本発明はガス遮断装置を提供し、ガス流量を計測し、当該ガス流量に対応した計測信号を出力する流量検出部と、前記計測信号に基づき、実流量値を複数回演算する演算部と、演算された複数の実流量値に基づき、ガスの流量値の変化の有無を判定する流量変化判定部と、ガスの流量値の変化に対応して、複数の登録流量値を保持する流量登録部と、前記登録流量値の合計値である合計登録流量値を求める登録流量合計部と、前記実流量値と前記合計登録流量値との差である流量差分を演算する流量差演算部と、ガスを使用する器具の使用状態を監視する判定値を記憶する監視値記憶部と、前記流量登録部の登録流量値と前記判定値とから異常の有無を判定する異常判定部と、前記異常判定部において判定された異常判定成立時に、ガスの供給を遮断する遮断部と、を備え、前記流量登録部は、前記合計登録流量値が前記実流量値より大きい場合、流量値の小さい登録流量値から前記流量差分を減算する補正処理を行い、前記流量登録部は、前記合計登録流量値が前記実流量値より小さい場合、前記登録流量値の中で最大の登録流量値に前記流量差分を加算する補正処理を行う。
また、前記流量差分が所定値以上の場合のみ、前記補正出力を行う旨の信号を前記流量登録部に出力する流量差比較部をさらに備えるのが望ましい。
また、前記流量登録部は、最大の登録流量値を保持する増加流量登録部と、最小の登録流量値を保持する減少流量登録部とを含み、前記流量登録部は、前記合計登録流量値が前記実流量値より大きい場合、前記減少流量登録部に登録された登録流量値から前記流量差分を減算するとともに、当該登録流量値が0になった場合は、次に大きい登録流量値を前記減少流量登録部に登録し、前記合計登録流量値が前記実流量値より小さい場合、前記増加流量登録部に登録された登録流量値に前記流量差分を加算するのが望ましい。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるガス遮断装置とガス器具の設置形態を示す図、図2は同ガス遮断装置の制御ブロック図である。
各家庭へガスを供給するガス供給管1の入口部分にガス遮断装置2が設置され、このガス遮断装置2を経由した後に設置されたガス配管3が分岐して、各家庭で使用する種々のガス器具が設置された場所まで配管され、ガスが供給される。例えば、屋外には給湯器4が設置され、この給湯器4で生成される湯が水配管を介して台所の給湯栓5、浴槽やシャワー装置が設置された風呂6、リビング等に設置された床暖房7に供給される。
また、屋内にあっては、台所に設置されたガステーブル8、リビングや寝室等に設置されたガスファンヒータ9にガスが供給され、必要に応じて適宜使用される。
そして、設置されたガス器具が使用され、ガスの消費が発生するとガス遮断装置2がガスの使用量を計測し、使用量が検針値として累積記憶されている。ガス遮断装置2に記憶されたデータは、ガス事業者からの定期的なデータ要求指令に基づいて所定の情報処理が施され、ガス料金やガス使用量あるいはガス事業者が提供する割引サービス等の情報として需要家及びガス事業者に使用される。
図2に示すようにガス遮断装置2は、流量検出部10と、流量演算部11と、平均流量演算部12と、流量変化判定部13と、流量格納部14と、流量登録部15と、登録流量合計部16と、流量差演算部17と、流量差判定部18と、最大流量加算部19と、最小流量減少部20と、異常判定部21と、監視値記憶部22と、遮断部23と、報知部24と、流量差比較部25とを備えるとともに、ガス入口とガス出口を有したガス流路が内部に形成され、ガス入口にはガス供給管1が接続されるとともに、ガス出口にはガス配管3が接続されている。また、流量検出部10と、流量演算部11と、平均流量演算部12と、流量変化判定部13と、流量格納部14と、流量登録部15と、登録流量合計部16と、流量差演算部17と、流量差判定部18と、最大流量加算部19と、最小流量減少部20とから、ガス流量演算装置が構成される。すなわち、ガス流量演算装置は、ガス遮断装置2の遮断動作を担う部分以外の部分から構成される。
