[連邦による支援に関する陳述]
本発明は、一部には、国立衛生研究所から助成金番号GM63067およびGM068804を付して連邦政府の支援を受けて行われた。米国連邦政府は、本発明において所定の権利を有する。
[関連出願に関する情報]
本出願は、それらの開示が参照して全体として本明細書に組み込まれる2005年10月28日に提出された米国特許仮出願第60/731,053号および2006年4月5日に提出された米国特許仮出願第60/789,437号の恩典を主張する。
[発明の分野]
本発明は、新規に同定されたデメチラーゼファミリーならびに新規なデメチラーゼアッセイに関する。さらに、デメチラーゼの活性を調節する化合物を同定する方法、がんもしくは脱毛を治療するための候補化合物を同定するための方法、タンパク質を脱メチル化するための本発明のデメチラーゼの使用、デメチラーゼ活性を調節する方法、がんを治療する方法、脱毛を治療する方法、多分化能もしくは分化マーカーの発現を調節する方法、およびステロイドホルモン調節遺伝子を含む遺伝子発現を調節する方法にも関する。
タンパク質は、翻訳後にリジンのアミノ基上およびアルギニンのグアニジノ基上でN−メチル化される、またはアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩もしくはタンパク質C末端上でカルボキシメチル化されることがある。近年の研究は、RNAプロセッシング、受容体媒介性シグナリング、および細胞分化などの様々な細胞プロセスにおいてメチル化が果たす役割を示唆する間接的証拠を提供してきた(Aletta,J.M.et al.(1998)Trends Biochem.Sci.23:89)。しかし大部分の、特異的メチルトランスフェラーゼ、タンパク質基質、およびこれらの現象においてメチル化が果たす特定の役割については確認されていない。タンパク質のメチル化は、ヒストンにおいて極めて広範に試験されてきた。S−adenyosylメチオニン(SAM)からヒストンへのメチル基の転移は、ヒストンメチルトランスフェラーゼとして知られる酵素によって触媒される。
共有結合ヒストン修飾は、クロマチンの動態および機能を調節することに重要な役割を果たす(Strahl and Allis,(2000)Nature 403:41−45)。そのような修飾の1つであるメチル化は、リジンおよびアルギニンの両残基上で発生し、ヘテロクロマチン形成、X染色体不活性化、および転写調節を含む様々な生物学的プロセスに関与する(Lachner et al.,(2003)J.Cell Sci.116:2117−2124;Margueron et al.,(2005)Curr.Opin.Genet.Dev.15:163−176)。一般に転写活性化と相関するアセチル化とは相違して、ヒストンリジンメチル化は、メチル化される特定のリジン残基に依存して活性化または抑制いずれかをシグナリングすることができる(Zhang and Reinberg,(2001)Genes Dev.15:2343−2360)。同一リジン残基内でさえ、メチル化の生物学的影響は、それがモノメチル化、ジメチル化、もしくはトリメチル化であるのかに依存して相違することがある(Santos−Rosa et al.,(2002)Nature 419:407−411;Wang et al.,(2003)Mol.Cell.12:475−487)。
共有結合ヒストン修飾の定常状態レベルは、所与の修飾の添加および除去を触媒する酵素間の平衡によって制御される。この見解はアセチル化、リン酸化、およびユビキチン化については概して真実ではあるが、メチル−リジン残基からメチル基を除去できる酵素については最近まで定義できないままであった(Shi et al.,(2004)Cell 119:941−953)。候補アプローチを用いて、Shiおよび同僚らは、数種のヒストンデアセチラーゼ複合体中で以前に見いだされた核アミンオキシダーゼホモログであるLSD1/BHC110(Hakimi et al.,(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:7420−7425);Shi et al.,(2003)Nature 422:735−738;You et al.,(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:1454−1458)が、FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)依存性酸化反応においてモノ−およびジ−メチルH3K4を特異的に脱メチル化できることを証明した。分裂酵母(S.pombe)内には潜在的LSD1ホモログが存在するが、S.セレビジエ(S.cerevisiae)内には明白なLSD1ホモログが存在しないが、それでもこの有機体内でH3上の少なくとも3つの明確なリジン残基をメチル化することはできる。
タンパク質のメチル化およびカルボキシメチル化は、翻訳後共有結合修飾を通してタンパク質機能を調節するための機序である。ヒストンのメチル化は、クロマチンの動態および転写を調節する際に重要な役割を果たす。大多数の共有結合ヒストン修飾は可逆性であるが、最近まで、メチル基をヒストンから能動的に除去できるかどうかは知られていなかった。本発明は、一部には、本発明者らがJHDM1A、JHDM2およびJHDM3A(JmjC containing histone demethylase; JmjC含有ヒストンデメチラーゼ1A、2Aおよび3A)と命名したJmjCドメイン含有タンパク質、ならびにリジン36(H3−K36)、H3−K9もしくはH3−K4でヒストンH3を特異的に脱メチル化する網膜芽細胞腫結合タンパク質2(Retinoblastoma Binding Protein-2;RBP2/JARID1A)およびJARID1B(PLU1)の発見に基づいている。ヒストン脱メチル化におけるJmjCドメインの機能は保存されている。例えば、JHDM1の出芽酵母(S. cerevisiae)のホモログもまた、H3−K36デメチラーゼ活性を有している。さらに、分裂酵母(S. pombe)のJHDM1ホモログ内の機能消失変異体を模倣する突然変異は、デメチラーゼ活性を損傷させた。さらに、RBP2およびショウジョウバエ(Drosophila)オルソログのLid(Little imaginal Discs)はどちらもH3−K4デメチラーゼである。そこで、本発明者らは、新規なタンパク質脱メチル化機序を見いだし、JmjCドメインが、酵母からヒトに至る生物体内で見いだされるデメチラーゼのための代表的な(signature)モチーフであると同定した。
したがって、第1態様として、本発明は、組成物中のデメチラーゼ活性を検出する方法であって、
(a)メチル化タンパク質基質の脱メチル化のために十分な条件下で、前記組成物を、(i)メチル化タンパク質基質、(ii)Fe(II)および(iii)α−ケトグルタレートに接触させるステップと、
(b)前記脱メチル化反応からのホルムアルデヒドおよび/またはコハク酸の遊離を検出するステップであって、前記ホルムアルデヒドおよび/またはコハク酸の遊離がデメチラーゼ活性の指標であるステップと
を含む方法を提供する。
また別の態様として、本発明は、デメチラーゼ活性を検出する方法であって、
(a)前記メチル化タンパク質基質の脱メチル化のために十分な条件下で、タンパク質を(i)メチル化タンパク質基質、(ii)Fe(II)および(iii)α−ケトグルタレートに接触させるステップと、
(b)前記脱メチル化反応からのホルムアルデヒドおよび/またはコハク酸の遊離を検出するステップであって、前記ホルムアルデヒドおよび/またはコハク酸の遊離がデメチラーゼ活性の指標であるステップと
を含む方法を含む。
また別の態様として、本発明は、JmjCドメインを含むデメチラーゼのデメチラーゼ活性を調節する化合物を同定する方法であって、
(a)試験化合物の存在下で、前記デメチラーゼをメチル化タンパク質基質と接触させるステップと、
(b)脱メチル化のために十分な条件下で、前記タンパク質基質の脱メチル化のレベルを検出するステップであって、前記試験化合物の非存在下における脱メチル化のレベルと比較した前記タンパク質基質の脱メチル化における変化は、前記試験化合物が前記デメチラーゼのデメチラーゼ活性のモジュレーターであることを示唆するステップと
を含む方法を提供する。
さらにまた別の態様として、本発明は、がんを治療するための候補化合物を同定する方法であって、
(a)試験化合物の存在下で、JmjCドメインを含むデメチラーゼ(例、ヒストンデメチラーゼ)をメチル化タンパク質基質(例、メチル化ヒストン基質)と接触させるステップと、
(b)脱メチル化のために十分な条件下で、前記タンパク質基質の脱メチル化のレベルを検出するステップであって、前記試験化合物の非存在下における脱メチル化のレベルと比較した前記タンパク質基質の脱メチル化における変化は、前記試験化合物ががんを治療するための候補化合物であることを示唆するステップと
を含む方法を提供する。
さらにまた別の態様として、本発明は、脱毛を治療するための候補化合物を同定する方法であって、
(a)試験化合物の存在下で、Hairlessタンパク質をメチル化タンパク質基質と接触させるステップと、
(b)脱メチル化のために十分な条件下で、前記タンパク質基質の脱メチル化のレベルを検出するステップであって、前記試験化合物の非存在下における脱メチル化のレベルと比較した前記タンパク質基質の脱メチル化における変化は、前記試験化合物が脱毛を治療するための候補化合物であることを示唆するステップと
を含む方法を提供する。
さらに本発明には、メチル化タンパク質を脱メチル化する方法であって、脱メチル化のために十分な条件下で、前記メチル化タンパク質を、JmjCドメインを含むデメチラーゼに接触させるステップを含む方法、ならびにデメチラーゼとしてのJmjCドメイン含有タンパク質の使用もまた含まれる。
上記の方法の特定の実施形態では、前記デメチラーゼはヒストンデメチラーゼであり、前記メチル化タンパク質基質はメチル化ヒストン基質である。
本方法は、さらに、
(a)JmjCドメインを含むデメチラーゼと、
(b)脱メチル化反応を実施するためのJmjCドメイン含有タンパク質の使用方法についての説明書、および任意選択により、脱メチル化反応を実施するためにJmjCドメイン含有タンパク質を使用するための追加の試薬又は装置と
を含むキットも含む。
以下では、本発明の説明において本発明のこれらおよびその他の態様についてより詳細に記載する。
本発明は、一部には、新規なタンパク質デメチラーゼモチーフの発見および脱メチル化活性を評価するためのアッセイに基づいている。このアッセイを用いて、本発明者らは、HeLa細胞からヒストンデメチラーゼ活性を同定した。さらに、JHDM1と命名されているJmjCドメインを含むタンパク質(Clissold and Ponting,(2001)Trends Biochem.Sci.26:7−9)がデメチラーゼ活性に対して大きく関与していることは証明されている。補因子であるFe(II)およびα−ケトグルタレートの存在下では、JHDM1はヒストンH3リジン36(H3−K36)を脱メチル化し、ホルムアルデヒドおよびコハク酸塩を生成する。JHDM1中に存在するJmjCドメインは、このドメインにおける突然変異がその酵素活性を完全に無効にするので、酵素活性に対して大いに関与している。ヒストン脱メチル化におけるJmjCドメインの機能は、出芽酵母(S. cerevisiae)のホモログもH3−K36を脱メチル化することができるので、保存されている。重要なことに、分裂酵母(S. pombe)のJHDM1ホモログにおける機能消失突然変異を模倣する突然変異は、デメチラーゼ活性を無効にした。そこで、本発明者らは、新規なヒストン脱メチル化機序を見いだし、JmjCドメインが、酵母からヒトに至る生物体内で見いだされるデメチラーゼのためのシグネチャーモチーフであることを同定した。
G9a−メチル化ヒストン基質を用いる並行試験では、本発明者らは、H3−K9を脱メチル化する、JHDM2Aと命名された第2のJmjCドメイン含有ヒストンデメチラーゼを精製して特性解析した。JHDM2Aの酵素活性は無傷JmjCドメインに依存し、補因子であるFe(II)およびα−ケトグルタレートを必要とする。
さらに、追加のヒストンデメチラーゼを同定するために、本発明者らは、提案されたFe(II)およびα−KG結合部位内の類似性に焦点を当てて、他のJmjCファミリーメンバーのJmjCドメインをJHDM1A/BおよびJHDM2Aと比較した。関連タンパク質ヒドロキラーゼであるFIH(低酸素誘導性因子を阻害する因子)は、Fe(II)およびα−KGと複合体形成したFIHの構造を利用でき、そして基準点として機能できるので、アラインメント内に含めた。タンパク質JMJD2Aは、トリメチルH3−K9およびトリメチルH3−K36を各々ジメチルH3−K9およびH3−K36へ脱メチル化するトリメチル化H3−K9およびH3−K36デメチラーゼであると同定された。このタンパク質は、その酵素機能を反映して本発明者らの現行命名法に従うために、JHDM3Aと改名した。
その後の試験は、JARID1 JmjCファミリーのメンバーである網膜芽細胞腫結合タンパク質2(RBP2/JARID1A)、ならびにショウジョウバエ(Drosophila)のオルソログLid(Little Imaginal Discs)がH3−K4デメチラーゼであり、モノメチル化、ジメチル化もしくはトリメチル化基質を非メチル化形へ処理できることを証明している。JARID1B(PLU1)もまた、RBP2に対する類似の基質特異性を備えるH3−K4デメチラーゼである。
本発明の実行を適用できる被験者には、鳥類および哺乳動物が含まれるがそれらに限定されず、哺乳動物が好ましい。本明細書で使用する用語「鳥類」には、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、シチメンショウおよびキジが含まれるがそれらに限定されない。一部の実施形態では、被験者はヒト被験者である。ヒト被験者には、男女両性および任意の発達段階(すなわち、新生児、乳児、少年、青年、成人)にある被験者が含まれる。本発明の一部の実施形態は主としてヒト被験者に関する実施に関連するが、本発明は、動物被験者、特別には例えば非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ、ラット、マウスなどの哺乳動物被験者において実施することもできる。本発明は、獣医学目的、薬物スクリーニングおよび/または医薬品開発目的で動物に対して実施することができる。
ここで、本発明の実施形態が図示されている添付の図面を参照して、本発明をより詳細に記載する。しかし本発明は、様々な形態で具体化することができ、本明細書に記載した実施形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完全かつ完成しているように、そして当業者に本発明の範囲を十分に伝えるように提供する。
他に特に規定されない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者に一般に理解されている意味と同一の意味を有する。本発明の説明において使用する用語は、特定の実施形態を記載することだけを目的とし、決して本発明を限定することは意図されていない。本明細書に言及したすべての出版物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、全体として参照して組み込まれる。
他に示唆されている以外は、遺伝子をクローニングする、タンパク質を発現させる、核酸を増幅させるおよび検出するなどのために、当業者に知られている標準的な方法を使用できる。そのような技術は、当業者には知られている。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning “A Laboratory Manual 2nd Ed.(Cold Spring Harbor,NY,1989);F.M.Ausubel et al.Current Protocols in Molecular Biology (Green Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.,New York)を参照されたい。
定義
本発明の説明および添付の特許請求項において使用する単数形である「1つの」および「その」は、その状況が明らかに他のことを示唆していない限り、複数形を同様に含むことが意図されている。
本明細書で使用する「および/または」は、1つまたは複数の関連する列挙した項目の任意およびすべての可能性のある組み合わせ、ならびに代替用語(「または」)において解釈される場合の組み合わせの欠如を指し、それらを包含する。
さらに、本発明は、本発明の一部の実施形態において、本明細書に記載した任意の特徴もしくは特徴の組み合わせを排除もしくは削除できることもまた意図している。
本明細書で使用する用語のタンパク質もしくはヒストン「基質」は、酵素反応において反応生成物を生成するために作用する出発試薬を指す。本発明によると、タンパク質もしくはヒストン基質は、デメチラーゼによって直接的に(代表的には活性部位に結合して、酵素によって触媒される化学反応を受けることによって)作用される、または酵素によって作用される前に最初に修飾されることが可能である。
本明細書で使用する用語「JHDMタンパク質」および「JmjCドメインを含むデメチラーゼ」(および類似用語)は、任意のJmjCドメイン含有デメチラーゼ(ヒストンデメチラーゼを含む)を包含し、これは限定されることなく、JHDM1ファミリー、JHDM2ファミリー、JHDM3[JMJD2]ファミリー、PHF2/PHF8ファミリー、JARIDファミリー(例、制限なくRBP2[JARID1A]、JARID1B[PLU1]、JARID1C[SMCX]およびJARID1D[SMCY]を含むJARID1サブファミリーならびにJARID2サブファミリー)、UTX/UTYファミリー、ならびにJmjCドメイン単独ファミリー(MINA53/NO66サブファミリー、JMJD5サブファミリー、PLA2G4Bサブファミリー、FIHサブファミリー、HSPBAP1サブファミリー、LOC339123サブファミリー、PTDSRサブファミリーおよびJMJD4サブファミリーを含む)(例えば、Klose et al.,(2006)Nature Reviews/Genetics 7:715−727を参照されたい)内のタンパク質を含み、そして実質的デメチラーゼ活性(例、天然タンパク質と比較して少なくとも約60%、75%、80%、85%、90%、95%以上のデメチラーゼ活性)を維持している上記のいずれかの変異体および機能的フラグメントをさらに含む。
本発明のデメチラーゼタンパク質は、哺乳動物(例、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌなど)、昆虫(例、ショウジョウバエ(Dorosophila)、鳥類、真菌、植物、酵母(例、S. pombeもしくはS. cerevisiae)、線虫(C. elegans)、ゼブラフィッシュ(D.rerio)など、ならびに対立遺伝子変異、アイソフォーム、スプライス変異体などを制限なく含む、任意の対象の種に由来してもよい。デメチラーゼ配列は、さらに全体的もしくは部分的に合成であってよい。
特定の実施形態では、JMHDタンパク質の機能的フラグメントもしくは変異体は、JmjCドメインを含み、そして任意選択により、JmjNドメイン、Tudorドメイン、ジンクフィンガードメイン(例、Zf−CXXCモチーフおよび/またはZf−C2HC4モチーフ)、ジンクフィンガー様ドメイン、PHDドメイン、FBOXドメイン、テトラトリコペプチドリピート(TPR)、AT−リッチインタラクティブドメイン(Arid/Bright)、多重コイルモチーフおよび/またはロイシンリッチリピート(LRR)ドメインをさらに含む。JmjCドメインは、Fe(II)および/またはα−ケトグルタレートと配位化するアミノ酸残基を含んでいてよく、それらのアミノ酸はJmjCドメイン内で自然発生することがある、またはそれらの変異体であってよい(例えば、実施例の項およびKlose et al.,(2006)Nature Reviews/Genetics 7:715−727を参照されたい)。
例えば、JHDM1タンパク質の機能的フラグメントもしくは変異体は、JmjCドメインおよび追加して、LRR、FBOXドメイン、PHDドメインおよび/またはジンクフィンガードメインを含んでもよい。
代表的な実施形態では、PHF2/PHF8ファミリータンパク質の機能的フラグメントもしくは変異体は、JmjCドメインおよびPHDドメインを含む。
他の代表的な実施形態では、JARIDファミリータンパク質の機能的フラグメントもしくは変異体は、JmjCドメインおよび追加してPHDドメイン、JmjNドメイン、AT−リッチインタラクティブドメイン、および/またはジンクフィンガードメインを含む。
代表的な実施形態では、JHDM3ファミリータンパク質の機能的フラグメントもしくは変異体は、JmjCドメインおよび追加してJmjNドメイン、PHDドメイン、および/またはジンクフィンガードメインを含む。任意選択により、機能的フラグメントもしくは変異体は、Tudorドメインをさらに含む。
代表的な実施形態では、UTX/UTYファミリータンパク質の機能的フラグメントもしくは変異体は、JmjCドメインおよびTPRドメインを含む。
代表的な実施形態では、JHDM2ファミリータンパク質の機能的フラグメントもしくは変異体は、JmjCドメインおよびジンクフィンガー様ドメインを含む。
本明細書で使用する「JHDM1タンパク質」には、ヒトJHDM1AおよびJHDM1Bタンパク質(例えば、実施例の項およびNCBIアクセッション番号NM_012308、BC047371、BC064360、AY409191、NP_036440、AAH47486、AAH47371、AAH64360、NP_115979、NP_001005366、NM_032590、NM_001005366、およびBC008735で見いだされるJHDM1AおよびJHDM1Bのタンパク質および核酸配列を参照されたい)、ならびに哺乳動物(例、ラット、マウス)、ツメガエル(Xenopus)、ゼブラフィッシュ(D. rerio)、線虫(C.elegans)、分裂酵母(S. pombe)および出芽酵母(S. cerevisiae)からのホモログ(例えば、NCBIアクセッション番号AAH82636、NP_649864、AAN65291、CAA21872、NP_010971、NM_001001984、NM_001011176、XM_341983、BC076576、AY409193、NP_001001984、AAH57051、NP_001005866、NP_001003953、NP_998332、NP_038938、AAH57622、AAH82040、AAH65090、NM_013910、NM_001005866、NM_001003953、NM_213167、XM_222177、BC057622、BC082040、およびBC065090を参照されたい)由来のホモログを含むがそれらに限定されないホモログ、さらに実質的デメチラーゼ活性(例、天然タンパク質と比較して少なくとも約60%、75%、80%、85%、90%、95%以上のデメチラーゼ活性)を保持している上記の変異体および機能的フラグメントを含むそれらのホモログが含まれる。JHDM1タンパク質についてのこれ以上の説明およびリストについては、Klose et al.(2006)Nature Reviews/Genetics 7:715−727を参照されたい。
