本発明は、明細書において、以下に記載または図示されている構成要素の構成および配置の詳細に限定されない。本発明は、他の実施形態も可能であり、様々な方法で実践または実行することが可能である。また、本明細書で使用される言い回しおよび用語は、説明を目的としたものであり、限定的とみなしてはならない。
本発明の様々な態様を、特定の実施形態に照らして以下に記載する。たとえば、回旋腱板修復を行う状況について本発明の態様を記載する。しかし当然のことながら、本発明の態様は、回旋腱板修復技術に必ずしも制限されるものではなく、さらに肩に施術する外科的技術に制限されるものでもない。むしろ、本発明の様々な態様は、任意の適切な外科処置において使用できる。また、骨を貫通する通路の形成、通路内の縫合糸の固定等を含む処置において、本発明の態様が記載される。しかし当然のことながら、カニューレおよび取り付けられた針に関する態様等の本発明の態様は、図2に示されるようなアンカの使用を含む回旋腱板修復など、任意の外科処置に使用できる。
本発明の様々な態様は、観血的外科処置、あるいは関節鏡処置等の非観血的または低侵襲処置において使用できる。また、本発明の様々な態様は、骨、筋肉、皮膚、脈管構造、消化構造または他の組織、インプラント、メッシュ、あるいは他の医療デバイス等、いずれかの適切な体の一部に関する、任意の適切な外科処置または他の処置において使用できる。本発明の態様は、単独でおよび/または本発明の他のいずれかの態様と組み合わせて使用できる。
本発明の別の態様においては、回旋腱板腱および/またはインプラントなどの素材に縫合糸を取り付けるために使用する針を、関節鏡カニューレ等のカニューレに係合できる。したがって、カニューレを操作することにより針を作動して、縫合糸を取り付けられる。針およびカニューレは、相補型ロック部材を有するか、あるいは針がカニューレと選択的に係合するように作られればよい。したがってカニューレは、標準的な関節鏡カニューレとして使用でき、必要な場合には針と係合できる。その後、針およびカニューレを用いて、選択した組織に縫合糸を取り付ければよい。
図3は、本発明の態様に従った外科的修復の概略図を示している。上記のとおり、参照および理解を容易にするために、回旋腱板修復に関して本発明の態様が記載されているが、本発明の態様は、任意の外科処置または他の処置に使用でき、骨、筋肉、他の組織またはそれらの組み合わせ、脳、医療インプラントまたは他のデバイスなど、任意の適切な体の一部に関するものでありうる。したがって本発明の態様は、本明細書に記載された特定の実施形態および実施例に決して限定されない。
この具体的実施形態においては、回旋腱板腱2を、縫合糸3により上腕骨1に対して固定する。マットレス・ステッチまたは他の処置などを用いて、縫合糸3を腱2に取り付け、上腕骨1内に形成した通路5に通す。この実施形態においては、交差する第一および第二孔により通路5を形成する。図3に示されるように、関節表面11と上腕骨1の大結節12との間のヘリまたはその付近の第一開口部から垂直に第一孔51を形成する。第二孔52は、図3に示されるとおり、上腕骨1の側位から水平に形成される。第二開口部に隣接して配置した縫合糸固定デバイス4を用いて、第二孔の第二開口部で縫合糸3を固定する。本実施形態においては第一および第二孔51および52が、ほぼ直角に設けられているが、第一および第二孔は任意の適切な角度に設ければよく、同一直線上(すなわち相互に180度の角度)でもよい。
ワイヤ、他の素材または縫合糸3を通路5内で操作して、通路5内の上腕骨の比較的軟らかい海綿骨を切断または圧壊し、縫合糸が、第一開口部から第一孔51までと、第二開口部から第二孔52までとの間で比較的まっすぐな道をたどるようにすればよい。ワイヤを用い、ワイヤを通路5に通して、第一開口部と第二開口部の間で引っ張って相互に引き出す等により操作し、海綿骨を切断または圧壊して縫合糸3の比較的まっすぐな軌道を形成するなどの「フロス」作業により、比較的まっすぐな経路を形成できる。
外科医が通路5の第一孔51の場所を決める際には、骨に対する組織の最終的な位置をまず決定しようと考えることが多い。そのためには、外科医は、腱2に縫合糸を取り付けて縫合糸3を(したがって腱2を)緊張させることにより、たとえば緊張時の骨に対する腱2の位置に基づいて、第一孔51の望ましい位置を決定しようとするであろう。
