この従来例では、平均毛管半径が小さい、つまり密度が高い蓄積部材が、縦方向中心線に沿って下方へ延びる捕捉部材を横側から挟むように外側に配置されることにより、吸収体の本体部を構成しており、この捕捉部材は、蓄積部材より密度が低く設計されていた。従って、着用者の行動変化や衣服などの外圧に伴い容易に変形する陰唇の形状変化は、追従し難いものである。例えば、下着による押し付けや、着用者が椅子に座るなどの行動により、上下方向において下方から上方の向き(陰唇先端から前庭床への向き)に外圧が陰唇へかる際には、陰唇が潰れるように左右方向へ屈曲するため、陰唇内壁の凹凸が変形する。さらに、このような外圧が解放される行動変化、例えば直立状態になれば陰唇内壁は略平坦形状に戻る。このように、着用者の行動変化などによる外圧によって、陰唇内壁の形状は容易に変形してしまうが、上述の従来技術においては、陰唇内壁と接する(近い)位置に密度が高く設定された蓄積部材が配置されているので、その蓄積部材が追従して変形し難く、陰唇内壁との隙間が発生し易くなると考えられる。そのため、陰唇間装置又はパッドの陰唇との接触面積の低下による陰唇間パッドの脱落や、着用者に与える蓄積部材の剛直感つまりは異物感を生じるおそれがある。
ところで、一般的に経血の排泄経路は、[1]膣口付近に滞留する経路、[2]前庭床を伝い前後方向へ流れる経路、[3]陰唇内壁を伝い下方向へ流れる経路で大別される。[1]及び[2]は比較的排泄流速は遅くかつ少量な徐々に排泄される排泄経路であるが、[3]では着用者の瞬間的な動作変化時において子宮内などに多量に滞留していた経血の排泄であるため、排泄流速は速くかつ多量な排泄経路であると考えられる。上述の従来技術は、[1]及び[2]に対する排泄経路においては捕捉部材によって膣口付近から直接捕捉し、蓄積部材へ流通することで再度排泄された経血も捕捉可能であるが、[3]の排泄経路に対しては、陰唇内壁と接した(近い)位置で経血を蓄積することによって、陰唇内壁と陰唇間パッド表面との界面において経血が滞留し易くなり、経血の流動性により陰唇内壁と陰唇間パッドとの接触力が低下し、陰唇間パッドが脱落してしまうおそれが高まる。
本発明は、陰唇内壁の挙動変化に追従して容易に変形可能とすることにより着用者への異物感を低減させ、高速・多量に陰唇内壁を伝い下方へ排泄される経血の排泄経路においても確実に経血を捕獲し保管することで経血の漏れを防止し、さらに経血は吸収体の衣服面側から累積させることで陰唇間パッドの表面に経血を滞留させにくくし陰唇間パッドの脱落をも低減させる陰唇間パッドを提供するものである。
より具体的には、女性の陰唇間に無理なく挟み込むことが可能な形状で、体液を吸収する吸収体と吸収体を内包する被覆材からなる陰唇間パッドであって、この吸収体は、陰唇に接せする(近い)ように配置された陰唇追従層と、その陰唇追従層から経血を通過(移動)させるように接するように配置された体液保管層から構成されていることを特徴とする陰唇間パッドを提供する。この陰唇間パッドにおいては、陰唇追従層は体液保管層よりも圧縮され易いため装着された際に変形が容易であり、見かけ密度が体液保管層よりも低いことを特徴とする陰唇間パッドである。
このように陰唇内壁と接した(近い)位置に体液保管層よりも容易に圧縮変形可能な陰唇追従層を配置させているので、陰唇が上下方向を軸に左右方向へ屈曲し陰唇内壁が凹凸を作り変形したとしても、陰唇追従層は陰唇内壁の挙動変化に対して容易に圧縮変形可能であり、さらに体液保管層の陰唇内壁に向いている少なくとも一部は陰唇追従層に被覆されているので、体液保管層の剛直感を陰唇追従層で緩和できるため着用者への異物感を減らすことができる。また、陰唇内壁と近い(接した)位置に密度を低く設定した陰唇追従層と、その逆側に密度を高めた体液保管層を位置されているため、陰唇内壁を下方へ伝い流れる高速多量な排泄経路に対しても、低密度で設定され女性の前庭床及び陰唇内壁の形態変化に対し容易に変形対面する陰唇追従層で体液を捕獲し、陰唇追従層と体液保管層との毛管現象により体液保管層から経血を蓄積していくので、陰唇間パッドの表面に経血を滞留させにくくすることができ、経血の流動性による陰唇間パッドの脱落をも防止することが可能である。
生理用ナプキンの吸収体にあっては、少なくとも2層構造からなり下層部が上層部の密度よりも高く設定することにより、上層部で捕獲した経血を上下層部毛管現象により下層部へ移行し下層部で経血を保管することで、再度経血が排泄されたとしても上層部で再度経血を捕獲することを可能とし、さらには体圧変化による経血の逆戻りを防止することで経血モレのおそれを低下させることが出来る。しかし生理用ナプキンにおいては、女性の凹状である陰唇に対し密着させるために上層部を凸状にし、下層部で上層部を被覆することで外陰部との密着性を高めるものであった。そのために、下層部は上層部よりも、大きいサイズである必要があり、少なくとも短手寸法は上層部よりも下層部が大きいことが必要条件となる。
本発明の陰唇間パッドにおいては、少なくとも体液保管層(例えば下層部)の陰唇内壁に接する(近い)面は陰唇追従層(例えば上層部)によって被覆され、着用者への異物感を低減させると同時に、陰唇内壁さらには外陰部と陰唇追従層との密着性を高めることができ、よって経血漏れを防止することができるものである。そもそも女性の陰唇の深さは、個人差や体勢変化によって変化するものであるが、陰唇間の深さ変化が起きた際でも、吸収体における少なくとも短手寸法を体液保管層よりも陰唇追従層を大きくすることで体液保管層の厚みによるスキマの発生を起こさせないので、陰唇追従層は陰唇内壁さらには外陰部とも密着性を保つことができ、経血モレを防止することが可能となる。
より具体的には、本発明は、以下のようなものを提供する。
(1) 陰唇間に無理なく挟み込んで保持することが可能な大きさ、重さ、柔らかさの、長手方向と短手方向とを有する実質的に縦長の形状を成し、体液を吸収する吸収体と、該吸収体を内包する被覆材と、からなる陰唇間パッドにおいて;前記被覆材は、着用者の陰唇に向いている身体側面及びその反対側に前記吸収体に向いている吸収体側面を有し;前記吸収体は、陰唇追従層及び体液保管層を含み;前記陰唇追従層は少なくともその一部が前記被覆材と前記体液保管層の間に配置されるものであり、前記被覆材と共に着用者の陰唇の形状に合わせて変形するものであり;前記体液保管層は、前記陰唇追従層より体液を移動できるように前記陰唇追従層に接するものであり;前記陰唇追従層は、前記体液保管層よりも柔軟であるものであることを特徴とする陰唇間パッド。
ここで、被覆材は、本発明の陰唇間パッドの少なくとも一部の外装を構成するものであってよい。従って、着用者の陰唇の内壁等に直接又は間接的に接触してよい。着用者の陰唇に向いている身体側面とは、被覆材が着用者の陰唇の内壁等に接触しうる面を含んでよい。この身体側面の反対側にある吸収体側面は、被覆材の身体側面のいわゆる裏側の面を含んでよい。この被覆材は、2次元的に広がるシート状の部材を含んでよい。陰唇追従層は少なくともその一部が被覆材と体液保管層の間に配置されるものであるが、陰唇追従層の外装が被覆材をかねることを妨げるものではない。従って、見かけ上陰唇追従層が直接、陰唇の内壁等に接触する状態を含んでよい。陰唇追従層は、体液保管層を介することなく、陰唇の内壁等に直接又は間接的に接触し、内壁等の形状に従って自身の形状を追従させていくことができる。このとき被覆材と共に追従することとなるが、この被覆材は、陰唇追従層自身の外装を含んでよい。陰唇追従層が体液保管層よりも圧縮され易く変形が容易であるのは、乾燥状態において、及び/又は、経血(又は体液)を吸収した湿潤状態においてであることが好ましく、特にいずれの場合においてでもそのようであることがより好ましい。体液保管層に比する陰唇追従層の変形容易性は、圧縮変形等が必要な場合に特に好ましい。例えば、カトーテック社の「KES圧縮特性」において、LC(圧縮剛さ)が、乾燥時・湿潤時を問わず体液保管層よりも陰唇追従層の方が低い値であることがより好ましい。ここで、体液は経血を含む広い概念である。逆にいえば、体液保管層は、陰唇追従層よりも見かけ密度が高く、より剛直感を与えやすいため、陰唇追従層を中間に配置することにより陰唇の内壁に剛直感を伝えてしまうことを防止でき得る。また、吸収体において、少なくとも陰唇追従層の短手寸法を体液保管層よりも大きくすることで、陰唇の内壁と陰唇間パッドの間に隙間発生を抑制することができ、一方、大きくしすぎると、陰唇の挟持力に対する反発力とのバランスで却って好ましくなくなる場合がある。
体液保管層は、多孔状態であってよく、例えば繊維集合体等から構成される層を含むことができるが、これに限られるものではない。例えば、連続するマトリックスに孔が多数空いているものも含んでよい。このような孔を具体的に表現できる毛管の半径(例えば、平均半径)が、陰唇追従層の相当する半径より小さくてよい。これにより、例えば、重力のようなドライビングフォースがなくても経血を含む体液の毛管現象による体液移動を可能ならしめ、何らかのドライビングフォースがあった場合は、それを更に加速することができ得る。
尚、毛管現象は、液体と接触する固体の濡れ性により生じるもので、表面処理により、かかる現象を加速することも可能である。低密度で設定された陰唇追従層は、女性の前庭床及び陰唇内壁の形状に合わせて容易に変形し、隙間を開けることない陰唇内壁等の表面と陰唇追従層の間で経血を内壁等から陰唇追従層へと体液を移動させ、更に、体液保管層へと毛管現象により体液を移動させ続けることができる。吸収体の構造としては、少なくとも体液保管層の身体側面の少なくとも一部が陰唇追従層によって被覆されているものであればよい。体液保管層の衣服面側は陰唇追従層によって被覆されていなくてもよい。従って、陰唇追従層と陰唇の内壁等との間に配置される被覆材の少なくとも一部が透水性であればよい。また、体液保管層と接する被覆材は不透水性を有することができる。
ここに示す陰唇追従層や体液保管層からなる吸収体は、例えば身体側(上面)から衣服側(下面)に向けて徐々に密度が高くなるよう堆積などして、第3者が見て明らかに少なくとも2層構造と判断できない実質的な1層構造で無いことが望ましい。実質的に1層構造とみなされる吸収体構造は、吸収体の身体側(上面)と衣服側(下面)のそれぞれの挙動変化に対する自由度が規制されてしまう可能性があるためである。陰唇追従層や体液保管層の少なくとも2層構造であるので、吸収体が3層以上の構造を有してもよい。吸収体の身体側(上面)での陰唇の追従性と衣服側(下面)での経血の保管との役割分担を阻害しない位置に敷設することが好ましい。例えば陰唇追従層と体液保管層の間に第3層を介在させるなどが例として挙げられる。吸収体における見かけ密度とは、設計者が膣口と接触するように意図とした位置における吸収体の値である。測定法自身については、後述する。
(2) 前記被覆材の前記身体側面が前記着用者の陰唇に接しているときは、その反対側である前記吸収体側面が、前記陰唇追従層若しくはより柔軟な柔軟層に接していることを特徴とする(1)に記載の陰唇間パッド。
ここで、接するということは、直接又は間接的に、相互に近接することを意味してよく、一般的には、機械的な若しくは力学的な影響を与える状態を意味することができる。特に経血の流れが話題となるときは、この流れが影響される状態を意味することができる。より柔軟な柔軟層は、材料を問わず、固体、液体、気体、又は、これらの組合わせのいずれであってもよい。従って、単なる空間を含むことができる。
(3) 前記吸収体が拡散層を更に含み、該拡散層が前記陰唇追従層及び前記体液保管層の間に配置されているものであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の陰唇間パッド。
