JP5078766B2 - タービン静翼構造 - Google Patents
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タービン静翼の冷却に関する従来技術としては、冷却効率を向上させて冷却空気の使用量を抑え、ガスタービンの性能を向上させるものがある。この従来技術によれば、衝突板の小穴からチャンバへ流入してインピンジメント冷却を行った冷却空気が、前縁側、両側部を通って冷却した後に後縁側へ送り込まれて冷却するので、インピンジメント冷却に用いた冷却空気をそのまま後縁側へ送り込んで放出する場合と比較すれば、冷却空気の使用量を大幅に低減できるとされる。(たとえば、特許文献1参照)
また、冷却空気量の増加により外側シュラウド面等の冷却能力を向上させると、冷却空気量の増加分がタービン部を通過する燃焼ガス温度を低下させることとなる。従って、燃焼器から供給される燃焼ガス温度を高く設定しても、多量の冷却空気を使用して燃焼ガス温度が低下すれば、ガスタービンの運転効率向上が妨げられるため好ましくない。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、冷却空気の使用量を最小限に抑えるとともに、タービン静翼の冷却効率及び冷却能力をより一層向上させて、外側シュラウド面の温度分布を均一化することができるガスタービンのタービン静翼構造を提供することにある。
本発明に係るタービン静翼冷却構造は、翼部の内側及び外側にそれぞれ内側シュラウド及び外側シュラウドを有し、前記外側シュラウド側に送り込まれる冷却空気によって前記外側シュラウド、前記翼部及び前記内側シュラウドの冷却が行われるガスタービンのタービン静翼構造において、前記外側シュラウドは、該外側シュラウドを上部外側キャビティと下部外側キャビティとに仕切るインピンジメント板を備え、該インピンジメント板の下流側に設けられた前記下部外側キャビティは、翼前縁側に位置して熱負荷の大きい高熱負荷キャビティ領域及び翼後縁側に位置して熱負荷の小さい低熱負荷キャビティ領域を含む互いに連通しない複数のキャビティ領域に区分され、前記高熱負荷キャビティ領域をインピンジメント冷却した冷却空気の全量が前記外側シュラウドの前縁端部、両側部端部及び後縁端部に廻されて端部冷却を行い、かつ、前記低熱負荷キャビティ領域をインピンジメント冷却した冷却空気の全量が翼後縁側キャビティに入って翼面冷却を行うことを特徴とするものである。
図6に示すように、ガスタービン1は、燃焼用空気を圧縮する圧縮部(圧縮機)2と、この圧縮部2から送られてきた高圧空気中に燃料を噴射して燃焼させ、高温燃焼ガスを発生させる燃焼部(燃焼器)3と、この燃焼部3の下流側に位置し、燃焼部3を出た燃焼ガスにより駆動されるタービン部(タービン)4とを主たる要素とするものである。
外側シュラウド13内の空間は、インピンジメント板40により、冷却空気流の上流側に位置する上部外側キャビティ50と、下流側に位置する下部外側キャビティ60とに区分けされている。下部外側キャビティ60は、さらに前縁キャビティ領域61と後縁キャビティ領域62とに区分けされている(図3参照)。
前縁キャビティ領域61は、外側シュラウド内壁13c、前縁側インピンジメント板40F及び前縁側外側シュラウド底面13aにより囲まれた空間であり、後縁キャビティ領域62は、外側シュラウド内壁13c、後縁側インピンジメント板40R及び後縁側外側シュラウド底面13bにより囲われた空間である(詳細は後述する)。
前縁通路15に挿入されたインサート17の周面には、複数の冷却空気穴17aが形成されている。また、インサート17は、その上端17dが外側シュラウド13の前縁側インピンジメント板40Fの上面で上部外側キャビティ50に連通する開口17bを備えている。さらに、インサート17は、その下端17eが内側シュラウド12の内側キャビティ28に連通する開口17cを備えている。
翼部11の前縁側となる翼内壁11aには、フィルム冷却穴11bが穿設され、インサート17から前縁通路15に吹出した冷却空気は、翼内壁11aをインピンジメント冷却した後、冷却空気穴11bから流出する際に翼面をフィルム冷却する。また、翼部11の後縁側には、複数のピン19が設けられた流路からなるピンフィン冷却部20を備えている。
内側シュラウド12の底面12aは、翼部11と一体に形成され、翼部11の後縁側と内側キャビティ28とを縁切りしている。すなわち、内側キャビティ28は、インサート17の冷却空気穴17aを介して翼部11の前縁側に配置されている前縁通路15と連通しているが、翼部11の後縁側に配置された後縁通路16には連通せず、完全に縁切りされている。
