しかしながら、上述のエンジン始動制御装置では、エンジン停止中に吸気行程で止まっていた気筒のピストン停止位置によっては、始動クランキングを開始しても、最初の吸気行程で混合気を気筒内へ十分に吸入しないために失火することがあり、エンジンの始動時間を短縮できないことがあった。また、失火時には未燃焼ガスが排出されるため、エミッションが悪化するという問題点があった。更に、エンジン停止中に吸気行程で止まっていた気筒のピストン停止位置によっては、最初の吸気行程で混合気を気筒内へ十分に吸入しないために該気筒で形成される混合気の状態が燃焼に適した状態でないことがあり、この場合には、混合気が燃焼に適した状態のときと比べて発生するトルクが小さくなる。このため、エンジン停止中に吸気行程で止まっていた気筒のピストン停止位置によって始動時に発生するトルクが異なってしまい、この結果、エンジンを始動する度に始動時のトルクが略一定にならず安定しないという問題があった。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、エンジン始動時の失火頻度を抑制してエンジンの始動性を向上させることを目的の一つとする。また、エンジン始動時のエミッションの悪化を防ぐことを目的の一つとする。更に、エンジン始動時に発生するトルクを安定させてエンジンの始動時のドライバビリティを向上させることを目的の一つとする。
本発明は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
即ち、本発明のエンジン始動制御装置は、
エンジンの停止中に所定のエンジン始動条件が成立したとき、吸気行程で止まっている気筒に装着された燃料噴射手段が該気筒の吸気ポートへ燃料を噴射するよう制御し、その後該気筒でエンジン始動時の最初の燃焼が行われるよう制御するエンジン始動制御装置であって、
前記エンジンの停止中に吸気行程で止まっている気筒のピストン停止位置を検出する検出手段と、
前記エンジンの停止中に前記所定のエンジン始動条件が成立したか否かを判定する始動条件判定手段と、
前記始動条件判定手段によって前記所定のエンジン始動条件が成立したと判定されたときには、吸気行程で止まっている気筒の吸気ポートへ噴射すべき燃料量を前記検出手段によって検出されたピストン停止位置に基づいて決定し、該決定した燃料量の燃料を前記燃料噴射手段が噴射するよう制御する燃料噴射制御手段と、
を備えたものである。
このエンジン始動制御装置では、エンジン始動条件が成立したときには、吸気行程で止まっている気筒の吸気ポートへ噴射すべき燃料量を該気筒のピストン停止位置に基づいて決定し、決定した燃料量の燃料を該気筒の吸気ポートに噴射する。このように、エンジン停止中に吸気行程で止まっている気筒のピストン停止位置によって燃料量を変化させるため、該気筒の吸気能力が低いときには燃料量を増加することによって点火時における失火頻度を抑制し、エンジンの始動性を向上させることができる。
本発明のエンジン始動制御装置において、前記燃料噴射制御手段は、吸気行程で止まっている気筒の吸気ポートへ噴射すべき燃料量をピストン停止位置に基づいて決定する際、ピストン停止位置が吸気行程の上死点から所定の中間位置までは予め定めた所定量に燃料量を決定し、前記中間位置から下死点に近づくにつれて燃料量が増加する傾向を示すように燃料量を決定してもよい。ここで、始動クランキングが開始されたときに生じる該気筒の吸気能力は、エンジン停止中のピストン停止位置に応じて差が生じる。従って、ピストン位置に対応して吸気能力が十分あるときには所定量の燃料を噴射し、ピストン停止位置に対応して吸気能力が低いときには燃料量を増加して燃料を噴射する。こうすれば、吸気能力が低く失火する確率が高いときであっても、噴射すべき燃料量を増加することによって失火頻度を抑制し、エンジンの始動性を向上させることができる。
なお、「所定量」は、例えば、通常の走行時の理論空燃比よりも小さい値つまり空燃比が燃料リッチとなるような値を始動時の空燃比として経験的に定めてもよい。また、「所定の中間位置」は、例えば、エンジン停止中に吸気行程で止まっている気筒の吸気ポートへ前記所定量の燃料を噴射したとしても失火の頻度が高いピストン停止位置として経験的に定めればよく、具体的には、吸気行程の上死点から120°又はその近傍(例えば110〜130°)だけ進角したクランク角に対応するピストン停止位置としてもよい。
本発明のエンジン始動制御装置において、前記燃料噴射制御手段は、吸気行程で止まっている気筒の吸気ポートへ噴射すべき燃料量をピストン停止位置に基づいて決定する際、ピストン停止位置が吸気行程の上死点から下死点に近づくにつれて燃料量が増加する傾向を示すように燃料量を決定してもよい。吸気行程で止まっている気筒のピストン停止位置に応じて吸気能力に差が生じるため、吸気能力が低いときには、燃料量を増加することによって失火頻度を抑制し、エンジンの始動性を向上させることができる。
本発明のエンジン始動制御装置において、前記燃料噴射制御手段は、吸気行程で止まっている気筒の吸気ポートへ噴射すべき燃料量をピストン停止位置に基づいて決定する際、ピストン停止位置が所定の下死点直前位置から下死点までは燃料量をゼロに決定してもよい。ピストン停止位置が所定の下死点直前位置から下死点までにあるときは、始動クランキングを開始しても吸気行程での吸気能力は低く失火する確率が高いことから、この場合には噴射すべき燃料量をゼロにして燃焼をさせないことによりエミッションの悪化を防ぐことができる。
なお、「所定の下死点直前位置」は、例えば、エンジン停止中に吸気行程で止まっている気筒の吸気ポートへ前記所定量以上の燃料を噴射したとしても失火の頻度が高いピストン停止位置として経験的に定めればよく、具体的には、吸気行程の上死点から160°又はその近傍(例えば150〜170°)だけ進角したクランク角に対応するピストン停止位置としてもよい。
本発明のエンジン始動制御装置において、前記始動条件判定手段は、アイドルストップ制御によって前記エンジンが停止している間にエンジン始動条件が成立したか否かを判定し、前記燃料噴射制御手段は、前記アイドルストップ制御によって前記エンジンが停止している間に吸気行程で止まっている気筒の吸気ポートへ前記燃料噴射手段が燃料を噴射するよう制御してもよい。アイドルストップ制御が行われると走行途中に何度もエンジン停止と再始動を繰り返すため、本発明を適用する意義が大きい。
本発明のエンジン始動制御装置は、さらに、エンジン始動時の最初の燃焼が行われたときに失火したか否かを判定する失火判定手段、を備え、前記燃料噴射制御手段は、前記失火判定手段によって失火したと判定されたときには、前記燃焼に用いられなかった残燃料量を推定し、エンジン停止中に吸気行程で止まっていた気筒の吸気ポートに次回噴射すべき燃料量を該推定した残燃料量に基づいて決定し、該決定した燃料量の燃料を前記燃料噴射手段が噴射するよう制御してもよい。エンジン停止時に吸気行程で止まっていた気筒での最初の燃焼の際に失火したときには、吸気ポートに噴射された燃料が気筒内に十分に吸入されなかったことが原因で失火したものとして該気筒内に吸入されなかった吸気ポート内の残燃料量を推定し、この残燃料量に基づいて該気筒の吸気ポートに次回噴射すべき燃料量を決定する。これにより、空燃比が過剰に燃料リッチとなるのを防ぐと共にエミッションの悪化を防ぐことができる。
本発明のエンジン始動制御装置は、
エンジンの停止中に所定のエンジン始動条件が成立したとき、吸気行程で止まっている気筒に装着された燃料噴射手段が該気筒の吸気ポートへ燃料を噴射するよう制御し、その後該気筒でエンジン始動時の最初の燃焼が行われるよう制御するエンジン始動制御装置であって、
エンジン始動時の最初の燃焼が行われたときに失火したか否かを判定する失火判定手段と、
前記失火判定手段によって失火したと判定されたときには、前記燃焼に用いられなかった残燃料量を推定し、エンジン停止中に吸気行程で止まっていた気筒の吸気ポートに次回噴射すべき燃料量を該推定した残燃料量に基づいて決定し、該決定した燃料量の燃料を前記燃料噴射手段が噴射するよう制御する燃料噴射制御手段と、