拡散層とは、吸収される体液を適当に分散することができる層であってよい。また、拡散層は陰唇追従層の変形による影響を体液保管層に与えることを抑制するものでもよい。この拡散層には、ティッシュー等、薄いシート状若しくはシートのようなものを含んでよい。拡散層は、透水性であることが望ましく、織物、編物、抄紙等の種々の構造や形態を有するものを用いることができる。陰唇追従層及び体液保管層の間に配置されるとは、拡散層の少なくとも一部が、少なくとも2つの面を有し、そのうちの一面が陰唇追従層に、もう1つの一面が体液保管層に接する場合を含んでよい。例えば、拡散層が2次元的に広がるシート様のものである場合にその一面(仮に表側面)が陰唇追従層に接し、その裏側面が体液保管層に接する場合を含んでよい。
(4) 前記拡散層は、前記陰唇追従層の長手方向へのクレム吸水度よりも高いクレム吸水度を有するものであることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の陰唇間パッド。
拡散層としては、長手方向へのクレム吸水度が陰唇追従層よりも高いものが好ましい。拡散層の具体的な構成としては、繊度1.1〜4.4dtx、繊維長25〜51mmからなるレーヨン100%の繊維を水流により交絡させるとともにメッシュパターニングさせ、目付20〜50g/m2、厚み0.2〜1.0mmのスパンレース不織布を選択することが好ましい。拡散層は、経血の拡散領域を長手方向へ方向付けるために、長手方向へ向かうスリット加工を施すことで短手方向への経血拡散を分断する、繊維の配向性を長手方向へ向けることで繊維の配列方向へ経血を誘導させる、また長手方向へ延びる高密度領域を付与するエンボス加工を施すことで毛細管現象によって長手方向へ経血を誘導する等の特性を付与することができる。しかし、過度に繊維の配向を長手方向へ向ける、又は、エンボス加工を施すと拡散層の剛直感が高まってしまう恐れがあるため、より好ましい例としては、水流によりメッシュパターニングされたスパンレース不織布や、長手方向へ向かうスリット加工を施したもの等が挙げられる。メッシュスパンレース不織布とすると、毛管力が高まり、スリット加工により長手方向へのクレム吸水度がより高まり、拡散層としての柔軟性も高まり、陰唇追従層の変形のし易さを阻害しにくくなることがある。
拡散層の寸法は特に限定するものではないが、前後領域の体液保管層の吸収キャパシティーをさらに活用し易くするためには、長手方向における拡散層の寸法は体液保管層の寸法以上であることが好ましい。先に吸収体の具体的な構成として、陰唇追従層は繊度1.1〜4.4dtx、繊維長20〜51mmの範囲から選ばれるレーヨンを60〜90%、天然コットンを40〜10%の混合比で積層し、体液保管層には繊維長1〜10mmの範囲から選ばれるパルプを80〜99%、粒子状高分子吸収体を20〜1%の混合比で積層した繊維を、エンボス加工によりシート化させ、合計目付50〜450g/m2、合計の見かけ厚みを2〜20mm有する吸収体を例として挙げる。体液保管層の衣服面側における吸収体全域を被覆材で覆っておくと、生産性が向上することがある。被覆材としては、15g/m2で設定されたティッシュ等が例として挙げられる。
従って、陰唇追従層と体液保管層さらには拡散層のより好適な具体例としては、体液保管層の衣服面側は、10〜20g/m2のティッシュで被覆され、その上面の体液保管層には、繊維長1〜10mmの範囲から選ばれるパルプを60〜120g/m2積層し、体液保管層の身体面側における拡散層には、繊度1.1〜4.4dtx、繊維長25〜51mmからなるレーヨンのメッシュスパンレースを敷設し、さらにその上面の陰唇追従層には、繊度1.1〜4.4dtx、繊維長20〜51mmの範囲から選ばれるレーヨンを60〜90%、天然コットンを40〜10%の混合比で150〜250g/m2積層して、ドット状のエンボス加工によりシート化させることができる。陰唇追従層の見かけ厚みは1.0〜14mmであることが好ましく、体液保管層の見かけ厚みは0.6〜6.0mmの範囲であることが好ましい。
(5) 前記陰唇間パッドは、前記短手方向の略中央における前記長手方向に略平行な折り曲げ軸を有し、該折り曲げ軸で折り曲げた状態で前記着用者の陰唇間に挟み込んで保持されるものであることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載の陰唇間パッド。
折り曲げた状態は、2つに完全に折り曲げられたものから、やや開いた状態のものまでを含んでよい。例えば、2つ折りが裏面側シートを互いに重なるようにして行われる場合においては、裏面側シート同士が接触する状態や幾分間が離れた状態を含んでよい。また、一部に折り返した部分があってもよい。
(6) 前記被覆材は、表面側シート及び裏面側シートを含み; 該表面側シートは透水性であり; 該裏面側シートは透水性若しくは不透水性であり; 前記被覆材は、前記表面側シート及び前記裏面側シートの間に前記吸収体を内包するものであることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれかに記載の陰唇間パッド。
被覆材は、1の種類の材料で形成することもできるが、異なる種類の材料から構成することもできる。また、被覆材の位置によりその機能、例えば透水性等を変化させてもよい。この変化は、材料を変更し、それを張り合わせることによってもよく、また、同一材料であっても異なる場所に異なる処理を施して場所による機能を変化させてもよい。
(7) 前記陰唇追従層及び前記体液保管層は、前記長手方向及び前記短手方向において広がると共に相互に重なるように配置されて前記吸収体を構成し; 前記吸収体は、前記被覆材の吸収体側面に前記陰唇追従層を接するようにして配置されることを特徴とする上記(1)から(6)のいずれかに記載の陰唇間パッド。
(8) 前記吸収体を構成する体液保管層の見かけ密度は、陰唇追従層の見かけ密度よりも約0.02g/cm3以上高く、少なくとも見かけ密度は約0.07g/cm3以上で設定されていることを特徴とする上記(1)から(7)のいずれかに記載の陰唇間パッド。
吸収体を構成する見かけ厚みが、陰唇追従層/体液保管層=60/40以上、好ましくは60/40〜95/5で設定されていることが好ましい。陰唇間に嵌装された状態での陰唇間パッドの厚みは、好ましくは2〜20mmであり、更に好ましくは4〜10mmの範囲である。特に、厚みが2mmより小さいと経血を吸収した際その厚みがさらに小さく(薄く)なり、陰唇による挟持力に対して生じる反発力が弱まるために、陰唇間から陰唇間パッドが脱落してしまうようなおそれがある。一方、20mmより大きいと陰唇による挟持力に対して生じる反発力が大きくなりすぎ、却って左右の陰唇を押し広げ過ぎて陰唇間パッドが脱落するおそれが増えるばかりでなく、着用者に異物感を与えることもある。ここでは、吸収体を構成する見かけ厚みを好ましくは陰唇追従層/体液保管層=60/40以上、より好ましくは60/40〜95/5で設定するとよい。見かけ厚みの構成比を60/40より小さく設定すると、陰唇内壁の挙動変化に対する追従性の低下や体液保管層の剛直感を緩衝しにくくなることで着用者に異物感を与えるおそれがあり得る。一方、95/5より大きく設定すると陰唇追従層で捕獲した経血を体液保管層へ移行しにくくなると考えられるからである。また、吸収体の見かけ厚みは好ましくは2〜20mmの範囲である。しかし、長手方向中心線にほぼ沿って衣服面側の被覆材がお互い向き合うように折り畳まれて(略2つ折りで)装着されるような陰唇間パッドにおいては、折られる前の吸収体の見かけ厚みは、好ましくは1〜10mmの範囲である。
吸収体を構成する体液保管層の見かけ密度が、陰唇追従層の見かけ密度よりも0.02g/cm3以上高く、少なくとも見かけ密度は0.07g/cm3以上で設定されていることが好ましい。例えば、陰唇追従層と体液保管層との密度差が0.02g/cm3未満である場合は、いわゆる毛管現象による経血の流れが低下してしまう恐れがある。陰唇追従層と体液保管層との密度差は、好ましくは0.02〜0.2g/cm3の範囲である。また、体液保管層の見かけ密度は少なくとも0.07g/cm3以上であることが好ましく、更に、0.07〜0.3g/cm3の範囲であることがより好ましい。例えば、体液保管層における見かけ密度が0.07g/cm3未満であると体液保管層を構成する空隙率が高いため圧縮され易く、一度吸収保管した経血を圧縮等の変形により放出させられることになるという恐れがある。一方、体液保管層における見かけ密度が0.3g/cm3より大きいと、体液保管層を構成する空隙率が小さすぎ、経血を吸収しにくくなり、更に、剛直感が高まる恐れがある。
陰唇追従層と体液保管層との層間剥離を防止するために接着剤やエンボス加工などにより一体化成形してもよい。一体化成形の具体例として、例えば、エンボス加工があるが、使用中の型崩れ防止や湿潤状態でも陰唇追従層と体液保管層との層間剥離を防止し得、好ましくは、吸収体面積に対するエンボス率は0.6〜30%の範囲である。陰唇追従層で吸収した経血を体液保管層へスムーズに移送させるためには、装着中に陰唇追従層と体液保管層とが層間剥離することなく一体化されていることが好ましいため、エンボス加工は吸収体に対し均一に配置されていることが好ましい。
(9) 前記陰唇追従層及び前記体液保管層は少なくとも繊維集合体から構成され、前記陰唇追従層を主体的に構成する繊維の繊維長は前記体液保管層を主体的に構成する繊維の繊維長よりも長い繊維で構成されていることを特徴とする上記(1)から(8)のいずれかに記載の陰唇間パッド。
陰唇追従層及び/又は体液保管層は繊維集合体を少なくとも一部含むものから構成されてよい。例えば、陰唇追従層を主体的に構成する繊維の繊維長は、体液保管層を主体的に構成する繊維の繊維長よりも長い繊維で構成されていることを特徴とすることができる。比較的少量の経血を吸収すると、経血の表面張力により吸収体を構成する材料同士が互いに引き付けられ、材料間の距離が狭まることで見かけの吸収体の厚みが薄くなることがある。しかし、陰唇追従層を主体的に構成する繊維の繊維長を、体液保管層を主体的に構成する繊維の繊維長よりも長いものであるとすると、陰唇追従層が経血を吸収したとしても、繊維間の交絡点が増加し、繊維間距離が繊度以下になりにくくなるため、その厚みが薄くなりにくい。従って、陰唇追従層は容易に変形することが可能となる。吸収体の1つの具体的構成としては次の通りである。陰唇追従層は、繊度1.1〜4.4dtx、繊維長20〜51mmの範囲から選ばれるレーヨンを60〜90%、天然コットンを40〜10%の混合比で積層してなるものから構成され得る。また、体液保管層は、繊維長1〜10mmの範囲から選ばれるパルプを80〜99%、粒子状高分子吸収体を20〜1%の混合比で積層した繊維を、エンボス加工によりシート化させたもので構成され得る。これら陰唇追従層及び体液保管層は、合計目付50〜450g/m2、合計の見かけ厚みを2〜20mm有する吸収体構成することができる。陰唇追従層と体液保管層との相対的な見かけ厚みは、60/40〜95/5の範囲が好ましい。また、陰唇間追従層の見かけ厚みは、1.0〜14mmであり、体液保管層の見かけ厚みは0.6〜6mmの範囲が好ましい。なお、「主体的」とは各層の重量に対して60%以上の重量を同一物質が示した際、その物質を主体的な物質と呼ぶことができる。
