JP4968430B2 - セキュリティ情報目視判定装置 - Google Patents

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Description

本発明はセキュリティ情報目視判定装置に関する。詳しくは、赤外励起可視蛍光発光材料、紫外励起可視蛍光発光材料、可視光照射により視認可能な材料からなる微細・高精細パターン等の各種認証手段の複合してなるセキュリティ情報媒体の判定装置に関する。
すなわち、赤外発光LED、紫外発光LED、可視光発光LEDを同一基板に配置させた光源を有する装置により、各LEDの発光を順次切り替えして照射し、その反射光を目視で観察して蛍光発光パターンを判定し、この種セキュリティ情報媒体の真贋判定を確実にできるようにしたセキュリティ情報目視判定装置に関する。
本装置の具体的用途は、身分証明書、クレジットカード、バンクカード、小切手、通帳、パスポート、プリペイドカード、通行券、入場券、定期券などの真贋判定に関する。
従来から、紫外励起可視蛍光発光材料や可視光照射により視認性の向上するホログラム、マイクロ文字などの各種セキュリティ情報媒体が採用されている。紫外励起可視蛍光発光材料は例えば、ドイツ国特許第497037号明細書が同発光材料を有価証券に用いることを記載するように、従前から使用されているものである。
また、情報記録媒体にホログラムや光回折格子パターンを用いることは、例を挙げるまでもなく周知であり、マイクロ文字を使用することも、特開平8−324094号公報や特開2002−274001号公報等に記載されている。
以上の技術に加えて近年、赤外励起可視蛍光発光材料も開発され情報媒体に実用化されてきたので、セキュリティ情報媒体の態様はますます多様化している。
赤外励起可視蛍光発光材料は、無機材料を赤外線で励起して、より波長の短い可視光を発光させるもので、例えば、特許文献1は、赤外可視波長上方変換(アップコンバージョン)蛍光体材料として、ディスプロシウム(Dy)臭化物を記載し、特許文献2は、臭化ガドリニウム(Gd)を母材とし、発光源のエルビウム(Er)イオンと吸光源のディスプロシウムイオンを含む1.3μ域の赤外光を励起光として発光する赤外励起蛍光体を記載している。また、特許文献3は、無機材料からなる赤外可視波長上方変換材料として、少なくともエルビウム(Er)および塩素(Cl)の2種類の元素、あるいはそれらの化合物を含む材料を記載している。
一方、紫外励起可視蛍光発光材料には、無機蛍光顔料と有機蛍光顔料とがあり、前記のように従前から知られ実用されている。無機系では、同様に母材を希土類金属で賦活した材料が使用され、ツリウム賦活バナジン酸イットリウムやツリウム賦活タングステン酸カルシウム、ユーロピウム賦活バナジン酸イットリウム等の各種が知られている。有機系では、クマリン類、ベンゾオキサジン誘導体、ユーロピウム錯体等が知られている。
このような可視光下では、白色または無色であって目視で確認できず、赤外線や紫外線を照射したときにのみ発光する特徴を活かした情報媒体は、特許文献4、特許文献5、特許文献6等に記載されるように、既に実用されている。また、ホログラムやマイクロ文字等に対して特定の波長の可視光を照射することにより、隠しパターンや特定の反射光を生じさせ、真性を証明することも既に行われている。
他方、広く用途展開されるためには、簡単に安全に判別できる判定装置の開発が必要であるが、紫外線蛍光体に用いられるブラックライトのように簡便に使える装置はほとんど提案されていない。また従来、赤外励起可視蛍光発光材料の励起光源としては、十分な発光を得るために、レーザー光源が使用されていた。レーザー光源は、装置の小型化および長寿命という市場要求により、ガスレーザーから半導体レーザが多く使用されている。
半導体レーザは技術の進歩により小型化、低価格化が進み、長寿命、直接変調が可能であるという特徴を持ちその利用分野が拡大しているが、装置の設置および姿勢調整にあたっては、手間および時間がかかること、さらには人体(目)へ危害を及ぼす危険性が高いという欠点がある。
そこで、本願出願人は赤外励起可視蛍光発光材料からなる情報媒体の読取装置として、赤外線発光ダイオードを使用した蛍光体読取装置を、特許文献8により提案している。
しかし、赤外発光ダイオード(LED)のみを使用した読取装置は、紫外線励起蛍光発光材料や可視光励起蛍光発光材料を併せて使用したセキュリティ情報媒体をも含めて、広範囲に使用できない問題がある。そこで、本願出願人は、このような多様なまたは複合したセキュリティ情報媒体を目視判定できる装置を提案するものである。