を備えたものとしてもよい。
このエンジン始動制御装置では、エンジン始動時の最初の燃焼の際に失火したときには、燃焼に用いられなかった残燃料量を推定し、エンジン停止中に吸気行程で止まっていた気筒の吸気ポートに次回噴射すべき燃料量を該推定した残燃料量に基づいて決定し、該決定した燃料量の燃料を燃料噴射手段に噴射させる。エンジン停止時に吸気行程で止まっていた気筒での最初の燃焼の際に失火したときには、吸気ポートに噴射された燃料が気筒内に十分に吸入されなかったことが原因で失火したものとして該気筒内に吸入されなかった吸気ポート内の残燃料量を推定し、この残燃料量に基づいて該気筒の吸気ポートに次回噴射すべき燃料量を決定する。これにより、空燃比が過剰に燃料リッチとなるのを防ぐと共にエミッションの悪化を防ぐことができる。
本発明のエンジン始動制御装置において、前記燃料噴射制御手段は、エンジン停止中に吸気行程で止まっていた気筒の吸気ポートへ次回噴射すべき燃料量を該推定した残燃料量に基づいて決定する際、運転者の要求に応じて決定される燃料量から該推定した残燃焼量を差し引いた燃料量を噴射すべき燃料量として決定してもよい。
本発明のエンジン始動制御装置において、前記燃料噴射制御手段は、燃焼に用いられなかった残燃料量を推定する際、エンジン停止中に吸気行程で止まっていた気筒のピストン停止位置又は初回に噴射した燃料量のうち少なくともいずれか一方に基づいて推定してもよい。即ち、エンジン停止中でのピストン停止位置が下死点に近いほど吸気行程での吸気能力は低く残燃料量は多くなる傾向にあることから、ピストン停止位置を残燃料量に相関するパラメータとして用いることができる。また、同じ吸気能力であれば、噴射した燃料量が多いほど残燃料量は多くなる傾向にあることから、初回に噴射した燃料量を残燃料量に相関するパラメータとして用いることができる。従って、該残燃料量を推定するにあたっては、これらのパラメータを基に予め作成されたマップから推定してもよいし、算出式を使って推定してもよい。
本発明のエンジン始動方法は、
エンジンの停止中に所定のエンジン始動条件が成立したとき、吸気行程で止まっている気筒の吸気ポートへ燃料を噴射するよう制御し、その後該気筒でエンジン始動時の最初の燃焼が行われるよう制御するエンジン始動方法であって、
(a)エンジンの停止中に吸気行程で止まっている気筒のピストン停止位置を検出するステップと、
(b)前記エンジンが停止している間に前記所定のエンジン始動条件が成立したか否かを判定するステップと、
(c)前記ステップ(b)で前記所定のエンジン始動条件が成立したと判定されたときには、吸気行程で止まっている気筒の吸気ポートへ噴射すべき燃料量を前記ステップ(a)で検出されたピストン停止位置に基づいて決定し、該決定した燃料量の燃料を噴射するステップと、
を含むものである。
このエンジン始動方法では、エンジンが停止している間にエンジン始動条件が成立したときに、吸気行程で止まっている気筒の吸気ポートへ噴射すべき燃料量を該気筒のピストン停止位置に基づいて決定し、その燃料量の燃料を該気筒の吸気ポートへ噴射する。このように、エンジン停止中に吸気行程で止まっている気筒のピストン停止位置によって燃料量を変化させるため、該気筒の吸気能力が低いときには燃料量を増加することによって点火時における失火頻度を抑制し、エンジンの始動性を向上させることができる。なお、このエンジン始動方法に上述したエンジン始動制御装置が備えている各種の構成手段の機能を実現するようなステップを追加してもよい。
本発明のエンジン始動方法は、
エンジンの停止中に所定のエンジン始動条件が成立したとき、吸気行程で止まっている気筒の吸気ポートへ燃料を噴射するよう制御し、その後該気筒でエンジン始動時の最初の燃焼が行われるよう制御するエンジン始動方法であって、
(a)エンジン始動時の最初の燃焼が行われたときに失火したか否かを判定するステップと、
(b)前記ステップ(a)で失火したと判定されたときには、前記燃焼に用いられなかった残燃料量を推定し、エンジン停止中に吸気行程で止まっていた気筒の吸気ポートに次回噴射すべき燃料量を該推定した残燃料量に基づいて決定し、該決定した燃料量の燃料を噴射するステップと、
を含むものとしてもよい。
このエンジン始動方法では、エンジンの停止時に吸気行程で止まっていた気筒でエンジン始動時の最初の燃焼が行われた際に失火したときには、燃焼に用いられなかった残燃料量を推定し、エンジン停止中に吸気行程で止まっていた気筒の吸気ポートに次回噴射すべき燃料量を該推定した残燃料量に基づいて決定し、該決定した燃料量の燃料を燃料噴射手段に噴射させる。エンジン停止時での最初の燃焼の際に失火したときには、吸気ポートに噴射された燃料が気筒内に十分に吸入されなかったことが原因で失火したものとして該気筒内に吸入されなかった吸気ポート内の残燃料量を推定し、この残燃料量に基づいて該気筒の吸気ポートに次回噴射すべき燃料量を決定する。これにより、空燃比が過剰に燃料リッチとなるのを防ぐと共にエミッションの悪化を防ぐことができる。なお、このエンジン始動方法に上述したエンジン始動制御装置が備えている各種の構成手段の機能を実現するようなステップを追加してもよい。
本発明のエンジン始動制御装置は、
エンジンの停止中に所定のエンジン始動条件が成立したとき、吸気行程で止まっている気筒に装着された燃料噴射手段が該気筒の吸気ポートへ燃料を噴射するよう制御し、その後該気筒でエンジン始動時の最初の燃焼が行われるよう制御するエンジン始動制御装置であって、
前記エンジンの各気筒内の混合気に点火する点火手段と、
前記エンジンの停止中に吸気行程で止まっている気筒のピストン停止位置を検出する検出手段と、
前記エンジンの停止中に前記所定のエンジン始動条件が成立したか否かを判定する始動条件判定手段と、
前記始動条件判定手段によって前記所定のエンジン始動条件が成立したと判定されたときには、吸気行程で止まっている気筒内の混合気に点火する点火時期を前記検出手段によって検出されたピストン停止位置に基づいて決定し、該決定した点火時期に前記点火手段が点火するよう制御する点火制御手段と、
を備えたものとしてもよい。
このエンジン始動制御装置では、エンジン始動条件が成立して吸気行程で止まっている気筒の吸気ポートへ燃料を噴射したときには、該気筒のピストン停止位置に基づいて該気筒内の混合気に点火する点火時期を変化させる。こうすれば、吸気行程で止まっている気筒のピストン停止位置に対応して該気筒の吸気能力が異なるために該気筒で形成される混合気の状態が異なる場合であっても、該気筒のピストン停止位置に基づいて点火時期を決定するため、始動時に発生する燃焼トルクが安定するよう調整することができ、この結果、エンジン始動時のドライバビリティを向上させることができる。
本発明のエンジン始動制御装置において、前記点火制御手段は、吸気行程で止まっている気筒内の混合気に点火する点火時期をピストン停止位置に基づいて決定する際、ピストン停止位置が吸気行程の上死点から所定の中間位置までは予め定めた所定時期に点火時期を決定し、前記中間位置から下死点に近づくにつれて点火時期が前記所定時期よりも進角する傾向を示すように点火時期を決定するとしてもよい。始動クランキングが開始されたときに生じる該気筒の吸気能力は、エンジン停止中のピストン停止位置に応じて差が生じる。そこで、ピストン停止位置に対応して吸気能力が十分にあり燃焼に適した混合気が形成されるときには予め定めた所定時期に点火し、ピストン停止位置に対応して吸気能力が低く燃焼に適した混合気が形成されにくいときには所定時期よりも早い時期に点火する。こうすれば、吸気能力が低く燃焼に適した混合気が形成されにくいときには、点火時期を変更しないときに比べて大きな燃焼トルクが発生するため、吸気行程で止まっている気筒のピストン停止位置が異なるときにも始動時の燃焼トルクが安定するよう調整することができる。
