接着などの広範な細胞機能に関与する。これは、LIMドメインがジンクフィンガー構造を含むため、タンパク質-タンパク質相互作用によって達成され得る。LIMドメインは、他のLIMドメインと会合し得、したがって、ホモ-およびヘテロ二量体を形成し得る(Feuerstein,R.,et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91 (1994) 10655-10659)。
SLIM-1/FHL-1は、インテグリン依存性細胞播種および遊走が促進される骨格筋芽細胞内の限局性癒着部に局在すると報告された(Robinson et al.,Am. J. Physiol. 284 (2003) C681)。最近、ヒト骨格筋ライブラリーの酵母ツーハイブリッドスクリーニングにより、ミオシン結合タンパク質C(MyBP-C)がFHL-1結合パートナーとして同定され、MyBP-C活性および筋節合成の調節因子としてのFHL-1の役割の仮説が立てられた(McGrath、M.J.,et al.,J. Biol. Chem. 281 (2006) 7666-7683)。FHL-1の発現パターンは、胚発生中(Chu、P.H.,et al.,Mech. Dev. 95 (200) 259-265)ならびに生後の骨格筋成長期間中の心臓におけるFHL-1の重要な役割を示唆する。
FHL-1 mRNAレベルは、ストレッチ(stretch)によって誘導される骨格筋肥大中、増大することがわかっている(Morgan,M.J.,et al.,Biochem. Biophys. Res. Commun. 212 (1995) 840-846)。FHL-1 mRNAレベルは、脱神経誘導萎縮中、低下する(Loughna,P.T.,et al.,Mol. Cell Biol. Res. Commun. 3 (2000) 136-140)。
研究では、ヒトの不全心臓において、それぞれSLIM-1 mRNAの上方調節または下方調節のいずれかが報告されており、一致していない。FHL-1 m-RNA発現は、肥大したヒト心臓において増大することが報告されている(Hwang,D.M.,et al.,Circulation 96 (1997) 4146-4203; Hwang,D.M.,et al.,Genomics 66 (2000) 1-14; Lim,D.-S.,et al.,J. Am. Coll. Cardiol. 38 (2001) 1175-1180)。対照的に、Loughna,P.T.,et al.,Mol. Cell. Biol. Res. Commun. 3 (2000) 136-140、およびZimmermann,R.,et al.,Circulation 100、Suppl. 1 (1999) 565には、FHL-1発現の減少が報告されている。Yang,J.,et al.(Circulation 102 (2000) 3046-3052)には、ヒト不全心臓由来の組織において、SLIM-1 m-RNAレベルとSLIM-1タンパク質レベルの両方が低下することが報告されている。
US 2006/0094038には、心不全に対する個体の罹病性の診断の状況における、FHL-1 (上方調節)およびFHL-2 (下方調節)を含む数多くの遺伝子の識別的遺伝子発現が記載されている。
さらに、識別的FHL-1 m-RNA発現は、皮膚、神経、造血系、および胚性幹細胞集団に関するマイクロアレイ試験において記載されており、種々の幹細胞集団および前駆細胞集団におけるFHL-1のより広範な役割が示唆されている(Ramalho-Santos M.,et al.,Science 298 (2002) 597-600; Tumbar,T.,et al.,Science 303 (2004) 359-363)。
また、いくつかの特許出願では、FHL-1の識別的発現を解析することによる腫瘍診断を取り扱っている。US 2005/0037389には、数多くの遺伝子が子宮漿液性乳頭状癌および卵巣漿液性乳頭状腫瘍の診断に使用され得ることが開示されており、そのうちの1つがFHL-1である。US 2005/0048535では、原発性卵巣漿液性乳頭状腫瘍に関連するFHL-1を含む候補遺伝子リストを取り扱っている。US2004/0029151には、前立腺癌の遺伝子プロファイリングが記載されており、数ある識別的に発現された遺伝子の中でもSLIM-1が記載されている。WO 2006/112867は、遺伝子プロファイリングによる乳頭状腎細胞癌遺伝学の浸潤性の診断に関し、数ある識別的に発現された遺伝子の中でもSLIM-1が記載されている。
WO 2004/092410には、それぞれ、慢性関節リウマチまたは変形性関節症の状況におけるSLIM-1の識別的発現が記載されている。
多発性硬化症は、FHL-1遺伝子の発現との関連(上方調節)が報告されているまたさらなる疾患である(US 2004/0018522およびUS 2004/0156826)。
したがって、当該技術分野において、SLIM-1の遺伝子発現は、対応するmRNAレベルを解析することにより、広範に研究されているようである。これらの研究では、矛盾したデータが報告されているため、明白な状況はもたらされていない。また、循環系中の心不全に関連するSLIM-1タンパク質のレベルに関するデータは、これまでに示されていないようである。
好ましくは、マーカーSLIM-1は、特異的結合剤の使用によって液体試料から特異的に測定される。
特異的結合剤は、例えば、SLIM-1のレセプター、SLIM-1に結合するレクチンまたはSLIM-1に対する抗体である。特異的結合剤は、その対応する標的分子に少なくとも107l/molの親和性を有する。特異的結合剤は、好ましくは、その標的分子に108l/molまたはさらにより好ましくは109l/molの親和性を有する。当業者には認識されるように、特異的という用語は、試料中に存在する他の生体分子が、SLIM-1に特異的な結合剤に有意に結合しないことを示すために使用される。好ましくは、標的分子以外の生体分子への結合レベルは、それぞれ10%以下のみ、より好ましくは5%以下のみの標的分子に対する結合親和性をもたらす。好ましい特異的結合剤は、上記の親和性および特異性の最低基準の両方を満たす。
特異的結合剤は、好ましくは、SLIM-1と反応性の抗体である。用語抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、かかる抗体の抗原結合断片、単鎖抗体ならびに抗体の結合ドメインを構成する遺伝子構築物をいう。
特異的結合剤の上記基準を保持する任意の抗体断片が使用され得る。抗体は、例えば、Tijssen (Tijssen, P., Practice and theory of enzyme immunoassays, Elsevier Science Publishers B.V., Amsterdam (1990)、本書全体、特に43〜78頁)に記載のようにして当該分野の技術水準の手順によって作製される。また、当業者は、抗体の特異的単離のために使用され得る免疫吸着剤に基づく方法を充分承知している。これらの手段によって、ポリクローナル抗体の質およびしたがってイムノアッセイにおけるその性能が増強され得る(Tijssen,P.上掲、108〜115頁)。
本発明に開示したような達成のためには、ウサギで生成させたポリクローナル抗体が使用され得る。しかしながら、明らかに、異なる種、例えば、ラット、ヤギまたはモルモット由来のポリクローナル抗体、ならびにモノクローナル抗体もまた使用され得る。モノクローナル抗体は、必要とされる任意の量で一定の性質で作製され得るため、臨床的日常業務のためのアッセイの開発における理想的なツールを表す。本発明による方法におけるSLIM-1に対するモノクローナル抗体の作製および使用はそれぞれ、また他の好ましい態様を表す。
ここで、SLIM-1がHFの評価に有用なマーカーとして同定されたことが当業者に認識されるように、本発明の成果と同等の結果を得るために代替法が使用され得る。例えば、抗体を作製するための代替的なストラテジーが使用され得る。かかるストラテジーは、中でも、免疫法のためのSLIM-1の臨床的に関連するエピトープを提示する合成または組換えペプチドの使用を含む。あるいは、DNAワクチン接種としても知られるDNA免疫法が使用され得る。
測定では、個体から得られた液体試料を、結合剤SLIM-1-複合体の形成に適切な条件下で、SLIM-1に対する特異的結合剤とともにインキュベートする。かかる条件は、当業者はいかなる創意的努力をすることなく、かかる適切なインキュベーション条件を容易に特定できるため、特定する必要はない。結合剤SLIM-1-複合体の量を測定し、HFの評価に使用する。当業者には、認識されるように、特異的結合剤SLIM-1-複合体の量を測定するための数多くの方法があり、すべて、関連する教科書に詳細に記載されている(例えば、Tijssen P.上掲、またはDiamandis,E.P.およびChristopoulos,T.K.(編)、Immunoassay,Academic Press,Boston (1996)参照)。
好ましくは、SLIM-1は、サンドイッチ型アッセイ形式において検出される。かかるアッセイでは、第1の特異的結合剤が一方側でSLIM-1を捕捉するために使用され、直接または間接的に検出可能なように標識された第2の特異的結合剤が他方の側で使用される。好ましくは、SLIM-1に対する抗体が定性的(SLIM-1の有無)または定量的(SLIM-1の量が測定される)イムノアッセイにおいて使用される。
