特許文献1に記載の運搬容器は、検体を収容した一次容器を含気泡緩衝シートで包み込んだ状態で気密性のある二次容器に収容し、その二次容器をさらに段ボールである緩衝材で包み込んだ状態で段ボール製の三次容器に収容しており、外からの衝撃に対して高い安全性を有していると考えられる。また、万一、一次容器が破損し、一次容器から検体が漏出するような場合でも、漏出した検体は二次容器内に埋め込んだ吸収材により吸収され、二次容器あるいは三次容器にまで破損が及んだ場合でも、検体が外部にまで漏れ出るのをある程度は阻止できるものと考えられる。
しかし、前記木綿ボールのような吸収材は、二次容器の底部に埋め込むようになっており、少ないケースとはいえ、一次容器の向きによっては、すなわち、運搬容器が上下反転した姿勢あるいは横転した姿勢等の状態で、一次容器に破損等が生じた場合、一次容器から漏れ出た検体の吸収材による吸収が不十分となり、一部の検体が外部に漏出してしまう可能性があるのを、完全に否定することはできない。
検体が感染性物質等である場合、僅かとはいえ、このような漏出の可能性があることは回避すべきであり、より高い漏出防止対策が施された、より安全な運搬容器が求められる。本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、より高い安全性を備えた検体運搬容器を提供することを課題とする。
本発明による検体運搬容器は、検体を収容した検体容器である一次容器の全体を包囲できるシート状の吸収材と、前記一次容器を前記シート状の吸収材で包囲した一次包装体を包囲できる第1のシート状緩衝材と、前記一次包装体を前記第1のシート状緩衝材で包囲した二次包装体を包囲できる第2のシート状緩衝材と、前記二次包装体を前記第2のシート状緩衝材で包囲した三次包装体を収容できる二次容器と、前記三次包装体を収容した二次容器の少なくとも側面を包囲できる第3のシート状緩衝材と、外箱容器である三次容器と、を備えることを特徴とする。
上記の検体運搬容器では、検体を収容した検体容器である一次容器は、その全体がシート状吸収材により包囲されて一次包装体とされている。そのために、何らかの事情で一次容器から検体が漏出する場合、そのときの一次容器の向きがどのような向きであっても、漏出した検体はすべてシート状吸収材に吸収される。そして、一次包装体は第1のシート状緩衝材で包囲されて二次包装体とされており、検体の外部への漏出はそこでも確実に阻止される。
また、上記の検体運搬容器では、前記二次包装体は第2のシート状緩衝材でさらに包囲されて三次包装体とされ、それが気密容器である二次容器に収容され、その二次容器は、その少なくとも側面が第3のシート状緩衝材で包囲された状態で外箱容器である三次容器に収容されており、外からの衝撃に対して高い耐性を備えている。そのために、搬送中に生じる恐れのある落下等の外的衝撃によって一次容器に損傷が生じるのを、確実に回避することができる。
本発明において、前記シート状吸収材としては、吸水性シート、紙、不織布、等を例として挙げることができる。中でも、吸水性や取り扱いの容易性から吸水性ポリマーを有する吸水性シートは特に好ましい。
本発明による検体運搬容器において、前記一次包装体を包囲する第1のシート状緩衝材は、緩衝性を有するシートであれば任意のシートを用いることができ、非通気性であることは好ましい。軽量性と取り扱いの容易性から、ポリエチレン系樹脂等である樹脂フィルム製のシート状含気泡緩衝材はより好ましく、さらに好ましくは、3層の樹脂フィルム構造からなる含気泡緩衝材である。いずれの場合も、粘着層を備えることは好ましく、特に好ましくは、粘着性を備えたシート状含気泡緩衝材である。表面に粘着層を備えることにより、前記一次包装体を第1のシート状緩衝材で包囲したとき、より高い気密性を確保することができ、万一、一次包装体から検体が漏れ出ることが起こっても、二次包装体を越えて検体が漏出するのをより確実に阻止することができる。粘着素材に特に制限はないが、スチレン・エチレンブチル・オレフィン結晶ブロック共重合物は好ましい。