本発明の一態様においては、フック型または湾曲した端部を有する針の使用が好ましい。図4〜6は、本発明に従って遠位端にフック型の組織貫通部61を有する針6の実施形態を示す。この具体的実施形態においては、針6の組織貫通部61は半円形の形状を有し、針6の直線状部62の縦軸に対して90度等の角度に設けられる。縫合糸3を針6に通せるように、針6を空洞のチューブとして形成すればよい。縫合糸はたとえば、針を製造する時、または外科処置の間等の任意の適切な時など、外科処置の開始前に、針6の空洞部内に装填されればよい。場合によっては、チューブを曲げて湾曲した端部の形状を形成するなどして組織貫通部61を形成する前に、縫合糸を針6の空洞部に入れればよい。
針6のつくりによって、組織貫通部61の先端が図5のように組織2の上面を貫通して組織2の底面から抜け、その後図6のように組織2を上向きに貫通し、組織2の上面に再び出るように針を図4〜6のように回転させて、組織2にマットレス・ステッチを取り付けられる。この時点で、鉗子または他のグリップ・デバイス等により、組織貫通部61の先端から伸びる縫合糸3を捉え、針6を逆回転させて、針6を再び図4のように配置すれば、マットレス・ステッチを形成した縫合糸3が組織2に配置されて残る。もちろん針6は、ここで示した腱を含む組織、人工代替物または他の外科用インプラント等、任意の素材に縫合糸を取り付けるために使用できる。縫合糸を通す間、カニューレ内腔に挿入した把持装置または他のデバイスにより、組織または他の素材を適当な位置に保持し、または操作すればよい。カニューレ外部に配置した把持装置またはクランプ等の他のデバイスによって、組織または他の素材を適当な位置に保持し、操作してもよい。
針6の組織貫通部61は、任意の適切な形状を有していればよく、組織に縫合糸を取り付ける際に組織貫通部61の回転軸線を任意の角度で横断する平面上に設ければよい。すなわち図示した実施形態においては、組織貫通部61は、縫合糸を取り付ける際に組織貫通部61の回転軸に対して90度の平面上にある半円形の形を有するが、組織貫通部61が半円形の形を有する必要はなく、回転軸に対して任意の望ましい角度であればよい。たとえば、組織2に傾斜したマットレス・ステッチを取り付けるように、組織貫通部61を設ければよい。さらに針6は、マットレス・ステッチを形成するためだけに使用される必要はなく、任意の適切なステッチのタイプを形成するために使用されればよい。また、針6の組織貫通部61が、単一平面上の部分を含む必要もない。そのかわりに、組織貫通部61はコークスクリュー型または一部らせんの構造を有するなど、単一平面上になくてよい。
本発明の一態様においては、組織修復処置の全部または一部を関節鏡的に行うことができる。この場合、周知のとおり、患者に形成した一つ以上の入口内に一つ以上のカニューレを提供して、手術部位へのアクセスを提供すればよい。本発明の一態様においては、図4の針6のように縫合糸を組織に取り付けるために使用する針を、関節鏡処置に使用しうる。たとえばカニューレの操作により針を作動できるように、針6をカニューレに固定すればよい。
図7は、カニューレ7に固定された針6の具体的実施形態を示している。カニューレ7は、カニューレ7を通る流体の流れを妨げる一つ以上のバルブ、流圧または吸引を導入する開口部、入口にカニューレを配置するのを補助しおよび/または入口からカニューレが不用意に除去されるのを防ぐのを助ける、カニューレ上のらせん状のねじ山または他の特徴など、非観血的または低侵襲外科技術において使用されるカニューレに見られる任意の適切な特徴を有していればよい。カニューレ7は、関節鏡処置など、任意のタイプの処置のためにつくることができる。
