JP5076970B2 - 課電式電路事故探査装置及び事故探査方法 - Google Patents
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Description
まず、完全地絡及び抵抗地絡の場合について説明する。ソレノイドやピックアップコイルなどのサーチコイル方式の磁界センサ3は、次の式(1)に示すように、磁界(電流)の時間微分値に比例した電圧ν[V]を出力する。なお、この式(1)において、nは磁界センサ(コイル)3の巻数を示し、φは磁束[Wb]を示し、Sは磁界センサ3の断面積[m2]を示し、Bは磁束密度[T]を示し、μは磁界センサ3の鉄心の透磁率[Wb/A・m]を示し、rは電線と観測点との距離[m]を示し、Iは電流[A]を示す。
以上のような磁界の時間微分値検出方式にすると、放電性地絡事故の場合、課電パルス電圧を印加したときに、放電現象により変動の激しい不安定な電流が流れてしまう。時間変動の激しい不安定な電流が流れる際には、電流値が完全地絡(地絡抵抗≒0Ω)の際と同程度であっても、時間変動が大きいため高周波成分が大きく、非常に大きな値として検出されてしまう。これを避けるには、周波数特性補償用LPF(積分器)を取り付け、受信周波数特性を平坦にして過大な観測値にならないようにすれば良い。そのため、放電性地絡事故の場合のみ積分器を選択スイッチにより切り替えて接続することにより、微分特性を補償して周波数特性を平坦にすることができる。微分要素(サーチコイル式磁界センサ)と積分要素(積分器)の周波数特性と、それらを合成した周波数特性を図5に示す。なお、地絡事故が放電性であるか否かは、積分器を接続しない状態で観測レベルが異常に大きく、その変化が激しいことで判別することができる。
ところで、課電パルス電流は図3に示したように振動するため、この課電パルス電流の進行方向、すなわち、課電点から事故点へのルートの中間においてどちらが事故点方向かを捉えることが難しい。しかしながら、磁界は電線を流れる電流の方向に対して右回りに発生するため(アンペールの法則)、電流の立ち上がり方向、すなわち、磁界の時間微分値の最初の(立ち上がり時の)極性を捉えることで、事故点の方向を判定することができる。
事故区間の配電系統に内部に鉄筋(常磁性体)が入った電柱がある場合、課電パルス電流の電磁誘導により、この鉄筋の入ったコンクリート柱に磁界が誘起される。電柱内の鉄筋は離散的に配置されているが、透磁率は電柱内一定として、電柱断面を含み電線と直交する平面(図8に示す点線で囲まれた平面)における磁界分布をシミュレーションにより求めると次のようになる。まず、シミュレーションに使用した数式を以下の式(8)に示す。なお、この式(8)において、B(x,y)は、上述の電柱を含む平面における磁束密度[T]のxy平面分布を示し、xは電柱表面からの距離[m]を示し、yは地表からの高さ[m]を示し、μ(x,y)は透磁率[Wb/A・m]のxy平面分布を示し、r(x,y)は電線からxy平面上の点までの距離[m]を示し、Iは電流[A]を示す。
図11に示すように、事故区間における配電系統に、電線(高圧系統)に加えて共同接地線が配設されている場合、課電装置50により電線と大地(アース)との間に流れる課電パルス電流は、事故点において共同接地線にも流れ込み、この共同接地線を通して各電柱の接地線に分布して流れる。そのため、事故側では電線を流れる課電パルス電流と逆方向の電流が共同接地線を流れることとなり、事故点の直近の区間では課電パルス電流による磁界(の微分値)が小さく観測されてしまう。また、分岐点(電柱Pa)から非事故側(電柱Pc側)では、事故側であるかのように共同接地線を流れる電流が観測される。そこで、共同接地線がある場合に、事故点を明確にする探査方法の一例をこの図11に従って説明する。
3 磁界センサ
4 選択スイッチ
5 積分器
8 表示部
50 課電装置
Claims (9)
- 事故区間の電路に課電装置によりパルス電圧を課電し、電線にパルス電流を流して事故点の探査を行う課電式電路事故探査装置であって、
前記パルス電流により前記電線の周りに発生する磁界の時間微分値を検出する磁界センサと、
前記磁界センサにより検出された前記磁界の時間微分値の立ち上がり時の極性を表示する表示部と、を有する課電式電路事故探査装置。 - 前記表示部は、前記磁界の時間微分値の立ち上がり時の極性により、前記パルス電流の流れる方向を表示するように構成された請求項1に記載の課電式電路事故探査装置。
- 前記表示部は、前記磁界の時間微分値の立ち上がり時の極性とともに、当該磁界の時間微分値の大きさを表示するように構成された請求項1または2に記載の課電式電路事故探査装置。
- 前記磁界センサにより検出された前記磁界の時間微分値を積分する積分器と、
前記磁界センサと前記積分器とを接続・切断する選択スイッチと、を有する請求項1〜3いずれか一項に記載の課電式電路事故探査装置。 - 事故区間の電路に課電装置によりパルス電圧を課電して電線にパルス電流を流した状態で、前記パルス電流により前記電線の周りに発生する磁界の時間微分値を検出する磁界センサと、前記磁界センサにより検出された前記磁界の時間微分値の大きさ、及び、当該磁界の時間微分値の立ち上がり時の極性を表示する表示部と、を有する課電式電路事故探査装置を用いて、事故点の探査を行う事故探査方法。
- 前記磁界の時間微分値の立ち上がり時の極性により、前記パルス電流の流れる方向を判定して前記事故点の探査を行う請求項5に記載の事故点探査方法。
- 前記事故区間に設置されている電柱の表面から所定の距離だけ離して前記課電式電路事故探査装置を位置させて前記磁界の時間微分値を計測することにより、前記事故点の探査を行う請求項5または6に記載の事故探査方法。
- 前記事故区間に設置されている電柱の表面の近傍に前記課電式電路事故探査装置を位置させて前記磁界の時間微分値を計測することにより、前記事故点の探査を行う請求項5または6に記載の事故探査方法。
- 前記事故区間に共同接地線が配設されているときに、
当該事故区間に設置されている電柱を含むように前記電線に沿って前記課電式電路事故探査装置を移動させて前記磁界の時間微分値を計測し、前記電柱を境に前記磁界の時間微分値の大きさが1/2以下になったときに、当該電柱に事故点があると判定する請求項5または6に記載の事故探査方法。
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