流量検出部10には種々の方式のものがあり、本実施の形態で示す流路内に設置された一対の超音波センサで超音波信号を一方から他方に発信し、その伝搬時間より使用ガス流量を検出する方式のものが用いられている。他の方式として、流路内に熱線式センサを設け流れにより変化するインピーダンスより流量を求めるもの、さらには計量膜によりガス量を検出し計量膜の機械的動作を磁石とリードスイッチあるいは磁気抵抗素子等により電気的パルス信号として流量を検出するものがある。
超音波センサを用いた流量検出部10の場合、超音波を送信または受信する第1送受信器と受信または送信する第2送受信器が流れ方向に対抗して配置され、制御回路によって送受信の切り換えが可能になっている。この第1送受信器と第2送受信器の信号を処理して流量を計測するもので、上流から下流に超音波を送信する。そして第2送受信器で受信し計時手段で伝搬時間を計測する。次に、切換手段で下流から上流に向かって超音波信号を送信し、伝搬時間を計測する。流量検出部10当該伝播時間に基づいて計測されたガス流量を計測信号の形式で出力する。
そして、流量演算部11が、第1送受信器と第2送受信器との超音波の伝搬時間差に基づくガス流量の計測信号に対し、流路の大きさや流体の流れ状態に対応した流量係数を掛けて流量値を求める。ここでの流量値は、瞬時流量値として予め定めた周期毎に求められる。
そして、所定周期毎計測し求めた瞬時流量値は平均流量演算部12に入力され、所定個数の瞬時流量値を集合して平均流量値として算出される。平均流量値は、実際のガス流量である実流量値に相当する。そして、当該平均流量値に基づき、流量変化判定部13が器具流量変化の有無を判定する。流量変化判定部13は、今回求めた平均流量値(最新の平均流量値)と前回の平均流量値(過去の平均流量値)より変化判定を行う。その後、今回の平均流量値は時系列的に流量格納部14に記憶される。即ち、流量変化判定部13は、平均流量演算部12で算出された今回の平均流量値と、流量格納部14に記憶された前回の平均流量値とを比較して、予め定めた以上の変化があるか否かを判定し、器具の使用開始有無、或いは流量変化の有無を判断する。例えば、需要家が給湯器4を使用すると、流量値はゼロから所定の流量まで変化し、あるいは他の器具を使用中に給湯器4等が使用されると求めた平均流量と前回の平均流量とから流量変化量が所定以上あったか否かに基づき、器具の使用/停止、或いは流量変化の有無が判断される。
そして、流量変化判定部13が流量変化を検出すると、当該流量変化が、器具の使用開始か、あるいは器具の使用停止に相当するかを判断する。具体的には、流量変化判定部13は、器具が使用された場合は流量変化分を流量登録部15に登録流量値として登録する。ここで流量登録部15は、増加流量登録部15aと減少流量登録部15bとを含む。
流量変化判定部13は、流量増加の変化が検出される度に追加の器具が使用されたと判定し、流量登録部15が流量増加分を、新規な登録流量値として登録する。反対に、器具の使用が停止された場合は、流量登録部15に登録されている登録流量値のうち流量減少分に近い登録流量値をもつ器具が停止されたと判定し、当該登録流量値を削除する。この削除処理も同様に、流量減少側の変化が検出される度に器具の使用が停止されたと判断して都度、登録流量値の削除処理を実行する。流量変化判定部13は、流量変化量が登録流量値と一致しない場合、各登録流量値と流量変化量との差で最も小さい登録流量、或いは各登録流量値と流量変化量との差と登録流量との変化割合を求め、最も小さい流量値を流量変化値で減少補正し、最も近い器具の流量変化と判定し登録値を昇順に変更する。
次に、登録流量合計部16は、流量登録部15で登録された流量値の合計流量(合計登録流量値)を求める。流量差演算部17は、平均流量演算部12が求めた使用器具全体の平均流量値と、登録流量合計部16が求めた合計登録流量値との差である流量差分(=平均流量値−合計登録流量値)を求め、流量差判定部18が当該流量差分の正負を求める。
