JP5075665B2 - 二次元アレイ超音波プローブ - Google Patents

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Description

本発明は、二次元超音波プローブに係り、特に医療用として最適な超音波プローブに関する。
超音波プローブは、例えば魚群探知器や生体を対象とした超音波診断装置などに用いられている。これらの超音波プローブには、超音波ビームを人体等に送信する最上面を保護するための表面保護層、あるいは音響保護能を持った音響レンズが用いられている。
超音波プローブには振動子を1次元状に配列する1次元アレイ超音波プローブと、振動子を2次元状に配列する2次元アレイ超音波プローブが知られている。
最近では対象物の体積を知ることが可能な高性能の2次元アレイプローブの開発が望まれている。
一次元アレイ超音波プローブにおいては、各振動子から発信された超音波を収束させるために最表面には凸状の音響レンズを形成するとともに、音響レンズの音響インピーダンス(AI=音速×密度)を人体の音響インピーダンスに近づける。しかし、音速に関しては超音波の収束のために1000 m/s以下の材料を用いることが有利であるためにゴム密度が1.5g/cm以上の材料が用いられる。これに対して二次元アレイ超音波プローブでは、各振動子から発せられる超音波を電子的に収束させるため、音響インピーダンスを人体の音響インピーダンスに近づけるだけでなく、音速も1500m/s前後の材料であることが望まれる。そのため、一次元超音波プローブに使用されていた音響レンズの材料に変る、二次元超音波プローブ用の新たな材料が求められている。
一方、人体の音響インピーダンスに近い材料としてブタジエンゴムが知られており、これを一次元超音波プローブの音響レンズとして使用した例がある(特許文献1)。
しかしながら、二次元超音波プローブに用いられる表面保護層は、一次元超音波プローブに用いられる音響レンズに比べて膜厚が薄く平坦であるため、表面保護層にブタジエン系ゴムを使用するには、その機械的強度等の面において最適化が必要である。また、生体適合性試験の中の、刺激性試験(皮肉反応)、感作性試験、細胞毒性試験などが良好であることも必要である。
特開平8−615号公報
本発明は、人体に対する音響整合性が高く、機械的強度に優れ、さらに特に細胞毒性に優れた表面保護層を有する二次元超音波プローブを提供することを目的とする。
本発明の二次元アレイ超音波プローブは、複数の圧電振動子を二次元的に配列した二次元超音波アレイと、前記二次元アレイの超音波放出面側に形成された表面保護層とを有し、前記表面保護層は、ポリブタジエン100重量部に対して1−5重量部のグリセリンとを合成したポリブタジエン系ゴムを含有することを特徴とする。
前記表面保護層は、さらに、5重量部以下の無機微粒子を含有させることができる。
前記表面保護層は、37℃におけるショアA硬度が50度以上、引き裂き強度が20N/mm以上で密度が0.96g/cm3−1.04g/cm3であり、音速が1450−1600m/sの範囲内とすることが好ましい。
前記ポリブタジエン系ゴムは、イソシアネート化合物を含有する硬化剤で硬化させたものとすることができる。
また、本発明の超音波プローブは、生体適合試験の内で特に細胞毒性に優れ人体用に最適である。
本発明は、人体に対する音響整合性が高く、機械的強度、安全性に優れた表面保護層を有する二次元超音波プローブを提供することができる。
図1は、二次元超音波プローブの概略斜視図であり、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
図1に示す2次元超音波プローブは、圧電振動子1を二次元的に配列した二次元超音波アレイを有している。この二次元超音波アレイの超音波放出面側には音響整合層2、表面保護層3が順次積層されている。一方、二次元超音波アレイの超音波放出面とは反対側の面(背面)にはバッキング材4が配置されている。
圧電振動子1は、それぞれ圧電体と、圧電体の超音波放出面及び背面とに形成された一対の電極とを有し、背面側の電極はバッキング材を貫通する配線5を介して制御手段に接続されている。超音波放出面側の電極は音響整合層2を貫通し、音響整合層2と表面保護層3との間に形成された配線(図示せず)を介して制御手段に接続されている。