蛍光インクの記録情報読取装置として提案されているものには、例えば、特許文献7があるが、このものは光源としては単一のLEDのみを使用しCCDセンサで読み取りするものであり、本願とは目的と構成を異にしている。特許文献4、特許文献5も波長980nmの赤外線または半導体レーザを使用すると記載するのみで具体的な光源構成については明らかにしていない。
特開平8−69025号公報 特開平8−259942号公報 特開平6−102550号公報 特開2003−340954号公報 特開2003−288019号公報 特公平2−12196号公報 特開平11−209675号公報 特願2005−007126
上記のように、セキュリティ情報媒体が、赤外励起可視蛍光発光材料からなるパターン、紫外励起可視発光材料からなるパターン、可視光照射により視認可能な材料からなる微細・高精細パターンのいずれかの組み合わせから構成されている場合には、簡易な装置で確実に判別できる判定装置が提供されていなかった。
そこで、本願出願人は、そのような複合したセキュリティ情報媒体であっても、あるいはセキュリティ内容が明確でなくても、手軽に目視判定できる装置の実現を図るべく、鋭意研究して本発明の完成に至ったものである。
上記課題を解決する本発明の要旨の第1は、セキュリティ情報媒体の判定装置であって、外光を遮光する遮光性筐体内に、セキュリティ情報媒体を照射するピーク発光波長940nmの赤外発光LED、紫外発光LED、可視光発光LED個から12個を、読み取りするセキュリティ情報媒体の照射面中心に対する鉛直線を中心軸としてその周囲に、偏在しないように円環状に循環配置し、かつ可視光発光LEDのセキュリティ情報媒体に対する照射角度が、可視光発光LED自体の角度を変えることにより可変であるようにして当該各LEDを順次または同時発光照射し、セキュリティ情報媒体から生じる蛍光パターンまたは微細・高精細パターンを目視で読み取りすることを特徴とするセキュリティ情報目視判定装置、にある。
上記課題を解決する本発明の要旨の第2は、セキュリティ情報媒体の判定装置であって、外光を遮光する遮光性筐体内に、セキュリティ情報媒体を照射するピーク発光波長940nmの赤外発光LED、可視光発光LEDの各4個から12個、読み取りするセキュリティ情報媒体の照射面中心に対する鉛直線を中心軸としてその周囲に、偏在しないように円環状に循環配置し、かつ可視光発光LEDのセキュリティ情報媒体に対する照射角度が、可視光発光LED自体の角度を変えることにより可変であるようにして当該各LEDを順次または同時発光照射し、セキュリティ情報媒体から生じる蛍光パターンまたは微細・高精細パターンを目視で読み取りすることを特徴とするセキュリティ情報目視判定装置、にある。
上記本発明の要旨の第1および第2において、紫外発光LEDが、ピーク発光波長375nmのものとすることができ、また、LEDをパルス発光させることができるようにする場合には発光強度を高めることができ判定を確実かつ容易にする。
さらに、LEDの発光順序を切り替え、かつ同時発光させるスイッチを有するようにすれば、所望の光源により所定の蛍光発光を観察することができる。

また、上記本発明の要旨の第1において、セキュリティ情報媒体は、赤外励起可視蛍光発光材料からなるパターン、紫外励起可視発光材料からなるパターン、可視光照射により視認可能な材料からなる微細・高精細パターン、の組み合わせから構成されているようにすることができ、本発明の要旨の第1および第2において、微細・高精細パターンはホログラム、光回折格子またはマイクロ文字である、ようにすることができる。
(1)本発明のセキュリティ情報目視判定装置は、光源に複数種のLEDを用いているので、異なる励起光を発光することができ、複数の異なる蛍光材料がセキュリティ情報媒体に用いられている場合も、それぞれの蛍光発光を生じさせて真贋判定できる。また、情報媒体のセキュリティ内容が明確ではない場合も、光源を切り替えることにより、いずれかの蛍光を検知して真贋判定できる。
(2)光源としてLEDを使用して装置化したので、観察部の設置や光源の姿勢調整といった手間、準備時間を必要とせずに、直ちに判定装置として使用できる簡易操作性を有する。また、電源装置を含め軽量で可搬性に優れる。
(3)光源にLEDを使用しているので、構造的に人体(目)に対して損傷を負わせるレーザ光の危険性が回避され、安全で操作性の優れた装置になっている。