針6は、任意の適切な方法でカニューレ7に固定されればよい。たとえば、針6をカニューレ7の本体にモールドしたり、カニューレの壁に挿入したり、接着剤、溶接、クランプ、締着具、咬合チャネル、開口チャネルまたは他の任意の適切なデバイスにより固定すればよい。針6の近位端は、たとえば図のようにカニューレ7の近位端71と遠位端72の中間点など、任意の適切な地点で終端すればよく、あるいは、近位端71の近位の位置で終端していればより好ましい。針6の近位端がカニューレ7の近位に配置されることにより、使用者は、針6の近位端に入る縫合糸3にアクセスしやすくなる。組織貫通部61をカニューレ7の遠位端72から離したり近づけたりして軸方向に動かしたりできるように、針6がカニューレに対して軸方向に可動であってもよい。さらに、針6はカニューレ7の外側表面に配置されるものとして示されているが、針6または少なくともその一部を、カニューレ7にモールドしたり、カニューレの内腔内に配置したり、カニューレの壁の中に配置したり、カニューレ外側表面の溝の中に設けたりできる。針6は、カニューレ7に沿ってほぼまっすぐな形に作られるように示されているが、針6は、カニューレ7の外側表面の周囲でらせん状の軌道をたどるなど、任意の適切な状態に曲げたり、湾曲させたりあるいはつくればよい。
一つの具体的実施形態においては、半円形の形をした針6の組織貫通部61は、半円の中央点がカニューレ内腔の中心縦軸線73上にくるようにカニューレ7に対して設けられればよい。したがって、カニューレ7が中心縦軸線73のまわりを回転すると、組織貫通部61は、軸73のまわりで円形または円弧状の軌道を移動しうる。しかし当然のことながら、組織貫通部61は、軸73に対して任意の適切な状態に設けられればよい。さらに、組織貫通部61がある平面は(もしあれば)、軸73を横断する任意の角度に設けられればよく、したがって図7のように軸73に対して90度の角度に設けられる必要はない。
本発明の一態様においては、針6は、カニューレ7と選択的に係合したり分離したりできるように、カニューレ7に着脱自在に係合できる。たとえば、外科処置の間にカニューレ7を使用する際、針6を取り付けずに入口に配置しうる。処置中のある時点で、外科医の要請に応じて、針6をカニューレ7に取り付けてカニューレ7を操作し、針6を用いて素材に縫合糸を取り付ければよい。カニューレを入口内にとどめながら針6をカニューレに固定してもよいし(たとえばカニューレ内腔に針6を挿入することにより)、あるいはカニューレを入口から取り除き、針を取り付け、カニューレと取り付けた針を入口に挿入してもよい。
上記のように針をカニューレに取り付けることにより、内視鏡、把持装置または他の手術器具等、他の器具のためにカニューレ内腔を使うことができる。しかしながら、針をカニューレと係合する時にカニューレ内腔に挿入され、内腔を全部または一部塞いでしまう円筒状プラグに針を固定する場合など、カニューレ内腔を他の用途のために空けておけない実施形態もある。
図8は、針6をカニューレ7に着脱自在に固定できる、一つの具体的実施形態を示している。この実施形態においてカニューレ7には、同じ形に成型した針6の一部を挿入するアリ溝74が含まれる。カニューレ7と針6に使用する相補型ロックのつくりは、必ずしも図8のようなアリ溝型である必要はなく、任意の適切なつくりを有していればよい。たとえばカニューレ7は、カニューレ7の壁内に伸びる長円形の溝を有していればよく、針6は、溝と係合する相補型の長円形の形状を有していればよい。したがって、カニューレ7の回転(たとえば、カニューレ内腔の縦軸のまわりを)または他の操作によって針が操作されて、縫合糸を素材に取り付けるように、針6をカニューレ7に選択的に固定しうる。針6とカニューレ7の間の相補型ロックのつくりは、たとえば組織貫通部61を、カニューレ7の遠位端72に対して動かせるように、針6のカニューレ7に対する軸方向の動きを可能にするものでもよい。
図9は、カニューレ7上の相補型の形状と噛合あるいは係合する相補型ロックの形状を一つ以上有する、スリーブ部材63に対して針6が取り付けられる、別の実施形態を示している。この実施形態において、相補型ロックの形状は歯または歯車のような形を有するが、相補型ロックの形状は任意の適切な状態に作られればよい。したがってこの実施形態においては、カニューレ7の遠位端72の上にスリーブ63を摺動させることにより、針6をカニューレ7に固定してもよい。当然のことながら、スリーブ63がカニューレ7の上に嵌合するかわりに、必要ならスリーブ63がカニューレ7の内腔内に嵌合してもよいし、あるいはカニューレ7内のスロット内に嵌合してもよい。
