以下において、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施の形態1]
実施の形態1に係るアンテナ装置は、各々が同軸線路を備える2つのスリーブアンテナを、同一直線上に配置し、かつこれらを電気的に直列に接続する(スリーブアンテナを2列にスタックする)ことによって構成されるアンテナ装置である。
図1は、実施の形態1に係るアンテナ装置に含まれるスリーブアンテナの構成を説明する外観模式図である。図2は、図1のII−II線断面模式図である。
図1および図2を参照して、スリーブアンテナ1は、中央導体11および外部導体12を含む同軸導体10と、スリーブ導体13とを備える。中央導体11は直線状の導体である。外部導体12は、中央導体11と同方向に延在する円筒状に形成され、かつその中心軸が中央導体11の中心軸と一致するように配置される。中央導体11と外部導体12とを電気的に絶縁するため、これらの間には、たとえば空隙が設けられてもよいし、絶縁物が充填されてもよい。
中央導体11は、2つの端部14,15を有する。外部導体12は、中央導体11の一部に対向する面16(内表面)と、中央導体11の端部14,15の間に位置する端部17と、端部17に対して反対側、すなわち中央導体11の端部15側に位置する端部18とを有する。スリーブアンテナ1の共振周波数に対応する波長をλとすると、中央導体11のうち、その端部14から約λ/4の長さの部分は外部導体12に覆われずに露出し、残りの部分は外部導体12の内表面(面16)に対向する。すなわち、外部導体12の端部17は、中央導体11の端部14から約λ/4離れた位置にある。
スリーブ導体13は、同軸導体10の外側すなわち中央導体11に対して外部導体12よりも外側に配置され、外部導体12の端部17において外部導体12と電気的に接続される。スリーブ導体13は、外部導体12の端部17から端部18に向かう向きに延在し、約λ/4の長さを有する。外部導体12の端部17から約λ/4だけ離れた位置にあるスリーブ導体13の端部は、電気的に開放される。
外部導体12およびスリーブ導体13はシュペルトップを構成する。中央導体11において外部導体12に覆われずに露出した部分、すなわち中央導体11において外部導体12の端部17の位置から端部14までの部分を1/4波長モノポールアンテナとして機能させた場合に、外部導体12およびスリーブ導体13により構成されたシュペルトップは、外部導体12の表面に定在波電流(漏洩電流)が流れることを防止する役割を果たす。
同軸導体10の種類は特に限定されず、たとえば、内部導体を絶縁体および編組線(細い銅線を編んだもの)で覆うことにより構成された、一般的な同軸ケーブルを用いることができる。この場合、同軸ケーブルの内部導体および編組線が図1および図2に示した同軸導体10の中央導体11および外部導体12にそれぞれ対応する。また、スリーブ導体13の種類も特に限定されず、たとえば、同軸導体10に被せられ、かつ、外部導体12の端部17において外部導体12に電気的に接続される金属製の筒であってもよいし、同軸ケーブルの編組線を折り返すことによって形成されてもよい。後者のように同軸ケーブルの編組線を折り返すことでスリーブ導体13を形成した場合、スリーブアンテナの構成を簡素化できる。
図3から図5は、実施の形態1に係るアンテナ装置100を示した図である。図3は、実施の形態1に係るアンテナ装置100の外観模式図である。図4は、図3に示したアンテナ装置100の正面図である。図5は、図4のV−V線断面模式図である。図3から図5を参照して、実施の形態1に係るアンテナ装置100について詳説する。
図3〜図5に示すように、実施の形態1に係るアンテナ装置100は、アンテナユニット20と、アンテナユニット20に接続される給電線路4とを備える。アンテナユニット20は、スリーブアンテナ1A,1Bと、給電部2と、接続部3とを含む。
スリーブアンテナ1A,1Bの各々は、図1および図2に示すスリーブアンテナ1と同じ構成を有する。図3から図5においては、スリーブアンテナ1A,1Bの要素に対し、その末尾が「A」または「B」である符号を付してある。これは、その符号を付した要素が、図1および図2に示したスリーブアンテナ1の構成要素のうち、上記符号から「A」または「B」を除いた符号を付した構成要素と同一であることを示している。
スリーブアンテナ1A,1Bは、互いに離間して直線X上に配置される。さらに、スリーブアンテナ1A,1Bは、直線Xに垂直な直線Yに対して互いに対称な形状を有する。具体的には、スリーブアンテナ1Aは、ともに直線Xの方向に延在する中央導体11Aおよび外部導体12Aにより構成される同軸導体10Aと、直線Xの方向に延在し、かつ、外部導体12Aに接続されるスリーブ導体13Aとを含む。
中央導体11Aは端部14A,15Aを有する。端部14Aは、直線Yからの距離が相対的に遠い端部(先端)であり、端部15Aは直線Yからの距離が相対的に近い端部(後端)である。外部導体12Aは、中央導体11Aと対向する面16A(内表面)と、中央導体11Aの端部14A(先端)からの長さが約λ/4となる位置にある端部17Aと、端部17Aと反対側(端部17Aに対して中央導体11Aの端部15A側)に位置する端部18Aとを有する。スリーブ導体13Aは、中央導体11Aに対して外部導体12Aよりも外側に配置され、外部導体12Aの端部17Aにおいて外部導体12Aに電気的に接続される。
スリーブアンテナ1Bは、ともに直線Xの方向に延在する中央導体11Bおよび外部導体12Bにより構成される同軸導体10Bと、直線Xの方向に延在し、かつ、外部導体12Bに接続されるスリーブ導体13Bとを含む。