なお、「所定時期」は任意に設定すればよいが、例えば、圧縮行程の上死点から50°又はその近傍(例えば40〜60°)だけ進角したクランク角に対応する時期としてもよい。また、「所定の中間位置」は、例えば、吸気行程で止まっている気筒の吸気能力が低く燃焼に適した状態の混合気が形成されにくいピストン停止位置として経験的に定めればよく、具体的には、吸気行程の上死点から90°又はその近傍(例えば80〜100°)だけ進角したクランク角に対応するピストン停止位置としてもよい。
本発明のエンジン始動制御装置において、前記点火制御手段は、吸気行程で止まっている気筒内の混合気に点火する点火時期をピストン停止位置に基づいて決定する際、ピストン停止位置が吸気行程の上死点から下死点に近づくにつれて点火時期が進角する傾向を示すように点火時期を決定するとしてもよい。こうすれば、吸気行程で止まっている気筒のピストン停止位置が下死点側に近づくにつれて吸気能力が低くなるために燃焼に適した混合気が形成されにくいときにも始動時の燃焼トルクが安定するよう調整することができる。
本発明のエンジン始動制御装置において、前記始動条件判定手段は、アイドルストップ制御によって前記エンジンが停止している間にエンジン始動条件が成立したか否かを判定するとしてもよい。アイドルストップの制御が行われると走行途中に何度もエンジン停止と再始動とを繰り返すため、本発明を適用する意義が大きい。
本発明のエンジン始動制御装置において、前記検出手段は、前記エンジンのクランク角を検出する第1及び第2クランク角センサを含み、第1クランク角センサから出力されるパルスと第2クランク角センサから出力されるパルスの位相差がクランクシャフトの正回転時と逆回転時で異なるように構成されているとしてもよい。この場合、第1クランク角センサから出力されるパルスに基づいてクランク角を求めるようにし、第1クランク角センサと第2クランク角センサから出力される両パルスの位相差に基づいてクランクシャフトが正回転しているか逆回転しているかを求めるようにすることができる。例えば、クランクシャフトが正回転しているときには、第1クランク角センサからパルスが出力されるごとにパルスのカウント数を加算していきそのカウント数に応じてクランク角を求め、クランクシャフトが逆回転しているときには、第1クランク角センサからパルスが出力されるごとにパルスのカウント数を減算するようにすれば、カウント数に応じてクランク角を求めることができ、ひいてはピストン停止位置を正確に把握することができる。
本発明のエンジン始動方法は、
エンジンの停止中に所定のエンジン始動条件が成立したとき、吸気行程で止まっている気筒の吸気ポートへ燃料を噴射するよう制御し、その後該気筒でエンジン始動時の最初の燃焼が行われるよう制御するエンジン始動方法であって、
(a)エンジンの停止中に吸気行程で止まっている気筒のピストン停止位置を検出するステップと、
(b)前記エンジンが停止している間に前記所定のエンジン始動条件が成立したか否かを判定するステップと、
(c)前記ステップ(b)で前記所定のエンジン始動条件が成立したと判定されたときには、吸気行程で止まっている気筒内の混合気に点火する点火時期を前記ステップ(a)で検出されたピストン停止位置に基づいて決定し、該決定した点火時期に点火するステップと、
を含むものとしてもよい。
このエンジン始動方法では、エンジン始動条件が成立して吸気行程で止まっている気筒の吸気ポートへ燃料を噴射したときには、該気筒のピストン停止位置に基づいて該気筒内の混合気に点火する点火時期を変化させる。こうすれば、吸気行程で止まっている気筒のピストン停止位置に対応して該気筒の吸気能力が異なるために該気筒で形成される混合気の状態が異なる場合であっても、該気筒のピストン停止位置に基づいて点火時期を決定するため、始動時に発生する燃焼トルクが安定するよう調整することができ、この結果、エンジン始動時のドライバビリティを向上させることができる。なお、このエンジン始動方法に上述したエンジン始動制御装置が備えている各種の構成手段の機能を実現するようなステップを追加してもよい。
本発明のエンジン始動制御装置を搭載した車両は、本発明のエンジン始動制御装置を搭載しているため、エンジン始動時の失火頻度を抑制してエンジンの始動性を向上させることができる。また、エンジン始動時のエミッションの悪化を防ぐことができる。更に、エンジン始動時に発生するトルクを安定させてエンジン始動時のドライバビリティを向上させることができる。
[第1実施形態]
次に、本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態であるアイドルストップ機能を備えた自動車20の構成の概略を示す説明図である。本実施形態のアイドルストップ機能を備えた自動車20は、ガソリンにより駆動するエンジン30と、エンジン30の各気筒31の吸気ポート36に燃料を噴射するインジェクタ32と、エンジン30の各気筒内の混合気に点火する点火プラグ33と、エンジン30を始動させるスタータモータ26と、エンジン30をコントロールするエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)70とを備える。
エンジン30は、本実施形態では4気筒エンジンであり、各気筒31は、吸気通路22のうち吸気バルブ34の手前に設けられた吸気ポート36にインジェクタ32がガソリンを噴射するポート式として構成されている。ここで、図示しないエアクリーナ及びスロットルバルブを介して吸気通路22に吸入された空気は、吸気ポート36でインジェクタ32から噴射されたガソリンと混合されて混合気となる。この混合気は、吸気バルブ34を開くことにより燃焼室37へ吸入され、点火プラグ33のスパークによって点火されて爆発燃焼し、その燃焼エネルギによりピストン38が往復運動して、クランクシャフト41を回転運動させる。そして、燃焼後の排ガスは、排気バルブ35を開くことにより燃焼室37から排気通路24に排出される。ここで、エンジン30の各気筒は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程(燃焼行程ともいう)、排気行程を1サイクルとしてこのサイクルを順次繰り返すものであり、クランクシャフト41が2回転つまり720°回転するごとに1サイクル進む。また、4つの気筒の点火タイミングは本実施形態では1番気筒、2番気筒、4番気筒、3番気筒という順であり、従って、例えば、1番気筒が膨張行程にあるとき、2番気筒は圧縮行程、3番気筒は排気行程、4番気筒は吸気行程となる。図2にクランク角CAと各気筒31の行程との対応関係を表す。図2において、縦軸は各気筒31のピストン38の位置Pを表し、TDCは上死点,BDCは下死点を表す。
エンジン30のクランクシャフト41の端には、エンジン30の本体外側に露出した状態でフライホイール28が備えられている。このフライホイール28の外周には外歯歯車が刻まれており、エンジン始動時にはスタータモータ26の回転軸の先端に設けられた外歯歯車とフライホイール28の外歯歯車が噛み合って始動クランキングが行われる。
エンジン30の各気筒31の吸気バルブ34は、下端にテーパ状の弁体34aを有するステム34bと、このステム34bの上端に接合された円筒状のリフタ34cと、リフタ34cとシリンダヘッドのステイ34dとの間に配置されステイ34dに対してリフタ34cを離間させる方向に付勢するスプリング34eとを備え、リフタ34cは吸気カム39のカム面と当接している。また、吸気カム39は吸気カムシャフト40に固設されており、吸気カムシャフト40はクランクシャフト41が2回転すると1回転するように図示しないタイミングベルトによってクランクシャフト41と連結されている。そして、吸気カム39は吸気カムシャフト40の軸回転に伴って回転し、吸気バルブ34は回転する吸気カム39のカム面に追従して作動する。具体的には、吸気カム39のカム面がリフタ34cを押し下げないときにはスプリング34aの付勢力によって吸気バルブ34は閉じており、吸気カム39のカム面がスプリング34aの付勢力に抗してリフタ34cを押し下げたときには弁体34aが吸気口の周縁から離間して吸気バルブ34は開く。なお、排気バルブ35については、吸気バルブ34と同様の構成を備え同様に作動するため、その説明を省略する。