本明細書で使用する「JHDM2タンパク質」には、ヒトJHDM2A、JHDM2BおよびJHDM2Cタンパク質(例えば、実施例の項およびNCBIアクセッション番号NP_060903、NP_057688、NP−004232、NM_018433、NM_016604およびNM_004241で見いだされるJHDM2A、JHDM2BおよびJHDM2Cのタンパク質および核酸配列を参照されたい)、ならびに哺乳動物(例、ラット、マウス)、ツメガエル(Xenopus)、およびキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(例えば、NCBIアクセッション番号NP_786940、AAH59264、AAH70558、NP_788611、BC070558、NM_175764、BC059264およびNM_176434を参照されたい)由来のホモログを含むがそれらに限定されないホモログ、さらに実質的デメチラーゼ活性(例、天然タンパク質と比較して少なくとも約60%、75%、80%、85%、90%、95%以上のデメチラーゼ活性)を保持している上記の変異体および機能的フラグメントをさらに含むそれらのホモログが含まれる。JHDM2タンパク質についてのこれ以上の説明およびリストについては、Klose et al.(2006)Nature Reviews/Genetics 7:715−727を参照されたい。
本明細書で使用する「JHDM3タンパク質」には、ヒトJHDM3A、JHDM3B、JHDM3CおよびJHDM3Dタンパク質(例えば、NCBIアクセッション番号NP_055478、NM_014663、NP_055830、NM_015015、AAI04862、BC104861、NP_060509およびNM_018039で見いだされるヒトJHDM3A/JMJD2A、JHDM3B/JMJD2B、JHDM3C/JMJD2CおよびJHDM3D/JMJD2Dのタンパク質および核酸配列を参照されたい)、ならびに哺乳動物、線虫(C. elegans)および出芽酵母(S. cerevisiae)由来のホモログを含むがそれらに限定されないホモログ、さらに実質的デメチラーゼ活性(例えば、天然タンパク質と比較して少なくとも約60%、75%、80%、85%、90%、95%以上のデメチラーゼ活性)を保持している上記の変異体および機能的フラグメントをさらに含むそれらのホモログが含まれる。他の生物体内のホモログは、ルーチン技術によって、例えばNCBIデータベース内のblastサーチによって同定することができる。JHDM3タンパク質についてのこれ以上の説明およびリストについては、Klose et al.(2006)Nature Reviews/Genetics 7:715−727を参照されたい。
本明細書で使用する「JARIDタンパク質」には、JARID1サブファミリー(例、RBP2[JARID1A]、JARID1B[PLU1]、JARID1C[SMCX]およびJARID1D[SMCY]タンパク質)およびJARID2サブファミリー(例えば、NCBIアクセッション番号NM_001042603、NM_005056、NM_006618、BC054499、NM_004653およびBC046246で見いだされるヒトRBP2、JARID1B、JARID1C、JARID1DおよびJARID2タンパク質のタンパク質および核酸配列を参照されたい)内のタンパク質、ならびに哺乳動物(例、イヌ、マウス)、キイロショウジョウバエ(D. melanogaster)(例えば、Lid)、分裂酵母(S. pombe)、出芽酵母(S. cerevisiae)、線虫(C. elegans)(例えば、NCBIアクセッション番号NM_078762、NM164671、NM_001031029、NM_001048032、NM_013668、およびNM_011419を参照されたい)由来のホモログを含むがそれらに限定されないホモログ、さらに実質的デメチラーゼ活性(例えば、天然タンパク質と比較して少なくとも約60%、75%、80%、85%、90%、95%以上のデメチラーゼ活性)を維持している上記の変異体および機能的フラグメントを含むそれらのホモログが含まれる。他の有機体内のホモログは、ルーチン技術によって、例えばNCBIデータベース内のblastサーチによって同定することができる。JARIDタンパク質についてのこれ以上の説明およびリストについては、Klose et al.(2006)Nature Reviews/Genetics 7:715−727を参照されたい。
本明細書で使用する「Hairlessタンパク質」には、ヒトタンパク質(例えば、NCBIアクセッション番号CAB86602、CAB87577、NP_060881、およびAAH67128を参照されたい)ならびに哺乳動物(例、ラット、マウス、ブタ、ヒツジ)およびショウジョウバエ(Drosophila)(例えば、NCBIアクセッション番号NP_077340、AAN05753、AAP33389、CAB38221およびCAA47664を参照されたい)由来のホモログを含むがそれらに限定されないホモログ、さらに実質的活性(例、天然タンパク質と比較して少なくとも約60%、75%、80%、85%、90%、95%以上のデメチラーゼ活性)を保持している上記の変異体および機能的フラグメントをさらに含むそれらのホモログが含まれる。
JmjCタンパク質についてのこれ以上の説明については、Klose et al.(2006)Nature Reviews/Genetics 7:715−727を参照されたい。
本発明の実践において使用するための「デメチラーゼ」もしくは「タンパク質デメチラーゼ」は、JmjCドメインを含み、メチル−リジンもしくはメチル−アルギニンデメチラーゼであってよい。特定の実施形態では、デメチラーゼは、ヒストンデメチラーゼ、例えばヒストンH3もしくはH4デメチラーゼである。例えば、H3デメチラーゼは、H3−K4、H3−K9、H3−K27、H3−K36および/またはH3−K79を脱メチル化することができる。また別の代替案として、デメチラーゼは、ヒストンH4−K20を脱メチル化することができる。デメチラーゼは、モノメチル化、ジメチル化、および/またはトリメチル化基質を脱メチル化することができる。さらに、ヒストンデメチラーゼは、メチル化コアヒストン基質、モノヌクレオソーム基質、ジヌクレオソーム基質および/またはオリゴヌクレオソーム基質、ペプチド基質および/またはクロマチンに(例えば、細胞系アッセイにおいて)作用することができる。
本明細書で使用する用語「調節する」もしくは「調節」またはそれらの文法的変形は、特定活性における増強(例、増加)または阻害(例、減少)を指す。
用語「増強」、「増強する」もしくは「増強するステップ」またはそれらの文法的変形は、特定活性における増加(例、少なくとも約1.1倍、1.25倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、8倍、10倍、12倍、もしくは15倍以上さえの増加)を指す。
本明細書で使用する用語「阻害」、「阻害する」もしくは「減少」、「減少する」またはそれらの文法的変形は、少なくとも約10%、25%、35%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、95%以上の特定活性における減少もしくは縮小を指す。特定の実施形態では、阻害もしくは減少は、検出可能な活性を全くまたは基本的に(すなわち、例えば約10%もしくは5%未満さえのわずかな量しか)生じさせない。
用語「治療する」、「治療するステップ」もしくは「〜の治療」(または文法的に等価の用語)は、被験者の状態の重症度が減少する、もしくは少なくとも部分的に改善もしくは緩和されること、および/または少なくとも1つの臨床症状における一部の軽減、緩和もしくは減少が達成される、および/または状態の進行における遅延および/または疾患もしくは疾病の発生の予防もしくは遅延が生じることを意味している。そこで、用語「治療する」、「治療するステップ」もしくは「〜の治療」(または文法的に等価の用語)は、予防的および治療的レジメンの両方を指す。
タンパク質脱メチル化アッセイ
本発明者らは、新規な脱メチル化機序を発見し、反応生成物(例えば、ホルムアルデヒドおよび/またはコハク酸塩)の検出に基づいて新規なデメチラーゼアッセイを開発した。特定の実施形態では、本発明は、組成物中のデメチラーゼ活性を検出する方法であって、(a)メチル化タンパク質基質の脱メチル化のために十分な条件下で、前記組成物を(i)メチル化タンパク質基質、(ii)Fe(II)および(iii)α−ケトグルタレートに接触させるステップと、(b)前記脱メチル化反応からのホルムアルデヒドおよび/またはコハク酸の遊離を検出するステップであって、前記ホルムアルデヒドおよび/またはコハク酸の遊離がデメチラーゼ活性の指標であるステップとを含む方法を提供する。本方法は、限定されることなく、デメチラーゼを含有することが知られている組成物のデメチラーゼ活性についてのアッセイとして、または組成物がデメチラーゼを含有するかどうかを決定するための、任意の目的のために実践できる。
デメチラーゼを含有する、または含有することが疑われる任意の適切なサンプルを評価することができる。例えば、サンプルは、タンパク質画分、細胞抽出物、および/または細胞抽出物に由来するタンパク質画分であってよい。細胞抽出物は、さらに、核抽出物、リソソーム抽出物、葉緑体抽出物、エンドソーム抽出物および/または細胞質ゾル抽出物を含むがそれらに限定されない特定の細胞内コンパートメントに由来してよい。
本発明は、さらにまた組成物中のデメチラーゼを同定および/または単離するために実践することができ、本方法は、(a)メチル化タンパク質基質の脱メチル化のために十分な条件下で、前記組成物を(i)メチル化タンパク質基質、(ii)Fe(II)および(iii)α−ケトグルタレートに接触させるステップと、(b)前記脱メチル化反応からのホルムアルデヒドおよび/またはコハク酸の遊離を検出するステップであって、前記ホルムアルデヒドおよび/またはコハク酸の遊離がデメチラーゼ活性の指標であるステップと、任意選択的に(c)前記精製プロセス中のデメチラーゼ活性を追跡するために上記のステップ(a)および(b)の1回または複数回の繰返しが付随してよい、1つまたは複数のタンパク質精製ステップとを含む。さらに、精製されたタンパク質は、任意選択的に部分的もしくは完全にシーケンシングすることができる。
また別の態様として、本発明は、デメチラーゼ活性を検出する方法であって、(a)前記メチル化タンパク質基質の脱メチル化のために十分な条件下で、タンパク質を(i)メチル化タンパク質基質、(ii)Fe(II)、および(iii)α−ケトグルタレートに接触させるステップと、(b)前記脱メチル化反応からのホルムアルデヒドおよび/またはコハク酸の遊離を検出するステップであって、前記ホルムアルデヒドおよび/またはコハク酸の遊離がデメチラーゼ活性の指標であるステップとを含む方法を提供する。本方法は、限定されることなく、公知のタンパク質デメチラーゼのデメチラーゼ活性についてのアッセイとして、またはタンパク質がデメチラーゼであるかどうかを決定するための、任意の目的のために実践できる。
上記に記載した方法の特定の実施形態では、反応混合物はさらにアスコルビン酸塩を含む。
本方法は、細胞系アッセイもしくは無細胞系アッセイとして実践できる。さらに、本発明は、任意のデメチラーゼを、その存在を決定するため、同定するため、および/または単離するために実施することができる。特定の実施形態では、デメチラーゼは、メチル−リジンデメチラーゼおよび/またはメチル−アルギニンデメチラーゼである。本発明の特定の態様によると、デメチラーゼはヒストンデメチラーゼであり、そしてさらにヒストンH3デメチラーゼ(例、H3−K4、H3−K9、H3−K27、H3−K36および/またはH3−K79デメチラーゼ)および/またはヒストンH4デメチラーゼ(例、H4−K20デメチラーゼ)であってよい。適切なメチル化ヒストン基質には、メチル化コアヒストン基質、モノヌクレオソーム基質、ジヌクレオソーム基質および/またはオリゴヌクレオソーム基質、ペプチド基質および/またはクロマチン(例えば、細胞系アッセイにおいて)が含まれるがそれらに限定されない。
メチル化タンパク質もしくはヒストン基質は、単一のリジンもしくはアルギニン残基において1つまたは複数のメチル基をさらに含むことができる(例、モノメチル化、ジメチル化および/またはトリメチル化基質)。
特定の実施形態では、メチル化ヒストン基質は、詳細にはモノメチル化、ジメチル化および/またはトリメチル化H3−K36基質であってもよいメチル化H3−K36基質を含んでもよい。
他の代表的な実施形態では、メチル化ヒストン基質は、詳細にはモノメチル化、ジメチル化および/またはトリメチル化H3−K9基質であってもよいメチル化H3−K9基質を含んでもよい。
他の代表的な実施形態では、メチル化ヒストン基質は、詳細にはモノメチル化、ジメチル化および/またはトリメチル化H3−K4基質であってよいメチル化H3−K4基質を含んでもよい。
本発明のこの態様によると、脱メチル化は、反応生成物、例えばホルムアルデヒドおよび/またはコハク酸塩の遊離を直接的または間接的のいずれかで検出するステップによって評価できる。特定の実施形態では、ホルムアルデヒドの遊離を検出するステップは、ホルムアルデヒドを3,5−ジアセチル−1,4−ジヒドロルチジン(DDL)へ変換させ、そして例えば放射標識されたDDL(例、3H−DDL)を検出することによってDDLを検出するステップを含む。例えば、出発基質は、標識された反応生成物(例、ホルムアルデヒドおよび/またはコハク酸塩)が脱メチル化反応によって遊離するように標識することができる。例えば、タンパク質もしくはヒストン基質は、3H−SAM(S−アデノシルメチオニン)を用いてメチル化することができるが、これは脱メチル化反応において3H−ホルムアルデヒドの遊離を生じさせ、直接的に検出できる、またはその後に検出できる3H−DDLへの変換によって検出できる。
ホルムアルデヒドおよび/またはコハク酸塩などの反応生成物は、当分野における他の任意の適切な方法、例えば、質量分析法、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、イムノアッセイ、電気泳動法など、または上記の任意の組み合わせによって検出することができる。例えば、ホルムアルデヒドおよび/またはコハク酸塩は、質量分析法によって(例えば、ホルムアルデヒドのプロトン化形の検出によって、またはコハク酸の検出によって)検出することができる。
本発明者らは、JmjCドメインを含むデメチラーゼのファミリーを同定した。そこで、本発明は、メチル化タンパク質を脱メチル化する方法であって、脱メチル化のために十分な条件下で、前記メチル化タンパク質を、JmjCドメインを含むデメチラーゼに接触させるステップを含む方法を包含する。さらに、デメチラーゼとしてのJmjCドメイン含有タンパク質の使用も包含される(例、実験用試薬として)。特定の実施形態では、デメチラーゼはリジンデメチラーゼであり、タンパク質はリジン残基上でメチル化されている。デメチラーゼはヒストンデメチラーゼであってよく、メチル化タンパク質はメチル化ヒストン(例、ヒストンH3もしくはH4)であってもよい。適切なメチル化ヒストン基質には、メチル化コアヒストン基質、モノヌクレオソーム基質、ジヌクレオソーム基質および/またはオリゴヌクレオソーム基質、ペプチド基質および/またはクロマチンが含まれるが、それらに限定されない。さらに、メチル化タンパク質もしくはヒストンは、単一のリジンもしくはアルギニン残基(例、モノメチル化、ジメチル化および/またはトリメチル化タンパク質もしくはヒストン)で1つまたは複数のメチル基を含むことができる。代表的な実施形態では、メチル化タンパク質は、詳細にはモノメチル化、ジメチル化および/またはトリメチル化H3−K36であってよいメチル化H3−K36を含み、そしてデメチラーゼはH3−K36デメチラーゼである。他の実施形態では、メチル化タンパク質は、詳細にはモノメチル化、ジメチル化および/またはトリメチル化H3−K9であってもよいメチル化H3−K9を含み、そしてデメチラーゼはH3−K9デメチラーゼである。他の例示的な実施形態では、メチル化タンパク質は、詳細にはモノメチル化、ジメチル化および/またはトリメチル化H3−K4であってもよいメチル化H3−K4を含み、そしてデメチラーゼはH3−K4デメチラーゼである。
本発明の一部の典型的な実施形態では、デメチラーゼはJHDM1タンパク質である。本発明のこの態様によると、メチル化タンパク質基質は、メチル化H3−K36および任意選択的にモノメチル化および/またはジメチル化H3−K36であってもよい。
または、デメチラーゼはJHDM2タンパク質(例、JHDM2A)であってよい。本発明のこの態様によると、メチル化タンパク質基質は、メチル化H3−K9および任意選択的にモノメチル化および/またはジメチル化H3−K9であってもよい。
他の実施形態では、デメチラーゼはJHDM3タンパク質(例、JDHM3A)であってよい。本発明のこの態様によると、メチル化タンパク質基質は、メチル化H3−K9および/またはH3−K36であってよく、ならびに任意選択的にモノメチル化、ジメチル化および/またはトリメチル化H3−K9および/またはH3−K36である。
さらに他の代表的な実施形態では、デメチラーゼはJARIDタンパク質(本明細書に記載するように、例えば、RBP2および/またはJARID1B)である。本発明のこの態様によると、メチル化タンパク質基質は、メチル化H3−K4および任意選択的にモノメチル化、ジメチル化および/またはトリメチル化H3−K4であってよい。
本発明は、さらに本発明のアッセイを実施するためのキットであって、(a)JmjCドメインを含むデメチラーゼと、(b)脱メチル化反応を実施するためのJmjCドメイン含有タンパク質の使用方法についての説明書と、任意選択的に、脱メチル化反応を実施するためにJmjCドメイン含有タンパク質を使用するための追加の試薬もしくは装置とを含むキットも包含する。特定の実施形態では、JmjCドメイン含有タンパク質は、JHDM1タンパク質、JDHM2タンパク質および/またはJHDM3タンパク質である。本キットは、任意選択的に、Fe(II)、α−ケトグルタレートもしくはアスコルビン酸塩、または上記の任意の組み合わせを含んでもよい。本キットは、3H−SAMをさらに含んでもよい。
一部の実施形態では、本キットは、ヒストン基質をさらに含む。ヒストン基質は、ヒストンH3、任意選択的に、H3−K36(例、モノメチル、ジメチルおよび/またはトリメチルH3−K36)および/またはH3−K9(例、モノメチル、ジメチルおよび/またはトリ−メチルH3−K9)を含んでもよい。適切なヒストン基質には、メチル化コアヒストン基質、モノヌクレオソーム基質、ジヌクレオソーム基質、オリゴヌクレオソーム基質および/またはペプチド基質が含まれるが、それらに限定されない。
本発明者らは、JmjCドメインを含む新規なデメチラーゼファミリーを同定し、機能的に特性解析した。したがって、また別の態様として、本発明は、タンパク質を候補デメチラーゼであると同定し、任意選択的にリジンデメチラーゼであると同定する方法であって、前記タンパク質内のJmjCドメインの存在を決定するステップ(例えば、デメチラーゼ活性に関連するタンパク質[またはコードする核酸]を同定し、次に前記タンパク質をシーケンシングするステップによって、または前記アミノ酸もしくは知られているタンパク質の核酸コーディング配列を評価するステップによって)を含む方法を提供する。特定の実施形態では、本方法は、候補ヒストンデメチラーゼを同定し、任意選択的にH3−K36デメチラーゼ、H3−K9デメチラーゼおよび/またはH3−K4デメチラーゼを同定するために実践される。本方法は、例えば本発明による、そして本明細書に記載したようなデメチラーゼアッセイを使用することによって、候補デメチラーゼの酵素活性および/または基質特異性を確証するためのステップをさらに含むことができる。
スクリーニング法
本発明は、JmjCドメインを含むデメチラーゼのデメチラーゼ活性を調節する化合物を同定する方法をさらに提供する。任意選択により、本方法は、ヒストンデメチラーゼ(例、ヒストンH3もしくはH4デメチラーゼ)のデメチラーゼ活性を調節する化合物を同定するために実践することができる。
デメチラーゼ活性を検出または決定するための任意の適切なアッセイは、デメチラーゼ活性を調節する化合物を同定するために使用することができる。
特定の実施形態では、本発明は、JmjCドメインを含むデメチラーゼのデメチラーゼ活性を調節する化合物を同定する方法であって、前記デメチラーゼをメチル化タンパク質基質と試験化合物の存在下で接触させるステップと、前記タンパク質基質の脱メチル化のレベルを脱メチル化のために十分な条件下で検出するステップであって、前記試験化合物の非存在下における脱メチル化のレベルと比較した前記タンパク質基質の脱メチル化における変化は、前記試験化合物が前記デメチラーゼのデメチラーゼ活性のモジュレーターであることを示唆するステップとを含む方法を提供する。特定の実施形態では、デメチラーゼはヒストンデメチラーゼであり、脱メチル化タンパク質基質は、メチル化ヒストン基質である。メチル化ヒストン基質は、メチル化H3−K36、H3−K9および/またはH3−K4を含むメチル化ヒストンH3であってよい。メチル化ヒストン基質は、リジンもしくはアルギニンであってよい特定残基でモノメチル化、ジメチル化もしくはトリメチル化されてよい。1つの典型的な基質は、モノメチル化、ジメチル化および/またはトリメチル化H3−K36である。また別の例示的な基質は、モノメチル化、ジメチル化および/またはトリメチル化H3−K9である。また別の典型的な基質は、モノメチル化、ジメチル化および/またはトリメチル化H3−K4である。さらに、メチル化ヒストン基質は、メチル化コアヒストン基質、モノヌクレオソーム基質、ジヌクレオソーム基質および/またはオリゴヌクレオソーム基質、ペプチド基質および/またはクロマチン(例えば、細胞系アッセイにおいて)であってよい。