中央導体11Bは端部14B,15Bを有する。端部14Bは、直線Yからの距離が相対的に遠い端部(先端)であり、端部15Bは直線Yからの距離が相対的に近い端部(後端)である。外部導体12Bは、中央導体11Bと対向する面16B(内表面)と、中央導体11Bの先端(端部14B)からの長さが約λ/4となる位置に配置される端部17Bと、端部17Bと反対側(端部17Bに対して中央導体11Bの端部15B側)に位置する端部18Bとを有する。スリーブ導体13Bは、中央導体11Bに対して外部導体12Bよりも外側に配置され、外部導体12Bの端部17Bにおいて外部導体12Bに電気的に接続される。
端部14Aの位置から外部導体12Aの端部17Aの位置までの中央導体11Aの長さ、およびスリーブ導体13Aの直線X方向の長さは約λ/4である。同様に、端部14Bの位置から外部導体12Bの端部17Bの位置までの中央導体11Bの長さ、およびスリーブ導体13Bの直線X方向の長さは約λ/4である。また、中央導体11Aの後端(端部15A)および中央導体11Bの後端(端部15B)は直線Yに対して等距離の位置にあり、外部導体12Aの端部18Aおよび外部導体12Bの端部18Bも直線Yに対して等距離の位置にある。
給電部2は、互いに離間しかつ対向する外部導体12Aの端部18Aと外部導体12Bの端部18Bとにより構成され、導線4Aおよび4Bにより構成される給電線路4が接続される。外部導体12Aの端部18Aは点P1において導線4Aに接続され、外部導体12Bの端部18Bは点P2において導線4Bに接続される。つまり点P1,P2はアンテナ装置100の給電点である。
スリーブアンテナは、同軸ケーブルのような不平衡線路を直接接続することが可能なアンテナである。したがって図3から図5に示したように、2つのスリーブアンテナを電気的に直列に接続することを容易に実現できる。実施の形態1においては、給電線路4は、具体的には同軸ケーブルであり、その内部導体および外部導体(編組線)の一方および他方が導線4A,4Bにそれぞれ対応する。
接続部3は、中央導体11Aの端部15Aと、中央導体11Bの端部15Bとを電気的に接続する。実施の形態1では、中央導体11A,11Bおよび接続部3は一体化されている。ただし、別々に設けられた中央導体11A,11Bを、接続部3によって物理的かつ電気的に接続してもよい。
上記説明を総括すると、アンテナ装置100は次の構成を有している。アンテナ装置100は、互いに離間して直線X上に配置され、直線Xに垂直な直線Yに対して互いに対称な形状を有する第1および第2のアンテナ素子(スリーブアンテナ1A,1B)を含むアンテナユニット20を備える。第1および第2のアンテナ素子(スリーブアンテナ1A,1B)の各々は、直線Xの方向に延在し、かつ、直線Yからの距離が相対的に遠い先端(端部14A,14B)と、直線Yからの距離が相対的に近い後端(端部15A,15B)とを有する中央導体(11A,11B)と、中央導体(11A,11B)の先端(端部14A,14B)からの長さが所定値(λ/4)となる位置に配置される一方端(端部17A,17B)を有し、直線Xの方向に延在するとともに中央導体(11A,11B)と対向する第1の外部導体(外部導体12A,12B)と、中央導体(11A,11B)に対して第1の外部導体(外部導体12A,12B)よりも外側に配置され、第1の外部導体(外部導体12A,12B)の一方端(端部17A,17B)において第1の外部導体(外部導体12A,12B)に電気的に接続されるとともに、直線Xの方向に延在する第2の外部導体(スリーブ導体13A,13B)とを有する。アンテナユニット20は、第1および第2のアンテナ素子(スリーブアンテナ1A,1B)における、互いに離間した第1の外部導体の他方端同士(端部18A,18B)により構成される給電部(2)と、中央導体(11A,11B)の後端同士(端部15A,15B)を電気的に接続する接続部(3)とをさらに含む。
このように、アンテナ装置100を構成することによって、アンテナ装置100の給電経路における損失を低減させることが可能になる。したがって実施の形態1によれば、スタック構成を有するアンテナ装置の特性を良好とすることができる。アンテナ装置の特性は、代表的には利得およびVSWR(Voltage Standing Wave Ratio;電圧定在波比)である。なお、利得の場合においては、その値が高いほどアンテナ装置の特性が良好であることを示し、VSWRの場合においては、その値が低いほどアンテナ装置の特性が良好であることを示す。
続いて、実施の形態1に係るアンテナ装置100による効果を説明する。まず、アンテナ装置100の一比較例としてダイポールアンテナを2列にスタックすることで構成されたアンテナ装置を説明する。なお、実施の形態1に係るアンテナ装置100は受信アンテナおよび送信アンテナのいずれにも適用可能であり、特にその用途が限定されるものではないが、以下においてはアンテナ装置100を受信アンテナに適用した形態を説明する。
図6は、実施の形態1に係るアンテナ装置100の第1の比較例の構成を示す図である。図6を参照して、ダイポールアンテナD1,D2は互いに同じ共振周波数を有する(すなわちアンテナ長が互いに等しい)半波長ダイポールアンテナであり、直線X上に配置されている。ダイポールアンテナD1は整合器31を介して同軸ケーブル32に電気的に接続され、ダイポールアンテナD2は整合器33を介して同軸ケーブル34に電気的に接続される。混合器35は、整合器31および同軸ケーブル32を介して取り出されたダイポールアンテナD1の出力と、整合器33および同軸ケーブル34を介して取り出されたダイポールアンテナD2の出力とを合成して出力する。
