(脈波センサ1)
本発明の一実施形態に係る生態情報測定装置について、図1〜図7に基づいて以下に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る脈波センサ1を説明する模式図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る脈波センサ1を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る脈波センサ(生体情報測定装置)1は発光部2および受光部3を備えており、生体10の手首等に装着されて、橈骨動脈または尺骨動脈の光電容積脈波(生体情報)を測定する。本実施形態においては、生体10の手首に装着された脈波センサ1をについて説明するが、本発明はこれに限定されず、例えば、酸素飽和度計、血圧計等の様々な生体情報を測定するための生体情報測定装置に適用することができる。
脈波センサ1は、図2に示すように、発光部2、受光部3、生体情報測定部4(生体情報測定手段)、発光方向調整部(指向方向調整手段)5、受光方向調整部(指向方向調整手段)6、発光強度調整部(発光強度調整手段)7および生体情報データベース8を備えている。
発光部2は、測定対象に対して光を照射するものであり、例えば、赤外発光ダイオード(Infrared LED)等によって実現することができる。受光部3は、発光部2から測定対象に照射された光のうち、測定対象から反射または透過した光を受光するものであり、フォトダイオード(PD)等によって実現することができる。発光部2および受光部3は、これらに限られず、同様の機能を発揮できるものであれば好適に使用可能である。
なお、脈波センサ1における発光部2と受光部3との位置関係は、手首において生体情報を測定する場合、発光部2と受光部3とを同一面に配置し、発光部2から生体10に照射して、生体10内から反射された光を受光部3において受光する、反射型に構成されていることが望ましい。また、例えば、指や耳朶において生体情報を測定する場合、発光部2と受光部3とを生体10を挟んで対向するように配置し、発光部2から生体10に照射して、生体10内を透過した光を受光部3において受光する、透過型に構成されていてもよい。発光部2と受光部3とは、脈波センサ1を手首動脈部分に装着するための装着部(図示せず)において、生体10に密着するように配置されている。
生体情報測定部4は、生体情報の測定対象である手首の橈骨動脈または尺骨動脈(以下、手首動脈と称する)から、各種の生体情報を測定する測定手段として機能するものであり、例えば、脈波センサ1が内蔵する図示しないマイクロコンピュータ、およびそのソフトウェア処理によって実現することが出来る。
具体的には、まず、発光部2から生体10に向けて検出光を照射し、この照射した光が生体10内において反射または透過した光を受光部3によって受光する。そして、生体情報測定部4は、受光部3からの受光信号を脈波センサ1が内蔵する図示しないアナログ・デジタルコンバータによってデジタルデータに変換し(電圧レベルをデジタル値化する)、さらにフィルタ処理などの信号処理を行う。このように、生体情報測定部4は、脈波を測定する光電脈波センサとして機能し、検出した脈波データ(測定データ)を生体情報として、脈波センサ1の図示しない表示部(LCD等)に表示する、脈波センサ1が内蔵する図示しない通信部を介して外部の機器に送信する、生体情報データベース8に記憶する等の機能を有している。
また、生体情報測定部4は、測定した生体情報に基づいて、発光部2から生体10に照射される光の出力指向方向、および受光部3において受光可能な光の入力指向方向の少なくともいずれか一方を決定する。そして、発光部2および受光部3の少なくともいずれか一方の指向方向が、決定した指向方向になるように、発光方向調整部5および受光方向調整部6の少なくともいずれか一方を制御する機能を有している。さらに、生体情報測定部4は、測定した生体情報に基づいて、発光部2から生体10に照射する光の発光強度を決定する機能と、決定した発光強度になるように発光強度調整部7を制御する機能を有している。
ここで、指向方向とは、光の光軸の中心の方向、すなわち光の指向角範囲の中心方向を意図している。特に、出力指向方向は、発光部2から生体10に照射する光の指向角範囲の中心方向を、また、入力指向方向は、受光部3が受光可能な光の指向角範囲の中心方向を示している。なお、指向角とは、発光部2から照射した光が有効に作用する照射範囲を示す角度、および受光部3が光を受光可能な有効範囲を示す角度を意図しており、例えば、発光部2から照射された光の光軸中心における放射強度に対して、半分の放射強度になる角度(半値角)、および受光部3に入射する光の光軸中心における受光感度に対して、受光感度が半分の値になる角度(半値角)を意図している。
発光方向調整部5は、生体情報測定部4において測定した生体情報に基づいて、発光部2から生体10に照射される光の指向方向を調整する。受光方向調整部6は、生体情報測定部4において測定した生体情報に基づいて、受光部3において受光可能な光の指向方向を調整する。脈波センサ1においては、発光方向調整部5および受光方向調整部6の両方が必ずしも必要なわけではなく、どちらか一方だけを備えていてもよい。また、脈波センサ1は、1つの指向方向調整部を備え、この指向方向調整部が、発光部2から照射される光の指向方向および受光部3が受光可能な光の指向方向の少なくともいずれか一方を調整するように構成されていてもよい。さらに、発光方向調整部5が発光部2中に備えられ、受光方向調整部6が受光部3中に備えられていてもよい。
生体情報データベース8は、生体情報測定部4が後述する所定の処理機能を実現するために、必要に応じて一時的に測定データに関する情報を記憶させるものであり、例えば、RAM(Random Access Memory)など書換え処理が容易なメモリによって実現することができる。
発光強度調整部7は、生体情報測定部4において測定された生体情報に基づいて、発光部2から生体10に照射される光の発光強度の強弱を調整するためのものであり、後述する発光部2の駆動回路の一部としてハードウェアを用いて実現することができる。
(発光部2および受光部3)
つぎに、図3〜図7を参照して、本実施形態に係る脈波センサ1の発光部2および受光部3の具体的な構成について説明する。図3は、発光部2の構造を示す模式図である。図3に示すように、発光部2は、レンズ31、発光素子32、基板33、遮光壁34およびモールド部35を備えている。なお、図3において、符号2(3)は、発光部2または受光部3のいずれかであり得ることを示している。受光部3は、発光素子32の代わりに受光素子を備えている点以外は、発光部2と同一構造であることから、以下では発光部2を例にして説明する。図3を用いて受光部3を説明する場合、発光素子32を受光素子に置き換えればよい。
図3中(a)は、発光部2の上面図であり、図3中(b)は、発光部2の断面図であり、図3中(c)は、発光部2の斜視図である。図3中(a)および(b)に示すように、レンズ31は発光素子32に対して上面側(すなわち生体10側)に配置されており、発光素子32は基板33上に配置されている。
基板33上において、発光素子32は、レンズ31の中心位置(すなわち直交する2本の中心線X−X’線とY−Y’線との交差点)に1個、および当該中心位置を中心とする同心円に沿って8個設けられている。なお、発光部2からの出力指向方向を調整するために、発光素子32を少なくとも2個以上配置すればよいが、本実施形態において発光部2は発光素子32を9個備えている。これらの複数の発光素子32は、必ずしも等間隔に配置されていなくてもよい。
また、レンズ31および基板33の周囲には遮光壁34が配置されており、周囲からの余計な光を遮光するように構成されている。基板33として、例えばシリコン基板を用いて、当該シリコン基板上に発光素子32のチップを形成する構成としてもよく、ガラスエポキシ等のプリント基板上に、表面実装用の超小型チップパーケージの発光素子32を搭載する構成としてもよい。また、発光部2を、図3中(c)に示すように、レンズと一体化したモールド部35を設けることによって、ひとつの部品として一体形成する構造としてもよい。発光部2の構成は、これらに限られず、同様の機能を発揮できるものであれば他の構成であってもよい。
(発光部駆動回路)
ここで、発光部2の発光素子32を駆動する駆動回路について説明する。図4は、発光部2の駆動回路を示す模式図である。図4中(a)は、発光素子32の駆動回路を示しており、図4中(b)は、発光素子32の駆動回路に発光強度調整回路を加えた駆動回路を示している。なお、図3に示した9個の発光素子32のそれぞれに、図4に示す駆動回路が備えられており、個別に発光するようになっている。発光部2には、発光素子32の数量分の駆動回路が設けられるが、各駆動回路は同様に構成される。
