JP4963115B2 - 高圧流体からのサンプル導入バルブおよびシステム - Google Patents

高圧流体からのサンプル導入バルブおよびシステム Download PDF

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Description

本発明は、高圧のガス、液体、超臨界流体などの高圧流体から微量のサンプルを採取して、各種の分析装置等にオンラインで導入するためのサンプル導入バルブおよびシステムに関するものである。
高圧条件下にあるガスや液体などの高圧流体は、種々の化学あるいは機械プロセスにおいて、溶媒あるいは媒体として広く利用されている。近年は特に環境調和性、安全性に優れた水や二酸化炭素などを、その超臨界条件の下で、従来の有機溶媒利用プロセスの代替溶媒として利用する超臨界流体の利用技術が広く開発され、実用化への検討が進められている。
高圧流体の特徴の一つに、圧力に依存して、溶媒としての物性が変化し、これにより相の変化や物質を溶解、混合する特性が変化するということがある。そのため、高圧流体をプロセス溶媒に使用する上では、圧力による特性の変化を把握し、操作条件の制御を行うことが極めて重要である。特に、溶媒としてもちいる場合、物質の溶解度や存在状態は圧力によって大きく変動しうるため、対象とする物質について、それらの圧力依存性を知る必要がある。
高圧流体中への物質の溶解度や存在状態を分析する上では、分光法によるその場での測定方が提案されているが、高圧下での測定には実験上多くの困難を伴い、またその結果の解釈も煩雑となるため、微量のサンプルを外部にサンプリングした後に分析等を行う手法が実用上広く行われている。特に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィー装置、フローインジェクション装置、誘導結合プラズマ(ICP)分析装置、質量分析装置等とオンラインで組み合わせた分析手法は、迅速に高感度な測定を行うことができること、測定の自動化が容易であり、モニター用途等への展開が可能であることなど、数多くの利点が考えられるため、広く検討されている。
これらの装置を用いるオンライン分析では、一般に導入するサンプルの量を正確に求めることが必要である。高圧流体においては、微小流量を精度よく制御できる開閉バルブ等の作成は困難であるため、定められた容量を持つサンプルループ中に高圧流体を導入し、バルブ等による流路の切り替えにより分析装置に導入することが一般的である。HPLC等ではこのようなサンプルの導入バルブは広く用いられ、用途により様々な形態が工夫されており、例えば特許文献1のような例がある。
しかしながら、サンプルループ切り替えによるサンプルの導入に際しては、サンプルループを元に戻すときに、分析装置側の雰囲気が高圧流体側に持ちこまれるという大きな問題がある。例えば高速液体クロマトグラフの場合、使用する溶離液が、ガスクロマトグラフやICPの場合はキャリアガスがサンプルループを介してサンプリングを行う側に持ちこまれることになる。サンプリングを行う側が高圧流体の場合、微量の副成分により物質の溶解度や特性が大きく変化するため、測定対象への影響が大きく、正確な測定が困難になる。
また繰り返し測定が行われる場合にはこの影響が累積されていくことになる。この影響を避けるためには、サンプルループを高圧流体に戻す前に内部を洗浄するか、あるいはサンプルループの容量に対して高圧流体側の容量ないし流通量を十分大きくする方法が考えられる。一般的に高圧流体側は設備、装置の問題で容量が小さく押さえられており、また測定対象の物質量が必要であるため、後者の方法では困難な場合が多い。
サンプルを分析機器に導入した後、サンプルループ内を不活性なガス等で洗浄してから測定対象側に戻す手法は、各種オンライン分析やクロマトグラフィーで広く行われている。しかしながら、高圧流体の場合、バルブの耐圧性の問題から、複雑な流路構成を持つバルブが作成困難であるため、既存の高圧バルブを組み合わせたシステムを構成する場合が多い。図1に非特許文献1の例を示す。
図1は非特許文献1に記述されている、超臨界CO中に溶解したサンプルの濃度測定のための、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)へ微量の超臨界CO試料を導入するシステムであり、液体クロマトグラフィー用の一般的なローターシール型の六方切り替えバルブと、同じくローターシール型で内部容量型かつ二位置型のサンプル導入バルブを組み合わせた構造となっている。○印が固定子に接続された接続口を、太線部分がローターシール上に刻まれた溝を示す。内部容量型のサンプル導入バルブではバルブのローターシール部分に刻まれた溝が定容量のサンプル保持部となっている。