エンジン30のクランクシャフト41は、オートマチックトランスミッション50と接続されている。このオートマチックトランスミッション50は、エンジン30からクランクシャフト41に出力された動力を変速してデファレンシャルギア52を介して駆動輪54a,54bに伝達する。そして、クランクシャフト41にはクランクシャフト41と一体となって回転するタイミングロータ56が取り付けられ、このタイミングロータ56に対向する位置に第1クランク角センサ58a及び第2クランク角センサ58bが取り付けられている。また、エンジン30の吸気バルブ34を開閉する吸気カム39が配列された吸気カムシャフト40には吸気カムシャフト40と一体となって回転する図示しないタイミングロータが取り付けられ、このタイミングロータに対向する位置にカム角センサ60が取り付けられている。
エンジン30の第1クランク角センサ58aと第2クランク角センサ58bは、本実施形態では、磁気抵抗素子で構成されるMRE回転センサである。第1クランク角センサ58aと第2クランク角センサ58bは、クランクシャフト41の正回転時には第1クランク角センサ58aから出力されるパルスが第2クランク角センサ58bから出力されるパルスより位相が2.5°進んで出力され、クランクシャフト41の逆回転時には第1クランク角センサ58aから出力されるパルスが第2クランク角センサ58bから出力されるパルスより位相が2.5°遅れて出力されるように配置されている。また、タイミングロータ56には2枚欠歯した34枚の歯が設けられている。クランクシャフト41が回転すると、第1クランク角センサ58aは、クランクシャフト41と一体となって回転するタイミングロータ56の歯が接近するごとにパルスを出力するため、クランクシャフト41が1回転(360°)するごとに34個のパルスを発生する。この結果、出力されるパルスによって10°ごとのクランク角CAを特定したりエンジン回転数Neを求めることができる。また、第1クランク角センサ58aから出力されるパルスと第2クランク角センサ58bから出力されるパルスの位相差がクランクシャフト41の正回転時と逆回転時とでは異なることから、この位相差に基づいてクランクシャフト41が正回転しているか逆回転しているかを判別することができる。
エンジン30のカム角センサ60は、本実施形態では、電磁ピックアップ方式のセンサである。具体的には、タイミングロータに1山の歯が設けられ、これに対向する位置にカム角センサ60が配置されており、タイミングロータの歯がカム角センサ60のコアに接近するごとに1個のパルスを出力する。従って、吸気カムシャフト40が1回転(クランクシャフト41が2回転)するごとに1個のパルスを発生するため、例えば、1番気筒のピストン38が膨張行程の上死点となるときにタイミングロータがカム角センサ60に最も近づく位置になるよう設定しておけば、カム角センサ60から出力されるパルスと第1クランク角センサ58a及び第2クランク角センサ58bから出力されるパルスによって気筒判別を行うことができる。
エンジンECU70は、エンジン30の運転を制御するものであり、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサにより構成され、CPUのほかに処理プログラムやデータなどを記憶するROMや一時的にデータを記憶するRAMや出力ポート、通信ポートなどを備えている。このエンジンECU70には、エンジン30の運転状態を示す種々のセンサ、例えば、前出の第1クランク角センサ58aや第2クランク角センサ58b、カム角センサ60、車速センサ62のほか、図示しないが吸入空気の温度を検出する吸気温センサ、スロットルバルブの開度(ポジション)を検出するスロットルバルブポジションセンサ、エンジン30の冷却水の温度(水温)を検出する水温センサなどが接続されており、各種センサからの検出信号が入力される。また、エンジンECU70からは、スタータモータ26やインジェクタ32への駆動信号、点火プラグ33に放電電圧を印加するイグニッションコイル60への制御信号などが出力される。なお、運転者の操作に基づく要求動力をエンジン30から出力するために、エンジンECU70には、シフトレバー72のポジションを検出するシフトポジションセンサ73からのシフトポジションやアクセルペダル74のポジションを検出するアクセルペダルポジションセンサ75からのアクセルペダルポジション、ブレーキペダル76が踏み込まれているか否かを検出するブレーキポジションセンサ77からのオンオフ信号も入力される。
次に、本実施形態のアイドルストップ機能を備えた自動車20の動作、特にアイドルストップ制御に伴う動作について以下に説明する。このアイドルストップ機能を備えた自動車20では、エンジン30が稼働中であって車速Vがゼロであり、且つブレーキペダル76が踏み込まれているブレーキONの状態であってエンジン回転数Neが所定の低速回転数以下といった所定の停止条件が成立したときにエンジン30を自動停止し、その後ブレーキOFFとされるなどの所定の再始動条件が成立したときにスタータモータ26によりエンジン30が自動再始動されるアイドルストップ制御が行われる。以下には、このアイドルストップ制御で行われる自動停止制御ルーチンと自動再始動制御ルーチンについて説明する。
まず、自動停止制御ルーチンについて説明する。図3はこのルーチンのフローチャートである。このルーチンは、エンジン運転中、所定タイミングごと(例えば数msecごと)にエンジンECU70によって実行される。このルーチンが開始されると、エンジンECU70は、まず、停止制御実行中フラグF1が値1か否かを判定する(ステップS100)。ここで、停止制御実行中フラグF1とは、エンジンECU70が停止制御を実行しているか否かを示すフラグであり、ゼロのときは停止制御を実行していないことを示し、値1のときは停止制御を実行していることを示す。そして、ステップS100で停止制御実行中フラグF1がゼロと判定されたときには、前出の停止条件が揃ったか否かを判定する(ステップS110)。ここで、車速Vはオートマチックトランスミッション50のギアの回転数を検出する車速センサ62から出力されるパルスに基づいて算出され、エンジン回転数Neは第1クランク角センサ58aから出力されるパルスの時間間隔に基づいて算出される。また、所定の低速回転数は本実施形態では通常のアイドリング回転数をわずかに上回る数値に設定されている。
ステップS110で前出の停止条件が揃っていないと判定されたときには、そのまま本ルーチンを終了する。一方、ステップS110で停止条件が揃ったと判定されたときには、停止制御実行中フラグF1を値1にセットして(ステップS120)、エンジン30の各気筒31のインジェクタ32への通電を停止すると共に点火プラグ33のイグニッションコイル60への通電を停止する(ステップS130)。この結果、エンジン30の各気筒31の点火及び燃料噴射は停止されるため、エンジン30はクランクシャフト41を回転させるトルクを発生しなくなる。このため、クランクシャフト41は慣性力のみで回転する。この慣性力は、圧縮行程の気筒で発生するガス圧縮力などによって減衰されるため、クランクシャフト41の回転は停止に向けて収束する。