本発明による検体運搬容器において、前記第2のシート状緩衝材は、緩衝性を有するシートであれば任意のシートを用いることができる。発泡樹脂シートであってもよい。しかし、軽量性と取り扱いの容易性から、樹脂フィルム製のシート状含気泡緩衝材はより好ましく、さらに好ましくは、3層の樹脂フィルム構造からなる含気泡緩衝材である。なお、第2のシート状緩衝材で前記二次包装体を包囲して三次包装体とする手法は任意であってよいが、二次容器の開口部側に第2のシート状緩衝材を展開した状態で置き、上から第2のシート状緩衝材を二次容器内に押し込むことで形成される凹所内に前記二次包装体を挿入し、その後、周囲に残っている第2のシート状緩衝材を、挿入した二次包装体を包み込むようにして二次容器内に押し込んでいく手法は、作業が容易であるとともに、二次包装体の全体(上下左右の全周囲)を第2のシート状緩衝材で確実に包み込むことができるので、好ましい手法である。
本発明による検体運搬容器において、前記第3のシート状緩衝材は、緩衝性を有するシートであれば任意のシートを用いることができる。発泡樹脂シートであってもよい。しかし、外からの衝撃を吸収しやすいこと、軽量性で取り扱いの容易なこと等から、段ボールであることは好ましく、片段ボールであることはさらに好ましい。第3のシート状緩衝材は好ましくは二次容器の外周を巻き込むようにして使用される。
本発明による検体運搬容器において、前記三次容器の材料に特に制限はないが、適度の緩衝性と衝撃吸収性を備えることから、段ボール箱であることは好ましい。
本発明による検体運搬容器において、前記二次容器は、所要の気密性と耐圧性と機械的強度を備えるものであれば、任意の材料を用いて任意の形状に作ることができる。しかし、上端側外周面に外ねじを形成した容器本体と、前記容器本体の上端側内周面に密接する周壁と該周壁下縁に連続する底板と前記周壁上縁から水平に延びるフランジとを備える中蓋と、前記容器本体に形成された外ねじに螺合する内ねじを内周面に備えた外蓋とからなる、樹脂材料で作られた気密容器であることは、特に好ましい。
前記二次容器が、前記中蓋の周壁と底板とで区画される領域に入り込むことができ入り込んだ状態でその上面が前記中蓋の前記フランジの上面よりも上位となる厚みを持つ板状の埋込材をさらに備える気密容器であってもよい。
従来知られた形体の中蓋付きの気密容器は、容器の内圧が高くなったときに、中蓋の底板が上方に向けて湾曲した状態となり、その底板の変形が中蓋と容器本体との間の密接性および中蓋と外蓋との間の密接性に悪影響を与え、それにより気密性が低下し高い気密性を維持できない場合がある。特に、−40℃程度という低温状態に気密容器をおいたときに、気密性の低下は顕著となる。低温時においては、容器を構成する材料に収縮が起き、特に中蓋を構成する材料の収縮による変形が気密性の低下を招く一因となっていると考えられる。
上記のように、板状の埋込材を備えた二次容器を用いる場合には、埋込材を中蓋内に入れ込んだ状態で外蓋をねじ込み固定することにより、高い内圧によって中蓋の底板が外蓋側に向けて湾曲しようとするのを、中蓋と外蓋の間に入り込んでいる前記埋込材によって阻止することができる。それにより、低温環境で検体運搬容器を用いる場合であっても、高い気密性が確保される。本発明者らは、板状の埋込材を備えた二次容器の場合に、95kPa以上の内部圧力および−40℃の温度で気密性を維持できることを実験的に確認している。
前記埋込材の形状は平板状が望ましく、その外径寸法は中蓋の内径とほぼ等しいか僅かに小さい寸法であることが望ましい。埋込材の素材は、容器内の圧力に耐えるだけの機械的強度を備えることを条件に特に制限はないが、好ましくは発泡樹脂材料や発泡ゴム材料が挙げられる。軽量性や取り扱い性に優れること、および適宜の圧縮性を備えることから発泡樹脂材料は好ましく、中でも発泡倍率20〜70倍程度の発泡ポリスチレンは好ましい。