図4中(a)に示すように、LEDのアノード側に定電圧電源VCCが接続されており、カソード側に電流制限抵抗R1およびスイッチングトランジスタTr1が直列に接続されている。そして、スイッチングトランジスタTr1のベースには、ベース抵抗R2が接続されている。ベース抵抗R2の入力側端子ONには、生体情報測定部4からの制御信号が送信され、この制御信号がオフ(入力側端子ONがGNDレベル)の時には、スイッチングトランジスタTr1はオフとなり、LEDは発光しない。また、生体情報測定部4からの制御信号がオン(入力側端子ONがVCCレベル)の時には、スイッチングトランジスタTr1はオンとなり、LEDは発光する。このような駆動回路によって、生体情報測定部4は、複数の発光素子32(LED)のそれぞれに割当てられた制御信号(入力側端子ON)によって、発光素子32を任意に駆動するように発光方向調整部5を制御することによって、発光部2からの光の出力指向方向を調整することができる。
図4中(b)は、図4中(a)の発光素子駆動回路に、さらに発光強度調整回路36を加えたものである。発光部2は、複数の発光素子32の数量分の発光素子駆動回路のそれぞれに発光強度調整回路が備えられていることが好ましい。なお、図4中(b)において、図4(a)と重複する回路の説明は省略する。
図4中(b)において、発光強度調整回路36は、LEDのカソード側と電流制限抵抗R1との間に挿入されている。発光強度調整回路36は、オペアンプ37およびTr2により構成されており、電流制限抵抗R1と共に、公知の定電流回路と同様に機能する。オペアンプ37の入力側端子ADJには、生体情報測定部4からの制御信号(アナログ電圧出力)が送信され、この制御信号のアナログ電圧値により、LEDに流れる電流値(すなわち発光素子32の発光強度)を調整することができる。具体的には、LED電流=ADJ電圧 /電流制限抵抗R1の式に基づいて、生体情報測定部4は、複数の発光素子32(LED)に割当てられた制御信号(入力側端子ADJから入力される制御信号)により、複数の発光素子32(LED)の発光強度を任意に制御することができる。なお発光素子32の駆動回路および発光強度調整回路36の構成は、これらに限られず、同様の機能を発揮できるものであれば他の駆動回路構成でもよい。
(受光部駆動回路)
つぎに、受光部3の受光素子を駆動する駆動回路について図5を参照して説明する。受光部3において、受光素子は、図3に示す発光部2における発光素子32と同様に構成されており、基板上に9個配置されている。図5中(a)は、受光部3の駆動回路を示す模式図であり、図5中(b)は、4本の選択入力端子(SEL−1〜SEL−4)によって、いずれの受光素子(PD1〜PD9)が選択されるのかを示す選択表を示す図である。なお説明の便宜上、図5中、9個の受光素子をPD1〜PD9と表記している。
図5中(a)に示す駆動回路において、PD1〜PD9は、カソード側が定電圧電源VCCに接続されており、アノード側がセレクタ38の各入力端子(IN1〜IN9)に接続されている。セレクタ38は、9つの入力端子(IN1〜IN9)の中から、4本の選択入力端子(SEL−1〜SEL−4)により選択された1つの入力端子を、出力端子(OUT)に接続するものである。生体情報測定部4は、4本の選択入力端子(SEL−1〜SEL−4)により、複数の受光素子(PD1〜PD9)の中から、1つの受光素子を任意に選択するように受光方向調整部6を制御することによって、受光可能な光の入力指向方向を調整することができる。
なお、4本の選択入力端子(SEL−1〜SEL−4)により、いずれの受光素子(PD1〜PD9)が選択されるのかについては、図5中(b)の選択表に示す通りである。
図5中(a)に示すように、セレクタ38において選択された受光素子(PD1〜PD9のいずれか1個)のアノード側は、オペアンプ39に接続されている。オペアンプ39と抵抗R3は、公知のトランスインピーダンス回路(I−V変換回路)と同様に機能する。すなわち、オペアンプ39のマイナス入力端子に接続された受光素子の受光量に応じて変化する電流が、トランスインピーダンス回路により電圧に変換され、オペアンプ39の出力端子(Vout)から出力される。本実施形態に係る駆動回路においては、受光素子が受光していないとき(すなわち電流値0のとき)には、オペアンプ39の出力端子(Vout)には、定電圧電源VCCの電圧レベルが出力される。そして、受光素子が受光して電流が流れると、オペアンプ39の出力端子(Vout)は、電流量の増加に伴って電圧レベルが低下する(すなわちGNDレベルに近づく)ように構成されている。なお受光素子の駆動回路の構成は、これらに限られず、同様の機能を発揮できるものであれば他の回路構成でもよい。
(指向方向の調整)
(第1の実施形態)
ついで、発光部2から生体10に照射される光の出力指向方向、および受光部3において受光可能な光の入力指向方向の調整方法の第一の実施形態について、図6を参照して説明する。図6は、発光部2または受光部3における光の指向方向の調整を説明する模式図である。なお、図6においても、図3と同様に、符号2(3)は、発光部2または受光部3のいずれかであり得ることを示している。発光部2における発光方向調整部5による光の出力指向方向の調整と、受光部3における受光方向調整部6による光の入力指向方向の調整とは、発光素子32と受光素子とが異なる以外は、基本的には同様であることから、以下では発光部2における発光方向調整部5による光の出力指向方向を例にして説明する。図6を用いて、受光部3における受光方向調整部6による光の入力指向方向の調整について説明する場合、発光素子32を受光素子に置き換えればよい。
図6中(a)は、図3中(a)と同様に、生体10側からの発光部2の上面図を示しており、レンズ31の中心位置に1個の発光素子32、および当該中心位置を中心とする同心円に沿って8個の発光素子32が配置されている。図6中(a)において、これら9個の発光素子32の位置を、O、a1、a2、b1、b2、c1、c2、d1およびd2により示している。図6中(a)に示すように、発光素子32の位置Oは、レンズ31の中心位置に対応しており、位置a1およびa2は、一点鎖線A−A’と上記同心円との交点に対応している。同様に、発光素子32の位置b1およびb2は、一点鎖線B−B’と上記同心円との交点に、c1およびc2は、一点鎖線C−C’と上記同心円との交点に、さらに、d1およびd2は、一点鎖線D−D’と上記同心円との交点に対応している。
ここで、一点鎖線A−A’、B−B’、C−C’およびD−D’はそれぞれ、脈波センサ1において生体10に対して平行な方向(第1の方向)を示す線である。本実施形態においては、基板33上に配置された9つの発光素子32から、任意の発光素子32を選択して生体10に光を照射させるので、上述した生体10に対して平行な4つの方向(A−A’、B−B’、C−C’およびD−D’)全てに、発光部2から生体10に照射される光の出力指向方向を調整することが可能である。
なお、出力指向方向を調整可能な方向の数は任意に選択し得るものであり、生体10に対して平行な第1の方向と、当該第1の方向と交差する第2の方向との2つの方向(例えば、A−A’およびB−B’の方向)に、少なくとも調整されることが好ましい。また、上記第1の方向と、上記第2の方向とが直交していること(例えば、A−A’およびB−B’の方向、ならびにC−C’およびD−D’の方向の組合せ)がさらに好ましい。また、生体10に対して平行な1つの方向にのみ出力指向方向を調整可能とする場合には、第1の方向のみを調整すればよい。さらに、出力指向方向の調整が不要(すなわち出力指向方向は固定)の場合には、発光素子32を中心位置(O)にのみ配置すればよい。
図6中(b)は、中心位置(O)の発光素子32から光を出力した場合の出力指向方向を示す断面図である。中心位置(O)の発光素子32だけを発光させ、それ以外の発光素子32(a1、a2、b1、b2、c1、c2、d1およびd2)を発光させない場合、レンズ31の中心位置と、発光素子32の位置とは、共に中心軸41と一致するように配置されている。これにより、中心位置(O)の発光素子32から発光される光の出力指向方向40の光軸の中心方向は、中心軸41と一致する方向になる。なお、図6中(b)が、受光部3の構成を示しているとき、中心位置(O)の受光素子32においてのみ、生体10からの反射光(または透過光)を受光可能にした場合、中心位置(O)の受光素子32が受光可能な光の入力指向方向40の光軸の中心方向は、中心軸41と一致する方向になる。