(4)手動により簡単に各LEDの発光を切り替えることができる。
(5)光源を遮光性筐体内に収容したので、判定装置が自然光下に置かれていても、蛍光発光を確実に識別できる装置を実現している。すなわち、読取時に暗室等の周囲環境を必要としない。
本発明は、赤外励起可視蛍光発光材料からなるパターン、紫外励起可視蛍光発光材料からなるパターン、可視光照射により視認可能な材料からなる微細・高精細パターン、の組み合わせから構成されるセキュリティ情報媒体の判定装置である。
赤外励起可視蛍光発光材料からなるパターンとは、前記のように赤外可視波長上方変換(アップコンバージョン)蛍光体材料を使用したパターンである。また、紫外励起可視蛍光発光材料からなるパターンとは、紫外線により可視光域に蛍光発光する蛍光体材料を使用したパターンである。例えば、特公平2−12196号公報(特許文献6)中の例4等は、紫外線励起可視光発光の蛍光体を有価証券に用いることを記載し、特開平6−297883号公報は、紫外線励起により蛍光を発するバーコード等の情報パターン印刷物、について記載している。いずれも可視光下では、白色または無色であって目視で確認できない程度のものが好ましい。着色していては目視確認可能であり、蛍光色も不純となるからである。なお、各蛍光体材料の詳細については後述する。
可視光照射により視認可能な材料からなる微細・高精細パターンとは、ホログラムや光回折格子パターン、あるいはマイクロ文字等を意味する。ホログラムは可視光照射により立体視が可能になり、また特定の色彩を生じることができる。光回折格子パターンの場合も、可視光照射により特定の方向に特定の色彩の回折光を発光する。これらの場合は、ホログラムや光回折格子パターン以外の通常のパターンを混在させたパターンとしておけば、可視光照射により立体視が可能になり、または特定の色彩を呈することにより、セキュリティ情報を含まない偽造品とを判別することができる。
マイクロ文字もセキュリティ情報媒体に多用されている。特開2002−274001号公報は、反射角度により異なる色彩を呈する鱗片状粉末含有層に、長辺0.5mmのマイクロ文字を設けた画像記録体を記載している。特開平10−76745号公報は、無機蛍光体を含有する第1の印刷層にマイクロ文字からなる情報を形成した偽造防止印刷物を提案している。特開2000−15939号公報は、蛍光潜像によりマイクロ文字を形成することを記載している。当該公報の場合、マイクロ文字は0.2ポイントの大きさ、好ましくは0.1ポイントの大きさを推奨している。1ポイント=0.3759mmとした場合、0.1ポイントは、38μm程度となる。本願の微細・高精細パターンとは、ホログラムや回折格子パターンを生じるような光の波長オーダーから最大でも長辺0.5mm程度のマイクロ文字の大きさと考えることができる。
以下、本発明のセキュリティ情報目視判定装置について図面を参照して説明する。
図1は、セキュリティ情報目視判定装置の概略外観図、図2は、判定装置本体部の鉛直方向断面図、図3と図4は、光源部におけるLEDの配置を示す平面図、図5は、LED切替スイッチ部を示す図、図6は、LEDに対する電源系統を示す図、図7は、LEDに加えられるパルス波形を示す図、図8は、セキュリティ情報媒体の例を示す図、である。
本発明のセキュリティ情報目視判定装置1は、図1外観図のように、判定装置本体部2に電源装置6が接続コード7により接続した構成になっている。判定装置本体部2は、遮光性筐体3の内部に光源として3種類または2種類のLEDを内蔵している。
3種類のLEDを内蔵する場合は、第1の発明(請求項1)に該当し、赤外発光LED、紫外発光LED、可視光発光LEDを備えている。赤外発光LEDは、赤外励起可視蛍光発光材料を発光させ、紫外発光LEDは、紫外励起可視蛍光発光材料を発光させ、可視光発光LEDは可視光により蛍光を発する蛍光発光材料を発光させる目的のためである。それぞれ所定の蛍光強度が得られるように複数個のLEDが用いられる。
2種類のLEDを内蔵する場合は、第2の発明(請求項2)に該当し、赤外発光LED紫外発光LEDを備えることになる。第1の発明のように全てのLEDを備えれば全てのセキュリティ情報媒体の判定に適するが、装置の大型化とコスト高を招く問題がある。従って、セキュリティ情報媒体の内容に応じて2種のLEDのみを選択すれば装置の簡易化を図ることができる。

