JP5048257B2 - フィルダムの堤体改修方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、この築堤土は最近では土取り場として林地開発が環境保全上規制されるなどの観点から入手が困難になってきている。仮に、所要の強度と遮水性を有する築堤土の土取り場が確保できたしても、地震や豪雨に対して堤体全体を安定であるように改修するには、通常、土からなる築堤土が有する強度では堤体の法面勾配を既設堤体よりもかなりゆるい勾配にしなければならない。このため、大量の築堤土が必要となってしまうだけでなく、改修前の貯水容量の大幅な減少を招くなど問題があった。
また、既設堤体部やコアゾーン基礎部に相当する止水トレンチを掘削すると大量の土砂が発生するが、これを場外廃棄するための土捨て場を確保しなければならない。さらに、大量の築堤土の土取り場からの搬入や廃棄土砂の土捨て場までの搬出のための土砂運搬には多数のダンプ走行に伴う交通障害を引き起こすため、近隣の住民の理解を得にくくなってきている。
しかし、上記池内の上流側部分に堆積した骨材に有効活用できるものだけを分別して掘削採取することは経済的に難しく、また底泥土を掘削して除去処分しようとしてもその土捨て場を確保することが難しいなどの問題がある。
また、従来においては、池内に堆積した底泥土のような高含水比で超軟弱な粘性土のみにセメント等の固化材を加えて築堤土に改良し、ため池のような堤高の小さい堤体の改修工事に一部で使用されてきた。
これに対して、流入する河川や池の規模が小さいため池では池に堆積した底泥土の含水比が堆積場所により相違するものの、底泥土の粒度の相違は少なく、固化処理して築堤土に利用するには含水比の影響のみを考慮すればよかった。また、堤高がため池よりも大きいフィルダムの堤体改修では、堤体の安定性を確保するために要求される強度レベルが高くなるため、細粒分だけを含む底泥土だけを用いて改良した築堤土で堤体安定に必要な強度を達成することは難しく、あるいは大量の固化材を必要とするなどの経済的にコスト高となる問題があった。
また、従来のように外部から購入した通常土による改修では、通常土が有する強度の大きさに限界があるため、改修後の堤体はゆるい勾配にせざるをえず、大量の築堤土を必要とするほか、貯水容量が大幅に減少してしまい、フィルダムの下流側に新たに堤体用地を必要とするなどの経済的な改修が不可能であるが、本発明による改修方法によれば、使用する堆積土砂の粒径や含水比に応じた固化材添加量を加減することにより、堤体安定に必要な強度を自由に設定できるので急勾配の堤体の改修が可能であり、既設堤体の法面勾配と同じ程度もしくは貯水容量を大幅に減少することがないような経済的で合理的な勾配の堤体にすることができる。
しかしながら、ここで対象とするような粘土・シルト分よりも粗粒な砂や礫分を含む底泥土や堆積土砂を改良し築堤土として利用するには、含水比の影響だけを考慮して決めた量の固化材を加えて固化処理したものでは粗粒分の含まれる量の影響を受けてしまい、一定の強度を有する築堤土を製造することは難しいこと(同じ含水比でも粗粒分含有量が多いほど高強度になる)、また、粗粒分を多く含む底泥土や土砂からなる固化処理土の強度は通常の土に比較して非常に高くかつ固化材添加量の加減により任意に制御できるが、このような築堤土では、図4に概念的に示すように、非常に小さいひずみεPでピーク強度σPeakに達し、応力はそのピーク強度以降に急激に減少する応力−ひずみ曲線41となる性質を顕著に示す。したがって、このような固化処理土により堤体を築造した新堤体は、その応力−ひずみ曲線41既設堤体を構成する通常の築堤土の応力−ひずみ曲線43と大きく異なってしまうため、既設堤体との密着性が悪く、既設堤体の地震等による変形に追従できず、局部的な変形集中やクラックが発生しやすい問題が顕著に表れる。そこで、砕・転圧盛土工法では底泥土等を単に固化させるだけでなく、ある程度固化し解砕してから通常土の場合の築堤と同様に一定層厚で撒出し・敷均してから転圧して築堤することで、応力−ひずみ曲線がクラックの生じ易い応力−ひずみ曲線41のようなひずみ軟化型のものから応力−ひずみ曲線42のような通常土に近いひずみ硬化型の応力−ひずみ曲線に変化させている。また、フィルダムのように規模の大きい堤体の改修に固化処理土を使用すると必要とされる強度レベルが高く、砕・転圧盛土工法によりクラックの生じにくい性質に改良したとしても固化処理土により新設した堤体部と既設堤体の間で極端な剛性差が生じ、地震時のように大きなせん断変形が生じると耐えられずにクラックが生じてしまうという問題がある。