流量差分が正の場合、最大流量加算部19が流量登録部15に登録されているうちの最大の登録流量値(最大登録流量値)に流量差分を加算する制御信号を出力する。具体的には増加流量登録部15aに最大登録流量値が予め登録されており、当該最大登録流量値に流量差分が加算される。また、流量差分が負の場合、最小流量減少部20が流量登録部15に登録されているうちの最小の登録流量値(最小登録流量値)から流量差分を減算する制御信号を出力する。具体的には、減少流量登録部15bに当該時点での最小流量登録値が予め登録されており、当該から最小流量登録値から流量差分を減算する。後に説明するように、当該最小登録流量値が流量差分より小さい場合は、残りの差分(流量差分−当該最小登録流量値)が、次に小さい登録流量値から減算される。
異常判定部21は、登録されている最大流量の使用器具の監視を行う。監視値記憶部22は、流量域毎に対応した使用時間の制限時間値、あるいは使用最大流量の監視判定値等が記憶されている。例えばストーブ等へガスを供給するホースが何らかの原因で外れた時、異常な大流量が発生するが、そのような状態を監視するための合計流量遮断値や、器具の通常使用する最大使用時間よりはるかに長く使用された場合に対応して使用時間の制限時間を規定した使用時間遮断の制限時間等を監視値記憶部22に記憶している。この設定値と流量登録部15の登録流量値とを異常判定部21が比較判定することで、登録流量値が使用最大流量値を超えていないか、或いは器具の使用時間が登録流量値に対応した連続使用の制限時間を超えていないか等監視する。異常判定部21は異常成立と判定したとき、遮断部23に遮断信号を送ってガス供給を停止する。また、報知部24は、遮断状態や遮断内容を液晶表示素子等に表示すると共にガスの安全監視を行っているガス事業者のセンターに電話回線等の通信により通報する。
次に、以上のように構成されたガス遮断装置2の動作を説明する。需要家宅で保有しているガス器具、例えば給湯器4やガスストーブ9等が使用されると、流量検出部10がガスの流量を検出する。例えば、超音波センサを用いた場合は超音波信号の伝搬時間が検出値として計測され、検出値の信号(計測信号)が流量演算部11に送られて瞬時流量値として換算され、平均流量演算部12が、所定個数毎の平均流量値を演算する。求められた平均流量値に基づき、流量変化判定部13は定期的に器具流量変化の有無の判定を行う。流量格納部14は、流量変化判定部13による流量変化判定後、時系列的に平均流量値を複数個記憶する。流量変化判定部13は、流量格納部14に記憶された過去の平均流量値(例えば、前回、或いは前々回等の平均流量値等)と、今回の(最新の)平均流量値と差から流量変化の有無を求める。つまり、流量変化判定部13は、所定間隔で出力される平均流量値を用いて、その変化状態から器具の使用あるいは器具の停止を判断する。そして、流量変化判定部13は、その変化時の流量変化分をもって使用器具の登録流量値とみなし、流量登録部15に新規登録したり、既に登録済みの登録流量値を減少補正、或いは削除したりすることで、変化時点の使用器具に対応した登録流量値を正確に設定することができる。
ところで、LPガス容器(図示せず)からガス供給管1を介しLPガスが供給される場合、冬季等夜間器具を使用停止してから早朝にかけて温度が低下していくと、容器に比してガス供給管の熱容量が小さいため、容器中の液化したLPガスが調整器(図示せず)を介しガス供給管1中に流れ出てガス遮断装置2の入り口付近までたどり着く場合がある。その様な状態で、翌朝需要家がガス器具を使用開始すると、液化したLPガスが気化し圧力変動が生じ、結果急峻なガスの流量増加・減少が繰り返される事態が生じ得る。このような現象が、いわゆるLPガス固有の再液化現象である。