このような構成の超音波プローブの動作を説明する。圧電振動子に形成されている一対の電極間に電圧を印加して、圧電振動子を共振させることにより超音波送受信面から超音波を送信する。受信時には、超音波送受信面から受けた超音波によって圧電振動子を振動させ、この振動を電気的に変換して信号とする。また、この圧電振動子1の二次元的配列により、超音波の全方位的なフォーカシングを電子的に行なうことが可能になる。
圧電振動子1に用いられる圧電体は2成分系あるいは3成分系のセラミックからなる通常の圧電材料を使用することができ、二次元マトリクス状に配列してアレイ化している
医療用の二次元超音波プローブとして使用する際は、圧電振動子の個々の振動子サイズとしては、通常、各電極面積が0.01m2〜0.2m2、厚さ0.2mm〜0.6mm程度のサイズの圧電振動子1を用い、このような圧電振動子10個×10個〜100個×100個程度を二次元アレイとする。電極面積が0.2m2よりも大きい場合や、二次元アレイに用いる圧電振動子数が100個×100個よりも多い場合、二次元アレイの超音波放出面が大きくなりすぎ、人体内、特に肋骨の間から診察を行う循環器用プローブの測定に適さなくなる。個々の振動子の電極面積が0.01m2よりも小さくすることは加工精度的に困難である。圧電振動子の厚さは、使用する圧電振動子の種類と発信させる超音波の波長とを考えて決定する。圧電振動子数が10個×10個よりも少ないと、精度の高い診断ができなくなる恐れがある。
音響整合層2は、生体と圧電振動子1との間に音響インピーダンスの整合を取るものであり、生体の音響インピーダンスと圧電振動子1の音響インピーダンスの間の音響インピーダンスを持つ材料が使用される。異なる材料からなる層を複数積層して音響インピーダンスの整合を取ってもよい。
バッキング材4は圧電振動子1の背面に設けられて圧電振動子1を機械的に支持するとともに、圧電振動子1の背面から放出される超音波を減衰させる。超音波を十分に減衰させるためには、使用する超音波の波長に対して十分な厚さのものを使用することが望ましい。
次に、表面保護層3について説明する。
表面保護層は、次の7つの特性を満たすことが望まれる。
(1)表面保護層は、生体と間で超音波の反射を最小にすることが望まれている。このため、表面保護層はその音響インピーダンス(AI=音速×密度)が生体の皮膚の37℃における音響インピーダンスである1.53MRaylsに近似する材料から作られることが望まれている。また2次元超音波プローブ用の音響保護層は、その音速が生体内の音速(約1530m/s)とほぼ同等で、さらに密度も生体とほぼ同等な0.96g/cm3−1.04g/cm3の材料から作られることが望まれている。
(2)表面保護層は、超音波振動子から人体へ向けて発せられた超音波の経路であり、また、人体で反射されたこの超音波を超音波振動子が受信する際の経路になる。そのため超音波振動子が超音波を感度良く送受信するために、表面保護層は、使用周波数において減衰率が小さい材料から作られることが望まれている。この減衰率の値としては例えば5MHzの周波数において37℃で5dB/cm/MHz以下、さらには4dB/cm/MHz以下であることが望まれる。
(3)表面保護層は、二次元超音波プローブの使用時において生体に相当の圧力で押し当てられる。この場合、音響保護層のゴム硬度が不足すると、音響保護層の変形が起こり、超音波の焦点がずれて得られた画質が低下するおそれがある。このため、特に2次元アレイ用音響保護層はヂュロメータによるシュアA硬度で37℃において50度以上の硬さを有する材料、さらには60度以上の材料であることが望まれている。
(4)表面保護層は、成型性に優れ、特に引き裂き強度が大きい材料から作られることが望まれている。すなわち中心周波数が2〜5MHz程度の2次元超音波プローブに用いられる音響保護層は通常0.5〜1.0mm程度の厚さで使用されるが、この音響保護層の引き裂き強度が低い場合には、単に二次元超音波プローブの故障になるだけでなく、保護層を通じての電流が人体に流れるリスクがある。一方、音響インピーダンスが人体と同レベル程度に低い材料は一般に引き裂き強度が低いため、引き裂き強度が10N/mm以上の材料の開発が望まれている。
(5)表面保護層は、その層内に含有される添加物を含めて、使用する構成材料が生体に対して安全であることが望まれている。これらの安全性の確認には生体適合性試験として刺激性試験(皮肉反応)、感作性試験、細胞毒性試験などが適応されるがこれらに対して良好な特性を持つことが必須である。
