JP5030124B2 - 血管新生療法用医薬組成物 - Google Patents
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Description
本発明は、血管新生療法のための新規な医薬組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、血管拡張作用及び/又は血小板凝集抑制作用を有する物質、及び当該物質を生じさせる物質より選ばれた少なくとも1種と、血管新生因子をコードする遺伝子とを有効成分として含有する、血管新生療法のための新規な医薬組成物に関する。本発明はまた、プロスタサイクリン合成酵素遺伝子やets−1遺伝子の、血管新生療法への新規な適応などに関する。
背景技術
新しい血管の発生や血管新生は親血管の内皮細胞の活性化と共に開始されるが、インビボでこの血管新生を刺激するだけでなく、インビトロで内皮細胞に対してマイトジェニックに作用することが示されている増殖因子を「血管新生因子(血管新生増殖因子)」と称している。
血管新生因子の治療的な適用は、Folkmanらによって最初に文献発表された(N.Engl.J.Med.285,1182−1186(1971))。またその後の研究によって、組換え血管新生因子、例えば繊維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリー(Science 257,1401−1403(1992)、Nature 362,844−846(1993))、内皮細胞増殖因子(EGF)(J.Surg.Res.54,575−583(1993))、及び血管内皮増殖因子(VEGF)などを使用して心筋及び下肢虚血症の動物モデルにおける側副血行路の発達を促進及び/又は増進させ得ることが確認されている(Circulation 90,II−228−II−234(1994))。さらに本発明者らは、肝実質細胞増殖因子(HGF)がVEGFと同様に内皮特異的増殖因子として作用することを見出している(J.Hypertens.14,1067−1072(1996))。
血管障害を治療するために前記の如き血管新生因子を用いる戦略は、「血管新生療法」と称されている。特に最近では、前記の如き血管新生因子の遺伝子を用いて、虚血性疾患や動脈疾患に対する血管新生療法の検討が積極的に進められている。
例えば本発明者らは、閉塞性動脈硬化症(ASO)に対するHGF遺伝子の有効性を明らかにしている(Circulation,Vol.100,No.18,No.1672(1999)、Japanese Circulation Journal Vol.64,Suppl.I,p478,No.P079(2000))。また心筋梗塞における虚血再環流傷害に対して、HGF遺伝子が有効に作用することが示されている(Circulation,Vol.96,No.8,No.3459(1997)、Ann.Thorac.Surg.,67,p1726−1731(1999)、Gene Therapy,7:417−427(2000))。
またVEGF遺伝子に関しては、ブタ心筋虚血モデルに対するVEGF遺伝子の有効性(Human Gene Therapy 10:2953(1999))や、ウサギ下肢虚血モデルに対する有効性(Circulation 96(suppl II):II−382−388(1997))が示されており、さらに、ASO患者に対する効果(Circulation 97:1114−1123(1998))や、狭心症患者に対する効果(Ann Thorac Surg 68:830−837(1999))も報告されている。現在米国では、Isnerらのグループなどにより、ASO患者や狭心症患者に対するVEGF遺伝子治療の臨床試験が進められている状況にある。
さらにbFGF遺伝子に関しては、筋ジストロフィーのモデルマウスmdxの筋肉内にbFGF遺伝子を導入することにより、血管数の増加したことが報告されている(Gene Therapy 6(7):1210−1221(1999))。
他方、プロスタグランジンの1種であるプロスタサイクリン(プロスタグランジンI2;PGI2)は、半減期5〜10分の不安定な脂質メディエーターであり(Arch.Gynecol.Obstet.,243,p187−190(1988)、Gタンパク質共役型受容体を介してcAMPのレベルを増加させることにより、強力な血管拡張作用及び血小板凝集抑制作用を示すことが知られている(N.Engl.J.Med.17,p1142−1147(1979))。そして、当該PGI2やPGE1(プロスタグランジンE1)、及びこれらの誘導体(アナログ)の如き血管拡張剤は、現在、種々の血管障害の治療に幅広く使用されている。すなわち、ASOやTAO(閉塞性血栓血管炎)などの末梢血行障害に対して、血管拡張作用、血小板凝集抑制作用などの作用を期待して、PGE1の動脈内投与や静脈内投与が行われており、確立した治療法となっている。またPGI2に関しては作用が強く失活もきわめて早いため、種々の誘導体(イロプロストやベラプロストナトリウム等)が開発されてており、これらは末梢血管閉塞性疾患や慢性動脈閉塞症の治療に使用されている(Prostaglandins,Leukotrienes and Essential Fatty Acids.54,327−333(1996)、薬学雑誌、117,509−521(1997))。さらに、膠原病による末梢循環障害、レイノー現象、体外循環の維持(Minerva Med.89,405−409(1998))や心不全(Am.Heart J.134,44−54(1997))などに対しても、これらPGE1やPGI2が使用されている。
以上のように、PGI2等の血管拡張作用や血小板凝集抑制作用を有する物質が、種々の血管障害に対して有効であることが知られている。しかしながら、前述のHGF遺伝子等を用いた血管新生療法においてこれらの物質を組み合わせて用いたことは無く、どのような有効性が生ずるのかについては何ら明らかにされていない。
さらに、HGFやVEGF、bFGF、EGF等の血管新生因子は、転写調節因子であるets−1(erythroblastosis virus oncogene homolog 1)の発現を亢進し、当該ets−1を介して血管新生に関わる種々の因子を活性化することが知られている(J.Cell.Physiol.,169,522−531(1996)、HGFの分子医学,メディカルレビュー社、179−185(1998))。しかしながら、当該ets−1の遺伝子を血管新生療法に用いたことは無く、その効果については一切明らかにされていなかった。
発明の開示
本発明は、血管新生療法のための新規な医薬組成物を提供することを目的とする。さらに詳しくは、本発明は、血管拡張作用及び/又は血小板凝集抑制作用を有する物質、及び当該物質を生じさせる物質より選ばれた少なくとも1種と、血管新生因子をコードする遺伝子とを有効成分として含有する、血管新生療法のための新規な医薬組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、プロスタサイクリン合成酵素遺伝子、あるいはets−1遺伝子の、血管新生療法への新規な適応について提供することを目的とする。
本発明者らは、HGF遺伝子を用いた血管新生療法において、PGI2を合成する酵素(PGI2合成酵素、以下、PGISと称する)の遺伝子を併用した場合に、どのような効果を示すのかにつき検討した。なお血管新生因子の遺伝子を用いた血管新生療法全般において、満足のいく併用効果を示した薬剤は今までには見出されておらず、さらに、他の遺伝子との併用効果なども明らかにされてはいなかった。