ガス供給管1中に大量に液化したLPガスが気化するまではかなり長い時間を要する。この間に、流量検出部10が検出した急峻に増減を繰り返す流量を、平均流量演算部12が定期的に所定の個数集め、平均流量値を求めるが、急峻なガスの流量増加・減少に伴い、平均流量値は増減する。再液化現象が生ずると、例えば、最初に算出された大きな平均流量値が登録され、その後の登録タイミングで減少した平均流量値に置換される。更に増加した平均流量値が算出されると、流量変化判定部13は、以前に登録された平均流量値からの増加分を新しい器具流量として分割して新たな登録流量値を登録する。更に平均流量値が減少すると、減少流量分により登録された登録流量値が補正されるという現象が生ずる。このような状態が繰り返されると、流量登録部15に小さな登録流量値が数多く登録され続け、やがて流量登録部15の登録領域からあふれ出し、先に登録された小さな登録流量値が削除されてしまう。この結果、流量登録部15に登録された合計登録流量値と、実際に使用されている全器具の実流量値とが異なる状態となる。
例えば、給湯器4の使用時、流量が0から2000L/h等に変化するが、変化の過程においては、数百L/hのレベルで流量変化が生ずる。この変化状態の中で、平均流量演算部12は、今回の平均流量値と過去の平均流量値とを比較し、変化の有無を求める。その変化量が所定以上の場合は、平均流量演算部12は流量変化有り、すなわち、何らかの器具の使用が開始されたと判定して流量登録部15に変化量を登録流量値として登録する。また、ガステーブル8の使用中に給湯器4の使用が開始された場合を例に挙げると、流量格納部14に過去の流量(平均流量値)としてガステーブル8の流量が記憶されており、流量変化判定部13は今回の平均流量値と過去の平均流量値とから変化流量を求め、同様に現在の流量からの変化率、或いは変化流量が所定以上の場合に変化有りと判定し、変化流量を流量登録部15に登録流量値として登録する。
流量変化判定部13での流量増加の判定に対応した判定信号が入力されると、前回の平均流量値からの増加流量が登録流量値として登録される。複数の器具使用中に、いずれかの器具が使用停止されたり、流量が変化すると、流量変化判定部13は、過去の平均流量値と今回の平均流量値との差から減少変化か否かを判定し、減少変化の場合、減少変化流量を出力し、流量登録部15は減少変化流量より登録された流量のうち最も近い登録流量値を削除したり、或いは減少補正を施す。流量変化量が登録流量値と一致しない場合、各登録流量値と流量変化量との差で最も小さい登録流量値、或いは各登録流量値と流量変化量との差と登録流量値との変化割合を求め、最も小さい流量値を流量変化値で減少補正し、最も近い器具の流量変化と判定し登録値を昇順に変更する。
そして、登録された全ての登録流量値は、登録流量合計部16で加算され合計登録流量値が求められる。流量差演算部17は、平均流量演算部12が求めた平均流量値と、合計登録流量値とから流量差分を求める。
流量差分が0でない場合、監視されるべき使用流量として、流量登録部15に登録され、保持されるべきものである。流量差分がプラスの場合は、平均流量値の方が合計登録流量値より大きいので、最大流量加算部19が、登録流量値が本来の値より小さいと判定する。そして、最大流量加算部19は、流量登録部15の増加流量登録部15aに登録された最大登録流量値に、当該流量差を加算する制御信号を出力し、最大登録流量値に流量差分が加算される。
一方、流量差分がマイナスの場合は、平均流量値が合計登録流量値より小さいので、最小流量減少部20が、登録流量値が本来の値より大きいと判定する。そして、最小流量減少部20は、流量登録部15の減少流量登録部15bに登録された最小登録流量値から、当該流量差分を減算する制御信号を出力し、最小流量から流量差が減算される。このような減算は、流量差分がなくなるまで、流量の小さい登録流量値から順番に行われる。この場合、最も大きい登録流量値は影響を受けることがなく、使用時間の監視が継続して行われる。