陰唇追従層は体液保管層よりも圧縮変形が容易である指標として、カトーテック社の「KES圧縮特性」が挙げられる。以下に具体例を挙げる。陰唇追従層は繊度3.3dtx、繊維長51mmからなるレーヨンを85%、天然コットンを15%の混合比で構成され、目付180g/m2に積層し見かけ厚みを2.5mmに設定し、体液保管層は繊維長2〜5mmからなるパルプ100%で構成され、目付80g/m2に積層し見かけ厚みを1.0mmに設定した。各層の試験片(5cm×5cm)を試験台に置き、圧縮面積2cm2の円形平面を持つ銅版で、最大荷重4900Paまで圧縮し、銅版の速度は50mm/secである。「KES圧縮特性」におけるLC(圧縮剛さ)は圧縮特性の直線性を表すものであり、値が高いほど圧縮に対する剛さが高くなる。上記各層の試験片における陰唇追従層は0.32であり、体液保管層においては0.41であった。これにより、吸収体が湿潤状態になったとしても陰唇追従層は体液保管層よりも容易に圧縮変形することができるので、陰唇内壁への追従性を保ち、体液保管層の剛直感を陰唇追従層で緩和できる。ここで示す湿潤状態とは、各層の吸収キャパシティー未満までの状態を指すものである。
陰唇間パッドの吸収体においては、体圧がかかった際は少ない抵抗(低抵抗)で圧縮されることにより着用者に異物感を与えず、体圧が解放された際は厚みが回復することで陰唇間パッドの脱落を防止することが好ましい。つまり、陰唇間パッドの吸収体においては、低抵抗で圧縮され、高い厚みの回復率を示すことが好ましく、陰唇内壁と対面している陰唇追従層で上記機能を有することは更に好ましい。
肌への風合いを考慮すると、密度差により剛性差を得るエンボス加工よりも、繊維交絡を分断することで剛性差を得るスリット加工を施すことがより好ましい。スリット加工としては、短手方向へ破線状に延び、長手方向へ千鳥状に配列されるものであってよく、長さ10mmのスリット刃によって行うスリット加工等が挙げられる。また、繊維などを積層させる際に、使用する繊維の配向性をランダムにすることにより、繊維自体の配向性による剛直感を低下させ、吸収体の柔軟性を高めてもよい。例としては、繊維を積層した後の吸収体にテンションがかかりにくくして搬送する工程などが挙げられる。繊維のランダム配向の指標としては、繊維を積層した繊維集合体にお互いがフラット面を有するロールによりエンボス加工を施した吸収体の、長手方向への最大引張強度との比、つまり長手方向への引張強度を短手方向への最大引張強度で割った値が40以下であること等があげられる。
(10) 前記被覆材は、表面側シート及び裏面側シートを含み; 該表面側シートは透水性であり; 該裏面側シートは透水性若しくは不透水性であり; 前記表面側シート及び前記裏面側シートは、前記吸収体を内包させた形態で接合され; 前記折り曲げ軸にほぼ沿って裏面側シートがお互い向き合うように折り曲げられることにより前記表面側シートを表に出した状態で着用者の身体側に向けて頂部を形成する長凸状領域を含み; 前記長凸状領域の両側部から短手方向に延びて形成されている延長領域を含み; 前記体液保管層は前記陰唇追従層よりも前記吸収体の裏面側シート側に配置され、少なくともその一部が前記長凸状領域に配置されていることを特徴とする上記(5)に記載の陰唇間パッド。
体液保管層を延長領域の両側部に設けないことにより、経血などが保管されている体液保管層の両側部が、併用するパッド若しくは衣服等へ接触しにくくなるため、陰唇間パッドの左右方向から併用パッド、若しくは、衣服等への経血の漏れ等を防止することができる。更に、陰唇追従層が延長領域にまで延びることにより、陰唇追従層と陰唇内壁のみならず外陰部との密着面積が増すためさらに経血のモレを防止することができる。体液保管層は少なくともその一部が長凸状領域に配置されていればよい。長手方向に延びる中心線にほぼ沿う領域(頂部)に配置しないことが好ましい。体液保管層の密度は高くなるよう設定しているので、前庭床と対面する位置に配置させると、着用者が椅子に座るなどにより体液保管層の剛直感が着用者に伝わり、異物感を与え易くなると考えられるからである。
(11) 前記裏面側シートには、ミニシート片がとりつけられていることを特徴とする上記(6)又は(10)に記載の陰唇間パッド。
長凸状領域を形成し、その下に断面形状が三角形の空間ができるときに、その三角形の底辺に相当するところにミニシート片を取り付けてよい。このようにしてできた三角形の開口には、着用者の指を挿入することができるようにしてよい。陰唇間への装着時には陰唇間パッドの衣服面側の長手方向中心線付近に指を接触させることで、指の剛性により陰唇を押し開けることができるので前庭床にまで確実に陰唇間パッドを装着でき、前庭床もしくは陰唇内壁と陰唇間パッドの身体面側との間に隙間を発生させないことが可能となる。陰唇間パッドの衣服面側の長手方向中心線付近に指を接触させるために、裏面側シートの衣服面側の長手方向両側部において一ヶ所以上の接合部分と、裏面側シートの短手方向において、一ヶ所以上の非接合部分とをもって接合されたミニシート片を備えることにより、裏面側シートの長手方向に指を確保することが出来る指挿入用口が形成されていてもよい。衣服面側に指挿入用口を有するミニシート片を備えた陰唇間パッドは、指の指紋面が裏面側シートに接するように指を挿入することで、感受性に優れた指先で凹部である膣口位置を感知できるため確実な位置で陰唇間パッドを装着することが可能となる。陰唇間吸収層の形状は女性の陰唇間に無理なく挟み込むことが可能な形状であれば特に制限なく、楕円型、瓢箪型、雫型等、女性の陰唇領域に適合する形態であれば特に限定しない。
女性の陰唇間に無理なく挟み込むことが可能な形状で、体液を吸収する吸収体と吸収体を内包する被覆材からなる陰唇間パッドであって、吸収体は、身体面側に位置する陰唇追従層と、その下方(衣服面側)に位置し少なくとも身体面側は陰唇追従層によって被覆されている体液保管層から構成されており、陰唇間パッドを装着された際に、陰唇追従層は体液保管層よりも圧縮され易いやめ変形が容易であり、見かけ密度が体液保管層よりも低いことを特徴とする陰唇間パッドでは、以下のような効果期待される。
陰唇内壁と接した(近い)位置に体液保管層よりも容易に圧縮変形可能な陰唇追従層を配置させているので、陰唇が上下方向を軸に左右方向へ屈曲し陰唇内壁が凹凸状に変形したとしても、陰唇追従層は陰唇内壁の挙動変化に対して容易に圧縮変形可能であり、さらに体液保管層の少なくとも身体側面は陰唇追従層に被覆されているので、同時に体液保管層の剛直感を陰唇追従層で緩衝できるため着用者への異物感を与えにくくなる。更に、体液保管層は陰唇追従層よりも圧縮されにくく、陰唇追従層の下方に位置させているため、体液保管層には外圧がかかりにくくなり、体液保管層で蓄積した経血が逆戻りしてしまい経血モレを誘発することを防止する。
陰唇内壁と近い(接した)位置に密度を低く設定した陰唇追従層とその衣服(下面)側に密度を高めた体液保管層を位置されているため、陰唇内壁を下方へ伝い流れる高速多量な排泄経路に対しても、低密度で設定され女性の前庭床及び陰唇内壁の挙動変化に対し容易に変形対面する陰唇追従層で経血を捕獲し、陰唇追従層と体液保管層との毛管現象により体液保管層へ移送させ続けることができるので、陰唇追従層のみでの飽和状態になりにくく、再度経血が排出されたとしても陰唇追従層で捕獲し、経血モレを防止することが出来る。同時に吸収体の衣服面側である体液保管層から経血を蓄積していくので、陰唇間パッドの表面に経血を滞留させにくくし、経血の流動性を抑制できるため陰唇間パッドの脱落をも防止することが可能である。
次に、本発明の陰唇間パッドの一実施形態について、図を参照しつつ説明するが、本発明はこれに限定されるものでない。
[全体形状]
本発明の陰唇間パッドの1つの形態では、女性の陰唇間に無理なく挟み込むことが可能な形状で、体液を吸収する吸収体と吸収体を内包する被覆材からなる陰唇間パッドであって、吸収体は、身体面側に位置する陰唇追従層と、その下方(衣服面側)に位置し少なくとも身体面側は陰唇追従層によって被覆されている体液保管層から構成されており、陰唇間パッドを装着された際に、陰唇追従層は体液保管層よりも圧縮され易いため変形が容易であり、見かけ密度が体液保管層よりも低いことを特徴とする。この吸収体においては、陰唇内壁と接した(近い)位置に体液保管層よりも容易に圧縮変形可能な陰唇追従層を配置させているので、陰唇が上下方向を軸に左右方向へ屈曲し陰唇内壁の凹凸状が変形したとしても、陰唇追従層は陰唇内壁の挙動変化に対して容易に圧縮変形可能であり、さらに体液保管層の少なくとも身体側面は陰唇追従層に被覆されているので同時に体液保管層の剛直感を陰唇追従層で緩衝できるため着用者への異物感を与えにくいと考えられる。
陰唇追従層は体液保管層よりも圧縮され易く変形が容易であるのは、乾燥状態、さらには経血を吸収した湿潤状態においても同様であってよい。該陰唇追従層は該体液保管層よりも圧縮変形等が容易であることが好ましい。例えば、カトーテック社の「KES圧縮特性」において、LC(圧縮剛さ)が、乾燥時・湿潤時を問わず体液保管層よりも陰唇追従層の方が低い値であることが好ましい。装着中吸収体が湿潤状態になったとしても陰唇追従層が体液保管層よりも先に陰唇内壁の形態変化に容易に追従するので、体液保管層の剛直感を緩和できる柔軟性を陰唇追従層は有しているからであると考える。また、この体液保管層の少なくとも身体側面(身体特に陰唇に接する被覆材に向いている面でよい)は、陰唇追従層が配置されることによって、見かけ密度が高い体液保管層の剛直感を直接陰唇内壁に伝えてしまうことを防止でき、さらに個人差、行動変化によって陰唇間の深さ変化が起きた際でも、吸収体における少なくとも短手寸法を体液保管層よりも陰唇追従層を大きくすることで体液保管層の厚みによる隙間の発生を起こさせないので、陰唇追従層は陰唇内壁さらには外陰部とも密着性を保つことができ、経血モレを防止することが可能となる。
また、陰唇内壁と近い(接した)位置に密度を低く設定した陰唇追従層とその下面(衣服側)に密度を高めた体液保管層を位置されているため、陰唇内壁を下方へ伝い流れる高速多量な排泄経路に対しても、低密度で設定され女性の前庭床及び陰唇内壁と容易に変形し対面する陰唇追従層で経血を捕獲し、陰唇追従層と体液保管層との毛管現象により体液保管層へ移送させ続けることができるので、再度経血が排泄されたとしても陰唇追従層で捕獲することができる。このことにより、陰唇追従層及び体液保管層を含む吸収体は、経血吸収により、陰唇追従層で吸収の飽和状態が一時的に生じるかもしれないが、吸収経血を体液保管層に移送して、まずはこの体液保管層を経血飽和状態にするようにした吸収構造となるため、吸収体の最大限のキャパシティーを活用することになり、多量の経血であっても漏れを防止できるものである。仮に、体液保管層より先に陰唇追従層が飽和状態となれば、再度陰唇内壁を下方へ伝い流れる高速多量な経血が排泄されたときに、陰唇追従層は飽和のため経血を吸収する力ほとんどなく、たとえ体液保管層において吸収できる余力を残しているとしても経血を吸収できず流出してしまうことになる。
また、吸収体の衣服側面である体液保管層から経血を蓄積していくので、陰唇等の身体に接する(近い)陰唇間パッドの表面に経血を滞留させにくくし、経血滞留により生じる流動性を抑制するので陰唇内壁と陰唇間パッド表面との接触面積を保つことができる。従って、陰唇間パッドの脱落をも防止することが可能である。ここで、体液保管層の圧縮され易さが陰唇追従層と同等、さらにはそれより圧縮され易く変形が容易であった場合では、全体変形に伴う繊維間の空間が容易に変形してしまうと一度空間に保管した経血が再放出し易くなる。従って、再度陰唇追従層を通して若しくはそれ以外の経路での経血の漏れのおそれが高まるばかりでなく、陰唇間パッドの表面に戻ってきた経血が滞留し、陰唇間パッドが脱落してしまう可能性も高まる。ここに示す吸収体としての最大限の吸収キャパシティーに関する評価方法は、後述する。