(6)表面保護層は、音響カップリングゲルまたは消毒薬として一般的に用いられるグリセリン水溶液、エチルアルコール、エチレンガスなどに対しても化学的に安定な材料であること、熱や光による劣化の少ない材料から作られることが望まれている。さらに人体への安全性確保の観点から高湿度の状態でも高い絶縁抵抗を持つことが必要である。
本発明者らは、音響インピーダンスが人体の音響インピーダンスに近いブタジエンゴムに着目し、その特性を調べてみたところ機械的な強度が二次元超音波プローブに用いるには十分なものでないことが分かった。また、ブタジエンゴム中に無機粒子を分散させることによる機械的な強度の向上を試みたところ、無機粒子の添加量を増加させるにしたがってブタジエンゴムの強度は増加したが、十分な強度を得るためには大量の無機粒子が必要となり、その結果音響インピーダンスが人体のそれに比べて著しく高いものになってしまった。
本発明者らは、鋭意研究の結果、ポリブタジエンにグリセリンを反応させたポリブタジエン系ゴムを作製し、この材料がポリブタジエンに対して音響インピーダンスの変化が小さく、且つ機械的強度が大きく、さらに生体適合性が高いことを見出して本発明に至った。
以下、本実施形態に係る表面保護層について、より詳細に説明する。
本実施形態に用いられる表面保護層は、ポリブタジエン100重量部とグリセリンの1−5重量部とを合成したポリブタジエン系ゴムである。
ポリブタジエンに対するグリセリンの添加量を1重量部未満にすると、この組成物で形成される表面保護層の硬度が低下し、本発明者の実験によればショアA硬度で50以下となってしまった。さらに引き裂き強度も低下し、10N/mm以下となった。すわなち、機械的な強度を高め、信頼性の高い表面保護層を得るためには、グリセリンを1重量部以上、さらには2重量部以上とすることが好ましい。また、グリセリンの比率が5重量部を超えると、音響インピーダンスが高くなり、本発明者の実験によれば1.65MRayls以上となってしまった。また、その減衰率も高くなり、5dB/cm/MHz以上となってしまった。すなわち、超音波の送受信効率を高めるために、5重量部以下、さらには4重量部以下とすることが好ましい。
ポリブタジエンとして、例えば化学式(1)で示すような液状ポリブタジエンを使用した場合など、必要に応じて化学式(2)で示すようなジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などの硬化剤を用いてポリブタジエン系ゴムを合成することができる。また、この時得られるポリブタジエン系ゴムの化学式の一部を化学式(3)に示す。
Figure 0005075665
また、液状ポリブタジエンの分子量や、硬化剤の添加量によって、得られるポリブタジエン系ゴムの、ショア硬度や密度等を調整することができる。例えば、ショアA硬度50以上、密度0.96−1.04、音速が37℃において1450−1600m/sとなるようにするためには、液状ポリブタジエンの数平均分子量を2000−4000程度、ポリブタジエン及びグリセリンとの総量に対する硬化剤の量を20wt%−40wt%程度とすることが望ましい。
表面保護層には、ポリブタジエン系ゴム中に無機微粒子を分散させることで、その成形性や強度を高めることができる。この無機微粒子は、その添加量が増加するに従って表面保護層の減衰率が増加してしまう、あるいは音響インピーダンスが大きくなりすぎてしまう。このようなことから、ポリブタジエン系ゴムに対する無機微粒子の含有率が0.1〜5重量部とすることが好ましい。また、ブタジエン系ゴム中の無機微粒子の分散性を良くするために、あるいは表面保護層の減衰率の増加を抑制するために、無機微粒子は5nm〜100nm、さらには5nm〜30nmの平均粒径を有するものを使用することが好ましい。なお、平均粒径は測定する粉末の比表面積(m2/g)の値を用いて、粉末形状が球状であると仮定して計算から求めることができる。この無機微粒子の具体的な材料としては、例えば酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミナ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化イッテリビウム、酸化鉄、カーボンを挙げることができる。