また、寒い冬場などの早朝において、ガステーブル8やガスファンヒータ9の使用を開始し、これらの運転中に給湯器4を使用開始するという他の場面を想定する。このような状況においてガスを床暖房等に使用した場合、運転初期の負荷が大きい場合と安定状態の負荷が小さい場合との間では、ガスの燃焼量が大きく変化する。また、ガスをシャワー等に使用した場合、運転当初においては水温と設定温度との間では温度差が大きいが、湯温が安定するとガスの燃焼量が大きく変化する。
このような場合、流量登録部15にガステーブル8やガスファンヒータ9が使用するガスの増加流量が、給湯器4の流量と共に、複数の登録流量値として登録される。流量変化判定部13は、給湯器4の運転初期に流量変化有りと判定し、給湯器4の使用流量が、即ち、この時点の平均流量値が登録流量値として流量登録部15に登録される。
そして、器具の運転が継続され室温が安定化すると、燃焼量すなわちガス流量が器具の比例制御により減少方向に制御される。ところが、この時点では温度は基本的に安定しており、ガスの流量も少しずつ変動させる必要がある。流量が除々に変化する場合、流量変化判定部13が変化有りと判定できない微小な変化が長時間継続する。流量変化判定部13による流量変化有りという判定がない場合、流量登録部15の登録流量値は変化しない。
そして給湯器4を停止すると、流量変化判定部13が、流量が減少していくと判定し、流量登録部15の登録流量値から、減少した流量に相当する流量値が減算されか、減少分に相当する登録流量値が削除される。
登録流量合計部16は、流量変化の判定タイミング毎に、或いは平均流量値を求める毎に、登録流量値の合計値(合計登録流量値)を演算する。そして、新たに求められた平均流量値と合計登録流量値との差である流量差分を流量差演算部17が演算する。もし流量差分が存在し、合計登録流量値が平均流量値より小さい場合、登録流量値のうち最大の流量値(増加流量登録部15aに登録された最大登録流量値)に、流量差分が加算され、再度登録される。一方、流量差分が存在し、合計登録流量値が平均流量値より大きい場合、登録流量値のうち最小の流量値(減少流量登録部15bに登録された最小登録流量値)から流量差分が減算され、再度登録される。
即ち、本実施形態のガス遮断装置によれば、上述した給湯器4のように、流量変化判定部13が流量変化と判定しない程度でガス流量が徐々に変化(減少)する結果、登録された合計登録流量値と検出された平均流量値(即ち実流量の全体流量値)とが一致しない状態で流量が監視されるのが防止される。流量差分がマイナスの場合、即ち合計登録流量値が実際に使用されている流量(平均流量値)より大きい場合、最小の流量登録値から、値の小さい順序で補正する(登録値を減少させる)ので、最大登録流量値の使用時間監視に影響が及ばない。逆に流量差分がプラスの場合、即ち合計登録流量値が実際に使用されている流量(平均流量値)より小さい場合、その差分流量は現在登録されている最大流量値に加算され、使用時間が監視される。したがって、需要家にとって安全サイドの監視となる。使用流量範囲をN区分(例えば13区分)に分割し各々の区分毎に適切な使用時間の制限時間が監視値として規定されるが、例えば、実際の流量とその登録流量値区分との誤差が±1区分程度に抑制可能となる。
そして、異常判定部21は、再設定された登録流量値で監視値記憶部22内の該当の使用時間制限時間を参照して使用器具を監視する。監視時間が経過し異常発生時、遮断部23を作動させ、ガスの供給を停止することにより安全性を確保するようにしている。
なお、本実施の形態に使用した数値限定は一例であり、又使用形態も本実施の形態に限定されるものではない。
上記した本実施形態のガス遮断装置の動作を、具体例を用いて説明する。図3は上記のような事象の発生を説明する図である。各々起動時にガス流量の変化量100L/h、200L/h、1500L/hをもつ器具A,器具B、器具Cが順次起動され、流量の合計を平均流量演算部12は実際の流量(実流量値)である平均流量値として求める。
