JP4965955B2 - 酵素電極、それを用いたセンサ及び生物燃料電池 - Google Patents

酵素電極、それを用いたセンサ及び生物燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、酵素電極に関し、より詳細には、π共役金属錯体分子によって導電性部材に酵素を固定化した酵素電極、およびその用途に関する。
生細胞内で作られる蛋白質性の生体触媒である酵素は、通常の触媒と比べて温和な条件下で強力に作用する。また、基質の特異性が高く、一般に各酵素は、一定基質の一定反応のみを触媒する。酵素の中でも、酸化還元酵素と呼ばれる酵素は、基質の酸化還元反応を触媒する。この酸化還元酵素の反応で生成する電荷を、導電性部材に取り出すことができれば、酵素の特徴を生かした、低過電圧、高選択性の電極が作成可能である。
しかし、多くの酸化還元酵素の酸化還元中心は、蛋白質の3次元構造の奥深いところに閉じ込められた形態である。そのため、導電性部材との間で効果的な電子の授受を行うには、酸化還元中心と導電性部材間の距離が大きく、その結果、酸化還元酵素の活性部位と導電性部材との間で、直接の電子移動を行うことは、一般に困難であった。
そこで、酵素と導電性部材間をメディエータと呼ばれる物質によって電気的に繋ぐ手法が広く用いられてきた。例えば、非特許文献1には以下のように記載されている。即ち、メディエータ分子は、酵素の蛋白内部に入りこみ、酵素の酸化還元中心に充分に近い距離まできた時に、初めて酵素の酸化還元中心との間で電子の授受を行う。その後、酵素の活性部位、すなわち酸化還元中心と電子の授受を行ったメディエータが、拡散、電子ホッピング等を通して導電性部材へと電荷を輸送することで、酵素反応の電荷は導電性部材に取出されることになる。
この酵素およびメディエータの有効利用、これらの成分の系中への漏出防止による、電極の連続、長期使用を目的として、これらを電極に固定化する手法が提案されてきた。特許文献1には、メディエータを分子内に有する酵素担体を使用し、酵素、メディエータを化学的、静電的に固定化する手法が開示されている。この手法は、酵素を物理的に吸着させる手法と比較して、酵素、メディエータの保持能が高く、系外への流出防止に効果がある。
これとは別に、酵素を固定化した酵素電極としては、導電性高分子を用いたものが報告されている。
特許文献2には、ピロールの溶液中に酸化還元酵素を共存させて電解重合することにより、導電性高分子であるポリピロールの膜中に酵素を包括固定化する手法が開示されている。
この手法によれば、導電性高分子であるポリピロール中に酵素を固定化することで、別段メディエータを必要としない酵素電極が調製できる。
米国特許第5,262,035明細書 特開昭62−115284号公報 Adam Heller J. Phys. Chem. 1992, 96, 3579-3587 Katsuhiko Kanaizuka, Masaki Murata, Yoshihiko Nishimori, Ichiro Mori, Kazuyuki Nishio, Hideki Masuda, Hiroshi Nishihara Chem. Lett. 2005, 34, 534−535.
特許文献1には、メディエータを分子内に有する酵素担体を使用し、酵素、メディエータを化学的、静電的に固定化する手法が開示されている。この手法においては、酵素から錯体の中心金属に取出された電荷は、担体分子中に含まれる錯体間を電子ホッピングすることにより基板まで輸送される。この電子ホッピング過程は、担体ポリマー中の錯体分子中に含まれる金属錯体の部分的な運動により生じる衝突により進行する。しかしながら、この電子ホッピング過程による電荷の拡散係数はそれほど大きくないために、この過程が酵素電極全体における律速過程となり、高い電流値が得られない可能性がある。
また、特許文献2には、ピロールの溶液中に酸化還元酵素を共存させて電解重合することにより、導電性高分子であるポリピロールの膜中に酵素を包括固定化する手法が開示されている。この手法では、ポリピロールの分子鎖中に包括固定された酵素の酸化還元中心からポリピロール分子を通して基板に電荷が輸送される。この手法においては、酵素が剛直なポリピロールの分子鎖中に包括固定されることで、その活性が低下したり、ポリピロールの電荷輸送能が低いために、高い電流値が得られない可能性がある。
本発明の目的は、酵素の酸化還元中心から導電性部材への高い電荷輸送能を持つ酵素電極を提供することにある。本発明の他の目的は、かかる酵素電極を用いたセンサ、生物燃料電池を提供することにある。
第1の本発明に係る酵素電極は、導電性部材と酵素とを含み構成され、前記導電性部材に固定化されているπ共役金属錯体分子を有し、前記酵素は、前記π共役金属錯体分子を介して前記導電性部材に固定化されており、且つ、前記π共役金属錯体分子の金属中心に結合されている錯体配位子に化学結合していることを特徴とする。
また、第2の本発明に係るセンサは、前記酵素電極と、対電極とを有することを特徴とする。