整合器31,33は、平衡型アンテナであるダイポールアンテナを同軸ケーブル(不平衡線路)に接続する場合において、平衡状態であるダイポールアンテナの出力を不平衡状態に変換するために用いられる。
この構成によれば、整合器31,33において損失が発生するとともに、混合器35においても損失が発生するので、混合器35からの出力が小さくなる。
図7は、実施の形態1に係るアンテナ装置の第2の比較例の構成を示す図である。図7を参照して、ダイポールアンテナD1,D2は平衡線路36により接続されることで給電される。なお平衡線路36に代えてストリップラインが用いられてもよい。ダイポールアンテナD1,D2の出力は平衡線路36によって合成され、その合成された出力は整合器37を介して取り出される。
図7に示した構成においては、整合器は1つのみ設けられており、かつ混合器は設けられていない。したがって、図6に示した構成に比べれば、ダイポールアンテナD1,D2の出力を合成して取り出す際に生じる損失を小さくできると考えられる。ただし、図7に示した構成では、2つのダイポールアンテナが同一直線(直線X)上に配置されているので、これらを接続する平衡線路36が長くなりやすい。平衡線路36が長くなると、平衡線路36が外部からのノイズを受信するという問題や、平衡線路36から電力が放射される(すなわち、合成されたダイポールアンテナD1,D2の出力が低下する)という問題が起こりうる。
図3から図5に示すように、実施の形態1に係るアンテナ装置100では、外部導体12Aの端部18Aおよび外部導体12Bの端部18Bによって給電部2が構成され、かつ、給電線路4(具体的には同軸ケーブル)がその給電部2に接続される。これにより、各ダイポールアンテナに対応して設けられる整合器、および、2つのアンテナの出力を合成するための混合器を不要とすることができる。したがって整合器および混合器において生じる損失に起因するアンテナ装置の出力の低下を回避できる。
さらに、スリーブアンテナ1A,1Bの各々の中央導体は接続部3により電気的に接続される。中央導体11A,11Bの後端同士(端部15A,15B)を近接して配置することにより、これらの端部を接続する接続部3の長さを短くできる。したがって、図7に示した構成により生じる問題、すなわち、2つのアンテナに給電する給電線路が外部からのノイズを受信する可能性や、その給電線路から電力が放射される(したがって合成されたアンテナの出力が低下する)可能性を小さくできる。
実施の形態1に係るアンテナ装置100は、以上説明した効果を有することにより、複数のダイポールアンテナの出力を合成する一般的な方法に比較して、アンテナ装置の特性を高めることが可能になる。以下では、特性の代表例として利得の周波数特性を示すことにより、実施の形態1に係るアンテナ装置100が図6に示したアンテナ装置よりも優れた特性を有することを説明する。
利得の周波数特性の測定に用いたアンテナ装置は日本におけるUHF(Ultra High Frequency)テレビ放送の周波数帯(470〜770MHz)の電波が送受信可能なように構成されたものであり、具体的には、図6に示すダイポールアンテナD1,D2および図3等に示すスリーブアンテナ1A,1Bの長さを上記周波数帯に応じて設計したものである。なお上記周波数帯は、日本における地上デジタル放送の周波数帯(470〜710MHz)を含む。
図8は、図6に示したアンテナ装置の具体的な寸法を示した図である。図8を参照して、ダイポールアンテナD1,D2の各々の直線X方向の長さは約0.6λである。
図9は、実施の形態1に係るアンテナ装置100の具体的な寸法を示した図である。図9を参照して、中央導体11A(11B)の端部14A(14B)から外部導体12A(12B)の端部17A(17B)までの長さ、およびスリーブ導体13A(13B)の直線X方向の長さは、いずれも約0.27λである。
図10は、図8に示すアンテナ装置(比較例)および図9に示すアンテナ装置100(実施の形態1)の各々の利得の周波数特性の測定結果を示す図である。利得の測定時には周波数範囲を470〜800MHzに設定した。この周波数範囲は日本におけるUHFテレビ放送の放送電波の周波数帯(470〜770MHz)を含み、したがって日本における地上デジタル放送の放送電波の周波数帯(470〜710MHz)を含む。
図10を参照して、曲線C1は、図9に示したアンテナ装置100の利得の周波数特性を示し、曲線C2は、図8に示したアンテナ装置の利得の周波数特性を示す。曲線C1,C2は、470〜800MHzの範囲において、実施の形態1に係るアンテナ装置100の利得が、比較例の利得よりも総じて高いことを示している。
さらに、図8および図9から、本実施の形態に従うアンテナ装置は、比較例よりも小型化されていることが分かる。すなわち本実施の形態に従うアンテナ装置は、ダイポールアンテナをスタック構成することにより構成されたアンテナ装置に比較して、高い性能を有するとともに小型化も可能である。
なお上記説明においては、給電部2は外部導体12Aの端部18Aおよび外部導体12Bの端部18Bにより構成され、接続部3は、中央導体11Aの後端(端部15A)および中央導体11Bの後端(端部15B)を接続するものであるとした。しかし実施の形態1に係るアンテナ装置においては、給電部および接続部の構成はこのように限定されるものではないことを、図11から図13を参照しつつ説明する。