埋込材の形状に関しては、上記する平板状であることに加えて、この平板状の上面から下面に通じる孔(貫通孔)が形成されており、この孔と該埋込材の外周面に通じる1本の切り欠きを備えた形態であることがより好ましい。例えば、中蓋の周壁が円筒状に形成されている場合には、この埋込材をこの周壁と略同径で平面視がドーナツ状を呈する形態とすることで気密性を高めることができる。このような埋込材によれば、その中央の孔と外周面に通じる所定幅の切り欠きが形成されていることで、埋込材の外径寸法と中蓋周壁の内径寸法が同程度であっても、該埋込材を人手による押圧力にて切り欠き幅分だけ小寸法に弾性変形させることができ、この姿勢で中蓋内へ入り込ませることで設置作業も容易となる。また、同様に中蓋外への取り外しも容易となる。さらに、上記のごとく気密容器が低温状態下にあって中蓋や外蓋が収縮変形した際には、埋込材が少なくとも切り欠き幅分だけ小寸法に弾性変形しながら中蓋等の収縮変形に追従することができる。
さらに、前記埋込材の厚みは、前記中蓋の底板からフランジ上面までの距離よりも2〜5mm程度厚い厚みであることが好ましい。この厚みであれば、外蓋をすることにより、中蓋の底面を適当な圧力で容器内側に向けて押し付けることができ、容器内圧力により中蓋の底板が変形するのを確実に抑えることができる。埋込材の素材が弾性を有する材料であり、かつ上記のような厚みのものであることは最も好ましい。
本発明による検体運搬容器は、限定されるものではないが、常温で運搬が可能な検体の運搬容器として、有効である。常温で運搬が可能な検体としては、炭疽菌、結核菌等の細菌類を例示することができる。
本発明によれば、万一、一次容器に破損が生じた場合にも、収容した検体が外部に露出するのを確実に阻止することのできる検体運搬容器が得られる。また、二次容器として特定の構造のものを用いることにより、危険物の輸送用の容器に対するUN規格(PI620,PI650)に規定する落下試験等もクリアーできる検体運搬容器が得られる。
以下、図面を参照しながら、本発明による検体運搬容器の一例を実施の形態に基づき説明する。最初に、本発明による検体運搬容器において用いられる、気密容器である二次容器の一例について説明する。図1は気密容器である二次容器の一実施形態を分解して示す斜視図、図2はその中蓋と埋込材との関係を説明するための図、図3は埋込材の他の形態を示す斜視図、図4は外蓋をする前の状態を断面で示す図、図5は外蓋を閉めて気密状態とした状態の断面図である。
図1に示す形態の気密容器50(以下では、気密容器である二次容器を単に気密容器という)は、樹脂材料からなる有底円筒状の容器本体10を備える。容器本体10の上端縁11は水平面とされており、また上端側の外周面には外ねじ12が一体成形されている。この例において、容器本体10はHDPE(高密度ポリエチレン、線膨張率11〜13×10−5・K−1)の一体成形品である。
容器本体10の上方開放部には、樹脂材料からなる中蓋20が取り付けられる。中蓋20は、前記容器本体10の上端側内周面に少なくとも一部が全周に亘って密接する周壁21と、該周壁21の下縁に連続する底板22と、前記した周壁21の上縁から水平に延びるフランジ23とを備える。この例において、中蓋20はLDPE(低密度ポリエチレン、線膨張率16〜18×10−5・K−1)の一体成形品である。図示の中蓋20は、取り出しを容易化するために、周壁21の内面側に内側フランジ24も有している。
必須ではないが、気密容器50は、前記中蓋20の周壁21と底板22とで区画される領域S内に入り込むことができ、入り込んだ状態でその上面31が前記中蓋20のフランジ23の上面よりも上位となる厚みbを持つ板状の埋込材30を備える。図2に示すように、中蓋20の底板22の内側面からフランジ23の上面までの距離をhとしたときに、前記埋込材30の厚みbは(h+a)であり、ここで、0<aであり、通常、aは2mm〜5mm程度である。