実施例のセクションで詳細に記載するように、2匹のマウスモデルを用いて、最新のプロテオミクス法によって実験動物の心臓組織に見られるポリペプチドが同定された。しかしながら、これらのモデルは、少なくとも一部矛盾するデータをもたらし、もちろん、ポリペプチドの組織データは、循環系中のこれらのポリペプチドの有無を示さない。1つのモデルにおいて識別的に発現されることがわかったマーカーは、第2のモデルでは識別的に発現されない場合があり、またさらなるモデルでは矛盾するデータさえ示す。体液から測定された場合、タンパク質が組織内で識別的に発現され得る場合であっても、ほとんどの場合のこのタンパク質は、循環系に放出され得ない、例えば、細胞または組織から放出されると断片化または修飾され得る、循環系中で安定でない場合がある、循環系中で測定可能でない場合がある、所定の疾患に特異的でない場合があるなどのため、診断上の関連性がない。
本発明の発明者らは、驚くべきことに、体液試料においてタンパク質SLIM-1を検出することができる。さらにより驚くべきことに、本発明者らは、個体から得られたかかる液体試料中のSLIM-1の存在が、HFと相関し得ることを示すことができる。HFの評価においてマーカーSLIM-1を利用するために、組織も生検試料も必要とされない。タンパク質SLIM-1のレベルの測定は、HFの分野において非常に有利であると考えられる。
好ましい態様において、本発明による方法は、液体試料材料として血清を用いて実施される。さらに好ましい態様において、本発明による方法は、液体試料材料として血漿を用いて実施される。さらに好ましい態様において、本発明による方法は、液体試料材料として全血を用いて実施される。
さらに好ましい態様において、本発明は、個体から得られた液体試料からの心不全の評価におけるマーカー分子としてのタンパク質SLIM-1の使用に関する。
診断の理想的なシナリオは、例えば、感染性疾患のように単一の事象または過程によってそれぞれの疾患が引き起こされ得る状況であり得る。すべての他の場合では、特に、HFの場合のように疾患の病因が充分理解されていない場合、正確な診断は非常に困難であり得る。当業者には認識されるように、ある種の診断上の疑問について100%特異性と同時に100%感度で診断されるHFの分野における生化学的マーカーはない。むしろ、生化学的マーカーは、一定の尤度または予測値で根本的な診断上の疑問を評価するために使用される。当業者は、評価される診断上の疑問の相対リスクまたは尤度を計算するために日常的に使用される数学的/統計学的方法に充分精通している。日常的な臨床実務では、潜在する疾患の診断、治療および管理において、種々の臨床的症状および生物学的マーカーが、一般的に医師によって一緒に考慮される。
好ましくは、本発明のさらに好ましい態様において、HFの評価方法は、SLIM-1および1種類以上の他のマーカーの濃度を測定すること、ならびにHFの評価においてSLIM-1および1種類以上の他のマーカーの濃度を使用することにより行なわれる。
HFの評価において、マーカーSLIM-1は、以下の局面:例えば、心不全の病期を同定することを意図した個体の心不全のリスクの評価または心不全を有する患者の評価、急性および慢性心不全の識別、疾患進行のリスク判断、適切な治療の選択における手引きの提供、治療に対する患者の応答のモニター、ならびに疾患過程のモニター、すなわちHF患者の追跡の1つ以上において医師を補助する。
スクリーニング(個体に心不全を発症するリスクがあるかどうかの評価):
好ましい態様において、本発明は、試料中のマーカーSLIM-1の濃度を測定する工程、任意に、試料中の心不全の1種類以上の他のマーカーの濃度を測定する工程、ならびにSLIM-1の濃度および任意に1種類以上の他のマーカーについて任意に測定された濃度(1つまたは複数)を、その参照値(1つもしくは複数)に対する(to)このマーカーまたはこれらのマーカーの濃度と比較することにより心不全を発症する前記個体のリスクを評価する工程を含む、個体に心不全を発症するリスクがあるかどうかを評価するためのインビトロ方法に関する。
本発明の意味におけるスクリーニングは、心不全を発症するリスクに関する個体の公平な評価に関する。かかるスクリーニングは、理論的には任意の試料で行なわれ得るが、臨床実務では、かかるスクリーニング選択肢は、通常、いくぶん心不全を発症するリスクのある個体に与えられる。上記のように、かかる個体は臨床的に無症候性であり得る、すなわち、HFの徴候または症状を有しない。好ましい一態様において、HFに関するスクリーニングは、心不全を発症するリスクのある個体、例えば、ACC/AHA実務ガイドラインに規定される病期AまたはBに含まれる個体に対して行なわれる。
上記のように、心不全は、先進国で最もよく見られる、費用がかかり命にかかわる疾患の1つである。その高い有病率および長い無症候性期のため、HF発症のリスクのある個体の特定は、疾患過程に介入し、可能であれば止めるために最も重要であり得る。非常に早期のリスク評価なしでは、HFの無症候性状態から症候性期への疾患進行の予防は不可能と思われる。
心不全のリスクは、当業者に充分知られ、理解された数学的/統計学的方法によって評価される。好ましくは、個体の心不全のリスクは、相対的観点で示され、いわゆる相対リスク(=RR)として示される。心不全のかかるRRを計算するため、個体のSLIM-1の値を参照集団、好ましくは心不全を発症していない健常個体において確立されたSLIM-1の値と比較する。また、心不全のかかるRRの好ましい評価は、試験期間内、好ましくは1年以内また好ましくは2年以内に心不全を発症した個体の群、および同じ試験期間において心不全を発症しなかった個体の群に基づくものである。
別の好ましい態様において、本発明は、心不全に関するスクリーニングにおけるマーカーSLIM-1の使用に関する。当業者に公知のように、用語「マーカーとしての使用」は、マーカー分子の濃度が適切な手段によって定量されること、およびかかるマーカーについての測定値が、次いで、疾患または臨床的状態の有無を示す、すなわち徴候を示すために使用されることを示唆する。定量のための適切な手段は、例えば、抗体などの特異的結合剤である。
好ましくは、HFに関するスクリーニングは、将来心不全のリスクがあることが疑われる個体において行なわれる。この意味における将来心不全のリスクがある患者は、高血圧、アテローム性動脈硬化疾患、糖尿病、肥満およびメタボリックシンドロームを有すると診断された患者である。好ましくは、将来の心不全のリスクは、高血圧、アテローム性動脈硬化疾患、糖尿病、および/またはメタボリックシンドロームに苦しむ個体で評価される。
また、ACC/AHA実務ガイドラインによる病期Bの個体、すなわち、心臓に構造変化を示すが心不全の症状を示さない個体についての将来の心不全のリスクの評価におけるマーカーSLIM-1の使用が好ましい。
さらに好ましい態様において、本発明は、HF スクリーニング目的のためのHF マーカー組合せのマーカーの1つとしてのSLIM-1の使用に関する。
スクリーニングの状況において、SLIM-1のレベルの上昇は、個体が心不全を発症するリスク増大の陽性表示である。
患者の病期分類
好ましい態様において、本発明は、a)試料中のマーカーSLIM-1の濃度を測定する工程、b)任意に、試料中の心不全の1種類以上の他のマーカーの濃度を測定する工程、ならびに工程(a)で測定された濃度および任意に工程(b)で測定された濃度(1つまたは複数)を、その参照値(1つもしくは複数)に対するこのマーカーまたはこれらのマーカーの濃度と比較することにより心不全を病期分類する工程を含む、心不全患者の病期分類を補助するインビトロ方法に関する。好ましくは、マーカーSLIM-1のレベルは、調査される個体を、臨床的に「正常な」個体(すなわち、ACA/ACC分類による病期Aの個体)、構造的心臓疾患を有する無症候性の患者(ACA/ACC分類による病期B)、および心不全を有する患者(すなわち、ACA/ACC分類による病期Cまたは病期Dの患者)の群に分類することにおける補助として使用される。
急性心臓事象と慢性心臓疾患の識別
好ましい態様において、本発明は、試料中のマーカーSLIM-1の濃度を測定する工程、任意に、試料中の心不全の1種類以上の他のマーカーの濃度を測定する工程、ならびに工程(a)で測定された濃度および任意に工程(b)で測定された濃度(1つまたは複数)を、その参照値(1つもしくは複数)に対するこのマーカーまたはこれらのマーカーの濃度と比較することにより急性心臓事象と慢性心臓疾患の鑑別診断を確立する工程を含む、急性心臓事象と慢性心臓疾患の鑑別診断を補助するインビトロ方法に関する。
当業者は、「急性心臓事象」および「慢性心臓疾患」の意味をよく知っている。
好ましくは、「急性心臓事象」は、心臓の急性の状態、疾患または機能異常、特に、急性心不全、例えば、心筋梗塞(MI)または不整脈に関する。MIの程度に応じて、LVDおよびCHFが続いて起こり得る。
好ましくは、「慢性心臓疾患」は、例えば、心臓の虚血、冠動脈疾患または以前の特に小さな心筋梗塞(1もしくは複数)(おそらく進行性LVDが続いて起こる)による心臓機能の弱化である。また、炎症性疾患、心臓弁欠陥(例えば、僧帽弁欠陥)、拡張型心筋症、肥大型心筋症、心臓リズム欠陥(不整脈)、および慢性閉塞性肺疾患による弱化であり得る。したがって、慢性心臓疾患はまた、急性冠動脈症候群、例えばMIに苦しんだが、現在は急性心臓事象に苦しんでいない患者を含み得ることは明白である。
急性心臓事象と慢性心臓疾患は、全く異なる治療計画を必要とし得るため、急性心臓事象と慢性心臓疾患を識別することは重要である。例えば、急性心筋梗塞を示す患者では、再灌流の早期処置が最も重要であり得る。ところが、慢性心不全を有する患者に行なわれる再灌流の処置は、せいぜいこの患者に対して有害でないか、ほんのわずかに有害なだけである。
本発明によるさらに好ましい態様において、マーカーSLIM-1は、急性および慢性心不全の鑑別診断において使用される。
疾患進行のリスクの評価