図11は、実施の形態1に係るアンテナ装置の変形例であるアンテナ装置101の外観模式図である。図12は、図11に示したアンテナ装置101の正面図である。図13は、図12のXIII−XIII線断面模式図である。図11から図13を参照して、アンテナ装置101においては、給電部2は、中央導体11Aの後端(端部15A)および中央導体11Bの後端(端部15B)により構成され、接続部3は、外部導体12Aの端部18Aおよび外部導体12Bの端部18Bを接続する。この点でアンテナ装置101はアンテナ装置100と異なる。アンテナ装置101の他の部分の構成については、アンテナ装置100の対応する部分の構成と同様である。
給電線路4を構成する導線4A,4Bは、中央導体11Aの後端(端部15A)および中央導体11Bの後端(端部15B)にそれぞれ接続される。外部導体12A,12Bの各々には、その直径方向に貫通孔が形成される。導線4A,4Bは、外部導体12A,12Bにそれぞれ形成された貫通孔に通されることにより、中央導体11A,11Bにそれぞれ接続される。図11〜図13に示した構成では接続部3は、外部導体12A,12Bと一体化されているが、接続部3は、別々に設けられた外部導体12A,12Bを物理的かつ電気的に接続するものでもよい。
アンテナ装置101においては、給電部2は外部導体12A,12Bおよび接続部3によって囲まれることでシールドされる。これにより、アンテナ装置101は外部のノイズの影響を受けにくくなるので、その特性をアンテナ装置100よりも高めることが可能である。
[実施の形態2]
図14は、実施の形態2に係るアンテナ装置102の外観模式図である。図14および図3を参照して、アンテナ装置102は反射器41をさらに備える点においてアンテナ装置100と異なる。アンテナ装置102の他の部分の構成については、アンテナ装置100の対応する部分の構成と同様である。
反射器41は、導体により構成される無給電素子であればよく、その形状は特に限定されない。図14には、反射器41の一実施形態として金属板を示しているが、反射器41には、たとえば金属棒、金属線、金属グリッド等を用いることもできる。
反射器41を設けることにより、アンテナ装置102の前後比を高めることができる。「前後比」とは、指定方向(角度0°の方向、以下では「前方」とも呼ぶ)の放射電界と、その方向に対して180°±60°の範囲(以下では角度180°の方向を「後方」とも呼ぶ)の方向にある最大放射電界との比と定義される。前後比が高いことは、アンテナ装置102の前方の利得が大きくなり、したがってアンテナ装置102の指向性がその前方に強くなることを示している。
実施の形態1と同様に、アンテナ装置102は受信アンテナおよび送信アンテナのいずれにも適用可能である。アンテナ装置102を受信アンテナとして用いる場合、反射器41は、アンテナ装置101の前方から到来した電波W1を反射する。反射器41の前方(電波W1の到来方向)にアンテナユニット20を配置することによって、アンテナユニット20は、到来した電波W1を直接的に受信するだけでなく、反射器41により反射された電波W1も受信することができる。さらにアンテナ装置102の後方から到来する電波は反射器41によって遮られる。したがって、アンテナ装置102を受信アンテナとして用いた場合に、反射器41によってアンテナ装置102の前後比を高めることができる。
同様に、アンテナ装置102を送信アンテナとして用いる場合、反射器41がアンテナユニット20から放射された電波W2を反射することによって、アンテナ装置102の前方に放射される電力が大きくなる。したがって、アンテナ装置102を送信アンテナとして用いた場合にも反射器41によりアンテナ装置102の前後比を高めることができる。
反射器41の寸法の例および、その反射器41を含むアンテナ装置102の特性について説明する。図15は、反射器41の寸法の具体例を示した図である。図15を参照して、反射器41は長方形状の反射面41aを有する金属板である。反射面41aの長辺の長さは約1.3λであり、短辺の長さは約0.5λである。また、直線X(中央導体11A,11Bの中心軸とする)から反射面41aまでの距離は約110mmである。スリーブアンテナ1A,1Bの寸法については、図9に示した寸法と同じであるので、以後の説明は繰返さない。
図15に示すように、アンテナ装置102の特性の測定のため、給電部2を給電線路4を介して整合器42に接続した。この場合の給電線路4は平衡線路である。整合器42の2つの出力端子の一方に同軸ケーブルの外部導体を接続し、他方に同軸ケーブルの内部導体を接続してアンテナ装置100の出力を取り出した。
図16は、図15に示した構成を有するアンテナ装置102の利得およびVSWRの周波数特性の測定結果を示した図である。図16を参照して、曲線C3は利得の周波数特性の測定結果を示し、曲線C4はVSWRの周波数特性の測定結果を示す。図16の曲線C3と図10の曲線C1との比較から、反射器41を設けることによってアンテナ装置102の前方の利得が高められることが分かる。また図16は、利得が高くなるにつれてVSWRが低くなることを示している。
図17は、図15に示した構成を有するアンテナ装置102の水平面指向性の測定結果を示した図である。指向性の測定に際し、周波数は470〜800MHzの範囲内の値を選択した。図17は、0°方向の電界強度が180°±60°の範囲内の電界強度に比べて顕著に大きいこと、すなわち前後比が大きいことを示している。
以上のように、実施の形態2に係るアンテナ装置は、実施の形態1に係るアンテナ装置の構成要素に加えて反射器を備える。これによって、実施の形態1に係るアンテナ装置による効果と同様の効果を得ることができるだけでなく、そのアンテナ装置の前後比を高めることができるという効果も有する。
[実施の形態3]