内側シュラウド12の後縁側には、内側シュラウド12の幅方向に沿ってヘッダ26が形成されている。ヘッダ26の下流側には、燃焼ガス中に開口する後縁流路27が設けられている。また、ヘッダ26は、内側シュラウド12の両側部に形成された側部流路(不図示)を介して前縁流路24と連通しているので、前縁流路24を流れる冷却空気は、側部流路(不図示)からヘッダ26を経て、後縁流路27から燃焼ガス中に放出される。
インピンジメント板40は、前縁側インピンジメント板40Fと後縁側インピンジメント板40Rとに区分される板状体である。前縁側インピンジメント板40Fは、前述した前縁キャビティ領域61を形成する面の一部を構成し、後縁側インピンジメント板40Rは、後縁キャビティ領域62を形成する面の一部を構成する。
前縁側インピンジメント板40Fは、図2において、主に前縁端部側の点P1,P2を結ぶ辺P1−P2、前縁側端側の辺P1−P6、前縁側端部の辺P2−P3及び翼部11の前縁背側の内壁11aに沿った辺P3−P5で囲われた面(P1,P2,P3,P5,P6の各点を通る辺で囲われた面)から形成される。
また、後縁側インピンジメント板40Rは、主に後縁端部側の辺P7−P8、後縁側端側の辺P3−P8、後縁側端側の辺P6−P7、翼部11の前縁腹側の内壁11aに沿った辺P3−P4及びリブ14に沿った辺P4−P5で囲われた面(P3,P4,P5,P6,P7,P8の各点を通る辺で囲われた面)から形成される。
上部外側キャビティ50に供給される冷却空気は、前縁通路15に直接流入することはなく、開口17bからいったん前縁側のインサート17内に流入した後、前縁通路15内に流入する。また、蓋板40Mの領域は、前縁キャビティ領域61及び後縁キャビティ領域62に対するインピンジメント冷却の機能を備えていない。
なお、前述のように、後縁側インピンジメント板40R上のその他の領域には、インピンジメント冷却用の小穴41bが穿設されている。
また、外側シュラウド13のインピンジメント冷却は、前縁キャビティ領域61と後縁キャビティ領域62の2分割で行う例を説明したが、下部外側キャビティ60の空間が、前縁側から後縁側に亘って、互いに連通しない2以上の複数の領域に仕切る構造である限り、本発明の範囲内に含まれる。
なお、ヘッダ44には、外側シュラウド13の後縁にて開口する後縁流路43aが設けられている。
上述したように、前縁キャビティ領域61は、翼前縁側に位置して熱負荷の大きい領域(高負荷キャビティ領域)であり、後縁キャビティ領域62は、翼後縁側に位置して熱負荷の小さい領域(低負荷キャビティ領域)である。図3に示す外側シュラウド13の底面において、前縁キャビティ領域61を構成する前縁側外側シュラウド底面13aは、主に前縁側端部の辺P11−P12、前縁側部の辺P11−P16、前縁通路15の翼面背側に沿った辺P13−P14で囲われた面(P11,P12,P13,P15,P16で囲われた面)により形成される。
前縁キャビティ領域61は、前縁側外側シュラウド底面13a、前縁側インピンジメント板40F、外側シュラウド内壁13c及び翼部11の前縁背側の翼壁で囲まれた空間であり、後縁キャビティ領域62は、後縁側外側シュラウド底面13b、後縁側インピンジメント板40R、外側シュラウド内壁13d及び翼部11の前縁腹側の翼壁で囲まれた空間をいう。
すなわち、上述のように、前縁通路15は、外側シュラウド13の上部外側キャビティ50に、インサート17に設けた冷却空気孔17aおよび開口17bを介して連通しているが、前縁キャビティ領域61との間は前縁背側翼部11で完全に縁切りされている。後縁キャビティ領域62と後縁通路16の間は、直接連通してはいないが、後縁側となるインサート18の上端18bが後縁キャビティ領域62に開口しているので、後縁キャビティ領域62は、インサート18の冷却空気穴18aを介して後縁通路16に連通している。
熱負荷の大きい翼部11の前縁側には、冷却空気穴11bが穿設されている。インサート17内に供給された冷却空気は、インサート17に穿設された冷却空気穴17aを通過し、翼内壁11aをインピンジメント冷却する。その後、冷却空気は、冷却空気穴11bを通過する際に翼部11の外面をフィルム冷却した後、燃焼ガス中に放出される。
第1の冷却空気系統(図2に矢印A1で示す)は、前縁インピンジメント板40Fに穿設された小穴41aを通って前縁側外側シュラウド底面13aをインピンジメント冷却した後、この冷却空気の全量が外側シュラウド13の端部に廻されて端部冷却を行う。
この冷却空気は、前縁端部の端部冷却を行った後、左右の側部端部に設けた側部流路44を通って後縁端部側のヘッダ43に導かれ、後縁流路43aから燃焼ガス中へ流出する。この結果、冷却空気が側部流路44及びヘッダ43を通って後縁流路43aから流出する過程において、外側シュラウド13の両側部端部及び後縁端部の端部冷却が行われる。