マウス下肢虚血ASOモデルを用いた検討の結果、HGF遺伝子またはVEGF遺伝子とPGIS遺伝子を併用することにより、各遺伝子を単独で使用した場合と比較して予想外に顕著に、下肢血流を改善することが明らかとなった。さらにPGIS遺伝子は、HGF遺伝子またはVEGF遺伝子による血管新生作用を増強し、また単独でも血管新生作用を有するということを、初めて見出した。
以上の結果により、血管新生因子の遺伝子を用いた血管新生療法において、PGI2の如き血管拡張作用や血小板凝集抑制作用を有する物質、あるいはPGIS遺伝子の如き当該物質を生じさせる物質の併用は、極めて効果的であることが明らかとなった。
さらに本発明者らは、HGFやVEGFのシグナル伝達の下流に位置する転写調節因子ets−1をコードする遺伝子の、血管新生療法への適用についても検討した。その結果、転写調節因子であるets−1遺伝子の単独投与によって、血管新生作用の認められることが初めて明らかとなった。また、ets−1遺伝子とHGF遺伝子との併用により、各々単独で投与した場合と比較して、さらに顕著な血管新生作用の見られることが明らかとなった。
本発明は、以上のような知見に基づき完成するに至ったものである。
すなわち本発明の要旨は、
(1) 血管拡張作用及び/又は血小板凝集抑制作用を有する物質、及び当該物質を生じさせる物質より選ばれた少なくとも1種と、血管新生因子をコードする遺伝子とを有効成分として含有する、血管新生療法用医薬組成物、
(2) 血管拡張作用及び/又は血小板凝集抑制作用を有する物質、及び当該物質を生じさせる物質より選ばれた少なくとも1種と、血管新生因子をコードする遺伝子とを併用することを特徴とする、血管新生療法用医薬組成物、
(3) 血管拡張作用及び血小板凝集抑制作用を有する物質、及び当該物質を生じさせる物質より選ばれた少なくとも1種と、血管新生因子をコードする遺伝子とを有効成分として含有する、血管新生療法用医薬組成物、
(4) 血管拡張作用及び血小板凝集抑制作用を有する物質、及び当該物質を生じさせる物質より選ばれた少なくとも1種と、血管新生因子をコードする遺伝子とを併用することを特徴とする、血管新生療法用医薬組成物、
(5) 血管新生因子がHGF及び/又はVEGFである、前記(1)〜(4)いずれか記載の血管新生療法用医薬組成物、
(6) 血管拡張作用及び/又は血小板凝集抑制作用を有する物質、及び当該物質を生じさせる物質がcAMPの上昇に関与する物質である、前記(1)〜(5)いずれか記載の血管新生療法用医薬組成物、
(7) 血管拡張作用及び/又は血小板凝集抑制作用を有する物質を生じさせる物質が、遺伝子の形態であることを特徴とする、前記(1)〜(6)いずれか記載の血管新生療法用医薬組成物、
(8) 遺伝子がプロスタサイクリン合成酵素遺伝子である、前記(7)記載の血管新生療法用医薬組成物、
(9) HGF遺伝子とプロスタサイクリン合成酵素遺伝子とを有効成分として含有する、血管新生療法用医薬組成物、
(10) HGF遺伝子とプロスタサイクリン合成酵素遺伝子とを併用することを特徴とする、血管新生療法用医薬組成物、
(11) VEGF遺伝子とプロスタサイクリン合成酵素遺伝子とを有効成分として含有する、血管新生療法用医薬組成物、
(12) VEGF遺伝子とプロスタサイクリン合成酵素遺伝子とを併用することを特徴とする、血管新生療法用医薬組成物、
(13) 虚血性疾患又は動脈疾患の治療又は予防に用いられる、前記(1)〜(12)いずれか記載の血管新生療法用医薬組成物、
(14) 虚血性疾患又は動脈疾患が、閉塞性動脈硬化症、心筋梗塞、狭心症、心筋症又は脳血管障害のいずれかである、前記(13)記載の血管新生療法用医薬組成物、
(15) 遺伝子をnaked DNAの形態で導入することを特徴とする、前記(1)〜(14)いずれか記載の血管新生療法用医薬組成物、
(16) 血管拡張作用及び/又は血小板凝集抑制作用を有する物質、及び当該物質を生じさせる物質より選ばれた少なくとも1種を有効成分として含有する、血管新生因子をコードする遺伝子による血管新生作用の増強剤、
(17) 血管拡張作用及び血小板凝集抑制作用を有する物質、及び当該物質を生じさせる物質より選ばれた少なくとも1種を有効成分として含有する、血管新生因子をコードする遺伝子による血管新生作用の増強剤、
(18) 血管新生因子がHGF及び/又はVEGFである、前記(16)又は(17)記載の血管新生作用の増強剤、
(19) 血管拡張作用及び/又は血小板凝集抑制作用を有する物質、及び当該物質を生じさせる物質がcAMPの上昇に関与する物質である、前記(16)〜(18)いずれか記載の血管新生作用の増強剤、
(20) プロスタサイクリン合成酵素遺伝子を有効成分として含有する、前記(16)〜(19)いずれか記載の血管新生作用の増強剤、
(21) プロスタサイクリン合成酵素遺伝子を有効成分として含有する、HGF遺伝子による血管新生作用の増強剤、
(22) 虚血性疾患又は動脈疾患の治療又は予防に用いられる、前記(16)〜(21)いずれか記載の血管新生作用の増強剤、
(23) プロスタサイクリン合成酵素遺伝子を有効成分として含有する、血管新生剤、
(24) 虚血性疾患又は動脈疾患の治療又は予防に用いられる、前記(23)記載の血管新生剤、
(25) ets−1遺伝子と血管新生因子をコードする他の遺伝子とを有効成分として含有する、血管新生療法用医薬組成物、
(26) ets−1遺伝子と血管新生因子をコードする他の遺伝子とを併用することを特徴とする、血管新生療法用医薬組成物、
(27) 血管新生因子がHGF及び/又はVEGFである、前記(25)又は(26)記載の血管新生療法用医薬組成物、
(28) HGF遺伝子とets−1遺伝子とを有効成分として含有する、血管新生療法用医薬組成物、
(29) HGF遺伝子とets−1遺伝子とを併用することを特徴とする、血管新生療法用医薬組成物、
(30) 虚血性疾患又は動脈疾患の治療又は予防に用いられる、前記(25)〜(29)いずれか記載の血管新生療法用医薬組成物、
(31) ets−1遺伝子を有効成分として含有する、血管新生因子をコードする他の遺伝子による血管新生作用の増強剤、
(32) 血管新生因子がHGF及び/又はVEGFである、前記(31)記載の血管新生作用の増強剤、
(33) ets−1遺伝子を有効成分として含有する、HGF遺伝子による血管新生作用の増強剤、
(34) 虚血性疾患又は動脈疾患の治療又は予防に用いられる、前記(31)〜(33)いずれか記載の血管新生作用の増強剤、
(35) ets−1遺伝子を有効成分として含有する、血管新生剤、ならびに
(36) 虚血性疾患又は動脈疾患の治療又は予防に用いられる、前記(35)記載の血管新生剤、に関する。
本発明は、血管拡張作用及び/又は血小板凝集抑制作用を有する物質、及び当該物質を生じさせる物質より選ばれた少なくとも1種と、血管新生因子をコードする遺伝子とを有効成分として含有する、血管新生療法用医薬組成物を提供するものである。
ここで血管新生療法において用いられる「血管新生因子をコードする遺伝子」とは、新たな血管の形成を誘導し得るタンパク質、ポリペプチド、あるいはこれらの一部分をコードする遺伝子を指す。具体的には、例えばHGF、VEGF、VEGF−2、酸性FGF(aFGF)、塩基性FGF(bFGF)、FGF−4、EGF、TGF−α、TGF−β、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、インシュリン様増殖因子、アンジオポエチン−1などをコードする遺伝子が挙げられる。また、VEGFなどの遺伝子の発現を制御するHIF−1、あるいはets−1を含むetsファミリーなどの、転写因子をコードする遺伝子も挙げられる。好ましくはHGF遺伝子及びVEGF遺伝子が挙げられ、より好ましくはHGF遺伝子が挙げられる。これらの遺伝子は、公共のデータベースにその遺伝子配列が登録されており、当業者であれば、これらを利用することにより上記の遺伝子を容易にクローニングすることができる。
