JP4968119B2 - 鉄道車両用ブレーキディスク - Google Patents

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Description

本発明は、鉄道車両の制動装置に用いられる鉄道車両用ブレーキディスク(以下、単に「ブレーキディスク」という)に関し、特に、鉄道車両の車軸に車輪とは別個のフランジ体を介して固定されるブレーキディスクに関する。
一般に、鉄道車両や自動車や自動二輪車などの陸上輸送車両の制動装置としては、ディスクブレーキ、ブロックブレーキ、ドラムブレーキなどが用いられる。近年では、車両の高速化や大型化の進展に伴い、特にディスクブレーキが多用されるようになる。ディスクブレーキは、ブレーキディスクとブレーキライニングとの摺動による摩擦により制動力を得る装置である。
鉄道車両に用いられるディスクブレーキは、車輪とは別個に圧入や嵌合などによって車軸に固定されるフランジ体を採用し、このフランジ体にボルトを用いた締結によりブレーキディスクを取り付ける構成とすることが多い。このディスクブレーキは、フランジ体に取り付けられたブレーキディスクの摺動面に、ブレーキライニングを押圧させることにより制動力を発生させる。これにより、車軸および車輪の回転を制動し、車両の速度を減速しさらには停止させることができる。
図1は、従来のブレーキディスクの構成を示す図であり、同図(a)は1/4円部分の平面図、同図(b)は半円部分の断面図である。同図に示す従来のブレーキディスク1は、中央部が開口したドーナツ形円板状の締結部3と、この締結部3の外周に連なるドーナツ形円板状の中板部5と、この中板部5の両側にそれぞれ配置されたドーナツ形円板状の摺動部2と、を同心状に備える(例えば、特許文献1参照)。
中板部5と摺動部2は、円周方向に等間隔に配された放射状に延出する冷却リブ6を介して連結される。各摺動部2の外面2aは、全域に亘り軸方向に対して垂直な平坦面であり、この面がブレーキライニングとの摺動面として機能する。締結部3には、ブレーキディスク1をフランジ体にボルト締結するため、同一円周上で等間隔に複数のボルト穴3aが設けられる。
図2は、ブレーキディスクがフランジ体を介して取り付けられた状態を示す断面図である。同図に示すように、ブレーキディスク1は、締結部3のボルト穴3a、およびそのボルト穴3aと対に形成されたフランジ体10のボルト穴にボルト12を挿通させ、そのボルト12と座金14を介在したナット13とで締め付けることにより、フランジ体10に強固に締結される。このフランジ体10は、車軸11に圧入され、ブレーキディスク1とともに車軸11と一体的に回転可能となる。
ブレーキディスク1における各摺動部2の外側には、各摺動面(外面)2aに対向してブレーキライニング15が配設される。制動時には、ブレーキライニング15が互いに接近するように移動し、ブレーキディスク1の摺動面2aに接触し押圧する。これにより、ブレーキディスク1は、ブレーキライニング15により摺動部2を両側から強く狭圧され、その摺動面2aとブレーキライニング15との摺動による摩擦力により、車軸11を介して車輪の回転を制動し車両を停止させることができる。
ところで、近年の鉄道車両は、高速化に伴いブレーキディスクの回転速度や慣性力が高いことから、制動中のブレーキディスクの温度上昇が著しい。このため、ブレーキディスクの摺動面に過大な熱応力が発生し、これに起因してブレーキディスクの摺動面に亀裂が発生し、さらにはその亀裂が進展するという問題が生じる。
このようなブレーキディスクの摺動面における亀裂を抑制するため、これまで種々の技術が提案されている。
図3は、従来のブレーキディスクでの摺動面における亀裂の抑制を図る構成を示す半円部分の断面図である。同図に示すブレーキディスク1は、摺動部2の厚みを外周側から内周側にかけて徐々に厚くする構成としている(前記特許文献1参照)。これより、ブレーキディスク1では、摺動面2aでの熱応力分布を均一化し、摺動面2aにおける熱疲労や亀裂の発生を抑制している。