本発明は、任意のJHDMタンパク質、すなわちJmjCドメインを含むデメチラーゼ(ヒストンデメチラーゼを含む)を用いて実践することができる。特定の実施形態では、JHDMタンパク質は、JHDM1タンパク質、JHDM2タンパク質、JHDM3タンパク質、JARIDタンパク質(例、RBP2、JARID1B[PLU1]、JARID1C[SMCX]、およびJARID1D[SMCY]などのJARID1サブファミリータンパク質またはJARID2サブファミリータンパク質)、UTX/UTYタンパク質、PHF2/PHF8サブファミリータンパク質、またはJmjCドメイン単独サブファミリータンパク質である。
本発明によると、「脱メチル化のレベルを検出するステップ」は、当分野において知られている任意の方法によって実施することができる。特定の実施形態では、脱メチル化は直接的に(例えば、ホルムアルデヒドおよび/またはコハク酸塩などの脱メチル化反応の反応生成物を検出するステップによって)検出することができる。または、メチル化のレベルを検出して、それから脱メチル化のレベル(例えば、標識化メチル化タンパク質(例えば、3H−SAMを用いてメチル化された)を検出することによって、メチル化タンパク質を検出することによって、またはメチル化タンパク質に対して特異的な抗体を用いることによって)決定することができる。
メチル化タンパク質(ヒストンを含む)基質は、当分野において知られている任意の方法によって調製することができる。例えば、ヒストンは、対象の特定メチル化部位に対して特異的な可能性があるヒストンメチルトランスフェラーゼを用いてメチル化することができる。典型的なヒストンメチルトランスフェラーゼには、EZH2、SET7、G9a、PRMT1、Set2、hDOT1L、Dim5、Suv39H1およびSuv4−20h1が含まれる。一部の実施形態では、タンパク質もしくはヒストン基質はその天然形においてメチル化されている。
試験化合物の非存在下における脱メチル化のレベルと比較した脱メチル化活性の減少は、試験化合物がデメチラーゼのデメチラーゼ活性の阻害剤であることを示唆する。これとは反対に、試験化合物の非存在下における脱メチル化のレベルと比較した脱メチル化活性の増加は、試験化合物がデメチラーゼのデメチラーゼ活性の活性剤であることを示唆する。
デメチラーゼのデメチラーゼ活性の調節は、当分野において知られている任意の方法によって、例えば本明細書に記載した脱メチル化アッセイであって、前記デメチラーゼをタンパク質基質、Fe(II)、α−ケトグルタレート、および任意選択によりアスコルビン酸塩と接触させるステップと、ならびに質量分析法もしくは当分野において知られている他の任意の方法によって標識(例、放射能)を検出することによって反応生成物(ホルムアルデヒドおよび/またはコハク酸塩)の遊離を検出するステップとを含むアッセイによって決定することができる。
または、タンパク質のメチル化形に対して特異的である抗体は、例えば、免疫沈降法、ELISAによって脱メチル化のレベルを検出するために、またはウェスタンブロット法においてバンドを同定するために使用できる。タンパク質のメチル化状態は、モノメチル化、ジメチル化およびトリメチル化タンパク質に対して特異的な抗体を用いて決定することもできる。モノメチル化、ジメチル化およびトリメチル化H3−K36、H3−K9およびH3−K4に対する抗体は、本明細書に記載されている。
さらにまた別の可能性として、標識メチル基を用いてメチル化されたタンパク質基質は、表面(例、マルチウェルプレートの底面、フィルター、マトリックスもしくはビーズ)に結合させることができる。結合したタンパク質基質は、デメチラーゼ、試験化合物、および補因子(例、Fe(II)およびα−ケトグルタレート、ならびに任意選択によりアスコルビン酸塩)と接触させられてよい。脱メチル化は、その後に標識の遊離、または基質に結合した標識の減少によって決定することができる。
放射標識(例、3H)、蛍光標識、比色標識などを含むが、それらに限定されない任意の検出可能な標識は本発明と一緒に使用できる。または、脱メチル化は、本明細書に記載したように、ホルムアルデヒドおよび/またはコハク酸塩の遊離を検出することによって検出することができる。
本発明のスクリーニング法の特定の実施形態では、試験化合物の非存在下で検出されたデメチラーゼ活性のレベルと比較したデメチラーゼ活性の(例えば、ホルムアルデヒド遊離を検出することによって検出される)減少は、試験化合物が、例えば試験化合物の非存在下における活性のレベルと比較して、デメチラーゼのデメチラーゼ活性の阻害剤であることを示唆する。
他の実施形態では、試験化合物の非存在下で検出されたデメチラーゼ活性のレベルと比較したデメチラーゼ活性の増強は、試験化合物が、試験化合物の非存在下における活性のレベルと比較して、デメチラーゼのデメチラーゼ活性の活性剤であることを示唆する。
スクリーニングの第1ラウンドにおいて同定された阻害剤もしくは活性剤は、本明細書に記載したデメチラーゼアッセイもしくは他の任意の適切なアッセイを用いてIC50および特異性をさらに決定するために任意選択により評価することができる。相当に低いIC50を有して対象のタンパク質基質に対する特異性を示す化合物は、さらに組織培養中および/または有機体全体においてそれらがデメチラーゼ活性、細胞増殖、毛髪の成長および/または毒性に及ぼすインビボ作用を決定するために分析することができる。
本スクリーニング法は、細胞系の方法又は無細胞系の方法であってもよい。細胞系の方法は、培養細胞または有機体全体において実施することができる。代表的な実施形態では、本方法は、デメチラーゼのモジュレーターを同定するための高スループットスクリーニング能力を提供する。具体的に示すと、本明細書に開示した方法にしたがって使用するための細胞系高スループットスクリーニングアッセイには、DNA合成および翻訳後プロセスなどの生合成プロセスが超小型の細胞系アッセイにおいて監視される、Stockwell et al.((1999)Chem.Bio.6:71−83)によって記載されたアッセイが含まれる。
デメチラーゼ活性を調節する化合物は、デメチラーゼに結合する化合物を同定するステップによって同定することもできる。候補タンパク質結合分子についての低分子ライブラリーをスクリーニングするための高スループットの無細胞法は当分野においてよく知られ、デメチラーゼに結合する、およびデメチラーゼ活性を調節する、および/またはメチル化タンパク質基質に結合する分子を同定するために使用できる。例えば、HeLa細胞から精製されたタンパク質基質、遊離ヒストンもしくはヌクレオソーム基質は、マルチウェルプレートもしくは他の適切な表面上に塗布して、デメチラーゼを含有する反応ミックスを前記基質に加えることができる。デメチラーゼの添加の前に、同時に、および/または後に、試験化合物は基質を含有するウェルもしくは表面(例、フィルター、ウェル、マトリックス、ビーズなど)へ加えることができる。反応混合物は、未結合もしくは弱く結合した試験化合物を除去するために任意選択により生理的条件を反映する溶液を用いて洗浄することができる。または、試験化合物を固定化し、デメチラーゼの溶液をウェル、マトリックス、フィルター、ビーズもしくはその他の表面と接触させることができる。試験化合物がデメチラーゼの基質への結合を調節する能力は、標識化(例、放射標識化もしくは化学発光)または競合的ELISAアッセイを含むがそれらに限定されない任意の方法によって決定することができる。
本明細書に提供した方法にしたがってスクリーニングすることのできる試験化合物は、合成もしくは半合成化学薬品、精製天然生成物、タンパク質、抗体、ペプチド、ペプチドアプタマー、核酸、オリゴヌクレオチド、炭水化物、脂質、またはその他の有機もしくは無機の低分子もしくは高分子を含むがそれらに限定されない多数の化学クラスを包含する。低分子は、そのような分子が経口投与後により容易に吸収され、潜在的抗原決定基をほとんど有していないために望ましい。非ペプチド物質もしくは低分子ライブラリーは、一般に合成アプローチによって調製されるが、しかし酵素を使用する生合成方法における近年の進歩は、さもなければ化学的に合成するのが困難である化学ライブラリーを調製することを可能にできる。
低分子ライブラリーは、様々な商業事業体、例えばSPECS社およびBioSPEC B.V.社(オランダ国ライスワイク)、Chembridge Corporation社(カリフォルニア州サンディエゴ)、Comgenex USA社(ニュージャージー州プリンストン)、Maybridge Chemical社(英国コーンウォール)、およびAsinex社(ロシア国モスクワ)から入手できる。1つの代表的実施例は、ChemBridge Corporation社(92127カリフォルニア州サンディエゴ、16981 Via Tazon,Suite G)から入手できるDIVERSet(商標)として知られている。DIVERSet(商標)は、手作業により合成された10,000〜50,000個の薬物様低分子を含有している。これらの化合物は、最小数の化合物との最大のファーマコフォア多様性をカバーし、高スループットもしくは低スループットいずれかのスクリーニングのために適切である「汎用」ライブラリーを形成するために事前に選択される。追加のライブラリーについての説明については、例えば、Tan et al.,(1998)Am.Chem Soc.120:8565−8566;およびFloyd et al.,(1999)Prog Med Chem 36:91−168を参照されたい。他の市販で入手できるライブラリーは、例えば、AnalytiCon USA社(私書箱5926号、77325テキサス州キングウッド);3−Dimensional Pharmaceuticals社(19341−1151ペンシルバニア州エクストン、665 Stockton Drive,Suite 104);Tripos社(63144−2913ミズーリ州セントルイス、1699 Hanley Rd.)などから入手できる。本発明の特定の実施形態では、本方法は、当分野においてよく知られている技術を用いて、例えばマルチウェルプレート内で、サンプル調製および分注用のロボット光学を用いて、高スループットフォーマットで実施される。様々なスクリーニング法の代表的な実施例は、例えば、米国特許第5,985,829号、第5,726,025号、第5,972,621号、および第6,015,692号において見いだすことができる。当業者は、適切にこれらの方法を容易に修飾および適応させることができる。
本発明のスクリーニングアッセイにおいては、他の様々な試薬を含むことができる。これらには、最適なタンパク質−タンパク質結合および/または酵素活性を促進するため、および/または非特異的もしくはバックグラウンド相互作用を減少させるために使用できる、塩、ATP、天然タンパク質、例えばアルブミン、界面活性剤などのような試薬が含まれる。さらに、別の面でプロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤などのアッセイの有効性を向上させる試薬もまた使用できる。結合および/または酵素活性を許容する構成成分の混合物は、任意の順序で加えることができる。
ヒストンメチルトランスフェラーゼは、がんに関連付けられてきたが、これはヒストンデメチラーゼの酵素活性ががん治療のための医薬品開発についての良好な標的でもあることを示唆している。したがって、本発明は、がんを治療するための候補化合物を同定する方法であって、JmjCドメインを含むヒストンデメチラーゼをメチル化ヒストン基質と試験化合物の存在下で接触させるステップと、前記ヒストン基質の脱メチル化のレベルを脱メチル化のために十分な条件下で検出するステップであって、前記試験化合物の非存在下における脱メチル化のレベルと比較した前記タンパク質基質の脱メチル化における変化は、前記試験化合物ががんを治療するための候補化合物であることを示唆するステップとを含む方法もまた提供する。
典型的ながんには、乳がん;骨肉腫;血管肉腫;線維肉腫および他の肉腫;白血病;リンパ腫;洞腫瘍;卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、尿管がん、膀胱がん、前立腺がんおよびその他の尿生殖器がん;結腸、食道および胃がんならびにその他の消化器がん;肺がん;骨髄腫;膵臓がん;肝臓がん;腎臓がん;内分泌がん;皮膚がんなどの悪性障害;ならびに神経膠腫および神経芽細胞腫を含む、悪性もしくは良性の脳もしくは中枢神経および末梢神経系(CNS)腫瘍が含まれる。
特定の実施形態では、乳がん細胞の増殖を減少させるため、および/または乳がんを治療するための化合物を同定するためのJARID1B[PLU1]標的に関する。
ヒストン基質は、デメチラーゼ活性のモジュレーターを同定する方法に関して上述したとおりである。同様に、脱メチル化のレベルは、上述したように当業者に知られている任意の方法によって決定できる。
毛髪の成長を制御するHairlessタンパク質は、JmjCドメイン含有タンパク質である。このタンパク質は、全身性脱毛症(alopecia universalis)に罹患した個人においては突然変異している。そこで、Hairlessが同様にデメチラーゼである場合は、Hairlessのデメチラーゼ活性を調節する化合物は脱毛を治療するために同定することができる。したがって、本発明は、脱毛を治療するための候補化合物を同定する方法であって、Hairlessタンパク質をメチル化タンパク質基質と試験化合物の存在下で接触させるステップと、前記タンパク質基質の脱メチル化のレベルを脱メチル化のために十分な条件下で検出するステップであって、前記試験化合物の非存在下における脱メチル化のレベルと比較した前記タンパク質基質の脱メチル化における変化は、前記試験化合物が脱毛を治療するための候補化合物であることを示唆するステップとを含む方法もまた提供する。特定の実施形態では、本発明は、Hairlessのデメチラーゼ活性を活性化して脱メチル化を増加させる化合物を同定するために実践される。
タンパク質基質は、上記のスクリーニング法に関して上述したとおりである。さらに、脱メチル化のレベルを決定する方法は、上述したような当業者に知られている任意の方法によって実施できる。
脱メチル化を調節する方法
本発明は、本発明のスクリーニング法によって同定される化合物をさらに提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、本発明のスクリーニング法によって同定された化合物および医薬上許容される担体を含む医薬製剤を提供する。本発明は、医薬品(例えば、がんもしくは脱毛を治療するための)を調製するための本発明のスクリーニング法によって同定された化合物の使用をさらに提供する。
さらに本発明には、一般に、もしくは1つまたは複数の特異的標的遺伝子に関して細胞内もしくは被験者内における脱メチル化を調節する方法もまた包含される。脱メチル化は、特に限定されることなく、分化;増殖;アポトーシス;腫瘍形成性、白血病誘発もしくはその他の発がん性形質転換事象;脱毛;または性分化を含む様々な細胞機能を制御するために調節することができる。例えば、特定の実施形態では、本発明は、がんを有する、もしくはがんに対するリスク状態にあると考察される被験者において、JmjCドメインを含むデメチラーゼ(例、JHDMタンパク質などのヒストンデメチラーゼ)の活性を調節するステップによってがんを治療する方法を提供する。具体的に示すと、がん遺伝子の発現は、がん遺伝子のH3−K9、H3−K36および/またはH3−K4の脱メチル化を調節することによって抑制できる、および/または腫瘍抑制因子の発現は腫瘍抑制因子遺伝子のH3−K9、H3−K36および/またはH3−K4脱メチル化を調節することによって増加させることができる。本発明によって治療できる典型的ながんは、スクリーニング法に関して上述したとおりである。
また別の態様として、本発明は、JmjCドメインを含むデメチラーゼ(例、JHDMタンパク質などのヒストンデメチラーゼ)の活性を調節することによってステロイドホルモン依存性標的遺伝子(すなわち、ステロイドホルモン受容体の標的である遺伝子)の発現を調節する方法を提供する。ステロイドホルモン依存性標的遺伝子には、アンドロゲン依存性遺伝子、エストロゲン依存性遺伝子、プロゲステロン依存性遺伝子、甲状腺ホルモン依存性遺伝子、ビタミンD依存性遺伝子、および/またはコルチコステロイド依存性標的遺伝子が含まれるが、それらに限定されない。本発明のこの実施形態は、性ステロイドが標的細胞に及ぼす作用を調節するため(例えば、性的成熟および/または二次性徴を調節するため)または、例えばアンドロゲン感受性(例、前立がん)およびエストロゲン感受性(例、乳がん)がんなどのホルモン感受性がんを治療するために実践できる。
本発明者らは、さらにまた多数の多分化能および分化マーカーがJHDM2ノックダウンによってダウンレギュレートされることも発見した。代表的な実施形態では、本発明は、例えば細胞系統決定を調節するために多分化能および分化マーカーの発現を調節する方法を提供する。細胞系統マーカーには、Nanog、Oct4、Lamb1、Hoxb1および/またはStra6が含まれるが、それらに限定されない。そこで、本発明者らは、JmjCドメインを含むデメチラーゼ(例、JHDMタンパク質などのヒストンデメチラーゼ)の活性を調節することによって、多分化能および分化マーカーの発現を調節する方法を提供する。
本発明は、Hairlessタンパク質の活性を調節することによって脱毛を有する、もしくは脱毛のリスク状態にあると考察される被験者における脱毛を治療する方法もまた提供する。特定の実施形態では、本発明は、Hairlessの活性を増強し、それにより標的遺伝子の脱メチル化を増加させるために実践される。
デメチラーゼの活性は、当分野において知られている方法を用いて調節できる。例えば、デメチラーゼの活性は、被験者におけるデメチラーゼの産生を増加させるために前記デメチラーゼをコードする外因性核酸を導入することによって増強させることができる。任意選択により、異種核酸は、天然形と比較して強化された活性を有するデメチラーゼをコードする。さらに、低分子は、デメチラーゼ(内因性および/または外因性コーディング配列由来)の発現および/またはデメチラーゼタンパク質の活性を増強するために投与することができる。
デメチラーゼの活性は、当分野において知られている方法を用いて減少させることができる。例えば、リボザイム、阻害性RNA(例、siRNAもしくはshRNA)、アンチセンスRNA、または阻害性抗体を投与することができる。または、デメチラーゼの発現および/またはデメチラーゼの活性を減少させるために低分子を投与することができる。
本発明を記載してきたが、以下では、同一のことを、例示するためにのみ本明細書に含まれ、本発明を限定することは意図されていない以下の実施例においてより詳細に説明する。
[JHDM1タンパク質を特性解析するための方法]
[H3−K36デメチラーゼ活性およびFlag(登録商標)−JHDM1Aの精製]HeLa S3核タンパク質から核抽出物および核ペレットへの分離ならびにその後の核ペレットタンパク質の可溶化、DEAE52およびP11カラム上の分画は、標準方法にしたがって実施した(Wang,et al.(2001)Science 293:853−857)。BC300[40mMのHEPES−KOH(pH7.9)、0.2mMのEDTA、1mMのDTT、0.2mMのPMSF、および10%グリセロール、300mMのKCl]を用いて溶出したP11画分は、20mM硫酸アンモニウム(BD20)を含有するバッファーD[40mMのHEPES−KOH(pH7.9)、0.2mMのEDTA、1mMのDTT、0.2mMのPMSF、および10%グリセロール]を用いて透析し、45mLのDE5PWカラム(TosoHaas社、ペンシルベニア州モンゴメリービル)にロードした。結合タンパク質は、BD50からBD500への12−カラム容積(cv)線形勾配を用いて溶出させた。140〜185mMの硫酸アンモニウムを用いて溶出させた、デメチラーゼ活性を含有する画分を結合し、700mM硫酸アンモニウムへ調整し、その後に22mLのフェニルセファロース(登録商標)カラム(Pharmacia Biotech社、スウェーデン国ウプサラ)へロードした。結合タンパク質は、BD700からBD50への8−cv線形勾配を用いて溶出させた。450〜360mM硫酸アンモニウムから溶出させた活性画分をプールし、0.5mLへ濃縮してその後に24mLのSuperose(登録商標)6ゲル濾過カラム(Pharmacia社)にロードした。Superose(登録商標)6カラムは、BC400(400mMのKClを含むバッファーC)を用いて溶出させた。次に240〜320kDaを用いて溶出させた活性画分を結合し、BC50を用いて200mMのKClへ調整し、その後0.1mLのMonoQ(登録商標)カラム(Pharmacia社)にロードした。結合タンパク質は、BC200からBC500への20−cv線形勾配を用いて溶出させた。カラムからは315〜345mMのKClの活性画分が溶出した。活性画分内のタンパク質を結合し、8〜15%勾配SDS−PAGE内に溶解させた。Coomassie(商標)染色後、タンパク質同定のために候補ポリペプチドを切除した。Flag(登録商標)−JHDM1Aを発現するバキュロウイルスの生成およびSF9細胞から感染させたFlag(登録商標)−JHDM1Aの精製は、確立された方法にしたがって実施した(Cao and Zhang(2004)Mol.Cell.15:57−67)。
[タンパク質の同定および質量分析法による分析]タンパク質の同定のため、候補ポリペプチドをトリプシンにより消化し、タンパク質はよく知られている方法を用いて同定した(Wang,et al.(2004)Nature 431:873−878)。ペプチド基質分析のために、反応混合液のアリコート(1μL)は0.1%蟻酸を用いて100倍に希釈し、Eppendorf(登録商標)ゲル装填チップ内に充填した2μLの床容積のPoros 50R2(PerSeptive Biosystems社、マサチューセッツ州フレーミングハム)逆相ビーズにロードした。ペプチドは、5μLの30%アセトニトリル/0.1%蟻酸を用いて溶出させた。このペプチドプールの画分(0.5mL)は、(Erdjument−Bromage,et al.(1998)J.Chromatogr.A 826:167−181)によって記載されたようにBRUKER(登録商標)UltraFlex(商標)TOF/TOF機器(Bruker Daltonics(登録商標);ドイツ国ブレーメン)を用いるマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)飛行時間(TOF)質量分析法(MS)によって分析した。ホルムアルデヒドおよびコハク酸塩を検出するために、反応混合液は0.1%トリフルオロ酢酸を用いて1:10に希釈し、Applied Biosystems(商標)(カリフォルニア州フォスターシティ)QSTAR(商標)四重極飛行時間機器を用いるナノ−エレクトロスプレー質量分析法(ESI−MS)およびタンデム質量分析法(ESI−MS/MS)によって直接的に分析した。以前に記載された条件(Kast,et al.(2003)Rapid Commun.Mass Spectrom.17:1825−1834)下で、5分間の獲得時間およびProxeon(デンマーク国オーデンセ)ナノスプレーニードルを使用した。最適感受性のために、プロトン化ホルムアルデヒドおよびコハク酸塩の質量だけを四重極によって選択し、飛行時間分析器によって分析した(選択されたイオン監視)。ESI−MS/MSによるコハク酸のフラグメンテーション分析は、確立された方法(Kast,et al.(2003)Rapid Commun.Mass Spectrom.17:1825−1834)を用いて実施した。