以下、HGF遺伝子及びVEGF遺伝子を例にとり説明する。
本発明において「HGF遺伝子」とは、HGF(HGFタンパク)をコードする遺伝子を指す。また、当該HGF遺伝子を発現可能なように発現プラスミドに組み込んだものを、単に「HGF遺伝子」と称する場合もある。具体的には、Nature,342,440(1989)、特許第2777678号公報、Biochem.Biophys.Res.Commun.,163,967(1989)などに記載のHGFのcDNAを後述の如き適当な発現ベクター(非ウイルスベクター、ウイルスベクター)に組み込んだものが挙げられる。ここでHGFをコードするcDNAの塩基配列は、前記文献に記載されている他、Genbank等のデータベースにも登録されている。従ってこれらの配列情報に基づき適当なDNA部分をPCRのプライマーとして用い、例えば肝臓や白血球由来のmRNAに対してRT−PCR反応を行うことなどにより、HGFのcDNAをクローニングすることができる。これらのクローニングは、例えばMolecular Cloning 2nd Edt.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)等の基本書に従い、当業者ならば容易に行うことができる。
さらに、本発明のHGF遺伝子は前述のものに限定されず、発現されるタンパク質がHGFと実質的に同じ血管新生作用を有する遺伝子である限り、本発明のHGF遺伝子として使用できる。すなわち、1)前記cDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAや、2)前記cDNAによりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1若しくは複数(好ましくは数個)のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、などのうち、血管新生作用を有するタンパクをコードするものであれば、本発明のHGF遺伝子の範疇に含まれる。ここで前記1)及び2)のDNAは、例えば部位特異的突然変異誘発法、PCR法、又は通常のハイブリダイゼーション法などにより容易に得ることができ、具体的には前記Molecular Cloning等の基本書を参考にして行うことができる。
本発明において「VEGF遺伝子」とは、VEGFタンパクをコードする遺伝子を指す。また、当該VEGF遺伝子を発現可能なように発現プラスミドに組み込んだものを、単に「VEGF遺伝子」と称する場合もある。具体的には、VEGFのcDNAを後述の如き適当な発現ベクター(非ウイルスベクター、ウイルスベクター)に組み込んだものが例示される。VEGF遺伝子は、ヒトにおいては転写に際しての選択的スプライシングにより、4種類のサブタイプ(VEGF121、VEGF165、VEGF189、VEGF206)の存在が報告されている(Science,219,983(1983)、J.Clin.Invest.,84,1470(1989)、Biochem.Biophys.Res.Commun.,161,851(1989))。本発明においてはこれらのいずれのVEGF遺伝子をも使用することが可能であるが、生物学的に最も活性が強いという観点から、VEGF165遺伝子がより好ましい。さらに前記のHGFの場合と同様に、これらVEGFの遺伝子に対して改変等を施した遺伝子であっても、血管新生作用を有するタンパクをコードする遺伝子である限り、本発明のVEGF遺伝子の範疇に含まれる。
当該VEGF遺伝子もHGF遺伝子と同様に、文献(例えばScience,246,1306(1989))記載の配列及びデータベースに登録されている配列情報に基づき、当業者ならば容易にクローニングすることができ、またその改変等も容易に行うことができる。
以上のようなHGF遺伝子やVEGF遺伝子、あるいはこれらの改変体をコードする遺伝子が血管新生作用を有することは、例えばin vitroにおいては国際公開第97/07824号公報に記載の血管内皮細胞に対する増殖効果を、またin vivoにおいては後述の実施例に記載のマウス下肢虚血モデルに対する血流改善効果を測定することなどにより、調べることができる。
以上のような血管新生因子をコードする遺伝子は、本発明の血管新生療法において単独で用いても良いし、又は複数を組み合わせて用いても良い。
ところで後述の実施例においては、HGF遺伝子を用いた血管新生療法において、プロスタサイクリン合成酵素遺伝子(PGIS遺伝子)の併用が予想外に顕著な効果をもたらすことを初めて明らかにした。具体的には、HGF遺伝子単独での効果+PGIS遺伝子単独での効果を越える、相乗的な効果のもたらされることを初めて明らかにした。
ここで、PGISにより合成されるPGI2は、前記のように血管拡張作用や血管透過性亢進作用、血小板凝集抑制作用を有するものである。従って前記相乗効果のもたらされた理由としては、HGF遺伝子とPGIS遺伝子とを併用することにより、PGI2の有する血管拡張作用や血小板凝集抑制作用などの効果を通して、虚血部位においてHGFが作用し易い、すなわちHGFが血管新生を行い易い環境がもたらされ、その結果、前記の如き予想以上の効果の生じたことが考えられる。
従って、血管拡張作用及び/又は血小板凝集抑制作用を有する物質、あるいは当該物質を生じさせる物質であれば、PGIS遺伝子と同様の併用効果をもたらすことができると考えられる。よって本発明においては、血管拡張作用及び/又は血小板凝集抑制作用を有する物質、及び当該物質を生じさせる物質より選ばれた少なくとも1種と、血管新生因子をコードする遺伝子とを有効成分として含有する、血管新生療法用医薬組成物を提供するものである。
特に、血管拡張作用と血小板凝集抑制作用の両方を有する物質、及び当該物質を生じさせる物質が、本発明の血管新生療法において好適に用いられる。
ここで「血管拡張作用を有する物質」とは、公知の血管拡張作用を有する物質(市販の血管拡張剤等)の全てを含むものであり、遺伝子、タンパク質、低分子化合物等の如何なる物質であっても良い。具体的には以下のものが例示される。
すなわち一般的な血管拡張剤(いわゆる降圧剤)としては、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、α1遮断薬、ANP(Atrial Natriuretic Peptide、心房性ナトリウム利尿ペプチド)、カリウムチャネルオープナー、あるいはヒドララジン等が挙げられる。
特にASOで使用される血管拡張剤としては、例えばPGI2やPGE1、あるいはこれらの誘導体(イロプロスト、ベラプロストナトリウム、lipoPGE1等)といったプロスタグランジン製剤が挙げられる他、ニトログリセリンを含む亜硝酸化合物等のNOドナーまたは細胞内cGMP濃度を上昇させる薬剤、フォスフォジエステラーゼ阻害剤等の細胞内cAMPを上昇させる薬剤などが挙げられる。
好ましくはcAMPを上昇させる薬剤、あるいはプロスタグランジン製剤が、より好ましくはPGI2、PGE1及びこれらの誘導体(アナログ)が、さらに好ましくはPGI2誘導体が挙げられる。