(1)の状態で超臨界CO系に接続されているサンプル保持部(A)内には超臨界CO試料が満たされている。バルブを切り替えて(2)の状態とすることでHPLCにAの内部の試料が導入される。Aの中はHPLCの溶離液が充填されるので、(3)で、六方バルブを切り替えて、Aの内部の溶離液をCOガスで洗浄除去する。その後(4)でサンプル導入バルブを元の位置に戻し、Aの内部に再度超臨界CO試料を充填する。
この場合、超臨界CO側に液体クロマトグラフィーの溶離液が混入することは避けられる。しかし、双方のバルブを接続する配管内にCOが残存し、(4)から(1)に戻す時点で、HPLCにCOガスが導入され、カラムや検出器内での発泡によるクロマトグラム上のノイズや、送液不良の原因となることが問題であった。この影響を避けるためには、(4)から(1)に移行したあとHPLCの送液系からガスが十分抜けるまで待たなければならず、迅速な測定の妨げとなっていた。
この例に限らず、高圧流体側から分析機器等にサンプルを導入し、分析機器側の雰囲気を持ちこまないようにする手法は複数のバルブの組み合わせで実現可能ではあるが、配管やバルブ内のデットボリュームが大きい、接続点が多いため、圧力を保持する上で、またメンテナンスの上で不利、バルブ操作が煩雑で自動化の障害となる、等の問題があった。
特表2004−512542 Talanta, 44, 755-763 (1997)
よって、本発明の目的は、高圧流体から各種分析機器へオンラインで微量のサンプルを導入するための、分析機器の雰囲気を高圧流体側に持ちこむことがなく、かつシンプルな機構でかつデッドボリュームの少ない、サンプリングシステムを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく研究を重ねてきた。その結果、HPLC分析などで一般的に使用される、固定子とローターシールを使用した内部容量型のサンプル導入バルブを基本とし、ローターシール表面のサンプル保持部の位置、回転角度、および接続口の位置などを工夫し、表記の目的を満たすサンプル導入バルブおよびシステムを発明するに至った。
〔1〕すなわち、本発明は、高圧のガス、液体、超臨界流体などの高圧流体から微量のサンプルを採取して分析装置等に導入するためのバルブであって、高圧流体系、分析装置、および洗浄用ガスまたは液体への各一対以上の接続口を備えた固定子と、固定子に密着して高圧流体等の圧力保持が可能であるローターシールからなり、ローターシール上には対となる接続口を連結する定容量の溝等からなるサンプル保持部を備え、サンプル保持部が高圧流体系、分析装置、および洗浄用の接続口の対に順次接続してこれらを連結し、かつそれぞれの接続口の対を移動する間にはどこにも接続しない非接続の状態があり、これを循環的に繰り返すことを特徴とする、高圧流体からのサンプル導入バルブである。
〔2〕また、本発明は、高圧のガス、液体、超臨界流体などの高圧流体から微量のサンプルを採取して分析装置等に導入するためのシステムであって、請求項1に記載のバルブと、バルブのポジションを制御するための駆動系を備えることを特徴とするサンプル導入システムである。
〔3〕また、本発明は、高圧のガス、液体、超臨界流体などの高圧流体から微量のサンプルを採取して分析装置等に導入するためのバルブであって、高圧流体系、分析装置、および洗浄用ガスまたは液体への各一対以上の接続口を、同心円上に、対となる接続口のなす所定の角度aが対になっていない接続口のなす所定の角度bより小さくなるよう備えられた固定子と、固定子に密着して高圧流体等の圧力保持が可能であるローターシールからなり、ローターシール上には対となる接続口を連結する定容量の溝等からなるサンプル保持部を備え、ローターシールがaとbの合計の角度を一度に回転することで、サンプル保持部が高圧流体系、分析装置、および洗浄用の接続口の対に順次接続してこれらを連結し、かつそれぞれの接続口の対を移動する間にはどこにも接続しない非接続の状態があり、これを循環的に繰り返すことを特徴とする、高圧流体からのサンプル導入バルブである。
〔4〕また、本発明は、高圧のガス、液体、超臨界流体などの高圧流体から微量のサンプルを採取して分析装置等に導入するためのシステムであって、請求項3に記載のバルブと、バルブのポジションを制御するための駆動系を備えることを特徴とする、高圧流体からのサンプル導入システムである。