電源装置6は、LEDに電力を供給するもので、レギュレータにより電圧を可変するようにされている。間欠発光させるためにはパルス発生器を使用する。いずれのLEDの場合も、20〜110mA程度の直流電圧が供給される。電源スイッチ61は判定装置本体部2側に備えるのが使用勝手がよい。図1には、図示してないが、LED切替スイッチをさらに備えることができる。
遮光性筐体3の外形は図1のように2段の円筒状にしてもよく、截頭した円錐状体や立方体形状のものであってもよい。外光が入らないようにし内面は無反射性にする。
上面3uおよび下面3dは平行な平面開口を形成していて、上面3u側開口から蛍光像を観察して読み取りする。上面側には好ましくは蛍光像を拡大して目視観察可能なように凸レンズ5を装着する。下面3d側はセキュリティ情報媒体10面に直接載置し、LED照射して蛍光像を観察可能にするため、少なくとも照射部分が開口面にされている。
複数種のLEDの先端は、下面3dのセキュリティ情報媒体10に接触するか近接するように配列される。図示してないが、複数種のLED4の下面側であって、セキュリティ情報媒体10との間に集光レンズを設けてもよい。
遮光性筐体3の縦寸法(筒長)Lは、凸レンズ5の焦点距離等により調製する。遮光性筐体3は、プラスチック成型材料が好適に用いられるが、鉄板やアルミニウム板等の金属材料でも構成できる。
遮光性筐体3の下面3dは、通常、観察するセキュリティ情報媒体10に直接接触するようにするが、数mm程度の範囲内であれば、情報媒体から一定の間隔距離を置いて位置するようにしてもよい。その場合は遮光性筐体3を支持する脚部を設ける。ただし、間隔距離が、あまり大きくなる場合は、外光が多くなり蛍光発光像の視認が困難となる。セキュリティ情報媒体10は試料台15に平面状に載置されて読み取りされる。
図2は、判定装置本体部の鉛直方向断面図であるが、第1発明の場合を示している。
遮光性筐体3の下面3d側に接近してLED4が複数個配置される。図2の場合、赤外発光LED4r、紫外発光LED4v、可視光発光LED4gが、それぞれ2個図示されているが、図示の都合であって、各LED4の数は、実際にはさらに多数必要となる。
充分な照明光を得るために好ましくは、各6個ないし12個程度の数、が適当であることが確認されている。LED4は、照明するセキュリティ情報媒体10の照射部を中心に、当該照射面の鉛直線を中心軸としてその周囲に配置する。好ましくは略円環状に配置するのがよい。LED4は情報媒体の識別情報12に接近する方が強い蛍光発光が得られるが、LED4の設置位置はLEDの発光強度により可変できる。LED4のレンズ状頭頂部がセキュリティ情報媒体10に接触する位置から、最大で150mm程度離れる位置までに設置できるが、一般的には、10〜30mm程度が最適値となる。
セキュリティ情報媒体10は、当該複数個のLED4からの照射光を受光して蛍光発光するが、発光した蛍光像は遮光性筐体3の上方の凸レンズ5に到達する。観察者は、この蛍光像を観察して情報記録媒体の真偽を判定する。LED4rは赤外発光、LED4vは紫外発光であるため、目で見ても光線は不可視である。ただし、蛍光発光した識別情報12は例えば、緑色等に輝いて見える。LED4gは可視光発光であるので、セキュリティ情報媒体10に用いられている可視蛍光体により選択して使用する。例えば、緑色発光、青色発光、赤色発光であり、それら3色の組み合わせ(3波長白色)にもできる。青色LEDと黄色の蛍光体(2波長白色)を使用した白色LEDであってもよい。緑色発光、青色発光、赤色発光も各種の発光波長のものが市販されている。
LEDは位相の揃ったレーザー光と異なり拡散光であるため、直接観察者の目に入っても人体に危害を及ぼすことは少ない。
赤外発光LEDとして実用化されているものは、3種類に分類される。第1はGaAs:Si系LED、第2はGaAlAs系LED、第3はGaInAsP系LEDである。GaAs結晶中に添加されたSi系は周期律表で14族元素であるため、ドナーにもアクセプターにもなる両性を示す。どちらになるかは結晶成長温度などの成長条件によって決まり、pn接合形成にはこの性質が利用されている。
紫外発光LEDは、青色LEDよりもさらに短波長域の発光であり、日亜化学株式会社やナイトライド・セミコンダクター(徳島県鳴門市)等により市販されている。当該LEDはGaN系の材料からなると見られる。波長350nmのものも実現しているといわれるが出力は、0.1mWと低出力である。市販品としては、波長365nm、出力1.4mW、波長375nm、出力1.5mW、波長385nm、出力3.5mW、波長395nm、出力3.0mW等のものがある。