縫合糸が回旋腱板腱等の組織に取り付けられたら、組織を緊張させて、骨内に形成する第一孔51の開口部の場所を決定すればよい。回旋腱板修復を行う際には通常、第一孔51が、概して上腕骨1に沿って、関節表面11と大結節12の間のヘリに形成される開口部から骨内に伸びるように、通路5の第一孔51を上外側の位置から垂直に形成する。この第一孔51は、ドリル、千枚通し、パンチなどの穿孔器または他の適切なデバイスを使用して形成できる。他の処置を行う場合と同様に、第一孔51は、関節鏡の入口を使用して上外側の位置に形成されてもよいし、あるいは観血的外科処置によって形成されてもよい。
本発明の一態様によれば、通路の第一および/または第二孔を形成するためにガイド装置を使用でき(たとえば、第一および第二孔の起始点または開口部の位置を決めるために使用、孔を作る際に骨穿孔器の向きを定めるために使用、あるいは第一および/または第二孔を形成するために単独で使用)、あるいは縫合糸または縫合糸のような素材を通路内に入れるのを助けるためにガイド装置を使用できる。たとえば図10に示されるように、第一ガイド部材81を第一孔51に対して固定しうる。第一ガイド部材81は、骨内に通路を形成するために用いる孔の形成をガイドしおよび/または縫合糸または他の素材を通路に通すのをガイドするために使用されるガイド装置8の一部であればよい。図示した実施形態においては、たとえば随意の方法で孔を穿設することにより、第一孔51が上腕骨1に沿って垂直方向に形成されている。(あるいは、千枚通しまたは類似の器具などにより第一ガイド部材81を骨に圧入して第一孔51を形成してもよい。)第一ガイド部材81には、第一ガイド部材81を第一孔51内の望ましい深さまで骨にねじ込めるようにねじ切りされた遠位端など、第一ガイド部材81を第一孔51に対して固定するのを助ける特徴が含まれればよい。しかし当然のことながら、第一ガイド部材81の遠位端は、ねじ切りされている必要はなく、代わりにねじ切りされずに第一孔51に挿入されてもよい。あるいは、第一ガイド部材81の遠位端は、第一ガイド部材81の内腔が第一孔51と一直線上になるように、第一孔51の外に隣接して配置されてもよい。第一孔51は、必要と思われるより深く、たとえば必要とされる孔の深さより0.5cm深く形成されればよい。この第一孔51の過穿設により、第一ガイド部材81をより自在に骨内の望ましい深さに配置することが可能となる。
下記に詳述されるように、通路5に対して第一および第二ガイド部材81および82を相互に配置するために使用されるリファレンス・ストラクチャ83を介して、第一ガイド部材81を設ければよい。この具体的実施形態においては、第一および第二ガイド部材81および82がリファレンス・ストラクチャ83と係合された時に、互いに対して90度の角度で配置されるように、リファレンス・ストラクチャ83を設ければよい。一方で、第一および第二ガイド部材81および82が同一直線上になるように設けることを含めて、第一および第二ガイド部材81および82が互いに対して任意の望ましい角度になるように、リファレンス・ストラクチャ83を任意の適切なやり方で設けてもよい。さらに、リファレンス・ストラクチャ83を調節可能に作ることにより、第一および第二ガイド部材81および82の向きを変えられるようにすればよい。たとえば、リファレンス・ストラクチャ83の円弧状の接続部は、長さを調節できるように、たとえば一方の円弧状の部分が他方の円弧状の部分に対して摺動して接続部の長さを調節できるように作ればよい。または/さらに、第一および第二ガイド部材81および82と係合する、リファレンス・ストラクチャ83の係合部84および85は、円弧状の接続部に対して向きが調節可能であればよい。つまりガイド部材81および82の向きを調節できるように、リファレンス・ストラクチャ83を任意の適切なやり方で設けてもよい。