[インビトロヒストンデメチラーゼアッセイ]3H標識メチル−ヒストンオクタマーもしくは−オリゴヌクレオソーム基質の調製のために、ヒストンメチルトランスフェラーゼをE.coli(H3−K4のためにはGST−SET7、H3−K9のためにはGST−G9a、H3−K36のためにはCBP−Set2−Flag(登録商標)、H3−K79のためにはGST−hDOT1L、H4−R3のためにはGST−PRMT1、およびH4−K20のためにはGST−Suv4−20h1)、またはSf9細胞(H3−K27のためにはEZH2複合体)中において発現させた。HMTasesは、[3H]−SAMの存在下で、ヒストンオクタマー(SET7、G9a、PRMT1のために)、HeLa細胞から精製したオリゴヌクレオソーム(Set2、hDOT1L、Suv4−20h1のために)、またはニワトリ血(EZH2複合体のため)から精製したオリゴヌクレオソームと一緒にインキュベートした。HMTase反応後、反応混合液はヒストン保存バッファー[10mMのHEPES−KOH(pH7.5)、10mMのKCl、0.2mMのPMSF、および10%グリセロール]中に透析し、ヒストンデメチラーゼアッセイのための基質として使用した。
デメチラーゼアッセイのためには、ヒストンオクタマー、オリゴヌクレオソーム(3H標識もしくは非標識)またはH3−K36メチル化ペプチド基質をタンパク質画分またはヒストン脱メチル化反応バッファー[50mMのHEPES−KOH(pH8.0)、7〜700μMのFe(NH4)2(SO4)2、1mMのα−ケトグルタレート、2mMのアスコルビン酸塩]中の精製Flag(登録商標)−JHDM1Aと一緒に37℃で1〜3時間インキュベートした。反応混合液は、NASH法、ウェスタンブロット法、および質量分析法によって分析した。3H標識ホルムアルデヒドを検出するためには、修正NASH法(Kleeberg and Klinger(1982)J.Pharmacol.Methods 8:19−31)を使用した。TCA沈降法後、等量のNASH試薬(3.89M酢酸アンモニウム、0.1M酢酸、0.2%の2,4−ペンタンジオン)を上清中に加え、この混合液を37℃で50分間にわたりインキュベートした。次に等量の1−ペンタノールをこの反応混合液を用いて抽出した。1−ペンタノール相の放射能はシンチレーション計数によって測定した。ペプチド基質を用いて脱メチル化を検出するために、反応混合液中のペプチドをRPマイクロチップ上で脱塩し、上述したようにMALDI−TOFによって分析した。ウェスタンブロット分析を用いて検出もしくはヒストン脱メチル化するために、脱メチル化反応液はメチル特異的抗体を用いてウェスタンブロット法を受けさせた。
[構築物および抗体]GST−SET7、GST−hDOT1L(1−416)、GST−PRMT1およびEZH2複合体の構成成分をコードするプラスミドは、以前に記載されている(Cao and Zhang(2004)Mol.Cell.15:57−67;Min,et al.(2003)Genes Dev.17:1823−1828;Wang,et al.(2001)Mol.Cell.8:1207−1217;Wang et al.(2001)Science 293:853−857)。GST−G9a(621−1000)、CBP−Set2−Flag(登録商標)(S. pombe)、およびGST−Suv4−20h1をコードするプラスミドは、親切にもShinkai博士、Strahl博士、およびJenuwein博士から各々提供された。Flag(登録商標)−JHDM1A(ヒト)をコードするプラスミドは、I.M.A.G.E.cDNAクローン(5534384)からのPCR増幅によって構築した。全長コーディング配列は、N末端Flag(登録商標)−タグ付きpcDNA3ベクターおよびN末端Flag(登録商標)−タグ付きpFASTBAC(商標)ベクターのNotlおよびXbal部位内へ挿入した。pcDNA3−Flag(登録商標)−JHDM1A(H212A)、JmjC(148〜316aa)ドメイン内の欠失構築物、zf−CXXC(563〜609aa)モチーフ、PHD(619〜676aa)ドメイン、FBOX(893〜933aa)ドメイン、およびLRRs(1000〜1118aa)は、二段階PCRによって生成した。GST−scJHDM1(S. cerevisiae)をコードするプラスミドは、S. cerevisiaeゲノムDNAのPCR増幅によって構築した。GST−scJHDM1(H305A)およびGST−scJHDM1(Y315A)突然変異体は、二段階PCRによって生成した。PCRを通して生成された全構築物は、DNA配列分析によって検証した。
H3モノメチル−K36およびトリメチル−K36に対する抗体は、Abcam(登録商標)(マサチューセッツ州ケンブリッジ)から購入した。H3ジメチル−K36に対する抗体は、K36(下線を引いた)が脱メチル化された合成ペプチド(STGGVKKPHRY−C;配列番号1)の注射によってウサギにおいて生成した。H3ジメチル−K4に対する抗体は、以前に記載されている(Feng,et al.(2002)Curr.Biol.12:1052−1058)。Flag(登録商標)に対する抗体および免疫蛍光法のための二次抗体は、Sigma(商標)(ミズーリ州セントルイス)およびJackson ImmunoResearch Laboratories社(ペンシルベニア州ウェストグローブ)から各々購入した。H3に対する抗体は、親切にもVerreault博士によって提供された。
[哺乳動物細胞中におけるタンパク質発現および免疫精製法]GSTおよびCBP融合タンパク質の全部をE.coli内で発現させ、グルタチオン固定化アガロースビーズ(Sigma(商標))、またはカルモジュリン親和性樹脂(Stratagene(登録商標)、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)上で精製した。EZH2複合体の発現および精製は、知られている方法にしたがって実施した(Cao and Zhang(2004)Mol.Cell.15:57−67)。野生型および変異型Flag(登録商標)−JHDM1Aタンパク質の免疫沈降法のために、COS−7細胞は、製造業者のプロトコールにしたがってFuGENE(商標)6によってプラスミドを用いて一過性でトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後、細胞をリン酸緩衝食塩液(PBS)で洗浄し、その後にプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Applied Science社、ニュージャージー州ナトリー)および1mMのフッ化スルホン酸フェニルメチルを含有する溶解バッファー(20mMのHEPES−NaOH(pH7.5)、3mMのMgCl2、100mMのNaCl、1mMのNa3VO4、10mMのNaF、20mMのβ−グリセロホスフェート、1mMのEGTA、および0.5%のNP−40)を用いて溶解させた。溶解液を遠心分離で排出させ、免疫沈降法のための溶解物の量はタンパク質発現レベルに基づいて調整した。調整した量の細胞溶解液は、4℃で3時間にわたりM2 α−Flag(登録商標)アガロース(Sigma(商標))と一緒にインキュベートした。遠心分離した後、ビーズは溶解バッファーを用いて1回、EDTAを含まないBC50を用いて2回洗浄した。免疫沈降したタンパク質は、デメチラーゼアッセイおよびウェスタンブロット分析のために使用した。
免疫染色。293T細胞を12ウェルプレート内のガラス製カバースリップ上にプレートし、1日間培養した。PBSを用いて洗浄した後、細胞は10分間にわたり4%パラホルムアルデヒド中で固定した。次に細胞は、0.2%のTriton(登録商標)X−100を含有する低温PBSを用いて5分間透過化した低温PBSを用いて1回洗浄した。透過化した細胞は次にブロッキングバッファー(PBS中の1%ウシ血清アルブミン)を用いて3回洗浄し、30分間にわたりブロックし、その後加湿チャンバー内で一次抗体と一緒に1時間にわたりインキュベートした。PBSを用いた3回連続の5分間の洗浄後に、細胞は二次抗体と一緒に1時間にわたりインキュベートした。細胞は次にPBSを用いて洗浄し、PBS中の4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドールジヒドロクロリド(DAPI)を用いて染色した。細胞は再びPBSを用いて2回洗浄し、次に蛍光計数培地(Dako社、デンマーク国グロストラップ)に載せ、蛍光顕微鏡下で視認した。
[1ファミリーのJmjCドメイン含有タンパク質によるヒストン脱メチル化]
[HeLa抽出物中のヒストンデメチラーゼ活性の同定]DNA中の1−メチルアデニン(1−meA)および3−メチルシトシン(3−meC)のメチル基は、酸化的脱メチル化を通してAlkBファミリーのタンパク質によって除去することができる(スキーム1)(Falnes,et al.(2002)Nature 419:178−182;Trewick,et al.(2002)EMBO Rep.6:315−320)。
これは、類似の機序を使用すると、メチル化ヒストンからメチル基を除去できることを示唆した(スキーム2)。
これを証明するために、予測された遊離生成物の1つであるホルムアルデヒドの検出に基づいて1つのインビトロアッセイを開発した。検出感受性を最大化するために、ヌクレオソームヒストン基質は、ヒストンH3リジン36(H3−K36)特異的メチルトランスフェラーゼSet2および[3H]−SAMを用いたインキュベーションによって放射標識した。スキーム3に略述したように、組み込まれていない[3H]−SAMは透析により除去し、次に標識された基質には補因子であるFe(II)およびα−ケトグルタレート(α−KG)の存在下で脱メチル化反応を受けさせた。遊離した[3H]−ホルムアルデヒドを検出するために、本発明者らは、TCA沈降法によって汚染している標識されたヒストンおよびタンパク質を最初に除去した。次に化学反応を通して、本発明者らは予測された反応生成物であるホルムアルデヒドを3,5−ジアセチル−1,4−ジヒドロルチジン(DDL)へ変換させ、これを有機溶媒中で抽出した後にシンチレーション計数によって検出した(スキーム3)。
上述したアッセイ法を使用して、本発明者らは、HeLa核抽出物(NE)および核ペレット(NP)に由来するタンパク質画分を分析した(Wang,et al.(2001)Science 293:853−857)。図1Aに示した結果は、デメチラーゼ活性が核ペレット由来の0.3M P11画分中において富んでいることを示唆している。検出されたこの活性が真のデメチラーゼ活性の結果であるかどうかを確証するために、本発明者らは、予測された補因子および反応条件へのそれの依存性について試験した。図1Bに示した結果は、ホルムアルデヒドの遊離がタンパク質画分の存在(レーン1)だけではなく、補因子であるFe(II)およびα−KG(レーン3および4)もまた必要とすることを証明している。さらに、アスコルビン酸塩もまた、おそらくはFe(III)からFe(II)を再生させる能力のために、最適活性を得るために必要とされる。これらの結果は、0.3M P11画分中に存在する酵素がヒストン脱メチル化のために示唆された機序を使用できることを証明している。
[ヒストンデメチラーゼとしての新規なJmjCドメイン含有タンパク質の同定]デメチラーゼ活性に対して大いに関係しているタンパク質を同定するために、本発明者らは、6本のクロマトグラフィーカラムを通して酵素活性を監視したが(スキーム4)、数値は、ヒストンデメチラーゼ活性がそのカラムから溶出する時点の塩濃度(mM)を表している。
DEAE5PWおよびフェニルセファロース(登録商標)カラムを通して0.3M P11画分を精製した後、本発明者らは、Superose(登録商標)6ゲル濾過カラム上の酵素活性の相対質量を決定し、その天然サイズが約300kDaであることを見いだした(図2A)。さらにMonoQ(登録商標)カラム上での精製により、本発明者らは、*によって表示した2つのタンパク質バンド(図2B、上方パネル)を酵素活性(図2B、第2パネル)と相関させることができた。2種のタンパク質を同定するために、本発明者らは画分27〜30の間のMonoQ(登録商標)サンプルをプールした。濃縮させた後、サンプルをSDS−PAGEで溶解させ、2つの候補タンパク質バンドを同定のために回収した。質量分析法による分析で、2種のタンパク質のうちの大きい方がF−boxおよびロイシンリッチリピートタンパク質11(FBXL11)であると同定した(図2C)。
FBXL11は、最初はF−box含有タンパク質についてのヒト発現配列タグ(EST)データベースを検索することによって同定されたが(Cenciarelli,et al.(1999)Curr.Biol.9:1177−1179;Winston,et al.(1999)Curr.Biol.9:1180−1182)、FBXL11の機能は特性解析されていなかった。F−boxに加えて、FBXL11は、JmjCドメイン、CxxC(配列番号2)ジンクフィンガー、PHDドメイン、および3つのロイシンリッチリピートを含むいくつかの興味深いドメインを含有している(図3A)。以前に、JmjCドメイン含有タンパク質は、クロマチン機能を調節する金属酵素であると予測されていた(Clissold and Ponting(2001)Trends Biochem.Sci.26:7−9)。この予測は、デメチラーゼ活性が補因子としてのFe(II)を必要とするという事実と組み合わせると、FBXL11がおそらくは図2における精製ヒストンデメチラーゼ活性に対して大いに関与していることを示唆する。これを証明するために、本発明者らは、Flag(登録商標)−タグ付きFBXL11哺乳動物発現ベクターを用いてCOS−7細胞をトランスフェクトした。抗Flag(登録商標)を被覆したビーズを用いた免疫沈降法の後、免疫沈降物の半分をウェスタンブロット分析に、そして半分を酵素活性アッセイのために使用した。図3B(レーン1および2を比較されたい)に示した結果は、Flag(登録商標)−FBXL11免疫沈降物中の強固なヒストンデメチラーゼ活性を明らかにした。
FBXL11の様々なドメインがその酵素活性に及ぼす重要性を評価するために、JmjCドメイン、CxxC(配列番号2)ジンクフィンガー、PHDドメイン、F−box、もしくはロイシンリッチリピート各々の欠失を備える一連の発現構築物を生成した(図3A)。トランスフェクションおよび免疫沈降法の後、これらの変異体タンパク質にウェスタンブロット分析およびデメチラーゼ活性アッセイを受けさせた。タンパク質発現レベルについて標準化した後、様々な欠失変異体の活性を決定した(図3B)。結果は、絶対的に必要とされるのはJmjCドメインだけであるが、CxxC(配列番号2)ジンクフィンガー、PHDドメイン、およびロイシンリッチリピートもまた部分的に酵素活性を付与することを証明している(レーン4〜8を2と比較されたい;図3B)。酵素活性にとってのJmjCドメインの重要性をより詳細に証明するために、単一アミノ酸変異体H212Aを生成した。本発明者らがH212を突然変異させることを選択したのは、このヒスチジンがFBXL11オルソログのJmjCドメイン内で高度に保存されているためである(図7B)。さらに、知られているFe(II)依存性オキシゲナーゼであるFIH[HIF(低酸素誘導性因子)を阻害する因子]は、Fe(II)へ直接的に結合することが見いだされた(Elkins,et al.(2003)J.Biol.Chem.278:1802−1806)。ヒストンデメチラーゼ活性のFe(II)依存性(図1B)は、H212A突然変異がFe(II)結合を崩壊させ、そこでFBXL11の酵素活性を損傷させることを示唆している。図3Bに示した結果は、このことを確証した(レーン2および3を比較されたい)。上記の結果に基づいて、FBXL11は新規なヒストンデメチラーゼであり、JmjCドメインはその酵素活性にとって極めて重要であると結論付けられた。ヒストンデメチラーゼ活性はFBXL11についての最初に証明された機能であり、そしてFBXL11はヒストンデメチラーゼ活性を有することが示された最初のJmjCドメイン含有タンパク質であるので、このタンパク質は、その新しく同定された機能を反映するためにJHDM1A(JmjCドメイン含有ヒストンデメチラーゼ1A)と命名した。本発明者らがJHDM1Bと命名した高度に関連するタンパク質FBXL10(図7A)もまた、活性なH3−K36デメチラーゼである(データは示していない)。
[JHDM1AはH3ジメチル−K36を優先的に脱メチル化する]JHDM1Aを詳細に特性解析するために、本発明者らは、Flag(登録商標)−タグ付きJHDM1Aを発現するバキュロウイルスを生成し、感染させたSf9細胞から親和性クロマトグラフィーによってこのタンパク質を精製した。Flag(登録商標)−JHDM1Aタンパク質の純度を評価して定量した後(図4A)、本発明者らは、ヒストンH3(K4、K9、K27、K36、K79)およびH4(K20)内の知られている全メチル化部位で放射標識したヒストン基質を用いてその部位特異性を分析した。メチル−アルギニンの代表として、本発明者らはさらにH4−R3−メチル化基質もまた生成した。7種の基質中、JHDM1Aのための基質はSet2によってメチル化されたH3−K36だけであった(図4B)。そこで、JHDM1AはH3−K36特異的デメチラーゼであると結論付けられた。
リジン残基は、3つのメチル化状態(モノメチル化、ジメチル化、およびトリメチル化)で存在する。JHDM1Aが特定のメチル化状態を優先的に脱メチル化するかどうかを決定するために、本発明者らは、未標識のコアヒストン、モノヌクレオソーム、およびオリゴヌクレオソーム基質を調製した(Fang,et al.(2004)Methods Enzymol.377:213−226)。これらの基質に酵素を用いた、または用いない脱メチル化反応を受けさせた後、モノメチル化、ジメチル化、およびトリメチル化H3−K36に対して特異的な抗体を用いるウェスタンブロット分析によってメチル化レベルを測定した。図4Cに示した結果は、JHDM1Aがジメチル−K36を優先的に脱メチル化するが(第2パネル、レーン2、4、6を1、3、5と比較されたい)、モノメチルK36レベルにおける減少もまた観察された(第1パネル)ことを示唆している。これとは対照的に、トリメチル−K36レベルにおける変化は検出されなかった。これらのアッセイ条件下では、JHDM1Aは、それが遊離、モノヌクレオソーム、もしくはオリゴヌクレオソーム形にあるかどうかには関わらずH3−K36を脱メチル化することができた。JHDM1Aのジメチル−K36選択性を詳細に分析するため、ヒストンH3のN末端に対応する合成ペプチドをK36でジメチル化もしくはトリメチル化し、組換えFlag(登録商標)−JHDM1Aを用いた、または用いない脱メチル化反応を受けさせた。ジメチル−ペプチド基質を含有する反応液の質量分析法による分析は、JHDM1A依存性方法でペプチドのモノメチル化および非メチル化形の生成(図4D)を明らかにしたが、これはジメチル−K36ペプチドがJHDM1Aのための基質として機能できることを示唆している。対照的に、本発明者らは、トリメチル−K36ペプチドに並行反応を受けさせた場合に脱メチル化を全く検出しなかった(データは示していない)。上記の結果に基づいて、JHDM1Aは、ジメチル化形に対する優先性を伴って、H3−K36を選択的に脱メチル化すると結論付けられた。
[JHDM1Aは、インビボでH3ジメチル−K36を脱メチル化する]インビトロにおけるJHDM1Aに向けてのデメチラーゼ活性が証明されたので、本発明者らはインビボにおける活性を試験しようと考えた。安定性のJHDM1Aノックダウン細胞系を生成しようとする本発明者らの試みは成功しなかったので、H3K36メチル化レベルがJHDM1Aの過剰発現によって影響を受けるかどうかを決定した。図5Bに提示したデータは、293T細胞中におけるFlag(登録商標)−JHDM1Aの過剰発現がジメチル−K36レベルの有意な減少を生じさせるが、モノメチル−K36、トリメチル−K36のレベルもジメチル−K4のレベルも変化させなかったことを示唆している(図5A、5D、5E)。Flag(登録商標)−JHDM1Aがジメチル−K36レベルに及ぼす作用は、酵素的に欠陥のある突然変異体の過剰発現がジメチル−K36レベルに影響を及ぼさなかったので、その酵素活性に依存する(図5C)。これらの結果から、JHDM1AはインビボでH3ジメチル−K36を脱メチル化すると結論付けられた。
[JHDM1A媒介性ヒストン脱メチル化は、ホルムアルデヒドおよびコハク酸塩を生成する]インビトロおよびインビボにおけるJHDM1Aの酵素活性が証明されたので、本発明者らは、次に反応機序について検証した。スキーム2に示したように、脱メチル化反応は、ホルムアルデヒドおよびコハク酸塩を生成する。2,4−ペンタンジオンからDDLへの変換は、反応生成物としてのホルムアルデヒドと一致しているが(スキーム3)、これはその存在を直接的に証明するものではない。このため、本発明者らは、ホルムアルデヒドを直接的に検出するために質量分析法を使用した。このアッセイ条件下では、ホルムアルデヒドは31.0184の質量対電荷(m/z)比を備えるプロトン化形で存在する。図6Aに示した結果は、ホルムアルデヒドがプロトン化ホルムアルデヒドの分子量での反応混合物中のイオンの出現に基づいて反応生成物であることを証明している(m/z 31.0239)。ホルムアルデヒドの形成は、反応液中のJHDM1Aの存在に依存している(上方および下方パネルを比較されたい)。類似のアプローチを使用して、本発明者らは、JHDM1A依存性方法でプロトン化コハク酸(C4O4H7)と相関するイオン(m/z 119.0778で)もまた検出した(図6B)。類似のm/z 119.1215(しかし低いリッチ度:約20%)のイオンもまたJHDM1Aの非存在下の反応混合物中で検出されたので(図5B、下方パネル)、本発明者らは、JHDM1Aの存在下で検出されたイオンが実際にコハク酸であったことを検証しようと考えた。純粋コハク酸のMS/MS参照スペクトル(図6C、上方パネル)を使用して、本発明者らは、脱メチル化反応において生成した予測コハク酸のフラグメンテーションパターンを分析した。フラグメンテーションパターンがコハク酸の参照スペクトルと一致したことは、この反応がコハク酸を生成したことを示唆している(図6C、上方パネルと中央パネルとを比較されたい)。重要なことに、JHDM1Aの非存在下では反応液からシグナルは全く検出されなかったが(下方パネル)、これはコントロール反応液中で検出された低いリッチ度(図6B、下方パネル)がコハク酸ではないことを示唆している。これらをまとめると、これらの質量分析法による分析は、JHDM1A媒介性ヒストン脱メチル化はホルムアルデヒドおよびコハク酸塩を生成することを証明しているので、したがってスキーム2に略述した脱メチル化機序を確証している。