この場合、冷却空気量の調整は、前縁側インピンジメント板40Fに穿設されたインピンジメント冷却用の小穴41aの穴径及び/または穴数を変えることにより調整可能であるが、この系統の下流端となる後縁流路43aの断面積を変えても流量の調整が可能である。
この場合、冷却空気量の調整は、後縁側インピンジメント板40Rに穿設されたインピンジメント冷却用の小穴41bの穴径及び/または穴数を変えることにより調整が可能である。さらに、冷却空気量の調整は、インサート18に穿設された冷却空気穴18aの穴径及び/または穴数によっても調整可能である。
冷却空気量の流量調整は、インサート17に穿設された冷却空気穴17aの穴径及び/または穴数を変えるか、あるいは、内側シュラウド12の後縁端部にある後縁流路27の流路断面積を変えることにより可能となる。
また、前縁側の翼面及び内側シュラウド12の端部を冷却対象とする第3の冷却空気系統は、第1の冷却空気系統及び第2の冷却空気系統とは区分けされて独立した流路系統を備え、互いに独立して冷却空気量の調整が可能である。従って、翼面、外側シュラウド及び内側シュラウドの熱負荷の状況を見ながら、上記3系統の各々の冷却空気量を独立に調整できるので、静翼廻りの最適な冷却空気量の選定が可能であり、静翼全体の冷却空気量の低減に有効である。
このような構成とすれば、熱負荷の厳しい前縁キャビティ領域61において、インピンジメント板40Fが前縁側外側シュラウド底面13aと近い位置に設置されているので、インピンジメント冷却の冷却効果を増すことができる。この結果、冷却空気量を低減するなど、冷却空気の有効利用が可能となる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
11 翼部
11a 翼内壁
11b 冷却空気穴
12 内側シュラウド
13 外側シュラウド
14 リブ
15 前縁通路
16 後縁通路
17,18 インサート
17a,18a 冷却空気穴
17b、17c 開口
19 ピン
20 ピンフィン冷却部
21,41 小穴
22,40 インピンジメント板
24,42 前縁流路
26,43 ヘッダ
27,43a 後縁流路
40F 前縁側インピンジメント板
40R 後縁側インピンジメント板
40M 蓋板
44 側部流路
50 上部外側キャビティ
60 下部外側キャビティ
61 前縁キャビティ領域(高熱負荷キャビティ領域)
62 後縁キャビティ領域(低熱負荷キャビティ領域)
Claims (4)
- 翼部の内側及び外側にそれぞれ内側シュラウド及び外側シュラウドを有し、前記外側シュラウド側に送り込まれる冷却空気によって前記外側シュラウド、前記翼部及び前記内側シュラウドの冷却が行われるガスタービンのタービン静翼構造において、
前記外側シュラウドは、該外側シュラウドを上部外側キャビティと下部外側キャビティとに仕切るインピンジメント板を備え、
該インピンジメント板の下流側に設けられた前記下部外側キャビティは、翼前縁側に位置して熱負荷の大きい高熱負荷キャビティ領域及び翼後縁側に位置して熱負荷の小さい低熱負荷キャビティ領域を含む互いに連通しない複数のキャビティ領域に区分され、
前記高熱負荷キャビティ領域をインピンジメント冷却した冷却空気の全量が前記外側シュラウドの前縁端部、両側部端部及び後縁端部に廻されて端部冷却を行い、かつ、前記低熱負荷キャビティ領域をインピンジメント冷却した冷却空気の全量が翼後縁側キャビティに入って翼面冷却を行うことを特徴とするタービン静翼構造。 - 前記インピンジメント板は、前記高熱負荷キャビティ領域及び前記低熱負荷キャビティ領域に対応するようにして前縁側インピンジメント板及び後縁側インピンジメント板に区分され、前記前縁側インピンジメント板に穿設された小穴の合計開口面積が前記後縁側インピンジメント板に穿設された小穴の合計開口面積より大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載のタービン静翼構造。
- 前記前縁側インピンジメント板が、前記後縁側インピンジメント板より前縁側外側シュラウド底面に近づけられていることを特徴とする請求項2に記載のタービン静翼構造。
- 前記インピンジメント板は、前記翼部に形成されて翼面のフィルム冷却を行う冷却空気を流出させる前縁通路に挿入されたインサートに連通する開口を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のタービン静翼構造。
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