吸収体の構造としては、少なくとも体液保管層の身体面側が陰唇追従層によって被覆されているものであればよい、つまり容易に圧縮変形可能な陰唇追従層が陰唇内壁と対面し容易に変形することで着用者に異物感を与えられなければよいので、体液保管層の衣服面側は陰唇追従層によって被覆されていなくてもよい。本発明の1の実施例である陰唇間パッド10を示している図1には、体液保管層12の身体面側を陰唇追従層14によって被覆した吸収体を液透過性材料である被覆材16により内包された状態が示されている。被覆材16は図中下部18においてオーバーラップし吸収体を内包する。また、この部分は、装着した陰唇間パッド10を取り出すためのタブとしてもよい。これにより、容易に圧縮変形可能な陰唇追従層14で陰唇内壁の形態変化に追従して密着し、同時に体液保管層12の剛直感を緩和する。また、陰唇追従層14で経血を捕獲し陰唇追従層14と体液保管層12との毛管現象により体液保管層12へ経血を移送させ続けることができるので、陰唇に近い陰唇追従層14からの経血モレを防止させることが出来る。
また、装着状態は長手方向中心線にほぼ沿って衣服面側の被覆材16がお互い向き合うように折り畳まれて装着されることにより、左右の陰唇に対面している長手方向中心線を対象軸とした左右の陰唇間パッドの身体側面17は、着用者の動作変化に伴う左右陰唇の挙動変化に対して追従し易くなるため、前庭床もしくは陰唇内壁と陰唇間パッド10の身体側面17との間に隙間を発生しにくくすることが可能となる。さらには、体液保管層12の身体面側及び衣服面側をも陰唇追従層14によって被覆した吸収体であってもよい。こうすることで、身体面側の陰唇追従層14と衣服面側の陰唇追従層14とが役割分担をする。つまり身体面側の陰唇追従層14は陰唇内壁の挙動変化に追従して容易に圧縮変形し、衣服面側の陰唇追従層14は体液保管層12の剛直感を緩和する言わばクッション層の役割をするため、着用者への異物感をさらに与えにくくするばかりでなく、経血を保管した体液保管層12へ外圧を与えにくくすることができ体液保管層12からの経血の逆戻りを防止することが可能であると考えられる。
ここに示す陰唇追従層や体液保管層からなる吸収体とは、例えば身体(上面)側から衣服(下面)側に向けて徐々に密度が高くなるよう堆積などして、第3者が見て明らかに少なくとも2層構造と判断できない実質的な1層構造で無いことが望ましい。実質的に1層構造とみなされる吸収体構造は、吸収体の身体(上面)側と衣服(下面)側のそれぞれの挙動変化に対する自由度が規制されてしまうため、吸収体における身体(上面)側での陰唇への追従性と衣服(下面)側での経血の保管との役割分担を両立させることがしにくくなると考えられるからである。少なくとも2層構造とは、吸収体が3層以上であってもよいということであるが、吸収体の身体(上面)側での陰唇の追従性と衣服(下面)側での経血の保管との役割分担を阻害しない位置に敷設することが望ましく、例えば陰唇追従層14と体液保管層12との間に第3層を介在させるなどが例として挙げられる。吸収体における見かけ密度とは、設計者が膣口と接触するように意図とした位置における吸収体の値であり、以下の条件下で測定された吸収体の体積と重量から換算したものである。設計者が膣口と接触するように意図とした位置とは、大半の設計者は短手方向においては長手軸中心線上で膣口と接触するよう意図して設計するが、長手方向においては短手軸中心線上で膣口と接触するよう意図して設計するとは限らないため、入念に記載したものである。
[見かけ密度の測定方法]
上述の見かけ密度の測定方法を順を追って説明する。[1]まず、長手方向において膣口と接触する位置における吸収体を短手方向へ切断し、長手軸中心線から左右へ各5mm(合計10mm幅)における吸収体の断面積を測定した。吸収体の断面積の測定方向は無荷重で測定できれば限定しないが、本件においてはデジタルマイクロスコープ(キーエンス社 VH−6200)にて断面積を測定した。吸収体が折り曲げられているため、エンボス加工などして全体的に波状であるなど、吸収体が平面形状でない場合は断面積に影響を与えないよう平面状に広げて測定した。吸収体が2層で構成されている場合でも、そのままの状態で各層における断面積を測定した。[2]次に、別の吸収体サンプルにおいて、膣口と接触する位置を中心に、左右方向へ各5mm(合計10mm幅)の位置と前後方向へ各5mm(合計10mm幅)の位置でカットした。[3]そして、10mm×10mmの大きさにカットした[2]の工程で得られるサンプルの重量を測定した。この時、各層が接着剤やエンボス加工などにより一体化されている場合であっても、同様に各層の重量変化が可能な限り起こらないように分離させた。[4]更に、無荷重下で測定した断面積([1]の工程)と10mm×10mmの面積を掛け合わせて、体積を求めた。[5]以上の条件下で測定した重量([3]の工程)を体積([4]の工程)で割った値をN=10で行い、本件における吸収体の見かけ密度とした。
また、吸収体の各層を構成する材料が複数の種類からなる場合、例えば繊維状のレーヨンと粒子状高分子吸収体を混合して吸収体を構成した際であっても、上記のような測定方法であれば各層における見かけ密度を求めることが可能である。なお、上記[1]の工程でいう長手方向軸中心線から左右へ各5mm(合計10mm幅)の大きさが無いサンプルにおいては、可能な長手軸中心線からの範囲において断面積を測定し、その範囲に合わせて上記[2]の工程に示すサンプルのカットを行い重量を測定する。サンプルカットの大きさによって見かけ密度は変化しないため、サンプルカットの大きさに関しては適時サンプルの大きさに合わせて変化させてもよい。
再び図1に戻り、より詳しく説明する。上述のように、本発明の第1の実施例である陰唇間パッド10は、一番内部に配置されている体液保管層12と、その周りを取り囲んでいる陰唇追従層14と、これらを包んで内包する被覆材16とから構成されている。右の両側に矢尻を持つ鉛直な直線22は、陰唇間パッドの配置方向を示すために便宜的に使われるもので、以降特に述べない限りは、図中上側を身体側22aと、図中下側を反身体側又は衣服側22bと呼ぶことにする。陰唇間パッド10は、本図においてやや丸みを帯びた断面長四角の角柱状をしているが、その両端においては、断面積が小さくなり、四角錘状の形状をすることができる。陰唇間パッド10の被覆材16において、衣服側22bには、被覆材オーバーラップ部18が形成され、ここを閉じることにより、上記体液保管層12と陰唇追従層14とを内包することができる。あまった被覆材18は、陰唇間パッド10を取り出すためのタブとして用いるようにすることができる。被覆材の両側面には、陰唇に挟まれて陰唇内壁(図示せず)と接触する陰唇接触面17を有するが、陰唇間パッド10の頂部(身体側22a)もまた、身体に接触するようになる。以上のような、被覆材16の表面を主に被覆材の身体側面と呼ぶこととする。尚、被覆材16の身体側面の反対側の面は、吸収体(体液保管層12と陰唇追従層14を含むもの)に接しているため、吸収体側面と呼ぶことができる。
体液保管層12は、その断面において縦長に鉛直に延びているが、その両側面及び頂部が陰唇追従層14、20に接している。ここで、接するとは、直接又は間接的に、相互に近接することを意味してよく、一般的には、機械的な若しくは力学的な影響を与える状態を意味することができる。特に経血の流れが話題となるときは、この流れが影響される状態を意味することができる。陰唇追従層14、20は、陰唇の内壁等の形態変化に柔軟に追従し、自身の形状を変化させることができる。経血は、陰唇間パッド10の被覆材16を通り、陰唇追従層14、20を経由して、体液保管層12に到達することができる。陰唇の内壁等の形態変化に柔軟に追従し、自身の形状を変化させることができるため、陰唇の内壁との間に隙間が生じにくく、その隙間に起因する経血の漏れが効果的に防止できる。このことを、図15及び16を参照しつつ、より詳しく説明する。図15では、図1の陰唇間パッド10が陰唇56の間に挟まれて装着されている様子が示してある。陰唇の内壁は、着用者の体勢等によりその凹凸状態を変え、例えば、15aのような身体側へ斜めにへこみ、15cのように図に向かって右側にへこんでいる。一方、15bでは、陰唇の内壁が図に向かって右側にふくらんでいる。本発明の第1の実施例である陰唇間パッド10は、その陰唇追従層14が柔軟にこれらの変形に対応し、陰唇の内壁等に密着している。このため、隙間から生じやすい経血の漏れが効果的に防止できる。これに対し、図16では比較例として、密度が高く剛性が高い部材904を両側に配置し、中央に密度が低く剛性が低い部材902を配置した陰唇間パッド900の装着状態を示している。図15と同様に陰唇は変形しているが、密度が高く剛性が高い部材904は、この変形にうまく追従していないため、陰唇間パッド900の上側(身体側)に隙間915aができている。また、陰唇間パッド900の図に向かって右側にも隙間915cができている。更に、陰唇間パッド900の図に向かって左側には、陰唇の内壁が密度が高く剛性が高い部材904に狭い面積で接触しているところがあり、同部材904が変形しないため、その周辺で隙間を作る原因となっている。
図2は、本発明の第2の実施例を示している。図中の縦線は、上述と同様陰唇間パッド40の身体側及び衣服側の位置関係を示しており、図中上側にクロスした線52、54は、陰唇間パッド40の平面的な位置関係を示している。即ち、図中手前側が陰唇間パッドの前方52fに、向こう側が後方52bに相当し、図に向かって右側が陰唇間パッド40の右方54l(エル)で、向かって左側が左方54rに相当する。この陰唇間パッド40は、前後方向に縦長となっており、この方向を長手方向とも呼ぶことができ、また左右方向はこれに対して短手方向と呼ぶことができる。この陰唇間パッド40は、体液保管層42が上記クロスした線52、54からなる平面にほぼ沿うように2次元的に広がっており、その上に体液保管層44がその衣服側の面において、体液保管層42の身体側の面と接触して同様に2次元的に広がっている。但し、陰唇追従層44は、体液保管層42より幅広であるため、体液保管層42の両サイドに空間51が形成されている。このように体液保管層42と陰唇追従層44とからなる吸収体は、被覆材の衣服側22bの構成要素である裏面側シート46b(同様に2次元的に広がる)の上に配置されている。この裏面側シート46bの右及び左側の側端部49は、被覆材の身体側22aの構成要素である表面側シート46aの側端部49において接合され、表面側シート46aは、吸収体(体液保管層42と陰唇追従層44を含む)を内包している。被覆材46を構成する表面側シート46aは、その身体側面47において陰唇の内壁等に接触する。被覆材46を構成する裏面側シート46bは、その下側(衣服側22b)に衣服側面を有している。以上のように、図2の第2の実施例においては、体液保管層42は、その身体側にある面でのみ陰唇追従層44と接している。
図3は、図2の第2の実施例の陰唇間パッド40を陰唇間に挟み込み装着した状態を示している。図2の陰唇間パッド40は、裏面側シート46bをお互いに重ねるように、前後方向52にほぼ沿った折り曲げ軸に沿って2つに折り曲げるようにして、左右の陰唇56の間に挟み込まれている。従って、表面側シート46aの身体側面47は、陰唇の内壁面及び陰唇の奥の壁に接することとなる。このような装着により、実質的に図1と同様な形状で、陰唇間パッド40は、陰唇間に装着されることとなる。従って、経血は、ほとんどが身体側面47を経由して陰唇間パッド47に吸収されるため、裏面側シート46bは、不透水性のものであってもよい。尚、図2の空間51は、折り曲げでその大きさをやや小さくするが、折り曲げた状態であっても、空間として残っている。