ステップS100で停止制御実行中フラグF1が値1と判定されたとき又はステップS130で各気筒31の点火及び燃料噴射を停止した後には、エンジンECU70は、エンジン回転数Neがゼロになったか否かを判定し(ステップS140)、エンジン回転数Neがゼロになっていないと判定されたときには、そのまま本ルーチンを終了する。一方、エンジン回転数Neがゼロになったと判定されたときには、吸気行程で止まっている気筒Cyin及び該気筒のピストン停止位置Pinを検出する(ステップS150)。ここで、吸気行程で止まっている気筒Cyin及びピストン停止位置Pinの検出は、第1クランク角センサ58a及び第2クランク角センサ58bから出力されるパルスとカム角センサ60から出力されるパルスに基づいて行われる。本実施形態では、第1クランク角センサ58a及び第2クランク角センサ58bはクランクシャフト41が10°回転するごとにパルスを出力するように設定され、カム角センサ60は1番気筒が膨張行程に入るごとにパルスを出力するように設定されている。従って、カム角センサ60からパルスが出力されるときをクランク角0°とすればクランク角CAを0〜720°の範囲で算出することができ、クランク角CAに対応してピストン停止位置Pinを求めることができる。具体的には、第1クランク角センサ58a及び第2クランク角センサ58bから出力されるパルスの位相差に基づいてクランクシャフト41が正回転しているか逆回転しているかを判定し、クランクシャフト41が正回転しているときには、第1クランク角センサ58aからパルスが出力されるごとにパルスのカウント数を加算していきそのカウント数に応じてクランク角CAを求め、クランクシャフト41が逆回転しているときには、第1クランク角センサ58aからパルスが出力されるごとにパルスのカウント数を減算することによりクランク角CAを算出する。そして、算出されたクランク角CAを図2に示すクランク角CAと各気筒31の行程との対応関係に照らすことにより、どの気筒が吸気行程で止まっている気筒Cyinであるかを判別することができ、またクランク角CAに対応するピストン停止位置Pinを求めることができる。
その後、エンジンECU70は、吸気行程で止まっている気筒Cyin及びピストン停止位置Pinを識別する情報を図示しないバックアップRAMに保存する(ステップS160)。そして、停止制御実行中フラグF1をゼロにリセットし(ステップS170)、本ルーチンを終了する。これにより、アイドルストップ制御において、エンジン30が停止したときに吸気行程で止まっている気筒Cyin及び該気筒のピストン停止位置Pinを特定することができる。
次に、自動再始動制御ルーチンについて説明する。図4はこのルーチンのフローチャートである。このルーチンは、図3の自動停止制御ルーチンによって停車した後、所定タイミングごと(例えば数msecごと)にエンジンECU70によって実行される。このルーチンが開始されると、エンジンECU70は、まず、燃料噴射制御実行中フラグF2が値1か否かを判定し(ステップS200)、燃料噴射制御実行中フラグF2がゼロと判定されたときには、エンジン30の自動停止中にブレーキポジションセンサ77からのブレーキペダルポジションがブレーキOFFといった再始動条件が揃ったかを判定する(ステップS205)。ここで、燃料噴射制御実行中フラグF2とは、エンジンECU70が図4の自動再始動制御ルーチンを実行しているか否かを示すフラグであり、ゼロのときは図4の自動再始動制御ルーチンを実行していないことを示し、値1のときは図4の自動再始動制御ルーチンを実行していることを示す。
ステップS205で前出の再始動条件が揃っていないと判定されたときには、そのまま本ルーチンを終了する。一方、ステップS205で再始動条件が揃ったと判定されたときには、燃料噴射制御実行中フラグF2を値1にセットし(ステップS210)、エンジンECU70は図示しないバックアップRAMから吸気行程で止まっている気筒Cyin及び該気筒のピストン停止位置Pinを識別する情報を読み出す(ステップS215)。そして、ステップS215で読み出したピストン停止位置Pinから吸気行程で止まっている気筒Cyinに噴射すべき燃料量Q1をエンジンECU70の図示しないROMに記憶したマップから読み込む(ステップS220)。図5は、吸気行程で止まっている気筒Cyinのピストン停止位置Pinと該気筒に噴射すべき燃料量Q1の対応関係を表すマップである。図5では、ピストン停止位置Pinが吸気行程の上死点から所定の中間位置P1までは予め定めた燃料量Q1constを燃料量Q1とし、所定の中間位置P1から所定の下死点直前位置P2までは下死点に近づくにつれて燃料量が増加する傾向を示すように燃料量Q1を決定し、所定の下死点直前位置P2から下死点までは燃料量Q1をゼロに決定する。ここで、所定の中間位置P1及び所定の下死点直前位置P2は、本実施形態では、吸気行程の上死点後120°のクランク角CAに対応するピストン停止位置Pinを所定の中間位置P1とし、吸気行程の上死点後160°のクランク角CAに対応するピストン停止位置Pinを所定の下死点直前位置P2とする。そして、ステップS220で読み込んだ燃料量Q1がゼロよりも大きいか否かを判定し(ステップS225)、燃料量Q1がゼロよりも大きいと判定されたときには、吸気行程で止まっている気筒CyinにステップS220で読み込まれた燃料量Q1を噴射するようインジェクタ32に指令する(ステップS230)。すると、インジェクタ32から噴射された燃料は吸気ポート36内の空気と混合して混合気となり、この結果、吸気行程で止まっている気筒Cyinのピストン停止位置Pinが上死点から所定の下死点直前位置P2までにあるときは、該気筒の吸気ポート36内に未燃焼の混合気を調製しておくことができる。
続いて、エンジンECU70は、スタータモータ26の回転軸を突出させてこの回転軸の先端に設けられた外歯歯車とフライホイール28の外歯歯車を噛み合わせた後にスタータモータ26に電力を供給する(ステップS230)。この結果、スタータモータ26の回転軸の先端に設けられた外歯歯車とフライホイール28の外歯歯車が噛み合いながら回転し、このフライホイール26の回転力によってクランクシャフト41を回転させてエンジン30のクランキングを開始する。これにより、気筒Cyinの吸気ポート36内にある混合気は、ピストン38の下降に伴って発生する負圧によって吸気バルブ34を介して燃焼室37内へ吸入される。
一方、ステップS225で吸気行程で止まっている気筒Cyinに噴射すべき燃料量Q1がゼロであると判定されたときには、エンジンECU70は、気筒Cyinに燃料噴射を行うことなくスタータモータ26を作動させてエンジン30のクランキングを開始し(ステップS240)、燃料噴射制御実行中フラグF2をゼロにリセットする(ステップS265)。その後、通常の始動制御を実行し(ステップS270)、本ルーチンを終了する。通常の始動制御においては、エンジン20が完爆するまでスタータモータ26によるクランキングを行いながら燃料噴射及び点火の制御を行う。
ステップS200で燃料噴射制御実行中フラグF2が値1と判定されたとき又はステップS235でエンジン30のクランキングが開始されたときには、エンジンECU70は、気筒Cyinのピストン38が圧縮行程の上死点直前に達したか否かを判定し(ステップS240)、気筒Cyinのピストン38が圧縮行程の上死点直前に達していないと判定されたときには、そのまま本ルーチンを終了する。一方、気筒Cyinのピストン38が圧縮行程の上死点直前に達したと判定されたときには、気筒Cyinの点火プラグ33に放電電圧を印加してスパークを発生させる(ステップS250)。すると、気筒Cyinの燃焼室37内の混合気は点火プラグ33のスパークによって燃焼し、ピストン38は下死点に向かって付勢され、それに応じてクランクシャフト41は正回転する。
続いて、ステップS250で点火した際に失火したか否かを判定する(ステップS255)。ここで、失火したか否かの判定は、本実施形態では、第1クランク角センサ58aから出力されるパルスの時間間隔によって算出されるエンジン回転数Neに基づいて行われる。具体的には、気筒Cyinの最初の膨張行程が終了する時点でエンジン回転数Neが所定のしきい値Nethに達したか否かによって判定するものとし、所定のしきい値Nethに達したときには失火していないと判定し、所定のしきい値Nethに達しなかったときには失火したものと判定する。このとき、ステップS220で気筒Cyinのピストン停止位置Pinに対応して吸気能力が低いときには気筒Cyinの吸気ポート36に噴射すべき燃料量Q1を増加するよう決定し、ステップS230で該決定した燃料量Q1を噴射しているため、気筒Cyinの吸気能力がピストン停止位置Pinに対応して低いときであっても吸気ポート36内の燃料を燃焼室37内に吸入しやすい状態となっており、この結果、ステップS250で燃焼した際の失火頻度を抑制することができる。