図示のように、上記の埋込材30は、平坦面でありかつ互いに平行な上面31と下面32と周面33を持つ円盤状であり、その直径は中蓋20の前記内側フランジ24の内径寸法にほぼ等しい。また、取り扱いを容易とするために中央に孔34が形成されているが、この孔34は省略してもよい。この例において、埋込材30は弾性材料で作られており、弾性材料としては発泡樹脂材料や発泡ゴム材料が挙げられる。
また、図3に示すような埋込材30Aを使用することもできる。この埋込材30Aは、埋込材30と同様に発泡樹脂材料や発泡ゴム材料等の弾性材料から作られており、その形状も中央に孔34を有する平面視がドーナツ状であるが、この孔34と周面33に通じる切り欠き35が形成されたものである。本発明者等は、中蓋20の周壁21と同径の埋込材30Aを製作し、この埋込材30Aを中蓋20へ入り込ませたり、中蓋20から取り出したりしながらかかる作業時の作業性の良否を検証した。その結果、所定幅の切り欠き35が形成されていることで、人手で埋込材30Aをその周方向に押圧して小寸法に弾性変形させ、その姿勢で埋込材30Aを取り出した場合にその取り出し易さは埋込材30の場合に比して向上することを実証している。
なお、この切り欠き35の幅は、例えば後述する外径110mm、厚み15mm程度の寸法の埋込材30Aにおいて2〜9mm程度が好ましい。幅が小さすぎてはその周方向の変形量も小さくなって作業性を向上させるに至らず、幅が大きすぎては人手による押圧力によって切り欠き35を挟む端面同士が当接するまでの変形量が過大になり過ぎ、埋込材30A自体を損傷させる危険があるからである。
本発明による気密容器50は、容器本体10に形成された外ねじ12に螺合する内ねじ41を周壁42の内周面に備えた、樹脂材料からなる外蓋40をさらに備える。この例において、外蓋40はPP(ポリプロピレン、線膨張率6〜10×10−5・K−1)の一体成形品である。外蓋40の天板43の裏面はほぼ平坦面であり、後記するように、容器本体10とねじ係合したときに、天板43の裏面は、埋込材30の前記上面31と、中蓋20の前記フランジ23の上面に衝接する。
気密容器50を使用するに当たっては、容器本体10内に、収容物(後に説明する、第2のシート状緩衝材で包囲された三次包装体)を収容する。次に、容器本体10の上方開放部に中蓋20を取り付ける。図4に示すように、中蓋20のフランジ23の下面は容器本体10の上端縁11に密接し、かつ中蓋20の周壁21の一部は全周に亘って前記容器本体10の上端側内周面に密接した状態となる。次に、中蓋20の周壁21の内側と底板22とで区画される領域S内に、前記埋込材30を入れ込む。図4に示すように、埋込材30の底面32は、中蓋20の底板22にほぼ密接した状態となり、その状態で、中蓋20の上面31は中蓋20のフランジ23の上面よりも前記距離aだけ上位の位置となる。
次に、外蓋40をその内ねじ41を前記容器本体10に形成した外ねじ12に螺合させた状態で、回転させながら締め付ける。締め付け後の状態が図5に示される。外蓋40のねじ嵌合による締め付けにより、埋込材30の上面31が外蓋40の天面43に押圧された状態で次第に圧縮され、中蓋20のフランジ23の上面と同じレベルまで圧縮される。その圧縮力は、中蓋20の底板22を下方に押し下げる力としても作用する。それにより、中蓋20と容器本体10との密接領域、中蓋20と外蓋40との密接領域、容器本体10と外蓋40との密接領域での密着力はさらに高くなる。
その状態で、容器本体10の内部に高い圧力をかけたとする。前記のように中蓋20の底板22には埋込材30の働きにより、下向きの高い圧力がかかっており、容器本体10内の内圧によって中蓋20の底板22が変形するのを抑制できる。それにより、上記した密接領域での気密性が低下するのを阻止することができ、高い気密性はそのまま維持される。さらに、−40℃というような極低温環境においたときに、樹脂素材に収縮が起きがちとなるが、その収縮も埋込材30を介して中蓋20に作用する力によって抑制できるので、やはり気密性が低下するのを効果的に阻止することができる。