図4は、従来のブレーキディスクの同様に亀裂抑制を図る構成の別例を示す半円部分の平面図である。同図に示すブレーキディスク1は、摺動部2同士の間に、締結部3の外周から放射状に延出する長さの異なる長リブ6Aと短リブ6Bを円周方向に交互に配し、これらの長リブ6Aおよび短リブ6Bにより摺動部2同士を連結し、さらに、長リブ6Aおよび短リブ6Bのそれぞれの延長線上と、これらの間に摺動部2同士を連結する多数のピン7を配する構成としている(例えば、特許文献2参照)。これにより、ブレーキディスク1は、ブレーキディスク1が回転するときの空気抵抗を低減するとともに、摺動部2に与える冷却能を確保している。
特開2000−130481号公報 特開2006−300313号公報
前記図3に示すブレーキディスクは、摺動面の内周側の領域で発生する亀裂の抑制を図る構成であるため、期待される亀裂抑制効果が得られない場合が多い。亀裂が発生する位置は、制動時のブレーキライニングとブレーキディスクの摺動面との接触状態や、制動装置の構造によって変動し、摺動面の内周側領域に限定できないからである。
また、前記図1、図3および図4に示すいずれのブレーキディスクも、摺動部同士の間にリブやピンを配する必要があることから、このような複雑な形状を有するブレーキディスクの成形方法は、実質的に鋳造による成形に限られる。このため、従来のブレーキディスクは、摺動面での亀裂の起点になる鋳造欠陥が発生し、鋳造欠陥によるブレーキディスク自体の強度低下も懸念される。
さらに、従来のブレーキディスクは、鋳造で成形されることから黒鉛鋳鉄などの鋳鉄材料で構成され、耐熱性が低い。このため、高速で走行する鉄道車両を制動させる際、ブレーキディスクの摺動面に過大な熱負荷が加わることから、摺動面の温度が使用限界を超え、摺動面での亀裂の発生、および発生した亀裂の進展を抑制することが困難になることがある。
このため、従来のブレーキディスクは、摺動面での亀裂の発生およびその進展を効果的に抑制することができないという問題がある。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、ブレーキディスクの材質を選定するとともに、ディスク摺動面の設計最適化を図ることにより、摺動面での亀裂の発生およびその進展を効果的に抑制することができるブレーキディスクを提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記目的を達成するため、フランジ体を介して車軸に固定されるブレーキディスクについて、ブレーキの繰返し負荷に伴う熱応力を想定して数値解析を行い、鋭意検討を重ねた結果、下記の知見を得た。
従来のブレーキディスクでは、鋳鉄材料を用いるため、制動時に、摺動面の温度が使用限界を超えることがある。これを防止するには、ブレーキディスクに鋳鉄材料よりも耐熱性の優れた鍛鋼材料を採用するのが有効である。例えば、耐熱性の指標となる耐熱温度は、鋳鉄材料では300〜330℃であるのに対し、鍛鋼材料では630℃程度と格段に高い。鍛鋼材料としては、例えば、JIS規格で規定される鍛鋼品(JIS G 3201:炭素鋼鍛鋼品など)の材料を用いることができる。
ブレーキディスクに鍛鋼材料を採用することにより、ブレーキディスクは成形を鍛造で行うことになるため、摺動面に亀裂の起点となる鋳造欠陥は一切発生せず、ブレーキディスク自体の強度も向上する。
しかし、ブレーキディスクに鍛鋼材料を用いる際には、鍛鋼材料は鋳鉄材料よりも僅かではあるが比重が大きいため、軽量化できる形状のブレーキディスクを検討する必要がある。さらに、鍛造で成形が可能な形状のブレーキディスクを検討する必要がある。