図4は、本発明の第3の実施例である陰唇間パッド60を示す断面図である。ほぼ中央部に左右に広がる体液保管層62とそれを囲む陰唇追従層64からなる吸収体を被覆材46が包み込み、内包している。被覆材46は、上記と同様、表面側シート46aと裏面側シート46bとが、その側端49において接合されている。この陰唇間パッド60では、従って、そのままで図1のように陰唇間に装着するようにしてもよく、或いは、図3のように2つ折りにして装着してもよい。前者の場合は、同陰唇間パッド60を立てて、陰唇追従層の左右の部分64cを夫々身体側22a及び衣服側22bに配置することとなる。このとき陰唇追従層の上下部分64a、64bは、左右の陰唇の内壁に接触することになる。後者の場合は、身体側面47を外側にして折り曲げられ、その面が陰唇の内壁等に接触してその形態を変化させることとなる。
図5は、本発明の第4の実施例である陰唇間パッド70を示す断面図である。ほぼ中央部に左右に広がる体液保管層72の上には同様に広がる拡散層78が配置されている。更にその上には、同様に広がる陰唇追従層74が配置されている。図2の実施例と同様に体液保管層の幅が狭いため空間51が空いている。これら体液保管層72、拡散層78及び、陰唇追従層74からなる吸収体は、夫々の側端部で接合されている表面側シート46a及び裏面側シート46bにより内包されている。この陰唇間パッド70では、図3のように2つ折りにして陰唇間に装着してよい。このとき、身体側面47を外側にして折り曲げられ、その面が陰唇の内壁等に接触してその形態を変化させることとなる。身体側面47から入ってきた経血は、いったんは陰唇追従層74に吸収されるが、拡散層78で適宜拡散されその下の体液保管層72に広い面積で吸収されていく。このようにすると体液保管層72の吸収が均一的になり、吸収速度等の吸収能力が向上すると考えられる。
図6は、図2の陰唇間パッド40において、更に折り曲げ等の加工を加えて所望の形状にした別の第5の実施例である陰唇間パッド40aを示している。この陰唇間パッド40aでは、断面形状において、先が三角に尖ったつば付き帽子のような形をしており、左右方向若しくは高さ方向により夫々の領域に以下のような特徴がある。左右方向中央部(若しくは、高さ方向身体側)に、長凸状領域84があり、主に陰唇間に挟み込まれる部分である。また、この長凸状領域の両側部から短手方向(左右方向)に延びて形成されている延長領域82があり、陰唇間には挟み込まれないようにするのが通常であるが、身体に接するようになる領域である。一方、構成要素である各部材は、図2の場合と同様であり、裏面側シート46bの身体側22aの表面上に体液保管層42(図中頂部には42aで、側部には42b)が配置され、その上に陰唇追従層44(図中頂部には44aで、側部には44b、底部には44c)が配置されている。更にその上には、表面側シート46aが配置され、吸収体全体をこれら側端部49で接合された表面側シート46a及び裏面側シート46bからなる被覆材46によって内包する。このとき、図2において見られた空間51は、陰唇追従層44の底部44cの下に該当し、つば状に折り返すことにより、かかる空間はほとんどなくなっている。吸収される経血は、表面側シート46aを通って吸収されるため、陰唇間に挟み込まれる表面シート46aの長凸状領域84を通過した経血は、表面シート46aの衣服側の面に接する陰唇追従層44の頂部44a及び側部44bへと吸収される。延長領域82に位置する陰唇追従層44の底部44cは、陰唇の内壁を伝って陰唇外に出ようとする経血又は側部44bから移動する経血を吸収するが、その量はあまり多くないと推測される。陰唇追従層44の頂部44a及び側部44bに一旦吸収された経血は、更に、毛管力等で体液保管層42へと移送される。陰唇追従層44の底部44cの衣服側には体液保管層42が無いが、上述のように底部44cにはあまり多くの経血が吸収されないと推測されるため陰唇間パッドの機能に支障をきたすことはないことになる。このように体液保管層42を配置すると、延長領域82を形成するために陰唇間パッドを折り返すのが、折り目が厚くならないので、より容易になる。
図7は、図6の第5の実施例と体液保管層42が2つの分かれている点において異なっている第6の実施例である陰唇間パッド40bを示す。この実施例では、図6において42aで示されている位置に空間41が形成される点を除いて、同じ構成となっているため、上記と重複する説明は省く。この実施例では、体液保管層42は、2つに分かれて陰唇追従層44の衣服側22bの表面に配置されるが、より詳細には、陰唇追従層44の頂部44aの衣服側22bには配置されず、両側部44bの衣服側22bに分割された体液保管層42d、42dが配置されている。尚、陰唇追従層44の底部44cの衣服側22bには配置されないのは、第5の実施例と同様である。このように頂部位置する部分に空間41を空けると、陰唇間パッド40bの頂部近傍の折り曲げ軸に沿って陰唇間パッド40bを折り曲げることがより容易になる。
図8は、図6の第5の実施例にミニシート片48を付けた第7の実施例である陰唇間パッド40cを示したものである。ミニシート片48を付けた点を除けば、第5の実施例と同様であるため、重複する説明は省く。ミニシート片48は、その左右の側端部49bにおいて裏面側シート46b及び/又は表面側シート46aの側端部49aと共に接合されている。このとき、延長領域82において、裏面側シート46bと接合されていてもよく、されていなくてもよい。長凸領域84の下にできる三角形の空間53は、陰唇間パッド40cを装着するための指挿入孔とすることができる。このようにミニシート片48を貼付すると、長凸領域84の形状を安定化させ易くなる。
図9から14は、種々の寸法の体液保管層42と陰唇追従層44を有する長凸領域84を有する種々の陰唇間パッド40が装着されたときの状態を表している(ミニシート片48を有する場合でもよく、有しない場合でもよい)。これらの図では、わかりやすくするために被覆材等の他の部材は示していない。図9では、平均的深さの陰唇を持つ(又は陰唇間が平均的深さの)着用者が、陰唇追従層44dの短手方向の長さが、体液保管層42dはそれよりも長い陰唇間パッドを装着したときの状態を表している。陰唇56の内壁の短手方向ののべ長さよりも陰唇追従層44dは長いため、その短手方向の端部は、飛び出したような形となっている。図10は、浅い陰唇を持つ(又は陰唇間が浅い)着用者が、図6のように体液保管層42eの短手方向長さが、陰唇追従層44eのそれよりもやや短い陰唇間パッドを装着したときの状態を示す図である。図11は、やや深い陰唇を持つ(又は陰唇間がやや深い)着用者が、陰唇追従層44fの短手方向の長さが、体液保管層42fより長い陰唇間パッドを装着したときの状態を表している。陰唇56の内壁の短手方向ののべ長さよりも陰唇追従層44fの短手方向の長さが短いため、陰唇の内壁が全て陰唇追従層44fと接しているわけではない。図12から14は、体液保管層42の短手方向の長さが陰唇追従層44のそれよりも短い陰唇間パッドを装着したときの状態を示している。図12は、平均的な深さの陰唇を持つ(又は陰唇間が平均的な深さの)着用者が、陰唇追従層44gの短手方向の長さが特に短く、また、体液保管層42gの短手方向長さよりも短い陰唇間パッドを装着したときの状態を示す図である。陰唇追従層44gが特に短いため、陰唇内壁にはこの陰唇追従層44gに接しない部分があることとなる。一方、体液保管層42gは、通常の長さであるため、陰唇間をやや飛び出しているが、上記のように陰唇内壁が陰唇追従層44gに接しない部分において隙間43gが生じている。図13は、やや浅い陰唇を持つ(又は陰唇間がやや浅い)着用者が、体液保管層42hの短手方向長さが特に長く、陰唇追従層44hの短手方向の長さや陰唇の内壁ののべ長さよりも長い陰唇間パッドを装着したときの状態を示す図である。陰唇の内壁は、陰唇追従層44hに接しているが、そのすぐ外側では延長領域82の体液保管層42hとの間に隙間43hが生じている。図14は、や深い陰唇を持つ(又は陰唇間がやや深い)着用者が、陰唇追従層44iの短手方向の長さが、体液保管層42iより短い陰唇間パッドを装着したときの状態を表している。陰唇追従層44iが特に短いため、陰唇内壁にはこの陰唇追従層44iに接しない部分があることとなり、体液保管層42iとの間に隙間43iが生じている。
図17から20は、その完成品が図8のような断面図を有する陰唇間パッド100を部品ごとに示し、段階的に作り上げていく様子を示したものである。図17は、陰唇追従層74と体液保管層72を貼り合わせて吸収体を形成する様子を示している。陰唇追従層74、体液保管層72、および拡散層78には、先端に斜めに延びるスリット77a、縦長中央部に延びるスリット77c、延長領域へと移行するところに縦長に延びるスリット77s、そして、左右方向又は短手方向に延びるスリット77vが形成されている。また、エンボス加工によるディンプル71aがいくつか形成されている。体液保管層72には、エンボス加工によるディンプル71bがいくつか形成されている。拡散層78は、オプションとして、陰唇追従層74と体液保管層72との間に配置することができる。即ち、陰唇間パッドには、拡散層78を陰唇追従層74と体液保管層72との間に挟んだものと、挟んでいないものを実施例としてあげることができる。体液保管層72において経血が広がって吸収されやすくなることから、拡散層78がある方がより好ましい。拡散層78には、ディンプル71cがあるが、その基材は、メッシュ状であり、メッシュの穴79が広く分布している。これらの部品をアセンブリしたのが、図18に示す吸収体80である。
図19は、吸収体を中間アセンブリとして作る代りに、表面側シート46a及び裏面側シート46bと共に陰唇間パッド基本部材を形成する様子を示している。陰唇追従層74、体液保管層72、及び、拡散層78については、上述と同様であるため、ここでは省略する。被覆材46の構成部品である表面側シート46a及び裏面側シート46b、並びに、その他の部品の材質等については後述する。これらの構成部品は一体的にアセンブリされ、周縁部をホットメルト等で接合して陰唇間パッド基本部材を形成することができる。
図20は、形成された陰唇間パッド基本部材を折り曲げ等の追加工をすることにより、完成した陰唇間パッド100を形成する様子を示している。図20の最上部には、図19において組み立てられた陰唇間パッドアセンブリ90が、縦長の軸にほぼ沿った折り曲げ軸52(52fは前方、52bは後方)と併せて描かれている。この軸にクロスする軸は、アセンブリ90の短手方向に延びる軸であり、右側54r及び左側54l(エル)と呼ぶことができる。同アセンブリ90は、周縁部に相当する側端部49において接合されている。図中の湾曲した矢印に従って、同アセンブリ90を下側に折り曲げる。このとき、同アセンブリの上側の面が身体側面47である。一つ下の同アセンブリ90は、折り曲げ軸に沿って山形になるように折り曲げられているところを示している。そのもう一つ下のアセンブリ90では、延長領域82を形成すべく、折り返された状態を示している。山形形状を保っている頂部近傍は、図6にあるような長凸領域84を形成している。このようにして広がったアセンブリ90の延長領域82の底側の面にミニシート片48を更に取り付ける。このようにすることで、長凸領域84の山形形状を安定的に維持することができる。一番下の完成品100では、ミニシート片48の非接合部(アセンブリ90に接合されていないところ)を縦長軸に沿った線で織り込んで、延長領域82の折り返しを元に戻した状態を示している。このような形態にすることにより、陰唇間パッド100の完成品をコンパクトにすることができ、個別又は集合的な包装をするのに好ましい。以下、本発明のさまざまな側面を材料や数値を交えながら更に詳しく説明する。