ここで、指向方向40は、発光素子32やレンズ31の光学的特性によって、光軸から所定の角度範囲を有しており、本実施形態において指向方向40は、光軸から±30度となるように図示している。以下指向方向の角度範囲を、光軸から±30度として説明する。なお、指向方向40の角度範囲はこれに限られず、用途に応じて適切な角度範囲を設定すればよい。
図6中(c)は、a1、b1、c1およびd1のいずれかの位置の発光素子32の指向方向を示す断面図である。a1、b1、c1およびd1のいずれか1つの位置の発光素子32のみを発光させ、それ以外の発光素子32を発光させない場合、レンズ31の中心位置と、発光素子32の位置(a1、b1、c1またはd1)とは、距離44だけ離れている。したがって、発光素子32から発光される光の出力指向方向は、レンズ31の屈折作用によって、指向方向42の光軸43がレンズ31の中心軸41に対して、角度θ傾斜して交差する方向となる。ここで、角度θは、レンズ31の中心位置と発光する発光素子32との間の距離、およびレンズ31の屈折率により決定されるものであり、本実施形態において、角度θを45度として図示している。以下、角度θを45度として説明する。なお、角度θはこれに限られず、用途に応じて適切な角度を設定すればよい。
図6中(d)は、a2、b2、c2およびd2のいずれか1つの位置の発光素子32の指向方向を示す断面図である。図6中(d)において、a2、b2、c2およびd2のいずれか1つの位置の発光素子32のみを発光させ、それ以外の発光素子32を発光させない場合、レンズ31の中心位置と、発光素子32の位置(a2、b2、c2またはd2)とは、距離47だけ離れている。したがって、発光素子32から発光される光の出力指向方向は、レンズ31の屈折作用によって、指向方向45の光軸46がレンズ31の中心軸41に対して、角度θ傾斜して交差する方向となる。
以上のように、脈波センサ1において、発光部2から生体10に照射される光の出力指向方向、および受光部3が受光可能な光の入力指向方向のいずれか一方を、任意に制御することが可能である。特に、本実施形態においては、図7中(a)〜(i)に示す発光部2の生体10側上面図に示すように、発光部2から生体10に照射される光の出力指向方向を、9つの方向に調整することができる。
なお、発光部2からの光の出力指向方向を調整する場合、図4中(a)に示す発光素子駆動回路によって、2つの隣接する任意の発光素子32を選択して発光させる。これにより、選択した2つの発光素子32のそれぞれからの光の出力指向方向が重なり合い、その結果、選択した2つの発光素子32のそれぞれからの光の出力指向方向の中間となる方向を、発光部2からの光の出力指向方向とすることができる。
例えば、図7中(d)に示すように、a1の位置の発光素子32だけを発光させた場合、発光素子32からの光の出力指向方向は、上面から見てA’の方向であり、図7中(a)に示すように、d1の位置の発光素子32だけを発光させた場合、発光素子32からの光の出力指向方向は、上面から見てD’の方向である。そして、a1の位置の発光素子32、およびd1の位置の発光素子32の2つの発光素子32を選択して発光させた場合、発光部2から生体10に照射される光の出力指向方向は、上面から見てA’とD’との中間の方向(図示せず)となる。
さらに、図4(b)に示す発光素子駆動回路により、2つの隣接する任意の発光素子32の発光強度を、それぞれ異なる発光強度に調整することによって、選択した2つの発光素子32のそれぞれからの光の出力指向方向の重なり合うバランスを調整することができる。この結果、発光部2からの光の出力指向方向を、選択した2つの発光素子32のそれぞれからの光の出力指向方向の中間となる方向から、発光強度の比率に応じて微調整することも可能である。すなわち、発光強度が強いほうの出力指向方向側に、発光部2の出力指向方向の光軸中心方向を傾けることができる。
また、上記の2つの隣接する任意の発光素子32の一方を、中心位置(O)の発光素子32とすることによって、他方を、a1、a2、b1、b2、c1、c2、d1およびd2のいずれか1つの位置の発光素子32とすれば、これらの発光素子32からの光の出力指向方向が重なり合うことによって、図6中(c)および(d)に示す指向方向についても、発光部2からの光の出力指向方向を示す角度θの傾斜を調整することが可能である。
このように、第1の実施形態においては、発光部2からの光の出力指向方向を、レンズ31の屈折作用を利用して調整しているので、より屈折率が大きいレンズ31を採用することによって、レンズ31の中心位置と発光素子32との間の距離に応じて、光出力指向方向をより大きく変化させることができる。この結果、生体情報を測定可能なセンシング領域の大きさに対して、発光部2および受光部3の配置面積(占有面積)を小さくすることが可能であり、脈波センサ1を小型化することが可能である。その結果、脈波センサ1の生体10への密着性を高めることが可能であり、かつ小型であることから生体10への拘束性も低減させることができる。
(第2の実施形態)
本発明に係る脈波センサ1における発光部60および受光部71の光の指向方向の調整方法の第2の実施形態について、図8を参照して以下に説明する。なお、第1の実施形態において説明した内容と重複する部分については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。図8中(a)〜(c)は、発光部60および受光部71の第2の実施形態を示す模式図である。図8において、符号60(71)は、発光部60または受光部71のいずれかであり得ることを示している。また、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、発光部60と受光部71とは、発光素子32と受光素子とが異なる以外は、同様に構成し得るので、以下では発光部60を例にして説明する。図8を用いて、受光部71の第2の実施形態について説明する場合、発光素子32を受光素子に置き換えればよい。なお、図8中(a)〜(c)に示される光の出力指向方向は、それぞれ、図6中(b)〜(d)に示される光の指向方向に対応しているため、異なる部分についてのみ説明する。
図8中(a)〜(c)に示すように、発光部60は、レンズ31、発光素子32および遮光壁34を備えている。発光部60において、発光素子32は、アクチュエータのベース部61上を移動可能なアクチュエータの可動部62に搭載されている。これにより、発光素子32は、ベース部61上を2次元方向に任意に移動可能に構成されている。ここで、ベース部61は、レンズ31に対して平行であり、生体10に対して平行に配置されるものであり、発光素子32は、この面に対して平行に移動可能に構成されている。
このように、レンズ31に対して発光素子32を2次元方向に平行移動させることによって、レンズ31の中心位置と発光素子32の中心位置との間の距離に応じて、出力指向方向を調整することができる。すなわち、図8中(a)に示すように、レンズ31の中心位置と発光素子32の中心位置とが共に中心軸64に一致する位置にあるとき、発光素子32からの光の出力指向方向63の光軸の中心方向は、中心軸64に一致する方向である。また、図8中(b)に示すように、レンズ31の中心位置と発光素子32の中心位置とが距離67だけ離れている場合、発光素子32からの光の出力指向方向65は、レンズ31の屈折作用により、出力指向方向65の光軸の中心方向66が、中心軸64に対して角度θ傾斜して交差する方向となる。さらに、図8中(c)に示すように、レンズ31の中心位置と発光素子32の中心位置とが距離70だけ離れている場合、発光素子32からの光の出力指向方向68は、レンズ31の屈折作用により、出力指向方向68の光軸の中心方向69が、中心軸64に対して角度θ傾斜して交差する方向となる。
なお、アクチュエータは、例えば、デジタルカメラのCCDシフト方式の手振れ補正ユニットにおいて使用されているような、マイクロアクチュエータを利用して実現することができる。特に、停止位置において無通電を保持することが可能なタイプであれば、指向方向を調整するとき以外は駆動電力を必要としないことから、装置の低電力化の観点において有効である。その他にも、近年開発が進められているMEMS技術や人工筋肉技術を応用した様々な超小型のマイクロアクチュエータを利用してもよい。なお、2次元方向の調整が不要な場合には、1次元方向にのみ発光素子32を移動させることが可能なアクチュエータを利用すればよい。なお、本実施形態において、2次元方向とは、例えば、図6中(a)に示すような、一点鎖線A−A’線およびB−B’線のような第1の方向および第2の方向の2つの方向(2軸方向)を意図している。