好ましい態様において、本発明は、試料中のマーカーSLIM-1の濃度を測定する工程、任意に、試料中の心不全の1種類以上の他のマーカーの濃度を測定する工程、ならびにSLIM-1の濃度および任意に1種類以上の他のマーカーについて任意に測定された濃度(1つまたは複数)を、その参照値(1つもしくは複数)に対するこのマーカーまたはこれらのマーカーの濃度と比較することにより前記個体の疾患進行のリスクを確立する工程を含む、HF-患者のリスクを疾患進行について評価するためのインビトロ方法に関する。
現在、HFと診断された患者がいくぶん安定な状態を有するかどうか、または
疾患が進行し、患者の健康状態が結果として悪化し得るかどうかを妥当な尤度で評価すること、または予測さえすることは非常に困難である。心不全の重症度および進行は、通常、臨床的症状を評価することにより、または心エコー検査などの画像化技術を使用することによる有害な変化の同定によって臨床的に確立される。一態様において、心不全の悪化は、左心室駆出率(LVEF)をモニタリングすることにより確立される。LVEFの5%以上の悪化は疾患進行とみなされる。
したがって、さらに好ましい態様において、本発明は、HFに苦しむ患者の疾患進行のリスクの評価におけるマーカーSLIM-1の使用に関する。HFに苦しむ患者の疾患進行の評価において、SLIM-1のレベルの上昇は、HFの初期段階における疾患進行のリスク増大の指標であるが、SLIM-1のレベルの低下は末期心不全の指標である。
適切なHF治療の選択における手引き
好ましい態様において、本発明は、試料中のマーカーSLIM-1の濃度を測定する工程、任意に、試料中の心不全の1種類以上の他のマーカーの濃度を測定する工程、ならびにSLIM-1の濃度および任意に1種類以上の他のマーカーについて任意に測定された濃度(1つまたは複数)を、その参照値(1つもしくは複数)に対するこのマーカーまたはこれらのマーカーの濃度と比較することにより適切な治療を選択する工程を含む、適切なHF治療の選択を補助するインビトロ方法に関する。
マーカーSLIM-1は、医師が心不全の領域ですぐに使える種々の治療計画から最も適切な治療計画を選択するのを補助するのに有用であることが予測される。したがって、さらに好ましい態様において、HFに苦しむ患者の治療計画の選択におけるマーカーSLIM-1の使用に関する。
治療に対する患者の応答のモニター
好ましい態様において、本発明は、a)試料中のマーカーSLIM-1の濃度を測定する工程、b)任意に、試料中の心不全の1種類以上の他のマーカーの濃度を測定する工程、ならびに工程(a)で測定された濃度および任意に工程(b)で測定された濃度(1つまたは複数)を、その参照値(1つもしくは複数)に対するこのマーカーまたはこれらのマーカーの濃度と比較することにより、HF治療に対する患者の応答をモニタリングする工程を含む、HF治療に対する患者の応答をモニタリングするためのインビトロ方法に関する。
あるいは、治療に対する患者の応答をモニタリングするための上記の方法は、SLIM-1および任意の1種類以上の他のマーカーの治療前および治療後のマーカーレベルを確立すること、ならびに治療前および治療後のマーカーレベル(1つまたは複数)を比較することにより実施され得る。
心不全の診断は臨床的に確立される。本発明によれば、患者がACC/AHA実務ガイドラインに規定される病期CまたはDの基準をみたす場合、HFが臨床的に確立されたとみなす。これらのガイドラインによれば、病期Cは、構造的心臓疾患を有し、以前または現在心不全の症状を有する患者をいう。病期Dの患者は、特殊な介入を必要とする難治性心不全を有する患者である。
上記にさらに記載のように、NT-proBNPの測定値は心不全の重症度と高度に相関する。しかしながら、BNPおよびNT-proBNPは両方とも、治療に対する患者の応答のモニタリングに理想的でないようである。例えば、Beck-da-Silva,L.,et al.,Congest. Heart Fail. 11 (2005)248-253、quiz 254-255参照。
マーカーSLIM-1は、治療に対する患者の応答をモニターするのに適切なようである。したがって、本発明はまた、治療に対する患者の応答のモニタリングにおけるSLIM-1の使用に関する。該診断領域において、マーカーSLIM-1はまた、治療前のベースライン値を確立するため、および治療後の1つの時点またはいくつかの時点でSLIM-1を測定するために使用され得る。HF患者の追跡においてSLIM-1のレベルの上昇はHFの有効な治療の陽性表示である。
マーカー組合せ
生化学的マーカーは、個々に測定され得るか、または本発明の好ましい態様においてチップ系またはビーズ系アレイ技術を用いて同時に測定され得るかのいずれかである。次いで、バイオマーカーの濃度は、各マーカーの個々のカットオフを用いて独立して解釈されるか、または解釈のために組合される、すなわち、マーカー組合せを形成する。
当業者には認識されるように、マーカーレベルを一定の尤度またはリスクに相関させる工程は、種々の様式で行なわれ、達成され得る。好ましくは、マーカーSLIM-1および1種類以上の他のマーカーの測定値を数学的に組み合わせ、組み合せた値を根本の診断上の疑問と相関させる。マーカー値は、任意の適切な当該分野の技術水準の数学的方法によってSLIM-1の測定値と組み合わされ得る。
好ましくは、マーカーの組合せに適用される数学的アルゴリズムは、ロジスティック関数である。かかる数学的アルゴリズムまたはかかるロジスティック関数を適用した結果は、好ましくは単一の値である。根本の診断上の疑問に応じて、かかる値は、例えば、個体の心不全のリスクまたはHFの患者の評価に有用な他の意図される診断上の使用に容易に相関され得る。好ましい様式において、かかるロジスティック関数は、a)例えば、正常群、心不全のリスクのある個体群、急性または慢性心不全を有する患者群などへの個体の分類、b)単変量解析によってこれらの群間で有意に異なるマーカーの同定、c)これらの異なる群の評価に有用なマーカーの独立した識別値を評価するためのロジスティック回帰分析、ならびにd)独立した識別値を組み合わせるためのロジスティック関数の構築によって得られる。この型の解析において、マーカーはもはや独立ではなく、マーカー組合せを表す。
好ましい態様において、SLIM-1の値と少なくとも1つのさらなるマーカーの値を組み合わせるために使用されるロジスティック関数は、a)正常群および心不全のリスクのある個体群それぞれへの個体の分類、b)SLIM-1の値および少なくとも1つのさらなるマーカーの値の確立、c)ロジスティック回帰分析の実施、ならびにd)マーカーSLIM-1の値と少なくとも1つのさらなるマーカーの値を組み合わせるためのロジスティック関数の構築によって得られる。
マーカー組み合わせを疾患に相関させるロジスティック関数は、好ましくは統計的方法を適用することによって開発されかつ得られたアルゴリズムを使用する。適切な統計的方法は、例えば、識別分析(DA)(即ち、線形-、四分-、正規-DA)、カーネル法(即ち、SVM)、ノンパラメトリック法(即ち、k-最近接分類)、PLS(部分最小二乗)、ツリーベース法(即ち、ロジック回帰、CART、ランダムフォレスト法、ブースティング/バギング法)、一般化線形モデル(即ち、ロジスティック回帰)、主要成分ベース法(即ち、SIMCA)、一般化付加モデル、ファジーロジックベース法、ニューラルネットワークおよび遺伝的アルゴリズムベース法である。当業者は、本発明のマーカー組み合わせを評価して、それによって適切な数学的アルゴリズムを得るための適切な統計的方法を問題なく選択する。好ましくは心不全の評価に使用される数学的アルゴリズムを得るために使用される統計的方法は、DA(即ち、線形-、四分-、正規識別分析)、カーネル法(即ち、SVM)、ノンパラメトリック法(即ち、k-最近接分類)、PLS(部分最小二乗)、ツリーベース法(即ち、ロジック回帰、CART、ランダムフォレスト法、ブースティング法)、または一般化線形モデル(即ち、ロジスティック回帰)から選択される。これらの統計的方法に関する詳細は、以下の文献: Ruczinski, I.ら, J. of Computational and Graphical Statistics 12 (2003) 475-511; Friedman, J.H., J. of the American Statistical Association 84 (1989) 165-175; Hastie, T.ら, The Elements of Statistical Learning, Springer Verlag (2001); Breiman, L.ら Classification and regression trees, Wadsworth International Group, California (1984); Breiman, L., Machine Learning 45 (2001) 5-32; Pepe, M.S., The Statistical Evaluation of Medical Tests for Classification and Prediction, Oxford Statistical Science Series, 28, Oxford University Press (2003); およびDuda, R.O.ら, Pattern Classification, John Wiley & Sons, Inc.,第2版(2001)に見られる。
本発明の好ましい態様は、生物マーカーの基礎となる組み合わせのための最適化多変量カットオフを使用すること、および状態Aと状態B、例えば、正常と心不全のリスクがある個体、療法に応答するHF患者と療法不応答、急性心不全を有する患者と慢性心不全を有するHF患者、疾患進行を示すHF患者と疾患進行を示さないHF患者それぞれを区別することである。
受信者動作曲線下の面積(=AUC)は、診断手順の性能または精度の指標である。診断方法の精度は、受信者動作特性(ROC)によって最もよく記載される(特にZweig, M.H.,およびCampbell, G., Clin. Chem. 39 (1993) 561-577を参照)。ROCグラフは、観察されたデータの範囲全体に対して判定閾値を連続して変化させることでもたらされる感度/特異性対の全てのプロットである。