この具体的実施形態においては、係合部84および85には、ガイド部材81および82の少なくとも一部を受け取るスリーブが含まれる。たとえばガイド部材81および82が、スリーブ内のボアの中に受け取られればよい。係合部84および85に対してガイド部材81および82を縦軸に沿って直線的に、および縦軸のまわりを回転式に動かせるが、それ以外では動きの範囲が比較的制限されるように、スリーブを設ければよい。ガイド部材81の近位端上のノブ811など、第一ガイド部材81上の止め具が、係合部84の一部など、リファレンス・ストラクチャ上の係合面と接触するときに、第二ガイド部材82の縦軸が第一ガイド部材81の最遠位端の隣接点を通るように、リファレンス・ストラクチャ83によって配置すればよい。したがって、第二ガイド部材82を用いて、穿孔器9(たとえばドリル、パンチ、千枚通しまたは他の骨穿孔用デバイス)が、第一ガイド部材81の遠位端に隣接する地点で第一孔51と交差する第二孔52を形成するように、穿孔器9の使用をガイドできる。上記のように、ガイド部材82は、図のガイド部材82の内腔に挿入したドリルまたはパンチの動きをガイドするなどして、穿孔器9の動きをガイドし、あるいは、穿孔器9の開始位置をマークまたは決定するなどして、第二孔を形成する開始位置をガイドできるが、それ以外では穿孔器9と作用し合うことはない。第一孔51内の第一ガイド部材81の深さを調節することにより、第二孔52を形成する場所を適所に調節できる(たとえば図中の垂直方向に)。外科医は、たとえば第一ガイド部材81を第一孔51にねじ込んだりねじ出したりすることにより、骨内のどこに第二孔52を形成するかを選択できる。
別の実施形態では、第二ガイド部材82が係合部85から引き出されることによって、係合部85自体が穿孔器ガイドとして機能しうる。この具体的実施形態においては、係合部84および85が比較的短い筒状スリーブとして示されているが、係合部84および85は任意の適切な状態に設けられればよく、たとえば、より密接に上腕骨1に接近し、穿孔器9および/または第一、第二ガイド部材81および82をより良くガイドできるように、延長されればよい。さらに第一ガイド部材81は、リファレンス・ストラクチャ83に対して、縦軸のまわりを回転式に動かせるが、軸方向には動かせないように係合部84により保持されるように設けられればよい。これにより、第二孔52を形成する際に、第一ガイド部材81およびリファレンス・ストラクチャ83を適切に配置するのを助けることができる。
第二孔52を形成する時は、ガイド部材82の近位端のノブ821など、第二ガイド部材82上の止め具が、スリーブの一部など、係合部85上の係合面に接触するまで、第二ガイド部材82を第二孔52にねじ込めばよい。図11に示されるこの構造(第一および第二ガイド部材81および82上の止め具が、リファレンス・ストラクチャ83上の各係合面と係合されている)では、第一および第二ガイド部材81および82の最遠位端が、第一および第二孔51および52により形成された通路5内で隣接し合っていればよい。したがって、第一および第二ガイド部材81および82が骨内に配置され、ガイド部材81および82上の止め具がそれぞれガイド装置8上の適切な係合面と接触していれば、ガイド部材81および82の最遠位端を互いに隣接して配置できることが、外科医にとって確実となる。したがって外科医は、一方のガイド部材に入れたワイヤ10または他の部材を、たとえば遠位端にフックを有するレトリーバ21を使用して、他方のガイド部材から確実に回収できる。このようなつくりは、手術部位の可視化が容易でない関節鏡処置においてガイド装置8を使用する際に有益でありうる。
上記の実施形態においては、第一および第二ガイド部材81および82上の止め具が、係合部84および85上の対応する係合面に接触するが、ガイド部材81および82は、任意の適切な方法により、リファレンス・ストラクチャ83に対して配置されればよい。たとえばガイド部材81および82上に、係合部84および85の一部とそれぞれ位置を合わせられる指示マークがあればよい。ガイド部材81および82上の一定の指示マークによる位置合わせを用いて、たとえばガイド部材81および82の遠位端が隣接し合っていることを確認すればよい。当業者は、ガイド部材81および82のリファレンス・ストラクチャ83に対する位置、および相互に対する位置を、他の方法でも決定できることが分かるだろう。たとえば第一および第二ガイド部材81および82を、遠位端同士が通路内で隣接するように配置して、一方のガイド部材から他方に縫合糸を入れるのを助けるようにすることは、必ずしも必要でない。そのかわりに、第一および第二ガイド部材81および82は、縫合糸が入れやすくなるように、任意の状態で通路と適切に連絡するように作られればよい。