本発明の1つの実施例である陰唇間パッドの吸収体において、吸収体を構成する見かけ厚みが、陰唇追従層/体液保管層=60/40以上、好ましくは60/40〜95/5で設定されていることを更に特徴とすることができる。例えば、図2において、陰唇追従層44と体液保管層42が重なっており、それぞれの厚みが、44W及び42Wとして表現されている。陰唇間に嵌装された状態での陰唇間パッドの厚み(例えば、図2において40W)は、好ましくは2〜20mmであり、更に好ましくは4〜10mmの範囲である。特に、厚みが2mmより小さいと経血を吸収した際その厚みがさらに小さく(薄く)なり、陰唇による挟持力に対して生じる反発力が弱まるために、陰唇間から陰唇間パッドが脱落してしまうようなおそれがある。一方、20mmより大きいと陰唇による挟持力に対して生じる反発力が大きくなりすぎ、却って左右の陰唇を押し広げ過ぎて陰唇間パッドが脱落するおそれが増えるばかりでなく、着用者に異物感を与えることもある。ここでは、吸収体を構成する見かけ厚みを好ましくは陰唇追従層/体液保管層=60/40以上、より好ましくは60/40〜95/5で設定するとよい。見かけ厚みの構成比を60/40より小さく設定すると、陰唇内壁の挙動変化に対する追従性の低下や体液保管層の剛直感を緩衝しにくくなることで着用者に異物感を与えるおそれがあり得る。一方、95/5より大きく設定すると陰唇追従層で捕獲した経血を体液保管層へ移行しにくくなると考えられ、体液保管層より先に陰唇追従層が飽和状態となってしまうこともあり得、吸収体としての最大限のキャパシティーを活用しきれないまま経血モレを誘発する場合もあると考えられる。また、吸収体の見かけ厚みは好ましくは2〜20mmの範囲である。しかし、長手方向中心線にほぼ沿って衣服面側の被覆材がお互い向き合うように折り畳まれて(略2つ折りで)装着されるような陰唇間パッドにおいては、折られる前の吸収体の見かけ厚みは、好ましくは1〜10mmの範囲である。見かけ厚みは、先に示した断面積(上記[1]の工程)を測定する状態、つまり長手方向において膣口と接触する位置における吸収体を短手方向へ切断した状態において、無荷重で測定することができる。
本発明の1つの実施例である陰唇間パッドの吸収体において、吸収体を構成する体液保管層の見かけ密度が、陰唇追従層の見かけ密度よりも0.02g/cm3以上高く、少なくとも見かけ密度は0.07g/cm3以上で設定されていることを特徴とすることができる。例えば、陰唇追従層と体液保管層との密度差が0.02g/cm3未満である場合は、陰唇追従層と体液保管層との粗密勾配が緩やかになるため、表面張力に起因する相対的な毛管力の差が減少し、いわゆる毛管現象による経血の流れが低下してしまう恐れがある。従って、陰唇追従層で捕獲した経血を体液保管層へ移送しにくくなり、体液保管層が飽和状態になる以前に陰唇追従層が飽和状態になってしまい、仮に再度陰唇内壁を下方へ伝い流れる高速多量な経血が排泄された場合、飽和状態である陰唇追従層の陰唇内壁から経血を吸収する力がかなり低下しており、吸収による経血の流出防止をすることができにくくなると考えられる。陰唇追従層と体液保管層との密度差は、好ましくは0.02〜0.2g/cm3の範囲である。また、体液保管層の見かけ密度は少なくとも0.07g/cm3以上であることが好ましく、更に、0.07〜0.3g/cm3の範囲であることがより好ましい。例えば、体液保管層における見かけ密度が0.07g/cm3未満であると体液保管層を構成する空隙率が高いため圧縮され易くなり、一度吸収保管した経血を圧縮等の変形により放出することになるという恐れがある。一方、体液保管層における見かけ密度が0.3g/cm3より大きいと、体液保管層を構成する空隙率が小さすぎ、経血を吸収しにくくなり、更に、剛直感が高まる恐れがある。
[被覆材の材料]
被覆材に内包されている吸収体に用いられる材料は、陰唇追従層及び体液保管層において同一であっても異なっていてもよい。陰唇追従層は、体液保管層よりも容易に圧縮変形が可能であることが望ましく、用いられる材料は、このような特性に応じて適宜取捨選択され得る。例えば、陰唇追従層及び/又は体液保管層を構成する材料は特に区別無く使用されることができ、パルプ、化学パルプ、レーヨン、アセテート、天然コットン、合成繊維を単独又は混合して用いることができる。また、シート状の材料は、粉状に加工して使用してもよい。粉状若しくは顆粒状にした材料は、陰唇追従層が体液保管層に使用することにより粉状となった個々の材料が連動することなく自由度が高まることで陰唇、さらには陰唇内壁の挙動変化に対しても追従し易くなるため、着用者に異物感を与えにくくなる。また、吸収体としてセルロース発泡体、合成樹脂の連続発泡体等も使用することができる。発泡体を陰唇追従層に使用することにより、空隙率が高まることで体液保管層の剛直感を陰唇追従層で緩和することができ、陰唇内壁の形態変化に対しても少ない抵抗で変形し追従できるので、着用者に異物感を与えにくくなる。更には、体液保管層の体液保管力を高めるために体液保管層に用いる材料として、粒子状高分子吸収体、繊維状高分子吸収体が混合されていてもよい。また、体液保管層の嵩を維持することにより経血(又は体液)保管力を高めるために、架橋剤により架橋させ捲縮された化学パルプ、アセテート、合成繊維を混合させていてもよい。
これらの材料を吸収体に成形する方法は、吸収体を構成する見かけ厚みが、陰唇追従層/体液保管層=60/40以上であることが好ましく、陰唇追従層と体液保管層との見かけ密度差が0.02g/cm3以上であることが好ましい。また、体液保管層の密度がより高く設定されるものであれば特に限定されるものではないが、例えばエアレイド法、メルトブローン法、スパンレース法、抄紙法等によりシート化したものを挙げることができる。更に、使用中の型崩れを防止するために、ドット状、格子状などによりパターニングされたロール間に通紙することでエンボス加工を施してあってもよい。また、陰唇追従層と体液保管層との層間剥離を防止するために接着剤やエンボス加工などにより一体化成形してあってもよい。一体化成形の具体例として、例えば、エンボス加工があるが、使用中の型崩れ防止や湿潤状態でも陰唇追従層と体液保管層との層間剥離を防止し得、好ましくは、吸収体面積に対するエンボス率は0.6〜30%の範囲である。陰唇追従層で吸収した経血を体液保管層へスムーズに移送させるためには、装着中に陰唇追従層と体液保管層とが層間剥離することなく一体化されていることが好ましいため、エンボス加工は吸収体に対し均一に配置されていることが好ましい。
本発明の1つの実施例である陰唇間パッドの吸収体において、陰唇追従層と体液保管層は少なくとも繊維集合体から構成され、陰唇追従層を主体的に構成する繊維の繊維長は体液保管層を主体的に構成する繊維の繊維長よりも長い繊維で構成されていることを特徴とすることができる。経血を吸収すると、経血の表面張力により吸収体を構成する材料同士が互いに引き付けられ、材料間の距離が狭まることで見かけの吸収体の厚みが薄くなることがある。吸収体の見かけ厚み、さらには陰唇間パッドの見かけ厚みが薄くなると、陰唇による挟持力に対抗する陰唇間パッドの弾性に基づく反発力が弱まってしまい陰唇間から陰唇間パッドが脱落するおそれが高くなる。また、見かけの密度も高くなるので、剛直感が生じる場合がある。従って、陰唇追従層を主体的に構成する繊維の繊維長は、体液保管層を主体的に構成する繊維の繊維長よりも長いことが好ましい。このような繊維で構成されていることにより、陰唇追従層が経血を吸収したとしても、陰唇追従層は容易に変形することが可能である。吸収体の1つの具体的構成としては、陰唇追従層は、繊度1.1〜4.4dtx、繊維長20〜51mmの範囲から選ばれるレーヨンを60〜90%、天然コットンを40〜10%の混合比で積層してなるものから構成され得る。また、体液保管層は、繊維長1〜10mmの範囲から選ばれるパルプを80〜99%、粒子状高分子吸収体を20〜1%の混合比で積層した繊維を、エンボス加工によりシート化させたもので構成され得る。これら陰唇追従層及び体液保管層は、合計目付50〜450g/m2、合計の見かけ厚みを2〜20mm有する吸収体構成することができる。陰唇追従層と体液保管層との相対的な見かけ厚みは、60/40〜95/5の範囲が好ましい。また、陰唇間追従層の見かけ厚みは、1.0〜14mmであり、体液保管層の見かけ厚みは0.6〜6mmの範囲である。なお、「主体的」とは各層の重量に対して約60%以上の重量を同一物質が示した際、その物質を主体的な物質と呼ぶことができる。
陰唇追従層は体液保管層よりも圧縮変形が容易である指標として、カトーテック社の「KES圧縮特性」が挙げられる。以下に具体例を挙げる。陰唇追従層は繊度3.3dtx、繊維長51mmからなるレーヨンを85%、天然コットンを15%の混合比で構成され、目付180g/m2に積層し見かけ厚みを2.5mmに設定し、体液保管層は繊維長2〜5mmからなるパルプ100%で構成され、目付80g/m2に積層し見かけ厚みを1.0mmに設定した。各層の試験片(5cm×5cm)を試験台に置き、圧縮面積2cm2の円形平面を持つ銅版で、最大荷重4900Paまで圧縮し、銅版の速度は50mm/secである。「KES圧縮特性」におけるLC(圧縮剛さ)は圧縮特性の直線性を表すものであり、値が高いほど圧縮に対する剛さが高くなる。上記各層の試験片における陰唇追従層は0.32であり、体液保管層においては0.41であった。これにより、吸収体が湿潤状態になったとしても陰唇追従層は体液保管層よりも容易に圧縮変形することができるので、陰唇内壁への追従性を保ち、体液保管層の剛直感を陰唇追従層で緩和できる。ここで示す湿潤状態とは、各層の吸収キャパシティー未満までの状態を指すものである。
また、着用者が椅子に座るなどして陰唇間に過剰に体圧がかかる、一方で立った姿勢などして陰唇間に体圧がかかりにくくなるなど、着用者の体勢変化に伴い陰唇間内圧の高低が繰り返し発生する。そのため、陰唇間パッドの吸収体においては、体圧がかかった際は少ない抵抗(低抵抗)で圧縮されることにより着用者に異物感を与えず、体圧が解放された際は厚みが回復することで陰唇間パッドの脱落を防止することが好ましい。つまり、陰唇間パッドの吸収体においては、低抵抗で圧縮され、高い厚みの回復率を示すことが好ましく、陰唇内壁と対面している陰唇追従層で上記機能を有することは更に好ましい。「KES圧縮特性」におけるRC(回復性)は圧縮特性のレジリエンスを表すものであり、値が高いほどに圧縮に対する回復率が高くなる。本発明の1つの実施例において、上記各層の試験片における陰唇追従層は46%であり、体液保管層においては28%であった。
圧縮特性のレジリエンスにより、陰唇追従層は体液保管層の剛直感を緩衝し着用者へ異物感を与えないばかりでなく、厚みの回復率が高いことによって、陰唇間パッドの脱落を防止する。陰唇挙動との追従性をさらに高め着用者に異物感をより与えにくくするために、吸収体の曲げ剛性を低下させ柔軟性を高めることが好ましく、少なくとも体液保管層にエンボス加工やスリット加工を施すことで剛性差を与え曲げ剛性の低下が得られる。ここで、肌への風合いを考慮すると、密度差により剛性差を得るエンボス加工よりも、繊維交絡を分断することで剛性差を得るスリット加工を施すことがより好ましい。スリット加工としては、短手方向へ破線状に延び、長手方向へ千鳥状に配列されるものであってよく、長さ10mmのスリット刃によって行うスリット加工等が挙げられる。また、繊維などを積層させる際に、使用する繊維の配向性をランダムにすることにより、繊維自体の配向性による剛直感を低下させ、吸収体の柔軟性を高めてもよい。例としては、繊維を積層した後の吸収体にテンションがかかりにくくして搬送する工程などが挙げられる。繊維のランダム配向の指標としては、繊維を積層した繊維集合体にお互いがフラット面を有するロールによりエンボス加工を施した吸収体の、長手方向への最大引張強度との比、つまり長手方向への引張強度を短手方向への最大引張強度で割った値が40以下であること等があげられる。