研究室試験の臨床性能は、その診断精度、または被験体を臨床的に関連する亜群に正確に分類する能力に依存する。診断精度は、調査される被験体の2つの異なる状態を正確に区別する試験の能力を評価する。2つの異なる状態は、例えば、健康と疾患または疾患進行対疾患進行なしである。
それぞれの場合において、ROCプロットは、判定閾値の完全範囲に対する感度対1-特異性のプロットによる2つの分布間の重複を示す。y軸は感度、即ち真陽性部分[(真陽性試験結果の数)/(真陽性の数+偽陰性試験結果の数)として定義される]である。これは、疾患または状態の存在下の陽性度とも呼ばれる。これは、罹患亜群のみから計算される。x軸は、偽陽性部分、即ち1-特異性[(偽陽性結果の数)/(真陰性の数+偽陽性結果の数)として定義される]である。これは、特異性の指標であり、罹患していない亜群全体から計算される。2つの異なる亜群の試験結果を使用することで、真陽性部分および偽陽性部分が完全に別々に計算されるために、ROCプロットは、試料中の疾患の有病率とは独立している。ROCプロット上の各点は、特定の判定閾値に対応する感度/1-特異性対を表す。完全識別を有する試験(2つの結果の分布に重複はない)は、左上隅を通過するROCプロットを有し、この場合真陽性部分は1.0、即ち100%(完全感度)であり、偽陽性部分は0(完全特異性)である。識別のない試験の理論的プロット(2つの群の結果の同一分布)は、左下隅から右上隅の45°の対角線である。ほとんどのプロットは、これらの2つの両端の間に入る。(ROCプロットが45°対角線より下に完全に入る場合、これは「陽性度」の基準を「より大きい」から「より小さい」またはその逆に変換することによって容易に直される)定性的に、プロットが左上隅に近づくほど、試験の全体精度は高くなる。
研究室試験の診断精度を定量する1つの都合のよい目標は、1つの数によってその結果を表すことである。最も一般的で包括的な方法は、ROCプロット下の面積(AUC)である。約束事で、この面積は常に≧0.5である(そうでない場合、そうなるように判定規則を逆転し得る)。値は1.0(2つの群の試験値が完全に分離する)〜0.5(2つの群の試験値間の明白な分布の違いはない)の範囲である。面積は、対角線に最も近い点または90%特異性での感度などのプロットの特定の部分だけに依存するだけでなく、プロット全体にも依存する。これは、ROCプロットが完全なもの(面積=1.0)にどれくらい近いかを定量的に記述した表現である。
アッセイ全体の感度は、本明細書に開示される方法を行なうために必要な特異性に依存する。特定の好ましい設定において、75%の特異性が十分であり得、統計的方法および得られるアルゴリズムは、この特異性要件に基づき得る。好ましい一態様において、心不全のリスクがある個体を評価するために使用される方法は、80%、85%、または好ましくは90%もしくは95%の特異性に基づく。
先に議論したように、マーカーSLIM-1は、心不全を発症する個体のリスクの評価および心不全を有する患者のさらなるインビトロ診断評価を補助する。従って、好ましい態様は、心不全の評価におけるマーカー分子としてのSLIM-1の使用である。
HF患者の評価またはHFのリスクがある個体の評価におけるSLIM-1およびHFの1つ以上の他のマーカーを含むマーカー組み合わせの使用は、本発明のさらに好ましい態様を表す。かかるマーカー組み合わせにおいて、1つ以上の他のマーカーは、好ましくはナトリウム利尿ペプチドマーカー、心臓トロポニンマーカー、および炎症マーカーからなる群より選択される。
SLIM-1の測定と合わせられ得る好ましく選択された1つ以上の他のHFマーカーは、好ましくはナトリウム利尿ペプチドマーカー、心臓トロポニンマーカー、および炎症マーカーからなる群より選択される。好ましくは(1つまたは複数の)測定値をSLIM-1の測定値と合わせるまたはSLIM-1を含むHFマーカー組み合わせの一部を形成する、これらの好ましい他のマーカーそれぞれが、以下でより詳細に議論される。
ナトリウム利尿ペプチドマーカー
ナトリウム利尿ペプチドマーカーは、本発明の意味において、心房ナトリウム利尿ペプチド(ANP)ファミリーから選択されるマーカーまたは脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP)ファミリーから選択されるマーカーのいずれかである。
心房ナトリウム利尿ペプチドファミリーまたは脳ナトリウム利尿ペプチドファミリーのいずれかのポリペプチドマーカーは、対応する活性ホルモンのプレプロ形態に由来する。
本発明による好ましいナトリウム利尿ペプチドマーカーは、NT-proANP、ANP、NT-proBNP、BNP、およびその免疫学的に検出可能な生理学的断片である。当業者が容易に理解するように、免疫学的に検出可能な断片は、かかる生理学的断片の特異的検出を可能にする少なくとも1つのエピトープを含まなければならない。生理学的断片は、個体の循環系中で天然に存在する断片である。
両方のナトリウム利尿ペプチドファミリーのマーカーは、対応のプロホルモンの断片、即ちproANPおよびproBNPそれぞれを表す。同様な考慮が両方のファミリーに適用されるために、BNPマーカーファミリーだけを、幾分詳細に記載する。BNPファミリーのプロホルモン、即ち、proBNPは、108個のアミノ酸からなる。proBNPは、生物活性ホルモンBNPを表す32個のC-末端アミノ酸(77〜108)およびN-末端proBNP(またはNT-proBNP)と呼ばれるN-末端アミノ酸1〜76に切断される。BNP、N-末端proBNP(1〜76)ならびにさらなる分解産物(Hunt, P.J.ら, Biochem. Biophys. Res. Com. 214 (1995) 1175-1183)は、血液中で循環する。また、完全な前駆分子(proBNP1〜108)が血漿中で生じるかどうかは、完全に解決されていない。しかし、血漿中のproBNP(1〜108)の低い放出が検出可能であるが、N-末端での非常に早い部分分解のためにいくつかのアミノ酸がなくなることが記載されている(Hunt, P.J.ら, Peptides 18(1997) 1475-1481)。今日、例えば、NT-proBNPについて、アミノ酸10〜50の間にある分子の中心部分が、生理学的にかなり安定な部分を表すことが一般的に受け入れられている。このNT-proBNPの中心部分を含むNT-proBNP分子が体液から確かに測定され得る。このNT-proBNP分子の中心部分の免疫学的検出に基づいた方法に関連する詳細な開示が、WO 00/45176に示され、読者は詳細についてそれを参照されたい。用語天然NT-proBNPが提案したNT-proBNPの特定の亜分画だけを測定することがさらに有利であり得る。このNT-proBNPの亜分画に関連する詳細な開示がWO 2004/099253に見られる。当業者は、そこに全て必要な説明を見出す。好ましくは測定されるNT-proBNPは、Roche Diagnostics, GermanyのElecsys(登録商標)NT-proBNPアッセイで測定されるNT-proBNPであるか、またはこれに対応するものである。
前分析物は、NT-proBNPについて丈夫(robust)であり、中央研究室への試料の簡易輸送を可能にする(Mueller, T.ら, Clin. Chem. Lab. Med. 42 (2004) 942-944)。血液試料は、数日間室温で保存され得、あるいは回収を損失することなく郵送または配達され得る。対照的に、室温または摂氏4℃での48時間のBNPの保存は、少なくとも20%の濃度低下をもたらす(Mueller, T.ら, 上掲; Wu, A.H.ら, Clin. Chem. 50 (2004) 867-873)。
脳由来ナトリウム利尿ペプチドファミリー(特にBNPおよびNT-proBNP)は、HFに対する特定の集団のスクリーニングにおいて徹底的に調査された。これらのマーカー、特にNT-proBNPを用いた発見は、かなり有望である。無症候「患者」でもNT-proBNPの上昇値は、「心臓問題」を明らかに示す(Gremmler, B.ら, Exp. Clin. Cardiol. 8 (2003) 91-94)。この著者らは、上昇したNT-proBNPが「心臓-腎臓窮迫」の存在を示し、更なる調査のための参照(refferal)が促進されるはずであることを示した。他のいくつかのグループの研究者と一致して、Gremmlerらは、また、異常なNT-proBNP濃度が、集団におけるHFの排除および呼吸のない被験体における左心室機能不全(=LVD)の可能性の排除の両方で正確な診断試験であることを発見した。HFまたはLVDの可能性を排除するネガティブBNPまたはNT-proBNP値の役割が、他のグループの研究者ら、例えば、McDonagh, T.A.ら, Eur. J. Heart Fail. 6 (2004) 269-273およびGustafsson, F.ら, J. Card. Fail. 11, Suppl. 5 (2005) S15-20参照によって実験されている。
BNPは、心室で主に(だが専らではない)産生され、壁の緊張が増大する際に放出される。従って、放出されたBNPの増大は、心室の機能不全、または例えば、流入障害もしくは過負荷血液容量によって心室に影響を及ぼすのではなく、心房に起因する機能不全を主に反映する。BNPとは対照的に、ANPは、主に心房から産生され、放出される。従って、ANPのレベルは、心房機能を主に反映し得る。