この具体的実施形態においては、第一ガイド部材81は、第二ガイド部材82よりも小さな直径を有する(少なくとも遠位端では)ものとして示されている。これにより、第一孔51が第二孔52より小さいという設定で、ガイド装置8を使用することが可能になる。第一孔51が相対的に小さいことにより、回復が速くなり、および/または必要に応じてヘリに他の孔をあけるための余分なスペースを提供できる。しかし当然のことながら、ガイド装置8および/または通路5を形成する孔は、任意の適切な状態に作られればよく、たとえば、第一および第二孔51および52が同じ直径を有してもよいし、あるいは第一孔51が第二孔52より大きい直径を有してもよい。
ガイド装置8には、たとえば、第一孔51とほぼ平行にヘリに形成されるが、同じく第二孔52と交差する第三孔の形成を提供するための、更なるガイド部材も必要に応じて含みうる。同様にガイド装置8には、骨または他の体の一部に並列通路5を形成するために設けられた、具体的実施形態におけるもののようなガイド部材を二対含んでもよい。
この具体的実施形態においては、第二孔52の形成をガイドするためにガイド装置8を使用するが、ガイド装置8は、必ずしも第二孔52の形成をガイドするために使用しなくてもよい。すなわち、骨または他の体の一部に予め形成した通路に、ワイヤ10、縫合糸または他の素材を入れるのを助けるためだけに、ガイド装置8を使用してもよい。さらに第一および第二ガイド部材81および82は、孔を予め穿設あるいは別途形成しなくても部材81および82を体の一部に固定できるように設けられればよい。したがって一実施形態においては、たとえば骨に圧入されて侵入により通路5を形成するなど、体の一部に孔を形成でき、および/またはワイヤ、縫合糸または他の素材を通路5内に入れるのを助ける手段を提供できる、千枚通しまたは他のデバイスのような形に、第一および第二ガイド部材81および82をつくればよい。
図12に示されるように、ワイヤ10、縫合糸または他の素材を通路5に通したら、ワイヤ10を用いて、通路5を通して縫合糸3を引けばよい。ワイヤ10または他の素材は、通路5を通して縫合糸3を引くために用いる前に、縫合糸3を緊張させて定位置に固定した際に比較的まっすぐになる縫合糸3の経路を形成するために用いることができる。たとえばワイヤ10を、第一および第二孔51および52の、第一および第二開口部53および54の間で緊張させるか、あるいは操作して、第一および第二開口部53および54の間にある骨などの体の一部を切断または圧壊すればよい。ワイヤ10のこのような操作は、骨内で一種の「フロス」作用を行い、これによって通路5内で縫合糸3がたどる経路がよりまっすぐになり、回旋腱板2と、第二開口部54付近等にある縫合糸3の固定点との間に必要な縫合糸3の長さが短くなる。骨の切断および経路の形成を補助するため、ワイヤ10が、かかりまたは他の鋸のような特徴を有していればよい。もちろん、腱または他の素材を固定する際に縫合糸3を緊張させるなど、縫合糸3自体を操作することで、よりまっすぐな経路を形成してもよい。通路5内の縫合糸3の長さを短くしておけば、たとえば緊張させたときに縫合糸が伸びる長さが短くなるため、回旋腱板2上に縫合糸による適切な緊張を維持しやすくなる。
縫合糸3を通路5内に通したら、図13に示されているように、縫合糸3を縫合糸固定デバイス4と係合すればよい。縫合糸固定デバイスの使用は必要ではないが、縫合糸固定デバイス4によって、縫合糸3(および組織2)を骨に対してよりしっかりと固定できる。縫合糸固定デバイス4は、任意の適切なやり方で作られればよいが、この具体的実施形態においてはボタンに類似したつくりを有する。たとえば縫合糸固定デバイス4は、ディスク形状の部材の中に形成された2つの貫通孔を有し、その中に縫合糸3の案内端を通せばよい。一つ以上のフィード部材41を用いて、縫合糸端3を縫合糸固定デバイス4の各孔に通せばよい。フィード部材41は、縫合糸固定デバイス4の各孔に通される、細長い形状をしていればよい。フィード部材41の一端のループで縫合糸3の端を受け取ればよく、その後、縫合糸固定デバイス4の各孔を通じてフィード部材41を引くことにより、孔を通じて縫合糸3を引けばよい。もちろん当然のことながら、縫合糸3は、他の適切な方法によって縫合糸固定デバイス4内に通されてもよい。この技術を関節鏡的に実施する際には、体腔内あるいは体腔外で、縫合糸固定デバイス4内に縫合糸3を通せばよい。