蛍光発光像は、肉眼で観察可能であるが、接眼部に凸レンズ5を設けることにより拡大された識別情報が見られ視認が容易になる。凸レンズ5は、プラスチックレンズでもガラスレンズであっても構わない。凸レンズ5から50mmの位置にセキュリティ情報媒体10がある場合、焦点距離30〜40mm程度の凸レンズで、1.3〜4倍程度の拡大率が得られ、好適と考えられる。凸レンズ5は、上面側開口形状に合わせて円形等のものが用いられるが、その周囲を金属製枠体等で支持して遮光性筐体3に装着できる。
識別情報12は、セキュリティ情報媒体10の面上で直径10mm程度の円形エリアサイズにまとめられているのが適切である。識別情報12が10mm程度よりも大きくなると単位面積あたりの照射光量が減少し蛍光像が見難くなるからであり、逆に識別情報12が10mm程度よりも小さくなると情報媒体上のセキュリティ印刷面積を過小にしなくてはならないからである。
図示していないが、LED4とセキュリティ情報媒体10の間に集光レンズを挿入してもよい。これにより識別情報12に対する照明強度を上げることができる。多数のLEDを使用する場合、LED集合群の発光を効率よく集光するためには集光レンズを設けるのが好ましい。集光レンズの挿入により遮光性筐体3の縦寸法L(図1)は拡大される。
図3は、光源部におけるLEDの配置を示す平面図であって、第1発明の場合である。図3のように、遮光性筐体3の内面に嵌合する配線基板8を設け、その中心部に円形開口8pを設ける。円形開口8pを通して発光した蛍光像を凸レンズ5に到達させるためである。LED4r,4v,4gは当該開口8pの周囲に適宜に配置できる。各発光LEDが偏在しないように循環して配置するのが好ましい。LED4を取り付けする配線基板等も市販されているので、当該基板の中心に円形開口8pを穿って使用することができる。
図3の場合は、各4個のLED4r,4g,4vが配列している例であるが、発光輝度等により各LEDの数は調製する。実際にはより多数が好ましい。
円形開口8p内の数字「1」は識別情報12であって、例えば、赤外励起により緑色に輝く蛍光発光文字を意味する。配線基板8の外寸は遮光性筐体3の内寸に合わせる。また、円形開口8pの径は、15mm〜30mm程度とする。
図4も、光源部におけるLEDの配置を示す平面図であるが、第2発明の場合である。この例では、8個の赤外発光LED4rと8個の可視光発光LED4gが備えられている。LED4が配線基板8等に取り付けされるのは、図3の場合と同様である。この例の特徴は、可視光発光LED4gには、LEDの照射角度を可変に調製する機構が設けられていることである。各可視光発光LED4gは、その略中心部分を支点として配線基板8に支持されているが、当該支点から上方に数mm離れたLED4gの端子引出し側部分に照射角度を調製する部材20a,20bが結合している。当該部材20a,20bを遮光性筐体3の外側の螺子21a,21bを回転して、矢印y1,y2のように微小距離出入させることにより照射角度が可変にされる。可視光発光LED4gは、蛍光像の視認の妨げとなるので、通常、凸レンズ5側に光を発しないように反射板等が設けられる。したがって、部材20a,20bは当該反射板等に結合させればよい。
部材20a,20bは、開口8pの右側のLED4gと左側のLED4gを分割して角度調製するのが好ましく、螺子21a,21bも左右双方に設ける。
照射角度を可変にするのを可視光発光LED4gに限るのは、ホログラムや光回折格子のような微細・高精細パターンにおいては、通常、可視光の照射により立体感や回折光を生じるようにされているからである。特に照射角度が変わることにより、回折光が顕著に変化し、ホログラムの隠しパターンが現れるようにされている場合もある。LEDは完全な指向性光源ではないが、角度調製によりある程度の指向性改善効果は得られる。
右側のLED4gと左側のLED4gを分割して角度調製するのが好ましいのは、一様に同方向に傾斜させると片側は識別情報12部分を照射しなくなるからである。したがって、片側だけのLED4gのみを用いられるように、当該側LED4gのみを電源オンとし、他方側のLED4gは点灯しないように電源オフにさせる回路を設けてもよい。
このようなLED4gの照射角度調製機構は、第1の発明の判定装置に使用してもよいものである。