このように、第2の実施形態における発光部60は、第1の実施形態と同様に、レンズ31の屈折作用を利用していることから、屈折率が大きいレンズ31を採用することによって、レンズ31の中心位置と発光素子32の中心位置との間の距離に応じて、光出力指向方向をより大きく変化させることができる。この結果、生体情報を測定可能なセンシング領域の大きさに対して、発光部60および受光部71の配置面積(占有面積)を小さくすることが可能であり、脈波センサ1を小型化することが可能である。その結果、脈波センサ1の生体10への密着性を高めることが可能であり、かつ小型であることから生体10への拘束性も低減させることができる。
また、第2の実施形態においては、発光素子32を移動させるアクチュエータの可動部62の駆動分解能(物理的に移動可能な最小距離)単位で、発光素子32の位置を2次元方向にきめ細かく調整可能であることから、発光素子32からの光の出力指向方向も2次元方向にきめ細かく調整することが可能である。さらに、第1の実施形態では、光出力指向方向を調整するときに2つの隣接する任意の発光素子32を選択して発光させることによって、選択した2つの発光素子32のそれぞれからの光の出力指向方向の中間となる方向に、発光部2からの光の出力指向方向の光軸中心方向を調整することが可能であるが、この場合、2つの発光素子32を駆動するために、2回路分の消費電力が必要であった。一方、第2の実施形態においては、使用する発光素子32は1つのみであることから、無通電保持が可能なアクチュエータを使用すれば、測定中に任意の光出力指向方向を得るために必要な消費電力は、発光素子32の駆動回路1回路分であり、測定中の消費電力を低減することができる。
(第3の実施形態)
本発明に係る脈波センサ1における発光部80および受光部91の光の指向方向の調整方法の第3の実施形態について、図9を参照して以下に説明する。なお、第1の実施形態において説明した内容と重複する部分については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。図9中(a)〜(c)は、発光部80および受光部91の第3の実施形態を示す模式図である。図9において、符号80(91)は、発光部80または受光部91のいずれかであり得ることを示している。また、本実施形態においても、第1および第2の実施形態と同様に、発光部80と受光部91とは、発光素子32と受光素子とが異なる以外は、同様に構成し得るので、以下では発光部80を例にして説明する。図9を用いて、受光部91の第3の実施形態について説明する場合、発光素子32を受光素子に置き換えればよい。なお、図9中(a)〜(c)に示される光の出力指向方向は、それぞれ、図6中(b)〜(d)に示される光の出力指向方向に対応しているため、異なる部分についてのみ説明する。
図9中(a)〜(c)に示すように、発光部80において、発光素子32は、遮光壁34の下面に固定されており、発光素子32の中心位置と中心軸84とが一致するように配置されている。そして、発光素子32の上面の生体10に面する側には、図示しないアクチュエータにより移動可能に構成された可動レンズ81、および透過窓82が配置されている。可動レンズ81は、アクチュエータによって、生体10に対して平行に移動可能であり、少なくとも、生体10に対して平行な第1の方向と、当該第1の方向に交差する第2の方向との2つの方向(2軸方向)に任意に移動可能に構成されている。
このように、可動レンズ81を生体10に対して平行に移動させることで、可動レンズ81の中心位置と、1つの固定された発光素子32の中心位置との距離に応じて、発光部80からの光の出力指向方向を調整することが可能である。すなわち、図9中(a)に示すように、可動レンズ81の中心位置と発光素子32の中心位置とが共に中心軸84に一致する位置にあるとき、発光素子32からの光の出力指向方向83の光軸の中心方向は、中心軸84に一致する方向である。また、図9中(b)に示すように、可動レンズ81の中心と発光素子32の中心位置とが距離87だけ離れている場合、発光素子32からの光の出力指向方向85は、可動レンズ81の屈折作用により、出力指向方向85の光軸の中心方向86が、中心軸84に対して角度θ傾斜した方向となる。さらに、図9中(c)に示すように、可動レンズ81の中心と発光素子32の中心位置とが距離90だけ離れている場合、発光素子32からの光の出力指向方向88は、可動レンズ81の屈折作用により、出力指向方向88の光軸の中心方向89が、中心軸84に対して角度θ傾斜した方向となる。
可動レンズ81を駆動するためのアクチュエータ(図示せず)は、例えば、レンズシフト方式の手振れ補正機能を搭載したカメラやレンズのレンズ駆動ユニットと同様に、電磁力等を利用して可動レンズ81を移動させることができるように構成すればよい。なお、2次元方向の調整が不要な場合には、1次元方向にのみレンズ可動レンズ81を移動させることが可能なアクチュエータを利用すればよい。なお、本実施形態において、2次元方向とは、例えば、図6中(a)に示すような、一点鎖線A−A’線およびB−B’線のような第1の方向および第2の方向の2つの方向(2軸方向)を意図している。
このように、第3の実施形態における発光部80は、第1の実施形態と同様に、レンズ81の屈折作用を利用していることから、屈折率が大きいレンズ81を採用することによって、レンズ81の中心位置と発光素子32の中心位置との距離に応じて、光出力指向方向をより大きく変化させることができる。この結果、脈波センサ1の小型化を実現し得、脈波センサ1の生体10への密着性を高め、かつ生体10への拘束性も低減することが可能である。
また、第3の実施形態においては、可動レンズ81を移動させるアクチュエータ(図示せず)の駆動分解能(物理的に移動可能な最小距離)単位で、可動レンズ81の位置を2次元方向にきめ細かく調整可能であることから、発光素子32からの光の出力指向方向も2次元方向にきめ細かく調整することが可能である。さらに、第3の実施形態においては、発光素子32が1個のみであることから、発光素子32の駆動回路も1個備えていればよい。可動レンズ81を駆動するためのアクチュエータ(図示せず)が、無通電保持が可能なタイプであれば、第2の実施形態と同様に、測定中の消費電力を低減させることが可能である。
ここで、第3の実施形態における発光部80が、第1の実施形態における発光部2および第2の実施形態における発光部60と異なる点について説明する。第1の実施形態および第2の実施形態においては、図6中(c)および(d)、ならびに図8中(b)および(c)に示すように、発光素子32からの光は、中心軸84の位置からではなく、レンズ上の発光素子32に対応する位置から照射されることになる。これに対して、第3の実施形態においては、図9中(b)および(c)に示すとおり、発光素子32からの光は、当該光の出力指向方向に関わらず、常に中心軸84の位置から照射される。したがって第1〜3の実施形態において、発光素子32からの光の出力指向方向の光軸と、発光部の中心軸(レンズの中心軸または発光素子の中心軸)とのなす角θの大きさが同一であれば、第3の実施形態における発光部80の構成を用いれば、生体情報を測定し得るセンシング領域をより大きくすることが可能である。
(第4の実施形態)
本発明に係る脈波センサ1における発光部100および受光部110の光の指向方向の調整方法の第4の実施形態について、図10を参照して以下に説明する。なお、第1の実施形態において説明した内容と重複する部分については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。図10中(a)〜(c)は、発光部100および受光部110の第4の実施形態を示す模式図である。図10において、符号100(110)は、発光部100または受光部110のいずれかであり得ることを示している。また、本実施形態においても、第1〜3の実施形態と同様に、発光部100と受光部110とは、発光素子32と受光素子とが異なる以外は、同様に構成し得るので、以下では発光部100を例にして説明する。図10を用いて、受光部110の第4の実施形態について説明する場合、発光素子32を受光素子に置き換えればよい、なお、図10中(a)〜(c)に示される光の出力指向方向は、それぞれ図6中(b)〜(d)に示される光の出力指向方向に対応しているため、異なる部分についてのみ説明する。
図10中(a)〜(c)に示すように、発光部100は、発光素子32と、発光素子32の上面側(生体10面側)に位置するレンズ101とを備えている。発光素子32およびレンズ101は、遮光壁34に取り囲まれており、装置内に固定されている。そしてレンズ101に対する上面側(生体10面側)に、可動ルーバー102を備えている。可動ルーバー102は、複数の羽板により構成されており、当該羽板(スリット)部分の傾きを任意に調整して、可動ルーバー102を通過する光の指向方向を制限できるように構成されている。なお、レンズ101の中心位置と発光素子32の中心位置とが、共に中心軸104上において一致するように固定されている。