また「血小板凝集抑制作用を有する物質」とは、公知の血小板凝集抑制作用を有する物質(市販の抗血小板剤等)の全てを含むものであり、遺伝子、タンパク質、低分子化合物等の如何なる物質であっても良い。具体的には、例えば前記PGI2やPGE1、あるいはこれらの誘導体(イロプロスト、ベラプロストナトリウム、lipoPGE1等)といったプロスタグランジン製剤が挙げられる他、アラキドン酸代謝阻害剤、アデニレートシクラーゼ促進剤、ホスホジエステラーゼIII阻害剤、5−HT2レセプター拮抗剤、アラキドン酸代謝阻害剤、あるいはホスホジエステラーゼV阻害剤等が挙げられる。
好ましくはcAMPを上昇させる薬剤、あるいはプロスタグランジン製剤が、より好ましくはPGI2、PGE1及びこれらの安定な誘導体(アナログ)が、さらに好ましくはPGI2誘導体が挙げられる。
前記において「血管拡張作用及び/又は血小板凝集抑制作用を有する物質を生じさせる物質」とはすなわち、前記血管拡張作用及び/又は血小板凝集抑制作用を有する物質を合成、産生若しくは誘導する物質を意味する。具体的には、前記プロスタグランジンやcAMPを上昇させる物質を合成、産生若しくは誘導する物質を指す。
当該物質は遺伝子、タンパク質、低分子化合物等の如何なる物質であっても良いが、例えば血管拡張物質等を合成する合成酵素の場合は、遺伝子の形態で用いることが好ましい。当該遺伝子の具体例としては、例えばPGIS遺伝子、シクロオキシゲナーゼ−1(COX−1)遺伝子、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)遺伝子(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89(16),7384−7388(1992))、NO合成酵素(内皮型・誘導型)遺伝子、チトクロームP450遺伝子、ANP(Atrial Natriuretic Peptide)遺伝子、BNP(Brain Natriuretic Peptide)遺伝子、CNP(C−type Natriuretic Peptide)遺伝子などが挙げられる。好ましくはPGIS遺伝子、COX−1遺伝子及びCOX−2遺伝子が、より好ましくはPGIS遺伝子が挙げられる。これらの遺伝子は、いずれも公共のデータベースにその遺伝子配列が登録されており、当業者であればこれらを利用することにより、容易にクローニングすることができる。
以下、PGIS遺伝子を例にとり説明する。
本発明において「PGIS遺伝子」とは、PGISタンパクをコードする遺伝子を指す。また、当該PGIS遺伝子を発現可能なように発現プラスミドに組み込んだものを、単に「PGIS遺伝子」と称する場合もある。具体的には、B.B.R.C,Vol.200,No.3,p1728−1734(1994)及び国際公開第95/30013号公報に記載のPGISのcDNAを後述の如き適当な発現ベクター(非ウイルスベクター、ウイルスベクター)に組み込んだものが例示される。さらに前記のHGF遺伝子やVEGF遺伝子の場合と同様に、これらPGISの遺伝子に対して改変等を施した遺伝子であっても、PGISとしての作用を有するタンパクをコードする遺伝子である限り、本発明のPGIS遺伝子の範疇に含まれる。
当該PGIS遺伝子もHGF遺伝子やVEGF遺伝子と同様に、前記文献記載の配列及びデータベースに登録されている配列情報に基づき、当業者ならば容易にクローニングすることができ、またその改変等も容易に行うことができる。当該遺伝子によりコードされるタンパク質が所望のPGIS活性を有することは、例えば、6−keto Prostaglandin F1 α enzyme immunoassay kit(Cayman社製、カタログ番号#515211)を用いたエンザイムイムノアッセイ、又はプロスタサイクリン合成酵素の代謝産物を薄層クロマトグラフィー(TLC)により検出する方法などにより、測定することができる。また後述の実施例に記載のマウス下肢虚血モデルに対する血管新生因子との併用効果を測定することにより、血管新生因子による血管新生作用の増強効果を測定することができる。
以上のような血管拡張作用及び/又は血小板凝集抑制作用を有する物質、あるいは当該物質を生じさせる物質は、血管新生因子の遺伝子を用いた血管新生療法において、単独で用いても良いし、又は複数を組み合わせて用いても良い。
以下、本発明の血管新生療法用医薬組成物の導入方法、導入形態および導入量等について記述する。
1)血管拡張作用及び/又は血小板凝集抑制作用を有する物質、及び当該物質を生じさせる物質(遺伝子)と、血管新生因子をコードする遺伝子とを用いる場合
血管新生因子をコードする遺伝子と、前述のPGIS遺伝子等の遺伝子を併用する場合、すなわち2種類以上の遺伝子を併用する場合は、共に遺伝子治療剤の形態をとる必要がある。代表的な組み合わせとしては、HGF遺伝子とPGIS遺伝子、あるいはVEGF遺伝子とPGIS遺伝子の組み合わせが挙げられる。
当該遺伝子治療剤を患者に投与する場合、その投与形態としては非ウイルスベクターを用いた場合と、ウイルスベクターを用いた場合の二つに大別され、実験手引書などにその調製法、投与法が詳しく解説されている(別冊実験医学,遺伝子治療の基礎技術,羊土社,1996、別冊実験医学,遺伝子導入&発現解析実験法,羊土社,1997、日本遺伝子治療学会編遺伝子治療開発研究ハンドブック、エヌ・ティー・エス、1999)。以下、具体的に説明する。
A.非ウイルスベクターを用いる場合
慣用の遺伝子発現ベクターに目的とする遺伝子が組み込まれた組換え発現ベクターを用いて、以下のような手法により目的遺伝子を細胞や組織に導入することができる。
細胞への遺伝子導入法としては、リン酸−カルシウム共沈法や、微小ガラス管を用いたDNAの直接注入法などが挙げられる。
また、組織への遺伝子導入法としては、内包型リポソーム(internal type liposome)による遺伝子導入法、静電気型リポソーム(electrostatic type liposome)による遺伝子導入法、HVJ−リポソーム法、改良型HVJ−リポソーム法(HVJ−AVEリポソーム法)、レセプター介在性遺伝子導入法、パーティクル銃で担体(金属粒子)とともにDNA分子を細胞に移入する方法、naked−DNAの直接導入法、正電荷ポリマーによる導入法等の何れかの方法に供することにより、組換え発現ベクターを細胞内に取り込ませることが可能である。このうちnaked−DNAの直接導入法が最も簡便であり、この観点から好ましい導入法である。またHVJ−リポソーム法は、従来のリポソーム法と比較して細胞膜との融合活性が非常に高いことから、好ましい導入形態である。なおHVJとしてはZ株(ATCCより入手可能)が好ましいが、基本的にはその他のHVJ株(例えばATCC VR−907、ATCC VR−105など)も用いることができる。
ここで用いられる発現ベクターとしては、生体内で目的遺伝子を発現させることのできるベクターであれば如何なる発現ベクターであっても良いが、例えばpCAGGS(Gene 108,193−200(1991))や、pBK−CMV、pcDNA3.1、pZeoSV(インビトロゲン社、ストラタジーン社)などが挙げられる。
前記2種類以上の遺伝子は、当該遺伝子を別々の発現ベクター中に組み込んで作製された2種類以上の組換え発現ベクターを、混合して同時に、又は時間的間隔をおいて別々に、生体内に導入することができる。また、1つの発現ベクター中に2種類以上の遺伝子を組み込んだ単一の発現ベクターを導入することも可能である。さらに、前記リポソーム系の製剤においては、2種類以上の組換え発現ベクターを1つのリポソーム中に封入して導入することもできれば、別々のリポソーム中に個々の組換え発現ベクターを封入し、これを導入することも可能である。