無機微粒子は、表面を有機樹脂で被覆した状態で使用することを許容する。この有機樹脂としてはシリコーン樹脂が一般的であり例えばメチコーン、ジメチコーンを用いることができる。シリコーン樹脂被覆酸化物粉末は、例えばこれらのシリコーン樹脂の溶液に無機微粒子を浸漬した後、この溶液から粉末を取り出し、乾燥処理することにより得ることができる。このようなシリコーン樹脂被覆無機微粒子は、ブタジエンゴムに容易に練り込みことができ、その粉末の分散性も向上できるため、表面保護層の減衰をより抑え、さらに成型性、強度もより向上させることが可能になる。なお、シリコーン樹脂の被覆量は、無機微粒子に対して1wt%〜10wt%程度とすれば良い。
また、表面保護層中に加硫剤を含有する。加硫剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネート類、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(4−フェニルイソシアネート)チオホスフェートなどの芳香族ポリイソシアネート類が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用に供することが出来る。
また、表面保護層中には、その他各種添加剤を含むことを許容し、例えば有機物フィラー、着色顔料など、その量が1wt%程度以下であれば上述した表面保護層に求められる各種特性を大きく損なうことはない。
次に実施例、比較例及び参考例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
(実施例1−8、比較例1−5)
液状ポリブタジエン(出光石油化学社製、Poly bd R-45HT、1,4-結合80%及び1,2-結合20%、分子量2800)と、グリセリンと、硬化剤としてのジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を準備し、表1に示す重量比で混合した。なお、表1に示される各比率は以下の通りである。ポリブタジエンの100重量部に対してのグリセリンの添加重量部及び硬化剤であるMDIの添加重量部及びその他の添加物の添加重量部である。
得られた混合物をフッ素処理された容器中で24時間、50℃で加熱し、さらに室温で100時間養生して特性を安定させることで表面保護層用素材を合成し、その後容器から取り出した。
得られた表面保護層素材を、以下に示す特性評価ごとに、それぞれの形状に加工し、得られたサンプルを以下の方法により評価した。
1)密度
表面保護層用素材を、それぞれ30mm×30mm×1mmに加工した。得られたサンプルの25℃における空気中での重量と、水中における重量とを測定し、アルキメデス法により算出した。
2)音速および減衰率
表面保護層用素材を、それぞれ30mm×30mm×1mmに加工した。
音速は、5MHzの測定用プローブを用い、37℃に保持された水中にサンプルを保持し、5MHzの測定用超音波プローブからサンプルに超音波を送信し、その反射エコーを測定した。さらに、サンプルを用いずにそのまま37℃に保持された水中に超音波を送信し、その反射エコーを測定した。
サンプルの有無による反射エコーの時間差とサンプル厚みから音速を求めた。音速(C)の算出は各温度における水の音速を基準として、水とサンプルの透過波形の時間差を利用し、以下の式を用いて算出した。
C=C0/[L−C0(Δt/d)]
ここで、C0は水の音速、dは試料の厚み、Δtは水と試料の透過波形の最初のピークを越した後のゼロクロス点の時間差を示す。
減衰率は、温度を37℃で測定した。サンプルの反射エコーの強度差とサンプル厚みから所定の方法で減衰率を求めた。
3)音響インピーダンス(AI)
AIは、37℃にて測定した密度と音速の積として求めた。
4) 硬度
表面保護層用素材を、それぞれ50mm径×10mmに加工した。得られたサンプルをジェロメータを用いてショアA硬度を37℃にて測定した。
5)引き裂き強度
表面保護層用素材を、JIS6252に従い、110mm×25mm×2mmの形状のクレセント形状試験片に加工し、インストロン試験機を用いてn=5で測定を行い、所定の方法で引き裂き強度を求めた。
6)細胞毒性
細胞毒性試験は次の方法で行った。
表面保護層用素材をそれぞれ約2×15mmに細切し、約2.5gを秤量しEOG滅菌(40℃、6時間)し、これをサンプルとし6ウェルプレートに入れた。
V79細胞を入手し、ウシ胎児血清(5vol%)及びピルビン酸ナトリウム(1mmol/L)を含むEagle‘s MEM培地(M05培地)を用い、CO2インキュベーター(CO2濃度5%、37℃)内で培養した。