図18は、実施の形態3に係るアンテナ装置103の外観模式図である。図18および図3を参照して、アンテナ装置103は導波器44をさらに備える点においてアンテナ装置100と異なる。アンテナ装置103の他の部分の構成については、アンテナ装置100の対応する部分の構成と同様であるので、以後の説明は繰返さない。
導波器44は、導体により構成される無給電素子である。多くの場合、導波器44は線状あるいは棒状の導体が用いられる。したがって図18には、導波器44として棒状の導体を示してある。ただし本実施の形態においては、導波器44の形状は特に限定されるものではない。
実施の形態1,2と同様に、アンテナ装置103は受信アンテナおよび送信アンテナのいずれにも適用可能である。アンテナ装置103を受信アンテナとして用いる場合、導波器44は、アンテナ装置103の前方から到来した電波W1をアンテナ装置103(アンテナユニット20)に導く役割を果たす。アンテナ装置103を送信アンテナとして用いる場合、導波器44は、アンテナユニット20から放射された電波をアンテナ装置103の前方(略0°の方向)に導く役割を果たす。このように導波器44を設けることにより、実施の形態2と同様に、アンテナ装置103の指向性をアンテナ装置103の前方に強めることができる。
実施の形態3に係るアンテナ装置の構成は図18に示したものに限定されない。以下、実施の形態3の変形例について説明する。
図19は、実施の形態3に係るアンテナ装置の第1の変形例を示す図である。図19を参照して、アンテナ装置103Aは、導波器45をさらに備える点においてアンテナ装置103と異なる。このように導波器の数は1つに限定されず複数でもよい。導波器の数を増やすほど、アンテナ装置の前方(略0°の方向)に鋭い指向性を得ることができる。
図20は、実施の形態3に係るアンテナ装置の第2の変形例を示す図である。図20を参照して、アンテナ装置103Bは、反射器41をさらに備える点でアンテナ装置103と異なる。アンテナユニット20は、1つの放射器とみなすことができるので、アンテナ装置103Bは、八木式アンテナと等価な構成を有する。アンテナユニット20を八木式アンテナの放射器に用いることで、従来品と素子数が同じでありながら、従来品よりも高性能な八木式アンテナを実現することができる。
[実施の形態4]
実施の形態4に係るアンテナ装置は、2つのスリーブアンテナを直列接続した(2列スタック構成を有する)アンテナユニットを複数備える。
図21は、実施の形態4に係るアンテナ装置104の外観模式図である。図21および図3を参照して、アンテナ装置104は、アンテナユニット20A,20Bを備える。アンテナユニット20A,20Bの各々の構成はアンテナユニット20の構成と同様であり2つのスリーブアンテナ1A,1Bを直列接続した(2列にスタックした)構成を有する。すなわち、アンテナ装置104は、スリーブアンテナを2列および2段にスタックした構成を備えている。
アンテナユニット20A,20Bは、給電線路4により接続される。実施の形態4においては、給電線路4は平衡線路である。導線4Aにより、アンテナユニット20A,20Bの外部導体12Aの端部18A同士が接続され、導線4Bにより、アンテナユニット20A,20Bの外部導体12Bの端部18B同士が接続される。導線4A,4Bの各中点にそれぞれ位置する給電端子T1,T2がアンテナ装置104の給電端子となる。すなわち、アンテナ装置104は、アンテナユニット20A,20Bが同相給電されるように構成される。なお図21に示したアンテナ装置104は、アンテナユニット20A,20Bが同相給電されることにより、紙面に対して略垂直方向に電波を送信(または受信)する。
アンテナユニット20Aに含まれる中央導体11A,11Bおよびアンテナユニット20Bに含まれる中央導体11A,11Bは、いずれも同じ方向に延在する。アンテナユニット20Aに含まれる中央導体11A,11Bの中心軸と、アンテナユニット20Bに含まれる中央導体11A,11Bの中心軸との間隔をaとする。aの値は、アンテナユニット20A,20Bを同相給電するための適切な値に設定される。
一般に、1つのスリーブアンテナのインピーダンスは約75Ωである。各アンテナユニットでは、2つのスリーブアンテナが電気的に直列に接続されているため、各アンテナユニットの給電部2におけるインピーダンスは約150Ωとなる。実施の形態4では、約150Ωのインピーダンスを有する2つのアンテナユニットを、給電線路4により電気的に並列に接続する。さらに給電線路4は約150Ωのインピーダンスを有する。この結果、端子T1,T2におけるインピーダンス(合成インピーダンス)は約75Ωとなる。これにより、75Ωのインピーダンスを有する同軸ケーブルを端子T1,T2に直接的に接続することができる。したがって、図21に示した構成によれば整合器を不要とすることができるので整合器による損失を防ぐことができる。よって、実施の形態1から3と同様に、実施の形態4によればアンテナ装置の特性を良好とすることが可能になる。
次に、図21に示したアンテナ装置104の特性の測定結果を説明する。なお、測定の対象となるアンテナ装置104では、アンテナユニット20A,20Bの各々のサイズは図9に示したサイズと同じである。また、上記aの値を約140mmに設定した。
図22は、図21に示した構成を有するアンテナ装置104の利得およびVSWRの周波数特性の測定結果を示した図である。なお利得およびVSWRの測定における周波数範囲を470〜800MHzに設定した。図22を参照して、曲線C5は、利得の周波数特性の測定結果を示し、曲線C6は、VSWRの周波数特性の測定結果を示す。図22の曲線C5および図10の曲線C1から、実施の形態4に係るアンテナ装置104の利得は、実施の形態1に係るアンテナ装置100の利得よりも総じて高いことが分かる。すなわち、実施の形態4では、実施の形態1に係るアンテナユニットを2段にスタックすることにより、実施の形態1に係るアンテナ装置よりも高利得のアンテナ装置を実現できる。