更にまた、第3の本発明に係る燃料電池は、以下の特徴を有する。具体的には、アノード電極とカソード電極との間に電解液を保持し得る領域を設けた燃料電池において、前記アノード電極とカソード電極との少なくとも一方が前記酵素電極であることを特徴とする。
本発明によれば、酵素をπ共役金属錯体分子によって導電性部材に固定化することで、酵素から導電性部材への電子の輸送の高速化が可能となり、触媒電流を向上させることが可能な酵素電極を提供することができる。本発明によれば、かかる酵素電極を利用して特性が向上しているセンサ及び燃料電池を提供することが可能になる。
上記目的を達成する為に、本発明者は鋭意検討の結果、酵素内の酸化還元中心(活性サイトとも呼ばれる。)における電子の授受の情報を、導電性部材である電極に高速に伝達するために、π共役金属錯体分子を利用するという認識に至った。このπ共役金属錯体分子とは、近年、分子エレクトロニクス分野において、研究が活発になされている材料である。例えば、前記非特許文献2には、基板上に錯体配位子、中心金属が順次積層されたπ共役金属錯体分子が開示されている。
本発明においては、酵素を導電性部材に固定化するために、π共役金属錯体分子を利用すると共に、その高い電荷輸送能利用して、酵素の酸化還元中心から導電性部材への高速な電荷輸送を実現するものである。
なお、π共役金属錯体分子を用いて酵素を導電性部材に固定する場合、π共役金属錯体分子は、基板表面から立った方向(即ち、基板の面内方向に対して垂直成分を含む方向)に、整然と積層されるために、酵素を包括して固定することが困難であった。
本発明者らは、酵素を固定化可能な配位子を用いることによりこの問題を解決している。具体的には、本発明者らは、π共役金属錯体分子の金属中心に、酵素を固定化することのできる錯体配位子を配位させ、これを通じて酵素を固定化することによって、上記の問題を解決して本発明を完成させている。
次に、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
本発明の酵素電極は、導電性部材に固定化されたπ共役金属錯体分子を使用すること特徴とする。ここで、π共役金属錯体分子は、錯体の骨格が、錯体の中心金属とπ共役配位子によって構成されている錯体分子である。このπ共役金属錯体分子は、複数の金属元素を含む多核錯体と、ひとつの金属元素を含む単核錯体のどちらでも良い。また、π共役金属錯体分子一分子に含まれる金属元素は、一種類であっても良いし複数種類が含まれていても良い。このπ共役金属錯体分子を構成する金属元素としては、遷移金属元素が好適に用いられる。例としては、Os、Fe、Ru、Co、Cu、Ni、V、Mo、Cr、Mn、Pt、Rh、Pd、Irが挙げられる。
このπ共役金属錯体分子を構成するπ共役配位子としては、分子の骨格にπ共役が広がっており、水溶液中、電極が使用される条件において充分な化学的安定性と配位能を有する化合物であれば、好適に使用できる。例としては、配位子部位としては、ビピリジン、ターピリジン、フェナントロリン、ポルフィリン、フタロシアニンおよびこれらの誘導体が挙げられるが、中でもビピリジン誘導体もしくは、ターピリジン誘導体がより好適に用いられる。また、多核錯体の場合には、複数の配位子部位を結ぶ連結部位としては、π共役分子であって、水溶液中、電極が使用される条件において充分な化学的安定性と配位能を有する構造が、好適に使用できる。この例としては、アセチレン結合、ベンゼン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、ジアゾ結合およびこれらの誘導体が0から5個程度含まれているものが挙げられる。
ビピリジン誘導体の例としては、4,4'−dicarboxylic−2,2'−bipyridine(dCOOHbpy)や1,4−bis(4−methyl−2,2'−bipyridin−4'−yl)benzene(bphb)が挙げられる。dCOOHbpyは、東京化成工業等で市販されており、bphbの合成法は、Babaらの方法(Inorganic Chemistry 1995, 34, 1198−1207)を利用することができる。
このπ共役金属錯体分子を導電性部材に固定化する手法は、特に制限されるものではない。水溶液中、電極が使用される条件において充分な化学的、電気化学的安定性を有する導電性部材とπ共役金属錯体分子との結合が得られる固定化方法であれば好適に使用できる。また、このπ共役配位子の少なくともひとつには、電極との結合を確保するための官能基を有するものが好適に使用できる。官能基の例としては、チオール基、ケイ酸基、カルボキシル基、リン酸基、アミノ基、ジアゾ基が挙げられる。また、同一電極中に、目的とする特性を得る上で、固定化のための複数の異なる結合の組合せを導電性部材とπ共役金属錯体分子との結合に用いることもできる。
この結合の例としては、金属−チオール結合、ケイ素−ケイ素結合、炭素−炭素結合、金属−リン酸結合等が挙げられる。