このように、可動ルーバー102の羽板の傾きを調整することによって、レンズ101から生体10に照射される光の出力指向方向を制限し、発光部100から生体10に照射される光の出力指向方向を調整し得る。すなわち、図10中(a)に示すように、可動ルーバー102の羽板の傾きが、レンズ101および発光素子32の中心位置と一致する中心軸104に平行である場合、発光素子32からの光の出力指向方向103の光軸の中心方向は、中心軸104に一致する方向である。また、図10中(b)に示すように、可動ルーバー102の羽板の傾きが、中心軸104に対して右方向に傾斜している場合、可動ルーバー102の羽板の傾きの影響により、発光素子32からの光の出力指向方向105の光軸の中心方向106が、中心軸104に対して角度θ傾斜した方向となる。さらに、図10中(c)に示すように、可動ルーバー102の羽板の傾きが、中心軸104に対して左方向に傾斜している場合、可動ルーバー102の羽板の傾きの影響により、発光素子32からの光の出力指向方向107の光軸の中心方向108が、中心軸104に対して角度θ傾斜した方向となる。
なお、可動ルーバー102は、近年、開発が進められているMEMS技術や形状記憶合金技術などを利用した、様々な超小型のマイクロルーバーを利用すればよい。特に、停止位置で無通電保持が可能なタイプのルーバーであれば、光の出力指向方向を調整するとき以外は、駆動電力を必要としないことから、装置の低電力化の観点で有効である。また可動ルーバー102としては、上記と同様の機能を有するものであれば特にこれらに限定されず、例えば、液晶などを利用して光軸方向を調整する液晶光学デバイスなどを利用してもよい。
第4の実施形態における発光部100をより具体的に説明する。第4の実施形態における発光部100は、第1〜3の実施形態における発光部と異なり、レンズ101および発光素子32の位置を固定し、可動ルーバー102の羽板の傾斜によって、発光素子32からの光の出力指向方向を変化させる。したがって、第1〜3の実施形態のように、レンズの中心位置と発光素子の中心位置との距離に応じて、光出力指向方向を変化させる方法と比較して、レンズ101を小さくすることができるため、さらに脈波センサ1を小型化することが可能である。すなわち、レンズ101を小型化することによって、図10中(a)〜(c)に示すように発光部100の横幅を短くし、発光部100を小型化することができる。その結果、脈波センサ1の生体10に対する密着性をさらに高めることが可能であり、かつ生体10に対する拘束性もさらに低減することができる。
なお、第2および3の実施形態と同様に、第4の実施形態においても、発光素子32は1個であることから、発光素子32の駆動回路も1個備えていればよい。そして、無通電保持が可能な可動ルーバーを使用すれば、測定中に任意の出力指向方向を得るために必要な消費電力は、発光素子32の駆動回路1個分でよいので、第1の実施形態よりも、測定中の消費電力を低減することができる。また、可動ルーバー102の羽板(スリット)部分の駆動分解能(物理的に傾斜可能な最小角度)単位で、可動ルーバー102の羽板(スリット)部分の傾斜角度をきめ細かく調整可能であることから、これに伴って発光素子32からの光の出力指向方向もきめ細かく調整することが可能となる。
上述した第1〜4の実施形態は全て、発光部および受光部をそれぞれ1個ずつ備えていればよいので、脈波センサ1において、生体10との接触面積に占める発光部および受光部の配置面積を小さくすることが可能であり、脈波センサ1の小型化を実現し、人体の手首のように形状が複雑な生体10表面にも密着性を高めやすいという効果を奏する。なお、第2〜4の実施形態においては、発光部における発光素子の数、および受光部における受光素子の数が、それぞれ1個ずつであるため、発光素子の駆動回路および受光素子の駆動回路を、それぞれ1個ずつ備えていればよい。すなわち、図4中(a)および(b)に示した発光素子の駆動回路を1個備えていればよく、図5中(a)に示す受光素子の駆動回路においてはセレクタ38が不要になり、受光素子(PD)がオペアンプ39に直接接続するよう構成すればよい。
(脈波センサ1による生体情報の測定処理)
つぎに、図11〜図15に基づいて、脈波センサ1による生体情報の測定処理について説明する。
図11は、脈波センサ1のメイン処理の動作を示すフローチャートを示す図である。まず、生体情報測定部4は、発光方向調整部5および受光方向調整部6の少なくともいずれか一方を制御することにより、発光部2からの光の出力指向方向および受光部3が受光可能な光の入力指向方向の少なくともいずれか一方を初期の指向方向に調整する(ステップS110)。ここで、初期の指定方向を、図6中(b)に示すような中心軸41方向とする。なお、初期の指定方向はこれに限らず、適切な方向を任意に設定してもよい。また、本実施形態においては、発光方向調整部5および受光方向調整部6の両方を備えている場合について説明するが、発光方向調整部5または受光方向調整部6のいずれか一方のみ備えている場合には、いずれか一方の調整し得る指向方向のみを調整する。
つぎに、生体情報測定部4は、発光部2からの光の出力指向方向を調整する(ステップS111)。この調整処理の詳細については後述する。なお、発光方向調整部5を備えていない場合には、このステップをスキップする。つぎに、生体情報測定部4は、受光部3からの光の入力指向方向を調整する(ステップS112)。この調整処理の詳細については後述する。なお、受光方向調整部6を備えていない場合には、このステップをスキップする。
つぎに、生体情報測定部4は、生体情報評価基準値の初期値をセットする(ステップS113)。ここで、生体情報評価基準値とは、後述するステップにおいて、測定したデータが正常範囲であるか否かを判別するために参照されるものであり、本実施形態においては、測定した脈波データの波形形状から、所定の波形パラメータを算出し、算出した波形パラメータに基づいて生体情報評価基準値を生成する。したがって、ステップS113の時点で、生体情報測定部4は脈波データの測定を行い、測定した脈波データから、初期の生体情報評価基準値を生成する。
ここで、生体情報測定部4が測定する脈波データについて、図12を参照して説明する。図12は、脈波データを説明する模式図である。図12に示す脈波データにおいて、脈波形の下部付近の電圧値であるDCレベル、および脈波形の振幅に相当する電圧値であるACレベルの2つの波形パラメータを算出する。図12の脈波データにおいては、DCレベルが約1.47Vであり、ACレベルが約0.15Vである。ここで、図12に示すDCレベルは、直流成分の平均値に相当する。一般に、波形の振幅も含めた平均値をDCレベルとするが、本実施形態においてDCレベルは、脈波データの振幅を除いた波形の下部付近を意図している。またACレベルは、受光部3において受光した受光量の変化の振幅を示している。血液中のヘモグロビンは光を吸収する特性を有しているので、血液中に含まれるヘモグロビン量が多いほど光の吸収量が多くなり、ACレベルが大きくなる。
ステップS113の時点で算出した2つの波形パラメータを、生体情報評価基準値の初期値として生体情報データベース8に記憶してもよい。なお、生体情報評価基準値についてはこれに限らず、適切な値を任意に設定すればよい。
つぎに、生体情報測定部4は、生体10の脈波データ(生体情報)を測定する(ステップS114)。生体情報測定部4が測定した脈波データは、必要に応じて、脈波センサ1の図示しない表示部(LCD等)に表示したり、脈波センサ1が内蔵する図示しない通信部を介して外部の機器に送信したりしてもよく、生体情報データベース8に記憶してもよい。なお、ステップS114における脈波データの測定は常時行われてもよいが、所定のタイミング毎に行われてもよい。脈波データの測定タイミングとしては、例えば、1分に1回、10分に1回、または1時間に1回測定する等であってもよく、測定タイミング、測定頻度、測定回数等は、測定用途や使用者(生体)からの要求などに応じて任意に設定すればよい。また、脈波センサ1が内蔵する図示しない通信部を介して、外部の機器からの要求に応じて、適宜測定することも可能である。
つぎに、生体情報測定部4は、ステップS114において測定した脈波データから、所定の波形パラメータを算出し、算出した波形パラメータを生体情報データベース8に記憶する(ステップS115)。ここで、算出した波形パラメータは、ステップS113において記憶した生体情報評価基準値とは異なるデータとして、別領域に記憶される。この波形パラメータの算出方法については、ステップS113において説明した波形パラメータの算出方法と同一である。すなわち、2つの波形パラメータ、ACレベルおよびDCレベルを算出する。また、生体情報データベース8に記憶する波形パラメータは、上書き処理で記憶され、ステップS115の処理が行われる度毎に上書きされる。
