JP5020054B2 - 低電力保安器 - Google Patents
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Description
すなわち、電車線には電車を駆動する高電圧大電流が流れており、上記碍子のせん絡や電車線の地絡事故が発生した際、地絡点の構造物に過電圧が発生したり、地絡点周囲の大地電位上昇が発生し、電力機器や通信機器及び信号機器の電気設備などに損傷を与える場合がある。
このため、地絡点における過電圧の発生を抑制する保安器(電力保安器)が設けられている。
ブースタトランスBTは、所定区間毎に設置されており、変電所SSから電力をトロリ線Tを介して負荷である電気車ECに供給する。
また、ブースタートランスBTは、トロリ線Tから電気車ECを介してレール101に流れる電流を、吸上線Eを介して負き電線NFに吸い上げて変電所SSに戻す。この吸い上げ線Eは上記ブースタートランスBT間の区間毎に負き電線NFに設けられている。
ブースタートランスBTが設けられている箇所に、それぞれエアセクション102が設けられており、トロリ線Tは各き電線区間に分割されている。また、上記エアセクション102のみでなく、異なる変電所(交流電流の位相が異なる)に接続され、それぞれから延びるトロリ線間等に設けられるデッドセクション103も存在している。
しかしながら、負き電線NFには電車のデッドセクション通過に伴い、サージ電圧が発生しており、このサージ電圧により放電が開始されると、その放電がトリガとなり、放電器に印加される交流電圧が通常の電車運転時のAC200V〜400Vであっても、交流電圧の放電が発生・持続する続流が流れ、この続流により発生する熱により保安器が焼損する問題がある。
この構成により、バリスタを設けることにより、通常電圧に低下すると放電電流の流れる経路を除去することとなり、上述した続流が流れる現象をなくし、保安器の焼損を防止することができる。
また、き電回路においては、再閉路、すなわち一回放電する状態が発生すると、再度放電する状態となる確率が高いため、上述した保護回路の破壊を考慮し、上記保護回路607と並列に、放電管603及びバリスタ604を直列に接続した保護回路608を端子605及び端子606間に設けて、放電器を構成している。
このため、上述した保安器を設けたとしても、これらの電子機器が破壊される場合があるため、保安器における放電開始電圧を2500Vから800V程度に低下させる要望がある。
ところが、保安器の放電開始電圧を800V程度に低下させると、電車がエアセクションやデッドセクションを通過する際、頻繁、例えば通過する毎にサージによる放電が発生するため、保護回路が破壊されて交換する頻度が高くなり、保守費が増加してしまう。
すなわち、地絡故障点の対地電圧上昇を、例えば、2500Vから800Vと、1/3程度とし、感電及び構造物さらには弱電機器への対地電圧上昇の影響を、従来に比較して抑制するものである。
この図において、電力保安器50は、負き電線NFと保護地線FWとの間に、同様な構成の保安器10及び保安器20が並列に配置して構成されている。
保安器10は、放電管11、金属電極12,13,14,15、バリスタ16、抵抗17、端子18,19から構成されている。
金属電極15は端子18に接続され、金属電極14は端子19に接続されている。また、端子18は負き電線NFに接続され、端子19は保護地線FWに接続されている。
上記バリスタ16は、金属電極12及び金属電極14との間に介挿され、サージ保護素子として用いられている。このサージ保護素子としては、他に、放電管、ガスアレスタ、半導体アレスタ等がある。
抵抗17は、金属電極13及び金属電極14の間に介挿されており、抵抗値としては140〜300Ωに設定され、インパルス耐圧としては5kV程度のものが使用される。
また、保安器10は、各構成要素であるバリスタ16、抵抗17及び放電管11を容易に交換できる構造とする。
金属電極25は端子28に接続され、金属電極24は端子29に接続されている。また、端子28は負き電線NFに接続され、端子29は保護地線FWに接続されている。
上記保安器20において、放電管21は、端子28と金属電極22及び23との間に介挿されており、上記放電管11と同様の特性を有している。
上記バリスタ26は、金属電極22及び金属電極24との間に介挿され、サージ保護素子として用いられ、上記バリスタ16と同様の特性を有している。
抵抗27は、金属電極23及び金属電極24の間に介挿されており、上記抵抗17と同様の特性を有している。
また、保安器20は、上記保安器10と同様に、各構成要素であるバリスタ26、抵抗27及び放電管21を容易に交換できる構造とする。
詳細は後述するが、金属電極15を金属電極14の近傍に配置する理由は次の通りである。すなわち、バリスタ16あるいは抵抗17が破損した場合には、金属電極12あるいは金属電極13と金属電極14との間にアークが発生することとなるが、金属電極15と金属電極14との距離が近いと、前記アークがその後金属電極15と金属電極14との間に移行しやすくなるからである。前記アークが金属電極15と金属電極14との間に移行すれば、放電器11の放電が停止するため、放電器11の劣化を抑制することができる。
実測例によると、負き電線NFにおけるサージ最大電圧が5000V程度である。