また、制動時にブレーキディスクの摺動面に発生する亀裂は、一般に、長さが短く、それ自体では進展しない微小な亀裂であるが、制動時の負荷が著しい場合や、複数の微小な亀裂が連続する場合は、比較的長い亀裂が発生する。このような亀裂は、材料に固有の亀裂進展抵抗と、ブレーキディスクの摺動面上に発生する最大応力とによって定まる限界の亀裂長さ(以下、「限界亀裂長さ」という)を超えたときに進展する。このため、ディスク摺動面での限界亀裂長さが長くなるほど、亀裂の進展は抑えることができる。すなわち、ディスク摺動面での亀裂の進展を抑制するには、限界亀裂長さを長くすることが有効であり、このためには、ブレーキディスクに発生する最大応力を低減させる必要がある。
以上の知見から、下記の(A)および(B)に示す技術事項を満足させることにより、上記目的を達成できることを見い出し、これに基づいて本発明を完成させた。
(A)ブレーキディスクに耐熱性に優れた鍛鋼材料を採用し、ブレーキディスクの形状は、軽量化できる形状にするとともに、鍛造による成形が可能で、機械加工の際の加工代が極力少ない形状にする。
(B)制動中にブレーキディスクの摺動面上に発生する最大応力を低減し、摺動面での限界亀裂長さを従来のブレーキディスクよりも長くする。
本発明は、フランジ体に締結されて車軸に固定される鍛鋼材料からなるブレーキディスクであって、前記フランジ体に締結されるドーナツ形円板状の締結部と、この締結部の外周部の両側にそれぞれ配置され各々の外面を摺動面とするドーナツ形円板状の摺動部と、前記締結部と前記摺動部を連結する環状の連結部と、を同心状に備えており、前記摺動部の内周端から前記連結部の半径方向の幅中心までの距離bと、前記摺動部の半径方向の幅wとの寸法比b/wが0.65未満であり、かつ前記連結部の半径方向の幅aと、前記摺動部の半径方向の幅wとの寸法比a/wが0.25以下であることを特徴とするブレーキディスクである。
ここで、ブレーキディスクとして、一体に鍛造成形されてなるものを採用することができる。また、ブレーキディスクとして、前記締結部、前記摺動部および前記連結部から構成される構成部材が円周方向に複数に分割されて鍛造成形され、これらの構成部材が組み立てられてなるものを採用することもできる。
本発明のブレーキディスクは、耐熱性に優れた鍛鋼材料で構成し、後述する図5(b)に示すように、摺動部の内周端から連結部の半径方向の幅中心までの距離bと、摺動部の半径方向の幅wとの寸法比b/wを0.65未満に規定すること、および連結部の半径方向の幅aと、摺動部の半径方向の幅wとの寸法比a/wを0.25以下に規定することにより、摺動面上に発生する最大応力を低減することができる。これにより、摺動面での限界亀裂長さを長くすることができ、摺動面での亀裂の進展を効果的に抑えることが可能になる。しかも、本発明のブレーキディスクは、鍛造で成形でき、亀裂の起点となる鋳造欠陥が発生しないため、これに起因する亀裂の発生も効果的に抑制することも可能になる。
以下に、本発明のブレーキディスクの実施形態について詳述する。
本発明者らは、本発明を完成するにあたり、まず、鍛鋼材料を用いたブレーキディスクについて、鍛造による成形が可能な形状を検討した。
図5は、本発明のブレーキディスクの構成を示す図であり、同図(a)は円周方向の一部分の斜視図、同図(b)はその部分の断面図である。同図に示すように、ブレーキディスク1は、中央部が開口したドーナツ形円板状の締結部3と、この締結部3の外周部の両側にそれぞれ配置されたドーナツ形円板状の摺動部2と、締結部3の外周部の両側から突出し締結部3と摺動部2を連結する環状の連結部4と、を同心状に備える。摺動部2は、同図(b)に示すように、厚みhおよび半径方向の幅wが全周に亘って一定で、軸方向に一定の間隔を設けて対向配置され、その内周端から半径方向の距離bの部分を、半径方向の幅aが全周に亘って一定の連結部4を介して締結部3に連結されている。