つぎに、生体情報測定部4は、ステップS115において算出した波形パラメータにより表される脈波データと、生体情報データベース8に記憶されている生体情報評価基準値とを比較して、測定した脈波データ(生体情報)が正常範囲内であるか否かを判定する(ステップS116)。本実施形態においては、脈波データおよび生体情報評価基準値として、ACレベルおよびDCレベルの2つの波形パラメータを用いているので、例えば、生体情報評価基準値のACレベルおよびDCレベルの値に対して、ステップS115において算出した波形パラメータのACレベルおよびDCレベルが、それぞれ±30%以内であれば正常範囲内であると判定する(Yes)。なお、この判定内容や判定基準は、これに限らず、適切な判定基準等を任意に設定すればよい。
ここで、測定した生体情報が正常範囲内であるか否かを判定する理由について説明する。脈波センサ1を生体10に継続して装着していると、脈波センサ1の装着位置のずれ、生体10の姿勢の変化(手首の曲げ、ひねり等)などによって、測定対象である手首動脈と脈波センサ1のセンサ部(図示せず)との相対的な位置関係が変化する場合がある。この場合、発光部2からの光の出力指向方向や、受光部3が受光可能な光の入力指向方向を再度調整することで、手首動脈とセンサ部との相対位置の変化に対する許容度を向上させることができる。ステップS116において、生体情報が正常範囲内であると判定した場合(Yes)、ステップS117に進む。一方、ステップS116において、生体情報が正常範囲外であると判定した場合(No)、ステップS110に戻り、処理を繰り返す。具体的には、最初の状態(指向方向の初期化)に戻ることになる。
つぎに、生体情報測定部は、生体情報評価基準値の更新処理を行う(ステップS117)。本実施形態においては、生体情報データベース8に記憶されている生体情報評価基準値であるACレベルおよびDCレベルと、ステップS115において算出した波形パラメータであるACレベルおよびDCレベルとから、ACレベルおよびDCレベルのそれぞれについて平均値を算出し、算出した平均値を新たな生体情報評価基準値として、生体情報データベース8に記憶する。すなわち、時間の経過や体調の変化などにより、徐々に変化する生体情報に追従できるように、生体情報評価基準値を直近の脈波データ(生体情報)により補正する。なお、この更新処理方法については、これに限らず適切な方法で更新処理すればよく、例えば、直近の波形パラメータ(例えば、直近の10回分のデータ)を生体情報データベース8に記憶させるようにして、単純移動平均により算出した値を新たな生体情報評価基準値として更新してもよい。
つぎに、生体情報測定部4は、所定の指向方向調整タイミングになったか否かを判定する(ステップS118)。ここで、所定の指向方向調整タイミングとは、具体的には、一定の周期(例えば30分周期)や一定の時刻(例えば午前0時と午後0時)などの時間情報を、脈拍センサ1に内蔵する図示しないタイマや時計により監視することによって判定することができる。また、脈波センサ1が内蔵する図示しない通信部を介して、外部の機器から指向方向を調整する指示を受信した場合に、指向方向調整タイミングになったと判定してもよい。
ここで、所定の指向方向調整タイミングになったか否かを判定する理由を説明する。ステップS116における説明と同様に、脈波センサ1を生体10に継続して装着すると、装着位置のずれ、姿勢の変化(手首の曲げ、ひねり等)などによって、測定対象である手首動脈と脈波センサ1のセンサ部(図示せず)との相対的な位置関係が変化する場合がある。この場合、発光部2からの光の出力指向方向や受光部3が受光可能な光の入力指向方向を再度調整することによって、手首動脈とセンサ部との相対位置の変化に対する許容度を向上させることができる。特に、ステップS116の処理だけでは対応できなかった場合にステップS118の処理が効果を発揮する。
具体的には、生体10からの脈波データは、時間の経過や体調の変化などによって徐々に変化するものであるため、ステップS117において更新した生体情報評価基準値が、必ずしも適切な値になるとは限らず、例えば、時間の経過と共に徐々に低下した値となることがあり得る。このように生体情報評価基準値の低下の発生と、手首動脈とセンサ部との位置がずれることによる測定データの低下の発生とが、タイミング的に重なって発生してしまった場合、ステップS116における判定処理のみでは対応できない場合がある。なお、このような不具合が発生する可能性が低い場合、ステップS118の処理は必ずしも必要ではなく、不要であればスキップすればよい。
ステップS118において、所定の指向方向調整タイミングではないと判定した場合(No)、ステップS119に進む。一方、ステップS118において、所定の指向方向調整タイミングであると判定した場合(Yes)、ステップS110に戻り、処理を繰り返す。具体的には、最初の状態(指向方向の初期化)に戻ることになる。
つぎに、生体情報測定部4は、発光部2から生体10に照射される光の発光強度を調整する(ステップS119)。この調整処理の詳細については後述する。なお、発光強度調整部7を備えていない場合、ステップS119をスキップする。ステップS119の処理を行った後、ステップS114に戻り、引き続いて次の生体情報の測定処理を行う。
次に、図13を参照して、脈波センサ1における光の出力指向方向または光の入力指向方向の調整処理について説明する。なお、光の出力指向方向の調整と、光の入力指向方向の調整とは、基本的に同様の処理であることから、光の出力指向方向を例にして説明する。図13を用いて光の入力指向方向の調整処理について説明する場合には、発光部2、発光方向調整部5等を、それぞれ受光部3、受光方向調整部6等に置き換えればよい。図13は、発光方向調整部5による発光部2からの光の出力指向方向の調整処理を示すフローチャートを示す図である。この図13の処理は、図11に示すステップS111およびステップS112の処理に相当するものである。
まず、生体情報測定部4により制御されることによって、発光方向調整部5は、発光部2からの光の出力指向方向を初期の指向方向に調整する(ステップS120)。ここで、初期の指定方向を、図6中(b)に示すような中心軸41方向とする。なお、初期の指定方向はこれに限らず、適切な方向を任意に設定してもよい。
つぎに、生体情報測定部4は、測定レベルの初期値をセット(初期設定)する(ステップS121)。具体的には、受光部3からの受光信号を電圧レベル(測定レベル)に変換した値が、所望の電圧レベルになるよう調整する。本実施形態においては、電圧レベル(DCレベルの電圧値の平均値)が、測定電圧レンジの中央付近(例えば、定電圧電源VCCがDC3Vであれば1.5V付近)になるよう調整する。測定レベルの調整方法は、発光強度調整部7を制御して、発光強度の強弱を調整する方法であってもよく、図5中(a)に示す受光回路のオペアンプ39のゲインを制御して調整する方法であってもよい。なお、測定レベルの初期値のセット(初期設定)は、これに限らず、適切な設定を任意に行えばよい。
つぎに、生体情報測定部4は、生体10の脈波データを測定し、測定した脈波データから、波形パラメータであるACレベルおよびDCレベルを算出し、生体情報データベース8に記憶する(ステップS122)。すなわち、この時点で設定されている発光部2からの光の出力指向方向における脈波データの波形パラメータを算出して、この時点で設定されている光の出力指向方向と関連付けて、生体情報データベース8に記憶する。生体情報データベース8における光の出力指向方向と波形パラメータとの記憶例を図15に示す。図15においては、VCC=3Vとする。
つぎに、生体情報測定部4は、ステップS122において算出した波形パラメータであるACレベルおよびDCレベルからAC/DC比を算出し、図15に示すように、光の出力指向方向と関連付けて生体情報データベース8に記憶する(ステップS123)。なお、本実施形態においては、受光部3における受光量が少ない場合に、DCレベルが大きく(電圧が高く)なり、受光部3における受光量が多い場合に、DCレベルが小さくなる(電圧が低くなる)ことから、AC/DC比を算出するときには、DCレベルの大小を反転するために、下記の式(1)により算出する。
AC/DC比=ACレベル/(定電圧電源VCC電圧値−DCレベル)・・・(1)