この気密性の低下阻止機能は、気密容器50が高温環境におかれたときにも、当然に維持される。なお、常温環境で気密容器50を使用する場合には、樹脂素材に収縮が起こらない。そのために、前記した埋込材30を使用しなくても、所要の気密性を保持することができる。
次に、図6〜図14を参照しながら、二次容器として上記気密容器50を用いる場合を例として、本発明による検体運搬容器80をその作業手順とともに説明する。図6は検体を収容する一次容器90の一例を示しており、一次容器90には、通常、耐水性があり防漏性のものが用いられる。また、一次容器90に収容する検体は、総量50mlを越えないものとされる。図7はシート状の吸収材91の一例を示しており、例えば、紙材に吸水性ポリマーを混入して作られる。
最初に、図8に示すように、検体を収容した検体容器である一次容器90をシート状吸収材91の上に置き、シート状吸収材91で一次容器90を巻き込んで、図9に示すように、一次包装体92とする。図示の一次包装体92において、一次容器90の周囲はシート状吸収材91で多層に巻き込まれ、上方と下方は開放した状態となっているが、後記するように、二次包装体94となった段階では、一次容器90はその全体がシート状吸収材91により包み込まれた状態となる。
次に、前記した一次包装体92を、第1のシート状緩衝材93で包み込む。第1のシート状緩衝材93は発泡樹脂からなる薄手のシートであってもよいが、好ましくは3層の樹脂フィルム構造からなる含気泡緩衝材である。樹脂フィルムとしてはポリエチレン系の樹脂フィルムが好適であり、好ましくは、前記第1のシート状緩衝材93の内側面には、適宜の粘着剤が塗布される。図10(a)は、第1のシート状緩衝材93の上に一次包装体92を置いた状態であり、第1のシート状緩衝材93で一次包装体92を巻き込むことにより、図10(b)に示す二次包装体94とされる。この状態では、二次包装体94の上方と下方は開放した状態なので、図10(c)に示すように、上端側と下端側とを折り込むことにより、一次包装体92は、その全体が第1のシート状緩衝材93で包み込まれた状態となる。
上記のように、図10(c)に示す状態となった二次包装体94において、検体を収容した一次容器90はその全体がシート状吸収材91で包囲され、さらにその全体が第1のシート状緩衝材93で包囲された状態となる。そのために、万一、一次容器90から検体の漏洩があったときでも、漏洩した検体はそのすべてがシート状吸収材91に吸収される。シート状吸収材91から検体が漏れ出るような場合でも、一次包装体92はその全体が第1のシート状緩衝材93で包囲されているので、検体の漏洩はそこでも確実に阻止される。
第1のシート状緩衝材93として、その内面に粘着剤が塗布されたものを用いる場合には、積層した緩衝材間での密着性が向上するために、包装が確実になるともに、前記のように、万一、検体が一次包装体92から外部に漏れ出るような事態が生じた場合でも、二次包装体94を越えて外部に漏れ出るのを、一層確実に阻止することができる。
図示しないが、シート状吸収材91による一次容器90全体の包み込みをより安定したものとするために、図9に示す状態の一次包装体92における、シート状吸収材91の上端側と下端側を予め側方に向けて折り込み、一次容器90の上方と下方側もシート状吸収材91で包み込まれた状態とし、その状態の一次包装体92を図10に示したようにして第1のシート状緩衝材93で包み込むようにしてもよい。
上記した二次包装体94を、前記した気密容器である二次容器50内に収容する。その際に、更なる緩衝性を確保するために、二次包装体94を第2のシート状緩衝材95で包囲して三次包装体96とする。第2のシート状緩衝材95は発泡樹脂からなる薄手のシートであってもよいが、好ましくは2層あるいは3層の樹脂フィルム構造からなる含気泡緩衝材である。樹脂フィルムとしてはポリエチレン系の樹脂フィルムが好適である。