図23は、図21に示した構成を有するアンテナ装置104の水平面指向性の測定結果を示した図である。なお、「水平面」とは図21の紙面に対して略垂直な面である。また、指向性の測定に際し、周波数は470〜800MHzの範囲内の値を選択した。図23を参照して、0°方向および180°方向は図21に示した0°方向および180°方向にそれぞれ対応する。0°方向の電界強度と180°方向の電界強度とは同程度である。
なお、2つのアンテナユニットは逆相給電されてもよい。図24は、実施の形態4に係るアンテナ装置104Aの外観模式図である。図24および図21を参照して、アンテナ装置104Aは、給電線路4の接続の点においてアンテナ装置104と異なる。アンテナ装置104Aでは、アンテナユニット20A,20Bを接続する給電線路4をその途中で交差させる。すなわち、導線4Aは、アンテナユニット20A側の外部導体12Bの端部18Bと、アンテナユニット20B側の外部導体12Aの端部18Aとを接続し、導線4Bは、アンテナユニット20A側の外部導体12Aの端部18Aと、アンテナユニット20B側の外部導体12Bの端部18Bとを接続する。給電線路4のインピーダンスは約150Ωである。
アンテナユニット20A側の点P1,P2(給電点)は、図21の給電端子T1,T2にそれぞれ対応する。aの値を適切に設定し、かつ導線4A,4Bを途中で交差させてアンテナユニット20A,20Bを接続することによりアンテナユニット20A,20Bは逆相接続される。さらに、アンテナユニット20A,20Bのうち相対的に前方に位置するアンテナユニット20Aの点P1,P2をアンテナ装置104Aの給電点とすることによって前後のアンテナユニット間に位相差が生じるので前後比を高めることができる。したがって、アンテナ装置104Aの前方(0°方向)の指向性を強くすることができる。
図24に示したアンテナ装置104Aの特性の測定結果について説明する。なお測定に用いたアンテナ装置104Aでは、アンテナユニット20A,20Bの間隔を示すaの値を約140mmとした。また、アンテナユニット20A,20Bの各々は、図9に示したアンテナ装置100(アンテナユニット)と同じサイズを有する。図25は、図24に示した構成を有するアンテナ装置104Aの利得およびVSWRの周波数特性の測定結果を示した図である。図25を参照して、曲線C7は、利得の周波数特性の測定結果を示し、曲線C8は、VSWRの周波数特性の測定結果を示す。図24に示した構成によれば、概ね470〜680MHzの範囲において高い利得(概ね2dB以上)が得られる。
図26は、図24に示した構成を有するアンテナ装置104Aの水平面指向性の測定結果を示した図である。なお、アンテナ装置104Aにおける「水平面」とは図24の紙面と平行な面である。図26を参照して、0°方向および180°方向は図24に示した0°方向および180°方向にそれぞれ対応する。図26から、アンテナ装置104Aは高い前後比を有することが分かる。
このように実施の形態4によれば、2つのスリーブアンテナを直列接続することにより構成されたアンテナユニットを複数備え、かつこれらを同相給電あるいは逆相給電する。これにより、同軸ケーブルをアンテナ装置に直接的に接続することが可能になるので、整合器あるいは混合器等を不要とすることができる。実施の形態4によれば、整合器あるいは混合器において損失が生じることを回避できるので、アンテナ装置の特性を良好とすることができる。
なお、実施の形態1から3と同様に、実施の形態4に係るアンテナ装置は、受信アンテナおよび送信アンテナのいずれにも適用可能である。
[実施の形態5]
実施の形態5に係るアンテナ装置は、スリーブアンテナの形状の点において実施の形態1と相違する。
図27は、実施の形態5に係るアンテナ装置に含まれるスリーブアンテナ50の構成を説明する外観模式図である。図28は、図27に示したスリーブアンテナ50の側視図である。
図27および図28を参照して、外部導体12およびスリーブ導体13は中央導体11を介して対向する2つの金属板により構成される。この点においてスリーブアンテナ50は、図1に示したスリーブアンテナ1と相違する。なお、図27および図28では、スリーブアンテナ1の構成要素と同じ構成要素には、スリーブアンテナ1の構成要素と同一の符号を付してある。
スリーブアンテナ50は、幅広部51と導線部52とを有する中央導体11を含む。幅広部51は、端部14を有するとともに導線部52に接続される。導線部52は端部15を有する。導線部52の延在方向をX方向とし、X方向に直交する方向をY方向とすると、幅広部51のX方向の幅は導線部52のY方向の幅よりも大きい。
中央導体11は、1枚の金属板により形成される。すなわち幅広部51と導線部52とは一体的に形成されている。幅広部51を備えることにより、スリーブアンテナ50の特性を良好とすることが可能になる。
スリーブアンテナ50は、さらに、外部導体53およびスリーブ導体54を含む。外部導体53およびスリーブ導体54は、1枚の金属板を、折曲部55,56において略直角に折り曲げることにより形成される。上記金属板の主表面のうち端部57から折曲部55までの部分である面58は、中央導体11の導線部52に対向する。