B.ウイルスベクターを用いる場合
ウイルスベクターとしては、組換えアデノウイルス、レトロウイルス等が挙げられる。より具体的には、例えば、無毒化したレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス、センダイウイルス、SV40、免疫不全症ウイルス(HIV)等のDNAウイルス又はRNAウイルスに目的とする遺伝子を導入し、細胞に組換えウイルスを感染させることによって、細胞内に遺伝子を導入することが可能である。
前記ウイルスベクターのうち、アデノウイルスの感染効率が他のウイルスベクターを用いた場合よりもはるかに高いことが知られており、この観点からは、アデノウイルスベクター系を用いることが好ましい。
以上のようなアデノウイルスベクターに関しても、前述の非ウイルスベクターの場合と同様に、2種類以上の遺伝子が別々の発現ベクター中に組み込まれた組換え発現ベクターを混合して同時に、又は時間的間隔をおいて別々に、導入することができる。また、1つの発現ベクター中に2種類以上の遺伝子を組み込んだ単一の組換え発現ベクターを導入することも可能である。
さらに、前記非ウイルスベクター及びウイルスベクターの両方を用いて、2種類以上の遺伝子を生体内に導入することも可能である。
本発明の遺伝子治療剤の患者への導入法としては、遺伝子治療剤を直接体内に導入するin vivo法、及び、ヒトからある種の細胞を取り出して体外で遺伝子治療剤を該細胞に導入し、その細胞を体内に戻すex vivo法がある(日経サイエンス,1994年4月号,20−45頁、月刊薬事,36(1),23−48,1994、実験医学増刊,12(15),1994、日本遺伝子治療学会編遺伝子治療開発研究ハンドブック,エヌ・ティー・エス,1999)。本発明では、in vivo法が好ましい。
in vivo法により投与する場合は、治療目的の疾患、標的臓器等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、皮内、筋肉内などに投与するか、又は病変の認められる組織そのものに直接局所投与することができる。
製剤形態としては、上記の各投与形態に合った種々の製剤形態(例えば液剤など)をとり得る。例えば有効成分である遺伝子を含有する注射剤とされた場合、当該注射剤は常法により調製することができ、例えば適切な溶剤(PBS等の緩衝液、生理食塩水、滅菌水等)に溶解した後、必要に応じてフィルター等で濾過滅菌し、次いで無菌的な容器に充填することにより調製することができる。当該注射剤には必要に応じて慣用の担体等を加えても良い。また、HVJ−リポソーム等のリポソームにおいては、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤などのリポソーム製剤の形態とすることができる。
また、疾患部位の周囲に遺伝子を存在し易くするために、徐放性の製剤(ミニペレット製剤等)を調製し患部近くに埋め込むことも可能であり、あるいはオスモチックポンプなどを用いて患部に連続的に徐々に投与することも可能である。
前記2種類以上の組換え発現ベクターは、別々の製剤形態をとっても良く、また混合した合剤の製剤形態をとっても良い。
製剤中の遺伝子の含量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調節することができるが、通常、各々の遺伝子として0.0001−100mg、好ましくは0.001−10mgであり、これを数日ないし数ヶ月に1回投与するのが好ましい。
2)血管拡張作用及び/又は血小板擬集抑制作用を有する物質、及び当該物質を生じさせる物質(低分子化合物、タンパク質等)と、血管新生因子をコードする遺伝子とを用いる場合
血管新生因子をコードする遺伝子と、低分子化合物やタンパク質、ペプチド等とを併用する場合、血管新生因子をコードする遺伝子については前述の遺伝子治療剤の形態とする。一方の低分子化合物等は、一般的な医薬組成物の形態とし、経口または非経口的に投与される。代表的な組み合わせとしては、HGF遺伝子とPGI2誘導体、VEGF遺伝子とPGI2誘導体の組み合わせなどが挙げられる。
以下、前記低分子化合物やタンパク質等を有効成分とする医薬組成物につき説明する。
前記低分子化合物やタンパク質のうち、既に血管拡張剤や血小板凝集抑制剤(抗血小板剤)として市販されているものであれば、その能書に従い投与方法や投与量等を設定することができるが、一般的には以下のような投与形態、投与方法が挙げられる。
すなわち、経口的に投与する場合、通常当分野で用いられる投与形態で投与することができる。非経口的に投与する場合には、局所投与剤(経皮剤等)、直腸投与剤、注射剤、経鼻剤等の投与形態で投与することができる。
経口剤又は直腸投与剤としては、例えばカプセル、錠剤、ピル、散剤、ドロップ、座剤、液剤等が挙げられる。注射剤としては、例えば無菌の溶液又は懸濁液、乳剤等が挙げられ、具体的には水、水−プロピレングリコール溶液、緩衝化液、0.4%の生理食塩水等が挙げられる。局所投与剤としては、例えばクリーム、軟膏、ローション、経皮剤等が挙げられる。
以上の剤形は通常当分野で行われている手法により、薬学的に許容される賦形剤、添加剤と共に製剤化される。薬学的に許容される賦形剤、添加剤としては、担体、結合剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤、pH調節剤、張度調節剤、浸潤剤等が挙げられる。また、薬学的に許容される担体としては、例えば炭酸マグネシウム、ラクトース、ペクチン、澱粉、メチルセルロース等が挙げられる。
このような医薬組成物は、治療目的の疾患、標的臓器等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、皮内、筋肉内などに投与するか、又は病変の認められる組織そのものに直接局所投与することができる。また経口投与や坐薬としての投与も可能である。
投与量、投与回数は症状、年齢、体重、投与形態等によって異なるが、通常は成人に対し1日あたり約0.0001〜約500mgの範囲、好ましくは約0.001〜約100mgの範囲を1回または数回に分けて投与することができる。
以上のような低分子化合物やタンパク質を有効成分とする医薬組成物は、血管新生因子をコードする遺伝子を含有する遺伝子治療剤と同時に投与することもできれば、時間的間隔をおいて別々に投与することも可能である。
以上、本発明の血管新生療法用医薬組成物につき述べたが、当該医薬組成物は、血管新生療法が必要とされる全ての疾患に対して適用することができる。具体的には虚血性疾患又は動脈疾患が挙げられ、より具体的には、心疾患としては虚血性心疾患、心筋梗塞、急性心筋梗塞、心筋症、狭心症、不安定狭心症、冠動脈硬化、心不全などが挙げられ、また四肢虚血性疾患としては、閉塞性動脈硬化症(ASO)、バージャー病、血管損傷、動脈塞栓症、動脈血栓症、臓器動脈閉塞、動脈瘤などが挙げられる。またそれ以外としては脳血管障害が挙げられる。脳血管障害としては、具体的には脳血管閉塞、脳梗塞、脳血栓、脳塞栓、脳卒中、脳出血、もやもや病、脳血管性痴呆、アルツハイマー型痴呆、脳出血後遺症又は脳梗塞後遺症が挙げられる。本発明の医薬組成物は、これらの疾患のうち特に閉塞性動脈硬化症に対して有効に用いられる。