また、このπ共役金属錯体分子の固定化密度は、導電性部材の実表面積に対し、10-12 から 10-9 mol cm-2 の範囲であることが好ましい。さらに 1 ×10-11 から2×10-9 mol cm-2 の範囲であることがより好ましい。この導電性部材の実表面積とは、見かけの表面積ではなく、導電性部材の凹凸の影響も含んだ表面積である。この値は、既知の手法を用いて測定できる。例としては、酸化還元物質を用いた、導電性基板のサイクリックボルタンモグラム測定、クロノアンペロメトリー等の電気化学測定を行った際の電流値と既知の物性定数(拡散係数、反応時の電子数、温度等)から算出する方法がある。その他にも、導電性部材が金であれば、金表面の酸化膜の形成、脱離や、ヨウ素の吸脱着等により測定可能である。
本発明の酵素電極においては、酵素は、導電性部材に固定化されたπ共役金属錯体分子の金属に結合する錯体配位子に固定化されることで、結果的に導電性部材に固定化される。酵素を固定化することのできる錯体配位子は、π共役金属錯体分子の金属に配位し、且つ酵素を固定化することができるものであれば特に制限されない。
例えば、酵素固定化が可能な官能基を含むπ共役配位子が好適に使用でき、中でもビピリジン誘導体もしくは、ターピリジン誘導体がより好適に用いられる。このビピリジン誘導体の例としては、4,4'−diboronicacid−2,2'−bypyridineが挙げられる。この合成法としては、Nakashimaらの方法(Chemistry Letters1994, 1267)を利用することができる。酵素を錯体配位子に固定化する手法は、特に制限されるものではない。水溶液中、電極が使用される条件において充分な化学的安定性を有する酵素と錯体配位子の結合が好適に使用できる。この例としては、酵素/金属粒子複合体にチオール基を結合させ、このチオール基を介して錯体配位子を更に結合させる方法や、酵素の酸化還元中心を化学的に配位子に結合した後にアポ酵素を再構成させる方法等が挙げられる。更に、この錯体配位子は、酵素に直接結合していてもよく、遺伝子工学的手法によって、酵素に導入されたものであっても良い。
本発明のπ共役金属錯体分子の調製には、例えば、順次構成要素を積み上げていく調製法を利用できる。すなわち、導電性部材上に導電性部材と結合することができる官能基を持ったπ共役配位子を結合させ、その後に金属イオンを配位させ、さらにπ共役配位子を金属中心に配位させ、最後に酵素と結合できる配位子と酵素を結合させる。この調製法は、非特許文献1で紹介されている酵素電極とは、製造工程上も異なったものである。また、この構造が形成されていることは、積層する金属中心の増大に伴い、電気化学測定において酸化還元に関与する金属中心の数が増大していくことから確認できる。あるいは、水晶振動子マイクロ天秤測定において、重量が増大していくこと、また、一定の厚さを超えると電子顕微鏡で、その厚みを測定することからも確認できる。さらに、酵素が固定化されているかの確認は、水晶振動子マイクロ天秤測定による酵素分の重量増加の観測や、酵素電極を緩衝液等で洗浄し、対応する基質の存在下酵素電極が機能する電位を印加したときの触媒電流などによって行うことができる。
酵素電極に用いる酵素としては、酸化還元酵素が好適に使用できる。この酵素は基質の酸化還元反応を触媒する酵素である。
酵素電極には、目的とする特性を得る上で、1種の酵素を固定しても、複数の異なる酵素を固定してもよい。更に、酵素として酵素/金属粒子複合体を形成しているものを用いる場合は、1つの金属粒子に複合させる酵素についても、1種の酵素を複合化しても、複数の異なる酵素を複合化してもよい。
また、この酵素の固定化密度は、導電性部材の実表面積に対し、10-14 から 10-10 mol cm-2 の範囲であることが好ましい。さらに 1×10-13から1×10-11 mol cm-2 の範囲であることがより好ましい。
酵素の具体例としては、グルコースオキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、シトクロムオキシダーゼなどである。更に、アルコールデヒドロゲナーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、蟻酸デヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼなどもある。また更に、乳酸デヒドロゲナーゼ、ジアホラーゼ、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、チオレドキシンレダクターゼも本発明に適用できる。また、酸化還元酵素でない酵素と酸化還元酵素を同時に用いることも可能である。この場合、例えば、酸化還元酵素でない酵素の生成物を酸化還元酵素で検出するといったことも可能である。
本発明の好ましいひとつの形態における酵素電極は、酵素が、その基質との反応に伴って金属を形成し得る金属前駆体の存在下に、酵素と基質とを反応させて得られた酵素/金属粒子複合体を形成しているものである。このような、複合体の形成は、たとえば透過型電子顕微鏡で酵素/金粒子複合体を観察することによって検証ができる。