ANPおよびBNPは、活性ホルモンであり、それぞれの不活性対応物NT-proANPおよびNT-proBNPよりも短い半減期を有する。BNPは、血液中で代謝されるが、NT-proBNPは、インタクト分子として血中で循環し、従って腎臓で排除される。NT-proBNPのインビボ半減期は、BNPの20分よりも長い120分である(Smith, M.W.ら, J. Endocrinol. 167 (2000) 239-246)。
従って、目的の時間経過または特性に応じて、ナトリウム利尿ペプチドの活性形態または不活性形態のいずれかの測定が有利であり得る。
心不全のリスクがある個体の評価において、SLIM-1について測定された値は、好ましくはNT-proANPおよび/またはNT-proBNPの値と合わされる。好ましくはNT-proBNPの値は、SLIM-1の値と合わされる。同様の考慮が、適切な療法の選択、疾患進行のリスクの判断、および疾患の経過のモニタリングに適用される。
療法に対する患者の応答の評価にSLIM-1を使用する場合、その測定値は好ましくはANPまたはBNPの測定値と合わされる。
急性〜慢性の心不全を区別するためにSLIM-1を使用する場合、好ましいマーカー組み合わせはSLIM-1、ANPまたはproANPおよびBNPまたはproBNPを含む。
心臓トロポニンマーカー
用語心臓トロポニンは、心臓アイソフォームのトロポニンIおよびトロポニンTに関する。既に先に示したように、用語マーカーはまた、生理学的断片または複合体等のマーカー分子の生理学的バリアントに関する。心臓トロポニンマーカーについて、生理学的に生じる複合体は、診断に関連することが公知であり、本明細書に表現上含まれる。
トロポニンTは、約37,000Daの分子量を有する。心臓組織に見られるトロポニンTアイソフォーム(cTnT)は、骨格筋TnTと十分に異なっており、これらTnTアイソフォームの両方を区別する抗体の作製を可能にする。TnTは、急性心筋損傷のマーカーとみなされる; Katus, H.A.ら, J. Mol. Cell. Cardiol. 21 (1989) 1349-1353; Hamm, C.W.ら, N. Engl. J. Med. 327 (1992) 146-150; Ohman, E.M.ら, N. Engl. J. Med. 335 (1996) 1333-1341; Christenson, R.H.ら, Clin. Chem. 44 (1998) 494-501;およびEP 0 394 819参照。
トロポニンI(TnI)は、トロポニン複合体の25kDa阻害性エレメントであり、筋肉組織に見られる。TnIは、Ca2+の非存在下でアクチンと結合し、アクトミオシンのATPase活性を阻害する。心臓組織に見られるTnIアイソフォーム(cTnI)は、骨格筋TnIと40%異なっており、両方のアイソフォームが免疫学的に区別することができる。cTnIの正常血漿濃度は、<0.1 ng/ml(4 pM)である。cTnIは、心臓細胞死の後に血流に放出される; 従って、血漿cTnI濃度は、急性心筋梗塞を有する患者で上昇する(Benamer, H.ら, Am. J. Cardiol. 82 (1998) 845-850)。
特有の心臓アイソフォームのトロポニンIおよびTは、他方の骨格筋のトロポニンと免疫学的に区別することができる。従って、損傷した心筋からのトロポニンIおよびTの血液への放出は、心臓組織の損傷と特異的に関連付けられ得る。また、今日では、心臓トロポニンが遊離形態または複合体の一部のいずれかとして循環から検出され得ることを当業者は理解している(例えば、米国特許第6,333,397号、米国特許第6,376,206号および米国特許第6,174,686号参照)。
心不全のリスクがある個体の評価および心不全に罹患する患者の評価において、SLIM-1について測定された値は、好ましくは心臓アイソフォームのトロポニンTおよび/またはトロポニンIの値と合わされる。マーカーSLIM-1と組み合わせて使用される好ましい心臓トロポニンは、心臓トロポニンTである。
炎症マーカー
当業者は、用語炎症マーカーに精通している。好ましい炎症マーカーは、インターロイキン-6、C反応性タンパク質、血清アミロイドAおよびS100タンパク質である。
インターロイキン-6(IL-6)は、多くの生物活性を有する21kDa分泌型タンパク質であり、造血に関与するものおよび本質的な免疫応答の活性に関与するものに分けることができる。IL-6は、急性期反応体であり、結合分子等の様々なタンパク質の合成を刺激する。その主な機能は肝臓タンパク質の急性期産生を媒介することであり、その合成はサイトカインIL-1およびTNF-αによって誘導される。IL-6は、マクロファージおよびTリンパ球によって通常産生される。IL-6の正常血清濃度は、<5pg/mlである。
C反応性タンパク質(CRP)は、宿主防御に関与する21kDaサブユニットを有するホモ五量体Ca2+結合急性期タンパク質である。CRP合成は、IL-6によって誘導され、IL-1が肝臓洞様血管のクップファー細胞によるIL-6の合成を誘発し得るために間接的にIL-1によって誘導される。CRPの正常血漿濃度は、健常集団の90%で<3μg/ml(30nM)であり、健常個体の99%で<10μg/ml(100nM)である。血漿CRP濃度は、例えば、低分子量11.7kDaの急性期タンパク質である血清アミロイドA(=SAA)によって測定され得る。これは、IL-1、IL-6またはTNF-α刺激に応答して肝臓によって主に合成され、T細胞依存的免疫応答の調節に関与する。急性事象の際、SAAの濃度は、1000倍まで増加し、1ミリリットルあたり1ミリグラムに達する。SAAは、嚢胞性線維症、腎臓移植回復、外傷または感染のような多様な疾患の炎症をモニターするために使用される。関節リウマチでは、特定の場合にCRPの代用物として使用されているが、SAAはまだ広く受け入れられていない。
S100タンパク質は、一定して増えているCa2+結合タンパク質のファミリーを形成し、今日では20種類より多くを含む。S100タンパク質の生理学的に関連する構造は、ホモダイマーであるが、一部、例えばS100A8およびS100A9は、互いにヘテロダイマーも形成し得る。細胞内機能は、タンパク質リン酸化、酵素活性の調節、または細胞骨格の力学の調節から細胞増殖および分化における関与までの範囲である。いくつかのS100タンパク質がまた、細胞から放出されるために、例えば、神経生存、星状細胞増殖、アポトーシスの誘導および炎症プロセスの調節の細胞外機能も記載されている。S100A8、S100A9、ヘテロダイマーS100A8/A9およびS100A12は炎症に見られ、S100A8は慢性炎症に応答し、S100A9、S100A8/A9およびS100A12は急性炎症で増加する。S100A8、S100A9、S100A8/A9およびS100A12は、ある癌、腎臓同種移植片拒絶、大腸炎および最も重要にはRAなどの炎症成分を有する種々の疾患と関連している(Burmeister, G.,およびGallacchi, G., Inflammopharmacology 3 (1995) 221-230; Foell, D.ら, Rheumathology 42 (2003) 1383-1389)。例えば、本発明によるマーカー組み合わせにおける使用のための、HFのリスクがある個体またはHFを有する患者の評価のための最も好ましいS100マーカーは、S100A8、S100A9、S100A8/A9ヘテロダイマーおよびS100A12である。
sE-セレクチン(可溶性内皮白血球接着分子-1、ELAM-1)は、内皮細胞のみで発現し、炎症サイトカイン(IL-1β、TNF-α)またはエンドトキシンによる活性化の後だけに発現する、115kDaのI型膜貫通糖タンパク質である。細胞表面E-セレクチンは、炎症の部位での白血球侵出の不可欠な工程である、内皮への白血球の回転接着のメディエーターであり、それによって局在した炎症応答において重要な役割を果たしている。可溶性E-セレクチンは、健常個体の血液中に見られ、おそらくは表面発現分子のタンパク質分解性切断から生じる。血清中のsE-セレクチンの上昇したレベルが、様々な病理学状態で報告されている(Gearing, A.J.H.およびHemingway, I., Ann. N.Y. Acad. Sci. 667 (1992) 324-331)。
好ましい態様において、本発明は、個体から得られた液体試料からのHFの評価における1つ以上のHF用マーカー分子と組み合わせたHF用マーカー分子としてのSLIM-1の使用に関する。
先に示したように、本発明による好ましい方法において、SLIM-1について測定した値は、ナトリウム利尿ペプチドマーカー、心臓トロポニンマーカー、および炎症マーカーからなる群より選択される少なくとも1つのさらなるマーカーの値と少なくとも合わされる。
好ましい態様において、本発明は、心不全の評価におけるマーカー組み合わせSLIM-1およびNT-proBNPの使用に関する。
好ましい態様において、本発明は、心不全の評価におけるマーカー組み合わせSLIM-1およびトロポニンTの使用に関する。
好ましい態様において、本発明は、心不全の評価におけるマーカー組み合わせSLIM-1およびCRPの使用に関する。
さらに好ましい態様において、本発明は、マーカーSLIM-1、トロポニンT、NT-proBNPおよびCRPを含むマーカー組み合わせに関する。
なおさらに好ましい態様において、本発明は、試料中のSLIM-1およびHFの1つ以上の他のマーカーの濃度を測定する工程、ならびにHFの評価で測定された濃度を使用する工程を含む、生化学マーカーによるインビトロでのHFの評価方法に使用されるマーカーパネルに関する。