図14に示されるように、縫合糸3を縫合糸固定デバイス4と係合したら、縫合糸固定デバイス4と着脱自在に係合し、且つ縫合糸固定デバイス4を希望通りに配置すれば縫合糸固定デバイスから選択的に分離できるアプライヤ42を用いて、縫合糸固定デバイス4を通路5の第二開口部54に対して配置すればよい。図15に示されるように、アプライヤ42は、縫合糸固定デバイス4上の凹部または他の形状と係合して縫合糸固定デバイス4と着脱自在に係合する、一対の叉421を有していればよい。叉421は、縫合糸固定デバイス4と係合するときに叉が互いに圧搾されるように、弾力的であればよい。したがって離れた叉端にかかる弾力により、縫合糸固定デバイス4の溝48と叉の係合を維持するのを助けることができる。あるいは、摩擦によって係合が保たれるように、縫合糸固定デバイスの溝48に叉端を圧力嵌めしてもよい。もちろん当然のことながら、ねじ込み式またはバネ式構造など、他の適切な方法によって、アプライヤ42を縫合糸固定デバイス4と係合してもよい。
縫合糸固定デバイス4が第二開口部54に対して適当な位置にきたら、回旋腱板2が上腕骨1に対して適切に配置されるように、縫合糸3を緊張させればよい。この時点で、たとえば縫合糸端で結び目をつくることにより、縫合糸3を縫合糸固定デバイス4に対して固定すればよい。こうして縫合糸固定デバイス4によって、縫合糸の結び目を支える構造を提供できるだけでなく、比較的固い皮質骨周囲あるいは第二開口部54と隣接した部分に縫合糸3の力をかけることができる。縫合糸固定デバイス4がこの皮質骨と係合していることにより、縫合糸固定デバイス4によって、縫合糸3の比較的安定してしっかりした固定点を提供できる。縫合糸固定デバイス4には、干渉ピン、係止通路、係止キャップなど、縫合糸を結び目なしで固定するための機能を含んでもよい。
上記の具体的実施形態においては、縫合糸3の両端を通路5内に通し、通路5の第二開口部54またはその付近で固定するが、他の方法で縫合糸3を固定することもできる。たとえば縫合糸3の一端を通路5内に通し、縫合糸3のもう一方の端を骨の外側の周り(たとえば大結節の一部)に通し、そこで他方の縫合糸端に固定すればよい。別の実施形態では、骨内に二本の通路5を形成し、縫合糸3の一端を一方の通路に通し、縫合糸3の他方の端を他方の通路に通せばよい。その後、上腕骨1の側面上にある通路5の各第二開口部またはその付近で、縫合糸端同士を固定すればよい。さらに別の実施形態では、一つ以上の第二孔52と交差するように、二つ以上の第一孔51を形成すればよい。二つ以上の第一孔51内に縫合糸3を通し、一つ以上の第二孔52の第二開口部54で固定すればよい。このように設けることにより、単一の第二孔52および縫合糸固定デバイス4を用いて、異なる第一孔51を通過する二本以上の縫合糸を使用して、上腕骨頭の二つ以上の地点で回旋腱板を固定することが可能になる。必要に応じて他の縫合糸固定技術が使用されてもよい。
図16A〜Bおよび17A〜Bは、本発明に従った縫合糸固定デバイス4の具体的実施形態を示している。これらの実施形態においては、縫合糸固定デバイス4には、縫合糸固定デバイスに通した縫合糸または他の素材を、経路内で一方向へは比較的自由に動かせるが、他方向への動きは阻止されるような、縫合糸固定デバイス4を通る経路内の拘束が含まれる。たとえば、図16Aおよび17Aに示される縫合糸固定デバイスを通る縫合糸の動きは、縫合糸固定デバイス4の側面図において左方向へは自由に可能であるが、右方向への縫合糸の動きは阻止されればよい。こうすれば、回旋腱板または他の組織が適切に配置されるまで、縫合糸固定デバイス4を通して第二孔52から縫合糸3を引けばよいため、縫合糸3を緊張させるのを助けることができる。その後、たとえば結び目の形成を準備するために、縫合糸の緊張が一時的に解除されうるが、縫合糸固定デバイス4内で縫合糸が戻る動きを阻止できるため、縫合糸に結び目をつくるか固定するまで回旋腱板または他の組織が適所に維持される。