変化の発生により、流量変化判定部13は、ガス遮断装置の流量登録部15に登録流量値Q0、Q1、Q2を登録する旨を指示し、流量登録部15はQ0、Q1、Q2を登録する。登録流量合計部16は、Q0からQ2(Q3)の合計量である合計登録流量値ΣQを求める。Q0、Q1、Q2には、所定の器具の使用開始時の変化量が登録流量値として登録され、所定以上の実流量の変化がなければ登録された値は書き換えられない。また、Q0、Q1、Q2、Q3の順番で、変化量の大きな器具が登録される。
本例では、図3のグラフに示すように、器具A,器具B、器具Cが順次起動された後、ガス流量の合計に微小な変化が生じ、平均流量値が1800L/hから1750L/hへ減少している(−50L/h)。しかし、当該変化が長い時間を経過して生じている緩やかな使用量の変化のため、流量変化判定部13は、器具のガスの使用態様の変化を検知することはない。したがって、流量変化判定部13は、Q0、Q1、Q2、Q3の値を書き換えず、器具の使用状態の変化を判断することはない。
そして、その後に器具Aの停止により、平均流量値が1750L/hから1650L/hへ減少した(−100L/h)。流量変化判定部13は、変化量−100L/hを判定し、登録流量合計部16は、流量変化判定部13によって判定された変化量−100L/hを考慮し、新たな合計登録流量値1700L/h(=1800L/h−100L/h)を算出する。従来の場合においては、これ以上、登録流量値が処理されることはない。
一方、流量差演算部17は、平均流量値1650L/hと、新たな合計登録流量値1700L/hとの流量差分である−50L/h(=1650L/h−1700L/h)を算出する。流量差判定部18は、流量差分が負の値(−)であると判定する。当該判定結果を受けて、最小流量減少部20は、流量登録部15の減少流量登録部15bに登録される登録流量値から流量差分を減算する。ここで、減少流量登録部15bに登録される登録流量値は、所定の時点で、流量登録部15の登録流量値から小さいものが順番に登録される。
減少流量登録部15bに登録された流量登録値Q2の100L/hが減算により削除されているが(100L/h−100L/h)、当該削除は流量変化判定部13の作用によるものであり、従来技術と同様である。すなわち、従来技術においては、実流量の変化量に相当する100L/hが削除されたので、これ以上の登録流量値の書き換えは行われず、図8に示すように合計登録流量値は1700L/hとなり、実際の流量値(平均流量値)1650L/hと、合計登録流量値1700L/hとの間に誤差50L/h(=1700L/h−1650L/h)が生じた状態が維持される。
本例における平均流量値の1800L/hから1750L/hへの減少のような、緩やかなガス使用量の変化は何度も生じ得る。そのような変化が何度も生じても、流量変化判定部13は、器具のガスの使用態様の変化を一切検知することがないことは想定される。そして、このような誤差が発生する事態が何度も生ずると誤差の合計がどんどん大きくなり、実際の流量に比べ、ガス遮断装置に登録されている流量の和がはるかに大きくなるという好ましくない状態が生じうる。
上記の50L/hの間のような小さな差の場合は、大きな問題は生じないが、誤差が何度も生じ、さらに登録された流量の合計自体と実際の総流量の流量差分に乖離が生じると、不都合が生じうる。すなわち、既に述べたように保安の見地から、登録された流量の合計に基づき継続使用可能時間が設定されるため、実流量が小さいにもかかわらず、継続使用時間が短く設定されてしまう。そして、本来ガス通路を閉栓すべき時間よりも短い時間でガス通路が閉栓されてしまい、使い勝手が悪くなる事態が生じうる。