[JmjCドメイン媒介性ヒストン脱メチル化はヒトから酵母に至るまで保存されている]JHDM1A媒介性ヒストンH3−K36脱メチル化においてJmjCドメインが果たす極めて重要な役割が確定されたので(図3)、JmjCドメインの機能が進化的に保存されているかどうかを決定した。SMARTデータベースの検索により、細菌からヒトに至る生物体内における538種のJmjCドメイン含有タンパク質が明らかになった。各有機体内のJmjCドメイン含有タンパク質の数は、ゲノム複雑性に相関していると思われ、ヒトにおいては109種、マウスにおいては86種、Drosophilaにおいては19種、C. elegensにおいては15種、S. pombeにおいては7種、およびS. cerevisiaeにおいては5種であった。ヒトおよびマウスにおいて見いだされた高度に関連性のJHDM1Bに加えて、上記で言及した各有機体内では潜在的JHDM1Aホモログが同定されたので、それらのドメイン構造を図7Aに提示した。これらのタンパク質間でドメイン構造は完全には保存されていないが、それらのJmjCドメインは高度に保存されている(図7B)。重要なことに、それらのJmjCドメインとFIHのJmjCドメインとのアラインメントは、Fe(II)およびα−KG結合に関係している、*および#によって表示されたアミノ酸の厳密な保存を明らかにした(Elkins,et al.(2003)J.Biol.Chem.278:1802−1806)。これは、これらのタンパク質が活性なデメチラーゼである可能性が高いことを示唆している。これを証明するために、本発明者らは、JHDM1Bをクローニングし、そのH3−K36デメチラーゼ活性を示した(データは示していない)。次に、本発明者らは、S. cerevisiaeのホモログであるscJHDM1をコードするYER051Wのオープンリーディングフレーム(ORF)を増幅させ、それをE.coli内でGST融合タンパク質として発現させた。組換えscJHDM1はメチル−K36を特異的に脱メチル化したが、メチル−K4またはメチル−K79ではない(図7C)。検出されたデメチラーゼ活性は、JmjCドメイン内の点突然変異(H305A)が酵素活性を完全に無効にしたので、JmjCドメインに依存していた(図7D)。まとめると、これらの結果は、JmjCドメインがヒストン脱メチル化において果たす極めて重要な役割およびこの機能がヒトから酵母に至るまで保存されていることを証明している。
[H3−K36デメチラーゼ活性とEpe1機能との間の連結]JmjCドメインの機能的保存が証明されたので、本発明者らは、JHDM1ファミリータンパク質の知られている機能とそれらのデメチラーゼ活性との間の連結を確証しようと考えた。文献の検索は、図7Aに示したJHDM1ファミリーメンバー中、機能的に特性解析されているのはS. pombeのホモログEpe1だけであることが明らかになった(Ayoub,et al.(2003)Mol.Cell.Biol.23:4356−4370)。Epe1は、ヘテロクロマチン障壁外におけるサイレンシングの広がりを促進する突然変異についての遺伝的スクリーニングにおいて同定された(Ayoub,et al.(2003)Mol.Cell.Biol.23:4356−4370)。Epe1突然変異は、さらにヒストンデアセチラーゼであるclr3、clr6内における突然変異を抑制し、mat遺伝子座における抑制された後成的状態を安定化させる。Epe1の過剰発現は、ヘテロクロマチン構造を崩壊させ、動原体機能を損傷させる。Epe1が正常に機能するには、JmjCドメイン変異体Y307Aが機能消失epe1突然変異体を補完できなかったので、無傷JmjCドメインを必要とする。興味深いことに、Epe1中のY307に対応するチロシンは全部のJHDM1ファミリータンパク質中に存在し(図7B、$によって表示した)、これはこの残基が保存された機能に関係していることを示唆している。この残基がH3−K36デメチラーゼ活性にとって重要かどうかを決定するために、本発明者らは、Epe1 Y307A突然変異を模倣するscJHDM1内の突然変異(Y315A)を生成した。この突然変異は、H3−K36デメチラーゼ活性を有意に減少させた(図7D)。この結果は、epe1表現型が同様に損傷したH3−K36脱メチル化能力の結果として生じることを示唆している。このため、H3−K36脱メチル化の主要な機能の1つは、ヘテロクロマチン安定性を維持することである。
[JHDM2タンパク質を特性解析するための方法]
[ヒストンデメチラーゼアッセイ]ヒストンデメチラーゼアッセイは、実施例1に記載したとおりに実施した。
天然型および組換えJHDM2Aの精製。JHDM2Aの従来型精製の手順は、スキーム5に略述した。
P11ホスホセルロースカラム上のHeLa細胞核抽出物の調製および分画は、確立された方法にしたがって実施した(Wang,et al.(2003)Mol.Cell 12:475−487)。BC300を用いて溶出させたP11画分は、50mM硫酸アンモニウム(BD50)を含有するバッファーD(40mMのHEPES−KOH(pH7.9)、0.2mMのEDTA、1mMのDTT、0.2mMのPMSF、および10%グリセロール)内へ透析し、45mLのDE5PWカラム(TosoHaas社)へロードした。結合タンパク質は、BD50からBD450への12−cv線形勾配を用いて溶出させた。HDM活性を含有する流液は700mM硫酸アンモニウムへ調整し、その後にそれを22mLのフェニルセファロース(登録商標)カラム(Pharmacia社)へロードした。結合タンパク質は、BD700からBD0への10−cv線形勾配を用いて溶出させた。BD150〜BD50へ溶出させた活性画分を結合し、5mLへ濃縮し、その後に120mLのSephacyl(登録商標)S300ゲル濾過カラム(Pharmacia社)へロードした。約300kDaで溶出した活性画分をプールし、BC50を用いて平衡化させた1mLのMonoS(登録商標)カラム(Pharmacia社)へロードした。結合タンパク質は、BC50からBC400への20−cv線形勾配を用いて溶出させた。活性画分は、BC100〜BC150へ溶出した。活性画分内のタンパク質をプールし、6.5〜12%勾配SDS−PAGEにおいて溶解させた。Coomassie(登録商標)染色後、タンパク質同定のために候補ポリペプチドを切除した。
Flag(登録商標)−JHDM2Aを発現するバキュロウイルスの生成および感染させたSF9細胞からのFlag(登録商標)−JHDM2Aの精製は、よく知られている方法にしたがって実施した(Cao and Zhang(2004)Mol.Cell.15:57−67)。COS−7細胞由来の野生型および欠失変異型Flag(登録商標)−JHDM2Aの精製については、変異型Flag(登録商標)−JHDM1Aタンパク質について記載したとおりであった(実施例1を参照されたい)。同様に、タンパク質の同定および質量分析法は、実施例1に記載した方法にしたがって実施した。
[構築物および抗体]GST−SET7をコードするプラスミド、GST−hDOT1L(1〜416)、EZH2複合体の構成成分、GST−G9a(621〜1000)、およびCBP−Set2−Flag(登録商標)は、実施例1に記載したとおりであった。GST−SET8をコードするプラスミドについては、以前に記載されている(Cao and Zhang(2004)Mol.Cell.15:57−67)。hJHDM2AをコードするプラスミドはヒトKIAAクローン(KIAA0742)からのPCR増幅によって構築し、N末端Flag(登録商標)−タグ付きpcDNA3ベクターまたはN末端Flag(登録商標)−タグ付きpFASTBAC(商標)ベクターのXhol部位内に挿入した。pcDNA3−Flag(登録商標)−JHDM2A(H1120Y)、および欠失変異体(489〜1321aa)、(766〜1321aa)、(1〜1009aa)はPCRによって生成した。PCRを通して生成された全構築物は、配列分析によって検証した。RNAi構築物は、mJhdm2aを標的とする19bp短鎖ヘアピンRNAをコードするオリゴヌクレオチド(RNAi1:5’−GTA CAA GAA GCA GTA ATA A−3’(配列番号3);RNAi2:5’−AGG TGT CAC TAG CCT TAA T−3’(配列番号4)を合成することによって作製し、当分野において記載されたH1 RNAプロモーターの調節下でpMSCVneoレトロウイルスベクター(Clonetech(商標)、カリフォルニア州パロアルト)内へクローン化した(Okada,et al.(2005)Cell 121:167−178)。
使用した抗体の起源は次のとおりである。H3トリメチル−K4(Abcam社)、H3モノメチル−K9(Abcam社)、H3ジメチル−K9(Upstate Biotechnology社、ニューヨーク州レイクプラシッド)、およびH3ジメチル−K27(Upstate Biotechnology社)。H3トリメチル−K9抗体は、当分野において知られている(Plath,et al.(2003)Science 300:131−135)。Flag(登録商標)に対する抗体および免疫蛍光法のための二次抗体は、実施例1に記載したとおりである。hJHDM2Aに対する抗体は、抗原としてこのタンパク質の最初の495アミノ酸を使用してウサギにおいて生成した。
[免疫染色]COS−7細胞を12ウェルプレート内のガラス製カバースリップ上にプレーティングし、1日間培養した。細胞はFuGENE(商標)6によってプラスミドを用いて一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後、細胞はPBSを用いて洗浄した後、4%パラホルムアルデヒド中で10分間にわたり固定した。次に細胞は、低温PBSを用いて3回洗浄し、0.2%のTriton(登録商標)X−100を含有する低温PBSを用いて5分間透過化した。透過化した細胞は次にブロッキングバッファー(1%ウシ血清アルブミンを含むPBS)を用いて3回洗浄し、30分間にわたりブロックし、その後加湿チャンバー内で一次抗体と一緒に1時間にわたりインキュベートした。PBSを用いた連続3回の5分間の洗浄後、細胞を二次抗体と一緒に1時間にわたりインキュベートし、その後PBSを用いて洗浄し、PBS中の4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドールジヒドロクロリド(DAPI)を用いて染色した。細胞は再びPBSを用いて2回洗浄し、次に蛍光計数培地(Dako社)に載せ、免疫蛍光顕微鏡下で視認した。
[安定性JHDM2Aノックダウン細胞系の生成]F9細胞は、0.1%ゼラチン被覆プレート上で10% FBSが補給されたDMEM培地中で培養した。MSCVneo−JHDM2A siRNAベクターは、リン酸カルシウム媒介性トランスフェクションによって293T細胞内へpGag−polおよびpVSVGと一緒にコトランスフェクトした。トランスフェクションの48〜72時間後に、上清を採取し、spinoculation法によるF9細胞の形質導入のために使用した。安定性トランスフェクタントは、500μg/mLのG418(Gibco−BRL(登録商標)、メリーランド州ゲーサーズバーグ)の存在下で選択した。これらのトランスフェクタントに由来する細胞を、ウェスタンブロット、リアルタイムPCR、およびChIP分析のために使用した。
[リアルタイムPCRおよびChIPアッセイ]リアルタイムPCRは、SYBR(登録商標)Green PCRマスターミックス(Applied Biosystems(商標))およびABI Prism(登録商標)7900配列検出システム(Applied Biosystems(商標))を用いて3回ずつ実施した。定量的PCR反応は、各プライマーについて標準化された条件下で実施した。標準プラスミドの10倍希釈液を用いて標準曲線を作製した。様々なサンプル中の相対量の標的を比較するために、全数値を適切に定量した36B4コントロールに対して標準化した。定量的PCRにおいて使用したプライマーは、次のとおりであった。mJhdm2a−F、5’−TGA GTA CAC CAG GCG AGA TG−3’(配列番号5)およびmJhdm2a−R、5’−GGT CCC ATA TTT CCG ATC CT−3’(配列番号6);36B4−F、5’−CTG ATG GGC AAG AAA ACC AT−3’(配列番号7)および36B4−R、5’−GTG AGG TCC TCC TTG GTG AA−3’(配列番号8);Nanog−F、5’−AAG CAG AAG ATG CGG ACT GT−3’(配列番号9)およびNanog−Rおよび5’−ATC TGC TGG AGG CTG AGG TA−3’(配列番号10);Oct4−F、5’−CCA ATC AGC TTG GGC TAG AG−3’(配列番号11)およびOct4−R、5’−CCT GGG AAA GGT GTC CTG TA−3’(配列番号12);Sox2−F、5’−GAA CGC CTT CAT GGT ATG GT−3’(配列番号13)およびSox2−R、5’−TTG CTG ATC TCC GAG TTG TG−3’(配列番号14);LamininB1−F、5’−GTT CGA GGG AAC TGC TTC TG−3’(配列番号15)およびLamininB1−R、5’−GTT CAG GCC TTT GGT GTT GT−3’(配列番号16);Hoxa1−F、5’−GCC CTG GCC ACG TAT AAT AA−3’(配列番号17)およびHoxa1−R、5’−TCC AAC TTT CCC TGT TTT GG−3’(配列番号18);Stra6−F、5’−GTT CAG GTC TGG CAG AAA GC−3’(配列番号19)、Stra6−R、5’−CAG GAA TCC AAG ACC CAG AA−3’(配列番号20)。
ChIPアッセイのために、150mm培養皿中の90%のコンフルエントのF9細胞は、1%ホルムアルデヒドを含有するDMEMを用いて10分間にわたり処理した。架橋結合は、5分間にわたる0.125Mグリシンの添加によって停止させた。PBSを用いて2回洗浄した後、細胞はピペッティングによって1mLの細胞溶解バッファー(10mMのHEPES[pH7.9]、0.5%のNP−40、1.5mMのMgCl2、10mMのKCl、0.5mMのDTT)中に再懸濁させ、氷上で10分間維持した。4,000rpmで5分間にわたり遠心した後、細胞ペレットは、4℃で20分間にわたり核タンパク質を抽出するために核溶解バッファー(20mMのHEPES[pH7.9]、25%グリセロール、0.5%のNP−40、0.42MのNaClを1.5mM、0.2mM のEDTA)を含有するプロテアーゼ阻害剤中に再懸濁させた。クロマチンは、平均長1kbを備えるフラグメントに超音波処理した。10分間にわたる13,000rpmでの遠心後、上清は、1%のTriton(登録商標)X−100、2mMのEDTA、20mMのTris−HCl[pH7.9]、50mMのNaCl、およびプロテアーゼ阻害剤を含有する当量の希釈バッファー中に希釈させた。ChIPアッセイは、次に抗JHDM2A、抗ジメチル−K9、および抗トリメチル−K4抗体を用いて実施した。全ChIP実験のために、定量的PCR分析は、ABI Prism(登録商標)7900配列検出システムおよびSYBR(登録商標)Greenマスターミックスを用いてリアルタイムで実施した。DNAの量は、2−Ctの代数式(式中、Ctはサイクル閾値数である)にしたがって決定した。投入DNAに比した免疫沈降DNAの相対量を計算した。プライマー対は次のとおりであった。LamininB1−F、5’−CTT TTC TCC CCG CTA CCT CT−3’(配列番号21)およびLamininB1−R、5’−CTA GGA CAC CAA AGG CGA AC−3’(配列番号22);Stra6−F、5’−TGG AAG AGG AGG GTC TCT GA−3’(配列番号23)およびStra6−R、5’−CTC CTG CCA TGG AGT CTC TC−3’(配列番号24);Hoxa1−F、5’−ACT GCC AAG GAT GGG GTA TT−3’(配列番号25)および5’−CTT CGC AGG ATC CAA TCA CT−3’(配列番号26)。
LNCaP細胞中におけるChIPアッセイのために、細胞はR1881(50nM)を用いた1時間にわたる処理前に3日間にわたり活性炭処理血清培地中で培養した。ChIPアッセイは、本質的には以前に記載したように実施した(Yoon,et al.(2005)Mol.Cell Biol.25:324−335)。PSA mRNAのRT−PCR分析のためのプライマーは、5’−GCC CAC CCA GGA GCC AGC ACT−3’(配列番号27)および5’−GGC CCC CAG AAT CAC CCG AGC AG−3’(配列番号28)であった。
AR−JHDM2A相互作用。インビトロ翻訳した35S−メチオニン標識AR(10μL)を100μLの反応液中の100nM R1881の存在下もしくは非存在下で結合バッファー(20mM Hepes(pH7.6)、50mMのKCl、1mM DTT、0.5mM PMSFおよび10%グリセロール)中の3μL(300ng)の精製組換えJHDM2Aと混合した。この混合液を低温室内で2時間にわたり回転させ、プロテインAアガロースビーズおよび抗JHDM2A抗体(10μL)を加えた。1時間のインキュベーション後、ビーズは結合バッファーを用いて広汎に洗浄し、ARは10% SDS−PAGEによって溶解させ、オートラジオグラフィーによって視認した。
[JHDM2Aは核ホルモン受容体を通しての転写活性化を促進する]
[ヒストンデメチラーゼ活性の精製および同定]SET2−メチル化ヌクレオソームヒストン基質は、ヒストンデメチラーゼ活性を監視するために使用されてきた。そこで、並行試験において、本発明者らもまた、H3−K9メチルトランスフェラーゼG9aを含む他のヒストンメチルトランスフェラーゼによってメチル化されたヒストン基質を使用した(Tachibana,et al.(2002)Genes Dev.16:1779−1791)。G9a−メチル化ヒストン基質にHeLa細胞核抽出物(NE)および核ペレット(NP)由来のタンパク質画分を使用する脱メチル化アッセイを受けさせると(Wang,et al.(2001)Science 293:853−857)、本発明者らは、核抽出物由来の0.3M P11タンパク質画分内でH3−K9デメチラーゼ活性を検出した(図8A)。この活性が真正デメチラーゼの結果であるのかどうかを確証するために、本発明者らは、必要とされる補因子であるFe(II)およびα−KGへの依存性について試験した。図8Bに示した結果は、ホルムアルデヒドの遊離がタンパク質画分の存在(レーン1および5を比較されたい)だけではなく、補因子であるFe(II)およびα−KG(レーン2および3をレーン1と比較されたい)もまた必要とすることを証明している。Fe(III)からFe(II)を再生させることに関与しているアスコルビン酸塩の添加は、ホルムアルデヒド産生を刺激すると思われる(レーン1および4を比較されたい)。これらの結果は、ヒストンデメチラーゼ活性が核抽出物由来の0.3M P11画分内に存在し、候補酵素はおそらくヒストン脱メチル化のためにJHDM1Aによって使用される同一の酸化的脱メチル化機序を使用することを示唆している(実施例2)。
このデメチラーゼ活性に重要な役割を担うタンパク質を同定するために、本発明者らは、5本のクロマトグラフィーカラムを通して酵素活性を監視した(スキーム5)。DEAE5PWおよびPhenyl Sepharose(登録商標)カラムを通しての0.3M P11画分の精製後、本発明者らは、酵素活性の天然質量が、Sephacyl(登録商標)S300カラムによって評価した場合に約300kDaであると決定した(図9A)。MonoS(登録商標)カラム上でのそれ以上の精製によって、本発明者らは、酵素活性(図9B、下方パネル)を*によって表示された約150kDaのタンパク質に相関させることができた(図9B、上方パネル)。画分17と20との間では酵素活性において劇的な相違が存在したので(図9B)、本発明者らは、これら2つの画分に集中し、それらのタンパク質組成をSDS−PAGEによって比較した(図9C)。画分20に固有のタンパク質バンドを回収した後、それらに質量分析法による分析を受けさせると、*によって表示されたタンパク質がJMJD1A(Jumonjiドメイン含有1A)と命名された新規なJmjCドメイン含有タンパク質もしくはTSGA(精巣特異的遺伝子A)であることが明らかになった(Hoog,et al.(1991)Mol.Reprod.Dev.30:173−181)(図9C)。JMJD1Aが検出されたデメチラーゼ活性に対して大いに関与している検証するために、このタンパク質に対する抗体を生成し、MonoS(登録商標)カラムの画分21〜29からJMJD1Aを免疫沈降させるために使用した。免疫沈降させたサンプルを銀染色、ウェスタンブロット、およびデメチラーゼアッセイ分析のために分割した。図9Dに示した結果は、デメチラーゼ活性(下方パネル)が上清(S)から完全に欠失していることを証明し、これはJMJD1Aの欠失(中央パネル)と相関していた。重要なことに、銀染色(上方パネル)は、JMJD1Aに対応する単一タンパク質を明らかにした。これらの結果をまとめると、JMJD1Aが検出されたデメチラーゼ活性に対して大きく関与していることを示唆している。サイズが約300kDaであることを前提にすると(図9A)、JMJD1Aはホモダイマーとして機能すると思われる。ヒストンデメチラーゼ活性はそのタンパク質に対して最初に同定された活性であり、それは本発明者らが同定した第2のJmjCドメイン含有ヒストンデメチラーゼであるので、本発明者らは、その新規に同定された機能を反映するためにタンパク質JHDM2A(JmjCドメイン含有ヒストンデメチラーゼ2A)と改名した。そこで、本発明者らは、他の2つのJHDM2A関連性ヒトタンパク質を各々JHDM2BおよびJHDM2Cと命名した(図10C)。