図16A〜Bの実施形態においては、縫合糸固定デバイスにはフランジ部43を有する外端が含まれる。フランジ部43が通路内の第二開口部54等の開口部に隣接する皮質骨に接触するような大きさにして設け、縫合糸固定デバイス4を配置する。フランジ43を通って形成される一つまたは複数の孔になどにより、縫合糸固定デバイス4の中に一つ以上の経路44を形成すればよい(図15も参照)。複数の孔を有する代わりに、経路44には、一つ以上の縫合糸を受け取るように設けられた一つのスロットを含んでもよい。経路44内の縫合糸に結び目が形成される場合には、一つ以上の結び目を受け取るために、フランジ部43内に凹部49を用意すればよい。縫合糸固定デバイス4の内端の一対の嘴部材45がフランジ43から後方へと伸び、第二孔54内に配置できるように作られればよい。嘴部材45は、縫合糸固定デバイス4の内端にわたって伸びる溝により互いに分離され、縫合糸または他の素材が経路44を通過するのに抵抗するように、互いに向かって弾力をかけられればよい。嘴構造45の一方または両方には、縫合糸や他の素材の係合を助ける鋸歯46、またはその他の特徴を含みうる。図16の実施形態においては、嘴構造45がフランジ部43付近の地点で枢動できるように、嘴構造45を分離する溝がフランジ部43まで伸びている。
図17A〜Bの実施形態にも同様に、フランジ43および一つ以上の経路44が含まれる。嘴構造45も用意されている。しかしこの実施形態においては、嘴部分45は、フランジ43との各接続ポイント付近のポイントでヒンジ結合されるのではなく、フランジ43から離れたポイントでヒンジ結合されている。このように嘴構造45の有効なヒンジポイントを用意することで、縫合糸が経路44内で外端から内端へと動かされようとした際の、嘴構造45と縫合糸または他の素材の係合を強めることができる。すなわち、縫合糸が引っ張られて内端に向かって動こうとすると、鋸歯46または他の特徴が縫合糸と係合して縫合糸上の力が強まることにより、嘴構造45同士を近づけて縫合糸をさらに締め付けさせる力が強まる。図16および17の実施形態の嘴構造または縫合糸を係合するための他の適切なつくり(たとえば干渉ピン、係止キャップなど)により、縫合糸の結び目なしの固定を提供しうる。あるいは、外科医が結び目を形成している間、縫合糸の動きに抵抗して縫合糸の緊張を維持する能力を助ける構造でもよい。
この実施形態では、デバイスのフランジが、外側の骨皮質表面に置かれるものとして描かれているが、安静時または運動時に当該部位に接触する可能性のある他の骨や組織とフランジが当たるのを防止するために、カウンタボアまたは皿穴を有する孔の中にデバイスを配置してもよい。カウンタボアまたは皿穴の形状内にデバイスを配置する場合でも、デバイスは皮質骨に接触しうる。あるいはデバイスが、外側の骨皮質表面とのみ接触し、骨内の孔の中には及ばなくてもよい。
もちろん当然のことながら、縫合糸固定デバイスは任意の適切な形で提供されればよい。たとえば、図16および17の実施形態においてフランジ43から伸びている嘴部45は、骨内に形成した嵌合孔に密接に嵌合するような大きさにすればよい。この密接な嵌合によって、縫合糸固定デバイス4を骨内の望ましい位置に維持するのを助けることができる。あるいは、嘴構造45は、外側表面にテーパがつくように形成されればよい。したがって、縫合糸固定デバイス4を骨内の孔に挿入すると、嘴構造45のテーパ表面が孔の側面に接触し、縫合糸固定デバイス4を孔に押し込むにしたがって、嘴構造が互いに近づけられていく。別の実施形態においては、孔に挿入する縫合糸固定デバイス4の一部を、ねじ切りするかまたは孔と係合するようにつくり、縫合糸を適所に固定する前などに縫合糸固定デバイスが孔から外れるのを防止するのを助けるようにすればよい。デバイスを介して縫合糸を維持する仕組みには、様々な形がある。これらの形のいくつかは、最終的な固定のために結び目を必要としうる。捕捉のための他の仕組みは、充分な締め付けを提供できるため、縫合糸の結び目は必要ない。これらは、一般に「ノットレス」デバイスとして知られている。
以上のように本発明の少なくとも一つの実施形態の、複数の態様を記載してきたが、当然のことながら、当業技術者により様々な変更、修正および改善が容易になされるであろう。かかる変更、修正および改善は、本明細書の一部として予定され、本発明の範囲内であることが予定される。したがって、上記の記載および図面は例にすぎない。
様々な本発明の態様が、具体的実施形態に関して記載されており、類似の数字は類似の要素に対応する。