そして、ステップS255で失火したと判定されたときには、運転者の要求に応じて決定される燃料量Q2reqから最初の燃焼で用いられなかった残燃料量Q1restを差し引いた燃料量Q2を気筒Cyinの吸気ポート36に次回噴射すべき燃料量Q2として決定する(ステップS260)。ここで、最初の燃焼で用いられなかった残燃料量Q1restを推定する際には、吸気ポート36に噴射された燃料が気筒Cyin内に十分に吸入されなかったことが原因で失火したものとし、具体的には、エンジン停止中のピストン停止位置Pinに対応する予め作成されたマップに基づいて残燃料量Q1restを決定する。図6は、気筒Cyinのピストン停止位置Pinと残燃料量Q1restの対応関係を表すマップである。ここで、残燃料量Q1restは、エンジン停止中のピストン停止位置Pin及び気筒Cyinの吸気ポート36に最初に噴射した燃料量Q1に応じて差が生じる。具体的には、図6に示すように、ピストン停止位置Pinが上死点から所定の中間位置P1までにあるときは気筒Cyinの吸気能力は十分であり、また図5に示すように気筒Cyinの吸気ポート36に最初に噴射した燃料量Q1は所定量の燃料量Q1constであるため、残燃料量Q1restはゼロ又はゼロをわずかに上回る値となる。一方、ピストン停止位置Pinが所定の中間位置P1から所定の下死点直前位置P2までにあるときは気筒Cyinの吸気能力はピストン停止位置Pinが下死点に近づくにつれて小さくなる傾向にあり、また図5に示すように最初に噴射した燃料量Q1はピストン停止位置Pinが下死点に近づくにつれて所定量の燃料量Q1constよりも増加させているため、残燃料量Q1restはピストン停止位置Pinが下死点に近づくにつれて多くなる傾向にある。
ステップS260で気筒Cyinの吸気ポート36に次回噴射すべき燃料量Q2を決定したあと又はステップS255で失火していないと判定されたときには、エンジンECU70は、燃料噴射制御実行中フラグF2をゼロにリセットする(ステップS265)。その後、通常の始動制御を実行し(ステップS270)、本ルーチンを終了する。なお、ステップS270で通常の始動制御を実行したのちに本ルーチンを終了した後は、スタータモータ26の回転軸を元の位置に戻してスタータモータ26によるクランキングを停止し、通常の走行時の制御を実行することになる。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のインジェクタ32が本発明の燃料噴射手段に相当し、第1クランク角センサ58aや第2クランク角センサ58b、カム角センサ60が検出手段に相当する。また、エンジンECU70が始動条件判定手段や燃料噴射制御手段、失火判定手段に相当する。なお、本実施形態では、アイドルストップ機能を備えた自動車20の動作を説明することにより本発明のエンジン始動制御装置の一例を明らかにすると共に本発明のエンジン始動方法の一例も明らかにしている。
以上詳述した本実施形態のアイドルストップ機能を備えた自動車20によれば、図4の自動再始動制御ルーチンにおいて、アイドルストップ制御におけるエンジン再始動条件が成立したとき、吸気行程で止まっている気筒Cyinの吸気ポート36へ噴射すべき燃料量Q1を該気筒のピストン停止位置Pinに基づいて決定し、決定した燃料量Q1を該気筒の吸気ポート36に噴射する。この結果、エンジン停止中に吸気行程で止まっている気筒Cyinのピストン停止位置Pinが吸気行程の所定の中間位置P1から所定の下死点直前位置P2の間にあるために吸気能力が低いときには燃料量Q1を増加させるため、最初の燃焼での失火頻度を抑制し、エンジン30の始動性を向上させることができる。
また、図4の自動再始動制御ルーチンでは、ピストン停止位置Pinが吸気行程の所定の下死点直前位置P2から下死点までにあるときは燃料量Q1をゼロにすることから、吸気行程で止まっている気筒Cyinのピストン停止位置Pinに対応して吸気能力が低く燃料を増加しても燃料が燃焼室37内に十分に吸引されないときには、吸気行程で止まっている気筒Cyinに燃料を噴射しないことによりエミッションの悪化を防ぐことができる。
更に、図4の自動再始動制御ルーチンでは、エンジン始動時の最初の燃焼が行われた際に失火したと判定されたときには、最初の燃焼に用いられなかった残燃料量Q1restを予め作成したマップから読み込み、運転者の要求に応じて決定される燃料量Q2reqから残燃料量Q1restを差し引いた燃料量を気筒Cyinの吸気ポート36に次回噴射すべき燃料量Q2として決定する。これにより、空燃比が過剰に燃料リッチとなるのを防ぐと共にエミッションの悪化を防ぐことができる。
更にまた、ピストン停止位置Pinは、第1クランク角センサ58aから出力されるパルスと第2クランク角センサ58bから出力されるパルスに基づいて算出されることから、一つのクランク角センサのみを用いて算出するときと比べてより正確なピストン停止位置Pinを算出することができる。
そして、アイドルストップ制御では走行途中に何度もエンジン停止と再始動を繰り返すためにエンジン30の始動性を向上させる必要性が高いが、この要求にも応じることができ有利である。
[第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態と同じ構成を備えたアイドルストップ機能を備えた自動車20に関するものであるため、第1実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付して説明する。また、本実施形態のアイドルストップ機能を備えた自動車20は、第1実施形態と同じ図3の自動停止制御ルーチンを実行する。なお、本実施形態の点火プラグ33が本発明の点火手段に相当し、エンジンECU70が点火制御手段に相当する。
本実施形態の自動再始動制御ルーチンについて説明する。図7はこのルーチンのフローチャートである。このルーチンは、図3の自動停止制御ルーチンによって停車した後、所定タイミングごと(例えば数msecごと)にエンジンECU70によって実行される。このルーチンが開始されると、エンジンECU70は、まず、点火制御実行中フラグF3が値1か否かを判定し(ステップS400)、点火制御実行中フラグF3がゼロと判定されたときには、エンジン30の自動停止中にブレーキポジションセンサ77からのブレーキペダルポジションがブレーキOFFといった再始動条件が成立したか否かを判定する(ステップS405)。ここで、点火制御実行中フラグF3とは、エンジンECU70が図7の自動再始動制御ルーチンを実行しているか否かを示すフラグであり、ゼロのときは図7の自動再始動制御ルーチンを実行していないことを示し、値1のときは図7の自動再始動制御ルーチンを実行していることを示す。
ステップS405で前出の再始動条件が成立していないと判定されたときには、そのまま本ルーチンを終了する。一方、ステップS405で再始動条件が成立したと判定されたときには、点火制御実行中フラグF3を値1にセットし(ステップS410)、エンジンECU70は図示しないバックアップRAMから吸気行程で止まっている気筒Cyin及び該気筒のピストン停止位置Pinを識別する情報を読み出す(ステップS415)。そして、読み出したピストン停止位置Pinが吸気行程の上死点から所定の下死点直前位置P4にあるか否かを判定する(ステップS420)。ここで、所定の下死点直前位置P4は、本実施形態では、吸気行程の上死点後160°のクランク角CAに対応するピストン停止位置Pinとする。そして、ピストン停止位置Pinが吸気行程の上死点から所定の下死点直前位置P4にあると判定されたときには、吸気行程で止まっている気筒Cyinの吸気ポート36に予め定められた所定量の燃料を噴射するようインジェクタ32に指令する(ステップS425)。すると、インジェクタ32から噴射された燃料は吸気ポート36内の空気と混合して混合気となり、この結果、吸気行程で止まっている気筒Cyinの吸気ポート36内に未燃焼の混合気を予め調製しておくことができる。