さらに本発明は、血管拡張作用及び/又は血小板凝集抑制作用を有する物質、及び当該物質を生じさせる物質より選ばれた少なくとも1種を有効成分として含有する、血管新生因子をコードする遺伝子による血管新生作用の増強剤をも提供する。前述のように、本発明の血管新生療法用医薬組成物の有効成分である前記物質は、血管新生因子をコードする遺伝子による血管新生作用を増強する効果を有している。従って、前述のように血管新生療法用医薬組成物の一成分として使用される他、血管新生因子をコードする遺伝子による血管新生作用を高めるための増強剤として、単独でも使用することができる。本発明の増強剤は、血管新生因子をコードする遺伝子の効果が不十分な場合などに有効に使用される。なお本発明の増強剤は、1つの成分(物質)のみでも良く、また複数の成分(物質)を組み合わせて使用しても良い。
ここで本発明の増強剤の有効成分としては、具体的には前述のPGIS遺伝子やCOX遺伝子、さらにはPGI2、PGE1あるいはこれらの誘導体などが挙げられ、好ましくはPGIS遺伝子が挙げられる。また、血管新生因子としては、前述のようにHGFやVEGFが挙げられる。
本発明の増強剤の投与方法・投与形態、また適応疾患等は、前記血管新生療法用医薬組成物と同様である。
また本発明は、PGIS遺伝子を有効成分として含有する、血管新生剤をも提供する。すなわち本発明においては、PGIS遺伝子の単独投与により血管新生作用の生じることを初めて見出した。これは従来知られていなかった新規な作用であり、この知見により初めて、PGIS遺伝子が血管新生剤として用い得ることが明らかになったのである。本発明の血管新生剤は、前記と同様の血管新生を必要とする全ての疾患(虚血性疾患又は動脈疾患)に用いることができる。また投与方法・投与形態等は、前記の血管新生療法用医薬組成物と同様である。
さらに本発明においては、ets−1遺伝子が血管新生療法のための遺伝子治療剤として有効であることを初めて明らかにした。すなわち後述の実施例に示されるように、ets−1遺伝子の単独投与により血管新生作用の認められること、及び、ets−1遺伝子とHGF遺伝子との併用により、各々単独で投与した場合と比較して、より血管新生の促進されることが明らかとなった。
ここでets−1とは、HGFやVEGF、bFGF、EGF等の血管新生因子の作用により共通に発現促進される転写調節因子であり、前記血管新生因子はets−1を介することにより、血管新生に関わる種々の因子を活性化することが知られている(J.Cell.Physiol.,169,522−531(1996)、HGFの分子医学,メディカルレビュー社、179−185(1998)))。従ってHGF遺伝子のみならず、VEGF等のHGF以外の血管新生因子遺伝子と当該ets−1遺伝子とを併用した場合にも、同様の併用効果が見られると考えられる。
従って本発明においては、ets−1遺伝子を単独、又は他の血管新生因子との併用に供することに係る、新規な血管新生療法用医薬組成物を提供するものであり、具体的には、以下の3つの形態を例示することができる。
(1)ets−1遺伝子と血管新生因子をコードする他の遺伝子とを有効成分として含有する、血管新生療法用医薬組成物。
(2)ets−1遺伝子を有効成分とする、血管新生因子をコードする他の遺伝子による血管新生作用の増強剤。
(3)ets−1遺伝子を有効成分とする、血管新生剤。
ここで「ets−1遺伝子」とは、ets−1(ets−1タンパク)をコードする遺伝子を指す。また、当該ets−1遺伝子を発現可能なように発現プラスミドに組み込んだものを、単に「ets−1遺伝子」と称する場合もある。具体的には、GenBank Acc.No.J04101に登録されており、またProc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85(21),7862−7866(1988)に記載のヒトets−1のcDNAを、前述のような遺伝子治療用の適当な発現ベクター(非ウイルスベクター、ウイルスベクター)に組み込んだものが挙げられる。当該ets−1遺伝子は、前述のHGF遺伝子やVEGF遺伝子と同様の手法によりクローニングすることができる。また、本発明のets−1遺伝子は天然型に限定されず、発現されるタンパク質がets−1と実質的に同じ作用を有する遺伝子である限り、本発明のets−1遺伝子の範疇に含まれる。
このようなets−1遺伝子は、前述のHGF遺伝子やPGIS遺伝子と同様の遺伝子治療剤の形態とされる。また、その生体内への導入方法や導入量、製剤形態等も、前記HGF遺伝子やPGIS遺伝子と同様とされる。
前述の(1)のように、ets−1遺伝子と血管新生因子をコードする他の(ets−1以外の)遺伝子とを併用する場合、これら2種類以上の遺伝子は、以下のような投与形態とされる。すなわち非ウイルスベクターを用いる場合は、別々の発現ベクター中に組み込んで作製された個々の組換え発現ベクターを、混合して同時に、又は時間的間隔をおいて別々に、生体内に導入することができる。また、1つの発現ベクター中に2種類以上の遺伝子を組み込んだ単一の発現ベクターを導入することも可能である。さらに、投与形態としてリポソーム系の製剤においては、前記個々の組換え発現ベクターを1つのリポソーム中に封入して導入することもできれば、別々のリポソーム中に個々の組換え発現ベクターを封入し、これを導入することも可能である。
一方、ウイルスベクターを用いる場合も、前記の非ウイルスベクターの場合と同様に、2種類以上の遺伝子が別々の発現ベクター中に組み込まれた組換え発現ベクターを混合して同時に、又は時間的間隔をおいて別々に、導入することができる。また、1つの発現ベクター中に2種類以上の遺伝子を組み込んだ単一の組換え発現ベクターを導入することも可能である。
さらに、非ウイルスベクター及びウイルスベクターの両方を用いて、前記2種類以上の遺伝子を生体内に導入することも可能である。
ets−1遺伝子と併用される血管新生因子の遺伝子としては、前述のように、新たな血管の形成を誘導し得るタンパク質、ポリペプチド、あるいはこれらの一部分をコードする遺伝子であれば如何なるものであっても良いが、好ましくはHGF遺伝子及びVEGF遺伝子が挙げられ、より好ましくはHGF遺伝子が挙げられる。
また本発明のets−1遺伝子は、前述の(2)のように、HGFやVEGF等の血管新生因子をコードする遺伝子による血管新生作用を増強するための増強剤として、単独で使用することもできる。このようなets−1遺伝子を有効成分とする増強剤は、血管新生因子をコードする遺伝子の効果が不十分な場合などに有効に使用される。特に、HGF遺伝子の作用を増強する増強剤として、有効に用いられる。さらに本発明のets−1遺伝子は、前述の(3)のように、血管新生剤として単独で使用することもできる。このようにets−1遺伝子を単独で使用する場合も、前記と同様の遺伝子治療剤としての投与方法、投与形態をとる。
以上のようなets−1遺伝子を用いた血管新生療法が適応される疾患としては、具体的には虚血性疾患又は動脈疾患が挙げられ、より具体的には、心疾患としては虚血性心疾患、心筋梗塞、急性心筋梗塞、心筋症、狭心症、不安定狭心症、冠動脈硬化、心不全などが挙げられ、また四肢虚血性疾患としては、閉塞性動脈硬化症(ASO)、バージャー病、血管損傷、動脈塞栓症、動脈血栓症、臓器動脈閉塞、動脈瘤などが挙げられる。またそれ以外としては脳血管障害が挙げられる。脳血管障害としては、具体的には脳血管閉塞、脳梗塞、脳血栓、脳塞栓、脳卒中、脳出血、もやもや病、脳血管性痴呆、アルツハイマー型痴呆、脳出血後遺症又は脳梗塞後遺症が挙げられる。本発明のets−1遺伝子を有効成分とする医薬組成物は、これらの疾患のうち特に閉塞性動脈硬化症に対して有効に用いられる。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