本発明の1つの実施例である陰唇間パッドの吸収体において、体液保管層の身体側面に、陰唇追従層と隣接する位置に拡散層を設け、拡散層の長手方向へのクレム吸水度よりも高くしてあることを特徴とすることができる。膣口からの経血の排泄経路は、膣口付近に滞留する経路([1]経路)、前庭床もしくは陰唇内壁における粘膜及び粘液によるぬれ性により前後(長手方向)へ伝い流れる経路([2]経路)と、陰唇内壁を伝い下方へ流れる経路([3]経路)で大別されるが、[3]経路では排泄流速は速くかつ多量であるため、左右(短手)方向へ排泄されることになると考えられる。女性の陰唇形状はほぼ左右対称で縦長であるために、陰唇間パッドの全体形状は実質的に縦長の形状であることが好ましく、上記[3]経路で頻繁にもしくは多量に排泄された場合には、陰唇間パッドの左右領域における体液保管層及び陰唇追従層の吸収キャパシティーをも活用できるようになるため、先に示した経血流出を防止することができ得る。
[拡散層の材料]
拡散層に用いられる材料としては、長手方向へのクレム吸水度が陰唇追従層よりも高いものが望ましく、そのようであれば特に限定されるものではないが、天然繊維、化学繊維のいずれも使用することが可能である。例えば、天然繊維の例として、粉砕パルプ、コットン等のセルロースが挙げられる。化学繊維の例としては、レーヨン、フィプリルレーヨン等の再生セルロース、アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース、熱可塑性疎水性化学繊維に親水化処理を施したもの等が挙げられる。前記熱可塑性疎水性化学繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の単繊維、あるいは芯部がポリプロピレンないしポリエチレンテレフタレートで、鞘部がポリエチレンの複合繊維などが挙げられる。材料をシート化するにあたっては織布、不織布などが挙げられ、特に不織布の場合には、ウェブフォーミングは乾式(カード法、スパンボンド法、メルトブローン法、エアレイド法等)や湿式等を単独、又は複数組み合わせることにより製造してもよい。ボンディングの方法としては、サーマルボンディング、ニードルパンチ、ケミカルボンディング等の方法が挙げられるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。また、水流交絡法によりシート状に形成したスパンレースを用いてもよい。
拡散層の具体的な構成としては、繊度1.1〜4.4dtx、繊維長25〜51mmからなるレーヨン100%の繊維を水流により交絡させるとともにメッシュパターニングさせ、目付20〜50g/m2、厚み0.2〜1.0mmのスパンレース不織布を選択することが好ましい。長手方向へのクレム吸水度について具体的に示す。陰唇追従層は繊度3.3dtx、繊維長51mmからなるレーヨンを85%、天然コットンを15%の混合比で構成され、目付180g/m2に積層し、嵩2.5mmとなるようエンボスシート加工によりシート化させた。拡散層は繊度1.4dtx、繊維長44mmからなるレーヨン100%で構成され、目付25g/m2に積層し、厚み0.28mmとなり直径1mmのメッシュを千鳥状に配列させたメッシュパターンにより水交絡法によりシート化させたスパンレースである。ユニ・チャーム株式会社で作成した人工経血に陰唇追従層と拡散層を浸し、10分後の長手方向へのクレム吸水度を測定した。陰唇追従層においては41mmであり、拡散層においては50mmであった。ここで、クレム吸水度の評価方法、及び人工経血の作成方法の詳細に関しては後述する。
拡散層に使用する素材としては、経血の拡散領域を長手方向へ方向付けるために、長手方向へ向かうスリット加工を施すことで短手方向への経血拡散を分断する、繊維の配向性を長手方向へ向けることで繊維の配列方向へ経血を誘導させる、また長手方向へ延びる高密度領域を付与するエンボス加工を施すことで毛細管現象によって長手方向へ経血を誘導するなどがある。しかし、繊維の配向を長手方向へ向ける、又は、エンボス加工を施すと拡散層の剛直感が高まってしまうため、より好ましい例としては、水流によりメッシュパターニングされたスパンレース不織布に、長手方向へ向かうスリット加工を施したものが挙げられる。メッシュスパンレース不織布とすることで開孔間の領域における繊維間距離が小さくなるために毛管力が高まり、さらにスリット加工により長手方向へのクレム吸水度がより高まるばかりでなく、開孔部は容易に変形できるので拡散層としての柔軟性も高まり、陰唇追従層の変形のし易さを阻害しにくくなる。
拡散層の寸法は特に限定するものではないが、前後領域の体液保管層の吸収キャパシティーをさらに活用し易くするためには、長手方向における拡散層の寸法は体液保管層の寸法以上であることが好ましい。先に吸収体の具体的な構成として、陰唇追従層は繊度1.1〜4.4dtx、繊維長20〜51mmの範囲から選ばれるレーヨンを60〜90%、天然コットンを40〜10%の混合比で積層し、体液保管層には繊維長1〜10mmの範囲から選ばれるパルプを80〜99%、粒子状高分子吸収体を20〜1%の混合比で積層した繊維を、エンボス加工によりシート化させ、合計目付50〜450g/m2、合計の見かけ厚みを2〜20mm有する吸収体を例として挙げる。上記吸収体構成を製造する際、パルプの繊維長は1〜5mmで主体的に用いられるため、搬送中にパルプが脱落してしまう、またはエンボス加工においてパルプがエンボスロールに付着してしまうなど生産性を悪化させる恐れがある。生産性の悪化を防止するために、体液保管層の衣服面側における吸収体全域を被覆材で覆っていてもよい。被覆材としては、パルプが搬送中に脱落せず、ロールに付着しないためのバリアー性と陰唇間パッド全体の柔軟性を阻害しにくいものであれば特に限定するものではないが、吸収キャパシティーをさらに高めるために先に示した吸収体で用いられる材料が好ましい。具体的には15g/m2で設定されたティッシュなどが例として挙げられる。
従って、陰唇追従層と体液保管層さらには拡散層のより好適な具体例としては、体液保管層の衣服面側は、10〜20g/m2のティッシュで被覆され、その上面の体液保管層には、繊維長1〜10mmの範囲から選ばれるパルプを60〜120g/m2積層し、体液保管層の身体面側における拡散層には、繊度1.1〜4.4dtx、繊維長25〜51mmからなるレーヨンのスパンメッシュレースを敷設し、さらにその上面の陰唇追従層には、繊度1.1〜4.4dtx、繊維長20〜51mmの範囲から選ばれるレーヨンを60〜90%、天然コットンを40〜10%の混合比で150〜250g/m2積層して、ドット状のエンボス加工によりシート化させることができる。陰唇追従層の見かけ厚みは10〜14mmであることが好ましく、体液保管層の見かけ厚みは0.6〜6.0mmの範囲であることが好ましい。
本発明の1つの実施例である陰唇間パッドにおいて、身体側に面する透水性の表面側シートと衣服側に面する透水性又は不液透過性の裏面側シートとが体液を吸収する吸収体を内包させた形態で接合された吸収層からなり、前記吸収層は、長手方向中心線にほぼ沿って裏面側シートがお互い向き合うように折り畳まれることにより身体側に向けて頂部を形成する長凸状領域と、前記長凸状領域の両側部から短手方向に延びて形成されている延長領域と、からなる陰唇間パッドであって、吸収体における体液保管層は、少なくとも長凸状領域に配置されていることを特徴とすることができる。吸収体における体液保管層は陰唇間では嵌装される長凸状領域に配置されているため、陰唇追従層で捕獲した経血を瞬時に体液保管層へ移送することができるので、陰唇追従層のみで飽和状態にさせることなく経血の流出を防止することができる。また、体液保管層を延長領域の両側部に設けないことにより、併用するパッド若しくは衣服等へ体液保管層の両側部が接触しにくくなるため、陰唇間パッドの左右方向から併用パッド、もしくは衣服等への経血流出を防止することができる。更に、陰唇追従層が延長領域にまで延びることにより、陰唇追従層と陰唇内壁のみならず外陰部との密着面積が増すためさらに経血のモレを防止することができる。体液保管層は少なくともその一部が長凸状領域に配置されていればよく、限定されるものではない。長手方向に延びる中心線にほぼ沿う領域においては配置させないことが好ましい。体液保管層の密度は高くなるよう設定しているので、前庭床と対面する位置において配置させると、着用者が椅子に座るなどした体勢において体液保管層の剛直感が着用者に伝わり、異物感を与え易くなると考えられる。
また、陰唇間への装着時には陰唇間パッドの衣服面側の長手方向中心線付近に指を接触させることで、指の剛性により陰唇を押し開けることができるので前庭床にまで確実に陰唇間パッドを装着でき、前庭床もしくは陰唇内壁と陰唇間パッドの身体面側との間に隙間を発生させないことが可能となる。陰唇間パッドの衣服面側の長手方向中心線付近に指を接触させるために、裏面側シートの衣服面側の長手方向両側部において一ヶ所以上の接合部分と、裏面側シートの短手方向において、一ヶ所以上の非接合部分とをもって接合されたミニシート片を備えることにより、裏面側シートの長手方向に指を確保することが出来る指挿入用口が形成されていてもよい。衣服面側に指挿入用口を有するミニシート片を備えた陰唇間パッドは、指の指紋面が裏面側シートに接するように指を挿入することで、感受性に優れた指先で凹部である膣口位置を感知できるため確実な位置で陰唇間パッドを装着することが可能となる。従って、装着が確実になるため、更に経血のモレを防止できる。陰唇間吸収層の形状は女性の陰唇間に無理なく挟み込むことが可能な形状であれば特に制限なく、楕円型、瓢箪型、雫型等の女性の陰唇領域に適合する形態であれば特に限定しない。
[透水性シート]
陰唇間パッドの身体側に配置される透水性のシートには、液親水性であり、肌に刺激を与えない材料が使用される。このようなものとしては、メルトブローン、スパンボンド、ポイントボンド、スルーエアー、ポイントボンド、ニードルパンチ、湿式、湿式スパンレース、フォームフィルム等の製造方法から得られる不織布を単独又はこれらを複合した材料が挙げられる。
繊維状シートとしては、レーヨン、アセテート、コットン、パルプ又は合成樹脂を成分としたものを単独又は芯鞘構造を成すように複合したものを単独又は混合した繊維をシート化したものが挙げられる。
このような材料のうち、陰唇内面からの液移動性や活性剤による化学的刺激を考慮すると、天然コットン5〜30%、レーヨン又はアセテートを70〜95%の比率で混合した繊維を、20〜50g/m2の範囲で調整した後、水流交絡により繊維同士を絡合させて乾燥させ、厚みを0.3〜1.0mmの範囲で調整したスパンレース不織布が好ましい。この際に使用する糸質は、天然コットンであれば15〜60mmの範囲、レーヨン又はアセテートであれば25〜51mmの範囲で、2.2〜6.6dtexの範囲から選ばれる。
[不透水性シート]
陰唇間パッドに使用される不透水性のシートの材料としては、吸収体に保持された経血が陰唇間パッドの外へ漏れ出すことを防止できるものを使用することができる。また、透湿性素材とすることにより、装着時のムレを低減させることができ、装着時における不快感を低減させることが可能となる。