さらに、既設堤体や各ゾーン間で極端な剛性差が生じる場合には、各ゾーン内の強度レベルを堤体の低い位置ほど高強度の築堤土にするなど強度を堤体の高さ方向に行くに従い変えて、極端な剛性差による既設堤体やゾーン間の密着性(なじみ)の悪さを和らげる工夫をしなければならない。本発明による堤体改修は、既設堤体と固化処理土による新設堤体部との間で極端な剛性差が生じないように堤体の断面構成、築堤土の強度、遮水性の設定を堤体の高さHに応じて、以下のようにゾーニングするものとする。
堤高が大きい堤体では、急勾配で堤体を安定させるのに必要な強度は非常に高くなるので、遮水性を満足させながら強度も確保することが難しい。このため、本発明では、図1に示すように、既設堤体の上流側法面に遮水の役割をするコアゾーンGCと、堤体を急勾配でも安定化させるシェルゾーンGSというように各ゾーンの機能により分けて築造するものである。これらの各ゾーンのうち、コアゾーンGCには強度よりも遮水性を満足するように製造した遮水用築堤土を、シェルゾーンGSには遮水性よりも強度を重視した安定用築堤土をというように、各ゾーンの必要とされる遮水性レベルと強度レベルを変えて築造するものである。こうすることで、新設の各ゾーンと既設堤体の間の極端な剛性の相違に起因した問題を防止できる効果がある。なお、堤体の池側の表面には、これを波浪から守るための張石工(リップラップ)あるいは張ブロック工などの法面保護工SPを設ける。
さらに、堤高が大きくなった場合(H≧30mが目安)には、図5に示すように、コアゾーンGCとシェルゾーンGSの間にコアゾーンおよびシェルゾーンの中間に相当する強度と遮水性を有するトランジションゾーンGTRを設け、既設堤体12とシェルゾーンGSの間で極端な剛性差が生じないようにして、堤体の安定性と貯水機能を確保する。この場合のシェルゾーンGSの強度τsとトランジションゾーンGTRの強度τTRとコアゾーンGCの強度τcとの間には図5に示すτs>τTR>τcの関係がある。
堤高がこの範囲にある場合には、遮水性を満足させつつ堤体安定に必要な強度も確保し易いので、図7に示す水平ゾーニングで強度を変える。つまりコアゾーンGC内の強度τcは、図7に示すように堤体の高さ方向に変化させ、堤体安定上有利なように低い位置ほど高強度の築堤土によりコアゾーンGCを築造し、地震時変形が大きい堤体位置の高い部分ほど段階的に強度を低く設定した築堤土で築造する。
ただし、既設堤体12の下流側の盛土では遮水性が必要でなく、逆に堤体を浸透してきた水を速やかに排水できるようにある一定以上の透水性が要求されるので、下流側の盛土EsあるいはEELに使用する築堤土はシェルゾーンに使用する築堤土と同じ砂礫土を多く含む堆積土砂を改良して製造した築堤土により築堤する。この築堤土による盛土が堤体からの浸透水を排水できる程度の透水性がない場合には、既設堤体12と新設の盛土EsあるいはEELとの間に透水性のよいフィルターゾーンFを設ける。
図1は本発明にかかる築堤土の製造方法及びフィルダム堤体改修方法の工程説明図であり、図2は本発明方法により改修したフィルダム堤体の全体構成を示す概略図である。
図2において、12はフィルダムの既設堤体、13は既設堤体12が築造された基礎地盤であり、GSは既設堤体12のシェルゾーン、GCは既設堤体12のコアゾーン、SPは必要に応じて池側の表面を波浪から守るために設けられた法面保護工を示す。また、14はコアゾーンGCが築造される基礎地盤13に形成された止水トレンチである。
築堤土の製造に際しては、既設堤体を改修するために堤体の断面構造(ゾーニング)を堤高、現況の安定性や漏水状況、池内に堆積している泥土や土砂の土量構成、工事に伴って発生する掘削土量等を考慮して決める。