したがって、本実施形態における保安器10及び20において、バリスタに放電電流が流れる頻度を従来の続流抑止型の電力保安器と同等か、あるいはそれ以下とするためには、約5000V以下のサージの発生の際、抵抗に放電電流を流し、バリスタに放電電流を流さないようにし、一方、5000Vを超えるサージの発生の際、バリスタに放電電流を流すよう構成する。
図3に負き電線NFに発生したサージにより、保安器10(あるいは20)が放電した場合の等価回路を示す。また、図3における負き電線NFに発生するサージ電圧が5000Vとして、抵抗17に発生する電圧VR及び放電電流を計算した結果を図4に示す。
負き電線NFと大地との電位差VGは(1)式により求められ、抵抗Rに流れる電流iは(2)式により求められ、電圧VRは(3)式により求められる。この(1)式において、eはサージ電圧であり、rは抵抗Rの抵抗値であり、rgは抵抗Rgの抵抗値であり、Zは負き電線NFのサージインピーダンスである。
図4(a)は、上記(1)〜(3)式を用いたシミュレーションにより、負き電線NFのサージインピーダンスが200Ω、300Ω及び400Ωのそれぞれの場合における抵抗Rと電圧VRとの関係を示すグラフである。
しかしながら、交流放電開始電圧を700V〜900V(本実施形態においては800V程度)とした場合、かなりの放電頻度の増加が予想され、実際の放電頻度については、各線区における現地測定によって把握する必要がある。
したがって、通常のエアセクションやデッドセクションを電車が通過する際に、負き電線NFに発生するサージ電圧eは、2000V〜3000Vの電圧レベルのものが実測して多いことが検出されているため、平均的なサージ放電電流はほぼ10A程度になると予想される。しかしながら、実際の放電電流iについては、保安器10を設置する線区における実測により確認する必要がある。
したがって抵抗17の抵抗値rは、保安器10に対して5000V以下のサージ電圧が印加された際、放電電流iを抵抗に流すようにするため、5000Vのサージ電圧が印加されたときに、抵抗17の端子間電圧VRがバリスタの10A通電時の制限電圧(本実施形態において2800V)以下であればよい。
すなわち、図4に示したシミュレーション結果によると、抵抗値rは、負き電線NFのサージインピーダンスZを200Ωとすると140Ω以下であり、サージインピーダンスZを300Ωとすると203Ω以下であり、サージインピーダンスZを400Ωとすると267Ω以下となる。
したがって、抵抗値rの適正値は、100Ω〜300Ωの範囲にあると推測されるが、実際には各線区による実測により、続流抑止が可能であることの確認して設定する必要がある。
続流抑止機能の確認については、鉄道総合研究所内試験と現地試験で確認する。
<サージ電圧eが5000V未満の場合>
図5を参照して、サージ電圧eが5000V未満の場合の、負き電線NFから保護地線FWへの放電の動作について説明する。ここでは、負き電線NF及び保護地線FW間に並列に設けられている保安器10及び20において、いずれにも放電電流が流れる可能性はあるが、最初に保安器10に放電電流が流れたとして説明する。
まず、端子18,28と、端子19,29との間に5000V未満のサージ電圧が印加されると、保安器10の放電管11が放電を開始する。
これにより、サージ電圧eが5000V以下の場合、抵抗17に放電電流iの大半が流れ、一方、バリスタ16には10A以上の電流が流れずに(バリスタに放電電流が流れる回数を低減させて)、バリスタの劣化を抑制することができる。
図6を用いて、サージ電圧eが5000V以上の場合の、負き電線NFから保護地線FWへの放電の動作について説明する。ここでは、負き電線NF及び保護地線FW間に並列に設けられている保安器10及び20において、いずれにも放電電流が流れる可能性はあるが、最初に保安器10に放電電流が流れたとして説明する。
まず、端子18,28と、端子19,29との間に5000V以上のサージ電圧が印加されると、放電管11が放電を開始する。
そして、図5に示すように、この放電電流iが抵抗17を流れた際、抵抗値rを上述した値に設定しているため、金属電圧14及び金属電極13(12)間の電圧VRが2800Vを超え、バリスタ17の制限電圧(10A通電時)を超えることとなる。
図7〜図10を用いて、地絡により1800V以上の交流電圧が印加された場合の電力保安器50の動作を説明する。ここでは、負き電線NF及び保護地線FW間に並列に設けられている保安器10及び20において、地絡事故において、いずれの保安器にも故障電流iFが流れる可能性はあるが、最初に保安器10に故障電流iFが流れたとして説明する。
地絡が起こり、端子18,28と、端子19,29との間に1800V以上の交流電圧が印加されると、保安器10の放電管11が放電を開始する。
図7に示すように、この故障電流iFが抵抗17を流れた際、抵抗値rを上述した値に設定しているため、金属電圧14及び金属電極13(12)間の電圧VRが1800Vを超え、バリスタ17の動作開始電圧1800Vを超えることとなる。
このため、図8に示すように、バリスタ16に故障電流iFが流れ、抵抗17にもある程度の電流が流れる。
