JP5062462B2 - 冷却媒体、冷却ユニット、及び冷却装置 - Google Patents
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Description
また、微生物培養による生物生産において,菌種によっては非常に厳しい温度管理が必要となる。そのような微生物を培養するためのバイオリアクターにおける温度管理には主にセンサやプログラマブルなヒータ出力を利用した温度制御がなされている。
このように、従来の方法では、微細な領域における冷却又は温度制御を精度よく行うことが困難であった。
すなわち、エマルジョンは油中水滴型、水中油滴型等の乳化形式や分散相滴の直径分布等の内部構造、温度条件等によって流体力学的性質や熱的性質が大きく異なるものであり、その複雑性のゆえに、伝熱媒体設計に資するに十分な基礎的知見が得られていないのが現状であるところ、本発明者らは、特定のエマルジョンが伝熱媒体として優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の冷却媒体は、高沸点成分を連続相とし、低沸点成分を分散相として構成したエマルジョンを含むものである。
すなわち、冷却媒体自体が温度設定機能を有し、伝熱面温度が低沸点成分の沸点より高くなった場合に伝熱面近傍の微小滴は沸騰して蒸気泡が発生し伝熱面より潜熱を奪い、また、その発生した蒸気泡は雰囲気によって沸点以下に冷却されると凝縮し潜熱を放出する。このようなメカニズムにより冷却媒体自体が温度設定機能を有するため、伝熱機器の温度制御を安定、精密、かつ高効率に行うことができる。すなわち、所定の温度領域において温度制御することができる。また、設定温度近傍における熱伝達率の利用効率を高めることができるので、冷却媒体の流量を少なくしても伝熱機器の温度制御をすることができ、冷却装置を小型化することができる。
上記エマルジョンは、水中油滴型エマルジョンであっても、油中水滴型エマルジョンであってもよい。
「高沸点成分を連続相とし、低沸点成分を分散相として構成」とは、上記エマルジョンは沸点の異なる2種の成分を含み、相対的に沸点が高い高沸点成分を連続相とし、相対的に沸点が低い低沸点成分を分散相としてエマルジョンを構成するとの意味である。
特に、前記エマルジョン中、前記連続相の体積割合が78%であり、前記分散相の体積割合が20%であり、使用される界面活性剤の体積割合が2%であることが好ましい。
このような好適な構成とすることにより、本発明の効果を一層達成することができる。
水に、沸点の低い不溶性媒体であるn−ヘキサン(大気圧下における沸点69℃)を混入・安定化させた水中油滴型エマルジョンを含む構成としたことにより、微細な領域を精度よく伝熱制御することができる。
冷却系の圧力を変化させることにより水や添加油分の沸点が変化する。本発明の冷却媒体は連続相及び分散相の沸点差で伝熱制御を行っているため、冷却系の圧力を変化させることによって温度制御領域を広く設定することができる。
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルは、(C2H4O)n・C15H24Oで表される(CAS番号:9016−45−9)。ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの親水親油バランス(HLB)は10.4のものが好ましい。
このように分散相の油滴直径を制御することにより、発生する蒸気泡の量及び移動距離を適切に調整することができ、微細な領域においての伝熱促進が可能である。
このような粘性係数を有することにより、微細な領域において対流伝熱を適切に制御することができる。
鉱油(沸点は300℃以上)、シリコンオイル、又は流動パラフィンに、これに対して沸点の低い水を混入・安定化させた油中水滴型エマルジョンを含む構成としたことにより、微細な領域を精度よく伝熱制御することができる。本好適な構成は、100℃を超える高温領域の伝熱制御において有用である。
ソルビタンモノオレエートは、C24H44O6で表され(CAS番号:1338−43−8)、親水親油バランス(HLB)は4.3のものが好ましい。
本発明の冷却ユニットは、被冷却体を冷却するための冷却ユニットであって、上記冷却媒体と、前記冷却媒体の移送を促進する冷却媒体移送ポンプと、前記被冷却体の下流に設けられた放熱器と、前記放熱器の下流に設けられた攪拌装置と、前記攪拌装置から排出された冷却媒体を前記被冷却体へ還流する循環系と、を含むものである。
本発明の冷却ユニットによれば、動作限界温度を有する被冷却体の微細な領域を精度よく冷却又は温度制御することができる。