スリーブアンテナ50は、さらに、外部導体61およびスリーブ導体62を含む。外部導体61およびスリーブ導体62は、1枚の金属板を、折曲部63,64において略直角に折り曲げることにより形成される。また、上記金属板の主表面のうち端部65から折曲部63までの部分である面66は、中央導体11の導線部52に対して金属板の面58と反対側に位置し、かつ導線部52と対向する。
なお導線部52と外部導体53との間および導線部52と外部導体61との間には、これらを互いに電気的に絶縁するための絶縁板あるいは絶縁シートが配置されてもよい。
スリーブアンテナ50の構成要素と図1のスリーブアンテナ1の構成要素との対応について説明する。外部導体53,61は、外部導体12に対応する。また、スリーブ導体54,62は、スリーブ導体13に対応する。面58,66は、外部導体12の内表面(面16)に対応する。折曲部55,63は外部導体12の端部17に対応する。端部57,65は外部導体の端部18に対応する。
図28に、スリーブアンテナ50の給電の一形態を示す。同軸ケーブル46の内部導体46Aは中央導体11の端部15(導線部52の端部)に電気的に接続され、同軸ケーブル46の外部導体46Bは、外部導体12の端部18、すなわち外部導体53の端部57および外部導体61の端部65に電気的に接続される。
図27に、スリーブアンテナ50の寸法を規定するためのパラメータを示す。Laは、幅広部51のY方向の長さであり、Lbは、幅広部51のX方向の長さである。Lcは、面58,66のX方向の長さである。Leは、外部導体53,61およびスリーブ導体54,62のY方向の長さ(すなわち外部導体およびスリーブ導体を構成する金属板のY方向の長さ)である。
図29は、図27および図28に示したスリーブアンテナ50の利得の周波数特性の測定結果を示す図である。なお、この測定に用いたスリーブアンテナ50は、日本におけるUHFテレビ放送の周波数帯の電波が送受信可能なように構成されたものであり、上記の各パラメータを次の通りに設定した。
La:約0.1λ、Lb:約0.27λ、Lc:約0.3λ、Le:約0.1λ
また、利得の測定における周波数範囲を470〜800MHzに設定した。図29を参照して、470〜800MHzの周波数範囲において、スリーブアンテナ50の利得は概ね0(dB)である。
図30は、実施の形態5に係るアンテナ装置105の外観模式図である。図31は、図30に示したアンテナ装置105の側面図である。図30および図31を参照して、アンテナ装置105は、アンテナユニット20に代えて、スリーブアンテナ50A,50Bを含むアンテナユニット20Cを備える点で、図3に示したアンテナ装置100と相違する。スリーブアンテナ50A,50Bは、互いに離間して直線X上に配置され、直線Yに対して互いに対称な形状を有する。
スリーブアンテナ50A,50Bの各々は、図27および図28に示すスリーブアンテナ50と同じ構成を有する。図27、図28において、その末尾が「A」または「B」である符号が付された要素は、その符号から「A」または「B」を除いた符号が付されたスリーブアンテナ50の構成要素と同一である。また、アンテナ装置105の構成要素のうちアンテナ装置100と同一の構成要素には、それと同一の符号を付してある。スリーブアンテナ50A,50Bの各々の配置関係についても、スリーブアンテナ1A,1Bの配置関係と同様である。したがって、スリーブアンテナ50A,50Bの各構成要素およびスリーブアンテナ50A,50Bの配置に関する詳細な説明は以後繰返さない。
給電部2は、互いに離間しかつ対向する外部導体12Aの端部18Aと外部導体12Bの端部18Bとにより構成される。外部導体12Aの端部18Aの位置には導電体による短絡部5Aが設けられ、外部導体53A,61Aは短絡部5Aによって物理的かつ電気的に接続される。同様に外部導体12Bの端部18Bの位置には導電体による短絡部5Bが設けられ、外部導体53B,61Bは短絡部5Bによって物理的かつ電気的に接続される。給電線路4を構成する導線4A,4Bは、短絡部5A,5Bにそれぞれ接続される。
接続部3は、中央導体11Aの端部15Aと中央導体11Bの端部15Bとを電気的に接続する。なお、実施の形態5では中央導体11A,11Bおよび接続部3が1つの金属板により形成されるため、これらが一体化されている。ただし、実施の形態1と同様に、別々に設けられた中央導体11A,11Bを、接続部3によって物理的かつ電気的に接続する構成であってもよい。
図31に、アンテナ装置105の給電の一形態を示す。給電線路4を介して取り出されたアンテナユニット20Cの出力は整合器38に入力される。整合器38の2つの出力端子の一方は同軸ケーブル46の内部導体46Aに電気的に接続される。整合器38の他方の出力端子は、同軸ケーブル46の外部導体46Bに電気的に接続される。なおアンテナ装置105の給電形態は図31に示した形態に限定されるものではない。
このように、実施の形態5に係るアンテナ装置105は、金属板を加工することにより形成されたスリーブアンテナ50A,50Bを備える。実施の形態1によれば、スリーブアンテナを形成するためには、たとえば同軸線路の外部導体を、中央導体の先端からλ/4だけ除去し、さらに、λ/4の長さ分外側に折り返す(同軸線路が同軸ケーブルである場合、このような加工に際しては、シースと一般に呼ばれる外皮も除去する必要がある)ため、多くの工数が必要になる。実施の形態5によれば、金属板を所定の形状に予め加工された金属板を組み合わせることによりスリーブアンテナを形成することができるので、スリーブアンテナを形成するための工数(および製造コスト)を少なくできる。したがって実施の形態5によれば、実施の形態1に係るアンテナ装置に比較して、生産性を高めることができる。