本発明によるマーカーパネルは、好ましくはタンパク質アレイ技術を用いて測定される。アレイは、アドレス可能な個々のマーカーの集合物である。かかるマーカーは、空間的にアドレス可能であり得、例えばアレイがマイクロタイタープレート内に含まれ、または各マーカーが別々のX座標およびY座標に存在する平面表面に印刷される。あるいは、マーカーは、タグ、ビーズ、ナノ粒子、または物理的特性に基づいてアドレス可能であり得る。マイクロアレイは、当業者に公知な方法によって調製され得る(例えば、米国特許第5,807,522号; Robinson, W.H.ら, Nat. Med. 8 (2002) 295-301; Robinson, W.H.ら, Arthritis Rheum. 46 (2002) 885-893を参照)。本明細書で使用されるアレイは、多数のアドレス可能なマーカーを用いた任意の免疫学的アッセイのことをいう。一態様において、アドレス可能なマーカーは抗原である。別の態様において、アドレス可能な構成要素は自己抗体である。マイクロアレイは、ミニチュア化形態のアレイである。本明細書で使用される抗原は、抗体と特異的に結合し得る任意の分子のことをいう。用語自己抗体は、当該技術分野で十分定義されている。
好ましい態様において、本発明は、マーカーSLIM-1および任意にHFの1つ以上の他のマーカーを含むタンパク質アレイに関する。
好ましい態様において、本発明は、マーカーSLIM-1およびNT-proBNPを含むタンパク質アレイに関する。
好ましい態様において、本発明は、マーカーSLIM-1およびトロポニンTを含むタンパク質アレイに関する。
好ましい態様において、本発明は、マーカーSLIM-1およびCRPを含むタンパク質アレイに関する。
さらに好ましい態様において、本発明は、マーカーSLIM-1、トロポニンT、NT-proBNPおよびCRPを含むタンパク質アレイに関する。
なおさらに好ましい態様において、本発明は、SLIM-1を特異的に測定するために必要な試薬を含むキットに関する。また、SLIM-1を特異的に測定するために必要な試薬およびHFマーカー組み合わせにおいて共に使用される心不全の1つ以上の他のマーカーを測定するために必要な試薬を含むキットが好ましい。
以下の実施例、配列表および図面は、本発明の理解を補助するために提供され、その真の範囲は添付の特許請求の範囲に示される。本発明の精神を逸脱することなく改変が以下に示される手順で行なわれ得ることが理解される。
実施例1
心不全のマウスモデル
1.1 R9Cマウスモデル
遺伝性ヒト拡張型心筋症は、ヒトホスホランバン(PLN)遺伝子(PLN-R9C)のArg9からCysへの変換から生じることが報告されている(Schmitt, J.P.ら, Science 299 (2003) 1410-1413)。罹患患者における拡張型心筋症の発症は、典型的に青年期に始まり、重症および致死をもたらす心臓機能の進行性悪化が後に続く。この変異のトランスジェニックマウスモデルは、罹患患者と同様な心臓表現型を示し、拡張型心筋症を発現し、心臓収縮を減少し、早熟な死を示した(Schmitt, 2003, 上掲)。
本発明者らは、トランスジェニックマウスの生存曲線を確立した。PLN-R9Cマウスは、わずか約20週の中位生存を有し24週後に15%未満が残る(図1A)。PLN-R9C系統で最初に記録された死は12週齢で観察されたが、野生型対照マウス1匹だけが24週を超えて死んだ。最初に記録された致死の前に「初期」段階疾患の代表的な時点として8週目を選択して、8〜24週(古典的DCM)の中点として16週目を選ぶ。単離された心臓の病因の詳細な解析によって、PLN-R9Cマウスの8週齢でも心室および心房拡大の証拠が示される。また、野生型およびPLN-R9Cマウスから得られた単離心筋の横断切片後のヘマトキシリンおよびエオシン染色は、8週齢初期のトランスジェニック動物において、左心室拡張または心室壁が薄くなることの証拠を示し、加齢と共に拡張の進行が続いた。
機能的心臓測定を、8週齢、16週齢および24週齢の雄マウスでの超音波心臓検査によって行なう(表1に要約される)。前部および後部壁の厚さの超音波心臓検査の測定は、R9Cマウスが8週で有意な拡張を有し、マウスの一生を通じて悪化し続けることを示す。心臓短縮によって評価される収縮(図1B)は、わずかではあるが有意に8週で減少し、より顕著な減少が16週までに明白に明らかである。解析された雌マウスは、雄と同じ所見を示す(データ示さず)。
表1の値は、平均±SEMである。表1に使用される記号: HR=心拍数; AW、PW=前部および後部壁厚さ(左心室); LVEDD、LVESD=それぞれ左心室拡張末期および収縮末期大きさ; FS=短縮割合=(LVEDD-LVESD)/LVEDDx100%; ETC=HRについて補正した駆出時間; VCFC=HR=FS/ETCについて補正したみかけ短縮の速度; PAVC=HRについて補正したピーク心房速度; E波=初期-充填伝播(transmitral)拡張波; LVESP、LVEDP=左心室収縮末期および拡張末期血圧; +dP/dt最大=左心室血圧の最大正1次導関数; -dP/dt最大=左心室血圧の最大負1次導関数; AVA=大動脈速度加速度(PAVc/加速時間); *P<0.05 WTと比較して。
1.2 大動脈バンディング(AB)マウスモデル
このマウスモデルでは、大動脈バンディング(AB)によって生じた負荷圧が心臓拡張を誘導する。
外科介入によって、負荷圧をC57BLマウスで行なう。上行大動脈の狭窄(大動脈バンディングとして公知)は、特に大動脈の狭窄に対する主要な応答として左心室において、心臓肥大および心筋の成長を誘導する。このマウスモデルの後の段階で、心臓は肥大し、最終的には拡張する。このモデルは、十分に特徴付けられ、実験に基づいた10〜15%以下の低い致死率で再現性が高いと証明された。狭窄後に、この動物モデルによって、血行力学ストレスに応答した左心室肥大および心不全の発症の進行の評価が可能になる。
簡単に、C57BLマウスを、ケタミン(90mg/kg)およびロンプン(Rompun)(10mg/Kg)の混合で麻酔し、大動脈を、25ゲージ針を用いて結紮する。結紮を針に対して結ばないことを除いて、偽操作マウスは同じ外科手順を受ける。
実験時間点
一次肥大応答ならびに後の段階の拡張応答を調べるために、バンディングした動物および偽操作対照を、介入後1週、2週、4週、および8週で屠殺する。心臓機能および肥大の進行を、超音波心臓検査分析で評価し、組織学を調べることによって死後確認する。表2は、超音波心臓検査による様々な時点で評価した心臓機能に対する概説を示す。表2に示す超音波心臓検査の詳細は、当業者に公知であり、例えば、Asahi, M.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101 (2004) 9199-9204、およびOudit, G.Y.ら, Nat. Med. 9 (2003) 1187-1194に見ることができる。
機能性パラメーターの他に、ヘマトキシリン/エオシン(HE)染色による組織学を、2週目、4週目および8週目のABマウスおよび対照マウスの心臓組織で行なう。組織学によって、ABマウスの予測された壊死プロセスおよびリモデリングプロセスが確認され、偽操作マウスの心臓組織はいかなる有意な変化も示さない。手術の2週後に、結紮したマウスの心室は有意な左心室肥大を示し、4週後にさらに進行し、手術の8週後に最終段階拡張心筋症と密接に類似する。
実施例2
試料調製および質量分析
心臓ホモジナイゼーションおよび細胞小器官単離:
心臓を単離し、大動脈を除去し、心室を剃刀で注意深く細かくきざみ、氷冷PBS(リン酸緩衝化生理食塩水)で徹底的にすすぎ、過剰血液を除去する。ゆるく取り付けられた手動ガラスホモジナイザーを用いて、組織を10ml溶解バッファ(250mMスクロース、50mM Tris-HCl pH7.6、1mM MgCl2、1mM DDT(ジチオスレイトール)、および1mM PMSF(フェニルメチルスルホニルフルオリド)中で30秒間ホモジナイズする。次の全ての工程を4℃で行なう。溶解物を15分間800xgでベンチトップの遠心分離機で遠心分離する; 上清は、細胞質、ミトコンドリア、およびミクロソーム分画の供給源として使用する。核を含むペレットを、8mlの溶解バッファに希釈し、4mlの0.9Mスクロースバッファ(0.9Mスクロース、50mM Tris-HCl pH7.6、1mM MgCl2、1mM DDT、および1mM PMSF)に重層し、4℃で20分間1000xgで遠心分離する。得られたペレットを、8mlの2Mスクロースバッファ(2Mスクロース、50mM Tris-HCl pH7.4、5mM MgCl2、1mM DTT、および1mM PMSF)中に再懸濁し、4mlの2Mスクロースバッファ上に重層し、超遠心分離(Beckman SW40.1ローター)によって1時間150,000xgでペレット化する。核をペレットとして回収する。ミトコンドリアは4℃20分間で7500xgでの上清の再遠心分離から単離され、得られたペレットを、溶解バッファで2回洗浄する。Beckman SW41ローター中で、ミクロソームを、1時間100,000xgでミトコンドリア後細胞質の超遠心分離によってペレット化する。上清は細胞質分画(=サイト)として使用した。
細胞小器官抽出:
可溶性ミトコンドリアタンパク質を、低張溶解バッファ(10mM HEPES、pH7.9、1mM DTT、1mM PMSF)中でミトコンドリアを氷上で30分間インキュベートすることによって抽出する。懸濁液は簡単に超音波処理され、残屑を30分間13,000xgでの遠心分離によって除去する。上清は「ミト1」分画として使用する。得られた不溶性ペレットを膜界面活性剤抽出バッファ(20mM Tris-HCl、pH7.8、0.4M NaCl、15% グリセロール、1mM DTT、1mM PMSF、1.5% Triton-X-100)中に再懸濁し、30分間温和に振って、次に30分間13,000xgでの遠心分離を行ない; 上清は「ミト2」分画として使用した。
膜関連タンパク質を、膜界面活性剤抽出バッファ中にミクロソームを再懸濁することによって抽出する。懸濁液を、1時間温和に振りながらインキュベートし、不溶性残屑を、30分間13,000xgでの遠心分離によって除去する。上清は「ミクロ」分画として使用する。