各摺動部2の外面2aは、全域に亘り機械加工が施され軸方向に対して垂直な平坦面とされ、この面がブレーキライニングとの摺動面として機能する。締結部3には、ブレーキディスク1をフランジ体にボルト締結するため、ボルト穴3aが同一円周上で等間隔に複数設けられる。
このようなブレーキディスク1は、全周に亘り一体のものとして製作が可能である。また、円周方向に複数個に分割したものとして製作することもできる。
図6は、ブレーキディスクを一体で製作する場合の手順を説明する断面図である。同図(a)に示すように、鍛造により、断面が矩形の環状部21と、この環状部21の内周から突出する円板部22とから構成されるディスク素材20を成形する。環状部21は、摺動部2の半径方向の幅wに相当する幅を有するとともに、一方の摺動部2の摺動面2aから他方の摺動部2の摺動面2aまでの間隔以上の厚みを有する。円板部22は、締結部3の厚みに相当する厚みを有する。このようなディスク素材20に対し、同図(b)に示すように、環状部21の内周を円板部22の厚み分と摺動部2の厚み分を残して機械加工するとともに、環状部21の外周を摺動部2の厚み分を残して機械加工することにより、摺動部2および連結部4を形成できる。これと同時に、摺動面2aを削正し、ボルト穴3aを穿孔することにより、ブレーキディスク1を製作することができる。
図7は、ブレーキディスクを円周方向に分割して製作する場合の手順を説明する断面図である。ブレーキディスク1を円周方向に複数個に分割して製作する場合、同図(a)に示すように、分割された円弧状のブレーキディスク1を構成する円弧状のディスク素材20を鍛造成形し、同図(b)に示すように、円弧状の環状部21に機械加工を施すことにより、摺動部2、連結部4、摺動面2aおよびボルト穴3aを形成する。そして、機械加工後の円弧状のディスク素材20を円周方向に連続するように組み立てることにより、ブレーキディスク1を製作することができる。この場合、円弧状のブレーキディスク1は、組み立てた状態で、摺動部2および連結部4の半径方向の幅が全周に亘って一致すればよい。その際、円弧状のブレーキディスク1の端面に設けたピンにより、円弧状のブレーキディスク1同士の位置合わせがなされる。
図7に示す円弧状のディスク素材20は、前記図6に示す環状部21および円板部22を単に円周方向に分割して円弧状としたものでもよいが、鍛造時のプレス方向によっては、環状部21の断面形状を変形することができる。例えば、図7(a)に示すように、環状部21の断面は、連結部4の形成のために機械加工を施す内周および外周の部分を摺動部2の半径方向の幅wよりも小さい幅とすることができる。この場合、図7(b)に示す円板部22の厚み分と摺動部2の厚み分を残す環状部21の内周の機械加工、および、摺動部2の厚み分を残す環状部21の外周の機械加工において、加工代を削減することができる。
このように、ブレーキディスク1は、耐熱性の高い鍛鋼材料を採用して鍛造で成形できるため、従来のブレーキディスクのような鋳造欠陥は一切発生せず、ブレーキディスク1自体の強度が向上する。しかも、ブレーキディスク1の摺動面2aには、亀裂の起点となる鋳造欠陥が発生しないため、これに起因する亀裂の発生を効果的に抑制することができる。
次に、本発明者らは、上記した形状のブレーキディスク1について、前記図5(b)に示す摺動部2の厚みh、および連結部4の半径方向の幅a(以下、「連結部の幅」という)、さらには、摺動部2の半径方向の幅w(以下、「摺動部の幅」という)、および摺動部2の内周端から連結部4の半径方向の幅中心までの距離b(以下、「連結部の幅中心距離」という)を種々変更した解析モデルを用いて、ブレーキディスク1の重量を解析した。また、比較のために、従来例として、前記図1に示すブレーキディスクに対応する解析モデルについても解析した。
図8は、本発明のブレーキディスクに対応する解析モデルの一例を示す断面図である。同図に示すモデルA〜Dは、対称性を考慮して、2次元の軸対称でモデル化したものであり、摺動部2の厚みhを15mm、摺動部2の幅wを137mmと一定にし、連結部4の幅a、および連結部4の幅中心距離bを変更したものである。これらのモデルA〜Dは、後述する有限要素法(FEM)による数値解析にも用いた。