図32は、図30および図31に示したアンテナ装置105の利得の周波数特性の測定結果を示した図である。なお、この測定に用いたアンテナ装置105に含まれるスリーブアンテナ50A,50Bの各々の寸法に関するパラメータLa,Lb,Lc,Leの数値は、上述の値と同じである。また、利得の測定における周波数範囲を470〜800MHzに設定した。図32を参照して、470〜800MHzの周波数範囲において、アンテナ装置105の利得は概ね1(dB)から2(dB)までの間である。図29と図32とを比較すれば分かるように、2つのスリーブアンテナを直列に接続する(2列にスタック)することで、アンテナ装置105の利得が高められる。
なお、アンテナ装置105は、受信アンテナおよび送信アンテナのいずれにも適用可能である。また、実施の形態2,3と同様に、実施の形態5に係るアンテナ装置は、アンテナユニット20Cに加えて、反射器および/または少なくとも1つの導波器を備えていてもよい。
図33は、実施の形態5に係るアンテナ装置の変形例であるアンテナ装置105Aの構成を示した図である。図33を参照して、アンテナ装置105Aは、アンテナユニット20C,20Dを備える。アンテナユニット20C,20Dの各々は、スリーブアンテナ50A,50Bを備える。アンテナユニット20C,20Dの各々は、中央導体11Aの端部15Aおよび中央導体11Bの端部15Bにより給電部2が構成され、かつ、短絡部5A,5Bが設けられていない点においてアンテナユニット20と異なるが、他の部分の構成については図30に示したアンテナユニット20Cの構成と同様である。なおアンテナ装置105Aは、受信アンテナおよび送信アンテナのいずれにも適用可能である。
実施の形態4に係るアンテナ装置104と同様に、アンテナユニット20C,20Dは、給電線路4により接続される。導線4Aにより、アンテナユニット20C,20Dの中央導体11Aの端部15A同士が接続され、導線4Bにより、アンテナユニット20C,20Dの外部導体11Bの端部15B同士が接続される。導線4A,4Bの各中点にそれぞれ位置する給電端子T1,T2がアンテナ装置105Aの給電端子となる。すなわち、アンテナ装置104と同様に、アンテナ装置105Aは、アンテナユニット20C,20Dが同相給電されるように構成される。
なおアンテナユニット20C,20Dの各々において、スリーブアンテナ50A,50Bの外部導体12の端部同士は電気的に接続されていないが、これらを導電体によって接続してもよい。この導電体は、外部導体12の端部同士を接続する接続部に相当する。ただし、より優れた特性を得るという点からは、図33に示したように、スリーブアンテナ50A,50Bの外部導体12の端部同士を電気的に接続していない構成が好ましい。
図33には、アンテナ装置105Aの寸法に関し、上記のパラメータLa,Lb,Lc,Leに加えてパラメータDdを示してある。Ddは、2つのスリーブアンテナ50Aの幅広部51A間の最短距離(2つのスリーブアンテナ50Bの幅広部51B間の最短距離)を示す。以下に、これらのパラメータLa,Lb,Lc,Le,Ddの具体例を示す。
La:約0.1λ、Lb:約0.19λ、Lc:約0.23λ、Le:約0.1λ、Dd:約0.1λ
次に、上記のように各パラメータを設定することにより構成されたアンテナ装置105Aの利得の周波数特性について説明する。なお、利得の測定における周波数範囲を470〜800MHzに設定した。図34は、アンテナ装置105Aの利得の周波数特性の測定結果を示した図である。図34を参照して、アンテナ装置105Aの利得は、470〜約620MHzの周波数範囲において概ね1(dB)から2(dB)までの間であり、約620〜800MHzの周波数範囲において、概ね2(dB)から4(dB)までの間である。図34と図32とから、アンテナ装置105Aの利得は、アンテナ装置105の利得よりも総じて高いことが分かる。すなわち、実施の形態5によれば、実施の形態4と同様にアンテナユニットを2段にスタックすることにより、高利得のアンテナ装置を実現できる。
なお、実施の形態2から4の各々に係るアンテナ装置では、互いに離間しかつ対向する外部導体の端部により給電部が構成されるものと限定されず、互いに離間しかつ対向する内部導体の端部により給電部が構成されてもよい。同様に、実施の形態5に係るアンテナ装置では、互いに対向する離間しかつ対向する外部導体の端部により給電部が構成されてもよいし、2つのアンテナユニットを逆相給電してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,1A,1B,50,50A,50B スリーブアンテナ、2 給電部、3 接続部、4 給電線路、4A,4B 導線、5A,5B 短絡部、10,10A,10B 同軸導体、11,11A,11B 中央導体、12,12A,12B,46B,53,61,53A,61A,53B,61B 外部導体、13,13A,13B,54,62 スリーブ導体、14,15,17,18,14A,14B,15A,15B,17A,17B,18A,18B,57,65 端部、16,16A,16B,58,66 面、20,20A〜20D アンテナユニット、31,33,37,38,42 整合器、32,34,46 同軸ケーブル、35 混合器、36 平衡線路、41 反射器、41a 反射面、44,45 導波器、46A 内部導体、51,51A,51B 幅広部、52 導線部、55,56,63,64 折曲部、100〜105,103A,103B,104A,105A アンテナ装置、C1〜C8 曲線、D1,D2 ダイポールアンテナ、P1,P2 点、T1,T2 給電端子、W1,W2 電波、X,Y 直線。