一般にAC/DC比が大きな値である場合に、より正確な測定が可能であり、AC/DC比が同じ値である場合には、DCレベルが大きい(受光量が少ない)、すなわち発光部2からの光の発光強度が小さいほうが、消費電力を低減し得るので有利である。つぎに、生体情報測定部は、調整し得る全ての出力指向方向について、ステップS122およびステップS123の処理を終了したか否かを判定する(ステップS124)。ここで、全ての出力指向方向とは、任意に設定した指向方向の全てを意図しており、例えば第1の実施形態においては、図7中(a)〜(i)に示す9個の方向を、全ての出力指向方向として設定することが可能である。また、第2の実施形態における指向方向の一例を図19に示し、第3の実施形態における指向方向の一例を図20に示す。なお第4の実施形態における指向方向の例は、第3の実施形態と同様に図20により示される。第2〜4の実施形態において、図19および図20に示すように、より詳細に光の出力指向方向を調整する場合、マトリクス状に分割した方向の全てを、全ての出力指向方向として設定することが可能である。
ステップS124において、全ての指向方向についての処理を終了していない(No)と判定した場合、ステップS125に進む。一方、ステップS124において、全ての指向方向についての処理が終了した(Yes)と判定した場合、ステップS126に進む。ステップS125において、生体情報測定部4は、発光部2からの光の出力指向方向を、次に処理を行う出力指向方向に調整する。そして、ステップS125の処理を行なった後、ステップS122に戻る。具体的には、ステップS125において設定した光の出力指向方向における脈波データの測定を行う。
つぎに、ステップS126において、生体情報測定部4は、ステップS122およびステップS123において生体情報データベース8に記憶したデータを比較して、最適な光の出力指向方向を決定し、発光方向調整部5を制御して、発光部2からの光の出力指向方向を、決定した出力指向方向に調整する。本実施形態においては、生体情報データベース8に記憶されている各出力指向方向に関するデータの中から、AC/DC比の値が最も大きい出力指向方向を抽出する。もし、AC/DC比が同一または同程度である出力指向方向が複数抽出された場合、抽出した出力指向方向の中から、DCレベルが最も小さい(受光量が多い)、すなわち同じ発光強度における受光効率が高いものを抽出し、最適な出力指向方向とする。なお、DCレベルも同一である場合には、いずれを最適な出力指向方向としてもよい。例えば、図15に示す例においては、メモリNo.3およびメモリNo.6のAC/DC比が同一で、最も大きいが、メモリNo.6のDCレベルがより小さいので、メモリNo.6に該当する指向方向である方向6(図7中(c)に示すc1の方向)を最適な出力指向方向とする。
なお、最適な光の出力指向方向を決定する判定基準は、上記に限定されず、例えば、測定した脈波データのACレベルにのみ基づいて決定してもよい。具体的には、振幅を表すACレベルが最も大きい方向を、最適な光の出力指向方向とし、DCレベルについては考慮せずに、単に大きな振幅の脈波データが測定できる方向に調整する。これにより、最適な光の出力指向方向の判定処理を簡略化することが可能である。また、測定した脈波データのDCレベルにのみ基づいて、最適な光の出力指向方向を決定してもよい。この場合、DCレベルが最も小さい方向、すなわち本実施形態においては、受光部3における受光量が最も多い方向に調整する。これにより、ACレベルを考慮せずに、単に受光量が多い方向に調整することによって、判定処理を簡略化すると共に、骨等により光が遮光される方向を排除することができる。
つぎに、生体情報測定部4は、生体10の脈波データを再度測定し、測定した脈波データから、波形パラメータであるACレベルおよびDCレベルを算出し、さらにAC/DC比を算出する(ステップS127)。すなわち、ステップS126において設定した光の出力指向方向における脈波データの波形パラメータと、AC/DC比とを算出する。つぎに、生体情報測定部4は、ステップS127において再度測定した脈波データが、正常であるか否かを判定する。具体的には、ステップS127において算出したAC/DC比と、ステップS126において抽出した最適な光の出力指向方向におけるAC/DC比とを比較して、同程度(例えば、±10%以内)の値であれば正常と判定する。ステップS128において、正常でないと判定した場合(No)、ステップS120に戻り、光の出力指向方向の調整処理を最初からやり直す。一方、ステップS128において、正常であると判定した場合(Yes)、光の出力指向方向の調整処理を終了する。
次に、図14を参照して、発光部2から生体10に照射される光の発光強度の調整処理について説明する。図14は、発光部2から生体10に照射される光の発光強度の調整処理を示すフローチャートである。図14に示す処理は、図11に示すステップS119の処理に相当するものである。
まず、生体情報測定部4は、発光部2から生体10に照射される光の発光強度を下げることが可能か否かを判定する(ステップS130)。具体的には、図11に示すステップS115において、生体情報データベース8に記憶された直近の波形パラメータであるACレベルおよびDCレベルの値を用いて、定電圧電源VCC電圧値からDCレベルを減算し、さらにACレベルを減算して得られた値が、例えば1V以上であれば、発光強度を下げることが可能であると判定する。すなわち、発光部2から生体10に照射される光の発光強度を下げることによって、DCレベルが高くなっても、ACレベルが、VCC電圧値に対して余裕があるか否かを判定する。
ステップS130において、発光強度を下げることが可能であると判定した場合(Yes)、ステップS131に進む。一方、ステップS130において、発光強度を下げることができないと判定した場合(No)、ステップS132に進む。
そして、ステップS131において、生体情報測定部4は、発光強度調整部7を制御して、発光部2から生体10に照射される光の発光強度を下げる。なお、発光強度をあまり大きく下げてしまうと、図11に示すステップS117において生体情報データベース8に記憶させている生体情報評価基準値と、発光強度を下げた後の脈波データの波形パラメータとの差が大きくなってしまうことから、できるだけ少ない変化量で発光強度を下げるようにする。例えば、LED電流値を5%だけ低くする。なお、ステップS131の処理を行った後、発光強度の調整処理を終了する。
また、ステップS132において、生体情報測定部4は、発光部2から生体10に照射される光の発光強度を上げる必要があるか否かを判定する。具体的には、図11に示すステップS115において、生体情報データベースに記憶した直近の波形パラメータであるACレベルおよびDCレベルの値を用いて、定電圧電源VCC電圧値からDCレベルを減算し、さらにACレベルを減算して得られた値が、例えば0.5V以下であれば、発光強度を上げる必要があると判定する。すなわち、現状のDCレベルおよびACレベルでは、VCC電圧値に対して余裕がないため、発光強度を上げてDCレベルを下げる必要があるか否かを判定する。
ステップS132において、発光強度を上げる必要があると判定した場合(Yes)、ステップS133に進む。一方、ステップS132において、発光強度を上げる必要がないと判定した場合(No)、発光強度の調整処理を終了する。つぎに、ステップS133において、生体情報測定部4は、発光強度調整部7を制御することによって、発光部2から生体10に照射される光の発光強度を上げる。なお、発光強度をあまり大きく上げ過ぎると、図11に示すステップS117において生体情報データベース8に記憶させている生体情報評価基準値と、発光強度を上げた後の脈波データの波形パラメータとの差が大きくなってしまうことから、できるだけ少ない変化量で発光強度を上げるようにする。例えば、LED電流値を5%だけ高くする。なお、ステップS133の処理を行った後、発光強度の調整処理を終了する。
以上のような処理を繰り返し行うことによって、生体10(人体)に装着された脈波センサ1において、発光部2からの光の出力指向方向や受光部3が受光可能な光の入力指向方向を、必要に応じて適宜最適な状態に調整しながら脈波データ(生体情報)を測定することができる。それゆえに、生体10ごとの個体差による測定対象(動脈)の位置の異なりや、初期の装着の際に生じる可能性が高い、測定対象とセンサ部との位置のずれに対応可能である。また、生体10に継続して装着しているうちに装着位置が初期の装着位置からずれてしまったり、姿勢が変化(手首の曲げ、ひねり等)したりすることなどにより、測定対象である手首動脈とセンサ部との相対的な位置関係が変化するような状況にも対応できるという効果を奏する。