[実施例1]
マウス下肢虚血ASOモデルに対するHGF遺伝子、PGIS遺伝子の投与効果
(1)材料
ヒトHGF遺伝子は、ヒトHGFのcDNA(特開平5−111383号公報に記載)を常法によりクローニングし、これをサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを有する発現プラスミドpcDNA3.1(+)(Invitrogen社)に挿入したものを用いた。
ヒトPGIS遺伝子は、ヒトPGISのcDNA(B.B.R.C.,Vol.200,No.3,p1728−1734(1994))を常法によりクローニングし、これをCMVエンハンサーとβ−アクチンプロモーターを有する発現プラスミドpCAGGS(Gene 108,193−200(1991))に挿入したものを用いた。
(2)方法
C57BL/6J系マウス(8週齢、雄)を用いた。10倍希釈のネンブタールを200μl腹腔内投与し、追加が必要な場合はエーテルを吸入させることにより、マウスを麻酔した。その後左下肢の動静脈を結紮して、マウス下肢虚血ASOモデルを作製した。その10日後、Laser Doppler Imager(LDI、Moor Instruments Ltd社製、MLDI5070)を用いて両下肢の血流を評価し、左右の比率を算出した。評価後、左下肢筋肉内に、上記(1)の遺伝子をnaked plasmidの形態で各々500μg投与した。群としては、何も投与しないコントロール群、HGF遺伝子単独投与群、PGIS遺伝子単独投与群、HGF遺伝子およびPGIS遺伝子併用群の4群を設定した。遺伝子投与の2週間後、および4週間後にもLDIを用いて血流を評価し、比率を算出した。また、4週間後に左下肢筋肉を摘出し、凍結切片作製後、アルカリフォスファターゼ染色により筋肉内の毛細血管密度を測定した。なお有意差検定はFisher’s PLSD法により行った。
(3)結果
LDIにより測定した左右下肢血流の比率の経時変化を図1に示した。また、遺伝子投与前のLDI比率に対する増加率を図2に示した。PGIS遺伝子の投与により2週間後の血流は改善されたが、4週後ではコントロール群とほぼ同等であった。HGF遺伝子の投与により2、4週間後の血流が改善された。また、PGIS遺伝子とHGF遺伝子を併用することにより、各遺伝子単独投与の場合と比較して予想外に顕著に、血流が改善された(2週間後:コントロール:100%、HGF遺伝子投与:132%、PGIS遺伝子投与:125%、HGF遺伝子+PGIS遺伝子投与:177%、P<0.01;4週間後:コントロール:100%、HGF遺伝子投与:150%、PGIS遺伝子投与:104%、HGF遺伝子+PGIS遺伝子投与:166%、P<0.01)。
遺伝子投与4週間後の筋肉内毛細血管密度を図3に示した。PGIS遺伝子または、HGF遺伝子投与により毛細血管密度が増加した。また、PGIS遺伝子とHGF遺伝子を併用することにより、各遺伝子単独よりも顕著に毛細血管密度が増加した。
[実施例2]
ラット下肢虚血ASOモデルに対するHGF遺伝子、ets−1遺伝子の投与効果
(1)材料
ヒトHGF遺伝子を有する発現プラスミドは、実施例1と同様のものを用いた。また、ヒトets−1遺伝子に関しては、ヒトets−1のcDNA(GenBank Acc.No.J04101,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85(21),7862−7866(1988))を常法によりクローニングし、これを市販の発現ベクターに挿入したものを用いた。
(2)方法
Sprauge Dawleyラット(12週齢、雄)を用いた。片側の大腿動脈を摘出し、ラット下肢虚血ASOモデルを作製した。その1週間後、左下肢筋肉内にHVJ−liposome法を用いて遺伝子を各100μg投与した。群としては、ベクターのみのコントロール群、HGF遺伝子単独投与群、ets−1遺伝子単独投与群、HGF遺伝子およびets−1遺伝子併用群の4群を設定した。遺伝子投与前と遺伝子投与4週間後にLaser Doppler Imager(LDI)を用いて、両下肢の血流を評価し、左右の血流比の増加率を算出した。また、左下肢筋肉を摘出し、凍結切片作製後、アルカリフォスファターゼ染色により筋肉内の毛細血管密度を測定した。内因性HGFの発現に対する遺伝子投与の影響を調べるために、虚血肢筋肉中のラットHGF濃度をELISAキット(特殊免疫研究所製)を用いて測定した。
(3)結果
ets−1遺伝子の単独投与により、筋肉組織内のets−1 binding活性が上昇した。また、ets−1遺伝子投与により、LDIを用いて測定した下肢血流比の増加率が上昇し(図4)、筋肉内毛細血管密度が増加した(図5)。すなわち、ets−1遺伝子単独投与による血管新生効果とASOモデルに対する有効性が示された。また、ets−1遺伝子単独投与群では、虚血肢筋肉中のHGF濃度が上昇しており(図6及び図7)、ets−1遺伝子投与の有効性のメカニズムの1つと考えられた。
ets−1遺伝子をHGF遺伝子と共に投与した群では、ets−1遺伝子単独、HGF遺伝子単独を投与した群よりもLDI血流比の増加率が顕著に上昇し(図4)、筋肉内毛細血管密度も有意に増加した(図5)。すなわち、ets−1遺伝子またはHGF遺伝子を単独で遺伝子導入するよりも、両遺伝子を共に遺伝子導入する方がより血管新生が促進され、よりASOに対して有効である事が示された。
ラット虚血肢筋肉中の内因性HGF濃度を測定したところ、HGF遺伝子単独投与群よりもHGF遺伝子とets−1遺伝子を併用した群でラットHGF濃度が高かった(図6)。HGF遺伝子を単独で投与した場合よりもets−1遺伝子を共に投与した場合に、内因性HGFの発現は促進されたことから、HGFがets−1の活性化を通したauto−loop型の調節機構を持っている事が示唆された。
[実施例3]
マウス下肢虚血ASOモデルに対するVEGF遺伝子、PGIS遺伝子の投与効果
(1)材料
ヒトVEGF遺伝子は、ヒトVEGF165のcDNA(九州大学第2外科、米満先生より供与)を常法によりクローニングし、これをCMVエンハンサーとβ−アクチンプロモーターを有する発現プラスミドpCAGGS(Gene 108,193−200(1991))のEcoRIサイトに挿入したものを用いた。
ヒトPGIS遺伝子は、ヒトPGISのcDNA(B.B.R.C.,Vol.200,No.3,p1728−1734(1994))を常法によりクローニングし、これをCMVエンハンサーとβ−アクチンプロモーターを有する発現プラスミドpCAGGS(Gene 108,193−200(1991))に挿入したものを用いた。
(2)方法
1.C57BL/6J系マウス(8週齢、雄)を用いた。10倍希釈のネンブタールを200μl腹腔内投与し、追加が必要な場合はエーテルを吸入させることにより、マウスを麻酔した。その後左下肢の動静脈を結紮して、マウス下肢虚血ASOモデルを作製した。評価後、左下肢筋肉内に、上記(1)の遺伝子をnaked plasmidの形態で各々1mg投与した。群としては、何も投与しないコントロール群、VEGF遺伝子単独投与群、PGIS遺伝子単独投与群、VEGF遺伝子およびPGIS遺伝子併用群の4群を設定した。各群には4匹の動物が含まれた。左脛骨筋に各プラスミドを投与後5日目に、虚血下肢筋肉中のヒトVEGFタンパク質の濃度を、AN’ALYZA Immunoassay System human VEGFキット(GENZYME)を用いて測定した。(図8)