このような材料としては、例えば、合成樹脂を膜化したシート状フィルム、無機フィラーを充填させて延伸処理を施すことにより得られる通気フィルム、紙、不織布とフィルムを複合したラミネート物、10〜30%の開孔を有し孔径が0.1〜0.6mmの範囲で毛細管を吸収性体側に向かうように配置することにより得られる通気性液遮断シート、等を使用することができる。
更に、装着感を損なわない柔軟性を考慮した場合には、例えば、密度が0.900〜0.925g/cm3の密度の低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を主体とした目付15〜30g/m2の範囲から得られるフィルムを使用することが好ましい。
[ミニシート片]
ミニシート片には、上述した透水性シートや不透水性シートと同様の材料を用いることもできるが、少なくとも短手方向に対して伸長性もしくは伸縮性を有するものを使用するのが好ましい。
このような材料をミニシート片に使用することにより、着用者の指先のサイズが設定された指挿入用口よりも大きい場合であっても、指のサイズに応じてミニシート片が少なくとも幅方向に伸びるため、着用者の指先サイズにかかわらず、本発明に係る陰唇間パッドを効果的に利用することができる。
元来伸縮性を有する材料としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック−共重合体(SIS)、ウレタン等の合成ゴム、0.88〜0.900g/cm3の密度から選ばれる非晶性オレフィン系樹脂を原料としたフィルム、開孔フォームフィルム、ネット等が挙げられる。また、織布又は織布に合成ゴムを原料とした紡糸フィラメントを編み込んだ生地も使用できる。更に、合成ゴムを主体としたスパンボンド不織布やメルトブローン不織布、発泡フォームシートも使用することができる。
着用中の柔軟な風合いを考慮した上で好適ものとしては、15〜40ミクロンの厚みに調整され、孔部面積が0.28〜1.77mm2、開孔率が40〜70%の範囲で構成された、SEBSを原料とした開孔フォームフォルムが挙げられる。
不織布としては、芯成分が高融点で鞘成分が低融点成分で構成された熱収縮性を有するPE/PP、PE/PET、PP/PP等の複合合成繊維を原材料とし、水流圧により繊維を交絡せしめたスパンレース不織布、再熱風処理を施して繊維のシュリンクを促進させたシュリンクタイプ不織布、連続長繊維を熱シールによりシート化した後に縦方向へ強制的にテンタリングを施したいわゆる伸長性スパンボンド等が挙げられる。
より具体的には、太さが2.2〜6.6dtexの範囲で、長さが38〜51mmの範囲で、芯成分が高融点で鞘成分が低融点成分で構成された熱収縮性を有するPE/PP、PE/PET、PP/PP等の複合合成繊維を原材料とし、目付が20〜60g/m2の範囲に調整されたシュリンクタイプ不織布が、柔軟でドレープ感に富んだ好適な材料として挙げられる。そしてまた、上述のような材料のラミネート物も使用することができる。
非伸長性の材料に伸長性を付与して使用する場合には、不織布からは芯成分が高融点で鞘成分が低融点成分で構成された熱収縮性を有するPE/PP、PE/PET、PP/PP等の複合合成繊維を原材料とし、熱風により処理された嵩高感に富むスルーエアー不織布、水流圧により繊維を交絡せしめたスパンレース不織布、連続繊維を積層しシート化したスパンボンド不織布、ニードルにより繊維同士を絡ませたニードルパンチ不織布、スパンボンドとメルトブローンを多層に積層してシート化したSMS不織布のほか、開孔フォームフィルム、PE樹脂を主成分としたフィルム等を単独又はこれらを複合して成る材料が挙げられる。
また、上述のような材料を雄雌の金型の間に嵌合させ、熱と温度と圧力により形状を型押しするコルゲート加工により伸長性を付与することも可能である。より具体的には、太さが2.2〜4.4dtexの範囲、目付が20〜60g/m2の範囲で調整された複合合成繊維を主体としたスルーエアー不織布を、横方向に伸長可能にコルゲート加工を施したものが挙げられる。コルゲート加工は少なくとも10%以上の伸展性があり、より好ましくは20〜50%の範囲で伸展司能となるように雄雌の金型の配列が設けられたものであり、更に好ましくは30%伸展時の荷重が0.01〜0.05N/25mmの範囲の挙動を有するものが望ましい(試験条件:テンシロン引張試験機にて、速度100mm/min、チャック間隔100mm)。
伸長性を付与する他の方法としては、切れ目線、円状に切り抜く等の方法も使用できる。
[生分解性・水分散性・水溶性を付与した陰唇間パッドの構成]
本発明の陰唇間パッドは生分解性素材及び/又は水分散性素材及び/又は水溶性素材で構成されていることが好ましい。このような陰唇間パッドは使用後そのままトイレに脱落させて流すことができるため、パッドの破棄を簡便かつ清潔に行うことができ、トイレ内のゴミの低減を図ることもできるからである。
本明細書において、「生分解性」とは、放線菌をはじめとする細菌、その他の微生物の存在下、自然界のプロセスに従って、嫌気性又は好気性条件下で物質が二酸化炭素又はメタン等のガス、水及びバイオマスに分解されることをいい、当該物質の生分解能(生分解速度、生分解度など)が、落ち葉等の自然に生じる材料、もしくは同一環境下で生分解性として一般に認識される合成ポリマーに匹敵することをいう。「水分散性」とは、水解性と同じ意味であって、使用時の限定された量の水分(経血)では影響はないものの、多量の水又は水流中では、繊維同士が、少なくとも一般のトイレ配管を詰まらせることがない程度の小断片に容易に分散される性質のことをいう。「水溶性」とは、使用時の限定された量の水分(経血)では影響はないものの、多量の水又は水流中においては溶解する性質のことをいう。
<透水性シート>
透水性シートに使用できる材料としては、スパンレース不織布のほか、繊維長を1〜15mmの範囲から選択される湿式スパンレース不織布を使用することができる。他の材料としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの加水分解による生分解性樹脂も使用することができる。例えば、ポリ乳酸を原料として作られる目付が20〜60g/m2の範囲で調整されたメルトブローン不織布や目付が15〜30g/m2の範囲、繊維太さが1.1〜3.3dtexの範囲で調整されたスパンボンド不織布が挙げられる。なお、各不織布材料には開孔処理を施しても施さなくてもどちらでもよい。
他の材料としてはアセテート、合成繊維を単独又は積層体の連続繊維であるトウを目付50〜300g/m2の範囲に調整し、繊維同士を解繊することにより使用することもできる。
<吸収体>
吸収体に使用できる材料としては、ニードリングから得られる不織布シートを使用することができる。なお、高分子吸収材料の生分解性等を考慮すると、カルボキシメチルセルロース繊維を使用するのが好ましい。
<不透水性シート>
不透水性のシートに使用できる材料としては、PVAフィルム、PVAフィルムの片面若しくは両面あるいは部分的にシリコーンなどにより撥水処理を施したフィルムシート、シリコーンを混合したPVAフィルム、澱粉フィルム、ポリ乳酸又はポリブチレンサクシネート等の加水分解による生分解性樹脂を原料としたフィルム及びティッシュ等とのラミネート紙を使用することができる。必要に応じて無機顔料を0.1〜5%の範囲で混合して着色を施してもよい。
過湿下における防漏性の維持と浄化層への過度な負荷を与えないこと等をも考慮した場合には、ポリ乳酸を原料としたフィルムを10〜20ミクロンの厚み範囲で目付15〜20g/m2の範囲から選ばれるティッシュとラミネートし、更にラミネート時の貼り合せ面積率を5〜40%の範囲で設けられたラミネート紙が好適である。
<ミニシート片>
ミニシート片に使用できる材料としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の生分解性材料を原料としたフィルム、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等、又はPVA、CMC等の水溶性材料を原料としたフィルム、不織布等、並びにセルロース繊維、再生セルロース繊維等を主体とした水分散性ティッシュ、スパンレース不織布等が挙げられる。
好適には、生分解性材料を主体としたスパンボンド不織布又はメルトブローン不織布であって、太さが0.1〜3.3dtexの範囲、目付が15〜40g/m2の範囲に調整されたシートであって、前途した機械的コルゲート加工を施すことにより得られる。
<接合方法>
接合方法としては、水溶性又は水膨潤性を有するポリビニルアルコール等による接着、ヒートシール、或いは水素結合による接合、等の接合方法を単独で若しくは適宜組み合わせて用いることができる。
[吸収キャパシティーの測定]
吸収体の吸収量(吸収キャパシティー)は、以下の方法により行うことができる。測定器具として、はかり、ストップウォッチ、プラスチック容器、そして、人口経血を準備する。人口経血は、表1に示すような和光純薬株式会社製の各一級試薬及び光洋プロダクツ株式会社製の食用色素を用いた。
測定器具としては、攪拌機(Yamato社製、LABO−STIRRER L−35)、ストップウォッチ、年度測定機(芝浦システム社製、ビスメトロン)を用いた。人口経血は、まず、所定の容器の中で、グリセリンにカルボキシメチルセルロースナトリウムを少しずつかき混ぜながら全部入れた。次に、ポリ容器に入れたイオン交換水を攪拌機で混ぜながら、グリセリンにカルボキシメチルセルロースナトリウムをよく混ぜた上記混合物を少しずつ加えていった。更に混ぜながら塩化ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えた。そして、試薬が十分に分散するまで更によく混ぜ、例えば、攪拌回転maxで3時間混ぜた。混ぜられた混合物に試薬が単独で残っていないかを確認してから、イオン交換水1リットルに対し食用色素:赤色102号8g、赤色2号2g、黄色5号2gを入れ、攪拌回転maxで1時間混ぜた。その後、この混合物の粘度が22〜26mPa・sの範囲であることを粘度測定機により確認して、人口経血とした。
次に、試験片を準備した。吸収体の長手及び短手各方向に、100mmの長さにサンプルをランダムにN数分採取した。そして、サンプルの重量をはかりで測定しておいた(W1)。先程準備した人工経血をプラスチック容器に人工経血の深さが10mm以上となるまで入れた。この中に、採取した試験片を人工経血に完全に浸るようセットした。そして、そのままの状態で3分間放置した(このときの環境は、温度20℃で湿度60%であった)。3分後サンプルを引き上げ、重量をはかりで測定する(W2)。このW2からW1を引いて(W2−W1)、吸収量(吸収キャパシティー)を算出した。吸収倍率は、この吸収量をサンプルの重さW1でわることでえることができる。
[クレム吸水度の測定]
クレム吸水度の測定は、試験片の液親和性(拡散性)を測定するものである。測定器具として、ものさし、ストップウォッチ、プラスチック容器、そして、上述の方法で得た人工経血を用いた。測定には、所定の試料を長手及び短手の各方向に、幅25mm長さ100mmにランダムに所定の数(N個)だけ、採取して試験片として用いた。まず、人工経血をプラスチック容器に人工経血の深さが10mm以上となるまで入れた。次に、採取した試験片を固定チャックで固定し、試験片先端から5mmの深さで人工経血に浸るようセットした。これをそのままの状態で10分間放置した(環境:温度20℃/湿度60%)。人工経血が試験片を伝い上昇し、試験片上における吸い上げ距離を人工経血表面から測定した。吸い上げ距離の長い方が、吸水度が高いことを示す。