なお、本実施形態においては、生体情報測定部4の処理(図11および図13に示す処理フロー)により自動的に指向方向を調整する構成について説明したが、本発明に係る生体情報測定部4は、指向方向を自動的に調整する処理を必ずしも備えていなくてもよい。このような場合、使用者が、測定状態(例えば、表示部(図示せず)に表示された、AC/DC比、ACレベル,DCレベル、または測定状態が良好か否かを識別するインジケータ表示など)を目視により確認しながら、操作ボタン等の入力部(図示せず)を操作することによって、手動で発光方向調整部5および受光方向調整部6を操作して、測定状態が良好な状態になるように、指向方向を調整することも可能である。
また、受光部3が受光可能な光の入力指向方向を測定に適した方向に調整できるので、受光部3が受光可能な光の入力指向角範囲を必要最小限にすることによって、生体10内において散乱した不要光や外乱光など、測定に不要な光の受光を妨げることが可能であり、S/N比が向上するという効果を奏する。さらに、発光部2からの光の出力指向方向や受光部3が受光可能な光の入力指向を、生体10に平行な少なくとも2つ以上の方向に調整可能とすることによって、解剖学的に複雑な測定部位(例えば、人体の手首動脈等の血管の走行位置や形状が複雑な部位や、血管近傍に腱、骨等が存在する部位)における測定に対応することが可能である。
発光部2からの光の出力指向方向や受光部3が受光可能な光の入力指向方向を、生体10に平行な少なくとも2つ以上の方向に調整する場合に奏する効果について、図18を参照して具体的に説明する。図18は、発光部2からの光の出力指向方向や受光部3が受光可能な光の入力指向方向を、生体10に平行な少なくとも2つ以上の方向に調整する場合に奏する効果を示す概念図である。図18に示すように、脈波センサ1(図示せず)と生体10(図示せず)とが接する平面上において、生体10に平行な1つの方向に光の指向方向を調整した場合に、生体情報を測定可能なセンシング領域150と、生体10に平行な2つ以上の方向に光の指向方向を調整した場合に、生体情報を測定可能なセンシング領域151とを比較すると、生体10に平行な2つ以上の方向に光の指向方向を調整した場合のセンシング領域151の方が明らかに広範囲の測定対象に対して測定可能であることが理解される。
特に、生体10に平行な1つの方向に光の指向方向を調整した場合のセンシング領域150は、測定対象である動脈140の測定領域152をカバーできないので、この部分における生体情報を測定することができないか、測定ができたとしても、測定信号が小さいために正確な測定が困難である。一方、生体10に平行な2つ以上の方向に光の指向方向を調整した場合のセンシング領域151は、動脈140を測定領域152でカバーできるので、十分に測定することが可能である。
また、本発明においては、発光部2から生体10に照射される光の発光強度を適宜調整して、必要最低限の強度に調整しながら脈波データの測定を行うことが可能であるので、発光に要する電力を低減することができる。その結果、装置の小型化および軽量化、ならびに電池の寿命の改善を図ることができる。
さらに、本発明に係る脈波センサ1において、光の出力指向方向または光の入力指向方向と測定対象である動脈との位置関係を、図16および17を参照して以下に説明する。
図16および図17は、本発明の脈波センサ1における、光の出力指向方向または光の入力指向方向と、生体10内の測定対象である動脈との位置関係とを説明する概念図である。図16は、発光部2および受光部3を動脈140に並行な方向に配置(装着)した場合における光の指向方向と測定対象との位置関係を示す概念図であり、図17は、発光部2および受光部3を動脈140に直交する方向に配置(装着)した場合における光の指向方向と測定対象との位置関係を示す概念図である。
図16中(a)は、生体10内の動脈140を、動脈140の走行方向の側面側から見た図であり、脈波センサ1の発光部2および受光部3は、動脈140に平行な方向に並べて配置されている。図16中(b)〜(d)は、図16中(a)に示すE−E’線における断面図(すなわち、動脈140の断面図)である。図16中(b)において、発光部2からの光の出力指向方向141、および受光部3が受光可能な光の入力指向方向141が図13に示すS126の処理によって、測定に適した指向方向に調整されていることから、動脈140からの脈波データの測定を正確に行うことができる。また、図16中(c)および(d)においても、発光部2からの光の出力指向方向142・143、および受光部3が受光可能な光の入力指向方向142・143が測定に適した方向に調整されているため、動脈140からの脈波データの測定を正確に行うことができる。このように、発光部2からの光の出力指向方向や受光部3が受光可能な光の入力指向を、測定対象に対して常に最適な指向方向に調整することによって、正確な測定を実現し得る。
また、図17中(a)は、生体10内の動脈140を、動脈140の走行方向の側面側から見た図であり、脈波センサ1の発光部2および受光部3は、動脈140に直交する方向に並べて配置されている。図17中(b)〜(d)は、図17中(a)に示すF−F’線における断面図(すなわち、動脈140の断面図)である。図17中(b)において、発光部2からの光の出力指向方向144および受光部3が受光可能な光の入力指向方向145が、共に動脈140に対して測定に適した指向方向に調整されていることから、動脈140からの脈波データの測定を正確に行うことができる。また、図17中(c)および(d)においても、発光部2からの光の出力指向方向146・148、および受光部3が受光可能な光の入力指向方向147・149が、共に動脈140に対して測定に適した指向方向に調整されているため、動脈140からの脈波データの測定を正確に行うことができる。このように、発光部2からの光の出力指向方向や受光部3が受光可能な光の入力指向を、測定対象に対して常に最適な指向方向に調整することによって、正確な測定を実現し得る。
なお、図16および17に示した概念図は、光の出力指向方向および光の入力指向方向が、理想的に制御されている状態を示したものである。生体10内は光に対して強散乱媒体であること、腱や骨による遮光・減光などの影響を受けることから、実際には、必ずしも光の出力指向方向および光の入力指向方向と、測定対象の動脈との位置関係が一致するとは限らない。しかしながら、本発明のように、指向方向を適宜変化させたうちで最も測定に適した指向方向に常に調整することによって、より正確に生体情報を測定することが可能となる。
本実施形態においては、人体の手首などに装着する脈波センサを例として示したが、本発明に係る生体情報測定装置はこれに限らず、例えば、脈拍計、酸素飽和度計(パルスオキシメータ)、血圧計、血流計などの、生体に装着して光電センサにより生体情報を測定する各種生体情報測定装置に好適に用いることが可能であり、これらの装置も本発明の技術的範囲に含まれる。また、本発明に係る生体情報測定装置を用いて生体情報を測定する測定対象は、人体に限定されず、ヒト以外の生物であってもよい。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
最後に、脈波センサ1の各機能ブロック、特に、生体情報測定部4は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
すなわち、脈波センサ1は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(Central Processing Unit)、前記プログラムを格納したROM(Read Only Memory)、前記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)、前記プログラム及び各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである脈波センサ1の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、脈波センサ1に供給し、そのコンピュータ(またはCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit))が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
前記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやコンパクトディスク−ROM/MO/MD/デジタルビデオデイスク/コンパクトディスク−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
また、脈波センサ1を通信ネットワークと接続可能に構成し、前記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、前記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。