続いて、エンジンECU70は、スタータモータ26の回転軸を突出させてこの回転軸の先端に設けられた外歯歯車とフライホイール28の外歯歯車を噛み合わせた後にスタータモータ26に電力を供給する(ステップS430)。この結果、スタータモータ26の回転軸の先端に設けられた外歯歯車とフライホイール28の外歯歯車が噛み合いながら回転し、このフライホイール26の回転力によってクランクシャフト41を回転させてエンジン30のクランキングを開始する。これにより、気筒Cyinの吸気ポート36内にある混合気は、ピストン38の下降に伴って発生する負圧によって吸気バルブ34を介して燃焼室37内へ吸入される。
一方、ステップS420でピストン停止位置Pinが所定の下死点直前位置P4から吸気行程の下死点にあると判定されたときには、エンジンECU70は、吸気行程で止まっている気筒Cyinの吸気ポート36に燃料を噴射することなくクランクシャフト41を回転させてエンジン30のクランキングを開始し(ステップS435)、点火制御フラグF3をゼロにリセットする(ステップS455)。その後、通常の始動制御を実行し(ステップS460)、本ルーチンを終了する。通常の始動制御においては、エンジン20が完爆するまでスタータモータ26によるクランキングを行いながら燃料噴射及び点火の制御を行う。これにより、ピストン停止位置Pinが所定の下死点直前位置P4から吸気行程の下死点にあるために燃焼室37内に混合気が十分吸引されないときには、気筒Cyinの吸気ポート36内に燃料を噴射しないようにすることができる。
さて、エンジンECU70は、気筒Cyin内の混合気に点火する点火位置tを決定するために、予め定めた所定の基準点火位置tbから点火位置tをどれだけ遅角させるかの遅角量ΔθをエンジンECU70の図示しないROMに記憶したマップから読み込む(ステップS440)。ここで、所定の基準点火位置tbは、気筒Cyinが圧縮行程の上死点に達する直前のクランク角CAとする。本実施形態では、吸気行程の上死点から所定の下死点直前位置P4までのうち、気筒Cyinの吸気能力が最も低いピストン停止位置Pinである所定の下死点直前位置P4のときの点火位置tを基準点火位置tbとする。図8は、気筒Cyinのピストン停止位置Pinと遅角量Δθとの対応関係を表すマップである。図8では、ピストン停止位置Pinが吸気行程の上死点から所定の中間位置P3までは、基準点火位置tbに対して点火位置tが最も遅角するよう予め定めた所定の遅角量Δθconstを遅角量Δθとし、所定の中間位置P3から所定の下死点直前位置P4までは、下死点に近づくにつれて点火位置tが進角する傾向を示すように進角量Δθを決定する。ここで、所定の中間位置P3は、吸気行程の上死点後120°のクランク角CAに対応するピストン停止位置Pinとし、所定の遅角量Δθconstは、点火位置tが圧縮行程の上死点後略50°のクランク角CAとする。なお、ピストン停止位置Pinが所定の下死点直前位置P4から下死点のときには気筒Cyinの吸気ポート36に燃料を噴射していないため、点火は行わない。
ステップS400で点火制御フラグF3が値1と判定されたとき又はステップS440で点火位置tを決定したあとは、エンジンECU70は、クランク角CAが点火位置tに至ったか否かを判定し(ステップS445)、クランク角CAが点火位置tに至っていないと判定されたときには、そのまま本ルーチンを終了する。ここで、クランク角CAは、第1クランク角センサ58a及び第2クランク角センサ58bから出力されるパルスとカム角センサ60から出力されるパルスに基づいて検出される。一方、クランク角CAが点火位置tに至ったと判定されたときには、気筒Cyinの点火プラグ33に放電電圧を印加してスパークを発生させる(ステップS450)。すると、気筒Cyinの燃焼室37内の混合気は点火プラグ33のスパークによって燃焼し、ピストン38は下死点に向かって付勢され、それに応じてクランクシャフト41は正回転する。このとき、気筒Cyin内の混合気は、エンジン停止中のピストン停止位置Pinが所定の下死点直前位置P4のときには基準点火位置tbで点火され、吸気行程の上死点側のときには基準点火位置tbよりも遅角側で点火される(図8参照)。すなわち、ピストン停止位置Pinに対応して吸気能力が十分にあり燃焼に適した混合気が形成されるときにはクランク角CAが基準点火位置tbよりも所定の遅角量Δθconstだけ遅角した点火位置tに至ったときに点火し、ピストン停止位置Pinに対応して吸気能力が低く燃焼に適した混合気が形成されにくいときには遅角量Δθを所定の遅角量Δθconstよりも小さくすることでより早い時期に点火する。このように、吸気能力が低く燃焼に適した混合気が形成されにくいときには、吸気能力が高いときに比べて燃焼トルクが大きくなるよう点火時期を進角側に設定することによって、ピストン停止位置Pinが異なる場合であっても燃焼トルクが略一定になるよう調整することができ、この結果、始動時の燃焼トルクを安定させることができる。その後、点火制御実行中フラグF3をゼロにリセットし(ステップS455)、通常の始動制御を実行して(ステップS460)、本ルーチンを終了する。なお、ステップS460で通常の始動制御を実行したのちに本ルーチンを終了した後は、スタータモータ26の回転軸を元の位置に戻してスタータモータ26によるクランキングを停止し、通常の走行時の制御を実行することになる。
以上詳述した本実施形態のアイドルストップ機能を備えた自動車20によれば、アイドルストップ制御におけるエンジン再始動条件が成立したときには、気筒Cyin内の混合気に点火する点火時期tを該気筒エンジン停止中のピストン停止位置Pinに基づいて決定し、該決定した点火時期tに点火する。この結果、気筒Cyinのピストン停止位置Pinが吸気行程の所定の中間位置P3から所定の下死点直前位置P4の間にあるために吸気能力が低く燃焼に適した混合気が形成されにくいときには、吸気能力が高いときに比べて点火時期tを進角側にするため、始動時に発生する燃焼トルクを安定するよう調整することができる。この結果、エンジン始動時のドライバビリティを向上させることができる。
また、クランク角CAやピストン停止位置Pinは、第1クランク角センサ58aから出力されるパルスと第2クランク角センサ58bから出力されるパルスに基づいて算出されることから、一つのクランク角センサのみを用いて算出するときと比べてより正確なピストン停止位置Pinを算出することができる。
更に、アイドルストップ制御では走行途中に何度もエンジン停止と再始動を繰り返すためにエンジン始動時のドライバビリティを向上させる必要性が高いが、この要求にも応じることができ有利である。
[その他の実施形態]
なお、本発明は上述した各実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、上述した第1実施形態では図4の自動再始動制御ルーチンを採用したが、図9の自動再始動制御ルーチンを採用してもよい。つまり、図9の自動始動制御ルーチンでは、エンジンECU70は、ステップS200〜S250と同様のステップS300〜S350までの処理を行い、その後気筒Cyinに次回噴射すべき燃料量を調整する処理を行うことなく、ステップS355で燃料噴射制御実行中フラグF2をゼロにリセットして本ルーチンを終了する。この場合においても、吸気行程で止まっている気筒Cyinのピストン停止位置Pinに基づいて決定された燃料量Q1を該気筒に噴射するため、通常のエンジン始動方法で始動するときよりもエンジン30の始動性を向上させることができる。
また、上述した図4の自動再始動制御ルーチンでは、ステップS230で吸気行程で止まっている気筒Cyinのピストン停止位置Pinに基づいて決定された燃料量Q1を噴射したが、ピストン停止位置Pinによって燃料量Q1を変動させることなく予め定めた所定量の燃料を噴射してもよい。