細胞小器官抽出物の消化およびMudPIT解析:
各分画からの約100μg全タンパク質(Bradfordアッセイによって測定される)のアリコートを、約20℃での5倍容量の氷冷アセトンで一晩沈殿させ、次に13,000xgで15分間遠心分離を行う。タンパク質ペレットを、小容量の8M尿素、50mM Tris-HCl、pH8.5、1mM DTT中37℃で1時間可溶化し、次に暗所で5mMのヨードアセトアミドを用いたカルボキシアミドメチル化を37℃で1時間行なう。次に試料を、等容量の100mM 炭酸水素アンモニウム, pH8.5を含む4Mの尿素に希釈し、1:150倍比のエンドプロテイナーゼLys-C(Roche Diagnostics, Laval, Quebec, Canada)で37℃で一晩消化する。翌日、試料を、等容量の50mM炭酸水素アンモニウムpH8.5を含む2M尿素に希釈し、最終濃度の1mMまでCaCl2を添加し、30℃で撹拌しながらPoroszymeトリプシンビーズ(Applied Biosystems, Streetsville, Ontario, Canada)と一晩インキュベートする。得られたペプチド混合物は、製造業者の説明書によってSPEC-Plus PT C18カートリッジ(Ansys Diagnostics, Lake Forest, CA)を用いて固相抽出され、更なる使用まで-80℃で保存する。完全自動化20時間12段階多数サイクルMudPIT手順を記載(Mol. Cell Proteom. 2 (2003) 96-106)の通りに設定する。簡単に、HPLCの4個のポンプが1つになったポンプを、LCQ DECA XPイオン捕捉質量分析器(Thermo Finnigan, San Jose, CA)と接続する。100-μm内径溶融シリカキャピラリーマイクロカラム(Polymicro Technologies, Phoenix, AZ)を、P-2000レーザープラー(Sutter Instruments, Novato, CA)を用いて微細なチップに引っ張り、8cmの5μm Zorbax Eclipse XDB-C18樹脂(Agilent Technologies, Mississauga, Ontario, Canada)を充填し、次に6cmの5μm不完全球(Partisphere)強力カチオン交換樹脂(Whatman, Clifton, NJ)を充填する。圧力容器を用いて、個々の試料を、別々のカラムに手動で負荷する。クロマトグラフィー溶媒条件は、正確にKislinger, T.ら, Mol. Cell Proteom. 2 (2003) 96-106に記載される通りである。
タンパク質同定および確認:
SEQUESTデータベース検索アルゴリズムを使用して、Swiss-Prot/TrEMBLおよびIPIデータベースから得られたマウスおよびヒトタンパク質配列を集団とする局所管理された最小余剰FASTA形式データベース中のペプチド配列に、ペプチドタンデム質量スペクトルを適合させる。対照に対する実験偽発見率を統計的に評価するために、つまり、偽陽性確認を最小化するために、スペクトルの全てを、正常(フォワード)および逆(リバース)アミノ酸方向の両方のタンパク質配列に対して検索する(Kislinger, T.ら, Mol. Cell Proteom. 2 (2003) 96-106)。次に、STATQUESTフィルター化アルゴリズムを全ての推定検索結果に適用し、各候補確認について統計的信頼性の評価(信頼スコア)を得る(カットオフp値≦15、85%以上の正確な適合である可能性に対応する)。高い信頼適合が、Perl系スクリプトを用いたインハウスSQL型データベースに構文解析される。データベースは、試料名、実験番号、MudPITステップ、細胞小器官供給源、アミノ酸配列、分子質量、等電点、電荷、および信頼レベルに関する情報と共に、所定のタンパク質に適合する多数のペプチドのためのデータベース検索結果およびスペクトル情報(スキャンヘッダー)を収容するように設計される。予測信頼度p値が95%以上を有し、少なくとも2つのスペクトルが集合的に検出されるタンパク質だけを、さらなる解析のために保持する。
実施例3
モデル系で得られたデータの統計評価
3.1 R9Cマウスモデルでの識別的発現(differential expression)のp値を得るために使用される統計的方法
実施例2に記載される方法で得られた生データは、137の異なる実験実施(run)のそれぞれについて、スペクトル数(count)、タンパク質と関連する全てのスペクトルの合計それぞれを有する6190個のタンパク質からなる。6190サブセットのタンパク質である生データは、スペクトル数に基づいて本発明の分析のために100に設定した等しい数の群に各実施のデータをまず分ける包括正規化に供される。次に、LOESS(Cleveland, W.S.およびDevlin, S.J., Journal of the American Statistical Association 83 (1988) 596-610)を各群(1〜100)について行い、同様なスペクトル数を有する一組の遺伝子に対してスペクトル数の差異を調節する。
本発明者らの生データに基づいて、本発明者らは、2つの線形モデルを構築し、第一モデルは、因子として対照/疾患、時間(8W、16W、終了)および位置(サイト(cyto)、ミクロ(micro)、ミト(mito)I、ミトII)を使用し、
実施数=β0+β1時間+β2時間2+β3位置+β4対照 (1)
を用いて示され、
第二モデルは、因子として時間(8W、16W、終了)および位置(サイト、ミクロ、ミトI、ミトII)だけを使用し、
実施数=β0+β1時間+β2時間2+β3位置 (2)
を用いて示され、
ここで、β0は切片の項(intercept term)であり、β1、β2、β3、およびβ4は、変数である時間、時間二乗、位置、および対照/疾患のための勾配推定値である。
2つのモデルはAnovaを用いて比較され、ヌル仮説は2つのモデル間で違いはないことである。次に、低いp値は、2つのモデルが同じであるという十分な証拠がないことを示す。その他の情報は、状態(即ち、対照/疾患)がモデルの有意な構成成分であるように思われることを示す。対照と疾患モデルとの間で相対的なタンパク質重複において有意な変化を有するタンパク質を抽出するために、本発明者らのリストの6190個のタンパク質を、コンピュータ処理されたp値に基づいてランク付けする。これによって、p値< 0.05を有する一組の593個のタンパク質が作製される。
上記モデルからの多重仮説試験(multiple hypothesis testing)を説明するために、p値は、次に偽発見割合(FDR)補正、具体的にBenjamini-Hochberg FDR補正を用いて、補正される(Benjamini, Y.,およびHochberg, Y., Journal of the Royal Statistical Society B. 57 (1995) 289-300)。これによって、R9Cマウスモデルについて補正p値< 0.05を有する一組の40個のタンパク質が作製される。
3.2 大動脈バンディングマウスモデルでの識別的発現のp値を得るために使用される統計的方法
同じデータ解析が、R9Cマウスモデルについて先に記載される大動脈バンディングマウスモデルのデータセットに適用される。
実施例4
ウェスタンブロットアッセイによるマーカーSLIM-1の検出
粗組織溶解物を、R9Cマウス心臓組織試料から得る。簡単に、心臓組織を細かくきざみ、ダウンスホモジナイザー中ですりつぶし、30分間8,000gの遠心分離スピンに供して、核および細胞残屑を除去する。上清を、ウェスタンブロットに使用する。
SDS-PAGEおよびウェスタンブロットを、Invitrogen, Karlsruhe, Germanyの試薬および装置を用いて行う。試験される各組織試料について、10 μgの細胞質画分を、還元NuPAGE(登録商標)(Invitrogen)SDS試料バッファ中に希釈し、95℃で10分間加熱する。試料を、MESランニングバッファシステム中の4〜12%NuPAGE(登録商標)ゲル(Tris-グリシン)上に流す。ゲル分離タンパク質混合物を、Invitrogen XCell IIOBlot Module(Invitrogen)およびNuPAGE(登録商標)トランスファーバッファシステムを用いてニトロセルロースメンブレン上にブロットする。メンブレンを、PBS/0.05% Tween-20中で3回洗浄し、Roti(登録商標)-Block blocking buffer(A151.1; Carl Roth GmbH, Karlsruhe, Germany)で2時間ブロッキングする。4.5LIMドメイン(FHL-1)(IMG-3374;Imgenex/Cedarlane)に対するウサギポリクローナル一次抗体(PA1-903, Affinity Bioreagents (ABR), Golden, CO)を、Roti(登録商標)-Block blocking buffer中に希釈し、メンブレンと1時間インキュベートする。メンブレンを、PBS/0.05% Tween-20中で6回洗浄する。特異的に結合したSLIM-1一次抗体を、0.5xRoti(登録商標)-Block blocking buffer中に10 mU/mlに希釈したPOD-コンジュゲートポリクローナル抗ウサギIgG抗体で標識する。1時間インキュベートした後、メンブレンを、PBS/0.05% Tween-20中で6回洗浄する。結合したPOD-コンジュゲート抗ウサギ抗体の検出のために、メンブレンを、Lumi-LightPLUSWestern Blotting Substrate(注文番号2015196, Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)とインキュベートし、オートラジオグラフィーフィルムに曝露する。