図5は、LED切替スイッチ部を示す図である。LED切替スイッチ62は電源装置6の表面あるいは遮光性筐体3の側面に取り付けする。電源スイッチ61の「ON」「OFF」によりLEDの発光が可能になる。また、LED切替スイッチ62をプッシュすることにより、IR(赤外)、UV(紫外)、VIS(可視光)表示ランプ63が点灯するようにされている。単一のLEDのみの発光に限らず、2種または3種のLEDが同時発光するようにしてもよい。第2発明の場合は、いずれか2種の表示ランプとなるのは当然のことである。
図6は、LEDに対する電源系統を示す図であるが、第1発明の場合である。LEDに対する電源は、図6のようにパルス発生器64に対して、各n個の赤外発光LED4r,4v,4gを接続する。各LEDの数は同一の数にする必要はなく、輝度等により調製する。LED4の内部抵抗が小さいので直列に抵抗R(Rr,Rv,Rg)を接続するのが好ましい。第2発明の場合は、LED4rとLED4vのいずれかとLED4gの2種光源となる。LED4gを右側と左側に分けてもよいのは前記のとおりである。
電源には、USBバスパワーまたは商用電源(交流100V)を直流に整流して使用できるが、乾電池等を用いてもよい。LED4r,4v,4gの数が多い場合はUSBバスパワーでは電力不足となる。
図7は、LEDに加えられるパルス波形を示す図である。発光出力をパルス発生器64により発生させ、LEDをパルス発光せさる。図7の場合、パルス幅tw=100μsec(周期T=10msec)であることを示しているがパルス幅tw=100μ〜150μsecの範囲で可変である。パルス幅が短く周期も短い場合、視覚的には連続発光しているようにも見える。このようにパルス発光することで発光強度を高められる。
次に、セキュリティ情報媒体について説明する。図8は、セキュリティ情報媒体10の例を示す図である。図8(A)は、基材11面に可視蛍光発光インキによる固定識別情報12が全面に設けられている例である。この場合、固定識別情報12は、赤外励起可視発光、紫外励起可視発光、可視光発光の蛍光体が混在するものであってもよい。
図8(B)は、基材11面に異なる可視蛍光発光インキによる固定識別情報12a,12b,12cが部分的に設けられている例である。可視光蛍光発光インキがホログラムやマイクロ文字を含む微細・高精細パターンからなっていてもよい。
図8(C)は、基材11面に異なる可視蛍光発光インキによる可変識別情報13a,13bと、オフセット印刷等により印刷された蛍光色素ではない固定情報14が設けられている例である。
これらの識別情報12の域は前記のように、セキュリティ情報媒体10の面上で、直径10mm程度の円形エリアサイズが適切である。
なお、固定識別情報とは、マークや商標、商品名等のセキュリティ情報媒体10に共通の不変情報をいい、可変識別情報とは、シリアル番号、製造ナンバー、不定文字表示等のセキュリティ情報媒体10毎に変化する情報のことである。従って、可視蛍光発光インキによる情報は固定識別情報であっても可変識別情報であってもよい。蛍光発光によりその特徴が認識できれば良いからである。
情報媒体の基材11としては、特に限定されず、例えば、普通紙、上質紙、コート紙、トレーシングペーパ、各種プラスチック等、いずれの材質のシートであっても良く、また、立体成型物でも良い。形状的には、カード、パスポート、商品券、証明書、チケット、カタログ、カメラ、電子部品、コンピュータ機器、家電製品、等であっても構わない。
本発明において、可視蛍光発光インキには、第1に無機蛍光色素であって主に赤外線を吸収し、アップコンバージョン蛍光発光する希土類元素含有微粒子を分散した印刷インキがあり、第2に無機または有機蛍光色素であって紫外線を吸収して可視光蛍光発光する材料を分散した印刷インキがある。第3に同様に、無機または有機蛍光色素であって可視光を吸収して可視光蛍光発光する材料を分散した印刷インキがある。
赤外線吸収、アップコンバージョン発光する希土類元素含有微粒子には、Ca、Ba、Mg、Zn、Cdなどの酸化物、硫化物、ケイ酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩などの結晶を主成分とし、Mn、Zn、Ag、Cu、Sb、Pbなどの金属元素もしくはランタノイド類などの希土類元素を活性剤として添加して焼成して得られる顔料を用いることができる。具体的には、YF3 :Er,Yb、ZnGeO:Mn、YO:Eu、Y(P、V)O:Eu、NaLnF4 :Er、YOSi:Eu、YLiF4 :Er等、がある。