包囲する作業手順は任意であるが、図11に示すように、所要の大きさの第2のシート状緩衝材95を、前記した二次容器50を構成する容器本体10の開放口の上に拡げた状態で置く。そして、図12(a)に示すように、第2のシート状緩衝材95を容器本体10内に押し込む。それにより、容器本体10の底面および周側面の全内側面には、緩衝材として機能する第2のシート状緩衝材95が位置した状態となり、さらに、容器本体10の開放口の上方には、第2のシート状緩衝材95の残りの部分が飛び出した状態となる。
その姿勢となった第2のシート状緩衝材95で作られる内部空間領域に、前記した図10(c)に示す姿勢となった二次包装体94を入れ込む。その状態が図12(b)に示される。二次包装体94を入れ込んだ後、容器本体10から飛び出ている部分の第2のシート状緩衝材95を容器本体10内に押し込むことにより、図12(c)に示すように、二次包装体94はその全体が第2のシート状緩衝材95で包囲された状態の三次包装体96とされ、それが容器本体10内に収容される。
その後、図1〜図5に基づき説明したようにして、容器本体10に中蓋20を取り付ける。必要に応じて、中蓋20内に埋込材30(または30A)を置き、外蓋40をねじ込み固定することにより、図13(a)に示すように、二次包装体94の全体が第2のシート状緩衝材95で包囲された三次包装体96が気密容器である二次容器50内に収容された状態となる。
最後に、図13(b)に示すように、三次包装体96を収容した二次容器50の周側面の外側に片段ボールのような第3のシート状緩衝材60を巻き付け、それを図13(c)に示す段ボール箱のような外箱容器である三次容器70内に収容する。そして、必要な封止作業を行うことにより、図14に示すように、本発明による検体運搬容器80とされる。
本発明による検体運搬容器80は、第1、第2および第3のシート状緩衝材93,95および60の物性値、二次および三次容器50および70の強度等を適切に設定することにより、前記したUN規格が設定する落下試験、破裂試験をクリアーする包装材とすることができる。また、一次容器90から検体が漏洩する場合でも、それを外部にまで漏出させない検体運搬容器80とすることができる。
以下、一つの実験例により前記した気密容器である二次容器50が高い気密性を有していることを説明する。
1.図1,2,4,5に示す形状の気密容器および埋込材を製造した。
容器本体10は、内径120mm、容器内高さ125mm、厚み2mmのものをHDPE(高密度ポリエチレン、線膨張率11〜13×10−5・K−1)で一体成形した。
中蓋20は、周壁部21の外径120mmおよびフランジ面から底板までの深さ12mm、フランジ幅4mm、厚み2mmのものをLDPE(低密度ポリエチレン、線膨張率16〜18×10−5・K−1)で一体成形した。
外蓋40は、外径125mm、高さ17mmであり、PP(ポリプロピレン、線膨張率6〜10×10−5・K−1)で一体成形した。
埋込材30は、外径110mm、厚み15mmであり、倍率30倍の発泡ポリスチレンで成形した。用いた発泡ポリスチレンの線膨張率6〜8×10−5・K−1である。
2.容器本体10に中蓋20を取り付け、中蓋20内に埋込材30を入れ込み、外蓋40をねじ嵌合により締め付けて、気密容器50とした。
3.容器本体10の底面に穴を空け、コンプレッサに接続するゲージ付きエアホースを容器本体10内に入れ、シールした。コンプレッサを作動して、気密容器50内に130kPaの内圧をかけた。その状態で−40℃の冷凍庫に30分放置した。30分放置後の気密容器50内の内圧は98kPaであった。外蓋40のねじ嵌合部に水をつけてエアー漏れを評価したところ、エアー漏れは見られなかった。
4.上記と同様にして気密容器50内に130kPaの内圧をかけたものを用意した。それを−40℃に冷やした不凍液(エチレングリコール液)につけて、外蓋40のねじ嵌合部からのエアー漏れを評価した。評価の間、内圧を95kPaに維持した。やはり、エアー漏れは見られなかった。