一方、本実施形態では、Q2が削除された後も、流量差分が満たされるまで減算が続行される。すなわち、減算量が流量差分である−150L/hに達するまで減算が行われるので、Q2の削除後に減少流量登録部15bに登録された流量登録値Q1から残りの−50L/hが減算され、流量登録値Q1は150L/h(=200L/h−50L/h)となる。すなわち、流量差分が喪失するまで合計登録流量値からの減算が行われるため、実際の流量値と合計登録流量値との間に誤差が解消される。また、減算は、流量値の小さいものから順番に行われる。したがって、実際の流量値を適切に監視することが可能となり、安全性を維持しつつ、本来より短い時間でガスが遮断されてしまうという事態も回避することが可能となり、ガス器具利用の利便性が向上する。
ここで、登録流量値の小さいものから順に減算の対象となるのは、安全性の確保のためである。すなわち、一般的に流量値の小さい器具ほど、害は小さいとして継続使用可能時間が長く設定されている。したがって、所定の器具の登録の有無に拘らず、当該器具より流量値の大きな他の器具の登録が残されていれば、継続使用可能時間は当該他の器具の登録に基づいて設定される。ここで設定される継続使用可能時間は、前記した所定の器具に基づく使用時間より長く設定される。すなわち、登録流量値の小さいものから順に減算、削除を行っても、大きな登録流量値は残され、比較的短い継続使用可能時間が維持され、安全性が確保される。
次に、実施形態のガス遮断装置の他の動作の例を図4を用いて説明する。図4は上記のような事象の発生を説明する図である。本例では、ガス流量の変化量100L/hをもつ器具Aがまず起動し、その後、器具Aのガス流量が微小な変化が生じ、平均流量値が100L/hから150L/hへ徐々に増加している(+50L/h)。しかし、当該変化が長い時間を経過して生じているため、流量変化判定部13は、Q0の値を書き換えず、器具の使用状態の変化を判断することはない。
その後流量値200L/h、1500L/hをもつ器具B、器具Cが順次起動され、流量の合計を平均流量演算部12は実際の流量である平均流量値として求める。
そして、その後に器具Cの停止により、平均流量値が1850L/hから350L/hへ減少した(−1500L/h)。流量変化判定部13は、変化量−1500L/hを判定するので、流量値1500L/hをもつ器具Cを削除する。また、登録流量合計部16は、流量変化判定部13によって判定された変化量−1500L/hを考慮し、新たな合計登録流量値300L/h(=1800L/h−1500L/h)を算出する。従来の場合においては、これ以上、登録流量値が処理されることはない。
一方、本実施形態では、流量差演算部17が、実流量である平均流量値350L/hと合計登録流量値300L/hとの流量差分である50L/h(=350L/h−300L/h)を算出し、流量差判定部18は、流量差分が正の値(+)であると判定する。当該判定結果を受けて、最大流量加算部19は、流量登録部15の増加流量登録部15aに登録される登録流量値に流量差分を加算する。ここで、増加流量登録部15aに登録される登録流量値は、所定の時点で、流量登録部15の登録流量値最大のもの(通常はQ0)が登録される。
したがって、増加流量登録部15aに登録された登録流量値Q0の300L/hに50L/hが加算され、合計登録流量値は350L/hとなる。すなわち、本実施形態では、流量差分が喪失するように、合計登録流量値(特に最大の登録流量値)への流量差分の加算が行われるため、実際の流量値と合計登録流量値との間に誤差が生じた状態が解消される。したがって、実際の流量値を適切に監視することが可能となり、安全性を維持しつつ、本来より短い時間でガスが遮断されてしまうという事態も回避することが可能となり、ガス器具利用の利便性が向上する。
図3と図4の結果をまとめたのが、図5の表である。表に示すように、本実施形態においては、実際の流量値と合計登録流量値が比較され、比較の結果の大小関係に基づき、登録流量値に対する所定の制御が行われる。当該制御により、実際の流量値と合計登録流量値が揃えられ、適切なガス流量の監視、遮断制御が行われることとなる。