金属粒子の一部が酵素の内部に入り込んだ構造は、酵素とその酵素の基質との作用(酵素反応)との相互作用により金属を形成し得る金属前駆体の存在下において、酵素反応を行うことにより得ることができる。金属前駆体の存在下で酵素反応を行うことで、酵素の活性部位(活性中心)を含む酵素内部で基質が反応し、それに伴って金属前駆体から金属が形成される。これらの反応が進行すると、酵素の内部を起点として金属が成長し、場合によっては酵素の外側で形成された金属と酵素内部の金属が合体して金属粒子が得られる。こうして得られた金属粒子はその一部が酵素の内部に入り込んだ形状となる。
ここで、酵素の基質としては、酵素の作用による化学的変化が金属前駆体から金属を生じさせることができるものが利用される。好ましい酵素と基質の組合せとしては、酵素の基質への作用によって酸化還元酵素の酸化還元中心に電荷を与えることができる酵素と基質の組合せを挙げることができる。このような酵素の基質としては、酵素の本来の基質(例えばグルコースオキシダーゼに対するグルコース、アルコールデヒドロゲナーゼに対するエタノール)のほかに、酵素が反応の基質として酵素反応を起こしうる、天然、人工の化合物が含まれる。
また、金属前駆体からの金属粒子の形成には、酵素、酵素の基質及び金属前駆体を含む溶液を調製し、酵素反応の進行に伴って金属前駆体から金属粒子が生成されると同時に、金属粒子と酵素とを複合体化する手法が好適に用いられる。すなわち、酵素/金属粒子複合体は、酵素とその基質との反応に伴って金属を形成し得る金属前駆体の存在下に、酵素と基質とを反応させて得られたものであることが好ましい。
また、このときの金属粒子とは、酵素の基質への作用によって直接生成する金属粒子だけでなく、酵素の基質への作用によって生成する生成物が金属前駆体に作用して副次的に生成する金属粒子を含む。
具体的な例としては、グルコースオキシダーゼ、グルコース、塩化金酸塩を加えた溶液を挙げることができる。グルコースオキシダーゼにおけるグルコースの酸化反応によって生成したグルコースオキシダーゼの酸化還元中心であるFADH2によって、塩化金酸が還元される。それに伴って、グルコースオキシダーゼにおける、グルコースと酸素の反応よって生じる過酸化水素による塩化金酸の還元が生じる。上記の例としてこのような反応を含むことが挙げられる。なお、このことは、本発明の酵素電極に酵素/金属粒子複合体に加えて金属粒子と複合していない酵素や、酵素と複合していない金属粒子を含むことを排除するものではない。
酵素/金属粒子複合体に用いる金属としては、金属は、水溶液中、電極が使用される条件において充分な電気化学安定性を有する材料が好適に使用でき、同一電極中に、目的とする特性を得る上で、複数の異なる金属の組合せを用いることもできる。例としては、Au、Pt、Ag、Co、Pd、Rh、Ni、Cr、Fe、Mo、Ti、Cu、Wや、これらの合金があげられる。
酵素/金属粒子複合体の調製に用いる金属前駆体としては、水溶液中でも急速には反応せず、緩やかな金属粒子の生成が可能な化合物が好適に使用できる。例えば、金属の塩化物塩、クエン酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、蟻酸塩、酢酸塩、亜硫酸塩が挙げられる。
酵素/金属粒子複合体の金属粒子は、一次粒子の分散体が最も好適に用いられるが、それらが凝集した二次粒子であっても良い。金属粒子の一次粒子の粒径は、2nm〜50nmの範囲にあることが好ましく、2nm〜20nmの範囲にあることがより好ましい。金属粒子が二次粒子を形成しているときは、その粒径が、200nmを超えないことが好ましく、50nmを超えないことがより好ましい。二次粒子径の下限については、二次粒子径が5nm以上であることが好ましい。
導電性部材は、酵素反応で生成した電荷を外部回路に取出す働きを担う。この導電性部材の構成材料としては、導電性が高く、電極が使用される条件において充分な電気化学安定性を有する材料が好適に使用できる。このような導電性部材の構成材料の例としては、金属、導電性高分子、金属酸化物、及び炭素材料などを挙げることができる。金属の例としては、Au、Pt、Ag、Ni、Cr、Fe、Mo、Ti、Al、Cu、V、In、Ga、Wのうち少なくとも一種類の元素を含むものがあげられ、これらは、合金であっても、めっきを施したものであってよい。導電性高分子の例としては、ポリアセチレン類、ポリアリーレン類、ポリアリーレンビニレン類、ポリアセン類、ポリアリールアセチレン類、ポリジアセチレン類、ポリナフタレン類、ポリピロール類等がある。更に、ポリアニリン類、ポリチオフェン類、ポリチエニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリイソチアナフテン類のうち少なくともひとつの化合物を含むものも本発明に適用できる。金属酸化物の例としては、In、Sn、Zn、Ti、Al、Si、Zr、Nb、Mg、Ba、Mo、W、V、Srのうち、少なくとも一種類の元素を含むものがあげられる。炭素材料の例としては、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン化合物およびこれらの誘導体が挙げられる。