このとき、図10に示すように、アークは自分自身の電流の電磁力によって駆動力が働き、伸長・移動し金属電極14の近傍に配置された金属電極15に触れ、金属電極12及び金属電極14との間のアーク放電が、金属電極15と金属電極14との間に移行する。
これにより、アーク放電が金属電極12と金属電極14との間から無くなるため、故障電流iFが放電管11を流れなくなり、放電管11の電極の消耗を最小限に抑制することができる。また、この際、変電所の遮断器がオフ状態となり、事故電流iFが遮断され、金属電極15と金属電極14との間のアーク放電が消滅する。
そして、この故障電流iFが抵抗17を流れた際、抵抗値rを上述した値に設定しているため、金属電圧14及び金属電極13(12)間の電圧VRが1800Vを超え、バリスタ17の動作開始電圧1800Vを超えることとなる。
しかしながら、図11に示すように、すでにバリスタ16が破損して存在しないため、地絡により印加された電圧による事故電流iFが抵抗R17に流れ続けることとなる。
このとき、図13に示すように、アークは自分自身の電流の電磁力によって駆動力が働き、伸長・移動し金属電極14の近傍に配置された金属電極15に触れ、金属電極13及び金属電極14との間のアーク放電が、金属電極15と金属電極14との間に移行する。
また、一定時間後に、変電所の遮断機がオン状態となり、地絡が解消していないと再度、端子18,28と、端子19,29との間に1800V以上の交流電圧が印加され、保安器10が破損しているため、保安器20の放電管21が放電を開始する。この以降の動作としては、すでに述べた保安器10の場合と同様である。
図14〜図19を用いて、地絡により1800V以下の交流電圧が印加された場合の電力保安器50の動作を説明する。ここでは、負き電線NF及び保護地線FW間に並列に設けられている保安器10及び20において、地絡事故において、いずれの保安器にも故障電流iFが流れる可能性はあるが、最初に保安器10に故障電流iFが流れたとして説明する。
地絡が起こり、端子18,28と、端子19,29との間に1800V以下の交流電圧が印加されると、保安器10の放電管11が放電を開始する。
図14に示すように、この故障電流iFが抵抗17を流れた際、抵抗値rを上述した値に設定しているため、金属電圧14及び金属電極13(12)間の電圧VRが1800Vを超えず、故障電流iFが抵抗17を流れ続けることとなる。
このとき、図16に示すように、アークは自分自身の電流の電磁力によって駆動力が働き、伸長・移動し金属電極14の近傍に配置された金属電極15に触れ、金属電極13及び金属電極14との間のアーク放電が、金属電極15と金属電極14との間に移行する。
これにより、アーク放電が金属電極13と金属電極14との間から無くなるため、故障電流iFが放電管11を流れなくなり、放電管11の消耗を抑制することができる。また、この際、変電所の遮断器がオフ状態となり、事故電流iFが遮断され、金属電極15と金属電極14との間のアーク放電が消滅する。
図17に示すように、この故障電流iFが抵抗27を流れた際、抵抗値rを上述した値に設定しているため、金属電圧24及び金属電極23(22)間の電圧VRが1800Vを超えず、故障電流iFが抵抗27を流れ続けることとなる。
そして、図18に示すように、抵抗27は上記故障電流iFにより発生する熱エネルギーにより破損する。このため、抵抗27に流れていた故障電流iFに対応して、金属電極23及び金属電極24との間にアーク放電が発生する。
これにより、アーク放電が金属電極23と金属電極24との間から無くなるため、故障電流iFが放電管21を流れなくなり、放電管21の消耗を抑制することができる。また、この際、変電所の遮断機がオフ状態となり、事故電流iFが遮断され、金属電極25と金属電極24との間のアーク放電が消滅する。
11,21…放電器
12,13,14,15,22,23,24,25…金属電極
16,26…バリスタ
17,27,Rg…抵抗
50…電力保安器
18,19,28,29…端子
NF…負き電線
FW…保護地線
T…トロリ線
Claims (3)
- 交流き電回路において負き電線と保護地線との間に設けられる電力保安器であり、
一方の端子が前記負き電線に接続された放電器と、
該放電器の他端に接続された第1の電極と、
前記放電器の他端に接続された第2の電極と、
前記保護地線に接続された第3の電極と、
前記第1の電極及び前記第3の電極間に介挿されたサージ保護素子と、
前記第2の電極及び前記第3の電極間に介挿された抵抗と、
前記負き電線に接続され、前記第3の電極の近傍に配置された第4の電極と、
を有し、
前記サージ保護素子の動作開始電圧が、印加されるサージ電圧が放電電流を前記抵抗に流す上限として設定された電圧を超えた場合に前記抵抗の両端に発生する電圧として設定されていることを特徴とする低電力保安器。 - 前記放電器の放電開始電圧が、前記サージ保護素子の動作開始電圧に対して低く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の低電力保安器。
- 前記保安器が前記負き電線及び保護地線間に並列に設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の低電力保安器。
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