以上のように、再液化現象により急激な流量変化が継続し、流量登録部15にさまざまな登録流量値が登録されるといった事象や、流量変化判定部13が検出できないわずかな流量変化が継続した後に使用中のいずれかの器具が停止する等の大きな流量変化を検出する事象が、ガスの使用下で存在する。本実施形態のガス遮断装置は、登録された複数器具の合計登録流量値と、実際の流量値(平均流量値)との間に流量差分が発生したのを検出した場合、検出された流量差分を最大登録流量値に加算した後再登録し直したり、最小登録流量値をはじめとする量が下位の流量登録値を削除したりすることにより、合計登録流量値を実際の使用中の最大流量の器具流量にほぼ一致させることが可能となる。すなわち、本実施形態のガス遮断装置によれば、使用器具に対応した適切な使用制限機能を確保することでき、誤った使用時間監視による誤遮断を防止することができる。さらに本実施形態のガス遮断装置によれば、器具の異常使用が生じたにも拘らず使用時間を延期したり、逆に極端に短い時間でガスを遮断するのを防止することができ、安全性や信頼性が極めて高く、かつよるガス事業者の不要な出動を削減することができ、使い勝手が向上する。
(実施の形態2)
図6は本発明の実施の形態2におけるガス遮断装置の制御ブロック図である。図2と同一の部分については同一番号を付し、説明を省略する。
図6のガス遮断装置においては、図2のガス遮断装置と異なり、流量差比較部25が、流量差演算部17と流量差判定部18との間に設けられている。流量差比較部25は、流量差演算部17で求められた流量差が所定値以上であるか否かを判定し、所定値以上の場合に、登録流量値の補正処理を行う。即ち、実際の流量値である平均流量値と、合計登録流量値との間の流量差分が所定値以上の場合にのみ、流量差比較部25は流量登録部15に新たな登録流量値の登録を行う旨の登録補正信号を、流量差判定部18に出力する。
流量差演算部17で求められた流量差分が0でない場合、流量差比較部25は流量差分が所定値以上であるか否かを判定する。ここで、所定値として任意の値を設定することができるが、例えば、各器具がもつ器具流量を所定値として採用することができる。そして、流量差分が所定値以上である場合のみ、流量が監視されるべき器具の流量値が流量登録部15に登録されていないとの前提の下、流量差比較部25は流量登録部15に新たな登録流量値の登録を行う旨の登録補正信号を、流量差判定部18に出力する。他の動作は実施の形態1のものと同じである。
器具の追加使用や停止、流量制御がなくても、平均流量値には時間経過とともにわずかな変動が発生しやすい。したがって、流量差分が0のときのみに登録を変動させないとした場合、平均流量値のわずかな変動により、誤って登録の追加や削除が行われる恐れがある。本実施形態においては、流量差分が所定値以上の場合のみ登録が行われるので、誤った登録の追加や削除が行われるのを防止することができる。つまり、微小な変化で頻繁に変更が行われることを防止することができる。
尚、上記の実施形態では、ガスの流量を演算する部分として、瞬時流量を演算する流量演算部11と、平均流量値を演算する平均流量演算部12の二つが設けられている。しかしながら、実際の流量を演算する部分として、流量検出部10のガス流量を反映した計測信号に基づき、実流量値を複数回(流量変化判定部13が流量の変化を判定するため時系列的な複数個の実流量値が必要)演算する演算部が設けられればよく、実施形態のものには限定されない。
また、上記の実施形態では、流量変化判定部13は、ガスの流量値の変化の有無を判定に際し、流量値(平均流量値)の変化から直接変化の有無を判断している。しかしながら、(今回の平均流量値−前回の平均流量値)/今回の平均流量値、のような流量変化率によっても変化の有無を判断してもよい。
なお、本発明は上記の実施形態において示されたものに限定されるものではなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。