次に、上記の気密容器を二次容器50として用いた本発明による検体搬送容器80について行ったUN規格検査基準に基づく落下試験について説明する。試験では、一次容器90として、外直径47mm、高さ90mmのガラス製規格瓶(株式会社アズワン製、品番5−130−06)を用い、そこに検体想定品として不凍液であるエチレングリコール100ccを封入した。それを、270mm×155mmのシート状吸収材91(サンエムパッケージ株式会社製、プライナプキン(紙)、吸水ポリマーとしてサンフレッシュST−572を1.25g含む)を用いて包装し、図9に示す形態の一次包装体92とした。
前記一次包装体92を、210mm×210mmの大きさであり、3層の樹脂フィルム構造からなる含気泡緩衝材であって内面側に粘着剤が塗布されている第1のシート状緩衝材93(堺化学工業株式会社製、#641SL、素材樹脂79%以上ポリエチレン、粘着剤:スチレン・スチレンブタジエン・オレフィン結晶 ブロック共重合体)を用いて包装し、図10(c)に示す形態の二次包装体94とした。
210mm×530mmの大きさであり、3層の樹脂フィルム構造からなる含気泡緩衝材である第2のシート状緩衝材95(株式会社和泉製、VSL−100C,素材樹脂:ポリエチレン)を、図11に示すように、二次容器50を構成する容器本体10の開放口の上に拡げた状態で置き、図12(a)〜(c)に示した手順で、前記二次包装体94が第2のシート状緩衝材95で包み込まれた三次包装体96を二次容器50の容器本体10内に収容した。三次包装体96を収容した容器本体10に中蓋20を取り付け、中蓋20内に埋込材30を入れ込み、外蓋40をねじ嵌合により締め付けて、図13(a)に示すような、前記三次包装体96を収容した気密容器である二次容器50とした。
図13(b)に示すように、三次包装体96を収容した二次容器50の周側面の外側に、幅140mm×長さ2500mmの片段ボール(株式会社タナツクス製、クレ段D4特芯A−F,中芯坪量115g/m2,ライナー坪量120g/m2)を第3のシート状緩衝材60として巻き付けた。それと同じものを複数個用意した。
図13(c)に示す形状であり、内寸177mm×170mm×147mm(高さ)の段ボール製外箱容器を三次容器70として用意した。段ボールはA段(株式会社山田段ボール製)であり、坪量(g/m2)(板部/波部/板部)が、(220/160/220)、(280/160/280)、(440/160/440)の3種のA段を用いて、3種類の三次容器70を用意した。それぞれに、図13(b)に示した、三次包装体96を収容した二次容器50の周側面の外側に片段ボールのような第3のシート状緩衝材60を巻き付けたものを収容し、図14示す、一次容器90を収容した検体運搬容器80を複数個用意した。
一次容器90を収容した検体搬送容器80を−18℃環境にある恒温槽に24時間放置した後、UN規格の検査基準を満たす9mの高さからの底面垂直落下試験を行い、一次容器90の破損の有無を観察した。その結果を表1に示した。
表1において、○:一次容器に破損がない。×:一次容器に破損がある。
上記した検体搬送容器80を構成する段ボールの坪量を変えて行った落下試験の結果から、本発明による検体運搬容器、特に、三次容器が段ボール箱である場合に、段ボールの坪量を適宜選択することにより、UN規格基準(落下試験)をクリアーする検体運搬容器が得られることがわかる。
90…検体を収容する一次容器、91…シート状の吸収材、92…一次包装体、93…第1のシート状緩衝材、94…二次包装体、95…第2のシート状緩衝材、96…三次包装体、50…気密容器である二次容器、60…第3のシート状緩衝材緩衝材、70…三次容器、80…検体運搬容器、10…容器本体、11…容器本体の上端縁、12…容器本体の外ねじ、20…中蓋、21…中蓋の周壁、22…中蓋の底板、23…中蓋のフランジ、24…中蓋の内側フランジ、S…中蓋の周壁と底板とで区画される領域、30,30A…埋込材、31…埋込材の上面、32…埋込材の下面、34…埋込材の孔、35…切り欠き、40…外蓋、41…外蓋の内ねじ、42…外蓋の周壁、43…外蓋の天板