細粒底泥土は固化材を加えて固化処理した時に遮水性を確保できるシルト・粘土分を含んでいるもので、特に堤体近くの水深の深い部分に堆積した細粒分の最も多い底泥土を基本底泥土(FCO、wO)とする。また、砂礫のような粗粒分を含む粗粒底泥土などは固化材を加えて固化処理した時に、現実的な固化材量で必要とする目標強度を確保するために必要な砂礫分が含まれていることが望ましい。
固化処理土の強度特性、つまり強度パラメータ(c'、φ')は普通土からなる築堤土に比較して異なった性質を示す。一般に粘着力成分c'は固化材添加量に強い相関を示し、ほぼ比例して増加するが、内部摩擦角φ'は固化材添加量と強い相関がなくほぼ一定値を示す。このため、安定計算のときにパラメトリックに変えるのは粘着力c'C、c'Sなどのみとし、内部摩擦角φ’cなどは固化材添加量に関係なく配合試験から得られた値に余裕を見込んだ一定値で与えるものとする。
本発明の実施例1ではquと(c'、φ')の関係を直接的に求めるのではではなく、一軸圧縮試験によるquと三軸圧縮試験によるc'のそれぞれがΔWCと強い相関があることから、一軸圧縮試験によりqu ないしΔWCの関係を求め、三軸圧縮試験によりc'ないしΔWCの関係をそれぞれ求め、
qu ⇔ ΔWC ⇔ c'
のようにΔWCを介してquとc'を関係させるものとする。
底泥土の粒度と含水比が固化処理強度に及ぼす影響の評価法
フィルダムでは、池内の堆積位置により底泥土の粒度が大きく異なるが、一般に堤体の近くには細粒分を最も多く含む底泥土が堆積し、堤体から離れた河川流入部に近い池内での上流側ほど粗粒分の多い底泥土が堆積している。池内の底泥土は主に流域内の降雨による土砂流出や流入河川が河床を洗掘した土砂が堆積したものであるので、底泥土の物理化学的性質は流域や河床の地質状況に規定されるものと考えられる。このことから、池内にある底泥土の固化材による固化特性を規定する物理化学的性質は基本的には同じであり、前記上流側の粗粒分の多い底泥土は堤体付近にある細粒分が最も多い底泥土に、洪水時に物理化学的性質に影響を及ぼすことが少ない粗粒分だけが加わったものと考えることができる。
そこで,本実施例1では、堤体近くの水深の深い部分に堆積した最も細粒分が多く、かつ含水比も高い底泥土を基本底泥土とし、これより、前記上流側に向かって堆積した底泥土は基本底泥土に粗粒分だけが加わったもので、固化処理上の物理化学的性質は変わらないものとして扱う。物理化学的性質は微小な粘土粒子とその周囲の水との間の界面作用であるが、これの指標は界面作用の大きな粘土粒子を多量に含むほど大きな値を示す塑性指数IPが適している。また、底泥土の粒度の指標は粒径75μm以下の粘土・シルトの細粒分含有率FCが遮水性の目安となることや、現場でも簡単な試験により求めることができるので、細粒分含有率FCを使用することにする。
wO=(WWO/WSO)×100・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
FCO=(WSF/WSO)×100・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
になる。これに対して、河川流入部に近い池内での上流側の底泥土は基本底泥土に粗粒分ΔWSCだけが加わったものとして扱い、これの土粒子の質量はWS=WSO+ΔWSC,ΔWSCに含まれる水分ΔWWを含めた水分質量はWW=WWO+ΔWWとなる。したがって、底泥土の全体含水比wTは、
wT=(WW/WS)×100
=(WWO+ΔWW)×100/(WSO+ΔWSC)
=(wO+Δw)/(1+ΔWSC/ WSO)
=wC/(1+ΔWSC/ WSO)
となる。ここで、wC=wO+Δwは底泥土中のΔWSCを除いた基本底泥土状態で考えた含水比、つまり換算含水比である。また、FCは上式を考慮すると
FC=(WSF/WS)×100
=WSF×100/(WSO+ΔWSC)
=FCO/(1+ΔWSC/ WSO)
=FCO・(wT/wC)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
となる。つまり、池内の堆積位置で粒度FCと含水比wTが変化する底泥土を固化処理した時の強度は、上式より、その底泥土の粗粒分ΔWSCを除いた状態での換算含水比wCは、
wC=(FCO/FCO)・wT・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3')