典型的な実験の結果を図3に示す。SLIM-1の強力な過剰発現が、心不全に罹患するR9C実験動物由来の組織試料対対応する時点での健常マウス由来の組織試料で観察される。
実施例5
ヒト血清および血漿試料中のSLIM-1の測定のためのELISA
ヒト血清または血漿中のSLIM-1の検出のために、サンドイッチELISAを、開発する。抗原の捕捉のために、HEK細胞において産生されたSLIM-1でのウサギの免疫化によって得られた抗SLIM-1ポリクローナル抗体のアリコートを、および抗原の検出のために、アミノ酸233〜246からなるSLIM断片を用いてヤギにおいて生成させた血清をそれぞれ使用し、ビオチンおよびジゴキシゲニンそれぞれとコンジュゲートする。
ストレプトアビジン被覆96ウェルマイクロタイタープレートを、1xPBS溶液中10μg/mlの100μlのビオチン化抗SLIM-1ポリクローナル抗体と60分間インキュベートする。インキュベートした後に、プレートを、1x PBS + 0.02% Tween-20で3回洗浄し、PBS + 1% BSA(ウシ血清アルブミン)でブロッキングし、次に1x PBS+0.02% Tween-20で再度3回洗浄する。次に、ウェルを、標準抗原としての組み換えSLIM-1の連続希釈物または患者または対照個体それぞれの希釈血清または血漿試料(1:5)のいずれかと1時間インキュベートする。SLIM-1の結合後に、プレートを、1x PBS+0.02% Tween-20で3回洗浄する。結合したSLIM-1の特異的検出のために、ウェルを、1x PBS+1% BSA中0.5μg/mlの100μlのジゴキシゲニン化抗SLIM-1ポリクローナル抗体と45分間インキュベートする。その後、プレートを、3回洗浄して結合していない抗体を除去する。次の工程で、ウェルを、1x PBS+1% BSA中75mU/ml抗ジゴキシゲニンPODコンジュゲート(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany, カタログ番号 1633716)と30分間インキュベートする。プレートを、続いて同じバッファで6回洗浄する。抗原-抗体複合体の検出のために、ウェルを、100 μl ABTS溶液(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany, カタログ番号 11685767)とインキュベートし、30分後に光学密度(OD)を、ELISAリーダーを用いて405nmおよび492nmで測定する。
心不全を有する異なる患者から得られた10個の血清試料(HF試料)および正常な健常ドナーの10個の血清(NHS)を試験する。上記のアッセイ手順を行なった後、以下の結果(表3参照)が、これらの試料で得られた:
表3にまとめたデータを、図4および5にも示す。図4および5から明らかなように、SLIM-1レベルは、対照個体から得られた試料で見られたレベルと比較して、HFを有する患者から得られた血清で平均して高い。
実施例6
心不全の評価におけるマーカーSLIM-1を含むマーカー組み合わせ
実施例6.1マーカー組み合わせNT-proBNPおよびSLIM-1
マーカー組み合わせNT-proBNPおよびSLIM-1を、病期Bならびに病期CおよびDそれぞれの患者の違いについて評価する。十分に特徴付けされた群の個体、即ち、HFの分類のACA/ACC基準による病期Bの50人の個体およびHFに罹患し、HFの分類のACA/ACC基準による病期Cを有する50人の患者から得られた個体の液体試料を分析することによって診断精度を評価する。市販アッセイ(Roche Diagnostics, NT-proBNP-assay(カタログ番号 03 121 640 160 Elecsys(登録商標)Systems immunoassay analyzer用)によって測定されるNT-proBNPおよび上記の通りに測定されるSLIM-1を、これらの個体のそれぞれから得られた血清試料中で定量する。ROC分析を、Zweig, M.H., およびCampbell, G.,上掲に従って行なう。SLIM-1と確立されたマーカーNT-proBNPとの組み合わせについて、病期Cの患者と病期Bの個体を区別する識別力を、正規化識別分析によって計算する (Friedman, J. H., J. of the American Statistical Association 84 (1989) 165-175)。
実施例6.2 マーカー組み合わせトロポニンTおよびSLIM-1
マーカー組み合わせトロポニンTおよびSLIM-1を、急性心臓事象に罹患する患者と慢性心臓疾患に罹患する患者それぞれの違いについて評価する。十分に特徴付けされた群の個体、即ち、急性心臓事象を有すると診断された50人の個体および慢性心臓疾患を有すると診断された50人の個体から得られた個体の液体試料を分析することによって診断精度を評価する。市販アッセイ(Roche Diagnostics, トロポニンT-アッセイ(カタログ番号 201 76 44 Elecsys(登録商標)Systems immunoassay analyzer用)によって測定されたトロポニンTおよび上記の通りに測定されたSLIM-1を、これらの個体のそれぞれから得られた血清試料中で定量する。ROC分析を、Zweig, M. H.,およびCampbell, G.,上掲に従って行なう。SLIM-1と確立されたマーカーNT-proBNPとの組み合わせについて病期Cの患者と病期Bの個体を区別する識別力を、正規化識別分析によって計算する(Friedman, J.H., J. of the American Statistical Association 84 (1989) 165-175)。
実施例6.3 マーカー組み合わせNT-proBNPおよびCRP
マーカー組み合わせC反応性タンパク質およびSLIM-1は、心筋症を有すると診断された患者対任意の混同する心疾患に罹患しない対照それぞれの違いについて評価される。心筋症を有する50人の個体および50人の健常対照個体の十分に特徴付けされた群から得られた個体の液体試料を分析することによって診断精度を評価する。市販アッセイ(Roche Diagnostics, CRP-アッセイ(Tina-quant C反応性タンパク質(latex)高感度アッセイ-Rocheカタログ番号 11972855 216)によって測定されたCRPおよび上記の通りに測定されたSLIM-1を、これらの個体のそれぞれから得られた血清試料中で定量する。ROC分析を、Zweig, M.H.,およびCampbell, G.,上掲に従って行なう。SLIM-1と確立されたマーカーNT-proBNPとの組み合わせについて病期Cの患者と病期Bの個体を区別する識別力を、正規化識別分析によって計算する(Friedman, J.H., J. of the American Statistical Association 84 (1989) 165-175)。
前記発明は明確性および理解の目的のために幾分詳細に記載されているが、添付の特許請求の範囲における本発明の真の範囲を逸脱することなく、形式および詳細における様々な変更が行なわれ得ることを本開示の解釈から当業者は理解する。
公開公報、特許および出願の全ては、かかる引例のそれぞれが全体を参照することによって援用されることを具体的および個別的に示すように同じ程度で、全体を参照することによって本明細書に援用される。

Claims (12)

  1. a)個体から得られた試料中のマーカーSLIM-1の濃度を測定する工程、および
    b)工程(a)で測定された濃度を対照試料中で確立されたSLIM-1の濃度と比較することによって心不全を評価する工程
    を含前記試料が血清、血漿および全血からなる群より選択されるものである、個体における心不全を評価するための方法。
  2. a')該試料中の心不全の1つ以上の他のマーカーの濃度を測定する工程、および
    b')工程(a')で測定された1つまたは複数の濃度を対照試料中で確立された該マーカーまたは該複数のマーカーの濃度と比較することによって心不全を評価する工程
    をさらに含む、請求項1記載の方法。
  3. 前記1つ以上の他のマーカーがナトリウム利尿ペプチドマーカー、心臓トロポニンマーカー、および炎症マーカーからなる群より選択されることをさらに特徴とする、請求項2記載の方法。
  4. 前記1つ以上の他のマーカーがNT-proBNPであることをさらに特徴とする、請求項3記載の方法。
  5. 前記1つ以上の他のマーカーがトロポニンTであることをさらに特徴とする、請求項3記載の方法。
  6. 血清、血漿および全血からなる群より選択される試料を使用する、心不全の評価におけるマーカー分子としてのタンパク質SLIM-1の使用。
  7. 血清、血漿および全血からなる群より選択される試料を使用する、心不全の評価におけるSLIM-1および心不全の1つ以上の他のマーカーを含むマーカー組み合わせの使用。
  8. 1つ以上の他のマーカーがナトリウム利尿ペプチドマーカー、心臓トロポニンマーカー、および炎症マーカーからなる群より選択される、請求項7記載のマーカー組み合わせの使用。
  9. 該マーカー組み合わせが少なくともSLIM-1およびNT-proBNPを含む、請求項8記載のマーカー組み合わせの使用。
  10. SLIM-1を特異的に測定するために必要な試薬を含む、請求項1記載の方法を行なうためのキット。
  11. SLIM-1を特異的に測定するために必要な試薬および心不全の1つ以上の他のマーカーを特異的に測定するために必要な試薬を含む、請求項2記載の方法を行なうためのキット。
  12. マーカーSLIM-1が心不全のリスクがある個体から得られた試料中で測定される、請求項1記載の方法。
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