本発明のセンサは、本発明にかかる酵素電極を、物質を検知するための検知部位として用いることを特徴とする。代表的な構成としては、酵素電極を作用電極として、対極と組合せ、必要に応じて参照電極を使用する。電極に固定した酵素の基質認識能、酵素触媒作用により発生する電流を検知して、これらの電極が接している液体中の物質の定性的検出、濃度の測定に利用する構成を挙げることができる。センサの構成は、酵素電極での検知が可能であるものであれば特に制限されない。このセンサは、酵素に起因する基質の高い選択性に加え、酵素/金属粒子複合体の適用に起因する、高い電流密度によって、検出可能な濃度領域の拡大、検出装置の簡略化、検知部位の小型化が可能となる。
本発明の生物燃料電池は、本発明にかかる酵素電極を、アノードまたはカソードの少なくとも一方として用いることを特徴とする。代表的な構成としては、燃料となる物質を含む電解液を貯溜し得る反応槽と、反応槽中に電気的に隔離して配置されたアノードとカソードとを有し、このアノード及びカソードの少なくとも一方に本発明にかかる酵素電極を用いた構成を挙げることができる。なお、この生物燃料電池は電解液を補充するタイプ、循環させるタイプや、電解液の補充や循環をしないタイプとすることができる。この生物燃料電池は、酵素電極が使用できるものであれば、燃料の種類、構造、機能などは制限されない。この生物燃料電池は、電極反応の触媒として用いる酵素に特有の高い触媒作用によって、物質を低い過電圧で酸化還元できることにより、高い駆動電圧を得ることが可能であり、また、酵素/金属粒子複合体の適用に起因する高い電流密度を得ることが可能である。その結果、高出力密度を得ることが可能となる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明の方法は、これらの実施例のみに限定されるものではない。また、以下の実施例の実験温度は、特に記載がない限り室温(25℃)である。実施例に先立って、実施例で使用される錯体配位子の調製例について記述する。
(調製例1)
以下の式(1)に示す錯体配位子の合成法を記述する。
Figure 0004965955
等モルの 2-アセチルピリジン、4-メチルチオベンズアルデヒドのエタノール溶液に 1.5 M NaOH 水溶液を加え、室温で攪拌、生成物をろ取、メタノールで洗浄、乾燥し白色固体を得た。窒素気流下、2-アセチルピリジン、カリウム-tert-ブトキシドを THF 溶媒中室温で攪拌し、そこに先に調製した白色固体を加え、室温で攪拌を続けた後、過剰量の酢酸アンモニウムとエタノールを加え、還流させた。反応溶液を空冷後、溶媒を減圧溜去、残留物を水洗、メタノール洗浄することで、淡黄色の固体を得た。窒素雰囲気下、DMF 溶媒にこの淡黄色の固体と 10 モル当量のナトリウムエタンチオレートを加え還流、溶媒を減圧溜去する。その後、水を添加し、水溶性成分を除いた後、残渣をクロロホルムに溶かし、メタノール中に再沈殿を繰り返すことで、式(1)に示す化合物を得た。
(調製例2)
以下の式(2)に示す錯体配位子の合成法を記述する。
Figure 0004965955
窒素雰囲気下、DMF 溶媒に 4'-chloro-2,2':6',2''-terpyridine と 10 モル当量のナトリウムエタンチオレートを加え還流、溶媒を減圧溜去後、塩化アンモニウム水溶液を添加、攪拌した。これを水酸化ナトリウム水溶液に加え、生じた白色沈殿を回収することで、式(2)に示す化合物を得た。
(調製例3)
以下の式(3)に示す錯体配位子の合成法を記述する。
Figure 0004965955
1当量の4−アミノベンズアルデヒド、2当量の2−アセチルピリジン、酢酸アンモニウム、アセトアミドを加え、空気雰囲気下3時間還流を行う。反応溶液を空冷し、50g水酸化ナトリウム水溶液を加え、還流させる。反応溶液を空冷、油状の固体を水洗する。残留物を熱臭化水素酸に溶かし、生じた濃茶色の沈殿を濾過し、300mLの水に加え、炭酸水素ナトリウムで塩基性にする。得られた固体をクロロホルムで抽出し、カラムをかけ再結晶させることで、4'−(4−anilino)−2,2':6',2''−terpyridineを得る。
水溶媒に、4'−(4−anilino)−2,2':6',2''−terpyridine、塩化アンモニウムを加え、スターラで強攪拌下、亜鉛粉末を加え20分間反応させる。反応溶液を濾過し、多量の砕氷に注ぎ、濃硫酸を加える。この溶液にニクロム酸ナトリウムを加え、攪拌、生じた沈殿を回収し、水洗、乾燥することで、4'−(4−nitrosobenzene)−2,2':6',2''−terpyridineを得る。
酢酸に4'−(4−nitrosobenzene)−2,2':6',2''−terpyridineを加え、4,4'−dithioanilineを加え室温で攪拌する。水、炭酸ナトリウムを加えて中和し、生成物を150mLのクロロホルムで抽出する。アルミナを充填剤としてカラムをかけ、得られた溶液を減圧溜去、乾燥させることで式(3)に示す錯体配位子を得る。