における強度quは、
qu=qu(FC,wC)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
であり、堤体付近に堆積した最も細粒分を多く含み高含水状態にある底泥土(FCO,wO)の強度quOは、
quO=qu(FCO,wO)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)
を基本にして、その底泥土のFCと基本粒度FCOの差に相当する粗粒分ΔFC(=FC−FCO)による骨材効果による強度成分と、換算含水比wCと基本含水比wOとの差Δw=wO−wCに起因した強度成分からなるものと考えられる。配合試験では、先ず基準含水比w=wOにある基本底泥土(FC=FCO)にある固化材添加量ΔWCを加えた時の固化処理強度quO=qu(FCO,wO)を求め、池内の堤体から離れた前記上流側にある底泥土(FC ,wC)は基本底泥土(FCO ,wO)における粗粒分の(FC が減少しFCO→FC)による強度変化、換算含水比wCと基本含水比wOの差Δw=wO−wCによる強度変化を底泥土のFCとwCを、固化材量ΔWCを種々変えて求め、固化処理強度quに及ぼすFCやwCの影響を近似式
qu=quO・fFC(FC/FCO)・fw(wC/wO)・・・・・・・・・・・・・(6)
で整理する。ここで、fFC(FC/FCO)は固化処理強度quに及ぼすFCの影響を調べて近似した関係式fw(wC/wO)は固化処理強度quに及ぼす含水比wCの影響を調べて近似した関係式である。
例えば、fFC(FC/FCO)とfw(wC/wO)を指数関数により近似すると以下のような関係が得られる。quに及ぼすFCの影響を表すfFC(FC/FCO)は、あるFcとwcの状態にある底泥土の強度をqu=qu(FC,wC)とおくと、ある一定のwCの状態にある底泥土のFCを変化させた時の強度qu=qu(FC,wC)はFCの減少(粗粒分の増加)にともなって増加するが、配合試験により調べられたFCに伴う強度の増加傾向を図9に概念的に示したように指数関数で近似すると
qu(FC,wC)=c・(FC/FCO)d・・・・・・・・・・・・・・・・(7)
となる(cとdは試験結果から決まる係数)。また、quに及ぼすwCの影響を表すfw(wC/wO)はある一定のFC=FCOにある底泥土の強度をqu=qu(FCO,wC)とおくと、qu=qu(FCO,wC)はwCが増加あるいは減少すると減少あるいは増加するが、配合試験により調べられたwCに伴う強度の変化傾向を図10に概念的に示したように指数関数で近似すると
qu(FCO,wC)=a・(wC/wO)b・・・・・・・・・・・・・・・・(8)
となる(aとbは試験結果から決まる係数)。したがって、底泥土のFCとwCが変化する場合の強度qu=qu(FC,wC)は、FC=FCOにおける強度は式(7)と式(8)から固化材添加量ΔWCにより決まる
c=qu(FCO,wC)=a・(wC/wO)b・・・・・・・・・・・・・・・(9)
となり、wC=wOにおける強度は式(8)から固化材添加量ΔWCにより決まる
a=qu(FCO,wO)=quO・・・・・・・・・・・・・・・・・・(10)
となるから、式(7)〜(10)より
qu(FC,wC)=quO・(wC/wO)b・(FC/FCO)d・・・・・・・・・・・(11)
となる。ここで、quに及ぼすFCやwCの影響を近似するための関数fFC(FC/FCO)やfw(wC/wO)は実用的に許容されるのであれば、近似精度の高さよりも全体の傾向をうまく表現できるようなものを選択すべきである。
築堤土製造工程104では、細粒分の多い底泥土あるいは粗粒分の多い底泥土あるいは掘削発生土に所定の固化材を添加して、これらを均一に攪拌・混合し、細粒土の初期固化土ISfあるいは粗粒土の初期固化土ISgを製造する。この時の初期固化土ISfあるいはISgの製造は細粒土及び粗粒土の採取現場である池内でそのまま移動式固化処理機で混合攪拌して固化処理する方法、または底泥を掘削あるいは浚渫して専用プラントで固化処理する方法や、処理ピット内で固化処理機により固化処理する方法があり、堆積土砂の状態、確保できる施工スペースの有無、工期等を考慮して行う。