更に、上述した図4の自動再始動制御ルーチンでは、気筒Cyinの吸気ポート36へ噴射すべき燃料量Q1及び最初の燃焼に用いられなかった残燃料量Q1restを予め作成したマップから読み込んだが、算出式からその都度算出してもよい。また、上述した図4の自動再始動制御ルーチンでは、最初の燃焼に用いられなかった残燃料量Q1restを推定する際に気筒Cyinのピストン停止位置Pin及び初回に噴射した燃料量Q1に基づいて推定したが、気筒Cyinのピストン停止位置Pinのみに基づいて推定してもよいし、気筒Cyinに対して初回に噴射した燃料量Q1のみに基づいて推定してもよい。
更に、上述した図4の自動再始動制御ルーチンでは、失火判定はエンジン回転数Neに基づいて判定したが、エンジン回転数Neの変化率に基づいて判定してもよいし、気筒内圧の変化に基づいて判定してもよいし、気筒内温度の変化に基づいて判定してもよい。
更にまた、上述した図4の自動再始動制御ルーチンでは、ステップS260で気筒Cyinのみを対象として噴射すべき燃料量Q2を調整したが、所定回数の燃焼が行われるまで又は所定のエンジン回転数Neに達するまでの全ての気筒を対象として噴射すべき燃料量を調整してもよい。
更にまた、上述した図4の自動再始動制御ルーチンでは、図5に示すようにピストン停止位置Pinが吸気行程の上死点から所定の中間位置P1までは吸気行程で止まっている気筒Cyinに噴射すべき燃料量Q1を予め定めた燃料量Q1constと決定し、所定の中間位置P1から所定の下死点直前位置P2に近づくにつれて燃料量が増加する傾向を示すように燃料量Q1を決定したが、図10に示すようにピストン停止位置Pinが上死点から所定の下死点直前位置P2に近づくにつれて燃料量が増加する傾向を示すように燃料量Q1を決定してもよい。この場合、ステップS260で最初の燃焼に用いられなかった残燃料量Q1restを推定する際には、図10に対応したマップを予め作成して推定してもよいし、算出式からその都度算出して推定してもよい。
そして、上述した図4の自動再始動制御ルーチンでは、図5及び図10に示すようにピストン停止位置Pinが所定の下死点直前位置P2から下死点までは燃料量をゼロに決定したが、ピストン停止位置Pinが所定の下死点直前位置P2から下死点に近づくにつれて燃料量が増加する傾向を示すように燃料量Q1を決定してもよい。この場合、ステップS260で最初の燃焼に用いられなかった残燃料量Q1restを推定する際には、これに対応したマップを予め作成して推定してもよいし、算出式からその都度算出して推定してもよい。
そして、上述した図7の自動再始動制御ルーチンでは、図8に示すようにピストン停止位置Pinが吸気行程の上死点から所定の中間位置P3までは気筒Cyin内の混合気に点火する点火位置tを基準点火位置TbからΔθconstだけ遅角させた点火位置とし、所定の中間位置P3から所定の下死点直前位置P4に近づくにつれて点火時期tが進角する傾向を示すように点火時期tを決定したが、図11に示すように、ピストン停止位置Pinが上死点から所定の下死点直前位置P4に近づくにつれて点火時期tが進角する傾向を示すように点火時期tを決定してもよい。こうすれば、気筒Cyinのピストン停止位置Pinが下死点側に近づくにつれて吸気能力が低くなるために燃焼に適した混合気が形成されにくいときにもエンジン始動時の燃焼トルクが安定するよう調整することができる。
そしてまた、上述した図7の自動再始動制御ルーチンでは、図8に示すようにピストン停止位置Pinが所定の中間位置P3から所定の下死点直前位置P4のときには下死点に近づくにつれて遅角量Δθが連続的に小さくなるよう遅角量Δθを設定したが、図12に示すように、下死点に近づくにつれて段階的に小さくなるよう設定してもよい。
そしてまた、上述した図7の自動再始動制御ルーチンでは、ステップS420でピストン停止位置Pinが所定の下死点直前位置P4から下死点の間にあると判定されたときには気筒Cyinの吸気ポート36に燃料を噴射せずにステップS435でクランキングを開始したが、ステップS420を行わず、ステップS425で燃料噴射を行うとしてもよい。この場合、ステップS440で点火時期tを決定する際には、ピストン停止位置Pinが所定の下死点直前位置P4から下死点に近づくにつれて点火時期tが進角する傾向を示すよう点火時期tを決定してもよい。
そして更に、上述した第1実施形態では、失火頻度を抑制しエンジンの始動性を向上させることを目的として気筒Cyinのピストン停止位置Pinと気筒Cyinの吸気ポート36に噴射すべき燃料量Q1との関係を表すマップを作成したが(図5参照)、エンジン始動時の燃焼トルクを略一定に安定させることを目的としてピストン停止位置Pinと燃料量Q1との関係を表すマップを作成するとしてもよい。噴射される燃料量が多ければ気筒31内に燃料が入りやすくなる傾向にある。したがって、ピストン停止位置Pinに対応して吸気能力が低いときには、吸気能力が高いときに比べて気筒Cyinの吸気ポート36内に噴射すべき燃料量を多くすることにより、始動毎の燃焼トルクが略一定になるよう調整することができ、この結果、始動時の燃焼トルクを安定させることができる。
そして更に、上述した実施形態では、図4の自動再始動制御ルーチンと図7の自動再始動制御ルーチンとを別のルーチンとして説明したが、図13に示すように、これらのルーチンを一つの自動再始動制御ルーチンとして実行してもよい。すなわち、図13の自動再始動制御ルーチンでは、エンジンECU70は、ステップS500で自動再始動制御フラグF4がゼロと判定されたときには、図4の自動再始動制御ルーチンのステップS205〜S240と同様のステップS505〜S540の処理を実行する。ここで、自動再始動制御フラグF4は、エンジンECU70が図13の自動再始動制御ルーチンを実行しているか否かを示すフラグであり、ゼロのときは図13の自動再始動制御ルーチンを実行していないことを示し、値1のときは図13の自動再始動制御ルーチンを実行していることを示す。続いて、ステップS545でピストン停止位置Pinと遅角量Δθとの関係を予め作成したマップから遅角量Δθを読み込んで点火位置tを決定する。なお、このマップは、気筒Cyinへの燃料量Q1を考慮して作成されたものである。その後、図7の自動再始動制御ルーチンのステップS445と同様のステップS550の処理を実行する。こうすれば、ピストン停止位置Pinに応じて気筒Cyinの吸気ポート36に噴射すべき燃料量Q1を変化させると共にピストン停止位置Pinに応じて気筒Cyin内の混合気に点火する点火位置tを変更するため、失火頻度を抑制すると共に始動時の燃焼トルクを安定させることができる。このとき、ステップS520で燃料量Q1を決定する際、エンジン始動時の燃焼トルクを略一定にすることを目的として予め作成したピストン停止位置Pinと燃料量Q1との関係を表すマップからピストン停止位置Pinに対応する燃料量Q1を読み込むとしてもよい。こうすれば、エンジン始動時の燃焼トルクを略一定にするには噴射すべき燃料量Q1と点火位置tとをピストン停止位置Pinに応じて変更するため、ピストン停止位置Pinに応じて燃料量Q1のみを変更する場合や点火位置tのみを変更する場合に比べて、より確実に始動時の燃焼トルクを安定させることができる。
そして更に、上述した実施形態では、第1クランク角センサ58a及び第2クランク角センサ58bとしてMRE回転センサを採用したが、励磁電圧に対する出力電圧の位相差を利用してクランク角を検出するレゾルバ回転センサを採用してもよい。
そして更にまた、上述した実施形態では、4気筒エンジンを例に挙げて説明したが、他の多気筒エンジンにおいても同様にして本発明を適用することができる。例えば、6気筒エンジンは、タイミングによっては二つの気筒31が吸気行程に入ることがあるが、その場合には双方の気筒31に対して上述した実施形態と同様の処理を実行する。
そして更にまた、上述した実施形態では、アイドルストップ機能を備えた自動車20に本発明を適用した場合を例示したが、モータジェネレータを搭載してその動力を車両駆動軸に伝達させる構成のハイブリッド自動車に本発明のエンジン始動方法を適用してもよいことはいうまでもない。