(調製例4)
以下の式(4)に示す錯体配位子の合成法を記述する。
Figure 0004965955
酢酸に4'−(4−anilino)−2,2':6',2''−terpyridineを加え、4'−(4−nitrosobenzene)−2,2':6',2''−terpyridineを加え室温で攪拌する。水、炭酸ナトリウムを加えて中和し、クロロホルムで抽出する。アルミナを充填剤としてカラムをかけ、式(4)に示す錯体配位子を得る。
(調製例5)
以下の式(5)に示す錯体配位子の合成法を記述する。
Figure 0004965955
4−(Dihydroxyboryl)benzaldehyde、2−アセチルピリジン、酢酸アンモニウム、アセトアミドを加え、還流を行う。反応溶液を空冷し、水酸化ナトリウム水溶液を加え、さらに還流させる。反応溶液を空冷、油状の固体を水洗、残留物を熱臭化水素酸に溶かし、生じた濃茶色の沈殿を濾過、水、炭酸水素ナトリウムで中和する。得られた固体をクロロホルムで抽出、シリカを充填剤としてカラムをかけ、再結晶することで、式(5)に示す錯体配位子を得る。
実施例に先立って、実施例で使用される錯体ポリマーの調製例について記述する。
(調製例6)
以下の式(6)に示す錯体ポリマーの合成法を記述する。
Figure 0004965955
1−ビニルイミダゾールにアゾビスイソブチロニトリルを加え、攪拌しながら、窒素雰囲気下、50℃で反応をおこなった。反応溶液を空冷し、メタノール/アセトンで再沈殿させ、乾燥し、ポリ−1−ビニルイミダゾールを得た。
窒素雰囲気下、エチレングリコール溶媒に、等量の2,2':6',2''−terpyridine、六塩化オスミウム酸アンモニウムを加え還流し、反応溶液を空冷した。その後、ジエチルエーテルに滴下して、生じた沈殿を水洗、生成物を乾燥し、Os(2,2':6',2''−terpyridine)Cl3を得た。次に窒素雰囲気下、エチレングリコール溶媒に、Os(2,2':6',2''−terpyridine)Cl3、4,4'−dimethyl−2,2'−bipyridineを加え、窒素雰囲気下還流をおこなった。反応溶液を空冷した後、ジエチルエーテルで洗浄、乾燥し、Os(2,2':6',2''−terpyridine)(4,4'−dimethyl−2,2'−bipyridine)Clを得た。窒素雰囲気下、エチレングリコール溶媒に、Os(2,2':6',2''−terpyridine)(4,4'−dimethyl−2,2'−bipyridine)Cl、ポリビニルイミダゾールを加え還流をおこなった。反応溶液を空冷後、ジエチルエーテルに滴下し、生じた粘調液体を乾燥した。生成物を、SepahdexG25カラムにかけ、透析を行うことで、式(6)に記載する錯体ポリマーを合成した。
実施例に先立って、実施例で使用されるアポグルコースオキシダーゼの調製例について記述する。
(調製例7)
グルコースオキシダーゼから酸化還元中心であるフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を除去した、アポグルコースオキシダーゼの調整法について記述する。グルコースオキシダーゼ(以降GODと表記)Aspergillus niger(190Umg-1,Sigma)をリン酸緩衝液に溶解、冷却し、リン酸ナトリウム−硫酸溶液を加えた。この溶液を0℃で30分間放置した後、ゲルカラムに通した。この回収成分をデキストラン、活性炭粉末の混合物に加えた。水酸化ナトリウム溶液を加え中和、攪拌、遠心分離を行い、濾過、透析を行い、凍結乾燥を行うことで、アポグルコースオキシダーゼを得た。
(実施例1)
π共役金属錯体分子にGODを固定化した酵素電極と、これを用いたグルコースセンサ、生物燃料電池について記述する。
まず、アノードの調製について記述する。0.1Mリン酸緩衝液、50mMのグルコース、10mgmL-1のGOD、8.0mgmL-1のNaAuCl4を加えた。これを、3日間放置して、GOD/金粒子複合体を調製した。
洗浄した金電極を式(1)から(3)に示す錯体配位子のクロロホルム溶液に浸漬し、クロロホルムで洗浄し、窒素気流で乾燥させた。これを、塩化コバルト水溶液に浸漬、水洗乾燥させた。これを4′,4′′′′-(1,4-Phenylene)bis(2,2′:6′,2′′-terpyridine) または、式(4)に示す錯体配位子のクロロホルム溶液に浸漬、洗浄、乾燥する。さらに塩化コバルト水溶液に浸漬、水洗乾燥させる。式(1)から(3)に示す錯体配位子のクロロホルム溶液に浸漬、洗浄、乾燥する。この電極を先に調製したGOD/金粒子複合体溶液に浸漬し、その後、リン酸緩衝液pH7.0で洗浄し、アノード(実施例用)を調製する。
カソードの調製について記述する。カーボンマット(トレカマット、東レ)を切断、グラッシーカーボン上にカーボンペーストを用いて固定し、UVオゾン処理を行う。調製例6に記載のオスミウムポリマーのクエン酸緩衝液にラッカーゼ(Coriolus hirsutus, SynectiQ)を加える。攪拌した後、ポリエチレングリコールジグリシデルエーテル水溶液を加え、先に用意した電極を5分間浸漬し、乾燥させ、カソードを調製する。