なお、固化材の土砂への添加方法は、固化材に一定量の水を加えてスラリー状にして添加する場合と、粉体のまま直接添加するも場合があるが、どちらかの方法とするかは堆積土砂の状態や、使用する混合機械、あるいは近隣への影響を考慮して決める。
次いで、この固化処理土は初期固化状態のまま所定期間(初期固化期間tS)放置し、しかる後、破砕工程105で所定の大きさに破砕して、遮水用ゾーンの築堤土及び提体安定化用ゾーンの築堤土を製造する。
まず、既設堤体12において、新設堤体が接する部分の植栽の根等を含む表土12aを剥ぎ取り、図11(A)に示すように段切り掘削する。この時発生した掘削土も固化材を加えて固化処理してから築堤土として活用するが、そのままの状態でも目標強度を確保できるのであれば固化処理せずに使用する。
次いで、図11(B)に示すように、基礎地盤13のうち新設堤体築造部分13aの整地基礎地盤から回り込んで漏水が生じないように止水トレンチ14を設ける。
次に、破砕工程105において、砕・転圧盛土工法を使用してに所定の初期固化養生期間tSだけ放置した初期固化土ISfあるいはISgを専用の解砕機械により所定の最大粒径Dmaxになるように解砕して築堤土CCfあるいはCCgを製造する。このDmaxの大きさは砕土機械の性能にもよるが、Dmax=50〜200mmの範囲内のどれかに決める。しかし、このDmaxの大きさは固化処理土を最終的に築堤したときの強度や遮水性に影響を及ぼし、Dmaxが大きいほど発揮される強度は高く、遮水性が悪くなる。そこで、コアゾーンGCに使用する固化処理土ISfは事前の調査により決定するが、所定の遮水性が確保できる最大のDmaxにする。シェルゾーンGSに使用する固化処理土ISgは遮水性を確保する必要がなければ最大のDmax=200mmでよいが、遮水性が要求される場合にはコアゾーンの場合と同様に決定する。
すなわち、運搬されてきた築堤土CCfあるいはCCgはバックホウーなどを用いて所定の層厚ΔHfあるいはΔHgになるように均一に撒出し、さらにブルドーザにより敷き均してからローラー等の締固め機械で所定回数NfあるいはNgだけ転圧して、図11(C)に示すように、一層毎にコアゾーンGCあるいはシェルゾーンGSを築造する。撒出し層厚ΔHfあるいはΔHgや転圧回数NfあるいはNgは、コアゾーンGCとシェルゾーンGSで所定の遮水性あるいは強度を効率よく達成できる適正値は、盛土試験をそれぞれ実施して決められる。
上述した築造作業を、コアゾーン部分及びシェルゾーン部分が図11(C)の2点鎖線に示す所定の高さまで繰り返し行う。これにより、フィルダムの提体を図2に示す構造に改修することができる。また、図2に示すように、シェルゾーンGSの堤体法面には、これを波浪による侵食から防止するために必要に応じて法面保護工SPを設ける。
(1)池内に堆積した底泥土や土砂を築堤土に利用できるので、堆積土砂除去によるダム機能の回復(貯水容量の確保、水質浄化など)と堤体の改修が同時に可能になり、かつ築堤土を入手のための用地買収や築堤土の搬入を伴わない形で堤体改修が可能になる。これにより、経済的な堤体改修が可能になる。
(2)本来であれば外部に廃棄しなければならない堤体改修に伴って発生する掘削土も築堤土に有効活用できるので、この掘削発生土の廃棄するための土捨て場やそこまでの土砂搬出が不要になり、経済的な堤体改修が可能になる。
(3)土取り場や土捨て場を確保するための自然破壊および土砂の搬入あるいは搬出が不要になるため、ダンプ運搬にともなう交通事情の悪化など、環境負荷の少ない堤体改修が可能である。
(4)計画した堤体改修断面を堤体の機能毎にゾーン化し、各ゾーンはその機能に応じて強度や遮水性を変えて製造した築堤土により築造されるようにしたので、各ゾーン間の極端な剛性差が生じないようにすることができる。
(5)上記(4)のようなゾーン毎の築堤土の強度を変えるだけでなく、さらに築堤土の強度を各ゾーン内の位置で段階的に変え、つまり低い位置ほど高強度に設定し、高さ方向に向かって低強度に設定するようにしたので、高強度の築堤土を必要とする堤高の大きく、かつ急勾配の堤体であっても、既設堤体と新設堤体との間に極端な剛性差が生じないように堤体改修ができる。