本発明のサンプル導入バルブによれば、高圧流体から微量のサンプルを分取し、分析装置に導入した後、サンプル保持部内部を洗浄用のガスあるいは液体で洗浄して、分析装置側の雰囲気を洗浄し、高圧流体中に戻す一連の過程を連続的に、かつ短時間で周期的に行うことができる。一般的な高圧バルブと同じローターシール型の機構を持つため、従来のバルブと同等の耐圧性、耐久性がある。
また、単一のバルブで構成されているため、デッドボリュームが少ない、接続点が少なく、圧力の保持がしやすい、メンテナンスが容易などの利点が多い。操作は一つのバルブの回転角のみを制御すればよいため、制御系が簡便で自動化が容易である。
本発明の実施の形態を以下のとおり、添付図面を参照して説明する。図2は本発明のサンプル導入バルブの一形態を示すものであり、バルブの固定子に設けられた接続口を、ローターシールに設けられた溝を介して接続する、一般的な高圧バルブと同一の基本構造を示している。太線はバルブのローターシール上に設けた溝等によって形成されている容量既知のサンプル保持部を示している。これは一般的なサンプル導入バルブのうち、内部容量型と呼ばれるものと類似の構造である。(1)は第一のスイッチング位置を、(2)はスイッチング途中の位置を、(3)は第二のスイッチング位置を、(4)は第三のスイッチング位置を示す概念的な図である。ローターシールの回転によりこれらのスイッチング位置は図2の(1)→(3)→(4)→(1)の順で連続的にかつ循環的に移動可能である。なお、これらの図は、サンプル導入バルブの外形や大きさ、材質を限定するものではない。
図2において、端末1、2はバルブの固定子上に設けられた高圧流体への接続口を、端末3、4は分析機器への接続口を、端末5、6は洗浄用ガスまたは液体への接続口を示す。本発明において、サンプル保持部は端末1と2、3と4、5と6をそれぞれ連結し、かつ、2と3、4と5、6と1は連結出来ない構造となっていればよく、これらの図はサンプル保持部の容量や形態、端末1から6の位置を限定するものではない。また、図2では6つの接続口を持つバルブの例を示しているが、端子の数はこれらの図によって限定されるものではない。洗浄用の端子を1組以上増やして、複数のガスや液でサンプル保持部の洗浄を行うことや、単一のバルブ上にこれら一連の端子の組み合わせを複数組み込むことも可能である。
以下、図2(1)において、端子1、2を接続しているサンプル保持部Aに注目して説明する。図2(1)に記載した位置においては、Aは高圧流体系に接続された端子1、2を連結し、内部に高圧流体サンプルが満たされている。
図2(2)は、Aが端子1、2を接続する状態から端子3、4を接続する状態へ移行する途中の状態を示している。この状態においてAはサンプル保持部に高圧流体を保持したまま、どの端子にも接続しない状態となっている。
図2(3)に記載した位置において、Aは分析機器等に接続された端子3、4を連結する状態となっている。図2(1)においてAに保持された高圧流体サンプルは、端子3、4を経て分析機器に導入され、A内部には、分析機器等の雰囲気、例えば高速液体クロマトグラフィーでは溶離液が、ガスクロマトグラフィーではキャリアガスが充填される。
図2(4)に記載した位置においては、Aは洗浄用ガスまたは液体に接続された端子5、6を連結する状態となっている。図2(4)においてAに保持された分析機器等の雰囲気は、5、6より供給される空気、不活性ガス、あるいは適当な溶媒で置換され、Aの内部が洗浄される。洗浄する媒体は高圧流体側や測定に影響を及ぼさないものであればよく、特に限定されない。高圧流体と同一の物質、たとえば高圧流体が超臨界二酸化炭素であれば二酸化炭素ガスまたは液体炭酸がさらに好ましい。
図2(4)で内部を洗浄されたサンプル保持部Aは、さらに回転して図2(1)の状態に戻り、再度Aの内部に高圧流体が充填される。図2(1)から(4)の一連の過程において、A以外のサンプル保持部によっても同様に高圧流体サンプルの充填、充填されたサンプルの分析機器等への導入、サンプル保持部の洗浄、の過程が順次繰り返される。図2のような六接点のバルブの場合、一回転の間に三回サンプルが導入されることになる。これにより、分析機器の雰囲気に汚染されることなく、高圧流体サンプルが連続的に分析機器等に導入出来ることになり、図1に例示した従来のシステム等と比較してサンプルの処理速度は大きく増加する。
図2(2)の位置では、サンプル保持部がどの端子にも接続されない状態となるため、各端子に接続された高圧流体や分析機器などが流通系の場合、その流れが一時的に閉止されることになる。しかし、サンプル保持部の容量や端子の位置を適切に設計すれば、流路の切り替えは連続的にかつ短時間で行われるため、実際の測定で支障が出ることは少ない。