次に、比較例の調製について記述する。電解層にピロール、塩化カリウム、水溶液を加え、前記の金電極を作用電極、銀/塩化銀電極を参照電極、白金線を対電極として1.0Vの電位を印加する。その後、調製した電極をリン酸緩衝液で洗浄し、アノード(比較例用)を調製する。
次に、調製した酵素電極を用いた基質センサについての詳細を記述する。図1に示すように、調製したアノードを作用電極11、白金線を対電極10、銀/塩化銀電極を参照電極13として3電極セルを構成し、ポテンショスタット4に接続し、基質センサとする。電解液12としてクエン酸緩衝液を使用し、N2ガスを吹き込むことで電解液から酸素を除去する。作用電極に500mV vs Ag/AgClの電位を印加して定常電流(触媒電流)を観測する。なお、セル内の温度は、温調セル8内に温調水を導入して行う。また、図4で示す燃料電池でも同様である。
一般に酵素電極においては、酵素電流値の基質濃度依存性を観測したときに、基質濃度の増大と共に、酵素反応が律速となる領域が現れ、電流値が基質濃度の増大と比例して増大しない現象が観測される。ここで、π共役金属錯体分子を用いた酵素電極では、酵素をπ共役金属錯体分子によって、酵素の配向をそろえて導電性部材に固定化することができる。このことにより、酵素をランダムな配向をもって固定化した場合(例えば比較例)と比較して、酵素の活性中心から導電性部材への電荷の輸送の高速化が可能となる。これによって、酵素反応が律速となる基質の濃度を向上させ、酵素電極の測定可能な濃度範囲の上限を向上させることができる。
一般に酵素電極においては、測定下限を決定する最大の要因として、酵素電流のシグナル/ノイズ比が挙げられる。このノイズは、一般的に導電性部材の面積に比例する。このため、ノイズを低減するためには、導電性部材の面積を小さくすることが有効であるが、導電性部材の面積の低減は、シグナルも同時に低下させてしまう。ここで、π共役金属錯体分子を用いた酵素電極では、酵素をπ共役金属錯体分子によって、酵素の配向をそろえて導電性部材に固定化することができる。このことにより、酵素をランダムな配向をもって固定化した場合(例えば比較例)と比較して、酵素の活性中心から導電性部材への電荷の輸送の高速化が可能となる。これによって、酵素電極の酵素電流密度(導電性部材の単位面積あたりの電流値)を向上させることで、同じ酵素電流値を、より小さな導電性部材の面積で与えることが可能となる。その結果、シグナル/ノイズ比を向上させ、測定下限を低下させることができる。
実施例用アノードまたは比較例アノードを用いて観測される定常電流の溶液中グルコース濃度依存性の傾向を図2に示す。それぞれのアノードから観測される定常電流値は、実施例で大きく、比較例では小さく観測され、この差は、グルコース濃度の増大と共に大きくなる。また、それぞれの電極は、あるグルコース濃度まで直線的に定常電流が増大し、その後飽和傾向にある。この直線性の範囲は、実施例において、比較例よりも低濃度領域から、高濃度領域に及ぶ。
次に、調製したアノードとカソードを用いた生物燃料電池についての詳細を記述する。前述のセンサと同様、酵素電極においては、基質濃度の増大と共に、酵素反応が律速となる領域が現れ、電流値が基質濃度の増大と比例して増大しない現象が観測される。ここで、π共役金属錯体分子を用いた酵素電極では、酵素をπ共役金属錯体分子によって、酵素の配向をそろえて導電性部材に固定化する。このことにより、酵素をランダムな配向をもって固定化した場合(例えば比較例)と比較して、酵素の活性中心から導電性部材への電荷の輸送の高速化が可能となる。これによって、酵素反応が律速となる基質の濃度を向上させ、酵素電極の発生する電流値を向上させることができ、その結果、電池の出力を向上させることができる。
図3に示すように、調製したアノードを作用電極11、カソードを対電極15として生物燃料電池とする。グルコース20mMを含む0.2Mのクエン酸緩衝液pH5.0を電解液12として使用し、空気をバブリングしながら生物燃料電池特性を測定する。このとき、観測される最大出力の傾向としては、上述の理由より実施例のアノードにおいて、比較例よりも大きい。
(実施例2)
π共役金属錯体分子にグルコースオキシダーゼを固定化した酵素電極と、これを用いたグルコースセンサ、生物燃料電池について記述する。
洗浄した金電極を式(1)から(3)に示す錯体配位子のクロロホルム溶液に浸漬し、クロロホルムで洗浄し、窒素気流で乾燥させた。これを、塩化コバルト水溶液に浸漬、水洗乾燥させた。これを式(5)に示す錯体配位子のクロロホルム溶液に浸漬したのち、洗浄、乾燥させる。FADを溶解させたCholine hydroxideのメタノール/水混合溶液に浸漬、その後、アポグルコースのリン酸緩衝液に浸漬し、洗浄することで、アノードを調製する。