本発明のパーソナルコンピュータは、上記冷却ユニットを備えたものである。パーソナルコンピュータが備えるCPU素子の動作限界温度は約80℃であり、上記冷却媒体を用いることによりCPU素子からの発生熱を効率よく放熱し、安定して精度よく動作限界温度以下に温度制御することができる。
バイオリアクターは、生化学反応を有用物質の生産、環境汚染物質の分解、分析、医療等に応用するシステムであり、攪拌型リアクター、エアリフト型リアクター、気泡塔型リアクター、充填型リアクター等がある。
体積割合0.78の純水、体積割合0.2のn−ヘキサン(試薬特級)、及び体積割合0.02のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB=10.4)を混合し、スクリュー型攪拌器を用いて混合・安定化させて、水中油滴型のエマルジョンを得た。
電流供給系は直流安定化電源及びパワーサプライコントローラで構成し、パーソナルコンピュータによってGP-IB制御した。電源装置にはシャント・ユニットを付加して補償するとともに、そのリードバック値を計測することによって電流値を求めた。細線温度は、抵抗値の変化から決定し、その抵抗値は細線間の電圧・電流値から求めた。計測系はデジタルマルチメータとパーソナルコンピュータとで構成し、同系列でGP-IB制御した。温度制御系はヒータ、攪拌器、温度制御装置及び変圧器で構成した。
図2に示すように、実施例の冷却媒体は過熱度の低い領域で熱伝達率は低い値を示し、過熱度の上昇とともに熱伝達率は急激に増加し、その後増加率は減少し、極大値を示した後に熱伝達率が減少し、さらに単調増加を示した。また、過熱度△50K付近で沸騰音の
発生を確認した。
図2に示すように、実施例の水中油滴型乳化流体では、熱伝達率変化にいくつかの変節点を有することが判った。これは、n−ヘキサンを分散相として内在させたことによる熱輸送変化及びn−ヘキサンの相変化と再凝縮、及び蒸気膜形成とその離脱などによって伝熱モードが変化したためと考えられる。
体積割合0.78の純水、体積割合0.2のn−ヘキサン(試薬特級)、及び体積割合0.02のソルビタンモノオレエート(HLB=4.3)を混合し、スクリュー型攪拌器を用いて混合・安定化させて、低沸点成分(n−ヘキサン)を連続相とし、高沸点成分(水)を分散相とする油中水滴型のエマルジョンを得た。
伝熱面にNiワイヤーを用いた以外は実施例と同様にして、伝熱特性を測定した。
Claims (10)
- 高沸点成分を連続相とし、低沸点成分を分散相として構成した水中油滴型エマルジョンを含む、冷却媒体であって、
低沸点成分の液滴の沸騰により蒸発潜熱を奪い、かつ、前記低沸点成分の沸騰により発生した蒸気泡を高沸点成分により冷却して凝縮させるメカニズムにより所定の温度領域に温度制御する、冷却媒体。 - 連続相である水及び分散相であるn−ヘキサンからなる水中油滴型エマルジョンと、界面活性剤であるエーテル系化合物と、を含む、請求項1記載の冷却媒体。
- 前記水中油滴型エマルジョン中における分散相の油滴直径が、0.5μm以上30μm以下である、請求項1又は2記載の冷却媒体。
- 前記水中油滴型エマルジョンの粘性係数が、293Kにおいて35mPa・s以上40mPa・s以下である、請求項1〜3の何れか1項に記載の冷却媒体。
- 高沸点成分を連続相とし、低沸点成分を分散相として構成したエマルジョンを含む、冷却媒体であって、
連続相である鉱油、シリコンオイル、又は流動パラフィンと、分散相である水と、からなる油中水滴型エマルジョンと、界面活性剤であるソルビタン系化合物と、を含み、前記ソルビタン系化合物がソルビタンモノオレエートであり、
低沸点成分の液滴の沸騰により蒸発潜熱を奪い、かつ、前記低沸点成分の沸騰により発生した蒸気泡を高沸点成分により冷却して凝縮させるメカニズムにより所定の温度領域に温度制御する、冷却媒体。 - 前記エマルジョン中、前記分散相の体積割合が10%以上30%以下である、請求項1〜5の何れか1項に記載の冷却媒体。
- 被冷却体を冷却するための冷却ユニットであって、
請求項1〜6の何れかに記載の冷却媒体と、
前記冷却媒体の移送を促進する冷却媒体移送ポンプと、
前記被冷却体の下流に設けられた放熱器と、
前記放熱器の下流に設けられた攪拌装置と、
前記攪拌装置から排出された冷却媒体を前記被冷却体へ還流する循環系と、
を含む、冷却ユニット。 - 請求項7記載の冷却ユニットを備えた、パーソナルコンピュータ。
- 請求項7記載の冷却ユニットを備えた、バイオリアクター。
- 請求項1〜6の何れかに記載の冷却媒体を備えた、冷却装置。
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