図3は本発明における別形態の例を示しており、市販高圧液体クロマトグラフィー用六方バルブ等に近い構造となっているため、より実用化が容易な例である。図3では、端子1から6は同心円状に固定子に配置されているが、対になっている端子1および2、3および4、5および6のなす角度aが、対になっていない端子2および3、4および5、6および1のなす角度bより小さくなっている。図2と同様に図3(1)において、端子1、2を接続しているサンプル保持部Aに注目して説明する。図3(1)に記載した位置においては、Aは高圧流体系に接続された端子1、2を連結し、サンプル保持部内部に高圧流体サンプルが満たされている。
この状態から、ローターシールを(a+b)度回転することによって、Aは端子1、2を接続する状態から端子3、4を接続する状態へ移行する。図3(2)はその中途の状態を示している。角度aが角度bより小さいため、この状態においてAは内部に高圧流体を保持したまま、どの端子にも接続しない状態となっている。
図3(3)に記載した位置において、Aは分析機器等に接続された端子3、4を連結する状態となっている。図3(1)においてAに保持された高圧流体サンプルは、端子3、4を経て分析機器に導入され、A内部には、分析機器等の雰囲気、例えば高速液体クロマトグラフィーでは溶離液が、ガスクロマトグラフィーではキャリアガスが充填される。
続いて、ローターシールをさらに(a+b)度回転することによって、Aは図3(4)に記載したように、洗浄用ガスまたは液体に接続された端子5、6を連結する状態となっている。図3(4)においてAに保持された分析機器等の雰囲気は、5、6より供給される空気、不活性ガス、あるいは適当な溶媒で置換され、Aの内部が洗浄される。
図3(4)で内部を洗浄されたサンプル保持部Aは、さらに(a+b)度回転して図3(1)の状態に戻り、再度Aの内部に高圧流体が充填される。図2の場合と同様、図3(1)から(4)の一連の過程において、A以外のサンプル保持部によっても同様に高圧流体サンプルの充填、充填されたサンプルの分析機器等への導入、サンプル保持部の洗浄、の過程が順次繰り返され、一回転の間に三回サンプルが導入されることになる。
角度a、bの設定は、aがbより小さく、図3(2)の位置では、サンプル保持部がどの端子にも接続されない状態となるため、各端子に接続された高圧流体や分析機器などが流通系の場合、その流れが一時的に閉止されることになる。しかし、サンプル保持部の容量や端子の位置を適切に設計すれば、流路の切り替えは連続的にかつ短時間で行われるため、実際の測定で支障が出ることは少ない。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(株)フロム製HPLC用自動切り替えバルブ(VALVE UNIT400)を原型として、図3に示した流路パターンを持ち、試料保持部Aの内容量が1.75マイクロリットル、端子1と2、3と4、5と6の角度aが45度、端子2と3、4と5、6と1のなす角度bがそれぞれ75度をなす、ローターシール型のバルブ、およびこのバルブの回転角度を制御する駆動系からなるバルブシステムを製作した。このバルブでは、図3における端子1、2が接続した状態から120度回転させると、Aは端子2、3間を通過する間にどこにも接続しない状態となったのち、端子3、4を接続する状態となる。
超臨界二酸化炭素に溶解した物質の溶解度を、HPLCを利用して測定するシステムとして以下の装置を構築した。上記のバルブにおいて、図3における端子1、2に、日本分光製超臨界二酸化炭素流通システムおよび循環ポンプを接続し、20MPa、313Kの超臨界二酸化炭素を循環させた。端子3、4にはHPLCポンプ(日本分光製PU−2086)、シリカゲルカラム(ジーエルサイエンス製イナートシルWP300SIL、カラム内径3mm、長さ250mm)および紫外可視スペクトル分光検出器(日本分光製MD−910)からなるHPLCシステムを接続し、ヘキサン/メタノール溶離液(容積比95:5)をおよそ6MPaの圧力で流通させた。端子5、6には炭酸ガスボンベより、およそ5MPaの二酸化炭素ガスを供給した。
この装置を用いて、超臨界二酸化炭素のみをHPLCに導入するブランク測定を行い、試料導入がHPLCでの検出におよぼす影響をクロマトグラムにより評価した。上記の装置において1分ごとにバルブの位置を切り替え、図3の(1)から(4)の過程を順次繰り返すことにより、1.75マイクロリットルの超臨界二酸化炭素を1分毎に繰り返しHPLCへ導入し、HPLCシステムにおいて200−650nmのスペクトルをモニターすることによって、多波長クロマトグラムを得た。