図9は、従来のブレーキディスクに対応する解析モデルを示す図であり、同図(a)は斜視図、同図(b)は側面図である。同図に示すモデルEは、前記図1に示すブレーキディスク1に対応し、対称性を考慮して、周方向に24分割した部材(15°分に相当)を軸方向の中心でカットしてモデル化したものであり、上記モデルA〜Dと同様に、摺動部2の厚みhを15mm、摺動部2の幅wを137mmとしたものである。このモデルEも、後述するFEM解析に用いた。
表1に、モデルA〜Eの代表的な寸法と、モデルA〜Eごとに算出したブレーキディスクの重量を示す。同表では、本発明で規定する条件(寸法比b/w<0.65、および寸法比a/w≦0.25)を満足するモデルAおよびBは本発明例とし、その規定条件から外れるモデルCおよびDは参考例としている。
Figure 0004968119
図8および表1に示すように、モデルAは、連結部4の幅aが30mmで、摺動部2の幅wよりも小さく、両者の寸法比a/wが0.22である。また、モデルAは、連結部4の幅中心距離bが68.5mmで、摺動部2の幅wとの寸法比b/wが0.50であり、連結部4が摺動部2の半径方向の幅中心にある。このモデルAに鍛鋼材料を採用してなるブレーキディスクは、重量が105kgである。
モデルBは、モデルAと同様に、連結部4の幅aが摺動部2の幅wよりも小さく、両者の寸法比a/wが0.22であるが、連結部4の幅中心距離bが41.5mmで、摺動部2の幅wとの寸法比b/wが0.30であり、連結部4が摺動部2の半径方向の幅中心から内周側寄りにある。このモデルBに鍛鋼材料を採用してなるブレーキディスクは、重量が95kgである。
これに対して、モデルCは、モデルAと同様に、連結部4の幅中心距離bと摺動部2の幅wとの寸法比b/wが0.50で、連結部4が摺動部2の半径方向の幅中心にあるが、連結部4の幅aが77mmで、摺動部2の幅wとの寸法比a/wが0.56であり、連結部4が摺動部2の内周側から外周側までに亘って配置されている。このモデルCに鍛鋼材料を採用してなるブレーキディスクは、重量が147kgである。
モデルDは、モデルAおよびBと同様に、連結部4の幅aと摺動部2の幅wとの寸法比a/wが0.22であるが、連結部4の幅中心距離bが95.5mmで、摺動部2の幅wとの寸法比b/wが0.70であり、連結部4が摺動部2の半径方向の幅中心から外周側寄りにある。このモデルDに鍛鋼材料を採用してなるブレーキディスクは、重量が118kgである。
図9に示すモデルEに鋳鉄材料を採用してなるブレーキディスクは、重量が120kgである。
表1に示す結果から、連結部の幅aを摺動部の幅wよりも小さくすれば、ブレーキディスクの軽量化を図ることができる。特に、連結部の幅aと摺動部の幅wとの寸法比a/wが0.25以下(モデルA、BおよびD参照)になるように、連結部の幅aを小さくすると、ブレーキディスクを従来のブレーキディスク(モデルE)よりも軽量化できる。このため、本発明では、寸法比a/wを0.25以下に規定する。ただし、連結部の幅aを小さくし過ぎると、強度が低下するため、連結部の幅aは、ブレーキディスクに与えられる制動時の繰返し負荷や、ブレーキディスクに要求される耐久性などを考慮して、設定する必要がある。
さらに、本発明者らは、前記図8および図9に示すモデルA〜Eを用いてFEM解析を行い、制動中のブレーキディスクの摺動面上に発生する最大応力を調査した。このFEM解析において、解析の入力データとしてのブレーキディスクの物性と強度特性は、鉄道車両で一般に使用される鉄鋼材料の物性と強度特性を用いた。解析条件としては、ブレーキの繰返し負荷を想定し、本発明のブレーキディスクに対応するモデルA〜Dでは、200km/hの走行速度から短時間のブレーキを負荷し、前記図1に示すブレーキディスクに対応するモデルEでは、160km/hの走行速度から短時間のブレーキを負荷した。いずれの解析でも、ブレーキの繰返し負荷は3回行い、各回のブレーキの負荷時間は32.79秒とした。