このアップコンバージョン発光する希土類元素としては、一般的には3価のイオンとなる希土類元素を挙げることができ、中でもエルビウム(Er)、ホルミウム(Ho)、プラセオジム(Pr)、ツリウム(Tm)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)およびセリウム(Ce)からなる群から選択される少なくとも1つ以上の希土類元素が好ましく用いられる。
アップコンバージョン発光する希土類元素の励起波長としては、例えば、700nm〜2000nmの範囲内の波長であり、中でも800nm〜1600nmの範囲内の波長であることが好ましい。このようにアップコンバージョン発光が可能な希土類元素を用いたものは、エネルギーの高い光、例えば紫外光等で励起する必要がない。
そして発光波長は、検出の容易さから通常は可視光であることが好ましいので、アップコンバージョン発光の場合はこれより波長の長い赤外光が励起光として用いられる。
好適態様に用いられる希土類元素は、上述したように所定の範囲内の波長の光により励起されてアップコンバージョン発光することが可能な希土類元素であれば特に限定されない。また、希土類元素は、1種類で用いても、2種類以上同時に用いてもよい。
紫外線を吸収して可視光蛍光発光する材料には、CaWO4 、Zn2 SiO4 :Mn、Y2 3 :Eu、Mg6 As2 11:Mn、Y3 Al5 12:Ce、ZnS:Ag、ZnO:Zn、Gd2 2 S:Tb、Y2 2 S:Eu、SrAl2 4 :Eu,Dy等の無機蛍光顔料やベンゾオキサジン誘導体、ユーロピウム錯体等の有機蛍光染料および有機金属錯体等を使用することができる。一般に、無機蛍光顔料よりも有機蛍光染料や有機金属錯体が発光効率が高いと言われる。
可視蛍光発光インキは、上記のような材料を、バインダー樹脂に分散したインキである。インキは、シルクスクリーン印刷インキ、オフセット印刷インキ、活版印刷インキ、グラビア印刷インキとすることができ、また、熱溶融転写リボン、すなわち熱転写プリント用インキリボンの形態としてもよい。
バインダー樹脂には、耐磨耗性、透明性、硬度等に優れたバインダー樹脂を適宜用いることができる。具体的には、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、繊維素系樹脂、塩化ゴム系樹脂等を挙げることができる。また、アクリル系モノマー等の電離放射線照射により架橋硬化する樹脂等を用いることもできる。
セキュリティ情報目視判定装置1を、図1の外観図のように構成した。遮光性筐体3として黒色のフェノール樹脂により2段の円筒状に成型したものを使用した。遮光性筐体3の内面は黒色の無反射発泡ゴムシート貼りにした。
セキュリティ情報判定装置1の鉛直方向断面は図2のように、中空構造の遮光性筐体3の底面に近く配線基板8を設け、当該配線基板8の中心部に開口8pを穿ち、その周囲に各6個の赤外発光LED4r、紫外発光LED4v、可視光発光LED4gを配置した。 なお、赤外発光LED(コーセイ電子株式会社製「EL−1L7」)4rは、GaAs(砒化ガリウム)からなるもので、ピーク発光波長940nmのものを使用し、紫外発光LED(日亜化学「NSHU590A」)4vには、ピーク発光波長375nmのものを使用した。また、可視光発光LED4gには、ピーク発光波長525nm(緑色)のものを使用した。
開口8pは直径が20mm程度となるようにし(図3参照)、当該開口8pの周囲に、上記18個のLED4を略円環状になるように種類毎に循環配列し、かつLED4の先端が円形環状の中心方向を向くように、多少傾けて取り付けした(図2参照)。また、LED4のレンズ頭頂部がセキュリティ情報媒体10面から25mmの位置になるように配置した。これにより、各LED4は、読み取りするセキュリティ情報媒体10の識別情報12の照射面中心に対する鉛直線を中心軸としてその周囲に配置されるようになった。
各LED4には電圧調整のための抵抗Rと配線を接続し、読み取りの妨げとならないように遮光性筐体3の内側面に納めた。従って、セキュリティ情報媒体10から生じる蛍光発光は、直径20mmの開口8pを通して、凸レンズ5に到達することになる。
セキュリティ情報媒体10として、上質紙を基材11とし、これに赤外励起蛍光発光と紫外励起蛍光発光の蛍光体微粒子と、それらを保持する透明バインダーからなるシルクスクリーン印刷インキにより、所定の固定識別情報12を、直径10mmの範囲内に厚み5〜8μmになるようにスクリーン印刷したものを用いた。なお、赤外励起と紫外励起の蛍光剤はいずれも緑色蛍光発光するものである。