(6)上記(4)や(5)の結果として、堤高の大きい堤体であっても急勾配で堤体を築造できるので、従来方法による提体の改修断面が図12の一点差線に示すものを図12の実線に示す改修断面に縮小することができ、これにより、必要とする築堤土をより少なくできるとともに提体改修に伴う用地も節約することができ、しかも貯水容量の減少をより少なく抑えて堤体改修ができる。
Claims (6)
- 池内に堆積した底泥土や土砂などの堆積土を前記池内でその粒度に応じて大まかに区分けし、前記区分けされた堆積土ごとに含水比や粒度を測定して遮水用築堤土の製造に用いる細粒底泥土および堤体安定化用築堤土の製造に用いる粗粒底泥土または固化処理なしで使用できる土砂などに分類する堆積土分類工程と、
計画した堤体改修断面の遮水用ゾーンを築造する固化処理土の強度および堤体安定化用ゾーンを築造する固化処理土の強度をパラメトリックに変えて安定計算を行うことで安全率と各ゾーンの強度との関係を求め、これらから所定の安全率を確保して安定化するために必要な各ゾーンの強度を求める強度計算工程と、
前記安定計算により得られた遮水用ゾーンや堤体安定化用ゾーンに使用する固化処理土の強度(目標強度)を現場で達成するための固化材添加量を決めるために必要となる、細粒または粗粒底泥土の砕・転圧盛土工法における固化処理土の強度に及ぼす底泥土の物理状態(含水比や粒度)、固化材の種類、固化材添加量、初期固化養生日数、解砕・転圧後の経過日数などの各種要因の影響を調べるための配合試験を実施する試験工程と、
前記細粒底泥土に前記配合試験結果を基に底泥土の粒度と含水比の影響を考慮して決定された量の固化材を添加し攪拌混合して遮水用ゾーンの築堤土を製造し、かつ前記粗粒底泥土に前記配合試験結果を基に底泥土の粒度と含水比の影響を考慮して決定された量の固化材を添加し攪拌混合して堤体安定化用ゾーンの築堤土を製造する築堤土製造工程と、
前記築堤土製造工程で得られた築堤土を所定の期間養生させた後、所定の大きさに破砕する破砕工程と、
前記破砕工程で破砕された遮水用築堤土を用いて老朽化した既設堤体の遮水用コアゾーンを築造するコアゾーン築造工程と、
前記築堤土製造工程および前記破砕工程で得られた堤体安定化用ゾーンの築堤土を用いて老朽化した既設堤体の堤体安定化用シェルゾーンを築造するシェルゾーン築造工程と、
老朽化した既設堤体の下流側に前記築堤土製造工程および前記破砕工程で得られた堤体安定化用ゾーンの築堤土を用いて押え盛土を築造し、あるいは、腹付け盛土を築造する盛土築造工程とを備え、
前記押え盛土あるいは前記腹付け盛土の強度は高さ方向に段階的に変化され、堤体安定上有利なように低い位置ほど高強度の築堤土とする、
ことを特徴とするフィルダムの堤体改修方法。 - 前記遮水用ゾーンに使用できる前記細粒底泥土は池内の堤体に近い部分に堆積している底泥土や土砂であり、前記堤体安定化用ゾーンに使用できる前記粗粒底泥土は河川流入部に近い前記池内での上流側から中流までの間に堆積している砂礫分などの粗粒分を多く含む底泥土や土砂であることを特徴とする請求項1記載のフィルダムの堤体改修方法。
- 前記築堤土製造工程と前記破砕工程は、前記細粒底泥土や粗粒底泥土の前記池内での採取現場で行われることを特徴とする請求項1記載のフィルダムの堤体改修方法。
- 前記コアゾーン築造工程で築造された遮水用コアゾーンと前記シェルゾーン築造工程で築造された堤体安定化用シェルゾーンとの間に前記既設堤体と前記堤体安定化用シェルゾーンの間で極端な剛性差が生じないように前記コアゾーンおよびシェルゾーンの中間に相当する強度と遮水性を有するトランジションゾーンを築造するトランジションゾーン築造工程をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のフィルダムの堤体改修方法。
- 前記遮水用コアゾーンが築造される基礎地盤に止水トレンチが形成され、前記止水トレンチ内は遮水用築堤土で埋められていることを特徴とする請求項1記載のフィルダムの堤体改修方法。
- 前記遮水用コアゾーン、前記堤体安定化用シェルゾーンおよび前記トランジションゾーンの強度は高さ方向に段階的に変化され、堤体安定上有利なように低い位置ほど高強度の築堤土とすることを特徴とする請求項4記載のフィルダムの堤体改修方法。
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