JHDM2Aは、精巣cDNAライブラリー内で最初に同定された(Hoog,et al.(1991)Mol.Reprod.Dev.30:173−181)。インサイチューハイブリダイゼーション試験は、JHDM2Aが雄性胚細胞中で主として発現し、その定常状態転写体レベルは胚細胞発達の減数期中および減数後期の段階において最高であることを示唆した(Hoog,et al.(1991)Mol.Reprod.Dev.30:173−181)。SMARTプログラムを用いたドメイン構造分析は、JmjCドメインおよびジンクフィンガーの存在を明らかにした(図10A)。JmjCドメインがヒストンデメチラーゼのためのシグネチャーモチーフであることを前提にすると(実施例2)、JHDM2A中のJmjCドメインの存在は、JHDM2Aが検出されたヒストンデメチラーゼ活性に対して重要な役割があることを示唆している。JHDM2Aのデメチラーゼ活性を直接的に証明するために、本発明者らは、Flag(登録商標)−タグ付き哺乳動物発現ベクターを用いてCOS−7細胞をトランスフェクトした。抗Flag(登録商標)コンジュゲート化ビーズを用いた免疫沈降法の後、免疫沈降物の半分をウェスタンブロット分析に、そして半分を酵素活性アッセイのために使用した。図10B(レーン1)に示した結果は、Flag(登録商標)−JHDM2Aタンパク質に依存する強固なヒストンデメチラーゼ活性を明らかにした。
JHDM2Aの酵素活性に対するJmjCおよびジンクフィンガードメインの重要性を評価するために、本発明者らは、N末端、ジンクフィンガー、およびJmjCドメイン各々の欠失を備える3つの発現構築物を生成した(図10A)。トランスフェクションおよび免疫沈降法の後、これらの変異体タンパク質にウェスタンブロット分析およびデメチラーゼ活性アッセイを受けさせた。図10Bに示した結果は、ジンクフィンガーおよびJmjCドメインの両方が酵素活性のために極めて重要であることを示唆している(レーン1をレーン3〜5と比較されたい)。酵素活性にとってのJmjCドメインの重要性をより詳細に証明するために、JmjCドメイン内で単一アミノ酸置換H1120Yを生成した。本発明者らは、アミノ酸H1120を突然変異させることを選択したが、これはこのヒスチジンがJHDM2A関連タンパク質のJmjCドメイン内で高度に保存され(図10D)、そして知られているFe(II)依存性オキシゲナーゼであるFIH[HIF(低酸素誘導性因子)を阻害する因子]が、Fe(II)へ直接的に結合することが見いだされたためであった(Elkins,et al.(2003)J.Biol.Chem.278:1802−1806)。ヒストンデメチラーゼ活性のFe(II)依存性(図8B)は、H1120Y突然変異がFe(II)結合を崩壊させ、そこでJHDM2Aの酵素活性を損傷させることを示唆していた。図10Bに示した結果は、このことを確証した(レーン1および2を比較されたい)。このため、JHDM2Aは新規なヒストンデメチラーゼであり、JmjCドメインが酵素活性のために極めて重要であると結論付けられた。
[JHDM2AはインビトロでH3モノメチルおよびジメチル−K9を脱メチル化する]JHDM2Aを詳細に特性解析するために、本発明者らは、Flag(登録商標)−タグ付きJHDM2Aを発現するバキュロウイルスを生成し、感染したSf9細胞から親和性クロマトグラフィーによってこのタンパク質を精製した。Flag(登録商標)−JHDM2Aタンパク質の純度を評価して定量した後(図11A)、本発明者らは、その酵素活性を分析して天然JHDM2Aタンパク質の酵素活性と比較した。図11Bに示した結果は、組換えFlag(登録商標)−JHDM2Aおよび天然JHDM2Aが、等量のタンパク質を比較した場合に類似の活性を有することを証明している(レーン1をレーン4および5と比較されたい)。JHDM2Aの部位特異性を分析するために、ヒストンH3(K4、K9、K27、K36、K79)およびH4(K20)内の全部の知られているメチル−リジン部位で放射標識されたヒストン基質に精製組換えFlag(登録商標)−JHDM2Aを含有する脱メチル化アッセイを受けさせた。6種の基質中、JHDM2Aのための基質はG9aによってメチル化されたH3−K36だけであった(図11C)。H3−K9に加えて、以前の試験は、G9aがインビトロでH3−K27もまたメチル化できることを示唆した(Tachibana,et al.(2002)Genes Dev.16:1779−1791)。JHDM2AはH3−K9を特異的に脱メチル化するがH3−K27を脱メチル化しないことを検証するために、本発明者らは、G9a HMTを用いてK9RもしくはK27Rのいずれかを含有する放射標識基質ヒストンH3を生成した。並行して、本発明者らは、さらにまた本アッセイにおいて放射標識した野生型組換えH3およびHeLaコアヒストンも含んだ。図11Dに示した結果は、JHDM2AがK9を突然変異させた場合はH3を脱メチル化できなかったが(レーン5および6を比較されたい)、K27突然変異はJHDM2Aの活性には影響を及ぼさなかった(レーン7および8を比較されたい)ことを示している。そこで、JHDM2AはH3−K9特異的デメチラーゼであると結論付けられた。
リジン残基は、3つのメチル化状態(モノメチル化、ジメチル化、およびトリメチル化)で存在する。JHDM2Aが特定のメチル化状態を優先的に脱メチル化するかどうかを決定するために、本発明者らは、H3−K9−メチル化ペプチド基質を用いる脱メチル化アッセイを実施し、質量分析法によって脱メチル化生成物を分析した。図11Eに示した結果は、ジメチル−K9ペプチドの脱メチル化がJHDM2Aの存在に左右され、モノメチルおよびジメチル−K9の両方が基質として機能できることを示唆する、ペプチドのモノメチルおよび非メチル化形の両方と相関する質量を備える生成物を生成したことを証明している。これとは対照的に、同一配列を有するトリメチル−K9ペプチドに並行分析を受けさせた場合には、脱メチル化は検出されなかった(図11F)。上記の結果に基づいて、JHDM2AはH3−モノメチルおよびジメチル−K9を選択的に脱メチル化すると結論付けられた。
[JHDM2AはインビボでH3モノメチルおよびジメチル−K9を脱メチル化する]インビトロにおけるJHDM2Aに向けてのデメチラーゼ活性が証明されたので、本発明者らはインビボにおける活性を試験しようと考えた。このために、本発明者らは、免疫染色によってJHDM2Aの過剰発現がH3−K9メチル化に及ぼす作用について調査した。JHDM2Aの過剰発現はH3−ジメチル−K9レベルを大きく減少させることが見いだされた(図12A)。この作用は、酵素的に欠陥のある突然変異体の過剰発現がジメチル−K9レベルに影響を及ぼさなかったので、決してFlag(登録商標)−JHDM2Aの存在に起因する修飾特異的抗体を入手できないことが原因ではなかった(図12B)。モノメチル−K9のレベルにおける減少は、JHDM2Aを過剰発現した細胞内で観察された(図12C)。しかし、トリメチル−K9(図12D)またはジメチル−K27のレベルに及ぼす作用は観察されなかった。さらに、JHDM2Aの過剰発現は、数種の知られているH3K9メチルトランスフェラーゼの発現レベルを変化させない(データは示していない)。これらの結果は、JHDM2AがインビボでH3モノおよびジメチル−K9を脱メチル化するが、ジメチル−K9に対する優先性が見られることを示唆している。
[JHDM2Aノックダウンは増加したプロモーターH3−K9脱メチル化が付随する転写の減少を導く]インビトロおよびインビボにおけるJHDM2Aの酵素活性が証明されたので、本発明者らは、JHDM2Aが転写調節に役割を果たすかどうかという問題を解決することを試みた。これまでの試験は、H3−K9メチル化を転写抑制およびヘテロクロマチン形成と結び付けている(Martin and Zhang(2005)Nat.Rev.Mol.Cell.Biol.6:838−849)。このため、H3−K9デメチラーゼは、潜在的に遺伝子サイレンシングに拮抗する。これを試験するため、本発明者らは、ベクター媒介性RNAiアプローチを使用して安定性Jhdm2aノックダウン細胞を生成した(Okada,et al.(2005)Cell 121:167−178)。本発明者らは、F9細胞内でノックダウンを実施することを選択したが、これはこの細胞系が本発明者らにより分析された3種の細胞系の中で最高のJhdm2a発現を示すためであった(図13A)。定量的PCR(図13B、上方の2つのパネル)およびウェスタンブロット(図13B、下方の2つのパネル)分析は、ノックダウン効率がRNAレベルでは約80%およびタンパク質レベルでは約70%であることを確証した。親F9細胞と比較してノックダウン細胞内で明白な形態学的変化は観察されなかったが(データは示していない)、これはJhdm2aがF9細胞の未分化状態を維持することに重要な役割を果たさないこと、またはF9細胞内でも発現する(データは示していない)高度に関連性のJhdm2bがJhdm2a機能を補償する可能性があることのいずれかを示唆している。Jhdm2aノックダウンに応答した明白な細胞分化は観察されなかったが、それでも本発明者らは、Jhdm2aノックダウンに応答した少数の遺伝子の発現レベルにおける変化を分析した。本発明者らが分析した遺伝子は、多分化能マーク(Nanog、Oct4およびSox2)ならびに分化マーク(Lamb1、Hoxa1、Hoxb1、およびStra6)を含んでいた。図13Cに示した結果は、Jhdm2aノックダウンに応答して、NanogおよびOct4は約20%ダウンレギュレートされたが、分化マークであるLamb1、Hoxb1、およびStra6は約40〜60%ダウンレギュレートされたことを示唆している。これらの結果は、転写を正に調節するH3−K9デメチラーゼとして機能するJhdm2aと一致している。対照的に、Hoxa1の発現は、おそらく間接的作用に起因してJhdm2aノックダウンによってアップレギュレートされた。
Jhdm2aノックダウンに起因する観察された転写作用が直接作用を表すのかどうかを調査するために、本発明者らは、ChIPアッセイによってLamB1およびStra6プロモーターへのJHDM2Aタンパク質の結合について分析した。コントロールとして、本発明者らは、それのHoxa1遺伝子プロモーターへの結合も分析した。図13Dに示した結果は、JHDM2AがLamB1およびStra6プロモーターには結合するが、Hoxa1プロモーターには結合しないことを示唆している(第1列および2列を第3列と比較されたい)。Jhdm2aのノックダウンはJHDM2A結合を有意に減少させたが、これは検出されたChIPシグナルが特異的であったことを示唆している(第1列および第2列)。JHDM2Aがジメチル−K9デメチラーゼとして機能するという観察に一致して、Jhdm2aのノックダウンはLamB1およびStra6プロモーターではジメチル−K9レベルを増加させたが、Hoxa1プロモーターにはほとんど作用を及ぼさなかった(第4〜6列)。Jhdm2aがジメチル−K9特異的デメチラーゼであるという事実に一致して、Jhdm2aのノックダウンは分析した3種のプロモーターのいずれについてもトリメチル−K4レベルにおける有意な変化を誘発しなかった(第7〜9列)。これらの結果から、JHDM2Aはジメチル−K9を脱メチル化するために1サブセットの遺伝子を標的とし、これは順にそれらの遺伝子発現を正に調節すると結論付けられた。
[JHDM2Aのホルモン依存性動員はH3−K9の脱メチル化および転写活性化と相関する]JHDM2Aは、2種の密接に関連するホモログであるJHDM2BおよびJHDM2Cを有する(図10C)。興味深いことに、JHDM2Cは、TRIP8と命名された甲状腺ホルモン受容体(TR)相互作用タンパク質として酵母ツーハイブリッドスクリーン内で最初に同定された(Lee,et al.(1995)Mol.Endocrinol.9:243−254)。さらに、JHDM2Aは、核ホルモン受容体相互作用に関係するシグネチャーモチーフである885LXXLL889(配列番号29)配列を含有している(Heery,et al.(1997)Nature 387:733−736)。そこで、核受容体による転写調節にJHDM2Aが含まれることが決定された。TRとのホルモン依存性相互作用はインビトロプルダウンアッセイまたは共免疫沈降アッセイのいずれによっても検出されなかったが(データは示していない)、本発明者らは、JHDM2Aがリガンド依存性方法でアンドロゲン受容体(AR)と相互作用することを見いだした(図14A)。このインビトロ相互作用のインビボ関連性を調査するために、本発明者らはJHDM2Aがホルモン依存性方法で知られているAR標的遺伝子に動員されるかどうかを調べようと考えた。そこで、本発明者らは、ホルモンの存在下または非存在下のLNCaP細胞中で、2種の明確に特性解析されたAR標的遺伝子である前立腺特異的抗原(PSA)およびNKX3.1についてChIPアッセイを実施した。図14Bに示した結果は、R1881処理後のARのPSAエンハンサーへの強力な結合を証明している(第3パネル、レーン1および2を比較されたい)。同様に、NKX3.1転写開始部位の約3kb上流に位置する機能ARE(ARエンハンサー)を含有する領域へのARの強力なホルモン依存性結合もまた検出された(第3パネル、レーン3および4を比較されたい)。ホルモン誘導性転写活性化(データは示していない)に一致して、どちらの場合にもヒストンアセチル化の増加が検出された(第4パネル)。重要なことに、R1881処理はさらにJHDM2AとAR標的遺伝子との結び付きの増加ももたらし(図14B、第5パネル)、これにはジメチル−およびトリメチル−K9のレベルにおける減少が付随した(図17B、第6および第7パネル)。ホルモン依存性方法でPSAおよびNKX3.1遺伝子へ結合するJHDM2Aとは対照的に、LSD1とこれら2種の遺伝子との結び付きは、当分野における教示(Metzger,et al.(2005)Nature 437:436−439)と一致して、ホルモン処理による影響を受けなかった(図14B、最後のパネル)。
JHDM2AおよびLSD1がホルモン依存性転写活性化において果たす役割を直接的に試験かつ比較するために、本発明者らは、siRNAを使用してLNCaP細胞中のJHDM2AおよびLSD1をノックダウンした(図14C)。本発明者らは次に、JHDM2AもしくはLSD1のノックダウンが3種のAR標的遺伝子であるPSA、NKX3.1およびTMPRSS22のホルモン誘導性活性化に及ぼす作用を定量的RT−PCRによって評価した。図14Dに示した結果は、8時間にわたるR1881を用いた処理は全3種のAR標的遺伝子からの転写を確実に活性化させたが、JHDM2Aのノックダウンは全3種のAR標的遺伝子についてホルモン応答における有意な減少をもたらしたことを証明している。LSD1のノックダウンもまたホルモン応答の減少をもたらしたが、この作用はJHDM2Aのノックダウンと比較すると有意ではなかった。このため、JHDM2AはARによる最適なホルモン依存性転写活性化のために極めて重要であると結論付けられた。
JHDM2AがARによるホルモン依存性活性化において果たす役割が確証されたので、本発明者らは、次にJHDM2Aが図14Bにおいて観察されたホルモン誘導性H3K9脱メチル化にとって重要であるかどうかを試験した。このために、LNCaP細胞を最初にJHDM2A siRNAで処理し、次にChIP分析の1時間前にR1881による処理を実施した。図14Eに示した結果は、JHDM2AのPSAエンハンサーおよびNKX3.1遺伝子へのホルモン誘導性動員が、siJHDM2A処理を受けると大きく無効にされたことを証明している(第2パネル、レーン3をレーン2および4と比較されたい;レーン7をレーン6および8と比較されたい)。重要なことに、JHDM2AのノックダウンはPSAエンハンサーでのジメチル−H3K9のホルモン誘導性減少を有意に損傷させた(第4パネル、レーン2および3を比較されたい)。程度は小さくなるが、JHDM2AのノックダウンはNKX3.1におけるジメチル−H3K9のホルモン誘導性減少にも影響を及ぼした(第4パネル、レーン6および7を比較されたい)。これらの結果は、JHDM2AがAR標的遺伝子での抑制性ジメチル−H3K9の効率的脱メチル化のために必要とされることを示唆している。興味深いことに、JHDM2Aはトリメチル−H3K9に向けての活性を有さなかったが(図11F、12D、13D)、JHDM2AのノックダウンはPSAエンハンサーおよびNKX3.1の両方に対するトリメチル−H3K9のホルモン誘導性減少にも影響を及ぼした(図14E、最後のパネル)。JHDM2Aのノックダウンがホルモン誘導性H3アセチル化レベルもまた減少させると思われることは興味深かった(図14E、第3パネル、レーン2および3、6および7を比較されたい)。この観察に対する1つの説明は、H3K9脱メチル化がH3K9アセチル化の前提条件であることにある。他方、JHDM2AをノックダウンしてもARの両方の標的遺伝子へのホルモン誘導性結合には影響を及ぼさなかったが(図14E、第1パネル)、これはJHDM2Aが標的遺伝子への結合に続発するAR媒介性転写活性化に寄与することを示唆している。
[JHDM3タンパク質を特性解析するための方法]
[構築物および組換えタンパク質]JHDM3AはESTクローン(IMAGE3138875)からPCR増幅させ、N末端Flag(登録商標)−タグを含有するように遺伝子組み換えされた修飾FastbacHTb(商標)(Invitrogen(商標)、カリフォルニア州カールスバッド)およびpCDNA3(Invitrogen(商標))のBamHIおよびNotl部位内へクローニングした。H197A置換突然変異は、QuikChange(登録商標)突然変異誘発キット(Stratagene(登録商標)、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)を用いて特定部位突然変異誘発によって生成した。検出構築物は、確立された方法を用いて生成した(Zhang,et al.(2005)Mol.Cell Biol.25:6404−14)。すべての場合に、PCR増幅したクローンの配列は、配列分析によって確証した。Flag(登録商標)−JHDM3Aを発現するバキュロウイルスの作製および感染したSF9細胞からの組換えタンパク質の精製は、実施例3に記載したとおりに実施した。
[脱メチル化アッセイおよび質量分析法]全ヒストン基質は、実施例1に記載したとおりに放射標識した。同様に、ヒストン脱メチル化アッセイおよび質量分析法も、実施例1に記載したとおりに実施した。本アッセイで使用したペプチド基質はヒストンH3のアミノ酸1〜18を包含し、リジン9上でジ−メチルもしくはトリ−メチルいずれかの修飾を含有していた。
[免疫蛍光顕微鏡検査]NIH3T3細胞は、10%のFBSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM中で増殖させた。6ウェルプレート内のカバースリップ上で増殖させた細胞は、FuGENE(商標)6トランスフェクション試薬(Roche社)を使用して2μgのFlag(登録商標)−JHDM3A発現プラスミドを用いてトランスフェクトした。GFP−HP1βを用いる実験において、トランスフェクションには250ngの発現ベクターを含めた。細胞は4%パラホルムアルデヒド中での20分間にわたるトランスフェクションの24時間後に固定し、PBSを用いて3回洗浄し、次に0.5% Triton(登録商標)X−100/PBS中で20分間にわたり透過化させた。透過化した細胞をPBS中で2回洗浄し、30分間にわたり3% BSA/PBS中でブロッキングした。細胞は、1:100の希釈率にあるヒストン修飾抗体[トリ−メチルH3K9(Plath,et al.(2003)Science 300:131−5)、ジ−メチルH3K9(Upstate Biotechnology社)、モノ−メチルH3K9(Abcam社)、およびトリ−メチルH3K27(Plath,et al.(2003)Science 300:131−5)]ならびに1:1000の希釈率にあるFlag(登録商標)モノクローナルM2抗体(Sigma(登録商標))を用いて1〜3時間にわたり加湿チャンバー内で一次抗体と一緒にインキュベートした。一次抗体とのインキュベーション後、細胞は3回洗浄し、FITC−もしくはローダミンコンジュゲート二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories社)と一緒にインキュベートした。細胞はPBSを用いて2回洗浄し、4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドールジヒドロクロリド(DAPI)を用いて染色し、蛍光封入剤(Dako社)中のスライドガラス上に載せた。スライドは、蛍光顕微鏡で分析した。
[JHDM3A siRNA、RT−PCR分析およびChIP]siRNA媒介性JHDM3Aのノックダウン、ASCL2のRT−PCR分析、およびChIP分析は、実施例3に記載したとおりに実施した。
[JHDM3はヒストンH3リジン9トリ−メチル化を直接的に逆転させ、トリ−メチル−リジン9−媒介性HP1動員に拮抗する]
追加のヒストンリジンデメチラーゼを同定するために、本発明者らは、提案されたFe(II)およびα−KG結合部位内の類似性に焦点を当てて、他のJmjCファミリーメンバーのJmjCドメインをJHDM1A/BおよびJHDM2A(各々、実施例2および4)と比較した。関連タンパク質ヒドロキラーゼであるFIH(低酸素誘導性因子を阻害する因子)は、Fe(II)およびα−KGと錯体化されたFIHの構造を利用でき、そこで基準点として機能できるので、アラインメント内に含めた(Elkins,et al.(2003)J.Biol.Chem.278:1802−6)。分析したJmjCドメイン含有タンパク質の中では、Fe(II)およびα−KG結合に関係すると予測されたアミノ酸が保存されているので(図15Aおよび15B)、JMJD2タンパク質ファミリー(Katoh & Katoh (2004)Int.J.Oncol.24:1623−8)がデメチラーゼ活性に対する優れた候補であった。JMJD2Aは特性解析された唯一のJMJD2ファミリーメンバーであるので(Gray,et al.(2005)J.Biol.Chem.280:28507−18;Zhang,et al.(2005)Mol.Cell.Biol.25:6404−14)、本発明者らは、このタンパク質が活性ヒストンデメチラーゼであるかどうかを定義することに努力を集中した。