6ウェルプレートに、サンプルが0.1g/mlとなるようにV79細胞を培養させた培地を加え、CO2インキュベーター(CO2濃度5%、37℃)に24時間静置して抽出したものを100%培地抽出原液とした。
100%培地抽出原液を得た後、速やかに新鮮なM05培地で希釈し、濃度の異なる試験液(サンプル濃度:20、40、50、60、80、100%)を調製した。
その後、V79細胞を0.25%トリプシンを用いて単離した後、細胞濃度103個/mLの懸濁液とし、この細胞懸濁液0.1mL(100個)を2mLの培地が入っている6ウェルプレートに分注した。24時間後に、ウェル内の培地を除き、各濃度の試験液または新鮮なM05培地(陰性対照)2mLと交換し、6日間培養した。培養後、培地を除き、メタノールで固定し、10vol%ギムザ液で染色した。ウェルあたりのコロニー数を多目的高速画像解析装置(Model No.:PCA−11、システムサイエンス)および目視で計測し、陰性対照(新鮮なM05培地100%)と比較して各処理群の相対コロニー形成率(%)を算出し、IC50値を求めた。

これらの測定値を表1に示す。
(比較例6)
表面保護層用素材としてシリコーンゴムを準備し、上記実施例1−8、比較例1−5と同様にして特性評価をした。これらの測定値を表1に併記する。
(参考例1)
グリセリンに代えてエチレングリコールを用い、表1に示す重量比で実施例1−8、比較例1−5と同様にして表面保護層用素材を合成し、同様に特性評価をした。これらの測定値を表1に併記する。
Figure 0005075665
表1から明らかなように本発明の実施例に示された組成は音速、密度が人体と近く、音響インピーダンスが1.48−1.52Mralysであり、さらに減衰率が4.8dB/cm/MHz以下と小さい。
さらにショアA硬度が50度以上と高く、引き裂き強度も10N/mm以上と大きく信頼性に優れた超音波プローブ用の音響保護層を作成できる。
これに対し、比較例1で示したグレセリンを含まないブタジエンゴムは、減衰率は小さいが、ショアA硬度が低く、さらに引き裂き強度も低い欠点がある。比較例2で示したグリセリンを10重量部含むブタジエンゴムは硬度や強度は充分であるが減衰率が大きいばかりでなく、音響インピーダンスも人体の値からかなり外れてしまう欠点がある。硬度を増加させるために一般に用いられる酸化珪素(SiO2)のフィラーを添加した場合にはショアA硬度を50度以上とするには30wt%以上の添加が必要となり、得られたゴムの音響インピーダンスは1.87MRalysと高くなるばかりでなく、減衰率も7dB/cm/MHzとなり、本用途に用いるには適当でない。また、液状ブタジエンゴムの粘性が増加するために作業性に劣り、添加したSiO2粉が液中で沈殿を生じて均一性が損なわれる場合もある。
また、本発明のグリセリンを硬化剤として用いた実施例ではIC50値が1以下であり、シリコーンゴム系材料と同等である。しかしながらエチレングリコールを用いた参考例1ではIC50値が28とやや高い結果となった。
本発明の実施形態に係る超音波プローブの斜視図。
符号の説明
1・・・圧電振動子
2・・・音響整合層
3・・・表面保護層
4・・・バッキング材
5・・・配線

Claims (5)

  1. 複数の圧電振動子を二次元的に配列した二次元超音波アレイと、
    前記二次元アレイの超音波放出面側に形成された表面保護層とを有し、
    前記表面保護層はポリブタジエン100重量部とグリセリン1−5重量部とを合成したポリブタジエン系ゴムを含有することを特徴とする二次元アレイ超音波プローブ。
  2. 前記表面保護層は、さらに、5重量部以下の無機微粒子を含有することを特徴とする請求項1記載の二次元アレイ超音波プローブ。
  3. 前記表面保護層は、37℃におけるショアA硬度が50度以上、引き裂き強度が10N/mm以上で密度が0.96−1.04g/cm3であり、音速が1450−1600m/sの範囲内にあることを特徴とする請求項1又は2記載の超音波プローブ。
  4. 前記ポリブタジエン系ゴムは、イソシアネート化合物を含有する硬化剤で硬化させたものであることを特徴とする請求項1記載の二次元アレイ超音波プローブ。
  5. 人体用であることを特徴とする請求項1記載の二次元アレイ超音波プローブ。
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