2.上述の方法と同様な方法によりマウス下肢虚血ASOモデルを作製した。その10日後、Laser Doppler Imager(LDI、Moor Instruments Ltd社製、MLDI5070)を用いて両下肢の血流を評価し、左右の比率を算出した(図9;右足(正常)、左下肢(ASO))。その結果、左下肢において血流が正常な場合を100%とした場合に、その約30%まで血流量が減少していることが確認された。評価後、左下肢筋肉内に、上記(1)の遺伝子をnaked plasmidの形態で各々500μg投与した。群としては、何も投与しないコントロール群、VEGF遺伝子単独投与群、PGIS遺伝子単独投与群、VEGF遺伝子およびPGIS遺伝子併用群の4群を設定した。遺伝子投与の2週間後、および4週間後にもLDIを用いて血流を評価し、その増加率を算出した。また、4週間後に左下肢筋肉を摘出し、凍結切片作製後、アルカリフォスファターゼ染色し(図12)、筋肉内の毛細血管密度を測定した。なお有意差検定は、Fisher’s PLSD法により行った。
(3)結果
1.図8に示すように、虚血下肢筋肉中のヒトVEGFタンパク質の濃度は、コントロール、及び、PGIS遺伝子のみを投与した場合には検出されず、VEGF遺伝子のみを投与した場合よりも、VEGF遺伝子及びPGIS遺伝子を一緒に投与した場合により多く検出された。
2.LDIにより測定した左下肢の血流の2週間後の増加率を図10に、そして4週間後の増加率を図11に示した。VEGF遺伝子単独、並びに、VEGF遺伝子及びPGIS遺伝子の投与により2週間後の血流は改善されないが、4週間後ではコントロール群と比べVEGF遺伝子単独、そしてVEGF遺伝子及びPGIS遺伝子の投与により血流が改善された。PGIS遺伝子とVEGF遺伝子を併用することにより、各遺伝子単独投与の場合と比較して予想外に顕著に、血流が改善された(2週間後:コントロール:100%、、PGIS遺伝子投与:105%、VEGF遺伝子投与:117%、VEGF遺伝子+PGIS遺伝子投与:115%;4週間後:コントロール:100%、PGIS遺伝子投与:103%、VEGF遺伝子投与:130%、VEGF遺伝子+PGIS遺伝子投与:169%、P<0.01)。
遺伝子投与4週間後の筋肉内毛細血管密度を図13に示した。VEGF遺伝子投与により毛細血管密度が増加した。また、PGIS遺伝子とVEGF遺伝子を併用することにより、各遺伝子単独よりも顕著に毛細血管密度が増加した。(コントロール:100%、PGIS遺伝子投与:175%、VEGF遺伝子投与:221%、VEGF遺伝子+PGIS遺伝子投与:338%、P<0.0001)。
産業上の利用の可能性
本発明により、血管拡張作用及び/又は血小板凝集抑制作用を有する物質、及び当該物質を生じさせる物質より選ばれた少なくとも1種と、血管新生因子をコードする遺伝子とを有効成分として含有する、新規でかつ有効性の高い、血管新生療法用医薬組成物を提供することができる。また本発明により、プロスタサイクリン合成酵素遺伝子やets−1遺伝子といった、従来は血管新生療法に用いられることが分かっていなかった遺伝子が、当該血管新生療法に適用できることを新たに見出したことにより、これらの遺伝子を有効成分とする血管新生療法用医薬組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、マウス下肢虚血ASOモデルに対して各遺伝子(コントロール、HGF遺伝子、PGIS遺伝子、HGF遺伝子+PGIS遺伝子)を投与した後、下肢血流をレーザードップラーイメージャーを用いて測定し、左右の比の経時変化を調べた結果を示すグラフである。
図2は、マウス下肢虚血ASOモデルに対して各遺伝子(コントロール、HGF遺伝子、PGIS遺伝子、HGF遺伝子+PGIS遺伝子)を投与した後、下肢血流をレーザードップラーイメージャーを用いて測定し、遺伝子投与前に対する左右の比の増加率を経時的に調べた結果を示すグラフである。
図3は、マウス下肢虚血ASOモデルに対して各遺伝子(コントロール、HGF遺伝子、PGIS遺伝子、HGF遺伝子+PGIS遺伝子)を投与した後、虚血肢筋肉内毛細血管数を調べた結果を示すグラフである。
図4は、ラット下肢虚血ASOモデルに対して各遺伝子(コントロール、HGF遺伝子、ets−1遺伝子、HGF遺伝子+ets−1遺伝子)を投与した後、下肢血流をレーザードップラーイメージャーを用いて測定し、左右の下肢血流比の増加率を調べた結果を示すグラフである。
図5は、ラット下肢虚血ASOモデルに対して各遺伝子(コントロール、HGF遺伝子、ets−1遺伝子、HGF遺伝子+ets−1遺伝子)を投与した後、虚血肢筋肉内毛細血管密度を測定した結果を示すグラフである。
図6は、ラット下肢虚血ASOモデルに対して各遺伝子(コントロール、HGF遺伝子、ets−1遺伝子、HGF遺伝子+ets−1遺伝子)を投与した後、虚血肢筋肉中のラットHGF濃度を調べた結果を示すグラフである。
図7は、ラット下肢虚血ASOモデルに対してets−1遺伝子を投与した後、虚血肢筋肉中のラットHGF濃度を調べた結果を示すグラフである。
図8は、マウス下肢虚血ASOモデルに対してPGIS遺伝子、VEGF遺伝子、または、VEGF遺伝子及びPGIS遺伝子を投与した後、虚血下肢筋肉中のヒトVEGF濃度を調べた結果を示すグラフである。
図9は、マウス下肢虚血ASOモデルのための手術から10日後の未処理の右下肢(正常)、及び、左下肢(ASO)のLDIによる血流比を示すグラフである。
図10は、マウス下肢虚血ASOモデルに対して、PGIS遺伝子、VEGF遺伝子、または、VEGF遺伝子及びPGIS遺伝子を投与した2週間後、虚血下肢筋肉中のLDIによる血流量の増加率を調べた結果を示すグラフである。
図11は、マウス下肢虚血ASOモデルに対して、PGIS遺伝子、VEGF遺伝子、または、VEGF遺伝子及びPGIS遺伝子を投与した4週間後、虚血下肢筋肉中のLDIによる血流量の増加率を調べた結果を示すグラフである。
図12は、マウス下肢虚血ASOモデルに対して、PGIS遺伝子及びHGF遺伝子、VEGF遺伝子、または、VEGF遺伝子及びPGIS遺伝子を投与した4週間後、虚血下肢筋肉の凍結切片をアルカリホスファターゼ染色により染色した写真である。
図13は、マウス下肢虚血ASOモデルに対して、PGIS遺伝子、VEGF遺伝子、または、VEGF遺伝子及びPGIS遺伝子を投与した4週間後の毛細血管密度を調べた結果を示すグラフである。
Claims (4)
- ヒトets−1遺伝子を有効成分として含有し、naked DNAの直接導入法又はHVJ−リポソーム法により導入されるように製剤化された、虚血性疾患又は動脈疾患の治療又は予防のための医薬組成物。
- 虚血性疾患又は動脈疾患が、閉塞性動脈硬化症、心筋梗塞、狭心症、心筋症又は脳血管障害のいずれかである、請求項1記載の医薬組成物。
- ヒトHGF遺伝子とヒトets−1遺伝子とを有効成分として含有し、naked DNAの直接導入法又はHVJ−リポソーム法により導入されるように製剤化された、虚血性疾患又は動脈疾患の治療又は予防のための医薬組成物。
- 虚血性疾患又は動脈疾患が、閉塞性動脈硬化症、心筋梗塞、狭心症、心筋症又は脳血管障害のいずれかである、請求項3記載の医薬組成物。
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