表2に、モデルA〜Eの代表的な寸法と、モデルA〜EごとのFEM解析結果を示す。同表では、FEM解析結果として、3回ブレーキを負荷し冷却した後のブレーキディスクの摺動面上に発生する最大応力を導出し、この最大応力から算出した摺動面での限界亀裂長さを示している。
Figure 0004968119
表2に示す結果から、モデルAおよびBでは、従来のブレーキディスクに対応するモデルEと比較して、摺動面での限界亀裂長さが長くなることが明らかである。特に、連結部の幅中心距離bと摺動部の幅wとの寸法比b/wが小さく、連結部が摺動部の内周側寄りに配置されるモデルBでは、限界亀裂長さが一層長くなる。したがって、寸法比b/wを小さくすれば、摺動面での限界亀裂長さを長くすることができるため、摺動面での亀裂の進展を効果的に抑えることが可能になる。
一方、モデルCでは、連結部の幅中心距離bと摺動部の幅wとの寸法比b/wがモデルAと同一であるが、連結部の幅aが大きいことに伴って、摺動部の幅wとの寸法比a/wが0.56と大きく本発明の規定範囲(a/w≦0.25)を外れている。このため、摺動部が内周側から外周側まで連結部によって広範に拘束される結果、ブレーキ後に、摺動面上に発生する残留応力が大きくなり、限界亀裂長さが短くなった。
図10は、連結部の幅中心距離bと摺動部の幅wとの寸法比b/wと、摺動面上での円周方向の最大応力との相関を示す図である。最大応力は、前記図8に示すモデルA、BおよびD(a/w=0.22)を用いたFEM解析により導出したものである。図10に示すように、ブレーキディスクの摺動面上に発生する最大応力は、寸法比b/wが小さいほど、すなわち連結部が摺動部の内周側寄りに配置されるほど、低減することがわかる。これは、摺動面上での最大応力の発生原理からも説明できる。
ブレーキディスクの摺動面が制動時に負荷を受けた際、摺動部における摺動面の表層は、温度上昇によって熱膨張する挙動を示すが、摺動部における摺動面下より深い部分や連結部や締結部などの温度上昇の遅れる部分に拘束されるため、圧縮応力が生じ、これが降伏点に達すると圧縮方向の降伏が生じる。この後に冷却されると、降伏していない領域が復元する挙動を示すため、降伏した摺動面の表層に最大応力が生じる。
前記図8に示すモデルA〜Dのブレーキディスクの場合、摺動面の外周側が連結部によって拘束されないため、摺動面の表層部は温度上昇時に外周側に熱膨張する。このため、摺動部を拘束する連結部の位置が摺動面の外周側に近いほど、熱膨張が制限されることから摺動面上での最大応力が大きくなり、これとは逆に、連結部の位置が摺動面の外周側から遠ざかるほど、熱膨張が許容されることから摺動面上での最大応力が小さくなる。したがって、連結部が摺動部の内周側寄りに配置されるほど、制動時の熱膨張に対する拘束が緩くなり、摺動面上に発生する最大応力を低減させることができる。
図11は、連結部の幅中心距離bと摺動部の幅wとの寸法比b/wと、摺動面での限界亀裂長さの従来例に対する比との相関を示す図である。同図に示す限界亀裂長さの対従来比は、前記図8に示すモデルA、BおよびD(a/w=0.22)、並びに図9に示すモデルEを用いたFEM解析により算出したものである。同図に示すように、限界亀裂長さの対従来比は、寸法比b/wが小さいほど、すなわち連結部が摺動部の内周側寄りに配置されるほど、向上することがわかる。この傾向は、前記図10に示す摺動面上に発生する最大応力が低減する傾向と同じである。
したがって、連結部が摺動部の内周側寄りに配置されるほど、摺動面上に発生する最大応力が低減し、摺動面での限界亀裂長さを長くすることができ、摺動面での亀裂の進展を効果的に抑えることが可能になる。