JMJD2Aが活性ヒストンデメチラーゼであるかどうかを決定するために、本発明者らは、バキュロウイルス発現系を用いて昆虫細胞内で組換えFlag(登録商標)−タグ付きJMJD2Aを生成し、この組換えタンパク質が均質性になるまで精製した(図15C)。ヒストンH3およびH4上の複数の特性解析されたメチル−リジン部位に対応する放射標識されたメチル基を含有する様々なヒストン基質を用いる脱メチル化分析は、精製組換えJMJD2Aと一緒にインキュベートした場合に標識ホルムアルデヒドを遊離させるのはDim5−標識ヒストン基質だけであることを示唆した(図15D)。これは、JMJD2Aがメチル化ヒストンH3K9に向けてのデメチラーゼ活性を有することを示した。JMJD2Aが補因子としてFe(II)およびα−KGを用いる酸化的脱メチル化機序を利用するかどうかを検証するために、確保因子をこの脱メチル化反応から個別に削除した。完全酵素活性は、完全補因子/酵素補体が反応内に存在した場合にのみ観察された(図15E)。まとめると、これらのデータは、組換えJMJD2Aが補因子としてのFe(II)およびα−KGを用いる酸化的脱メチル化反応を介してH3K9脱メチル化を触媒することを示している。JMJD2Aが活性ヒストンデメチラーゼであることが証明されたので、本発明者らは、その酵素機能を反映し、現行の命名規則を確かにするために、このタンパク質をJmjCドメイン含有ヒストンデメチラーゼ3A(JHDM3A)と改名した。
真菌H3K9メチルトランスフェラーゼDim5はモノメチル、ジメチル、およびトリメチル化ヒストンH3K9基質をインビトロで生成できることを前提にして(Tamaru,et al.(2003)Nat.Genet.34:75−9)、本発明者らは、JHDM3Aの修飾状態特異性を決定しようと考えた。このために、Flag(登録商標)−タグ付きJHDM3AをNIH3T3細胞内で発現させた。JHDM3Aの過剰発現がH3K9メチル化レベルに及ぼす作用は、間接的免疫蛍光染色によって分析した。以前の観察(Tamaru,et al.(2003)Nat.Genet.34:75−9)に一致して、Flag(登録商標)−タグ付きJHDM3Aタンパク質は、広汎性核染色を示した(図16、左のパネル)。興味深いことに、JHDM3Aを発現する細胞は核の挟動原体ヘテロクロマチンおよび全真正染色質領域でトリメチルH3K9のほぼ完全な消失を示した(図16A、上方パネル)。観察されたトリメチル−K9の消失は、予測されたFe(II)結合部位における突然変異(H197A)がその作用を無効にしたので、無傷JmjCドメインに依存していた(図16A、下方パネル)。観察された脱メチル化もまた、ジ−メチルK9、モノ−メチルK9、もしくはトリメチルK27を含む他のヒストン修飾状態では作用が観察されなかったので、トリメチルH3K9特異的であった(図16B)。このようにして、JHDM3Aはインビボでトリメチル−H3K9を優先的に脱メチル化すると結論付けられた。
次に、本発明者らは、この基質特異性がJHDM3Aに固有であるかどうかを決定しようと考えた。このようにして、本発明者らは、組換えJHDM3Aと、H3K9位置でジ−メチルもしくはトリ−メチル修飾のいずれかを含有するペプチドとをインキュベートした。脱メチル化反応後、ペプチド基質は質量分析法によって分析した。トリメチル−K9特異的デメチラーゼとして作用するJHDM3Aと一致して、トリメチル−K9ペプチドはジメチル−K9ペプチドへ変換され(図16C)、単一メチル基の消失を示唆していた。単一修飾もしくは未修飾ペプチドが検出されなかったという事実は、JHDM3Aがトリメチル−K9をジ−メチル状態へ特異的に脱メチル化することを示した。同一アッセイ条件下で、関連性H3K9デメチラーゼであるJHDM2Aによって効率的に脱メチル化される(実施例4)ジ−メチルH3K9ペプチドについて脱メチル化は観察されなかった(図16D)。このため、JHDM3Aはインビトロおよびインビボの両方でトリメチルH3K9に対する顕著な酵素特異性を示し、1つのメチル基の除去を生じさせ、ジ−メチルH3K9を残す。
JHDM3Aがトリメチル−K9特異的デメチラーゼであることが検証されたので、本発明者らは、インビボにおけるデメチラーゼ活性についてのドメイン要件を決定した。本発明者らは各々が単一予測機能的ドメインの欠失を抱いているJHDM3Aの突然変異体を作製した(図17A)。これらの突然変異体発現ベクターをNIH3T3細胞内へトランスフェクトさせた後にトリメチル−K9染色を行うと、脱メチル化活性のために必要とされるのはJmjCドメインだけであることが明らかになった(図17B〜17G)。これは、JHDM3Aの他のドメインはおそらくターゲティングおよびタンパク質−タンパク質相互作用に関係していることを示している。
マウス細胞内では、Suv39H1は、挟動原体ヘテロクロマチンにおけるH3K9トリメチル化に大いに関与している主要なヒストンメチルトランスフェラーゼである(Peters,et al.(2003)Mol.Cell 12:1577−89;Rice,et al.(2003)Mol.Cell 12:1591−8)。HP1(ヘテロクロマチンタンパク質1)は、インビトロでトリメチル化H3K9へ優先的に結合し(Jacobs & Khorasanizadeh (2002)Science 295:2080−3;Bannister,et al.(2001)Nature 410:120−4;Lachner,et al.(2001)Nature 410:116−20)、Suv39H1依存性方法で挟動原体ヘテロクロマチンへ局在する(Peters,et al.(2003)Mol.Cell 12:1577−89;Rice,et al.(2003)Mol.Cell 12:1591−8)。JHDM3Aがトリメチル−H3K9を活性に脱メチル化する能力を前提として、本発明者らは、JHDM3AレベルがH3K9トリメチル化レベルを調節することを通してHP1局在化パターンに影響を及ぼせるかどうかを決定した。これに一致して、挟動原体HP1は、JHDM3AをHP1と共発現させた場合に核全体に再分布した(図18Aおよび18Bを比較されたい)。JHDM3AがHP1再分布を誘導する能力は、JHDM3A(H197A)変異体の共発現がHP1再分布を誘導することはできなかったので、そのH3K9デメチラーゼ活性に依存していた(図18C)。これらのデータは、JHDM3Aの上昇したレベルおよびH3K9脱メチル化が挟動原体ヘテロクロマチンへのHP1動員に拮抗するように機能できることを示している。
ヘテロクロマチン形成に関与していることに加えて(Peters,et al.(2003)Mol.Cell 12:1577−89;Rice,et al.(2003)Mol.Cell 12:1591−8)、H3K9トリメチル化はまた真正染色質における転写調節にも結び付けられてきた(Vakoc,et al.(2005)Mol.Cell 19:381−391;Schultz,et al.(2002).Genes Dev.16:919−932;Wang,et al.(2003)Mol.Cell 12:475−87)。JHDM3Aが真正染色質遺伝子おけるトリメチルH3K9を除去することに役割を果たすかどうかを試験するために、本発明者らは、JHDM3Aレベルを操作するためにsiRNA媒介性ノックダウンを利用し、それが唯一の知られているJHDM3A標的遺伝子であるASCL2に及ぼす作用を分析した(Zhang,et al.(2005)Mol.Cell.Biol.25:6404−14)。以前の試験は、JHDM3AがASCL2遺伝子を抑制するためにNCoRコリプレッサー複合体と一過性で相互作用できることを示唆している(Zhang,et al.(2005)Mol.Cell.Biol.25:6404−14)。転写の負の調節因子として機能するJHDM3Aと一致して、siRNA媒介性ノックダウンはASCL2のアップレギュレーションを生じさせた(図19Bおよび19C)。ChIP分析は、JHDM3Aが通常は転写開始部位の1.1kb上流にあるASCL2プロモーター領域へ結合することを証明した(図19Aおよび19D)。siRNA処理後、JHDM3A占有度は減少した(図19D、第3パネル)。トリメチルH3K9デメチラーゼとして機能するJHDM3Aの役割と一致して、JHDM3Aノックダウン後にASCL2遺伝子におけるトリメチルH3K9のレベルにおける有意な増加が観察された(図19D、第4パネル)。これとは対照的に、H3K27メチル化における有意な変化は観察されなかった(図19D、下方の3つのパネル)。証明されたサイレンシングマークとしてH3K9トリメチル化が役割を果たすことを前提にすると(Martin & Zhang(2005)Nat.Rev.Mol.Cell.Biol.6:838−849)、転写抑制におけるトリメチル−K9デメチラーゼの機能は、JHDM3Aが転写活性化に結び付けられてきたトリメチル−H3K9に拮抗するように機能できる可能性があることを示唆している(Vakoc,et al.(2005)Mol.Cell 19:381−391)。これらのデータは、転写抑制と一致してトリメチルH3K9の減少したレベルを維持するためには特異的標的遺伝子における内因性JHDM3Aの占有が必要とされることを明確に示唆している。
JHMD3Aの同定は、トリメチル−H3K9の動的調節のための分子基盤を提供する。ヘテロクロマチン領域内には有意な量のトリメチルH3K9残基が存在するが(Peters,et al.(2003)Mol.Cell 12:1577−89;Rice,et al.(2003)Mol.Cell 12:1591−8)、この修飾は真正染色質領域内で見いだされるサイレンシング遺伝子においても役割を果たす(Schultz,et al.(2002)Genes Dev.16:919−932;Sarraf & Stancheva (2004)Mol.Cell 15:595−605)。JHDM3Aは、トリメチルH3K9を優先的に除去しその後にジもしくはモノメチル−K9修飾を除去することはないので、ヒストンメチルトランスフェラーゼ酵素に極めて似ているヒストンデメチラーゼ(Wang,et al.(2003)Mol.Cell 12:475−87;Manzur,et al.(2003)Nat.Struct.Biol.10:187−96;Xiao,et al.(2005)Genes Dev.19:1444−54)は、別個の修飾状態を調節するように特異的に仕立てることができる。これに関連して、生化学試験は、ヒストンH3およびH4内のメチル−リジン残基の認識におけるJHDM3AのTandem Tudorドメインが果たす役割を定義している。理論によって結び付けることを望まなくても、JHDM3AのTandem TudorドメインはJHDM3Aのデメチラーゼ活性のクロマチン含有特異的ヒストン修飾への動員を促進すると考えられる。
[RBP2のデメチラーゼ活性を特性解析するための方法]
[構築物および組換えタンパク質]pcDNA3/HA−Flag(登録商標)−RBP2は、Flag(登録商標)−タグをpcDNA3/HA−RBP2のClal部位へ挿入することによって生成した。H483A置換変異は、実施例5に記載したとおりに特定部位突然変異誘発によってpCDNA3/HA−Flag(登録商標)−RBP2内へ導入した。バキュロウイルス発現タンパク質を生成するため、RBP2は、N末端Flag(登録商標)−タグを含有するように遺伝子組み換えした修飾FastbacHTb(商標)(Invitrogen(商標))ベクターのSallおよびXbal部位内へクローニングした。Flag(登録商標)−RBP2を発現するバキュロウイルスの作製および感染したSF9細胞からの組換えタンパク質の精製は、実施例3に記載したとおりに実施した。
[抗体]RBP2抗体である1416および2471については以前に記載されている(Benevolenskaya,et al.(2005)Mol.Cell 18:623−635)。抗RBP2ポリクローナル抗体2470は、ウサギにおいてグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)−RBP2(1311−1358)に対して生じさせた。Flag(登録商標)モノクローナルM2抗体およびα−チューブリン抗体(クローンB−5−1−2)は、Sigma(登録商標)のものを用いた。H3K4me3抗体、H3K4me1抗体、H4K20me3抗体、およびH3抗体は、Abcam(登録商標)のものを用いた。H3K4me2抗体、H3K9me2抗体、およびH4R3me2抗体は、Upstate Biotechnology社のものを用いた。一部の実験では、H3K4me2抗体もまた使用した(Feng,et al.(2002)Curr.Biol.12:1052−1058)。
[HeLa細胞由来のRBP2複合体の精製]HeLa S3核抽出物は、記載されたように調製した(Dignam,et al.(1983)Nucleic Acids Res.11:1475−1489)。RBP2を含有するタンパク質画分は、RBP2抗体を用いるウェスタンブロット分析によって同定した。核抽出物は、100mMのKClを含有するバッファーD(40mM HEPES−NaOH(pH7.9)、0.5mMのEDTA、1mM DTT、0.5mM AEBSFおよび10%(v/v)グリセロール)と同等の伝導性にさせ、20mLのHiPrep(登録商標)16/10 SP FFカラム(Amersham社)へロードし、結合タンパク質はバッファーD中で100mM〜500mMのKClへの10−cv線形勾配を用いて溶出させた。350mM〜410mMのKCl(複合体1)および280mM〜310mMのKCl(複合体2)へ溶出させたRBP2を含有する画分を個別にプールし、300mMのNaClを含有するバッファーH(20mMのNa3PO4(pH6.8)、0.5mMのEDTA、1mMのDTT、および10%(v/v)グリセロール)と同等の伝導性にし、1mLのHiTrap(登録商標)ヘパリンHPカラム(Amersham社)へロードし、結合タンパク質はバッファーH中で300mM〜1.6MのNaClへの12−cv線形勾配を用いて溶出させた。RBP2複合体1を含有する画分は540mM〜1MのNaClへ溶出させ、RBP2複合体2を含有する画分は540mM〜820mMのNaClへ溶出させた。両方の画分は、100mMのNaClを含有するバッファーC(40mMのTris−HCl(pH7.9)、0.5mMのEDTA、1mMのDTT、および10%(v/v)グリセロール)と同等の伝導性にさせ、0.6mLのMonoQ(登録商標)HR5/5(Amersham社)へロードし、結合タンパク質はバッファーC中で100mM〜500mMのKClへの10−cv線形勾配を用いて溶出させた。RBP2複合体1を含有する画分は350mM〜430MのNaClへ溶出させ、複合体2を含有する画分は360mM〜4000mMのNaClへ溶出させた。
[ウェスタンブロット分析]細胞は、完全プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Molecular Biochemicals社)が補給された溶解バッファーE(50mMのTris(pH7.9)、400mMのNaCl、0.5% NP−40)中に溶解させた。ヒストンを分析するために、細胞は完全プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Molecular Biochemicals社)が補給されたSDS溶解バッファー(50mMのTris(pH7.9)、10mMのEDTA、0.5% SDS)中に溶解させ、ゲルにロードする前に超音波処理にかけた。Bradford法によって決定されたように、1レーンに付き約30μgの細胞抽出物をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によって溶解させ、ニトロセルロース膜へ移した。4%脱脂乳を加えたトリス緩衝食塩液中でブロッキングした後、膜を示唆した抗体により試験し、4%脱脂乳を加えたトリス緩衝食塩液中に希釈した。結合した抗体は、製造業者の取扱説明書にしたがって、適切なホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ウサギIgGもしくはヤギ抗マウスIgG(Pierce社、イリノイ州ロックランド)およびSuperSignal(登録商標)West Pico化学発光基質(Pierce社)またはImmobilon Western化学発光基質(Millipore(登録商標))を用いて検出した。
[ヒストンデメチラーゼアッセイ]ホルムアルデヒドの遊離を分析するヒストンデメチラーゼアッセイは、実施例1に記載したとおりに同数の標識ヒストン基質および分画した細胞抽出物を用いて実施した。修飾ヒストンペプチド基質を用いるヒストンデメチラーゼアッセイは、ヒストンH3のアミノ酸1〜18に対応するペプチド(Upstate 12〜563(me1)、Upstate 12〜460(me2)、およびUpstate 12〜564(me3))を用いて実施した。
[免疫蛍光法]間接的免疫蛍光法は、10% FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM中で増殖させたNIH3T3細胞を使用して実施した。細胞を増殖させ、透過化し、染色し、上述したように分析した。
[網膜芽細胞腫結合タンパク質RBP2はH3K4デメチラーゼである]
哺乳動物JmjCドメイン含有タンパク質のJARID1サブファミリーの1メンバーである網膜芽細胞腫結合タンパク質2(RBP2)は、H3K9/36メチル化の除去を標的としてトリメチル修飾状態を除去できる、JHDM3デメチラーゼのJmjCドメイン(図20A)と広汎な類似性を共有するJmjCドメインを含有することが観察された。RBP2 JmjCドメインの予測補因子結合部位内の残基の保存およびRBP2が転写調節因子として果たす明白な役割は、RBP2がヒストンデメチラーゼ活性を有すること、そして以前に特性解析されたJmjCファミリーメンバーによって認識されなかったヒストンメチル化マークに向けての活性を示す可能性があることを示唆した。
そこで、SP−Sepharose(登録商標)、Heparin−Sepharose(登録商標)、およびMonoQ(登録商標)クロマトグラフィーカラム上での連続的分画によってHeLa核抽出物から内因性RBP2を濃縮した(データは示していない)。RBP2含有画分は、RBP2特異的抗体を用いたウェスタンブロット分析による各クロマトグラフィーステップによって同定された。RBP2は、SP−Sepharose(登録商標)クロマトグラフィー後に2つの別個の画分内で検出された(データは示していない)。どちらの画分も、Heparin−Sepharose(登録商標)およびMonoQ(登録商標)カラムを用いて並行してさらに精製した(データは示していない)。RBP2含有タンパク質複合体がヒストンデメチラーゼ活性を有するかどうかを決定するために、MonoQ(登録商標)カラムから部分的に精製したRBP2画分を様々に標識したヒストン基質と一緒にインキュベートし、ヒストンデメチラーゼ活性を標識ホルムアルデヒドの遊離によって監視した(データは示していない)。ホルムアルデヒドの遊離は、RBP2含有画分をH3K4標識基質と一緒にインキュベートした場合にのみ観察され、これはRBP2含有複合体がメチル化H3K4を特異的に脱メチル化することを示唆している。
リジン特異的デメチラーゼ1(LSD1)はH3K4デメチラーゼであると特徴付けられているが、リジンアミン基上におけるプロトン化窒素に対する触媒的要件はその酵素活性をH3K4me1/me2修飾基質に限定している(Lee,et al.(2005)Nature 437:432−435;Metzger,et al.(2005)Nature 437:436−439;Shi,et al.(2004)Cell 119:941−953;Shi,et al.(2005)Mol.Cell 19:857−864)。LSD1がH3K4me3を逆転できないことは、この修飾状態が酵素的脱メチル化に対して不応性であることを示唆した。LSD1とは対照的に、JmjCドメイン含有ヒストンデメチラーゼは直接的ヒドロキシル化反応を利用してヒストンメチル化を除去するが、これはRBP2がH3K4me3の除去を触媒できる可能性を示唆している。
RBP2がH3K4デメチラーゼであることを検証するため、そしてRBP2の修飾状態特異性を試験するために、Flag(登録商標)−タグ付きRBP2は、バキュロウイルス発現系を使用してSF9細胞内で発現させ、均質性にするために親和性精製した。精製Flag(登録商標)−RBP2はSDS−PAGEおよびCoomassie(登録商標)blue染色後に単一バンドとして現れた(図20B)。次に組換えRBP2は、H3K4me3、me2およびme1修飾状態に対応する修飾されたヒストンH3ペプチド基質と一緒にインキュベートした(図20C〜20E)。RBP2はH3K4me3およびme2に対する強固なH3K4デメチラーゼ活性を示し(図20Cおよび20D)、修飾された基質の80〜90%の脱メチル化を生じさせたが(図20Fおよび20G)、me1修飾状態の除去を触媒することはできなかった(図20E)。RBP2はインビトロにおけるH3K4me1の脱メチル化を開始することはできなかったが(図20E)、H3K4me3およびme2修飾を進行性で未修飾状態へ脱メチル化することはできた(図20Cおよび20D)。RBP2の酵素的特性は、全3種の修飾状態の漸進性除去も触媒するがインビトロにおけるme1修飾状態上での脱メチル化を開始することはできないJHDM3Aに類似している。これらをまとめると、これらの観察は、H3K4me3修飾状態が酵素的に可逆性であること、そしてヒストン脱メチル化がRBP2による転写調節に寄与する可能性があることを示唆している。
RBP2はインビボでH3K4を脱メチル化する。RBP2がインビボで活性H3K4デメチラーゼとして機能することを証明するために、Flag(登録商標)−タグ付きRBP2発現プラスミドをNIH3T3細胞内へトランスフェクトし、それがH3K4メチル化に及ぼす作用を、H3K4メチル化特異的抗体を用いる間接的免疫蛍光法によって分析した(図21)。RBP2を過剰発現する細胞は、H3K4me1、H3K4me2およびH3K4me3修飾の一様な減少を示した(図21A〜21C、上方パネル)。H3K4メチル化の除去は、予測されたJmjCドメイン鉄結合部位(H483A)における点突然変異がH3K4脱メチル化を無効にしたので、RBP2のデメチラーゼ活性に依存していた(図21A〜21C、下方パネル)。予想外にもそれがインビトロでH3K4me1を脱メチル化できないことを前提にすると、RBP2はさらにインビボにおけるH3K4me1の除去を効率的に触媒した。この観察は、RBP2がH3K4me1特異的脱メチル化を触媒する能力はインビボでは追加の因子によって調節される可能性があることを示唆している。まとめると、これらのデータは、RBP2がインビボではすべてのH3K4メチル化状態を脱メチル化できることを示唆し、H3K4me3が容易に可逆性のヒストン修飾であることを証明している。