次に、調製した酵素電極を用いた基質センサについての詳細を記述する。図1に示すように、調製したアノードを作用電極11、白金線を対電極10、銀/塩化銀電極を参照電極13として3電極セルを構成し、ポテンショスタットに接続することで、基質センサとする。電解液として0.2Mのクエン酸緩衝液pH5.0を使用し、30分以上N2ガスを吹き込むことで電解液から酸素を除去する。作用電極に500mV vs Ag/AgClの電位を印加して定常電流(触媒電流)を観測する。比較例は、実施例1で用いたものと同様のサンプルを用いる。
実施例2においても、実施例1と同様の結果を得た。すなわち、π共役金属錯体分子を用いた酵素電極では、酵素をπ共役金属錯体分子によって、酵素の配向をそろえて導電性部材に固定化することができる。このことにより、酵素の活性中心から導電性部材への電荷の輸送の高速化を可能とし、酵素電極の測定可能な濃度範囲の上限を向上させることができる。また、同様に酵素電極の酵素電流密度(導電性部材の単位面積あたりの電流値)を向上させることで、同じ酵素電流値を、より小さな導電性部材の面積で与えることが可能となる。その結果、シグナル/ノイズ比を向上させ、測定下限を低下させることができる。
観測される定常電流の溶液中グルコース濃度依存性を図4に示す。それぞれのアノードから観測される定常電流値は、実施例において、比較例よりも高くなる。この差は、グルコース濃度の増大と共に大きくなる。また、それぞれの電極は、あるグルコース濃度まで直線的に定常電流が増大し、その後飽和傾向にある。この直線性の範囲は、実施例において、比較例よりも低濃度領域から、高濃度領域に及ぶ。
次に、調製したアノードとカソードを用いた生物燃料電池についての詳細を記述する。図3に示すように、調製したアノードを作用電極、カソードを対電極として生物燃料電池とする。グルコース20mMを含む0.2Mのクエン酸緩衝液pH5.0を電解液12として使用し、空気をバブリングしながら生物燃料電池特性を測定する。比較例としては、実施例1で用いた比較例用アノードを用いた。
実施例2においても、実施例1と同様の結果を得た。すなわち、酵素をπ共役金属錯体分子によって、酵素の配向をそろえて導電性部材に固定化することにより、酵素をランダムな配向をもって固定化した場合(例えば比較例)と比較して、酵素の活性中心から導電性部材への電荷の輸送の高速化が可能となる。これによって、酵素反応が律速となる基質の濃度を向上させ、酵素電極の発生する電流値を向上させることができ、その結果、電池の出力を向上させることができる。このとき観測される最大出力の傾向としては、上述の理由より実施例のアノードにおいて、比較例よりも大きい。
本発明は、新規な酵素電極、およびそれを用いたセンサ、生物燃料電池を提供でき、例えば、バイオセンサ、酵素の基質を燃料として用いる燃料電池に使用可能な部材として極めて有用である。
3電極セルの概略図である。 実施例1と比較例の基質センサの定常電流/基質濃度の関係を示したグラフである。 2電極セルの概略図である。 実施例2と比較例の基質センサの定常電流/基質濃度の関係を示したグラフである。
1 参照電極のリード
2 作用電極のリード
3 対電極のリード
4 ポテンショスタット
5 ガス供給口
6 温調セルのカバー
7 ガス供給管
8 温調セル
9 温調水供給口
10 白金対電極
11 アノード
12 電解液
13 参照電極
14 温調水排出口
15 カソード

Claims (8)

  1. 導電性部材と酵素とを含み構成される酵素電極において、
    前記導電性部材に固定化されているπ共役金属錯体分子を有し、
    前記酵素は、前記π共役金属錯体分子を介して前記導電性部材に固定化されており、且つ、前記π共役金属錯体分子の金属中心に結合されている錯体配位子に化学結合している
    ことを特徴とする酵素電極。
  2. 前記π共役金属錯体分子が多核錯体分子である請求項1に記載の酵素電極。
  3. 前記π共役金属錯体分子の中心金属が遷移金属元素である請求項1に記載の酵素電極。
  4. 前記π共役金属錯体分子の配位子がビピリジン誘導体またはターピリジン誘導体である請求項1に記載の酵素電極。
  5. 前記酵素は、金属粒子を含み構成されており、該金属粒子は、前記酵素と該酵素の基質との反応に伴って金属を形成し得る金属前駆体の存在下に、該酵素と該基質とを反応させて得られる酵素と金属粒子の複合体であることを特徴とする請求項1に記載の酵素電極。
  6. 前記金属粒子の少なくとも一部が、その内部に入り込んだ構造を有する酵素と、金属粒子の複合体であることを特徴とする請求項に記載の酵素電極。
  7. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の酵素電極と、対電極とを有することを特徴とするセンサ。
  8. アノード電極とカソード電極との間に電解液を保持し得る領域を設けた燃料電池において、前記アノード電極とカソード電極との少なくとも一方が請求項1乃至のいずれか1項に記載の酵素電極であることを特徴とする燃料電池。
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