特に、寸法比b/wが0.65よりも小さいと、従来のブレーキディスクよりも、限界亀裂長さが長くなる。このため、本発明では、寸法比b/wを0.65未満に規定する。さらに、寸法比b/wが0.4以下では、限界亀裂長さが急激に長くなるため、寸法比b/wを0.4以下とするのが好ましい。寸法比b/wの下限は、ブレーキディスクに与えられる制動時の繰返し負荷や、ブレーキディスクに要求される耐久性などを考慮して、適宜設定することができる。
本発明のブレーキディスクは、耐熱性に優れた鍛鋼材料を採用し、連結部が摺動部の内周側寄りに配置される形状とすることにより、摺動面上に発生する最大応力を低減することができる。これにより、摺動面での限界亀裂長さを長くすることができ、摺動面での亀裂の進展を効果的に抑えることが可能になる。しかも、本発明のブレーキディスクは、鍛鋼材料を用いて鍛造で成形できるため、亀裂の起点となる鋳造欠陥が発生せず、これに起因する亀裂の発生も効果的に抑制することも可能になる。
従来のブレーキディスクの構成を示す図であり、同図(a)は1/4円部分の平面図、同図(b)は半円部分の断面図である。 ブレーキディスクがフランジ体を介して取り付けられた状態を示す断面図である。 従来のブレーキディスクでの摺動面における亀裂の抑制を図る構成を示す半円部分の断面図である。 従来のブレーキディスクの同様に亀裂抑制を図る構成の別例を示す半円部分の平面図である。 本発明のブレーキディスクの構成を示す図であり、同図(a)は円周方向の一部分の斜視図、同図(b)はその部分の断面図である。 ブレーキディスクを一体で製作する場合の手順を説明する断面図である。 ブレーキディスクを円周方向に分割して製作する場合の手順を説明する断面図である。 本発明のブレーキディスクに対応する解析モデルの一例を示す断面図である。 従来のブレーキディスクに対応する解析モデルを示す図であり、同図(a)は斜視図、同図(b)は側面図である。 連結部の幅中心距離bと摺動部の幅wとの寸法比b/wと、摺動面上での円周方向の最大応力との相関を示す図である。 連結部の幅中心距離bと摺動部の幅wとの寸法比b/wと、摺動面での限界亀裂長さの従来例に対する比との相関を示す図である。
符号の説明
1 鉄道車両用ブレーキディスク
2 摺動部
2a 外面(摺動面)
3 締結部
3a ボルト穴
4 連結部
10 フランジ体
11 車軸
12 ボルト
13 ナット
14 座金
15 ブレーキライニング
a 連結部の半径方向の幅
w 摺動部の半径方向の幅
b 摺動部の内周端から連結部の半径方向の幅中心までの距離

Claims (3)

  1. フランジ体に締結されて車軸に固定される鍛鋼材料からなる鉄道車両用ブレーキディスクであって、
    前記フランジ体に締結されるドーナツ形円板状の締結部と、この締結部の外周部の両側にそれぞれ配置され各々の外面を摺動面とするドーナツ形円板状の摺動部と、前記締結部と前記摺動部を連結する環状の連結部と、を同心状に備えており、
    前記摺動部の内周端から前記連結部の半径方向の幅中心までの距離bと、前記摺動部の半径方向の幅wとの寸法比b/wが0.65未満であり、かつ前記連結部の半径方向の幅aと、前記摺動部の半径方向の幅wとの寸法比a/wが0.25以下であることを特徴とする鉄道車両用ブレーキディスク。
  2. 一体に鍛造成形されてなることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用ブレーキディスク。
  3. 前記締結部、前記摺動部および前記連結部から構成される構成部材が円周方向に複数に分割されて鍛造成形され、これらの構成部材が組み立てられてなることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用ブレーキディスク。
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