二酸化炭素の導入により、HPLC溶離液で発泡や密度の変化等が起こり、これによる光散乱のため、スペクトル上には全波長領域に跨るノイズが現れるが、本システムにおいてはその影響は小さく、良好なベースラインが得られた。図4に500nmにおけるクロマトグラムを示す。また、同じ図に50倍に拡大したクロマトグラムを併せて示す。一分ごとの試料導入がノイズの微少なピークに反映されており、定量的で再現性の高い試料導入が可能であることが示された。
比較例
市販のHPLC用六方切り替えバルブ(レオダイン7000)および内部容量二位置型のサンプル導入バルブ(バルコ、サンプル容量2μL)、および16分の1インチステンレス配管(内径0.4mm)を用いて図1と同様のサンプル導入システムを作成した。なお作成に当たっては両者のバルブを連結する配管の長さを最小とするよう留意した。
このバルブを用いて実施例と同様の溶解度測定装置を以下の通り構築した。図1の端子1、2には炭酸ガスボンベより、およそ5MPaの二酸化炭素ガスを供給し、また流路にストップバルブを設置して内部の圧力を解放できるようにした。端子4、5には実施例と同一のHPLCシステムを接続し、ヘキサン/メタノール溶離液(容積比95:5)をおよそ6MPaの圧力で流通させた。サンプル導入バルブには実施例と同一の超臨界二酸化炭素流通システムを接続し、313K、20MPaの超臨界二酸化炭素を循環させた。
この装置を用いて、実施例と同様に超臨界二酸化炭素のみを導入するブランク測定を行い、試料導入がHPLCでの検出におよぼす影響をクロマトグラムにより評価した。バルブの位置を切り替え、図1の(1)から(4)の過程を順次繰り返すことにより、2マイクロリットルの超臨界二酸化炭素を繰り返しHPLCへ導入し、HPLCシステムにおいて200−650nmのスペクトルをモニターすることによって、試料導入がHPLCでの検出におよぼす影響をクロマトグラムにより評価した。なお、高圧の(4)から(1)に移行する直前に、端子1、2の流路に設置したストップバルブの開閉により、洗浄用COの圧力を解放する操作を合わせて行った。
試料の充填、導入、洗浄の各工程を実施例と同様のレベルとするためには、図1(1)から(4)の4工程を各1分毎に行わなければならず、試料の導入は4分間に1回となり、実施例の4倍の時間を要した。またこの間のバルブ操作は、実施例が1工程となるのに対し、比較例では4工程、ストップバルブの操作を併せて5工程となった。
実施例と同様、二酸化炭素の導入により、HPLC溶離液で発泡等が起こり、これによる光散乱のため、スペクトル上には全波長領域に跨るノイズが現れた。本システムにおいては2つのバルブを連結する配管を最小限度の長さにしているにもかかわらず、また前記段落0041に記載の通り配管内の二酸化炭素の圧力を解放する操作を予め行ったにもかかわらず、配管内の二酸化炭素に起因するノイズは実施例よりも遙かに大きく現れた。図4に500nmにおけるクロマトグラムの例を併せて示す。ノイズはピーク高さの比較で実施例のおよそ200倍以上であった。またピーク高さ、面積は再現性に乏しかった。
本発明のサンプル導入バルブおよびサンプル導入システムは、化学合成品や医薬品等の、合成、精製等に用いられる高圧プロセスにおいて、各種クロマトグラフ、分析機器を用いた各種測定、プロセス管理、品質管理に利用可能なシステムである。
従来例のシステム図である。 本発明の第1の態様を示すシステム図である。 本発明の第2の態様を示すシステム図である。 本発明の実施例のクロマトグラムを示す図である。

Claims (2)

  1. 高圧流体から微量のサンプルを採取して分析装置等に導入するためのバルブであって、高圧流体系、分析装置、および洗浄用ガスまたは液体への各一対以上の接続口を、同心円上に、対となる接続口のなす所定の角度aが対となっていない接続口のなす所定の角度bより小さくなるよう備えられた固定子と、固定子に密着して高圧流体等の圧力保持が可能であるローターシールからなり、ローターシール上には対となる接続口を連結する定容量の溝等からなるサンプル保持部を備え、ローターシールがaとbの合計の角度を一度に回転することで、サンプル保持部が高圧流体系、分析装置、および洗浄用の接続口の対に順次接続してこれらを連結し、かつそれぞれの接続口の対を移動する間にはどこにも接続しない非接続の状態があり、これを循環的に繰り返すことを特徴とする、高圧流体からのサンプル導入バルブ。
  2. 高圧流体から微量のサンプルを採取して分析装置等に導入するためのシステムであって、請求項に記載のサンプル導入バルブと、当該サンプル導入バルブのポジションを制御するための駆動系を備えることを特徴とする、高圧流体からのサンプル導入システム。
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