上記は、本発明を例示したものであり、本発明を限定するものと見なされてはならない。本発明は、本明細書に含まれる特許請求の範囲の同等物とともに、添付の特許請求の範囲によって規定される。
ヒストンデメチラーゼアッセイの確立およびHeLa細胞中のデメチラーゼ活性の同定を示している。図1Aは、HeLa核抽出物および核ペレット画分に由来するP11カラム画分の相対ヒストンデメチラーゼ活性を示している。パネル上方の数字は、溶出バッファー中のKClのモル濃度を表している。図1Bは、デメチラーゼ活性がFe(II)、α−KGおよび0.3M P11核ペレット画分内に存在するタンパク質の存在に依存することを示している。
ヒストンデメチラーゼ活性の精製および同定を示している。図2Aは、ゲル濾過Superose(登録商標)6カラムに由来するタンパク質画分の銀染色タンパク質ゲル(上方パネル)およびヒストンデメチラーゼ活性(下方パネル)を示している。タンパク質マーカーの溶出プロファイルは、パネルの上部に表示した。図2Bは、mini−MonoQ(登録商標)カラムに由来するタンパク質画分の銀染色タンパク質ゲル(上方パネル)およびヒストンデメチラーゼ活性(下方パネル)を示している。デメチラーゼ活性と共分画した候補タンパク質は、*で表示した。SDS−PAGE上のタンパク質サイズマーカーの位置は、パネルの左側に表示した。図2Cは、タンパク質同定のためのサンプルを含有する銀染色タンパク質ゲルである。上方のタンパク質バンドは、FBXL11(NP_036440)であると同定された。質量分析法から同定されたペプチドを列挙する。数字は、FBXL11タンパク質内のアミノ酸数に対応する。「?」は、同定されていないFBXL11関連タンパク質を表している。
ヒストンデメチラーゼJHDM1A/FBXL11の機能的ドメインの特性解析を示している。図3Aは、それらの相対活性(右側)を含む野生型および変異型タンパク質の略図である。「+」の数は、相対活性を表している。同定された機能的ドメインは、SMARTプログラムを用いて囲みの中に示している。図3Bは、COS−7細胞中で発現させて、分析前に免疫沈降させた野生型および変異型Flag(登録商標)−JHDM1Aタンパク質についてのウェスタンブロット(上方パネル)およびデメチラーゼアッセイ(下方パネル)分析を示している。ウェスタンブロットの下方の数字を用いて示唆した各免疫沈降タンパク質の相対量は、NIH ImageJプログラムを用いて定量し、活性を標準化するために使用した。
JHDM1Aの部位特異性およびメチル化状態特異性についての特性解析を示している。図4Aは、Sf9細胞中で発現した精製Flag(登録商標)−JHDM1タンパク質のCoomassie(登録商標)染色タンパク質ゲルである。図4Bは、様々なメチル化ヒストン基質に対するFlag(登録商標)−JHDM1のヒストンデメチラーゼ活性を示している。ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT)およびそれらのメチル化の部位は、パネルの上方に表示する。図4Cは、様々なヒストン基質を用いた脱メチル化反応のウェスタンブロット分析を示している。使用した抗体は、パネルの左側に表示する。図4Dは、Flag(登録商標)−JHDM1によるジメチル−K36ペプチド(STGGV2mKKPHRY−C;配列番号1)の脱メチル化の質量分析法による分析を示している。この反応液の酵素/基質モル比は、1:40であった。数字は、基質および生成物ペプチドの質量を表している。
JHDM1Aがインビボでジメチル−H3−K36を脱メチル化することを示している。293T細胞は、野生型(図5A、5B、5Dおよび5E)または変異型(図5C)Flag(登録商標)−JHDM1Aを用いてトランスフェクトした。細胞は、図に示したように、Flag(登録商標)抗体および様々なメチル化H3−K36抗体を用いて共染色した。ジメチル−K4抗体を用いた染色は、コントロールとして機能させるために実施した。中央の図5B内の矢印は、野生型Flag(登録商標)−JHDM1Aを発現する細胞を示唆している。
JHDM1媒介性ヒストン脱メチル化がホルムアルデヒドおよびコハク酸塩を生成することを示している。JHDM1反応液サンプル(上方パネル)および陰性コントロール(下方パネル)中のホルムアルデヒド(図6A、[M+H]+ 理論的=31.0184)およびコハク酸塩(図6B、[M+H]+ 理論的=119.0344)各々のESI−MS検出が証明された。図6Cは、コハク酸塩の標準溶液(600nM)(上方パネル)、JHDM1反応液サンプル(中央パネル)および陰性コントロール(下方パネル)からのm/z 119でのイオンのESI−MS/MS分析を示している。コハク酸塩フラグメントイオンの提案された構造は、MS/MSスペクトル上に示されている。
JHDM1ファミリータンパク質のH3−K36デメチラーゼ活性が進化中に保存されていることを示している。図7Aは、様々な有機体内のJHDM1ファミリータンパク質の図表示である。ヒトおよびマウスにおいて2つの高度に関連するタンパク質が同定されたが、他の有機体の各々においては1つのホモログしか見いだされなかった。このタンパク質ファミリー内に存在する様々な機能的ドメインは、SMARTプログラムを用いる分析に基づいて示す。図7Bは、PAPIAシステムを用いた、JHDM1ファミリーメンバーのJmjCドメインとFIH1(Q9NWT6)のJmjCドメインとのアラインメントである。JHDM1A(「1A」)タンパク質についてのNCBIアクセッション番号は、次のとおりである。NP_036440(ヒト)、XP_355123(マウス)、AAH82636(Xenopus))、NP_649864(Drosophila)、AAN65291(C. elegans)、CAA21872(S. pombe)、NP_010971(S. cerevisiae)。JHDM1B(「1B」)タンパク質についてのNCBIアクセッション番号は、NP_115979(ヒト)およびNP_001003953(マウス)である。数字は、各タンパク質のアミノ酸数を表している。Fe(II)およびα−KG結合に関係するFIH1中のアミノ酸は、各々、「*」および「#」によって表示する。Epe1機能のために極めて重要な保存されたチロシンは、「$」によって表示する。7つの配列中4つの配列の保存には、下線を引く。図7Cは、S. cerevisiaeタンパク質のデメチラーゼ活性および部位特異性を示している。図7Dは、scJHDM1タンパク質のJmjCドメインの突然変異分析を示している。デメチラーゼアッセイでは、等量の野生型および変異型GST−scJHDM1を使用した。Fe(II)結合部位(H305A)における突然変異は、H3−K36デメチラーゼ活性を完全に無効にしたが、機能消失Epe1(Y307A)突然変異を模倣する突然変異(Y315A)は、H3−K36デメチラーゼ活性を有意に減少させた。
G9a−メチル化ヒストン基質を用いたHeLa細胞中のヒストンデメチラーゼ活性の同定を示している。図8Aは、G9aメチル化ヒストン基質に対するHeLa核抽出物および核ペレット画分に由来するP11カラム画分からのヒストンデメチラーゼ活性の監視を示している。パネル上方の数字は、溶出バッファー中のKClのモル濃度を表している。図8Bは、0.3M P11デメチラーゼ活性がFe(II)およびα−KGの存在に依存することを示している。
ヒストンデメチラーゼ活性の精製および同定を示している。図9Aは、Sephacyl(登録商標)S300ゲル濾過カラムに由来するタンパク質画分のヒストンデメチラーゼ活性を示している。タンパク質マーカーの溶出プロファイルは、パネルの上部に表示する。図9Bは、MonoS(登録商標)カラムに由来するタンパク質画分の銀染色タンパク質ゲル(上方パネル)およびヒストンデメチラーゼ活性(下方パネル)である。デメチラーゼ活性と共分画した候補タンパク質は*で表示する。SDS−PAGE上のタンパク質サイズマーカーの位置は、パネルの左側に表示する。図9Cは、ヒストンデメチラーゼ陽性画分20のタンパク質組成物を隣接ヒストンデメチラーゼ陰性画分17と比較している銀染色タンパク質ゲルである。候補タンパク質は、質量分析法によって同定された。53%のJMJD1Aタンパク質(NCBIアクセッション番号NP_060903)をカバーする計63個のペプチドが同定された。質量分析法から同定された代表的ペプチドを列挙する。数字は、JMJD1Aタンパク質のアミノ酸数に対応する。図9Dは、JMJD1A抗体を用いて免疫沈降させたサンプルの銀染色(上方パネル)、ウェスタンブロット(中央パネル)、およびヒストンデメチラーゼアッセイ(下方パネル)分析である。「In」、「S」および「B」は、投入、上清、および結合を各々表している。投入サンプルは、MonoS(登録商標)カラムの21〜29画分をプールすることによって引き出した。
JHDM2AのJmjCドメインおよびジンクフィンガードメインの両方がヒストンデメチラーゼ活性のために必要であることを示している。図10Aは、それらの活性(右側)を含む野生型および変異型JHDM2Aタンパク質の略図である。「+」は活性を表し、そして「−」は不活性を表す。図10Bは、COS−7細胞中で発現させて分析前に免疫沈降させた、野生型および変異型Flag(登録商標)−JHDM1Aタンパク質のウェスタンブロット(上方パネル)およびデメチラーゼアッセイ(下方パネル)分析を示している。図10Cは、様々な有機体由来のJHDM2タンパク質ファミリーの図表示である。ヒトおよびマウスにおいて3つの関連するタンパク質が同定されたが、ショウジョウバエおよびツメガエルにおいては1つのホモログしか見いだされなかった。このタンパク質ファミリー内に存在するJmjCドメインおよびジンクフィンガードメインは、SMARTプログラムを用いる分析に基づいて示す。図10Dは、PAPIAシステムを用いた、JHDM2ファミリーメンバーのJmjCドメインとFIH1のJmjCドメインとのアラインメントである。アラインメント内のタンパク質各々についてのアクセッション番号を列挙する。数字は、各タンパク質のアミノ酸数を表している。Fe(II)およびα−KG結合に関係するFIH1中のアミノ酸は、各々、「*」および「#」によって表示する。保存された配列には下線を引く。
JHDM2Aの部位特異性およびメチル化状態特異性の特性解析を示している。図11Aは、BSAと比較した、Sf9細胞中で発現した精製Flag(登録商標)−JHDM2Aタンパク質のCoomassie(登録商標)染色タンパク質ゲルである。レーン3内の下方バンドは、ウェスタンブロット分析によって検証された分解生成物である。図11Bは、Sf9細胞中で作製された組換えJHDM2AおよびHeLa細胞から精製された天然型JHDM2Aの匹敵するヒストンデメチラーゼ活性を示している。定量の天然JHDM2Aを、ヒストンデメチラーゼ活性(下方パネル)について、JHDM2A抗体(上方パネル)を用いたウェスタンブロット分析によって定量された様々な量の組換えJHDM2Aと比較した。図11Cは、同数の様々なメチル化ヒストン基質投入に対するFlag(登録商標)−JHDM2Aのヒストンデメチラーゼ活性を示している。μg単位での等量の基質を使用した場合に類似の結果が入手された。ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT)およびそれらのメチル化の部位は、パネルの上方に表示する。図11Dは、Flag(登録商標)−JHDM2AがG9a−メチル化H3−K9は脱メチル化するが、H3−K27は脱メチル化しないことを示している。HeLa細胞から精製した天然ヒストン、およびE.coliから精製した野生型もしくは変異型(K9R、K27R)組換えヒストンH3をG9aによってメチル化し、Flag(登録商標)−JHDM2Aの存在下(+)または非存在下(−)においてデメチラーゼアッセイを受けさせた。Flag(登録商標)−JHDM2Aによるジメチル−K9(図11E)もしくはトリメチル−K9(図11F)ペプチド(アセチル−ARTKQTARmeKSTGGKAPRK−ビオチン;配列番号:77)の脱メチル化の質量分析法による分析を実施した。反応の酵素/基質モル比は、1:40であった。数字は、基質および生成物ペプチドの質量を表している。
JHDM2Aがインビボでモノ−、およびジメチル−H3−K9を脱メチル化することを示している。COS7細胞は、野生型(図12A、12C、12Dおよび12E)または変異型(図12B)Flag(登録商標)−JHDM2Aを用いてトランスフェクトした。細胞は、図に示したように使用した、Flag(登録商標)抗体および様々なメチル−H3−K9またはジメチル−H3−K27抗体を用いて共染色した。矢印は、トランスフェクトされた細胞を示唆している。
F9細胞中のJhdm2aのノックダウンは、増加したプロモーターH3−K9ジメチル化が付随する転写の減少を生じさせることを示している。NIH3T3、P19、およびF9細胞中のJhdm2aの相対発現レベルは、定量的RT−PCRによって分析した(図13A)。Jhdm2aノックダウンF9細胞系の特性解析もまた実施した(図13B)。定量的RT−PCR(左のパネル)およびウェスタンブロット分析(右のパネル)は、Jhdm2a上でRNAレベルでの約80%のノックダウンおよびタンパク質レベルでの70%のノックダウンが達成されたことを証明した。図13Cは、Jhdm2a上ノックダウンへ応答したいくつかの多分化能および分化マーカー遺伝子のRNAレベルでの変化の定量的RT−PCR分析を示している。これらの変化は、ノックダウン細胞内の発現レベル対野生型コントロールの発現レベルの比率として表示する。図13Dは、コントロール(白色バー)およびJhdm2aノックダウン(黒色バー)細胞内におけるChIPed DNAのQ−PCRの結果を示している。分析した遺伝子プロモーター、および使用した抗体を表示する。すべてのQ−PCRは3回繰り返されている。平均値と標準偏差を表示する。
JHDM2AがARによる転写活性化に関係することを示している。JHDM2Aは、インビトロでホルモン依存方法でアンドロゲン受容体(AR)と相互作用することが見いだされた(図14A)。組換えJMJD1Aは、R1881(100nM)の非存在下もしくは存在下でインビトロ翻訳された35S−標識化ARと混合した。抗JHDM2A抗体を用いた免疫沈降法後に、ARは、オートラジオグラフィーによって検出した。図14Bは、インビボにおけるPSAおよびNKX3.1エンハンサーへのJHDM2Aのホルモン依存性動員を示している。LNCaP細胞は、3日間にわたり活性炭処理血清培地中で培養し、次にR1881(50nM)を用いずに、または用いて1時間にわたり処理し、その後のChIP分析のために処理した。図14Cは、siRNAによるLNCaP細胞中のJHDM2AおよびLSD1のノックダウンを示している。LNCaP細胞は、示唆したようにスクランブル(siCON)、siJHDM2AもしくはsiLSD1を用いてトランスフェクトした。チューブリンは、ローディングコントロールとして機能した。図14Dは、3つのAR標的遺伝子のR1881依存性活性化にJHDM2AもしくはLSD1をノックダウンさせることが及ぼす作用を示している定量的RT−PCR分析を示している。細胞は、R1881処理の8時間後にRNA単離のために採取した以外は図14Bと同様に処理した。図14Eは、JHDM2Aのノックダウンがホルモン誘導性H3K9脱メチル化を損傷させることを示している。LNCaP細胞は、siJHDM2AもしくはsiCONを用いて3日間にわたり処理し、次に50nM R1881を用いて1時間にわたり処理し、その後に示唆した抗体を用いてChIPアッセイのために処理した。
JMJD2AがヒストンH3K9デメチラーゼであることを示している。図15Aに図示したように、JMJD2Aは、JmjCドメインおよびクロマチン関連タンパク質中で見いだされた他のいくつかのドメインを含有している。図15Bは、FIH、JHDM1A、JHDM1B、JHDM2A、およびJMJD2AのJmjCドメインにおける類似性を示しているアラインメントである。Fe(II)および(α−KG)結合ドメインは、各々「*」および「#」によって表示する。下線は、保存領域を示唆している。図15Cは、バキュロウイルス感染Sf9細胞から精製した組換えJMJD2Aを含有するCoomassie(登録商標)染色ゲルである。図15Dでは、棒グラフの下方に示唆した様々なヒストンメチルトランスフェラーゼを用いてヒストンを標識し、組換えJMJD2Aと一緒にインキュベートした。標識化メチル基の遊離は、酵素の存在下(+)もしくは非存在下(−)で、ヒストンデメチラーゼ活性についてアッセイするために測定した。JMJD2Aは、ヒストンメチルトランスフェラーゼDim5によって標識したH3K9を特異的に脱メチル化する。JMJD2Aが酸化機序を用いて脱メチル化を実施することを証明するために、補因子であるFe(II)およびα−KGは、図15Eに示した棒グラフの下方に(−)として示唆したように反応から削除した。JMJD2Aの全酵素活性は、補因子および酵素の完全相補を必要とする。
JHDM3Aがトリメチル特異的ヒストンデメチラーゼであることを示している。図16Aでは、JHDM3Aは、Flag(登録商標)融合タンパク質としてマウス3T3細胞中で発現させた。Flag(登録商標)(左のパネル)またはトリメチル化H3K9(中央パネル)に対する抗体を用いた間接的免疫蛍光法を使用して、インビボにおけるJHMD3Aの基質特異性を分析した。DAPI染色(右)は、各領域内での核の局在を示唆している。JHDM3Aを用いてトランスフェクトした細胞は、トリメチルH3K9染色の顕著な消失を示し(上方パネル)、そしてこの活性は、予測Fe(II)結合部位内での突然変異がJHMD3A内に導入された場合は染色が影響を受けないので、無傷JmjCドメインに依存していた(下方パネル H197A)。図16Bは、ジ−メチルH3K9、モノ−メチルH3K9、もしくはトリメチルH3K27に対する抗体がJHDM3Aを用いてトランスフェクトされた細胞中でのこれらの修飾のレベルにおける変化を全く示さないので、JHDM3AによるトリメチルH3K9の脱メチル化が特異的であったことを示している。トリメチルK9(図16C)もしくはジメチルK9(図16D)ペプチドは、質量分析法による分析の前にJHDM3Aの存在下(上方)または非存在下(下方)でインキュベートした。JHDM3AとトリメチルH3K9ペプチドとのインキュベーションは1つのメチル基(1Da)の除去を生じさせてジメチル−H3K9ペプチドを産生したが(図16C)、他方JHDM3AとジメチルH3K9とのインキュベーションはペプチド修飾状態における変化を生じさせなかった(図16C)。
インビボにおけるトリメチルH3K9脱メチル化にはJmjCドメインだけが必要とされることを示している。図17Aは、トランスフェクションアッセイにおいて使用した欠失構築物を示している図示である。突然変異体の細胞レベル以下の局在およびデメチラーゼ活性が示されている。図17B〜17Gは、免疫蛍光法によって決定されるようなトリメチルH3K9レベルに欠失変異体が及ぼす作用を示している。トランスフェクトされた細胞中におけるトリメチルH3K9染色を分析することによって(図17B〜17G)、提案された鉄結合ドメイン(H197A)の突然変異だけがトリメチルH3K9染色の消失を無効にすることが観察された。TUDORドメインの欠失は、核および細胞質の両方においてJHDM3Aの可変性局在を誘発したが、それでもまだトリメチルH3K9の脱メチル化を生じさせた(図17F、17G)。
JHDM3Aの発現がHP1動員に拮抗することを示している。図18Aに示したように、GFP−HP1はマウス細胞中で挟動原体ヘテロクロマチンを含有するトリメチルH3K9に対応する断続性蛍光を表示している。図18Bは、JHDM3Aの発現はトリメチルH3K9脱メチル化を誘発し、結果として核内のGFP−HP1の広汎性再分布を生じさせることを証明している。図18Cは、GFP−HP1局在にJHDM3Aが及ぼす作用を予測されたFe(II)結合ドメイン内の突然変異が無効にしたので、挟動原体ヘテロクロマチンへのHP1動員に拮抗するためには無傷JmjCドメインが必須であることを示している。
JHDM3Aが真正染色体標的遺伝子でトリメチルH3K9を脱メチル化することを示している。図19Aは、ヒトASCL2遺伝子構造の図である。JARは、JHDM3A関連性領域を表している。図19Bは、JHDM3Aタンパク質レベルがJHDM3A siRNAを用いた細胞の処理によって効率的に減少させられたことを示している。図19Cは、JHDM3AのsiRNA媒介性ノックダウンがASCL2遺伝子の発現増加を生じさせることを示している。ASCL2遺伝子でのヒストン修飾を分析するために、未処理(−)およびJHDM3A siRNA処理(+)細胞をChIPアッセイにおいて使用した(図19D)。JHDM3Aの減少したレベルは、ASCL2遺伝子でのJHDM3Aの占有減少およびトリメチルH3K9(H3K9me3)のレベル上昇を誘発した。ASCL2遺伝子での他のヒストン修飾は、JHDM3Aの特異性を検証するsiRNA処理後に未変化のままであった。
RBP2は、H3K4me3を除去する能力を備えるH3K4デメチラーゼであることを示している。図20Aは、JARID1サブファミリーのJmjCドメインが、JHDM3デメチラーゼ酵素のJmjCドメインに高度に類似することを示している。予測されたFe(II)(「*」)およびα−KG結合(「#」)残基は、RBP2および他のJARID1メンバー内に保存されている。組換えFlag(登録商標)−RBP2を昆虫細胞中で発現させ、Flag(登録商標)クロマトグラフィーによって親和性精製し、そしてSDS−pageによって分析した(図20B)。図20C〜20Eは、H3K4me3(図20C)、H3K4me2(図20D)、およびH3K4me1(図20E)ペプチドに対するRBP2活性の質量分析法による分析を示している。H3K4me3(図20F)およびH3K4me2(図20G)基質上でRBP2について観察された脱メチル化レベルの定量。
RBP2がインビボでH3K4を脱メチル化することを示している。提案された鉄結合部位(H483A)において突然変異を含有するFlag(登録商標)−RBP2もしくはFlag(登録商標)−RBP2をNIH3T3細胞中で発現させた(図21A〜21C)。H3K4メチル化のレベルは、間接的免疫蛍光法によってH3K4me1(図21A)、H3K4me2(図21B)、およびH3K4me3(図21C)に対する修飾特異的抗体を用いて分析した(中央パネル)。野生型および変異型RBP2を示す細胞はFlag(登録商標)免疫蛍光法によって同定し(左のパネル)、核はDAPI染色(右のパネル)によって同定した。中央および右のパネルにおける矢印は、トランスフェクトされた細胞を示唆している。RBP2は、インビボにおける全3つのH3K4メチル化状態を脱メチル化する。