インキ組成中における蛍光体含有量は、10〜30質量%とした。また、前記バインダーには、ワックス、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、を単独または混合して使用できるものであるが、実施例の場合は塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂を使用したものである。
上記のセキュリティ情報媒体10の上に先に製作したセキュリティ情報目視判定装置1の遮光性筐体3を置き、固定識別情報12印刷部が、18個のLED4の集光部に位置するように調整してから、LEDをパルス幅tw=100μsec(周期T=10msec)の条件で間欠照射すると、凸レンズ5を通して識別情報12が緑色に蛍光発光するのを観察することができた。
この種の読み取り試験は従来、専ら外部光の影響の少ない暗室等で行う必要があったが、本発明のセキュリティ情報目視判定装置は遮光性筐体を備えているので、明るい室内環境でも容易に読み取り試験を行うことが可能であった。
セキュリティ情報目視判定装置の概略外観図である。 判定装置本体部の鉛直方向断面図である。 光源部におけるLEDの配置を示す平面図である。 光源部におけるLEDの配置を示す平面図である。 LED切替スイッチ部を示す図である。 LEDに対する電源系統を示す図である。 LEDに加えられるパルス波形を示す図である。 セキュリティ情報媒体の例を示す図である。
符号の説明
1 セキュリティ情報目視判定装置
2 判定装置本体部
3 遮光性筐体
4 LED
5 凸レンズ
6 電源装置
7 接続コード
8 配線基板
10 セキュリティ情報媒
11 基材
12 識別情報
13a,13b 可変識別情報
14 固定情報
15 試料台
20a,20b 部材
21a,21b 螺子
61 電源スイッチ
62 切替スイッチ
63 表示ランプ
64 パルス発生器

Claims (7)

  1. セキュリティ情報媒体の判定装置であって、外光を遮光する遮光性筐体内に、セキュリティ情報媒体を照射するピーク発光波長940nmの赤外発光LED、紫外発光LED、可視光発光LED個から12個を、読み取りするセキュリティ情報媒体の照射面中心に対する鉛直線を中心軸としてその周囲に、偏在しないように円環状に循環配置し、かつ可視光発光LEDのセキュリティ情報媒体に対する照射角度が、可視光発光LED自体の角度を変えることにより可変であるようにして当該各LEDを順次または同時発光照射し、セキュリティ情報媒体から生じる蛍光パターンまたは微細・高精細パターンを目視で読み取りすることを特徴とするセキュリティ情報目視判定装置。
  2. セキュリティ情報媒体の判定装置であって、外光を遮光する遮光性筐体内に、セキュリティ情報媒体を照射するピーク発光波長940nmの赤外発光LED、可視光発光LEDの各4個から12個、読み取りするセキュリティ情報媒体の照射面中心に対する鉛直線を中心軸としてその周囲に、偏在しないように円環状に循環配置し、かつ可視光発光LEDのセキュリティ情報媒体に対する照射角度が、可視光発光LED自体の角度を変えることにより可変であるようにして当該各LEDを順次または同時発光照射し、セキュリティ情報媒体から生じる蛍光パターンまたは微細・高精細パターンを目視で読み取りすることを特徴とするセキュリティ情報目視判定装置。
  3. 紫外発光LEDが、ピーク発光波長375nmのものであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のセキュリティ情報目視判定装置。
  4. LEDをパルス発光させることを特徴とする請求項1または請求項2記載のセキュリティ情報目視判定装置。
  5. LEDの発光順序を切り替え、または同時発光させるスイッチを有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のセキュリティ情報目視判定装置。
  6. セキュリティ情報媒体が、赤外励起可視蛍光発光材料からなるパターン、紫外励起可視発光材料からなるパターン、可視光照射により視認可能な材料からなる微細・高精細パターン、のいずれかの組み合わせから構成されていることを特徴とする請求項1記載のセキュリティ情報目視判定装置。
  7. 微細・高精細パターンがホログラム、光回折格子またはマイクロ文字であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のセキュリティ情報目視判定装置。
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